【文献】
小島伸俊, 沖山夏子, 上村隆明, 堀公彦,独立成分分析法を用いた肌色解析とそのシミ解析への応用,オレオサイエンス,2007年 7月 1日,第7巻、第7号,第273−277頁
【文献】
舛田勇二, 武井希世子, 水垣めぐみ,画像解析を用いたしみ・そばかす定量化システムの開発,日本化粧品技術者会誌,1994年 9月,第28巻、第2号,第147−152頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像処理手段が、前記肌画像から色素成分の分布画像を生成し、前記分布画像から低周波成分を除去し、2値化処理を行った後、メディアンフィルタを用いて画像のノイズ除去を行い、
前記ラベリング処理手段が、前記シミの領域にラベル付けを行った後、前記領域のうち所定面積以下の領域を除去することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシミ評価装置。
前記画像処理手段が、前記肌画像から色素成分の分布画像を生成し、前記分布画像から低周波成分を除去し、2値化処理を行った後、メディアンフィルタを用いて画像のノイズ除去を行い、
前記ラベリング処理手段が、前記シミの領域にラベル付けを行った後、前記領域のうち所定面積以下の領域を除去することを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のシミ評価プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
<シミ評価装置:機能構成例>
図1は、本実施形態におけるシミ評価装置の機能構成の一例を示している。
図1に示すように、シミ評価装置10は、例えば入力手段11と、出力手段12と、記憶手段13と、画像取得手段14と、画像処理手段15と、ラベリング処理手段16と、シミ評価手段17と、画面生成手段18と、制御手段19とを有する。
【0011】
入力手段11は、例えばシミ評価装置10を使用するユーザ等から、シミ評価処理に関する各種指示の開始/終了、設定等の入力を受け付ける。入力手段11は、例えばPC(Personal Computer)等の汎用のコンピュータであれば、キーボードやマウス等のポインティングデバイスである。入力手段11は、例えば音声等により上述した入力が可能なマイク等の音声入力デバイスであっても良い。
【0012】
出力手段12は、入力手段11により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の出力を行う。出力手段12は、例えばディスプレイやスピーカ等である。出力手段12は、プリンタ等の印刷デバイスを有していても良い。
【0013】
なお、上述した入力手段11と出力手段12とは、例えばシミ評価装置10がスマートフォンやタブレット端末等のような場合には、例えばタッチパネルのように入出力一体型の構成であっても良い。
【0014】
記憶手段13は、本実施形態において必要な各種情報を記憶する。具体的には、本実施形態におけるシミ評価処理を実行するための各種プログラムや、各種設定情報等を記憶する。記憶手段13は、例えば被験者の頬全体が撮影された肌画像や、解析領域のシミの数、シミの面積、シミの濃さ等の解析結果、シミの質の評価結果等を記憶する。
【0015】
ここで、記憶手段13は、上述したような多種の情報の集合物であり、例えばキーワード等を用いて検索し、抽出可能に体系的に構成されているデータベースとしての機能を有していても良い。更に、記憶手段13に記憶される情報は、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等に代表される通信ネットワークを介して外部装置から取得しても良い。
【0016】
画像取得手段14は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラとから構成されるSIA(Skin Image Analyzer)システム等により撮影された被験者の顔画像から、特定される部位(例えば、目の周りや頬等)の肌画像を取得する。画像取得手段14は、SIAシステムとして、本出願人の登録実用新案第3170125号に記載された装置等を用いることが可能である。
【0017】
SIAシステムのレンズには、例えばEF35mm F2(Canon社製)等を用いるがこれには限定されず、他の市販の焦点距離が異なるレンズを用いることも可能である。SIAシステムの拡散照明ボックスの光源には、演色評価用の光源であるFPL30EX−D(Toshiba社製)等を用いるがこれには限定されない。
【0018】
