(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記VIDが、配列番号11もしくは38のアミノ酸配列、または配列番号11もしくは38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
前記Fc領域が、配列番号7もしくは39のアミノ酸配列、または配列番号7もしくは39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
前記融合タンパク質が、配列番号12もしくは40のアミノ酸配列、または配列番号12もしくは40のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、補体経路および血管内皮成長因子(VEGF)経路を阻害する融合タンパク質およびその組み合わせを提供する。本明細書中に記載の本発明の融合タンパク質は、補体阻害ドメイン(CID)、VEGF阻害ドメイン(VID)、および半減期延長ドメインを含み、ここで、融合タンパク質は補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する(例えば、VEGF活性の阻害)。融合タンパク質の産生方法ならびに自己免疫疾患、補体関連疾患、炎症性疾患、眼疾患、および/または癌の処置における融合タンパク質の使用方法も本明細書中に提供する。
【0024】
I.一般的な技術
本明細書中に記載されているか本明細書中で引用されている技術および手順は、当業者によって従来の方法論を使用して一般に十分に理解されており、一般的に使用されている(例えば、以下に記載の広範に利用されている方法論など:Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3d edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al. eds., (2003)); the series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.): PCR 2: A Practical Approach (M.J. MacPherson, B.D. Hames and G.R. Taylor eds. (1995)), Harlow and Lane, eds. (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, and Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1987)); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney), ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and C.C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C.A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: A Practical Approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal Antibodies: A Practical Approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995);およびCancer: Principles and Practice of Oncology (V.T. DeVita et al., eds., J.B. Lippincott Company, 1993)。
【0025】
II.定義
「単離された」分子(例えば、核酸またはタンパク質)または細胞は、同定されており、且つその自然環境の成分から分離および/または回収されているものである。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「実質的に純粋」は、少なくとも純度50%(すなわち、夾雑物を含まない)、より好ましくは少なくとも純度90%、より好ましくは少なくとも純度95%、より好ましくは少なくとも純度98%、より好ましくは少なくとも純度99%である材料をいう。
【0027】
「融合ポリペプチド」または「融合タンパク質」(本明細書中で互換的に使用される)は、2つ以上の共有結合部分を有し、各共有結合部分が異なるタンパク質に由来するポリペプチドをいう。2つ以上の部分を、単一のペプチド結合によって直接連結するか、1つ以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して連結することができる。一般に、2つの部分およびリンカーは、相互に読み枠中に存在し、組換え技術を使用して産生されるであろう。
【0028】
基準ポリペプチドまたは核酸配列に関する「アミノ酸またはヌクレオチド配列同一率(%)」は、配列のアラインメントおよび必要に応じて配列同一率を最大にするためのギャップの導入後に配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮せずに基準ポリペプチドまたは核酸配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一の候補配列中のアミノ酸残基またはヌクレオチドの百分率と定義する。アミノ酸または核酸配列の同一率決定のためのアラインメントを、当業者の技術の範囲内の種々の方法で、例えば、公的に利用可能なコンピュータソフトウェア(BLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど)またはAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,(2009)に記載の方法を使用して行うことができる。当業者は、配列アラインメントのための適切なパラメーター(比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムが含まれる)を決定することができる。例えば、Megalign(DNASTAR)プログラムは、異なる方法(例えば、clustal法)にしたがって2以上の配列間のアラインメントを作製することができる。例えば、Higgins,D.G.and P.M.Sharp.(1988).Gene.73:237−244を参照のこと。clustalアルゴリズムは、全対間の距離の試験によって配列をクラスターにグループ分けする。クラスターを対でアラインメントし、次いで、グループでアラインメントする。2つのアミノ酸配列(例えば、配列Aおよび配列B)の間の配列類似性を、(配列Aの長さ−配列A中のギャップ残基数−配列B中のギャップ残基数)÷配列Aと配列Bとの間の残基マッチ数の和×100によって計算する。2アミノ酸配列間で低いか類似性のないギャップを類似率の決定に含めない。核酸配列間の同一率を、当該分野で公知の他の方法(例えば、Jotun Hein法)によって計数または計算することもできる。例えば、Hein,J.(1990)Methods Enzymol.183:626−645を参照のこと。
【0029】
用語「ベクター」は、本明細書中で使用する場合、連結される別の核酸を増殖することができる核酸分子をいう。本用語には、自己複製核酸構造としてのベクターおよび導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。一定のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。かかるベクターを本明細書中で「発現ベクター」という。
【0030】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外因性核酸が導入されている細胞(かかる細胞の子孫が含まれる)をいう。宿主細胞には「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞および継代数と無関係のこれらに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくてよいが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同一の機能または生物学的活性を有する変異子孫が本明細書中に含まれる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「処置(treatment)」または「処置(treating)」は、有益または所望の結果(好ましくは臨床結果が含まれる)を得るためのアプローチである。本発明のために、有益または所望の結果には、1つ以上の以下が含まれるが、これらに限定されない:疾患に起因する症状の軽減、患者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬物の用量の軽減、疾患の進行の遅延、および/または個体の寿命の延長。
【0032】
本明細書中で使用する場合、「疾患の発症の遅延」は、疾患(癌など)の発症の延期、妨害、減速、遅滞、安定化、および/または延長を意味する。この遅延は、病歴および/または治療を受ける個体に応じて、種々の時間の遅延であり得る。当業者に明白であるように、十分または有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で、防止を含むことができる。
【0033】
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類(サルなど))、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、個体または被験体はヒトである。
【0034】
用語「薬学的処方物」は、処方物中に含まれる有効成分の生物学的活性を有効にし、処方物を投与される被験体が容認できない毒性を有するさらなる成分を含まない形態などの調製物をいう。
【0035】
「薬学的に許容され得るキャリア」は、有効成分以外の被験体に無毒な薬学的処方物中の成分をいう。薬学的に許容され得るキャリアには、緩衝液、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
