特許第6138764号(P6138764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138764ウイルス性疾患、ガンおよび細胞内感染により引き起こされる疾患の予防および処置のためのチアゾリド化合物の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138764
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ウイルス性疾患、ガンおよび細胞内感染により引き起こされる疾患の予防および処置のためのチアゾリド化合物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20170522BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 31/13 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20170522BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170522BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61K31/426
   A61P31/12
   A61P35/00
   A61P33/00
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K31/4745
   A61K31/215
   A61K31/351
   A61K31/196
   A61K31/13
   A61K39/00 G
   A61K37/48
   A61P37/04
   A61P31/16
   A61P31/20
   A61P35/02
   A61P31/06
【請求項の数】51
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-511457(P2014-511457)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公表番号】特表2014-513725(P2014-513725A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】US2012037958
(87)【国際公開番号】WO2012158699
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/486,728
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507337865
【氏名又は名称】ロマーク ラボラトリーズ エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロシニョール,ジーン−フランソワ
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/151577(WO,A1)
【文献】 特表2008−538362(JP,A)
【文献】 The Journal of Immunology,186 (2011 April 1),155.21の項
【文献】 Antiviral Research,77 (2008),56-63
【文献】 Antimicrobial Agents and Chemotherapy,Vol.54, No.3 (2010),1315-1318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/426
A61K 31/13
A61K 31/196
A61K 31/215
A61K 31/351
A61K 31/4745
A61K 38/43
A61K 39/00
A61K 45/00
A61P 31/06
A61P 31/12
A61P 31/16
A61P 31/20
A61P 33/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 37/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848または、その塩もしくは多形体であり、前記チアゾリド化合物が、ワクチン、免疫刺激剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、アダマンチン類似体または組換えシアリダーゼ融合タンパク質との組み合わせで投与される、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記被験体が、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染を患っているか、あるいは、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染を発症する危険性がある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記免疫刺激剤が、イミキモドまたはレシキモドである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記チアゾリド化合物が、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビルおよびペラミビルからなる群から選択されるノイラミニダーゼ阻害剤との組み合わせで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記チアゾリド化合物が、アダマンチン類似体との組み合わせで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記チアゾリド化合物が、組換えシアリダーゼ融合タンパク質との組み合わせで投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるウイルス感染の処置または予防をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ウイルス感染が、インフルエンザ感染である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ウイルス感染が、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7から選択されるウイルスにより引き起こされる、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ウイルス感染が、B型肝炎である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記チアゾリド化合物が、抗B型肝炎剤との組み合わせで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記免疫刺激剤が、イミキモドまたはレシキモドである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記チアゾリド化合物が、アダマンチン類似体との組み合わせで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記チアゾリド化合物が、組換えシアリダーゼ融合タンパク質との組み合わせで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるガンの処置または予防をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ガンが、白血病である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記白血病が、ヘアリー細胞白血病または慢性骨髄性白血病である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ガンが、メラノーマである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ガンが、非ホジキンリンパ腫である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記ガンが、腎細胞ガンである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記チアゾリド化合物が、抗ガン剤との組み合わせで投与される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記抗ガン剤が、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αからなる群から選択される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体における細胞内原虫感染の処置または予防をもたらす、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記細胞内原虫感染が、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、リーシュマニア(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)およびトリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzii)からなる群から選択される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンまたは、免疫刺激剤または、抗原虫薬との組み合わせで投与される、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記チアゾリド化合物が、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンからなる群から選択される抗原虫薬との組み合わせで投与される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記免疫応答を刺激することが、細胞内細菌感染の処置または予防をもたらす、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記細胞内細菌感染が、ヒト型結核菌である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848またはその塩もしくは多形体であり、前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるガンの処置または予防をもたらし、前記ガンが、白血病、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫または腎細胞ガンである、医薬組成物。