SIAシステムのデジタルカメラの撮影モードには、マニュアル露出でグレーの色票でホワイトバランスを調整しているがこれには限定されない。SIAシステムで撮影される画像サイズは、例えば4752×3168画素等であるがこれには限定されない。また、SIAシステムで撮影される画像は、例えば線形TIFF(Tagged Image File Format)形式で保存されるがこれには限定されない。
【0019】
上述したSIAシステムにより撮影される画像は、例えば拡散光を照射することにより肌表面の反射や影の影響等を抑えることが可能であり、撮影された部位の皮膚の「色」を計測し、肌の色情報を取得することが可能である。
【0020】
画像処理手段15は、画像取得手段14により得られた肌画像に対して画像処理を実行し、肌画像の解析領域からシミの領域を抽出する。例えば、画像処理手段15は、肌画像のうち、指定された解析領域の色彩データLab値や、メラニン成分、ヘモグロビン成分等の色素成分を算出する。
【0021】
また、画像処理手段15は、解析領域をメラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分の分布状態へと変換する。画像処理手段15は、例えば肌の色情報としてSIAシステムにより撮影されたRGB表色系RGB値や、RGB表色系から変換されたXYZ表色系XYZ値等を取得することで、メラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分の分布状態へと変換する。
【0022】
画像処理手段15は、本出願人の特許第3798550号公報等の手法を用いて、皮膚の反射スペクトルからランベルトベールの法則における透過率を皮膚の反射率に置き換えた吸光度モデル及び皮膚の構成成分の吸光係数スペクトルを重回帰分析を行い、皮膚中の成分量を求める。また、画像処理手段15は、本出願人の特許第3727807号公報等の手法を用いて、例えば皮膚の測色値と皮膚中の成分量を重回帰分析して重回帰式を予め求め、重回帰式を用いて皮膚の測色値から皮膚中のメラニン成分やヘモグロビン成分等の量を求める。
【0023】
なお、SIAシステムにより撮影された画像のRGB値は、例えば以下の式を用いて、CIE国際基準値であるCIE−XYZ値へと変換することが可能である。
【0024】
X=0.001645×R+0.001116×G+0.000314×B+2.585143
Y=0.001110×R+0.002080×G+0.000065×B+2.359088
Z=0.000439×R+0.000610×G+0.002439×B+2.757769 (式1)
【0025】
また、(式1)から得られたXYZ値は、上述した特許第3727807号公報等の手法における以下の(式2)を用いてメラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分へと変換することが可能である。
【0026】
メラニン量=−4.861×log10(1/X)+1.268×log10(1/Y)+4.669×log10(1/Z)+0.063
ヘモグロビン量=−32.218×log10(1/X)+37.499×log10(1/Y)−4.495×log10(1/Z)+0.444 (式2)
【0027】
画像処理手段15は、上述の手法により得られるメラニン成分やヘモグロビン成分等の色素成分の濃さ及びその分布状態を示す画像を生成する。
【0028】
ここで、例えば「シミ」とは、肌に色素が沈着することにより生じ、肌の色素が沈着した部位と沈着していない部位との境界が明瞭である程度に色素が沈着した状態等をいうが、主要な色素成分としては、上述したメラニン成分やヘモグロビン成分が挙げられる。本実施形態では、上述した色素成分のうち、例えばメラニン成分の濃さやその分布状態を示す画像(メラニン成分の分布画像)を用いることで、シミの質やその変化を評価する。
【0029】
また、画像処理手段15は、上述したメラニン成分の分布画像から、バンドパスフィルタ(例えば、ガウシアン関数)を用いて低周波数成分(例えば、影に相当する大きなうねり)を除去する。画像処理手段15は、例えば半値幅約40.0mm以上の帯域を影による影響として除去する。これにより、例えば顔の形状による影の影響を除外する。
【0030】
また、画像処理手段15は、上述した解析領域に対してメラニン成分で2値化処理を行う。2値化処理は、例えばメラニン成分の濃さに対して、例えば平均値+0.01〜0.30等を閾値として、閾値以上のメラニン値(高メラニン値)を有する画素を高メラニン部分とする。これにより、正常の肌部分と高メラニン部分とを識別する。
【0031】
