(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138812
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】フィルター材料
(51)【国際特許分類】
B01D 39/18 20060101AFI20170522BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20170522BHJP
F02M 35/024 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
B01D39/18
B01D39/16 A
F02M35/024 511E
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-540446(P2014-540446)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-504355(P2015-504355A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2012072081
(87)【国際公開番号】WO2013068436
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】102011086104.1
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ディソン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ノイバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット レンツ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュテッペ
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−527358(JP,A)
【文献】
実開平07−013412(JP,U)
【文献】
特開2009−233513(JP,A)
【文献】
特開平04−193317(JP,A)
【文献】
特表2013−522002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00−39/20
F02M35/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター材料(1)、特に内燃機関の空気フィルター用であって、
前記フィルター材料(1)は流れ方向(5)において漸減する細孔径を有し、
前記フィルター材料(1)は、流入側に基材層(2)、及び流出側に特にメルトブロー層である微細繊維層(4)を含み、
前記基材層(2)及び微細繊維層(4)の間には、接続領域(3)が配置されており、
前記フィルター材料(1)は、厚さ(d)がd>0.35mmであり、
前記基材層(2)の流入側に含浸(6)を備えており、
前記含浸(6)により前記細孔径は前記流れ方向(5)において漸減しており、
前記基材層(2)はセルロース材料で形成され前記含浸(6)は樹脂により形成され、 前記基材層(2)の樹脂含有量は22質量%であることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ材料であって、
前記基材層(2)は、合成繊維成分を含むまたは含まないセルロースを含むことを特徴とする。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルタ材料であって、
前記基材層(2)の細孔は、65から85μmの間、特におよそ74μmの細孔径を有することを特徴とする。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記微細繊維層(4)の細孔は、30から40μmの間の細孔径を有することを特徴とする。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記微細繊維層(4)は、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルまたはポリプロピレン(PP)の繊維を含むことを特徴とする。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記微細繊維層(4)は、径が1.5から5μmの間、好ましくは1.9から3.4μmの間、特に2.9μmである繊維を含むことを特徴とする。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記基材層(2)及び/又は前記微細繊維層(4)及び/又は前記接続領域(3)は流れ方向(5)において漸減する細孔径を有することを特徴とする。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記接続領域(3)の細孔は、30から35μmの間の細孔径を有し、および/または前記接続領域(3)が接着層として形成されていることを特徴とする。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記含浸(6)は、熱の影響下で硬化含浸架橋として形成される、または