【請求項36】
前記ガンが、白血病である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記白血病が、ヘアリー細胞白血病または慢性骨髄性白血病である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記ガンが、メラノーマである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記ガンが、非ホジキンリンパ腫である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記ガンが、腎細胞ガンである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記チアゾリド化合物が、抗ガン剤との組み合わせで投与される、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記抗ガン剤が、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αからなる群から選択される、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848またはその塩もしくは多形体であり、前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるウイルス感染の処置または予防をもたらし、前記ウイルス感染が、B型肝炎であり、前記チアゾリド化合物が、抗B型肝炎剤との組み合わせで投与される、医薬組成物。
【請求項46】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848またはその塩もしくは多形体であり、前記免疫応答を刺激することが、前記被験体における細胞内原虫感染の処置または予防をもたらし、前記細胞内原虫感染が、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、リーシュマニア(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)およびトリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzii)からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項47】
前記チアゾリド化合物が、ワクチンまたは、免疫刺激剤または、抗原虫薬との組み合わせで投与される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記チアゾリド化合物が、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンからなる群から選択される抗原虫薬との組み合わせで投与される、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848またはその塩もしくは多形体であり、前記免疫応答を刺激することが、前記被験体における細胞内原虫感染の処置または予防をもたらし、前記チアゾリド化合物が、ワクチンまたは、免疫刺激剤または、抗原虫薬との組み合わせで投与される、医薬組成物。
【請求項50】
前記チアゾリド化合物が、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンからなる群から選択される抗原虫薬との組み合わせで投与される、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激するのに使用するための医薬組成物であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含み、前記チアゾリド化合物が、RM−4848またはその塩もしくは多形体であり、前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるヒト型結核菌の細胞内細菌感染の処置または予防をもたらす、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2011年5月16日に出願された、米国仮出願第61/486,728号の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ウイルス性疾患、ガンおよび細胞内原虫感染により引き起こされる疾患を予防または処置することを含む、免疫調節するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
インフルエンザは、全ての年齢層を襲い、米国だけで、年に約36,000人の死亡と226,000人以上の入院の原因となる、非常に感染力が強い急性呼吸器疾患である。それらの核タンパク質およびマトリックスタンパク質における抗原性の差異に基づいて、(A、BおよびC型として)分類される、インフルエンザウイルスは、エンベロープを有し、マイナス鎖RNAのウイルスである。インフルエンザAウイルスの多くのサブタイプは、それらの2つの表面の糖タンパク質である、ヘマグルチニン(「HA」)およびノイラミニダーゼ(「NA」)が異なり、HAおよびNAは、防御免疫反応の主な標的であり、(H番号で表される)ヘマグルチニンと、(N番号で表される)ノイラミニダーゼとの型に基づいて標識される。HAおよびNAは、抗原連続変異(antigenic drift)および抗原不連続変異(antigenic shift)の結果として、連続して変異する。16種類のHサブタイプ(または「血清型」)および9種類のNサブタイプが、公知である。
【0004】
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)により引き起こされる感染性疾患である。世界人口の約4分の1である、20億人以上の人々が、B型肝炎ウイルスに感染している。急性疾患により、肝炎、嘔吐、黄疸およびまれに死亡が引き起こされる。慢性B型肝炎は、最終的に、現在の化学療法への非常に不良な反応しか有さない、肝硬変および肝ガンの致死的疾患を引き起こし得る。前記B型肝炎ウイルスは、部分的に二本鎖DNAから構成される環状ゲノムを有し、レトロウイルスと同様に、逆転写によりRNA中間体を使って複製する。複製は、肝臓中で行われるが、前記ウイルスは、血液に広がり、ウイルス特異的タンパク質およびそれに対応する抗体は、感染した人々で発見される。
【0005】
ガンは、異常な細胞の制御されない増殖および広がりにより特徴付けられる。腫瘍細胞は、正常な細胞に由来するため、宿主免疫系は、腫瘍細胞抗原を、異物として認識しない。さらに、一部の腫瘍細胞は、抗原を取り除き、または細胞表面上の受容体数を減少させることにより、宿主免疫防御系を免れる方法を発達させている。
【0006】
メラノーマは、メラニン細胞に由来する悪性の皮膚ガンである。早期に検出および処置されれば、ほぼ100パーセント治療可能である。早期に処置しなければ、前記ガンが、進行、拡散し、命に関り得る。メラノーマは、最も多くの死亡の原因となる皮膚ガンである。表在拡大型メラノーマは、特に若者の間で最も一般的なタイプのメラノーマである。このメラノーマは、より深く広がる(penetrating more deeply)前に、かなり長い期間、皮膚の表層に影響を及ぼす。悪性黒子が、慢性的に太陽に曝された高齢者でほとんどの場合、発見される。末端性黒子性メラノーマも、より深く広がる(penetrating)前に表面的に広がり、アフリカ系アメリカ人およびアジア人において、最も一般的なメラノーマであり、白人には極めてまれである。結節型メラノーマは、最初に診断された時点で、通常侵襲的であり、最も侵攻型のメラノーマである。
【0007】
白血病は、白血球細胞の異常な増加により特徴付けられる、血液または骨髄のガンである。ヘアリー細胞白血病は、前記骨髄中の異常なBリンパ球の蓄積により特徴付けられる、まれな悪性血液疾患である。ヘアリー細胞白血病は、正常な白血球、赤血球および血小板の産生を妨害する。慢性骨髄性白血病(CML)は、骨髄における主に骨髄性細胞の増大および無秩序な増殖、ならびに、血液におけるこれらの細胞の蓄積により特徴付けられる白血球のガンである。非ホジキンリンパ腫は、侵攻性または遅発性であり得、任意の年齢で発生する場合があり、多くの場合、リンパ節が正常より大きい、発熱および体重減少により特徴付けられる。B細胞非ホジキンリンパ腫としては、バーキットリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ性白血病(CLL/SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大型細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫があげられる。T細胞非ホジキンリンパ腫としては、菌状息肉腫、未分化大細胞リンパ腫および前駆Tリンパ芽球性リンパ腫があげられる。
【0008】
腎細胞ガン、腎盂ガンおよび腎芽細胞腫を含む腎細胞ガンは、成人における腎臓ガンの最も一般的なタイプである。2010年には、米国だけで、推定58,240件の新たな症例と13,040人の死亡があった。
【0009】
腫瘍抗原の特定における分子生物学による顕著な進歩、ならびに、組換え体および合成体におけるそれらの製造が、ガンの処置に多くの高機能なアプローチを可能にしてきたが、腫瘍細胞ワクチンの免疫原性の成功は、結局のところ、抗原提示細胞上の主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)発現、および、宿主免疫系による「異物」としての腫瘍抗原の認識に依存している。しかしながら、予防および処置は、宿主免疫応答を免れる病原体の能力がネックになっている。
【0010】
したがって、ウイルス性疾患およびガン疾患用の、新たな予防および処置の選択肢の開発についての、当分野における強力な必要性がある。
【0011】
ニタゾキサニド(2−(アセトリルオキシ)−N−(5−ニトロ−2−チアゾリル)ベンズアミド)は、下記化学構造:
【化1】

を有するチアゾリド系駆虫剤である。