また、画像処理手段15は、上述した解析領域に対してメディアンフィルタを用いて画像のノイズ除去を行う。メディアンフィルタでは、例えば5×5ピクセルのフィルタを用いてノイズ除去を行うが、これに限定されるものではない。
【0032】
ラベリング処理手段16は、画像処理手段15により画像のノイズが除去された解析領域から、高メラニン値を有する画素が連続している領域を1つの色素沈着部位(シミ)としてラベル付けする。ラベリング処理手段16は、例えば高メラニン値の画素として識別された画素が隣接する画素を連結し、連結された画素群を1つのシミの領域として抽出する。また、ラベリング処理手段16は、抽出したシミのうち、所定の面積(例えば、1.0mm
2)以下を除去する。これにより、例えば毛穴のような小さい抽出物を除去することが可能となる。
【0033】
シミ評価手段17は、ラベリング処理手段16によりラベル付けされたシミの数、個々のシミの面積、及び個々のシミの濃さを解析し、解析結果を用いて、肌画像の解析領域から得られるシミの質を評価する。シミ評価手段17は、例えば年代別において解析されたシミの数、個々のシミの面積、及び個々のシミの濃さのうち少なくとも1つを用いて、年代別におけるシミの質の変化を評価しても良い。
【0034】
画面生成手段18は、画像処理手段15により抽出されたシミを表示する画面を生成する。また、画面生成手段18は、ラベリング処理手段16によりラベル付けされたシミを、シミの形状に対する所定の面積や直径の大きさに基づいて色分けして表示する。なお、本実施形態のおいては、例えば所定の面積範囲毎に異なる色で分けしても良く、異なる模様等を用いたり、点滅等の異なる強調表示を行っても良い。
【0035】
また、画面生成手段18は、ラベル付けされたシミの所定の面積別や直径別の分布グラフを生成したり、年代別におけるラベル付けされたシミの数や、個々のシミの面積、個々のシミの濃さの少なくとも1つを用いて、年代別におけるシミの質の変化を示すグラフを生成しても良い。
【0036】
制御手段19は、シミ評価装置10の各構成部全体の制御を行う。制御手段19は、例えば肌画像に対する画像処理、ラベリング処理、シミ評価処理等のうち少なくとも1つを制御するが、制御手段19が制御する内容はこれに限定されるものではない。
【0037】
<シミ評価装置10:ハードウェア構成>
上述したシミ評価装置10の各機能をコンピュータに実行させる実行プログラム(シミ評価プログラム)を生成し、例えば汎用のPC、サーバ等にインストールする。これにより、本実施形態におけるシミ評価処理等を実現することが可能となる。
【0038】
図2は、シミ評価処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
図2のコンピュータ本体は、入力装置21と、出力装置22と、ドライブ装置23と、補助記憶装置24と、メモリ装置25と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)26と、ネットワーク接続装置27とを有し、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0039】
入力装置21は、ユーザ等が操作するキーボード、マウス等のポインティングデバイスを有しており、マイク等の音声入力デバイス等を有し、ユーザ等からのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。なお、入力装置21は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラ等を用いて撮影された被験者の肌画像を入力する入力ユニットを有している。
【0040】
出力装置22は、本実施形態に係る処理を行うコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU26が有する制御プログラムにより実行経過や結果等を表示する。
【0041】
ここで、本実施形態においてコンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROM等の可搬型の記録媒体28等により提供される。記録媒体28は、ドライブ装置23にセット可能であり、記録媒体28に含まれる実行プログラムが、記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0042】
補助記憶装置24は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本実施形態における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を記憶し、必要に応じて入出力を行うことができる。