前記含浸(6)は、非硬化含浸として形成されることを特徴とする。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載のフィルタ材料であって、
前記含浸(6)は、フェノール樹脂、アクリレートまたはエポキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載のフィルタ材料(1)を備えたフィルタ部材であって、
前記フィルタ部材が交互に閉じたチャネルを備えた巻き付け(wrapped)フィルタとして形成され、
または、前記フィルタ部材は、プリーツ、環状に閉じた又は平坦なフィルタ素材として構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター材料に関し、特に請求項1の前文に記載のエアフィルタ用フィルター材料に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2011/110637 A2からは、流体、特に液体燃料、水、エンジンオイルや空気の濾過のためのフィルタエレメントの一般的フィルタ媒体が知られており、それは合成繊維の少なくとも一つの不織フィルタ層を含んでいる。
【0003】
フィルター媒体は、ろ過される粒子の流れ方向に増加する分離度合を有している。フィルタ層は、さらに、流れ方向に増加する圧縮された特性を有する。
【0004】
DE 299 07 699 U1からは、少なくとも一つの基板材料の層および少なくとも一つの繊維フリースの層を含むフィルター材料が知られている。
【0005】
少なくとも一つの繊維フリース層は、平均直径が10〜1000ナノメートルで、さらにナノファイバの特定のパラメータを有するナノファイバーフリース層を含む。
【0006】
この場合、基板材料層は濾紙で構成されている。
【0007】
DE 197 31 860 C1からは、複数の層から構成されているフィルター材料が知られて、紙基材層と共に積層された繊維層を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般的なタイプのフィルタ材料のための改良された、または少なくとも代替的な実施形態についての問題を扱い、特に煤の高い吸収能力および高い分離度合について扱う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この問題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明は、流れ方向に漸減する孔径をフィルタ材料に提供するという一般的なアイディアに基づいており、流入側のフィルター材の基材層と流出側の微細繊維層とが、それらの間に位置する接続領域を介して互いに接続されていることで実現される。また、含浸は、少なくとも基材層の流入側に適用される。流入側に配置された基材層は、例えばオープンセルロース層として形成することができる。ここで、基材層は、全フィルタ材料に対して厚く具現化される。基材層の厚さの割合は、全複合体の厚みの75%よりも大きく、特に80%よりもよりも大きい。基材層の厚さは、約0.3mmから1.0mm、特に約0.60mmから0.65mmである。基材層の厚さは、0.5kPaにおける測定圧力で決定される。加工されていない基材層がさらにここで検討されている。基材層の厚さは、種々の処理ステップ、例えばラップ(wrapping)、折り畳みまたはキャリブレーションにおいて減少させることができる。また、基材層は多くの開気孔を含む。これにより、開気孔と優れた基材層の厚さを介して基材層は、煤の高い吸収能力を有する。基材層の流出側には、微細繊維層が用いられる。例えばいわゆるメルトブローン層として形成することができる微細繊維層については、単に低い煤吸収能力であっても高い分離度合を有する。ここで、微細繊維層は、複合材全体の厚さに対して、25%より小さく、特に20%より小さい厚さを有する。有利な構成においては、微細繊維層の厚さは、およそ0.15mmから0.23mm、特におよそ0.19mmとすることができる。微細繊維層の厚さは、同様に0.5kPaにおける測定圧力で決定される。処理されていない微細繊維層がさらにここで検討されている。微細繊維層の厚さは、種々の処理工程、例えばラップ、折り畳みまたはキャリブレーションの間に減少させることができる。特に、微細繊維層は、以下の処理ステップまたは動作のシーケンスの間に、一定の条件の下で、50%以上のかなりの割合で圧縮され得る。この圧縮は、熱の影響下で、特に可逆的または不可逆的であることができる。接続領域を介して互いに接続、特に接着、溶接又は、ローラー塗布されている2層、すなわち一方では基材層と他方では微細繊維層において、二つの層のそれぞれの利点を、すなわち、基材層の高い煤吸収能力は、微細繊維層の高い分離度合と同時に、高度に組み合わせることができ、このため、フィルタ材料は、深さ全体にわたって均等にロードされて作成される。一つのフィルター層の汚れ吸収能力が、他方の前に、使い尽くされることをフィルター材料の均一な負荷が特に防止する。この段落で最初に、そして再度述べた煤吸収能力は、フィルターで除かれる粒子の吸収能力を代表していることに、一般的に注意しなければならない。