薬剤(例えば、薬学的処方物)の「有効量または有効投薬量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために必要な投薬量および時間で有効な量をいう。有効投薬量を、1回以上の投与で投与することができる。本発明のために、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効投薬量は、直接または間接的な予防的処置または治療上の処置を達成するのに十分な量である。臨床的文脈で理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効投薬量を、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成してもしなくてもよい。したがって、「有効量または有効投薬量」を、1つ以上の治療剤を投与する状況で考慮することができ、単一の薬剤を、1つ以上の他の薬剤と併せて所望の結果を達成することができるか、達成する場合に有効量で投与されると見なすことができる。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「〜と併せて」は、別の治療法に加えた1つの治療法の実施をいう。そのようなものとして、「〜と併せて」は、個体への他の治療法の実施前、実施中、または実施後の1つの治療法の実施をいう。
【0038】
用語「添付文書」を、治療薬の商業上の包装に慣習的に含まれるかかる治療薬の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む説明書をいうために使用する。
【0039】
本明細書中および添付の特許請求の範囲内で使用する場合、文脈上他の意味が明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれる。例えば、「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」という言及は、1つから多数の融合タンパク質または融合ポリペプチド(モル量など)をいい、当業者に公知のその等価物などが含まれる。
【0040】
本明細書中の値またはパラメーターに対する「約」という言及には、その値またはパラメーター自体を指す実施形態が含まれる(そして、記載される)。例えば、「約X」に関する記載には、「X」の記載が含まれる。
【0041】
本明細書中に記載の発明の実施形態、態様、および変形形態には、実施形態、態様、および変形形態「からなる」および/または「から本質的になる」が含まれると理解される。
【0042】
III.融合タンパク質
本発明は、補体経路およびVEGF経路の活性化を阻害する融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質によって阻害される補体経路は、古典的補体経路、第二補体経路、および/またはレクチン経路であり得る。いくつかの実施形態では、融合タンパク質によって阻害されるVEGF経路は、VEGF受容体(例えば、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3)によって媒介される。いくつかの実施形態では、融合タンパク質によって阻害されるVEGF経路は、VEGF−A VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、およびPlGFによって媒介される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質は、補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する(例えば、VEGF活性の阻害)。本明細書中に記載の融合タンパク質は、補体阻害ドメイン(CID)、VEGF阻害ドメイン(VID)、および半減期延長ドメインを含む。
【0043】
補体阻害ドメイン(CID)
本発明は、本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドの成分であり得る補体阻害ドメイン(CID)を提供する。CIDは、補体活性化調節因子(RCA)および補体制御タンパク質(CCP)のメンバーが含まれる補体経路に関与する補体制御タンパク質のポリペプチドフラグメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、CIDは、補体調節化タンパク質(補体受容体1(CR1)、H因子、崩壊促進因子(DAF)、膜補因子タンパク質(MCP)、およびC4b結合タンパク質(C4BP)が含まれるが、これらに限定されない)のフラグメントを含む。本明細書中の任意の実施形態では、補体調節タンパク質は、哺乳動物(ヒト、ヒヒ、チンパンジー、マウス、またはラットなど)に由来する。いくつかの実施形態では、補体調節タンパク質はヒトタンパク質である。補体調節化タンパク質は、補体経路の成分(C3b、C4b、iC3b、C3dg、C1q、およびMBPが含まれるが、これらに限定されない)に結合する。いくつかの実施形態では、補体調節化タンパク質のフラグメントは、補体成分(C3b、C4b、iC3b、C3dg、C1q、およびMBPなど)に結合し、補体経路(古典的経路、第二経路、および/またはレクチン経路など)の活性化を阻害する。任意の補体経路を阻害するタンパク質の試験方法は当該分野で公知であり、実施例(実施例2、3、および6など)に記載の方法が含まれる。例えば、Scesney S.M.ら、(1996).Eur.J.Immunol,26:1729−1735(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。いくつかの実施形態では、CIDは、CR1、H因子、DAF、MCP、およびC4BPからなる群から選択されるヒト補体調節タンパク質の少なくとも1つのSCRを含む。
【0044】
CIDは、補体成分に結合して補体活性化を阻害する補体調節化タンパク質の一部を含むことができる。例えば、ヒトCR1(アロタイプA)は、30の反復相同ショートコンセンサスリピート(SCR)(それぞれ、60〜70アミノ酸の範囲)を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインからなる巨大な糖タンパク質(約200kD)である。最初の28個のSCRは、それぞれ7個のSCRの4つの長い相同反復(LHR−A、−B、−C、および−D)を組織する。最初のLHR(LHR−A)の最初の3個のSCR(SCR1−3)は、C4bと中程度の親和性で結合し、C3bと低親和性で結合する。第2のLHR(LHR−B)の最初の3個のSCR(SCR8−10)および第3のLHR(LHR−C)の最初の3個のSCR(SCR15−17)はほぼ同一である。これらの両方はC3bと高親和性で結合し、C4bと中程度の親和性で結合する。LHR−Aは、古典的経路および第二経路のC3−コンバターゼの両方について高い崩壊促進作用(DAA)を有するが低い補因子作用(CA)を有するのに対して、LHR−BおよびLHR−CはC3−コンバターゼについて高CAを有するが低DAAを有する。適切な間隔を有するLHR−AおよびLHR−Bの両方は、C5−コンバターゼについてDAAが必要である。少なくとも1つの補体調節タンパク質のSCRを含むCIDを本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、CIDは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29であるが、30個を超えない補体調節タンパク質のSCRを含む。いくつかの態様では、CIDは、1〜30、1〜29、1〜28、1〜27、1〜26、1〜25、1〜24、1〜23、1〜22、1〜21、1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、1〜15、1〜14、1〜13、1〜12、1〜11、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、または1〜2個のいずれか1つの補体調節タンパク質のSCRを含む。いくつかの実施形態では、CIDは、CR1、H因子、DAF、MCP、およびC4BPからなる群から選択されるが、これらに限定されない1つ以上の補体調節タンパク質のSCRを含む。いくつかの実施形態では、CIDは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10個のCR1、H因子、DAF、MCP、またはC4BPのSCRを含む。2つ以上の補体調節タンパク質の少なくとも1つのSCRを含むCIDも意図される。いくつかの実施形態では、CIDは、CR1、H因子、DAF、MCP、およびC4BPからなる群から選択される2つ以上の補体調節タンパク質由来の少なくとも1つのSCRを含む。
【0045】
本明細書中に示した任意の補体調節タンパク質の少なくとも1つのSCRを含むCIDを本明細書中に提供する。本明細書中に明確に記載されない限り、SCRを、補体調節タンパク質のN末端からC末端の方向で連続的にナンバリングする。例えば、ヒトCR1は、1〜30にナンバリングされた30個のSCRを含む(ヒトCR1タンパク質のN末端のSCR1およびヒトCR1タンパク質C末端のSCR30)。いくつかの実施形態では、CIDは、CR1のSCR1−10を含む(配列番号6のアミノ酸配列など)。他の実施形態では、CIDはCR1のSCR1−3を含む(配列番号1のアミノ酸配列など)。さらに他の実施形態では、CIDはCR1のSCR8−10を含む(配列番号5のアミノ酸配列など)。いくつかの実施形態では、CIDはDAFのSCR2−4を含む(配列番号13のアミノ酸配列など)。他の実施形態では、CIDはMCPのSCR2−4を含む(配列番号14のアミノ酸配列など)。さらに他の実施形態では、CIDはH因子のSCR1−4を含む。いくつかの態様では、CIDはH因子のSCR1−4を含む(配列番号15のアミノ酸配列など)。さらに他の実施形態では、CIDはC4BPAのSCR1−3を含む(配列番号16のアミノ酸配列など)。本明細書中の任意の態様では、CIDは、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことができる。H因子SCR1−4は、第二経路と特異的にターゲティングするが、古典的経路はそうではないCIDである。古典的補体経路が抗体依存性の病原体クリアランスに必要であるので、第二経路のみを阻害するH因子SCR1−4を含むCIDを含む融合タンパク質の治療的適用は、重篤な感染の潜在的な副作用を制限するための好ましい融合タンパク質であり得る。
【0046】
