【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、創傷にTNP療法を提供する装置であって、使用時に創傷を覆って創腔を形成する密封膜と、使用時に創腔に動作可能に関連づけられる一端を有する吸引管路と、吸引管路の遠位端に提供され、使用時に創腔に真空を提供する真空手段と、使用時に創腔と流体連通する空気ブリード(air bleed)手段とを備える装置が提供される。
【0017】
本明細書において、用語「真空」は、周囲大気圧未満の圧力を意味する。
【0018】
希望に応じて空気ブリードをオンおよびオフにすることができる点において、空気ブリード手段を切替え可能とすることができる。この点に関して、空気ブリード手段は、創腔と連通する一端を有し、管路に関連づけられたフィルタと、創腔内の真空の影響下で、フィルタが、周囲大気から創腔へ空気を受け入れることを可能にするクランプまたは弁とを有する第2の管路によって提供することができる。管路内への空気流は、使用者/患者または臨床医が制御する管路上のクランプまたはオン/オフ弁によって制御することができる。例えば、吸引管が滲出物でいっぱいであるように見えるが、滲出物が移動していないことを患者が観察したときに、空気ブリードを受け入れることができる。周囲の空気に対して管路を開くと、管路内の流体が流動して、滲出物を、使用時に特定のTNP装置に関連づけられる例えば廃物キャニスタ内へ放出する。
【0019】
この空気ブリード手段は、大気圧よりも200mmHg低い圧力で、系内への最大1l/分の最大流量を提供することができる。好ましくは、この流量を最大0.5l/分とすることができる。より好ましくは、この流量を最大0.2l/分とすることができる。さらにより好ましくは、系内への0.05l/分の最大流量を提供することができる。最も重要な因子は、創傷が完全には乾燥しない終始一貫した流量を達成することであり、創傷の完全乾燥は、ブリード空気の流入流量が大きすぎる場合に起こる可能性がある。
【0020】
ブリード流量の制御は、ブリード空気を受け入れることができるフィルタの面積を制御することによって達成することができる。
【0021】
空気ブリードによって病原体が創腔に入る危険を最小化するために、フィルタの使用は望ましく、有利である。
【0022】
前述の第2の管路上の調整器を使用して、内部への空気ブリードの一定だが制御された流量を達成することもできる。
【0023】
あるいは、空気ブリード手段を密封ドレープに関連づけることもでき、密封ドレープには、空気ブリードポートを取り付けることができるように、開口を形成することができる。このような空気ブリードポートは、真空によりそこを通して周囲の空気が創腔内へ引き込まれるフィルタ部分または開口を有することができる。このような空気ブリードポートは、周囲大気に対して永続的に開いておくことができるが、フィルタ部分が含まれるため、創腔または吸引管路内への空気の流量を、フィルタ細孔のサイズに基づく低い流量に限定することができる。実際、このような空気ブリードポートは、通常はより大きな創傷で起こるTNPドレッシング内への空気の漏入の代わりとなる。患者が上に載ってしまった場合に患者を傷つけないように、適当な空気ブリードポートは、軟質プラスチック材料の成形によって製造することができる。製造時に、空気ブリードポートに、接着剤層およびシリコーン処理紙の適当な保護層を提供することができ、使用するために必要となるまで、それらを保持することができる。
【0024】
ドレッシングの漏れをチェックし、かつ/またはオン/オフ機構の働きをすることができるように、このような空気ブリードポートを、適当な密封テープで密封することができる。
【0025】
空気ブリード機構は、例えば本発明と所有者が同一の特許文献5に基づく本発明の発明者らの同時係属特許文献6に記載された、2つの接着ドレープまたは密封膜層間に挟み込まれた適当なグロメット(grommet)に差し込まれた第2の管路によって提供することができる。これらの文献の内容は参照によって本明細書に包含される。
【0026】