同時に且つ極めて高いフィルタ能力を伴う均一の負荷はまた、流れ方向に狭くなる細孔サイズによって確実にされる。少なくとも0.35mm、優先的には0.5−1.0mmの所定の厚さも、本発明に係るフィルタ材料の長期の高いフィルタ性能を確実にする。このようなフィルタ材料は環状に閉じた又は平坦に具現化される例えばプリーツ型フィルター要素に使用され、交互に閉じたチャンネルを有する巻き付けインサートにも、特に内燃機関の吸入空気を洗浄するため、使用される。さらに低燃焼性の基材層は、本発明による含浸を含む。例えば、そのような基材層としてセルロース材料は好ましくは22質量%までの樹脂を構成材料とし、その樹脂は特にエンボス加工(スペーサー/突起)の強度、剛性、寸法安定性に寄与し、外部影響因子(湿気、濡れ、及び油や燃料のような化学物質)からの保護に寄与する。基材層の流入側に適用される、本発明に係る片側の含浸を介して、非常に微細な細孔(流出側)の目詰まり及び、樹脂のペンデンティブ(pendentive)形成による微細孔の閉鎖または減少を低減させることができ、それにより、クリーンな側、すなわち基材層の流出側の樹脂を通して、細孔構造は全く変わらず、流入側、すなわち原ガス側では、ほんのわずかに変わるだけである。従来の樹脂含有量(25−27質量%)と比較して低減された基材層の樹脂含有量は、特にセルロース紙の流出側に配置され、非常に微細な細孔の目詰まりを低減させることができる。
【0011】
突然の細孔サイズの変化を回避しながら、含浸は、実質的に、本発明に係る流れ方向における細孔の有利な逓減分布に寄与する。また、分離度合ならびに塵埃保持容量(特に、小さいが故に特に深くフィルター材料に侵入する煤粒子の負荷のための)は、大きくすることができる。
【0012】
含浸は、熱の影響により架橋する硬化含浸又は非硬化含浸として実施することができる。また、フェノール樹脂、アクリレートまたはエポキシ樹脂を含むことができる。
【0013】
本発明による解決策の有利なさらなる発展形態では、基材層の細孔は、65から85μm、特に約74μmの孔径を有する。優先的に、この場合、細孔の40から80%が約65から85μmの細孔径の範囲であると、その結果高い通気性と高い煤吸収能力を有する比較的開放細孔基材層を達成することができる。基材層の材料として、合成繊維成分を含むまたは含まないポリマーフリースまたはセルロースは、例えば使用可能である。ポリマー合成繊維を添加することによってセルロース層は、例えば、溶接可能なように構成することができる。セルロース中にガラス繊維を添加することで、気孔率を大きく選択することができるので、フィルター媒体の高容量化をもたらす。
【0014】
本発明の含浸は、防炎性を改善するだけではなく、積極的に材料の安定性に影響を与えることができる。したがって、折り目の隙間のための例えば溝又は突起のようなエンボス加工構造は、より大きな寸法安定性を与えられている。原則として、架橋であっても熱の影響により架橋する硬化性の含浸、あるいは熱なしでも架橋している非硬化性(NC)の含浸を使用することができる。好適な含浸は、例えば、フェノール樹脂、アクリレートまたはエポキシ樹脂である。
【0015】
基材層とは対照的に、微細繊維層の細孔は、30から40μmの細孔径を有することができ、同様に、細孔の約40から80%がこの範囲にある。比較的非常に小さい細孔径によって、微細繊維層は煤吸収能力が低いが比較的高い分離度合を有する。微細繊維層の繊維は、例えばポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル又はポリプロピレン(PP)から形成され、明らかに、コーティングされた、または完全に異なるように形成された繊維が考えられる。微細繊維層における繊維の繊維径は、約1.5〜5μm、特に1.9〜3.4μmであり、平均繊維径は約2.9μmである。この場合、微細繊維層の単位面積当たりの重量は実質的に基材層より低く、例えば基材層が約138g/m
2の単位面積当たりの重量であるのに対し、微細繊維層は単に約20g/m
2の単位面積当たりの重量である。
【0016】
下記の表1に、オイルランプから17.7cm/sの付与速度であって30mbarの圧力差増で煤を付与したときに、複合フィルタ材料と個々の層との両方の、平方メートル当たりのグラムでの煤吸収能力およびパーセントでの分離度合が示されている。そこには、基材層における5g/m
2である煤吸収能力が、例えばメルトブローの微細繊維層の煤吸収能力を著しく上回ることが明らかになっていて、後者は煤吸収能力が0.6から0.7g/m
2、つまり10分の1程度に過ぎない。微細繊維層との対比による分離度合は、基材層に比較して高く、フィルター材料は複合材全体として基材層と接続領域を介して基材層に接続された微細繊維層とからなり、個々の層に比べて有意に増加した煤吸収能力および有意に増加した分離度合を有する。
【0017】
【表1】
表1: オイルランプから17.7cm/sの付与速度(30mbarの圧力差増)で煤を付与したときに、本発明のフィルター材料及びその個々の層のろ過特性
【0018】
下記の表2では、個々の層及び全体のフィルタ材料の両方の、例えば細孔径、厚さ及び単位面積当たりの重量のような特定の特性は、再度記載されており、明らかに、純粋に例示的に示されている。