本発明に記載のCIDは、B因子、またはD因子、またはP因子、またはC3、またはC5に対する任意のペプチドインヒビターまたはオリゴヌクレオチドインヒビターであり得る。CIDはまた、B因子、またはD因子、またはP因子、またはC3、またはC5に対する抗体由来の抗体の全長またはフラグメント、または抗体可変領域(VHまたはVK)、またはscFv抗体であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供したCIDのアミノ酸配列バリアントを意図する。例えば、CIDの結合親和性および/または他の生物学的性質を改善することが望ましいかもしれない。CIDのアミノ酸配列バリアントを、CIDをコードするヌクレオチド配列への適切な修飾の導入またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、CIDのアミノ酸配列の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴(例えば、補体成分への結合および補体経路活性化の阻害)を保有することを条件として、欠失、挿入、および置換を任意に組み合わせて最終構築物まで到達することができる。本明細書中に開示の任意の融合タンパク質の成分であるCIDのバリアントを本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、CIDは、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの態様では、CIDバリアントは、N29、S37、G79、およびD109からなる群から選択されるアミノ酸残基に1つ以上の置換を含み、ここで、アミノ酸残基の位置は配列番号1に対応する。特定の実施形態では、CIDバリアントは、アミノ酸残基N29およびD109に置換を含み、ここで、アミノ酸残基の位置は配列番号1に対応する。別の特定の実施形態では、CIDバリアントは、アミノ酸残基S37およびG79に置換を含み、ここで、アミノ酸残基の位置は配列番号1に対応する。さらに別の特定の実施形態では、CIDバリアントは、アミノ酸残基N29、S37、G79、およびD109に置換を含み、ここで、アミノ酸残基の位置は配列番号1に対応する。いくつかの実施形態では、CIDバリアントは、アミノ酸残基N29K、S37Y、G79D、およびD109Nに置換を含み、ここで、アミノ酸残基の位置は配列番号1に対応する。いくつかの態様では、CIDバリアントは、表1に示すように配列番号1に対応した任意のアミノ酸の位置に置換を含む。
【表1】
【0049】
VEGF阻害ドメイン(VID)
本発明は、本明細書中に開示の任意の融合タンパク質の成分であり得るVEGF阻害ドメイン(VID)を提供する。ヒトVEGF遺伝子ファミリーは、以下の5つのメンバーを含む:VEGF−A VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、および胎盤成長因子(PlGF)。さらに、VEGF−A、VEGF−B、およびPlGFの複数のイソ型を、オルタナティブRNAスプライシングによって生成する(Sullivan L.A.ら、(2010),MAbs,2(2):165−75)。VEGFファミリーの全メンバーは、細胞表面VEGF受容体(VEGFR)への結合によって細胞応答を刺激する。例えば、VEGF−Aは、内皮細胞の有糸分裂誘発を刺激し、細胞の生存および増殖を促進し、細胞遊走を誘導し、微小血管透過性を増大させることが示されている。VEGFR受容体は、7個の免疫グロブリン(Ig)様ドメインからなる細胞外領域を有するチロシンキナーゼ受容体である。VEGFR−1(Flt−1)はVEGF−A、−B、およびPIGFに結合し、VEGFのデコイ受容体またはVEGFR−2の調節因子として機能することができる。VEGFR−2(KDR/Flk−1)は全てのVEGFイソ型に結合し、VEGF誘導血管形成シグナル伝達の主なメディエーターである。VEGFR−3(Flt−4)はVEGF−CおよびVEGF−Dに結合するがVEGF−Aに結合せず、リンパ脈管新生のメディエーターとして機能する。
【0050】
本明細書中に開示の発明の任意の態様では、VIDは、VEGFR(VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3が含まれるが、これらに限定されない)のポリペプチドフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR(VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3が含まれるが、これらに限定されない)の細胞外ドメインの一部を含む。本明細書中の任意の実施形態では、VEGFRは、哺乳動物(ヒト、ヒヒ、チンパンジー、マウス、またはラットなど)に由来する。本明細書中の任意の態様では、細胞外ドメインの一部は、免疫グロブリン様(Ig)ドメインである。例えば、ヒトVEGFR−1は、細胞外ドメインのN末端のIg様ドメイン1および細胞外ドメインのC末端のIg様ドメイン7を有する1、2、3、4、5、6、および7とナンバリングした7個のIg様ドメインを含む。本明細書中に明確に記載されない限り、Ig様ドメインを、VEGFRタンパク質のN末端からC末端に連続的にナンバリングする。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3からなる群から選択される1つ以上のVEGFRの少なくとも1つのIg様ドメインを含む。いくつかの態様では、VIDは、少なくとも1、2、3、4、5、6個であるが、7個を超えないVEGFRのIg様ドメインを含む。さらなる態様では、VIDは、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、または1〜2個のVEGFRのIg様ドメインを含む。
【0051】
2つ以上のVEGFRの少なくとも1つのIg様ドメインを含むVIDを本明細書中で意図する。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3からなる群から選択される2つ以上のVEGFR由来の少なくとも1つのIg様ドメインを含む。いくつかの態様では、VIDは、少なくとも2つ以上のVEGFRの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個であるが、21個を超えないIg様ドメインを含む。さらなる態様では、VIDは、少なくとも2つ以上のVEGFRの1〜21、1〜20、1〜19、1〜18、1〜17、1〜16、1〜15、1〜14、1〜13、1〜12、1〜11、1〜10、1〜9、1〜8、1〜7、1〜6、1〜5、1〜4、1〜3、または1〜2個のIg様ドメインを含む。各VEGFRの7個のIg様ドメインの任意の組み合わせを含むVIDを本明細書中で意図する。例えば、VIDは、VEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン2およびVEGFR−2(例えば、ヒトVEGFR−2)のIg様ドメイン3を含むことができる。別の例では、VIDは、VEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン1〜3、VEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン2〜3、VEGFR−2(例えば、ヒトVEGFR−2)のIg様ドメイン1〜3、VEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン2、およびVEGFR−2(例えば、ヒトVEGFR−2)の様ドメイン3〜4、またはVEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン2およびVEGFR−3(例えば、ヒトVEGFR−3)のIg様ドメイン3を含むことができる。VIDの一部として使用することができるこれらのIg様ドメインおよび他のIg様ドメインのさらに詳細な記述については、米国特許第7,531173号、Yu、D.ら、(2012).Mol.Ther.20(3):938−947、およびHolash、J.ら、(2002).PNAS.99(17):11393−11398(これら全文献の全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。いくつかの態様では、VIDは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、VIDは、配列番号38のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、およびP1GFからなる群から選択される血管内皮成長因子に結合する。本明細書中に提供する場合、血管内皮成長因子(例えば、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、およびP1GF)に結合するか、VEGFR(例えば、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3)に結合してVEGF経路の活性化を阻害するポリペプチドまたはペプチドはVIDである。例えば、VIDは、血管内皮成長因子(例えば、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、およびP1GF)に結合してVEGFRとのその相互作用を遮断する抗体またはそのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、Fab−SH、Fv、scFv、またはF(ab’)
2)、天然ペプチド、または合成ペプチドを含むことができる。いくつかの態様では、VIDは、VEGFR(例えば、VEGFR−1、VEGFR−2、およびVEGFR−3)に結合してVEGFとのその相互作用を遮断する抗体またはそのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、Fab−SH、Fv、scFv、またはF(ab’)
2)、天然ペプチド、または合成ペプチドである。いくつかの態様では、VIDはアセチル化されている。本明細書中の任意の実施形態では、VIDは、哺乳動物(ヒト、ヒヒ、チンパンジー、マウス、またはラットなど)に由来する。
【0052】