【0012】
チゾキサニドは、ニタゾキサニドの活性な血中代謝物である。ニタゾキサニドまたは、ニタゾキサニドとチゾキサニドとの混合物をヒトに経口投与した後、これらの化合物は、腸管から部分的に吸収され、ニタゾキサニドは、急速に加水分解されて、血漿中にチゾキサニドを形成する。チゾキサニドは、血漿タンパク質に結合され、その尿排出半減期は、7.3時間である。チゾキサニドは、グルクロノ複合体であり、前記薬剤は、チゾキサニドまたはチゾキサニドグルクロニドとして、尿および胆汁に排出される。血漿中のチゾキサニドの半減期は、おおよそ1.5時間でしかない。チゾキサニドは、下記化学構造:
【化2】

を有する。
【0013】
RM−4848は、チゾキサニドと同様の構造を有し、ニトロ基について置換されたクロロ基を含む、置換されたチアゾリドであるため、化合物N−(5−クロロチアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンズアミドをもたらす。ニタゾキサニド(アリニア(登録商標)、NTZ)およびチゾキサニド(TIZ)は、寄生虫、嫌気性細菌およびウイルスに対する活性を有するチアゾリド化合物である。NTZは、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)およびランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)により引き起こされる下痢の処置用に、米国で承認されている。NTZおよびTIZも、インフルエンザAおよびC型肝炎ウイルスを含むRNAウイルスおよびDNAウイルスの複製を阻害する。臨床試験では、NTZは、ロタウイルス胃腸炎、ノロウイルス胃腸炎および慢性C型肝炎の処置に有効であることが示され、インフルエンザの処置についての後期臨床開発中である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、ウイルス性疾患、ガンおよび細胞内原虫または細菌の感染により引き起こされる疾患の予防および/または処置を含む、それを必要とする被験体を免疫調節するためのチアゾリドを含む医薬組成物の使用を提供する。特定の実施形態では、本発明は、治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含む医薬組成物を、被験体に投与する工程を含む、それを必要とする被験体における免疫応答を刺激する方法を提供する。本発明の許容され得るチアゾリド化合物としては、それらの内容が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第7,645,783号、同第7,550,493号、同第7,285,567号、同第6,117,894号、同第6,020,353号、同第5,968,961号、同第5,965,590号、同第5,935,591号および同第5,886,013号明細書に開示のものがあげられる。好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、ニタゾキサニドである。別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、チゾキサニドである。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、RM−4848またはそのエステルプロドラッグであるRM−5038である。本発明の好ましい態様では、前記被験体は、ウイルス感染を患う。本発明の別の好ましい態様では、前記被験体は、ウイルス感染を発症する危険性がある。本発明の一態様では、前記ウイルス感染は、インフルエンザである。前記インフルエンザは、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7から選択されるウイルスにより引き起こされ得る。本発明の別の態様では、前記ウイルス感染は、B型肝炎である。好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。他の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビルもしくはペラミビル、または免疫刺激剤、例えば、イミキモドもしくはレシキモド、またはアダマンチン類似体、または組換えシアリダーゼ融合タンパク質、または抗B型肝炎剤との組み合わせで投与される。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンとの組み合わせで投与される。
【0015】
本発明の別の好ましい態様では、前記被験体は、ガンを患っている。本発明の異なる好ましい態様では、前記被験体は、ガンを発症する危険性がある。一実施形態では、前記ガンは、白血病である。好ましくは、前記白血病は、ヘアリー細胞白血病または慢性骨髄性白血病である。本発明の異なる態様では、前記ガンは、メラノーマである。本発明のさらに別の態様では、前記ガンは、非ホジキンリンパ腫である。本発明のさらなる態様では、前記ガンは、腎細胞ガンである。好ましい一実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンまたは免疫刺激剤または抗ガン剤との組み合わせで投与される。前記抗ガン剤としては、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の別の好ましい態様では、前記被験体は、細胞内原虫感染を患っている。本発明の異なる好ましい態様では、前記被験体は、細胞内原虫感染を発症する危険性がある。一実施形態では、前記細胞内原虫感染は、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種である。本発明の異なる態様では、前記細胞内原虫感染は、リーシュマニア(Leishmania)種である。本発明のさらに別の態様では、前記細胞内原虫感染は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)である。本発明のさらなる態様では、前記細胞内原虫感染は、トリパノソーマ・クルージ(Tripanosoma cruzii)である。好ましい一実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンまたは免疫刺激剤または抗原虫薬との組み合わせで投与される。前記抗原虫薬としては、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミン(meglumine antimoniate)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の別の好ましい態様では、前記被験体は、細胞内細菌感染を患っている。本発明の異なる好ましい態様では、前記被験体は、細胞内細菌感染を発症する危険性がある。一実施形態では、前記細胞内細菌感染は、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)である。
【0019】
特定の一実施形態では、本発明は、治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含む医薬組成物を、被験体に投与する工程を含む、それを必要とする被験体におけるウイルス感染の処置または予防をする方法を提供する。好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、ニタゾキサニドである。別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、チゾキサニドである。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、RM−4848またはその医薬的に許容され得るプロドラッグである。本発明の一態様では、前記ウイルス感染は、インフルエンザである。前記インフルエンザは、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7から選択されるウイルスにより引き起こされ得る。本発明の別の態様では、前記ウイルス感染は、B型肝炎である。本発明の別の態様では、前記ウイルス感染は、ロタウイルスまたはノロウイルスにより引き起こされる下痢または胃炎である。好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。他の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビルもしくはペラミビル、または免疫刺激剤、例えば、イミキモドもしくはレシキモド、またはアダマンチン類似体、または組換えシアリダーゼ融合タンパク質、または抗B型肝炎剤との組み合わせで投与される。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンとの組み合わせで投与される。
【0020】
別の特定の実施形態では、本発明は、治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含む医薬組成物を、被験体に投与する工程を含む、それを必要とする被験体におけるガンの処置または予防をする方法を提供する。好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、ニタゾキサニドである。別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、チゾキサニドである。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、RM−4848である。本発明の具体的な態様では、前記ガンは、白血病である。好ましくは、前記白血病は、ヘアリー細胞白血病または慢性骨髄性白血病である。本発明の異なる態様では、前記ガンは、メラノーマである。本発明のさらに別の態様では、前記ガンは、非ホジキンリンパ腫である。本発明のさらなる態様では、前記ガンは、腎細胞ガンである。好ましい一実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンまたは免疫刺激剤または抗ガン剤との組み合わせで投与される。前記抗ガン剤としては、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】