【0019】
【表2】
表2:材料特性
【0020】
表2の*)でマークされた厚さに関しては、隣接する層内に材料が入るため、トータルの複合体(フィルター材料)は個々の層の合計よりも薄くなっているといわざるを得ない。
【0021】
一般に、微細繊維層はいわゆるナノ繊維を含むこともでき、ナノ繊維は任意のプラスチックから形成され、熱可塑性プラスチック、例えばポリアミド(PA)又はポリウレタン(PU)が好ましい。ポリマーフリースを基材層用に使用する場合、個々の繊維の織物シート構造は、一般に、例えば乾燥又は湿潤状態で配置されて、作成することができる。優先的に、いわゆるランダム配向フリースは、個々の繊維が自由にそれらの配向に関して配置され、採用されている。明らかに、基材層はまた、いわゆるスパンボンドとして形成することができ、一般に、例えば、ポリマーが押出機中で加熱されて高圧に上げられるという点に関して、紡績フリース(spun fleece)を意味するものである。ポリマーは、その後、いわゆる紡糸口金という口金を通して正確な投与量にて押圧される。反対側では、ポリマーが微細なフィラメントとして依然として溶融形態のノズルプレートを残し、その後、空気流によって冷却される。続く下流工程にふるいとして具現化されたコンベヤベルト上において、抜き取りをふるいの下に配置し、個々のフィラメントが固定されて、いわゆるランダム配向フリースが作成され、続いて例えばロールでさらに圧縮される。ここで、加熱されたローラー(カレンダー)または蒸気の流れが通常使用され、少なくとも個々のフィラメント繊維の領域で一緒に溶融し、従って、単位面積当たりの重量の特に均一な分布と基材層の均一な構成を、その結果として達成することができる。
【0022】
接続領域は、追加の材料、例えば接着剤、溶媒又は繊維層によって、および/または層の特別な処理、例えば、圧縮、溶接やニードリングによって形成することができる。追加の材料を使用する場合、これは基材層ならびに微細繊維層の両方に接合されている。ここで、追加の材料は、例えば、接着特性を有する接着剤粒子または接着性繊維として形成することができる。他の構成では、追加の材料は、熱影響下で基材層と微細繊維層と接合する追加の接続繊維層として設計されている。ここで、接続繊維層の繊維は、基材層及び/又は微細繊維層の繊維上で溶融され、基材層及び/又は微細繊維層の繊維と一緒に溶接される。あるいは、溶融した接続繊維層の繊維は、基材層及び/又は微細繊維層との機械的結合を形成することができる。ここで、例えば、接続繊維の溶融物は基材層の細孔に入り込み、続く冷却が機械的結合による接続を形成する。接着剤を使用する場合、接着剤粒子または接着性繊維は、基材層を微細繊維層に結合させる。基材層に入っていく接続材料によって基材材料の細孔径の減少が起こり、流れ方向に漸減する細孔サイズがこのように達成されるので、追加の接続部材を有する構成が有利である。
【0023】
溶媒を用いて微細繊維層に基材層を接続する場合は、繊維および/または領域は、わずかに溶解されて共に圧縮され、その結果として層のこれらの繊維/領域が互いに接合される。追加の材料なしの接続の場合には、基材層は微細繊維層に直接接続される。ここで、微細繊維層の繊維または部分が基材層内に、または基材層から微細繊維層に、複合体を形成するために導入される。このことは熱の導入有り/無しにより接続工程を通して達成することができる。それぞれの他の層内への材料の導入により、この接続領域における気孔率が変わる。接続領域において、基材層の気孔率が低減および/または微細繊維層の気孔率が増加する。従って、フィルタ媒体にわたって連続的な漸減細孔プロファイルが達成される。
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点は、従属請求項から図面から、および図面の助けを借りた、関連付けられた図形の説明から得られる。
【0025】
なお、上述の特徴およびさらに以下に説明される特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、上述のそれぞれの組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせで、または単独でのみならず、使用することができることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施の形態を図面に示し、以下の説明においてより詳細に説明する。
【0028】
唯一の
図1は、本発明に係るフィルタ材料の断面図を示す。
【0029】
図1によると、本発明に係るフィルター材料1は、全部で二つの層2,4、即ち基材層2と微細繊維層4を備える。これらの二つの層2,4は接続領域3によって互いに接続されている。この場合、フィルター材料1を通る流れの方向は、矢印5で表されている。少なくとも基材層2の流入側に含浸6は配置され、以下でより詳細に議論される。
図1の含浸6は流入側に限定されて表されているが、少なくとも流入側に、基材層2の部分的または完全な含浸が本発明によって包含されることを意味することである。
【0030】