本発明のVIDは、VEGFRの任意の細胞外ドメイン、VEGFファミリーメンバーのドミナント(dominate)ネガティブ形態、VEGFファミリーメンバーに対する抗体、VEGFRに対する抗体、VEGFファミリーメンバーまたはVEGFRに対するペプチドインヒビター、VEGFファミリーメンバーまたはVEGFRに対するオリゴヌクレオチドインヒビターであり得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供した任意のVIDのアミノ酸配列バリアントを意図する。例えば、VIDの結合親和性および/または他の生物学的性質を改善することが望ましいかもしれない。VIDのアミノ酸配列バリアントを、VIDをコードするヌクレオチド配列への適切な修飾の導入またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、VIDのアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴(例えば、VEGFへの結合およびVEGF経路の活性化の阻害)を保有することを条件として、欠失、挿入、および置換を任意に組み合わせて最終構築物まで到達することができる。本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドの成分であり得るVIDのバリアントを本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR−1(例えば、ヒトVEGFR−1)のIg様ドメイン1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR−2(例えば、ヒトVEGFR−2)のIg様ドメイン1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VIDは、VEGFR−3のIg様ドメイン1、2、3、4、5、6、または7のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VIDは、配列番号11および38からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
半減期延長ドメイン
本発明は、本明細書中に開示の任意の融合タンパク質の成分であり得る半減期延長ドメインを提供する。例えば、免疫グロブリン由来のFc領域を融合ポリペプチドに組み込んでin vivoでの半減期を増大させることができる。半減期延長ドメインは、任意の免疫グロブリンアイソタイプ、サブクラス、またはアロタイプ由来のFc領域を含むことができる。いくつかの実施形態では、半減期延長ドメインは、IgG、IgA、IgD、IgM、およびIgEからなる群から選択される免疫グロブリンアイソタイプ由来のFc領域である。いくつかの実施形態では、半減期延長ドメインは免疫グロブリンFc領域を含む。いくつかの態様では、Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のヒトFcである。いくつかの態様では、Fc領域は、IgA1またはIgA2のヒトFcである。いくつかの態様では、Fc領域はIgDのヒトFcである。いくつかの態様では、Fc領域はIgEのヒトFcである。いくつかの態様では、Fc領域はIgMのヒトFcである。いくつかの態様では、Fc領域はグリコシル化されている。いくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号7、39、41、および42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。本明細書中に提供した任意の態様では、半減期延長ドメインは、抗体、アルブミン、またはプロテアーゼインヒビター(例えば、α1−抗トリプシン)からなる群から選択されるが、これらに限定されないポリペプチドまたはそのフラグメントであり得る。本明細書中に提供した任意の態様では、半減期延長ドメインは、グリシンリッチアミノ酸配列、PESTAG配列、またはPAS配列からなる群から選択されるが、これらに限定されないアミノ酸配列であり得る。半減期延長ドメインは、in vivoでのポリペプチドの半減期を増大させることが当該分野で公知の任意のポリペプチド配列またはアミノ酸配列であり得る。Kontermann,R.(Ed.)(2011).Therapeutic Proteins:Strategies to Modulate their Plasma Half−lives(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。本明細書中の任意の実施形態では、半減期延長ドメインは、哺乳動物(ヒト、ヒヒ、チンパンジー、マウス、またはラットなど)に由来する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供した半減期延長ドメインのアミノ酸配列バリアントを意図する。例えば、半減期延長ドメインの生物学的性質を改善することが望ましいかもしれない。半減期延長ドメインのアミノ酸配列バリアントを、半減期延長ドメインをコードするヌクレオチド配列への適切な修飾の導入またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、半減期延長ドメインのアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴(例えば、融合タンパク質の半減期の延長)を保有することを条件として、欠失、挿入、および置換を任意に組み合わせて最終構築物まで到達することができる。本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドの成分であり得る半減期延長ドメインのバリアントを本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、半減期延長ドメインバリアントはFc領域バリアントである。Fc領域のバリアントは当該分野で公知である(例えば、米国特許出願公開第2010/02493852号および米国特許出願公開第2006/01341105号(その全体が本明細書中で参考として援用される))。いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾を本明細書中に提供した融合ポリペプチドのFc領域に導入し、それにより、Fc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含むことができる。いくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号7、39、41、および42からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域バリアントはグリコシル化されている。
【0056】
融合ペプチドリンカー
本発明は、本明細書中に開示の任意の融合タンパク質の成分であり得るリンカーを提供する。例えば、短い可動性ペプチドを融合ポリペプチドのドメイン(例えば、CID、VID、および半減期延長ドメイン)の間に使用して、各ドメインの正確な折りたたみを確実にし、立体障害を最小にすることができる。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン、アラニン、およびセリンからなる群から選択されるアミノ酸から構成されるペプチドである。いくつかの実施形態では、リンカーは2〜100個のアミノ酸を含む。他の実施形態では、リンカーは100個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは20個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは15個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは10個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは6個以下のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99個であるが、100個を超えないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーを、CIDと半減期延長ドメインとの間で使用する。いくつかの実施形態では、リンカーをVIDと半減期延長ドメインとの間で使用する。他の実施形態では、リンカーをVIDとCIDとの間で使用する。さらに他の実施形態では、リンカーをVIDと半減期延長ドメインとの間およびCIDと半減期延長ドメインとの間の両方で使用する。他の実施形態では、リンカーを、VIDとCIDとの間およびCIDと半減期延長ドメインとの間の両方で使用する。いくつかの実施形態では、リンカーを、CIDとVIDとの間およびVIDと半減期延長ドメインとの間の両方で使用する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーであるが、4個を超えないリンカーを含む。例えば、融合ポリペプチドは、CID、VID、Fc領域(Fc)、および少なくとも1つのリンカーを、以下からなる群から選択されるN末端からC末端への方向で含むことができる:(1)VID、Fc、リンカー、CID;(2)CID、リンカー、Fc、リンカー、VID;(3)CID、リンカー、VID、Fc;(4)VID、リンカー、CID、リンカー、Fc;(5)Fc、リンカー、VID、リンカー、CID;および(6)Fc、リンカー、CID、リンカー、VID。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、CID、VID、Fc、およびリンカーを、VID、Fc、リンカー、CIDのN末端からC末端への順序で含む。
【0057】
融合タンパク質
本明細書中に開示のように、融合タンパク質は、2つの異なる標的結合パートナーに対して結合特異性を有するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、ヒトポリペプチドである。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、補体経路の成分(例えば、C3b、C4b、iC3b、C3dg、C1q、またはMBP)に対する第1の結合特異性およびVEGF(例えば、VEGF−A VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、またはP1GF)に対する第2の結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、哺乳動物(例えば、ヒト)の補体経路の成分に対する第1の結合特異性および哺乳動物(例えば、ヒト)VEGFに対する第2の結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書中に記載の任意の補体調節化タンパク質と同一の補体経路の成分に結合する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、CR1、H因子、DAF、MCP、またはC4BPのいずれか1つと同一の補体経路の成分に結合する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書中に記載の任意のCIDの少なくとも1つのCIDを含む。いくつかの態様では、融合ポリペプチドは、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCIDを含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書中に記載の任意のVEGFRと同一のVEGF経路の成分に結合する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、VEGFR−1、VEGFR−2、またはVEGFR−3のいずれか1つと同一のVEGF経路の成分に結合する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、本明細書中に記載の任意のVIDの少なくとも1つのVIDを含む。