さらに別の特定の実施形態では、本発明は、治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含む医薬組成物を、被験体に投与する工程を含む、それを必要とする被験体における細胞内原虫感染の処置または予防をする方法を提供する。好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、ニタゾキサニドである。別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、チゾキサニドである。さらに別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド剤は、RM−4848である。本発明の具体的な態様では、前記細胞内原虫感染は、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種である。本発明の異なる態様では、前記ガンは、メラノーマである。本発明の異なる態様では、前記細胞内原虫感染は、リーシュマニア(Leishmania)種である。本発明のさらに別の態様では、前記細胞内原虫感染は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)である。本発明のさらなる態様では、前記細胞内原虫感染は、トリパノソーマ・クルージ(Tripanosoma cruzii)である。好ましい一実施形態では、前記チアゾリド化合物は、単独で投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、前記チアゾリド化合物は、ワクチンまたは免疫刺激剤または抗原虫薬との組み合わせで投与される。前記抗原虫薬としては、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
免疫不全の被験体では、ウイルス性疾患、ガンまたは、細胞内原虫もしくは細菌の感染を効果的に処置または予防するのに必要な免疫応答は、完全に機能する免疫系(fully competent immune system)を有する被験体をうまく処置するのに典型的に使用される投与レジメン(dosing regimen)を使用してチアゾリドによっては生じない場合がある。極度の免疫不全の被験体は、チアゾリドによる処置の良好な候補ではない場合がある。中程度の免疫不全の被験体は、完全に機能する免疫系を有する被験体より、高い投与量のチアゾリド処置、高頻度の投与または長期間の投与が必要になる場合がある。免疫不全を起こしていないHIV感染の被験体は、チアゾリドにより効果的に処置され得る。一方、HIV感染に関連する免疫不全の被験体は、チアゾリド治療の前または同時に、HIVウイルス力価を低下させ、部分的に免疫機能を回復させるために、抗レトロウイルス剤により処置する必要がある場合がある。したがって、免疫応答を刺激するための前記チアゾリドの使用は、免疫状態に基づいて、患者ごとに調整され得る。
【0023】
前述の一般的な記載、ならびに、下記の図面の簡単な説明および詳細な説明は、例示および解説であり、特許請求の範囲の発明のさらなる説明を提供することを意図している。他の目的、利点および新規な特徴は、本発明の下記の詳細な説明から、当業者に容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】非刺激およびインフルエンザ刺激(Flu-stimulated)の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、CD+14単球を表すグラフである。平均値(Mean value)、S.E.およびp値が示される。
図1B】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、CD+14単球を表すグラフである。平均値、S.E.およびp値が示される。
図1C】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、CD+14単球を表すグラフである。平均値、S.E.およびp値が示される。
図2A】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるTLR経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図2B】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるTLR経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図2C】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるTLR経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図3A】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるIFN経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図3B】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるIFN経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図3C】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下において、非刺激およびインフルエンザ刺激のPBMCにおけるIFN経路のチゾキサニド調節を表すグラフである。平均値が示される。
図4A】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、Tヘルパー機能IFNgおよびIL2分泌CD4+T細胞を表すグラフである。平均値、S.E.およびp値が示される。
図4B】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、Tヘルパー機能IFNgおよびIL2分泌CD4+T細胞を表すグラフである。平均値、S.E.およびp値が示される。
図5A】細胞傷害性T細胞の機能を表すグラフである。非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、パーフォリン、グランザイムおよびFas発現CD8+T細胞。平均値、S.E.およびp値が示される。
図5B】細胞傷害性T細胞の機能を表すグラフである。非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、パーフォリン、グランザイムおよびFas発現CD8+T細胞。平均値、S.E.およびp値が示される。
図5C】細胞傷害性T細胞の機能を表すグラフである。非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量におけるチゾキサニドの存在下における、パーフォリン、グランザイムおよびFas発現CD8+T細胞。平均値、S.E.およびp値が示される。
図6A図6A、6Bおよび6Cは、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、TLR3発現CD14+細胞の割合を表すグラフである(図6A)。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図6B図6A、6Bおよび6Cは、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、TLR7発現CD14+細胞の割合を表すグラフである(図6B)。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図6C図6A、6Bおよび6Cは、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、TRL8発現CD14+細胞の割合を表すグラフである(図6C)。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図7A】非刺激条件での、3種類の異なる用量(1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml)のRM4848による刺激後の、トール様受容体シグナル伝達経路mRNA発現を表すグラフである。前記トール様受容体シグナル伝達経路に関与する84個の遺伝子発現が、リアルタイム定量RT−PCRにより評価され、5つのハウスキーピング遺伝子と比較して算出され、および、非刺激のサンプルからの倍数−発現量変化として示される。チゾキサニド刺激後に異なる発現レベルを示した標的のみが、図示される。
図7B】インフルエンザ刺激の条件での、3種類の異なる用量(1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml)のRM4848による刺激後の、トール様受容体シグナル伝達経路mRNA発現を表すグラフである。前記トール様受容体シグナル伝達経路に関与する84個の遺伝子発現が、リアルタイム定量RT−PCRにより評価され、5つのハウスキーピング遺伝子と比較して算出され、および、非刺激のサンプルからの倍数−発現量変化として示される。チゾキサニド刺激後に異なる発現レベルを示した標的のみが、図示される。
図8A】非刺激条件での、3種類の異なる用量(1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml)のRM4848による刺激後の、I型インターフェロンシグナル伝達経路mRNA発現を表すグラフである。I型インターフェロンシグナル伝達経路に関与する84個の遺伝子発現が、リアルタイム定量RT−PCRにより評価され、5つのハウスキーピング遺伝子と比較して算出され、および、非刺激のサンプルからの倍数−発現量変化として示される。チゾキサニド刺激後に異なる発現レベルを示した標的のみが、図示される。
図8B】インフルエンザ刺激の条件での、3種類の異なる用量(1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml)のRM4848による刺激後の、I型インターフェロンシグナル伝達経路mRNA発現を表すグラフである。I型インターフェロンシグナル伝達経路に関与する84個の遺伝子発現が、リアルタイム定量RT−PCRにより評価され、5つのハウスキーピング遺伝子と比較して算出され、および、非刺激のサンプルからの倍数−発現量変化として示される。チゾキサニド刺激後に異なる発現レベルを示した標的のみが、図示される。