適当なフィルタは、例えば0.2または0.1または0.02マイクロメートルのフィルタとすることができ、これらのフィルタはさらに、何らかの理由で大気中へ逆方向に細菌が放出される可能性がある場合に、それを防ぐことができるという追加の利点を有する。
【0027】
本発明の利点は、所定の細孔径および面積のフィルタ要素を使用することによって、創腔内への周囲空気の所望の低流量を精密に制御することができ、さらに、フィルタ要素自体が、潜在的に有害な細菌の進入を防ぐことである。対照的に、従来の弁は、必要な低流量の制御に対する感度が不十分であり、有害な細菌が創傷に侵入することも阻止しない。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、製造時に、上記の空気ブリードポートなどの空気ブリードポートに、ドレープまたは密封膜材料を提供することができ、空気ブリードポートは、このドレープまたは柔軟な密封膜に接着され、または溶接される。
【0029】
本発明の全ての実施形態では、ドレッシングおよび創腔内へのブリード空気流の流量が、フィルタの細孔径および周囲大気に露出するフィルタの面積に関するフィルタの特性のみによって制御される。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、局所陰圧ドレッシングとともに使用する空気ブリードポート部材が提供される。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、創傷に局所陰圧療法を提供する方法であって、創傷を覆って創腔を形成する密封膜を提供するステップと、創腔に動作可能に関連づけられる一端を有する吸引管路を提供するステップと、吸引管路の遠位端に提供され、創腔に真空を提供する真空手段を提供するステップと、創腔と流体連通する空気ブリード手段を提供するステップとを含む方法が提供される。
【0032】
次に、本発明をより完全に理解することができるように、添付図面だけを参照して、いくつかの例を、実例として説明する。
【0033】
本明細書中に援用され、本明細書の一部分を形成する添付の図面は、本開示の実施形態を示し、説明文と共に本開示の原理、特性および特徴を説明する働きをする。
[付記項1]
創傷に局所陰圧療法を提供する装置であって、創傷を覆って創腔を形成する密封膜と、使用時に前記創腔に動作可能に関連づけることができる一端を有する吸引管路と、前記吸引管路の遠位端に提供され、使用時に前記創腔に真空を提供する真空手段と、使用時に前記創腔と流体連通する空気ブリード手段とを備え、
前記空気ブリード手段が、創腔からの創傷滲出液の流出を促進するために所定の細孔径を有するフィルタ要素である、装置。
[付記項2]
前記フィルタ要素が、周囲大気にアクセス可能な所定の面積を有する、付記項1に記載の装置。
[付記項3]
前記吸引管路が、クランプまたはオン/オフ弁を備える、付記項1から2のいずれか一項に記載の装置。
[付記項4]
前記空気ブリード手段が、前記密封膜に関連づけられた空気ブリードポート部材の形態である、付記項1に記載の装置。
[付記項5]
前記空気ブリードポート部材が、前記密封膜に接着されており、使用時に、前記膜の開口を通して前記創腔と連通することができる、付記項4に記載の装置。
[付記項6]
前記空気ブリードポート部材が、それを通して空気ブリードが起こるフィルタ要素を含む、付記項4または付記項5に記載の装置。
[付記項7]
前記密封膜と空気ブリードポート部材とが単一体として製造された、付記項4から6のいずれか一項に記載の装置。
[付記項8]
前記フィルタ要素が0.2マイクロメートルの細孔径を有する、付記項1から3、6および7のいずれか一項に記載の装置。
[付記項9]
前記フィルタ要素が抗菌性である、付記項8に記載の装置。
[付記項10]
空気ブリードの流量が0.5l/分未満である、付記項1から9のいずれか一項に記載の装置。
[付記項11]
前記空気ブリードの前記流量が0.2l/分未満である、付記項10に記載の装置。
[付記項12]
前記流量が0.05l/分未満である、付記項10に記載の装置。
[付記項13]
前記フィルタ要素が、前記空気ブリードポート部材の凹みの中に保持された、付記項4または7に記載の装置。
[付記項14]
前記凹みが、その中に、前記フィルタ要素によって覆われた空気ブリード穴を有する、付記項13に記載の装置。