いくつかの態様では、融合ポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含むVIDを含む。他の態様では、融合ポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列を含むVIDを含む。CIDおよびVIDを含む本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドは、半減期延長ドメインをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、半減期延長ドメイン(**)はFc領域である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号7、39、41、および42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CID、VID、および半減期延長ドメインを含む融合ポリペプチドは、補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する(例えば、VEGF活性の阻害)。CID、VID、および半減期延長ドメインを含む本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドは、リンカーをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CIDは、少なくとも1つの哺乳動物(例えば、ヒト)補体調節タンパク質の短いSCRを含む。さらなる実施形態では、VIDは、哺乳動物(例えば、ヒト)VEGFRの細胞外ドメインの一部を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、少なくとも1つのヒト補体調節タンパク質の短いSCRを含むCIDおよびヒトVEGFRの細胞外ドメインの一部を含むVIDを含む。1つの態様では、本発明は、以下を含む融合ポリペプチドを提供する:
a)以下のアミノ酸配列を含むCID:
【化1】
;
b)以下のアミノ酸配列を含むVID:
【化2】
;および
c)以下のアミノ酸配列を含む半減期延長ドメイン:
【化3】
。
【0058】
別の態様では、本発明は、以下を含む融合ポリペプチドを提供する:
a)以下のアミノ酸配列を含むCID:
【化4】
;
b)以下のアミノ酸配列を含むVID:
【化5】
;および
c)以下のアミノ酸配列を含む半減期延長ドメイン:
【化6】
。
【0059】
CID、VID、および半減期(half−long)延長ドメインを任意の順序で含む融合ポリペプチドを本明細書中に提供する。例えば、融合ポリペプチドは、(1)VID、Fc、CID;(2)CID、Fc、VID;(3)CID、VID、Fc;(4)VID、CID、Fc;(5)Fc、VID、CID;および(6)Fc、CID、VIDからなる群から選択されるN末端からC末端への順序でCID、VID、およびFc領域(Fc)を含むことができる。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、VID、Fc、CIDのN末端からC末端への順序でCID、VID、およびFcを含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化7】
。
【0060】
他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化8】
。
【0061】
さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化9】
。
【0062】
さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化10】
。
【0063】
他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化11】
。
【0064】
他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化12】
。
【0065】
さらに他の実施形態では、融合ポリペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
【化13】
。
【0066】
少なくとも2つ以上のCID、2つ以上のVID、および/または2つ以上の半減期延長ドメインを含む融合タンパク質も意図する。例えば、融合タンパク質は、2つのCID、VID、およびFc領域を、VID、Fc、CID、CID、またはその任意の他の組み合わせのN末端からC末端への順序で含むことができる。1つの実施形態では、融合タンパク質は、CID、2つのVID、およびFc領域を、VID、VID、Fc、CID、またはその任意の他の組み合わせのN末端からC末端への順序で含むことができる。別の実施形態では、融合タンパク質は、CID、VID、および2つのFc領域を、VID、Fc、CID、Fc、またはその任意の他の組み合わせのN末端からC末端への順序で含むことができる。さらに別の実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも2つのCID、少なくとも2つのVID、および少なくとも2つのFc領域を、VID、Fc、VID、Fc、CID、CID、またはその任意の他の組み合わせのN末端からC末端への順序で含むことができる。各組み合わせが本明細書中で明確に記述されているかのように、少なくとも1つのVID、少なくとも1つのCID、および少なくとも1つの半減期延長ドメイン(*)の任意の組み合わせを本明細書中に提供する。
【0067】
本発明に記載の融合タンパク質は、CIDの化学修飾形態を含むことができる。例えば、in vivoでの半減期を増大させるためにCIDをPEG化するかポリマーと結合体化することができ、またはin vivoでの半減期を増大させるためにCIDを抗体、抗体のフラグメント、Fc領域、HSA、または他のヒトタンパク質に化学的に架橋することができ、またはin vivoでの抗補体活性を延長するためにCIDを任意の長期徐放形式で処方することができる。
【0068】
本発明に記載の融合タンパク質は、VIDの化学修飾形態を含むことができる。例えば、in vivoでの半減期を増大させるためにVIDをPEG化するかポリマーと結合体化することができ、またはin vivoでの半減期を増大させるためにVIDを抗体、抗体のフラグメント、Fc領域、HSA、または他のヒトタンパク質に化学的に架橋することができ、またはin vivoでの抗補体活性を延長するためにVIDを任意の長期徐放形式で処方することができる。
【0069】
本発明に記載の融合タンパク質は、CIDおよびVIDの化学修飾形態を含むことができる。例えば、in vivoでの半減期を増大させるためにCIDおよびVIDをPEG化するかポリマーと結合体化することができ、またはin vivoでの半減期を増大させるためにCIDおよびVIDを抗体、抗体のフラグメント、Fc領域、HSA、または他のヒトタンパク質に化学的に架橋することができ、またはin vivoでの抗補体活性を延長するためにCIDおよびVIDを任意の長期徐放形式で処方することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書中に提供した融合タンパク質のアミノ酸配列バリアントを意図する。例えば、CID、VID、および/または半減期延長ドメインの結合親和性および/または他の生物学的性質を改善することが望ましいかもしれない。融合ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントを、CID、VID、および/または半減期延長ドメインをコードするヌクレオチド配列への適切な修飾の導入またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、CID、VID、および/または半減期延長ドメインのアミノ酸配列内の残基の欠失および/または挿入および/または置換が含まれる。最終構築物が所望の特徴(例えば、補体成分への結合、VEGFへの結合、補体経路活性の阻害、VEGF経路活性の阻害、および/または半減期の延長)を保有することを条件として、欠失、挿入、および置換を任意に組み合わせて最終構築物まで到達することができる。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、(1)VID、Fc、CID;(2)CID、Fc、VID;(3)CID、VID、Fc;(4)VID、CID、Fc;(5)Fc、VID、CID;および(6)Fc、CID、VIDからなる群から選択されるN末端からC末端への順序で本明細書中に開示の任意のCID、VID、およびFcを含む融合ポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドバリアントは、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。
【0071】
本明細書中に開示のアミノ酸残基置換基には、保存的置換基も含まれる。保存的置換基を、「好ましい置換基」の表題で以下の表2に示す。かかる置換基によって生物学的活性が変化する場合、表2中で「例示的置換基」と命名したか、アミノ酸クラスに関して以下にさらに記載したより実質的な変化を導入し、産物をスクリーニングすることができる。表2に示したか、アミノ酸クラスに関して以下に記載のアミノ酸置換基を、本明細書中に提供した任意の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)に導入することができる。
【表2】
【0072】
タンパク質またはポリペプチドの生物学的性質の実質的な修飾を、(a)置換領域内のポリペプチド骨格の構造(例えば、シート高次構造またはヘリックス高次構造としての構造)、(b)標的部位の分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩高性を維持する効果が有意に異なる置換基の選択によって行う。以下の共通側鎖の性質にしたがって、アミノ酸をグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性で疎水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe;
(7)巨大で疎水性:ノルロイシン、Met、Val、Leu、Ile.