図9A】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、IFNγ分泌CD4+細胞の割合を表すグラフである。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図9B】非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、IL2分泌CD4+細胞の割合を表すグラフである。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図10A】本発明の実施形態を表すグラフであり、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、グランザイム発現CD8+T細胞の割合を表すグラフである。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図10B】本発明の実施形態を表すグラフであり、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、パーフォリン発現CD8+T細胞の割合を表すグラフである。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図10C】本発明の実施形態を表すグラフであり、非刺激およびインフルエンザ刺激の条件での、Fas発現CD8+T細胞の割合を表すグラフである。RM4848の不存在下、または、5種類の異なる用量(0.5μg/ml;1.0μg/ml;10μg/ml;20μg/ml;40μg/ml)のRM4848の存在下で得られたデータが示される。平均値、S.E.およびp値が示される。
図11図11は、本発明の実施形態を表すグラフを示し、チゾキサニドの不存在下/種々の用量(1.0μg/ml;10μg/ml)のチゾキサニドの存在下における、HIV−1複製の阻害:HIVに曝されたPBMCにおけるp24レベル(パネルA)および、HIV複製阻害の割合(パネルB)が、感染後5日で評価される。平均値、S.E.およびp値が示される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい実施形態の詳細な説明
特に断らない限り、「a」または「an」は、「1またはそれ以上」を意味する。
【0026】
本発明の組成物および方法は、それを必要とする被験体における免疫応答を刺激するためのものであり、これにより、感染および/またはガンの症状を予防および処置をする。本発明の目的は、先天性および後天性の両方の免疫系により媒介される、被験体における強力な免疫応答を刺激することにより、それを必要とする被験体におけるウイルス感染、ガンの症状および/または細胞内原虫感染により引き起こされる疾患を予防および処置するための、効果的で、非侵襲的な方法を提供することである。
【0027】
感染に対する即時の短期間の防御を付与する前記先天性免疫系は、食細胞および特に炎症部位での好中球の動員を提供し、次に、TNF、HMGB1およびIL−1を含むサイトカインの同時産生とともに、白血球およびリンパ球の遊走を刺激する。先天性の白血球としては、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好酸球、好塩基球ならびに、マクロファージ、好中球および樹状細胞を含む食細胞があげられる。トール様受容体(TLR)は、細菌感染を検出し、抗細菌宿主防御反応を誘因する時の、前記先天性免疫系の主要成分である。TLRは、複数の樹状細胞の機能を調節し、I型インターフェロン(I IFN)の産生を含む、前記後天性免疫系応答をもたらすカスケードを誘因する。TLR3、7、8および9は、ウイルス検出に関与し、病原体核酸を認識する。TLR7、8および9は、細胞内リソソーム内区画に局在する。
【0028】
病原体が前記先天性免疫系を免れる場合に脊椎動物において誘因される後天性または適応免疫系(acquired or adaptive immune system)は、抗原提示中の特異的な「非自己」抗原の認識、および、異物の病原体または病原体感染細胞を除去するのを目的とする免疫応答を担当する。前記後天性免疫系では、B細胞は、体液性免疫応答に関与し、T細胞は、細胞媒介免疫応答を担当する。前記樹状細胞による抗原提示は、T細胞を刺激して、「細胞傷害性」CD8+細胞または「ヘルパー」CD4+細胞のいずれかとなる。
【0029】
リンパ節では、前記樹状細胞は、前記リンパ節を通過するT細胞により認識される、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC、ヒトでは、ヒト白血球抗原(LHA)としても公知)に結合することにより、その表面に「非自己」抗原を提示する。外因性抗原は、通常、CD4+ヘルパーT細胞を活性化するMHCクラスII分子上に提示される。宿主細胞内で複製するウイルスにより産生される内因性抗原は、典型的には、MHCクラスI分子上に提示され、CD8+細胞傷害性T細胞を活性化する。前記後天性免疫系としては、TC、キラーT細胞または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)として公知でもある、細胞傷害性T細胞があげられる。前記細胞傷害性T細胞におけるT細胞受容体(TCR)が、ペプチド結合性MHCクラスI分子と一旦相互作用すると、前記CTLは、活性型となり、標的細胞の形質膜に孔を形成する、細胞毒、例えば、パーフォリンおよびグラニュリシンを放出するエフェクターCTLとなる。CTLの活性化は、CD4+リンパ球またはヘルパーT細胞により調節される。ヘルパーT細胞は、クラスIIMHC分子に結合した抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現する。エフェクターCD4+Tヘルパー細胞は、Th1またはTh2型応答を誘因することにより、感染に対して応答し得る。前記Th1応答は、細胞媒介性免疫をもたらし、抗体を産生するために、マクロファージを活性化し、B細胞を誘導するインターフェロン−ガンマの産生により特徴付けられる。前記Th2応答は、体液性免疫をもたらし、B細胞の結果として生じる活性化によるインターロイキン4の放出、および中和抗体の産生により特徴付けられる。一般的に、Th1応答は、細胞内病原体、例えば、宿主細胞内のウイルスおよび細菌に対してより効果的である。一方、Th2応答は、細胞外細菌、寄生虫および毒素に対してより効果的である。
【0030】
本発明者らは、チアゾリド剤、具体的には、ニタゾキサニド、チゾキサニドおよびRM−4848またはそれらのプロドラッグの抗ウイルス作用が、前記先天性および前記後天性の免疫系両方を活性化することにより、強力な免疫応答を刺激可能な、これらの薬剤の免疫調節性活性に由来することを見出した。具体的には、本願発明者らは、ニタゾキサニド、チゾキサニドおよびRM−4848が、Tヘルパー細胞およびCTLの活性、TLR7およびTLR8の発現、および、I型インターフェロン応答を、1)IFNγおよびIL2分泌CD4+T細胞、2)CTLの脱顆粒、3)Fas発現CD8+T細胞、4)TLR8発現単球、5)IFNαおよびINFβ mRNA発現、6)I型IFN誘導遺伝子(MXA、PRKCZ、ADAR、CXCL10、IRF1、PRKRA)に特異的なmRNA、ならびに、7)MHCクラスI提示に関与する遺伝子(HLA−A、HLA−B、TAP1)に特異的なmRNAの増加を誘導することにより、刺激することを見出した。したがって、これらのチアゾリド剤は、それを必要とする被験体、具体的には、強力な免疫応答が必要な疾患、例えば、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染によって引き起こされる疾患を発症するリスクがある、または、それらを患っている被験体における免疫応答を刺激するのに使用されてもよい。さらに、本発明の方法は、前記疾患の症状を緩和に、または、被験体における予防手段として使用され得る。
【0031】
「被験体」および「患者」の用語は、互換的に使用され、ウイルス感染またはガンの症状を有するか、または、これらを発症するリスクを有する、ヒトを含む任意の哺乳類をいうことが意味される。前記被験体または患者は、典型的には、ヒトであるが、他の適切な被験体または患者としては、実験動物、例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット、家畜および飼育動物またはペットがあげられるが、これらに限定されない。非ヒト霊長類も含まれる。
【0032】
本明細書で使用する時、「処置する(治療する(treating))」および「処置(治療(treatment))」の用語は、症状の重症度および/もしくは頻度の低下、症状および/もしくは根本原因の除去、症状発生および/もしくはその根本原因の予防(例えば、予防的治療)、損傷(damage)の改善もしくは矯正(remediation)、または、感染強度の低下を意味する。
【0033】
本明細書で使用する時、「治療的に有効な量」は、臨床的に顕著な細胞性応答を引き起こすのに有効な量である。
【0034】
「医薬的に許容され得る」は、生物学的にまたは他に望ましい材料を意味する。すなわち、前記材料は、なんらの望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、または、前記材料が含まれる組成物の他の成分のいずれにも有害に相互作用することなく、医薬組成物に包含されてもよいし、患者に投与されてもよい。「医薬的に許容され得る」の用語が、医薬的なキャリアまたは賦形剤を意味するのに使用される場合、前記キャリアまたは賦形剤は、毒物学試験および製造試験の要求基準に適合すること、または、前記キャリアまたは賦形剤が、米国医薬品局により作成された不活性成分指針(Inactive Ingredient Guide)に含まれることを意味する。
【0035】