[付記項15]
前記空気ブリードポート部材が、前記吸引管路を受け取る機構を有する、付記項4または7に記載の装置。
[付記項16]
前記吸引管路が、使用時に、前記空気ブリードポート部材を貫通して前記創腔内へ延びる、付記項15に記載の装置。
[付記項17]
前記吸引管路が、前記空気ブリードポート部材で終端し、使用時に、前記創腔内への空気ブリードを可能にする、付記項15に記載の装置。
[付記項18]
局所陰圧ドレッシング用の空気ブリードポート部材であって、ベース部分と、ボディ部分と、吸引管路を受け取るソケット部分と、空気ブリード穴と、フィルタ要素を受け取って前記空気ブリード穴を覆う、前記空気ブリード穴に関連づけられた機構とを備え、前記フィルタ要素が、創腔からの創傷滲出液の流出を促進するために所定の細孔径を有する、空気ブリードポート部材。
[付記項19]
前記ベース部分が、ドレッシングの柔軟な密封膜に取り付けられるように適合された、付記項18に記載のポート部材。
[付記項20]
前記ソケット部分が、前記ソケット部分を貫通する吸引管路を受け取るように適合された、付記項18または19に記載のポート部材。
[付記項21]
前記ソケット部分が、前記ソケット部分内で終端する吸引管路を受け取るように適合された、付記項18または19に記載のポート部材。
[付記項22]
前記ベース部分が、使用時に、密封された創腔と連通するための開口をその中に有する、付記項18から21のいずれか一項に記載のポート部材。
[付記項23]
前記開口が、使用時に、吸引された創傷滲出物を直接に受け取る、付記項22に記載のポート部材。
[付記項24]
創傷に局所陰圧療法を提供する方法であって、創傷を覆って創腔を形成する密封膜を提供するステップと、前記創腔に動作可能に関連づけられる一端を有する吸引管路を提供するステップと、前記吸引管路の遠位端に提供され、前記創腔に真空を提供する真空手段を提供するステップと、前記創腔と流体連通する空気ブリード手段を提供するステップとを含み、前記空気ブリード手段が、創腔からの創傷滲出液の流出を促進するために所定の細孔径を有するフィルタ要素である、方法。
[付記項25]
前記空気ブリード手段が、前記密封膜内に提供された空気ブリードポート内のフィルタである、付記項24に記載の方法。
[付記項26]
空気ブリードの流量が、1l/分未満に制御される、付記項24または25に記載の方法。
[付記項27]
前記流量が、0.5l/分未満に制御される、付記項26に記載の方法。
[付記項28]
前記流量が、0.2l/分未満に制御される、付記項26に記載の方法。
[付記項29]
前記流量が、0.05l/分未満に制御される、付記項26に記載の方法。
[付記項30]
空気ブリードの流量が、前記創傷が完全に乾燥することを防ぐ流量に制御される、付記項24から29のいずれか一項に記載の方法。
[付記項31]
前記空気ブリードポート部材は、フィルタ材の部分を備え、使用時により大きな基層に接着するため、前記フィルタ材が、部分的に接着剤でコーティングされている、付記項4に記載の装置。
[付記項32]
使用時にそこを通してブリードが起こる可能性がある前記フィルタ材の面積が、接着剤によって覆われた面積によって制御される、付記項31に記載の装置。
[付記項33]
前記フィルタ材の部分が円形である、付記項31または32に記載の装置。
[付記項34]
前記接着剤が、空気ブリードポート部材の周縁の周囲の環として塗布された、付記項33に記載の装置。
[付記項35]
前記環が所定の面積を有する、付記項34に記載の装置。
[付記項36]
前記空気ブリードポート部材は、柔軟な密封膜に溶接されたフィルタ材の部分を備え、空気ブリード流の面積が、閉じられた溶接ビードの内側の面積によって決定される、付記項4に記載の装置。
[付記項37]
前記空気ブリード手段が、空気ブリードをオンおよびオフにすることができる点において切替え可能である、付記項1に記載の装置。
[付記項38]
前記空気ブリード手段が第2の管路によって提供され、前記第2の管路が、使用時に前記創腔と連通する一端と、前記第2の管路の遠位端の空気ブリード手段とを有する、付記項1または付記項37に記載の装置。