【0073】
非保存的置換は、これらのクラスの1つの別のクラスへのメンバーの交換を伴う。
【0074】
好ましい変異誘発の位置である融合タンパク質の一定の残基または領域の有用な同定方法は、Cunningham and Wells in Science,244:1081−1085(1989)に記載のように、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の1残基または群を同定し(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)、アミノ酸の標的結合パートナーとの相互作用に影響を及ぼすために中性または負電荷のアミノ酸(より好ましくはアラニンまたはポリアラニン)と置換する。次いで、置換に対する機能的感受性が証明されているこれらのアミノ酸の位置を、置換部位でまたは置換部位の代わりにさらなるまたは他のバリアントを導入することによって精巧にする。したがって、アミノ酸配列異形の導入部位を予め決定するが、変異の性質自体は予め決定する必要はない。例えば、所与の部位での変異のパフォーマンスを分析するために、標的コドンまたは領域でalaスキャニングまたはランダム変異誘発を行い、発現された融合ポリペプチドバリアントを所望の活性についてスクリーニングする。
【0075】
融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の適切な高次構造の維持に関与しない任意のシステイン残基を一般にセリンと置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止することもできる。逆に、システイン結合を、融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)に付加してその安定性を改善することができる。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明のペプチドまたはポリペプチドは、1つ以上の天然に存在しないか修飾されたアミノ酸を含むことができる。「天然に存在しないアミノ酸残基」は、ポリペプチド鎖内の隣接アミノ酸残基に共有結合することができる上記列挙の天然に存在するアミノ酸残基以外の残基をいう。非天然アミノ酸には、ホモ−リジン、ホモ−アルギニン、ホモ−セリン、アゼチジンカルボン酸、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸(3−aminoisbutyric acid)、2−アミノピメリン酸、第三級ブチルグリシン、2,4−ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルアラニン、N−メチルグリシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルペンチルグリシン、N−メチルバリン、ナフサラニン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、シトルリン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸、およびチオプロリンが含まれるが、これらに限定されない。修飾アミノ酸には、そのN末端アミノ基またはその側鎖基上で可逆的または不可逆的に化学的にブロッキングされたか修飾された天然および非天然のアミノ酸(例えば、N−メチル化DおよびLアミノ酸、別の官能基に対して化学修飾された側鎖官能基)が含まれる。例えば、修飾アミノ酸には、メチオニンスルホキシド;メチオニンスルホン;アスパラギン酸−(β−メチルエステル)、アスパラギン酸の修飾アミノ酸;N−エチルグリシン、グリシンの修飾アミノ酸;またはアラニンカルボキサミドおよびアラニンの修飾アミノ酸が含まれる。さらなる非天然アミノ酸および修飾アミノ酸、これらのタンパク質およびペプチドへの組み込み方法は当該分野で公知である(例えば、Sandbergら、(1998)J.Med.Chem.41:2481−91;Xie and Schultz(2005)Curr.Opin.Chem.Biol.9:548−554;Hodgson and Sanderson(2004)Chem.Soc.Rev.33:422−430を参照のこと。
【0077】
アミノ酸配列挿入物には、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ−(「N」)および/またはカルボキシ−(「C」)末端融合物、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入物が含まれる。末端挿入物の例には、N末端メチオニル残基を有する融合ポリペプチドまたは細胞傷害性ポリペプチドに融合した融合ポリペプチドが含まれる。融合ポリペプチド分子の他の挿入バリアントには、融合ポリペプチド(例えば、半減期延長(proloning)ドメイン)の血清半減期を増大させる酵素またはポリペプチドとの融合ポリペプチドのN末端またはC末端の融合物が含まれる。
【0078】
本発明は、本明細書中に提供した任意の融合ポリペプチドの成分であり得るシグナルペプチドを提供する。例えば、CID、VID、および半減期延長ドメインを含む融合ポリペプチドは、異種ポリペプチド、好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断を有するシグナル配列または他のポリペプチドをさらに含むことができる。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、真核生物宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。未変性の哺乳動物シグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞のために、真核生物(すなわち、哺乳動物)シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンII遺伝子由来のリーダー配列からなる群から選択される原核生物シグナル配列と置換する。酵母分泌のために、未変性シグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼリーダー、ファクターリーダー(SaccharomycesおよびKluyveromyces−ファクターリーダーが含まれる)、もしくは酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO第90/13646号に記載のシグナルと置換することができる。哺乳動物細胞発現では、哺乳動物シグナル配列と同様にウイルス分泌リーダー(例えば、単純ヘルペスウイルスgDシグナル)も利用可能である。いくつかの実施形態では、VID、CID、および半減期延長ドメインを含む融合ポリペプチドは、配列番号9、10、および43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをさらに含む。シグナルペプチドを、宿主細胞から産生されるように融合ポリペプチドから完全に切断することができるか、部分的に切断することができる。融合ポリペプチドの混合集団を宿主細胞から産生することができ、ここで、融合ポリペプチドは、完全に切断されたシグナル配列(例えば、シグナル配列なし)、部分的に切断されたシグナル配列(例えば、シグナル配列の一部)、および/または非切断シグナル配列(例えば、完全なシグナル配列)を含む。例えば、そのN末端に配列番号9、10、および43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをさらに含む本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドを、N末端で部分的に切断することができる。1つの実施形態では、そのN末端にシグナルペプチドをさらに含む融合ポリペプチドのN末端を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22個のアミノ酸残基のいずれか1つまでで切断することができる。別の実施形態では、N末端にシグナルペプチドをさらに含む融合ポリペプチドをN末端で切断して、シグナルペプチド由来の1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基のいずれか1つを含む融合ポリペプチドを産生することができる。いくつかの実施形態では、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをさらに含む。他の実施形態では、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドは、配列番号10または43のアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをさらに含む。
【0079】
本発明は、各融合タンパク質が本明細書中に開示の任意の融合タンパク質を含む、2つの融合タンパク質を含む二量体融合タンパク質を提供する。1つの実施形態では、二量体融合タンパク質は2つの同一の融合タンパク質を含む。別の実施形態では、二量体融合タンパク質は2つの異なる融合タンパク質を含む。別の実施形態では、二量体融合タンパク質は、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1つの融合タンパク質を含む。別の実施形態では、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質は、N末端またはC末端から除去された1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基を有し得る。1つの実施形態では、融合タンパク質は、タンパク質融合二量体として前記融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞から回収される。
【0080】
IV.核酸、ベクター、および宿主細胞
核酸
本明細書中に記載の任意のCIDをコードする単離核酸を本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、CIDは、配列番号17〜22および29〜32からなる群から選択される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。この開示は、単離核酸分子をさらに提供し、ここで、この核酸分子は、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCIDをコードする。本明細書中に記載の任意のVIDをコードする単離核酸も本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、VIDは、配列番号27の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。単離核酸分子を本明細書中にさらに提供し、ここで、この核酸分子は、配列番号11および38からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVIDをコードする。本明細書中に記載の任意の半減期延長ドメインをコードする単離核酸も本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、半減期延長ドメインはFc領域である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、配列番号23の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。単離核酸分子を本明細書中にさらに提供し、ここで、この核酸分子は、配列番号7、39、41、および42からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を封組む半減期延長ドメインをコードする。本明細書中に記載の任意の融合ポリペプチドをコードする単離核酸を本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号28の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。単離核酸分子を本明細書中にさらに提供し、ここで、この核酸分子は、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする。
【0081】
本明細書中に記載の任意のポリペプチド(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン、リンカー、融合ポリペプチドなど)をコードするポリヌクレオチド配列を、標準的な合成技術および/または組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列を適切なソース細胞から単離し、配列決定することができる。抗体、ペプチド、および/またはポリペプチドのソース細胞には、抗体、ペプチド、および/またはポリペプチド産生細胞(ハイブリドーマ細胞など)が含まれるであろう。あるいは、ポリヌクレオチドを、ヌクレオチド合成機またはPCR技術を使用して合成することができる。
【0082】
ベクター