本発明の方法は、チアゾリド化合物を含む製剤の投与を考慮する。本発明の許容され得るチアゾリド化合物は、その内容が参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第7,645,783号、同第7,550,493号、同第7,285,567号、同第6,117,894号、同第6,020,353号、同第5,968,961号、同第5,965,590号、同第5,935,591号、同第5,886,013号明細書に開示されたものである。好ましいチアゾリド化合物は、ニタゾキサニド、チゾキサニドもしくはRM−4848または、そのエステルプロドラッグであるRM−5038である。RM−5038に対する他のプロドラッグ類似体またはホモログも想定され、本発明の実施形態であると理解される。本明細書で使用する時、「チアゾリド」の用語は、チアゾリド、チアゾリド類似体または置換されたチアゾリドを意味する。本明細書で使用する時、「ニタゾキサニド」の用語は、ニタゾキサニド(2−(アセトリルオキシ)−N−(5−ニトロ−2−チアゾリル)ベンズアミド)および、ニタゾキサニド類似体、例えば、米国特許第7,285,567号明細書または米国特許出願公開第2007/0167504号明細書に開示の化合物の1つを意味する。本明細書で使用する時、「チゾキサニド」の用語は、チゾキサニド、チゾキサニド類似体または置換されたチゾキサニドを意味する。ニタゾキサニド、チゾキサニド、RM−4848または、前記チアゾリド類似体のいずれかは、前記化合物自体の形態で投与され得、および/または、適切である場合は、塩、多形体、エステル、アミド、プロドラッグ、誘導体等の形態で投与され得、但し、前記塩、多形体、エステル、アミド、プロドラッグまたは誘導体は、薬理学的に適切である。これらの活性薬剤のこのような塩、エステル、アミド、プロドラッグおよび他の誘導体は、合成有機化学の当業者に公知であり、例えば、J. MarchによるAdvanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. (New York: Wiley-Interscience, 1992)に記載の標準的な手法を使用して調製され得る。本発明の組成物中のニタゾキサニドまたはチゾキサニドの合計量は、典型的には、前記組成物の重量で、約60%から75%である。前記組成物は、即効型、制御放出または持続放出のために配合されてもよい。前記組成物は、1またはそれ以上のさらなる医薬的に許容され得る添加剤または賦形剤を含んでもよい。これらの賦形剤は、当分野において周知で、よく理解されている、治療的に不活性な成分である。本明細書で使用する時、「不活性な成分」の用語は、薬学(pharmaceutical science)の分野において周知な、治療的に不活性な成分を意味する。前記不活性な成分は、単独で使用され得るし、または、種々の組み合わせで使用され得る。前記不活性な成分としては、例えば、希釈剤、崩壊剤、バインダー、懸濁化剤、流動促進剤、潤滑剤、充填剤、コーティング剤、溶解剤、甘味剤、着色剤、香味剤および酸化防止剤があげられる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Paを参照のこと。
【0036】
希釈剤または充填剤の例としては、デンプン、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、粉砂糖、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクチトール、マンニトール、スクロース、タルク、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウムもしくは第三リン酸カルシウム、無水第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等があげられるが、これらに限定されない。希釈剤または充填剤の量は、前記組成物全体の重量で、約2%から約15%の間の範囲であり得る。
【0037】
崩壊剤の例としては、アルギン酸、メタクリル酸DVB、架橋PVP、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、コーンを含むデンプンもしくはトウモロコシデンプン、α化デンプン等があげられるが、これらに限定されない。崩壊剤は、典型的には、前記組成物全体の重量で、約2%から約15%で存在する。
【0038】
バインダーの例としては、デンプン、例えば、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、コーンデンプン;微結晶性セルロース;セスロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、カルボキシメチルナトリウムセルロース;天然ガム、例えば、アカシア、アルギン酸、グアーガム;液状グルコース、デキストリン、ポビドン、シロップ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ−N−ビニルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ポリプロピレングリコール、トラガント等があげられるが、これらに限定されない。バインダーの量は、前記組成物全体の重量で、約0.2%から約14%である。
【0039】
流動促進剤の例としては、二酸化ケイ素、コロイド状の無水シリカ、三ケイ酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、粉末状セルロース、デンプン、タルク等があげられるが、これらに限定されない。流動促進剤の量は、前記組成物全体の重量で、約0.01%から約0.3%である。
【0040】
潤滑剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ベヘン酸グリセリン、鉱油、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、水素化植物油等があげられるが、これらに限定されない。潤滑剤の量は、前記組成物全体の重量で、約0.2%から約1.0%である。
【0041】
前記組成物は、低粘度のポリマーであるバインダーを含んでもよい。低粘度のポリマーの例としては、低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロースポリマー、例えば、商品名「Methocel(登録商標)」(例えば、Methocel E50LV(登録商標)、Methocel K100LV(登録商標)およびMethocel F50LV(登録商標))でDow Chemicalより販売されるもの、ならびに、低粘度のヒドロキシエチルセルロースポリマーがあげられるが、これらに限定されない。前記低粘度のポリマーは、典型的には、前記組成物全体の合計重量の、約10%から約20%、または、約10%から約15%、または好ましくは、約12%で存在する。または、制御放出および即効放出の部分を有するそれらの実施形態では、前記制御放出部分中の前記低粘度のポリマーは、典型的には、前記制御放出部分の重量の、約15%から約20%、好ましくは約18%で存在する。
【0042】
前記組成物は、さらに、コーティング材料を含んでもよい。前記コーティング材料は、典型的には、製剤を完全に覆う剤形(dosage form)上の外層として存在する。例えば、一部の実施形態では、前記剤形は、前記制御放出部分が、錠剤の第1層を形成し、前記即効放出部分が、前記第1層の上部に堆積されてコア錠剤を形成する第2層を形成する経口錠剤である。このような実施形態では、例えば、前記コーティング材料は、前記コア錠剤の上部に堆積された外側のコーティング層の形態であり得る。前記コーティング材料は、典型的には、前記組成物の重量で、約1%から約5%であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリエチレングリコール、ならびに、コーティング剤、乳白剤、矯味剤、充填剤、研磨剤、着色剤、粘着防止剤等を含む群から選択される1またはそれ以上の賦形剤を含んでもよい。フィルムコーティング物質の例およびこのようなコーティング物質を使用するための方法は、当業者に周知である。
【0043】
本発明の組成物は、それを必要とする被験体において免疫系を刺激するために効果的に使用され得、それによって、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫もしくは細菌の感染により引き起こされる疾患を処置または予防する。前記ウイルス感染は、インフルエンザ、具体的には、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7から選択されるウイルスにより引き起こされるインフルエンザ、またはB型肝炎、または、ロタウイルスもしくはノロウイルスにより引き起こされる下痢または胃炎であり得る。前記ガンは、ヘアリー細胞白血病および慢性骨髄性白血病を含む白血病、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫または腎細胞ガンであり得る。前記細胞内原虫感染により引き起こされる疾患は、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、リーシュマニア(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ・クルージ(Tripanosoma cruzii)であり得る。前記細胞内細菌感染により引き起こされる疾患は、ヒト型結核菌であり得る。前記組成物は、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染により引き起こされる疾患を効果的に処置または予防するのに適切な任意の期間、投与され得る。任意の適切な投与量およびレジメンが、前記組成物について使用され得る。投与は、典型的には、約3日から約104週の期間にわたって行われ得るが、104週より長い期間にわたって行われてもよく、無期限に行われてさえもよい。適切なレジメンは、医師により決定され得る。
【0044】
前記チアゾリド化合物は、単独で投与されてもよいし、または、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えば、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビルもしくはペラミビル、免疫刺激剤、例えば、イミキモドもしくはレシキモド、アダマンチン類似体および組換えシアリダーゼ融合タンパク質を含む、1またはそれ以上のさらなる活性剤と組み合わせて投与されてもよい。前記チアゾリド化合物は、単独で投与されてもよいし、または、抗原虫薬含む1またはそれ以上のさらなる活性剤と組み合わせて投与されてもよい。前記抗原虫薬としては、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンを挙げることができるが、これらに限定されない。前記チアゾリド化合物は、予防的に、ワクチンとの組み合わせ、または、抗ガン剤との組み合わせで投与されてもよい。前記抗ガン剤としては、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αを挙げることができるが、これらに限定されない。前記組成物および前記さらなる活性剤は(例えば、インターフェロン)は、同時に投与されてもよいし、または、同時に別々に投与されてもよいし、または、(剤形、放出特性等が変化する別々の組成物を含む)異なる組成物で投与されてもよい。上記説明および下記実施例は、本発明の範囲を説明し、制限しないことを意図するものと理解される。本発明の範囲内での他の態様、利点および修飾は、本発明が属する技術分野の当業者に明らかであろう。