【0043】
メモリ装置25は、CPU26により補助記憶装置24から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、メモリ装置25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等である。なお、上述した補助記憶装置24やメモリ装置25は、1つの記憶装置として一体型に構成されていても良い。
【0044】
CPU26は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置25に格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、本実施形態におけるシミ評価処理を実現する。なお、プログラム実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置24から取得し、実行結果等を格納しても良い。
【0045】
ネットワーク接続装置27は、インターネットやLAN等に代表される通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の装置等から取得する。また、ネットワーク接続装置27は、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本実施形態における実行プログラム自体を他の装置等に提供することが可能である。
【0046】
上述したハードウェア構成により、本実施形態におけるシミ評価処理を実行することが可能となる。また、実行プログラムをインストールすることにより、汎用のPC等で本実施形態におけるシミ評価処理を容易に実現することが可能である。
【0047】
<シミ評価処理>
図3は、シミ評価処理の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、シミ評価装置10は、画像取得手段14により、被験者の顔画像から特定される部位、例えば頬の部位(500×500の画素領域)を解析領域としてその肌画像を取得する(S10)。
【0048】
次に、シミ評価装置10は、画像処理手段15により、S10の処理で特定された解析領域のメラニン成分を算出し、算出したメラニン成分の濃さ及びその分布状態を示す画像(メラニン成分の分布画像)へと変換する(S11)。
【0049】
次に、シミ評価装置10は、画像処理手段15により、例えばバンドパスフィルタ(例えば、ガウシアン関数等)を用いて、低周波数成分の画像を生成し(S12)、S11の処理で得られたメラニン成分の分布画像から減算して、低周波数成分を除去する(S13)。
【0050】
次に、シミ評価装置10は、画像処理手段15により、メラニン成分による2値化処理を行う(S14)。S14の処理により、解析領域における高メラニン部分と、正常な肌部分とを識別することが可能となる。
【0051】
次に、シミ評価装置10は、画像処理手段15により、2値化処理が実行されたメラニン成分の分布画像に対してメディアンフィルタを用いて画像のノイズ除去(ノイズ処理)を行う(S15)。次に、シミ評価装置10は、ラベリング処理手段16により、高メラニン値を有する画素が連続している領域を1つの色素沈着部位(シミ)としてラベル付けするラベリング処理を行う(S16)。
【0052】
次に、シミ評価装置10は、ラベリング処理手段16により、ラベル付けされた色素沈着部位のうち、所定の面積以下の領域を除去する(S17)。これにより、例えば毛穴のような小さな抽出物は、除去することが可能となる。
【0053】
次に、シミ評価装置10は、シミ評価手段17により、S17までの処理で得られたシミについて、解析領域内のシミの数、個々のシミの大きさ、個々のシミの濃さ等を解析し、解析したシミの数、シミの面積、及びシミの濃さのうち少なくとも1つを用いて、シミを評価する(S18)。次に、シミ評価装置10は、画面生成手段18により、S18の処理で得られたシミの評価結果を表示する画面を生成し、画面上に表示して(S19)、処理を終了する。
【0054】
上述したシミ評価処理により、解析領域のシミの質を適切に評価することが可能となる。
【0055】
<2値化処理を行うまでの手順>
図4は、解析領域に対して2値化処理を行うまでの手順を説明する図である。
図4(A)は、被験者の肌画像に設定された解析領域の一例を示す。
図4(B)は、
図4(A)に示す画像から算出されるメラニン成分の分布画像に対して、バンドパスフィルタを実行した一例を示す。
図4(C)は、
図4(A)に示す画像から算出されるメラニン成分の分布画像から、