一旦得られると、ペプチドおよび/またはポリペプチドをコードする配列を、宿主細胞中で異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。当該分野で利用可能であり、且つ公知である多数のベクターを、本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸のサイズおよびベクターで形質転換されるべき特定の宿主細胞に主に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現またはその両方)およびベクターが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて種々の成分を含む。ベクター成分には、一般に、以下が含まれるが、これらに限定されない:複製起点(特に、ベクターが原核細胞に挿入される場合)、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列。いくつかの実施形態では、ベクターは発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、CIDアミノ酸配列をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCIDをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、VIDアミノ酸配列をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号11および38からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むVIDをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、半減期延長ドメインアミノ酸配列をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、半減期延長ドメインはFc領域である。適切なFc領域配列は当該分野で周知である。例えば、1つ以上のFc領域をコードする多数の発現ベクターは、American Type Culture Collection(Rockville,Md)から利用可能である。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号7、39、41、および42からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むFc領域をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、融合ポリペプチドアミノ酸配列をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターは、シグナルペプチドをコードする核酸をさらに含む。シグナルペプチドをコードする核酸を、読み取り枠(reading from)で融合ポリペプチドをコードする核酸にライゲーションする。いくつかの態様では、融合ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターは、配列番号9、10、および43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むシグナルペプチドをコードする核酸をさらに含む。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸ならびに配列番号9、配列番号10、または配列番号43のアミノ酸配列を含むシグナル配列をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、ベクターは、配列番号12のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸ならびに配列番号9、配列番号10、または配列番号43のアミノ酸配列を含むシグナル配列をコードする核酸を含む。他の態様では、ベクターは、配列番号40のアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸ならびに配列番号9、配列番号10、または配列番号43のアミノ酸配列を含むシグナル配列をコードする核酸を含む。当該分野で周知のベクターおよび本明細書中に開示のベクター(例えば、pCI−neo)を、宿主細胞内での本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードするポリヌクレオチドの複製および発現に使用することができる。
【0084】
(1)シグナル配列成分
いくつかの実施形態では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を横切る発現されたポリペプチドの転位置を指示する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分であり得るか、ベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部であり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであるべきである。異種ポリペプチドを起源とするシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞のために、シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列と置換する。いくつかの実施形態では、シグナル配列は、配列番号25および26からなる群から選択される核酸によってコードされる。
【0085】
(2)複製起点
発現ベクターおよびクローニングベクターの両方は、ベクターが1つ以上の選択された宿主細胞内で複製することができる核酸配列を含む。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAから独立して複製することができ、且つ複製起点または自己複製配列を含む配列である。かかる配列は、種々の細菌、酵母、およびウイルスで周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点はほとんどのグラム陰性菌に適切であり、2μプラスミド起点は酵母に適切であり、種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(「VSV」)、またはウシ乳頭腫ウイルス(「BPV」))は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターに必要ない(初期プロモーターを含むので、典型的には、SV40起点をのみを使用することができる)。
【0086】
(3)選択遺伝子成分
発現ベクターおよびクローニングベクターはまた、形質転換細胞における表現型選択が可能な選択マーカーとして公知の選択遺伝子を含むことができる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリン)に対する耐性を付与し、(b)栄養要求性の欠損を補完し、または(c)複合培地から利用できない重要な栄養素(例えば、BacilliのためのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)を供給するタンパク質をコードする。選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、薬物耐性を付与されたタンパク質を産生し、したがって、選択レジメンを生き抜く。かかる優性選択ストラテジーの例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの別の例は、融合ポリペプチドまたは融合ポリペプチドフラグメントをコードする核酸(ジヒドロ葉酸レダクターゼ(「DHFR」)、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、およびオルニチンデカルボキシラーゼなど)を取り込む能力を有する細胞を同定することが可能な選択マーカーである。例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞を、メトトレキサート(Mtx)(DHFRの競合的アンタゴニスト)を含む培養培地中での全形質転換体の培養によって最初に同定する。野生型DHFRと共に使用するための宿主細胞株の例は、DHFR活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)である。あるいは、GS(グルタミンシンテターゼ)遺伝子で形質転換された細胞を、L−メチオニンスルホキシミン(Msx)(GSのインヒビター)を含む培養培地中での形質転換体の培養によって同定する。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の同時形質転換核酸と共に増幅される。GS選択/増幅系を、上記のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用することができる。
【0087】
別の例のために、大腸菌を、典型的には、pBR322(大腸菌種由来のプラスミド)を使用して形質転換する。pBR322はアンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含み、従って、形質転換された細胞の容易な同定手段が得られる。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドまたはバクテリオファージも含むことができるか、内因性タンパク質発現のために微生物によって使用することができるプロモーターを含むように改変することができる。
【0088】
酵母での使用に適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファンを含む培地中で成長する能力を欠く酵母の変異株(例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1)のための選択マーカーを提供する。Jones,Genetics,85:12(1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1の破壊は、トリプトファンの非存在下での成長による形質転換の検出に有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(例えば、ATCC20,622または38,626)を、Leu2遺伝子を保有する公知のプラスミドによって補完することができる。さらに、1.6μm環状プラスミドpKD1由来のベクターを、Kluyveromyces酵母の形質転換のために使用することができる。あるいは、組換え仔牛キモシンの大量産生のための発現系は、K.lactisについて報告されていた。Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)。Kluyveromycesの工業用菌株による成熟組換えヒト血清アルブミン分泌のための安定な多コピー発現ベクターも開示されている。Fleerら、Bio/Technology,9:968−975(1991)。
【0089】
さらに、宿主微生物と適合するレプリコンおよび調節配列を含むファージベクターを、これらの宿主と関連した形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、バクテリオファージ(λGEM.TM.−11など)を、感受性宿主細胞(大腸菌LE392など)を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作製で利用することができる。
【0090】
(4)プロモーター成分
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、且つ融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含む。原核生物宿主との使用に適切なプロモーターには、phoAプロモーター、ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファンプロモーター系、およびハイブリッドプロモーター(tacプロモーターなど)が含まれる。しかし、細菌で機能的な他のプロモーター(他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーターなど)も適切である。
【0091】
当業者によって確認することができる特定の状況のニーズにしたがって、構成性プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかを本発明で使用することができる。種々の潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターは周知である。選択されたプロモーターを、制限酵素消化を介したソースDNAからのプロモーターの除去および単離プロモーター配列の最適なベクターへの挿入によって本明細書中に記載のポリペプチドをコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。未変性プロモーター配列および多数の異種プロモーターの両方を使用して、標的遺伝子の増幅および/または発現を指示することができる。しかし、異種プロモーターは、一般に、未変性の標的ポリペプチドプロモーターと比較してより多くを転写し、発現した標的遺伝子の収率がより高いので、異種プロモーターが好ましい。
【0092】
真核生物のプロモーター配列が公知である。実質的にすべての真核生物遺伝子が、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に維持するATリッチ領域を有する。多数の遺伝子の転写開始配列から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域(式中、Nは任意のヌクレオチドであり得る)である。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの全ての配列を、真核生物発現ベクターに挿入することができる。
【0093】
酵母宿主との使用に適切なプロモーター配列の例には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素(エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなど)のためのプロモーターが含まれる。
【0094】