【0045】
免疫不全の被験体では、ウイルス性疾患、ガンまたは細胞内原虫もしくは細菌の感染を効果的に処置または予防するのに必要な免疫応答は、完全に機能する免疫系を有する被験体をうまく処置するのに典型的に使用される投与レジメンを使用してチアゾリドによっては生じない場合がある。極度の免疫不全の被験体は、チアゾリドによる処置の良好な候補ではない場合がある。中程度の免疫不全の被験体は、完全に機能する免疫系を有する被験体より、高い投与量のチアゾリド処置、高頻度の投与または長期間の投与が必要になる場合がある。免疫不全を起こしていないHIV感染の被験体は、チアゾリドにより効果的に処置される場合がある。一方、HIV感染に関連する免疫不全の被験体は、チアゾリド治療の前または同時に、HIVウイルス力価を低下させ、部分的に免疫機能を回復させるために、抗レトロウイルス剤により処置する必要がある場合がある。したがって、免疫応答を刺激するための前記チアゾリドの使用は、免疫状態に基づいて、患者ごとに調整され得る。
【実施例】
【0046】
実施例1:細胞調製
単核血球は、病原体感染に対する応答において種々のサイトカインを産生するので、免疫応答系において重要な役割を有する。したがって、免疫調節は、10名の健康なドナーから得られ、Ficoll−Paqueでの遠心により単離された、末梢血単核細胞(PMBC)において、チゾキサニド(TIZ)の影響を受ける。前記PMBCを、非刺激およびインフルエンザ刺激の両条件での、TIZの不存在下、または、3種類の用量(0.5、1.0および10mg/ml)のTIZの存在下で、10%ヒト血清を添加したRPMI−1640培地で培養した。
【0047】
実施例2:免疫学的分析
前記非刺激および刺激されたPMBCを、TヘルパーおよびCTL活性、ならびに、TLR7およびTLR8発現、ならびに、I型IFN応答について、チゾキサニドの不存在下、または、種々の用量のチゾキサニドの存在下で分析した。前記免疫学的分析は、下記の通りとした。
【0048】
Tヘルパー機能を、IFNγおよびIL−2分泌CD4+T細胞の量を測定することにより検出した。CTL活性を、パーフォリン、グランザイムおよびFas発現CD8+T細胞の量を測定することにより検出した。
【0049】
TLR発現を、TLR8、TLR7およびTRL3発現CD14+単球を測定することにより検出した。TLR経路のチゾキサニド調節を、ヒトI型インターフェロン(IFN)のPCRアレイ分析により検出した。
【0050】
具体的に、TIZ免疫調節作用を、非刺激およびインフルエンザ刺激された(flu-stimulated)PMBCにおいて、下記の分析により決定した。
・ヒトI型インターフェロン(IFN)およびTLR経路(PCRアレイ):
インターフェロン:インターフェロン−アルファおよびインターフェロン−ベータの受容体についてのリガンド:IFNA1、IFNA4、IFNB1、IFNK、IFNW1。 インターフェロン−ガンマ受容体についてのリガンド:IFNG。 ヘマトポエチンおよびインターフェロン−クラス(D200−ドメイン)サイトカイン受容体についてのリガンド:IFNA14、IFNA2、IFNA21、IFNA5、IFNA6、IFNA8、IFNE1、IL15。 インターフェロンに関連する他の遺伝子:IFRD1、IFRD2、IL28A、IL29、IL6。
インターフェロン受容体:インターフェロン−アルファおよびインターフェロン−ベータの受容体:IFNAR1、IFNAR2。 インターフェロン−ガンマ受容体:IFNGR1、IFNGR2。 他のヘマトポエチンおよびインターフェロン−クラス(D200−ドメイン)サイトカイン受容体:CNTFR、CRLF2、CSF2RA、CSF3R、EBI3、F3、IL20RB(FNDC6)、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12B、IL13RA1、IL20RA、IL21R、IL22RA2、IL28RA、IL2RB、IL2RG、IL31RA、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL9R、LEPR、MPL、TTN。
インターフェロン制御因子:転写制御因子:IRF1、IRF2、IRF3、IRF4、IRF5、IRF6、IRF7、IRF8。他のインターフェロン制御タンパク質:IRF2BP1、IRF2BP2。インターフェロン誘導タンパク質:ウイルスに対する応答に関与する遺伝子:ISG15(G1P2)、IFI16、IFI35、IFI44、IFIH1、MX1、OAS1。転写制御因子:IFI16、SP110。他のインターフェロン誘導遺伝子:ADAR、CXCL10、IFI6(G1P3)、IFI27、IFI30、IFI44L、IFIT1、IFIT1L、IFIT2、IFIT3、IFITM1、IFITM2、IRGM、PSME1、PYHIN1。
・トール様受容体:LY64、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10。
【0051】
アダプター&TLR相互作用タンパク質:BTK、CD14、HMGB1、HRAS、HSPA1A、HSPD1、LY86(MD−1)、LY96(MD−2)、MAPK8IP3、MYD88、PELI1、RIPK2、SARM1、TICAM2、TIRAP、TOLLIP、TRIF。
【0052】
エフェクター:CASP8、EIF2AK2、FADD、IRAK1、IRAK2、MAP3K7(TAK1)、MAP3K7IP1(TAB1)、NR2C2、PPARA、PRKRA、SITPEC、TRAF6、UBE2N、UBE2V1。
【0053】
下流経路および標的遺伝子:NFκB経路:CCL2、CHUK、CSF2(GMCSF)、CSF3(GCSF)、IFNA1、IFNB1、IFNG、IKBKB、IL1A、IL1B、IL2、IL6、IL8、IL10、IL12A、LTA、MAP3K1、MAP4K4、NFKB1、NFKB2、NFKBIA、NFKBIL1、NFRKB、REL、RELA、TNF、TNFRSF1A。
【0054】
JNK/p38経路:ELK1、FOS(c−Fos)、JUN、MAP2K3、MAP2K4(JNKK1)、MAP3K1(MEKK)、MAPK8(JNK1)。
【0055】
NF/IL6経路:CLECSF9、PTGS2。
【0056】
IRF経路:CXCL10、IFNA1、IFNB1、IFNG、IRF1、IRF3、TBK1。
【0057】
適応免疫の制御:CD80、CD86、RIPK2、TRAF6。
【0058】
実施例3:チゾキサニドの免疫調節作用
TIZは、1)IFNγおよびIL2分泌CD4+T細胞(図4Aおよび4B);2)CTLの脱顆粒(図5B);3)Fas発現CD8+T細胞(図5C);4)単球上でのTLR3、TLR8およびTLR7発現(図1A−C);5)IFNαおよびINFβ mRNA発現(図3A);6)I型IFN誘導遺伝子(MXA、PRKCZ、ADAR、CXCL10、IRF1、PRKRA)に特異的なmRNA(図3B);ならびに、7)MHCクラスI提示に関与する遺伝子(HLA−A、HLA−B、TAP1)に特異的なmRNA(図3C)の増加を誘導する、強力な免疫調節作用を示した。
【0059】
これらの結果は、TIZが、顕著な免疫調節活性を有し、前記先天性および前記後天性の免疫系の両方により媒介される強力な免疫応答を刺激することを、明確に説明している。
【0060】
実施例4:単球上でのTLR発現
TLR3、TLR7およびTLR8の発現を、非刺激およびインフルエンザ刺激の両条件での、CD14+細胞(単球)上で評価した。RM−4848は、インフルエンザ抗原刺激によるコントロールと比較して、TLR7発現CD14+細胞の割合の増加を誘導した(用量1.0μg/ml:p=0.001;用量10μg/ml:p=0.023)。一方、非刺激条件では、有意な差異が観察されなかった。非刺激およびインフルエンザ刺激の両条件において、試験した5通り全ての用量について、TLR3およびTLR8発現CD14+細胞への効果はなかった(図1A、1B&1C)。
【0061】
実施例5:TLR経路およびRM−4848
TLR発現におけるRM−4848により発揮される効果が、TLR関連トランスダクション経路の他と異なる(differential)調節に依存するのかどうかを決定するために、TLR経路の活性化に関与する84個の遺伝子の発現についてのスクリーニングをするリアルタイムPCRアレイを使用した。RM−4848で3時間インキュベートした後の、非刺激のPBMCにおいて得られたデータでは、図2Aに示されるように、84個の遺伝子の内の3個のみが、用量20μg/mlで、おおよそ、IL1AおよびIL1Bが5倍増加、ならびに、IL6が6倍増加で上方制御される。
【0062】
RM−4848で3時間インキュベートした後の、インフルエンザ刺激のPBMCにおいて得られたデータは、図2Bに示されるように、84個の遺伝子の内の7個のみが上方制御されたことを示す。用量1μg/mlでは、おおよそ、INFA1およびINFB1が6倍増加、ならびに、TLR3およびTLR5が7倍増加、TLR9について6倍増加であったが、一方、用量20μg/mlでは、TLR−7およびTLR8は、試験した全ての用量について、2倍ベースラインをわずかに上回っただけであった。
【0063】
実施例6:IFN経路およびRM−4848
RM−4848でインキュベートされたPBMCにおけるI型インターフェロン発現レベルの増加がインターフェロン誘導遺伝子の発現に影響を与え得たのかどうかを決定するために、インターフェロンアルファおよびベータの応答に関与する84個の遺伝子の発現についてのスクリーニングをするリアルタイムPCRアレイを使用した。
【0064】
RM−4848でインキュベートされた非刺激のPBMCにおいて行われた分析の結果は、試験した84個の遺伝子について1つも上方制御されず、対照的に、16個の遺伝子が下方制御されたことを示した。具体的には、高用量の20μg/mlで、INFA1について20倍低下、INFA2およびINFB1について15倍低下、ならびに、INFA4において10倍低下が報告された。この下方制御作用は、2種類のより低用量である1および10μg/mlでは見られなかった(図3A)。
【0065】