図4(B)に示す画像を用いて減算を行い、2値化処理を実行した一例を示している。
【0056】
具体的に説明すると、
図4(A)の例では、被験者の肌画像のうち、例えば被験者の目尻から小鼻の交点を基準として特定される頬の部位(例えば、500×500の画素領域)を解析領域とした例を示している。画像処理手段15は、
図4(A)に示す肌画像の解析領域からメラニン成分を算出し、メラニン成分の濃さ及びその分布状態を示す画像(メラニン成分の分布画像)へと変換する。
【0057】
図4(B)の例では、
図4(A)に示す解析領域の画像から算出されるメラニン成分の分布画像に対してバンドパスフィルタを用いて、例えば低周波数成分(例えば、半値幅約40.0mm以上の帯域)の画像を生成した例を示している。
図4(A)から算出されるメラニン成分の分布画像から、
図4(B)の画像を用いて減算することにより、例えば被験者の顔の形状による影の影響を除去することが可能となる。
【0058】
図4(C)の例では、
図4(A)から算出されるメラニン成分の分布画像から、
図4(B)に示す画像を減算した解析領域に対してメラニン成分による2値化処理を実行した例を示している。これにより、
図4(C)に示すように、解析領域における高メラニン部分と、正常な肌部分とを識別することが可能となる。
【0059】
<シミを抽出するまでの手順>
図5は、シミを抽出するまでの手順を説明する図である。
図5(A)は、フィルタの一例としてメディアンフィルタを実行した解析領域の一例を示し、
図5(B)は、ラベリング処理を実行した解析領域の一例を示している。
図5(C)は、毛穴のような小さなものを除去した解析領域の一例を示している。
【0060】
図5(A)の例では、
図4(C)に示す2値化処理が実行された解析領域に対して、例えば5×5画素(ピクセル)のフィルタを用いたメディアンフィルタを実行した例を示している。
図5(A)に示す解析領域は、
図4(C)に示す解析領域とを比較すると、画像のノイズが除去されている。
【0061】
図5(B)の例では、
図5(A)に示すメディアンフィルタが実行された解析領域に対して、高メラニン値となる画素が連続している領域を、例えば1つの色素沈着部位(シミ)としてラベル付けするラベリング処理を行った例を示している。
図5(B)の例では、1、2、3の数字で示す領域がラベリングされている。
【0062】
図5(C)の例では、
図5(B)に示すラベリング処理が実行された解析領域に対して、所定面積(例えば、1.0mm
2以下等)を除去した解析領域の一例を示している。これにより、
図5(C)に示すように、毛穴のような小さな抽出物が除去されている。
【0063】
<ラベリングされたシミの例>
次に、上述のようにラベリングされたシミについて説明する。
図6は、抽出されたシミの面積を説明するための図である。
図6(A)は、大きなシミが発生した肌画像の一例として、シミ評価手段17により評価されたシミの面積を示している。
図6(B)は、頬部においてラベリングされたシミを面積別に表示した例を示している。
図6(C)は、ラベリングされたシミの面積別の分布グラフの一例を示している。
【0064】
図6(A)に示す肌画像には、着目するシミのラベル値とその面積(117.2mm
2)が示されている。
【0065】
図6(B)に示す肌画像には、ラベリングされた個々のシミを、所定の面積(例えば、直径2mm、3mm、4mm、10mm)の大きさに基づいて色分けした例が示されている。なお、本実施形態において色分けされる面積(直径)の範囲は、これに限定されるものではない。上述したようにシミをラベリングすることにより、シミの領域(画素数)と画像の解像度等に応じて、ラベリングされたシミの面積を取得することが可能となる。このように、例えば頬部において着目するシミの他、個々のシミの面積、頬部のシミの合計面積等についても簡単に把握することが可能となる。
【0066】
図6(C)に示すグラフでは、日本人女性35〜50代(n=128)から得られたシミの面積別(直径2mm〜15mm)の分布が示されている。
図6(C)の例では、日本人女性35〜50代では、シミの面積としては直径3mmのシミが最も多いことが示されている。このように、シミの面積ごとの分布により、被験者におけるシミの質の傾向等を把握することが可能となる。
【0067】
本実施形態では、画面生成手段18により、上述した
図6に示す画面を生成し、生成した画面を表示する。なお、画面生成手段は、例えばシミの大きさ(例えば、面積、直径等)に対応させてシミの面積ごとの個数を集計したり、例えばシミの濃さ(メラニン量)に対応させてメラニン量別の個数を集計したりして、その結果をヒストグラム等により画面表示させることも可能である。