基材層2が流入側に、微細繊維層4が流出側に配置されて、本発明に係るフィルター材料1は、流れ方向5に漸減、つまり減少していく細孔サイズを有する。例えば微細繊維層4は、いわゆるメルトブロー層として形成することが可能である。この場合、フィルター材料1の全体の厚さdは、0.35mmよりも大きく、特に0.6mmより大きい。流れ方向5において逓減する細孔径によって、個々の層2,4の利点は互いに組み合わせることができ、高い吸収能力および高い分離度合のフィルター材料1は、このように達成される。微細繊維層4は単なる0.6から0.7g/m
2の煤吸収能力を有するのに対し、基材層2は、単独で、例えば5.0g/m
2の比較的高い吸収能力(煤吸収能力)を有する。一緒に、すなわち、本発明のフィルター材料1に組み合わせられると、6.7g/m
2の煤吸収能力は、例えば表1に示されるように、達成されることができる。基材層2と微細繊維層4間の単一体の分離度合も、前記基材層2の分離の度合は例えば69%、微細繊維層4の分離度合が例えば71%であることから、異なる。一緒に、すなわち、フィルタ材料1に組み合わせると、これは97%の分離度合の総和を生成する。
【0031】
基材層2は、合成繊維成分の有無にかかわらず、例えばポリマーフリースまたはセルロースを含むことができ、細孔径が65〜85μm、特に約74μmの範囲である。対照的に、微細繊維層4の細孔は30〜40μmのかなり小さい孔径を有する。それぞれの場合において、細孔の40〜80%が、それぞれの細孔径範囲内にある。微細繊維層4の繊維は、例えばポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエステルまたはポリプロピレン(PP)からなることができる。微細繊維層4の繊維の直径は、優先的には1.9〜3.4μmであり、特に約2.9μmである。明らかに、全体のフィルター材料1は流れ方向5に漸減孔径を有することができるだけではなく、個々の層2,3,4が、それぞれ自体も有することができる。これは、例えば、より大きな細孔サイズは、基材層2の流出側、すなわち接続領域3内よりも、基材層2の流入側に存在することを意味する。接続領域3の細孔は、通常30〜40μmの細孔径を有し、接続領域3は特に接着層として形成することができる。ここで、接着剤は、層2,4を互いに接続する接着剤粒子または接着性繊維を含むことができる。他の構成において、接続領域は、材料を利用せずに形成することができる。このため、接続領域は微細繊維層4と共に基材層2を溶接して形成することができる。さらなる構成では、微細繊維層4は、基材層2の上に(onto)巻かれる(be rolled)ことができる。
【0032】
基材層2の場合には、個々の層の空気透過率は約840l/(m
2s)であり、微細繊維層4の場合は、約645l/(m
2s)である。本発明のフィルター材料1へと接続することにより、その空気透過率は約355l/(m
2s)に達する。
【0033】
本発明のフィルター材料1を用いて、深さ全体にわたって同じである均一の負荷を達成することができ、特に、個々の層及び領域2,3,4の同時充填中に得ることができる。特に、実質的に総フィルタ性能を低下させるであろう、個々の層または領域2,3,4の飽和を回避することができる。接続領域3を通じて、細孔サイズプロファイルはさらに調和されており、そのことは、細孔サイズプロファイルが例えば、より大きい方からより小さい方へ細孔径の緩やかなプロファイルをもたらす接着繊維又は接着剤の粒滴を通じて作成されることを意味している。接続領域3内において、この場合の細孔の大きさは徐々に減少するように形成されており、すなわち流入側において基材層2の細孔径に対応する細孔径から始まって、流出側において微細繊維層4の細孔径に相当する細孔径を有する。
【0034】
基材層2は、さらに、低燃焼性を有する。低燃焼性を有するそのような基材層2のためのセルロース材料は、25−27質量%の樹脂で構成されていて、それは強度、剛性、寸法安定性(特にエンボススペーサ/突起の)、及び外部の影響因子(水分、湿度、石油や燃料などの化学物質)からの保護に寄与する。
【0035】
特に少なくとも基材層2の流入側に適用される本発明の片面含浸6を通じて、樹脂のペンデンティブ形成による非常に微細な細孔(流出側)の目詰まり及び細孔の閉鎖また削減を低減させることができ、それにより清浄な側、すなわち基材層2の流出側の樹脂を通った細孔構造は全く変わらず、流入側すなわち壁側でもわずかに変わるだけである。基材層2における約22質量%までの樹脂含有量の一般的な削減も同様に役立ち、非常に微細な細孔の目詰まりを減少させ、特にセルロース紙(基材層2)の流出側に配置される。
【0036】
このことは、突然の細孔サイズの変化を避けるため、本発明の主題に係る流れ方向5の細孔の有利な逓減分布に実質的に寄与する。これに加えて、分離性能ならびに塵埃貯蔵容量(特に、微細なために、基材層2内に、または一般的なフィルタ材料1内に特に深く入る煤粒子の負荷がある場合)が増加する。流れ方向5の分離性能の均一な増加も達成され、同様に全体で増加した塵埃貯蔵容量をもたらす。
【0037】
本発明のフィルター材料1は、特に、自動車の内燃機関のエアフィルターに、プリーツフィルタエレメントまたは交互に閉じたチャンネルを有する巻き付けインサートについても、特に使用することができる。逓減する細孔径を有する個々の層2,3,4の構成を通じて、全体で特に効率的なフィルター材料1を作成することができる。