RM−4848でインキュベートされた、インフルエンザ刺激のPBMCにおいて行われた分析の結果は、試験した84個の遺伝子の内の12個が上方制御されたことを示した。RM−4848で3時間インキュベートした後の、インフルエンザ刺激のPBMCにおいて得られたデータは、低用量の1μg/mlで、INFA1およびINFA4について10倍増加、INFB1について8倍増加、ならびに、IFNA2について6倍増加を示す。前記3通りの用量レベルは、用量10μg/mlでより顕著な作用を有する、ISG、IFI27およびIFIT1を、中程度に上方制御した(4倍より大きい)(図3B)。
【0066】
実施例7:Tヘルパー機能およびRM−4848
CD4+T細胞によるIFN−γおよびIL−2産生を、基礎条件とインフルエンザ特異的抗原での刺激後の両方で評価した。低用量である0.5μg/mlのRM−4848により、非刺激の細胞(p=0.035)および刺激条件(p=0.050)において、IFN−γ産生の統計学的に有意な上方制御が誘導された(図4A)。同様の傾向は、非刺激条件(用量0.5μg/ml:p=0.047)およびインフルエンザ刺激条件(用量0.5μg/ml:p=0.037)の両方での、IL2分泌CD4+T細胞で観察された(図4B)。
【0067】
実施例8:CTL活性およびRM−4848
グランザイム、パーフォリンおよびFas発現CD8+T細胞を、非刺激条件およびインフルエンザ抗原刺激により分析した。試験した前記3通りのより高い用量レベルで、RM−4848は、CTLの脱顆粒を誘導し、パーフォリン発現の低下により評価した(図5B)。Fas発現CD8+T細胞の割合も、より高い用量である20および40μg/ml RM−4848の存在下での、非刺激(p=0.006)および刺激条件(p=0.003)の両方で、統計学的に有意に増加した(図5C)。
【0068】
実施例4〜8から、1型インターフェロン(IFN−α、IFN−β)産生の選択的な増加の結果として、インターフェロン刺激性遺伝子経路(IsG)の次の活性化による、TLR、特に直接的にTLR7の上方制御および活性化があることが明らかである。より具体的には、I型インターフェロン誘導遺伝子(CD70、COL16A1、HSPA1L、IFI27、IFIT1、NRG1およびSHB)が、上方制御される。これらの遺伝子は全て、ウイルス複製の制御に関与する。RM4848は、CD4+およびCD8+のTリンパ球を同時に活性化する。具体的には、CD4+Tリンパ球では、INF−γおよびIL−2産生の上方制御があり、一方、CD8+T細胞は、細胞媒介免疫の活性化と一致して脱顆粒が誘導される。
【0069】
これらの結果は、ウイルス感染と戦うための免疫系を刺激する、RM4848の幅広い範囲の抗ウイルス活性を支持する。多くの病原体がそれらの検出を妨げるメカニズムを発達させていたとしても、知覚できる疾患(perceptible disease)を引き起こす前に、おそらく大部分の感染の除去を担当する先天性免疫応答を、前記薬剤が刺激するだけでないことが、特に顕著である。臨床的観点から、RM4848および、同様の免疫刺激特性を有する他の適したチアゾリドは、疾患を予防するのに、または、疾患の広がりを制限するのに使用されるであろうと、提案されるであろう。適応免疫に対するRM4848の活性は、先天性免疫に対するその効果をさらに生じるために顕著であるだけでなく、ウイルス性疾患が治癒することによるメカニズムであることによっても顕著である。適応免疫は、リンパ球に基づいており、前記リンパ球は、単一の型の受容体を有するが、抗原を認識する変異形について無限のレパートリー(その汎用性を反映する操作的に定義された用語)を本質的に有する。いくつかのリンパ球(ヘルパーまたはキラー)の産生に加えて、それらは、B細胞による抗体の産生に至る。適応免疫が、特定の感染の始まりに数日遅れた場合、病原体に対して毒性の粒子の産生および免疫記憶の進展における作用は、必要性も相互関係も両方ある、先天性免疫で観察される、最も強力な抗ウイルスメカニズムである。
【0070】
前述のものは、特定の好ましい実施形態に言及しているが、本発明は、そのように限定されないことが理解されるであろう。当業者であれば、開示された実施形態には、種々の改変がなされてもよく、このような改変が本発明の範囲内であることが意図されることを気付くであろう。

本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
それを必要とする被験体において免疫応答を刺激する方法であって、
治療的に有効な量のチアゾリド化合物を含む医薬組成物を前記被験体に投与する工程を含み、前記チアゾリド化合物が、ニタゾキサニドもしくはチゾキサニドもしくはRM−4848または、それらの塩、多形体、エステル、アミド、プロドラッグもしくは誘導体である、前記方法。
[2]
前記被験体が、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染を患っているか、あるいは、ウイルス感染、ガンまたは細胞内原虫感染を発症する危険性がある、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、上記[1]に記載の方法。
[4]
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、上記[1]に記載の方法。
[5]
前記免疫刺激剤が、イミキモドまたはレシキモドである、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記チアゾリド化合物が、ラニナミビル、オセルタミビル、ザナミビルおよびペラミビルからなる群から選択されるノイラミニダーゼ阻害剤との組み合わせで投与される、上記[1]に記載の方法。
[7]
前記チアゾリド化合物が、アダマンチン類似体との組み合わせで投与される、上記[1]に記載の方法。
[8]
前記チアゾリド化合物が、組換えシアリダーゼ融合タンパク質との組み合わせで投与される、上記[1]に記載の方法。
[9]
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるウイルス感染の処置または予防をもたらす、上記[1]に記載の方法。
[10]
前記ウイルス感染が、インフルエンザ感染である、上記[9]に記載の方法。
[11]
前記ウイルス感染が、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7から選択されるウイルスにより引き起こされる、上記[10]に記載の方法。
[12]
前記ウイルス感染が、B型肝炎である、上記[9]に記載の方法。
[13]
前記チアゾリド化合物が、抗B型肝炎剤との組み合わせで投与される、上記[9]に記載の方法。
[14]
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、上記[9]に記載の方法。
[15]
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、上記[9]に記載の方法。
[16]
前記免疫刺激剤が、イミキモドまたはレシキモドである、上記[15]に記載の方法。
[17]
前記チアゾリド化合物が、アダマンチン類似体との組み合わせで投与される、上記[9]に記載の方法。
[18]
前記チアゾリド化合物が、組換えシアリダーゼ融合タンパク質との組み合わせで投与される、上記[9]に記載の方法。
[19]
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体におけるガンの処置または予防をもたらす、上記[1]に記載の方法。
[20]
前記ガンが、白血病である、上記[19]に記載の方法。
[21]
前記白血病が、ヘアリー細胞白血病または慢性骨髄性白血病である、上記[20]に記載の方法。
[22]
前記ガンが、メラノーマである、上記[19]に記載の方法。
[23]
前記ガンが、非ホジキンリンパ腫である、上記[19]に記載の方法。
[24]
前記ガンが、腎細胞ガンである、上記[19]に記載の方法。
[25]
前記チアゾリド化合物が、ワクチンとの組み合わせで投与される、上記[19]に記載の方法。
[26]
前記チアゾリド化合物が、免疫刺激剤との組み合わせで投与される、上記[19]に記載の方法。
[27]
前記チアゾリド化合物が、抗ガン剤との組み合わせで投与される、上記[19]に記載の方法。
[28]
前記抗ガン剤が、STI571、CGP74588、1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(Ara−C)、ドキソルビシン、ダカルバジン、シスプラチン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、ロムスチン、ビンブラスチン、カルムスチン、DTIC、タモキシフェン、スニチニブ、ソラフェニブおよびインターフェロン−αからなる群から選択される、上記[27]に記載の方法。
[29]
前記免疫応答を刺激することが、前記被験体における細胞内原虫感染の処置または予防をもたらす、上記[1]に記載の方法。
[30]
前記細胞内原虫感染が、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)種、リーシュマニア(Leishmania)種、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)およびトリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzii)からなる群から選択される、上記[29]に記載の方法。
[31]
前記チアゾリド化合物が、ワクチンまたは、免疫刺激剤または、抗原虫薬との組み合わせで投与される、上記[29]に記載の方法。
[32]
前記チアゾリド化合物が、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、アトバコン、クリンダマイシン、ピリメタミン、スピラマイシン、ジミナゼン(diminazine)、ホミジウム、スラミン、メラルソミン(melarsamine)、スチボグルコン酸ナトリウムおよびアンチモン酸メグルミンからなる群から選択される抗原虫薬との組み合わせで投与される、上記[31]に記載の方法。
[33]
前記免疫応答を刺激することが、細胞内細菌感染の処置または予防をもたらす、上記[29]に記載の方法。
[34]
前記細胞内細菌感染が、ヒト型結核菌である、上記[33]に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11