【0068】
<年代別におけるシミの数と面積の解析及び評価>
次に、上述のようにラベリングされたシミの数と面積を年代別に取得して、シミの解析や評価を行った例について説明する。
図7は、年代別にシミの数とシミの面積を解析した結果を示す図である。
図8は、年代別にラベリングされたシミを表示した肌画像を示す図である。
【0069】
図7(A)は、年代別の1人当たりのシミの数を示している。
図7(B)〜
図7(C)は、年代別の個々のシミの面積を示している。
【0070】
図7(A)の例では、30代前半、30代後半、40代前半、40代後半におけるシミの数を示している。本実施形態によるシミの評価結果によれば、
図7(A)に示すように、30代前半から次第にシミの個数が増加していき、40代後半では30代前半と比較してシミの数が約2倍に増加している。また、特に30代前半から30代後半にかけて、シミの数が急増している。
【0071】
図7(B)の例では、
図7(A)と同様に、30代前半、30代後半、40代前半、40代後半におけるシミの面積の平均を示している。また、
図7(C)の例では、年齢を1歳ごとに細分化して、個々のシミの面積をそれぞれプロットした例を示している。
【0072】
図7(B)に示すように、30代前半から40代後半にかけて、シミの平均的な面積はわずかに増加(有意性なし)している。これに対し、
図7(C)に示すように、40代後半の場合には、30代と比較して、大きな面積のシミが数個発生している(
図7(C)の点線部分)。
【0073】
図8(A)は、30歳の被験者の肌画像の一例を示している。
図8(B)は、35歳の被験者の肌画像の一例を示している。
図8(C)は、48歳の被験者の肌画像の一例を示している。なお、
図8(A)〜
図8(C)の例では、画面生成手段18により、シミの位置や領域をシミの大きさ(例えば、面積、直径等)に応じて色分けし、上述のように撮影された肌画像に所定の画像処理を施して重畳表示した例を示している。
【0074】
図8(A)に示す30歳の被験者の肌のシミと、
図8(B)に示す35歳の被験者の肌のシミとを比較すると、シミの数が3倍に増加している。また、
図8(C)に示す48歳の被験者の肌のシミでは、
図8(A)に示す30歳の被験者の肌のシミや
図8(B)に示す35歳の被験者の肌のシミと比較して大きなシミが発生している。
【0075】
上述したように、年代別にシミの数や面積を解析することで、シミの数が30代前半から30代後半にかけて大幅に増加し、40代前半又は40代後半で大きなシミが発生する等、どのタイミングでどのようにシミの質が変化するか評価することが可能となる。
【0076】
<年代別におけるシミの濃さの解析及び評価>
次に、上述のようにラベリングされたシミの濃さを年代別に取得して、シミの解析や評価を行った例について説明する。
図9は、メラニン量に基づきシミの濃さを解析した結果を示す図である。
【0077】
図9の例では、30代前半、30代後半、40代前半、40代後半におけるシミ(色素沈着部位)のメラニン量を示している。本実施形態によるシミの評価結果によれば、30代前半から40代後半にかけてメラニン量が増加している。更に、上述した正常な肌部分として判断された肌色領域のメラニン量も増加している。
【0078】
上述したように、年代別にシミの濃さを解析することで、シミの濃さは加齢により濃くなる一方、シミとして抽出された以外の肌色領域も濃くなるため、シミの目立ち方(差分)については変化しない等、シミの質の変化に対して評価することが可能となる。
【0079】
このように、年代別におけるシミの数、シミの大きさ、シミの濃さ等によりシミの質の変化を評価することが可能となるため、ラベリングにより抽出されたシミの情報は、例えば年代別におけるシミ対策の基礎データとして用いることが可能となる。
【0080】
上述したシミの質の評価手法を適用することにより、例えば被験者に対する肌評価を継続的に行って季節変動におけるシミの質の変化を評価を行うことも可能である。また、年代別や季節以外についても、本実施形態におけるシミの質の評価手法を適用することが可能である。
【0081】
なお、上述した
図5〜
図9に示す各図面は、画面生成手段18により生成することが可能であり、生成した画面を出力手段12等の画面に表示することで、本実施形態におけるシミの質の評価結果を適切に把握することが可能となる。
【0082】
上述したように、本実施形態によれば、シミの質を適切に評価することが可能となる。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。