酵母内の誘導性プロモーターは、成長条件によって転写が調節されるというさらなる利点を有する。例示的な誘導性プロモーターには、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用を担う酵素のためのプロモーター領域が含まれる。酵母発現での使用に適切なベクターおよびプロモーターは、欧州特許第73,657号にさらに記載されている。酵母エンハンサーはまた、酵母プロモーターと共に有利に使用される。
【0095】
哺乳動物宿主細胞中のベクター由来の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードする核酸の転写を、例えば、ウイルス(ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉種ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、最も好ましくはサルウイルス40(SV40)など)のゲノムから得られるプロモーター、異種哺乳動物プロモーター(例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター)、および熱ショック遺伝子プロモーター(但し、かかるプロモーターが所望の宿主細胞系と適合することを条件とする)によって調節することができる。
【0096】
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターを、SV40ウイルス複製起点も含むSV40制限フラグメントとして得ることが都合良い。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターを、HindIII E制限フラグメントとして得ることが都合良い。ベクターとしてウシ乳頭腫ウイルスを使用する哺乳動物宿主におけるDNA発現系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修正形態は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞内でのヒトインターフェロンcDNAの発現方法に関してはReyesら、Nature 297:598−601(1982)も参照のこと。あるいは、ラウス肉腫ウイルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0097】
(5)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードするDNAの転写は、しばしば、エンハンサー配列のベクターへの挿入によって増加する。哺乳動物遺伝子由来の多数のエンハンサー配列が、現在、公知である(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)。しかし、典型的には、当業者は、真核生物ウイルス由来のエンハンサーを使用するであろう。例には、複製起点の後期側(bp100〜270)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについては、Yaniv,Nature 297:17−18(1982)も参照のこと。エンハンサーを、ベクター内の融合タンパク質または融合タンパク質フラグメントのコード配列の5’または3’の位置にスプライシングすることができるが、プロモーターの5’側に配置することが好ましい。
【0098】
(6)転写終結成分
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒトの細胞、または他の多細胞生物由来の有核細胞)中で使用される発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含むであろう。かかる配列は、一般に、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’、時折、3’非翻訳領域から利用可能である。これらの領域は、抗体またはそのフラグメントをコードするmRNAの非翻訳部分中でポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO第94/11026号およびこれに開示の発現ベクターを参照のこと。
【0099】
宿主細胞
本明細書中に記載のベクター中の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードするDNAのクローニングまたは発現に適切な宿主細胞には、上記の原核細胞、酵母細胞、または高等真核細胞が含まれる。この目的に適切な原核生物には、真正細菌(グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、腸内細菌科(Escherichia(例えば、大腸菌)、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella(例えば、ネズミチフス菌)、Serratia(例えば、Serratia marcescans)、およびShigellaなど)、ならびにBacilli(枯草菌およびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日公開の旧東ドイツ特許第266,710号に開示のB.licheniformis 41P)など)、Pseudomonas(緑膿菌など)、およびStreptomycesなど)が含まれる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は、大腸菌294(ATCC31,446)であるが、他の株(大腸菌B株、大腸菌X1776株(ATCC31,537)、および大腸菌W3110株(ATCC27,325)など)も適切である。これらの例は、本発明を制限するよりもむしろ例示している。
【0100】
融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を、特に、グリコシル化が必要ない場合(融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)が細胞毒性薬(例えば、毒素)に結合体化している場合など)に細菌内で産生することができる。大腸菌内での産生は、より迅速且つ費用効果が高い。細菌内での融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の発現については、例えば、発現および分泌を最適にするための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を記載している米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、および米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照のこと。発現後、融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を、可溶性画分中の大腸菌細胞ペーストから単離し、例えば、融合ポリペプチドの結合部分(Fc領域アイソタイプなど)に応じてプロテインAまたはGによって精製することができる。例えば、CHO細胞中で発現した融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を精製するために使用したプロセスと同一のプロセスによって最終精製を行うことができる。
【0101】
原核生物に加えて、真核微生物(糸状菌または酵母など)も融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)をコードするベクターのための適切なクローニングまたは発現宿主である。出芽酵母、すなわち一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の間で最も一般的に使用されている。しかし、多数の他の属、種、および株が一般に利用可能であり、本明細書中で有用である(分裂酵母;Kluyveromyces spp.(K.lactis、K.fragilis(ATCC12,424)、K.bulgaricus(ATCC16,045)、K.wickeramii(ATCC24,178)、K.waltii(ATCC56,500)、K.drosophilarum(ATCC36,906)、K.thermotolerans、およびK.marxianusなど);yarrowia(欧州特許第402,226号);Pichia pastoris(欧州特許第183,070号);Candida;Trichoderma reesia(欧州特許第244,234号);アカパンカビ;Schwanniomyces(Schwanniomyces occidentalisなど);および糸状菌(例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、およびAspergillus宿主(A.nidulansおよびクロコウジカビなど)など)など)。治療タンパク質産生のための酵母および糸状菌の使用を考察している概説については、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)を参照のこと。
【0102】
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、それによって部分的または完全にヒトのグリコシル化パターンを有する融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)が産生される一定の真菌および酵母株を選択することができる。例えば、Liら、Nat.Biotech.24:210−215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化について記載);およびGerngrossら、前出を参照のこと。
【0103】
グリコシル化された融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。ヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、およびカイコガ(ガ)などの宿主由来の多数のバキュロウイルス株およびバリアントならびに対応する許容性宿主細胞が同定されている。トランスフェクション用の種々のウイルス株が公的に利用可能である(例えば、Autographa californica NPVのL−1バリアントおよびカイコガ NPVのBm−5株)。かかるウイルスを、特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのための本発明のウイルスとして使用することができる。
【0104】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、およびタバコの植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。
【0105】
しかし、脊椎動物細胞が最も興味深く、培養(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖が日常的手順となりつつある。有用な哺乳動物宿主−細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(293細胞または懸濁培養での成長のためにサブクローン化された293細胞、Grahamら、J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞癌株(Hep G2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFR
−CHO細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))が含まれる);および骨髄腫細胞株(NS0およびSp2/0など)が含まれる。ポリペプチド産生に適切な一定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.255−268を参照のこと。
【0106】
本明細書中に開示の任意のタンパク質を発現することができる哺乳動物細胞の例を、ハムスター細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ヤギ細胞、ブタ細胞、ウマ細胞、ヒツジ細胞、サル細胞、チンパンジー細胞、およびヒト細胞からなる群から選択することができる。別の実施形態では、動物細胞は、神経系細胞(末梢神経系細胞または中枢神経系細胞などであるが、これらに限定されない)、筋肉細胞(心筋細胞、骨格筋細胞、または平滑筋細胞など)、配偶子(精子細胞または卵母細胞など)、癌細胞、免疫細胞(マクロファージ、T細胞、またはB細胞などであるが、これらに限定されない)、幹細胞(胚性幹細胞または成体幹細胞などであるが、これらに限定されない)、または内分泌細胞(甲状腺細胞、視床下部細胞、下垂体細胞、副腎細胞、精巣細胞、卵巣細胞、膵臓細胞(β細胞など)、胃細胞、または腸細胞などであるが、これらに限定されない)である。いくつかの実施形態では、細胞は細胞培養におけるヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞培養における非ヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は癌細胞である。
【0107】
宿主細胞を、融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の産生のための上記発現ベクターまたはクローニングベクターを使用して形質転換またはトランスフェクションし、必要に応じてプロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増殖のために改変した従来の栄養培地中で培養する。
【0108】
トランスフェクションは、任意のコード配列が実際に発現されるかどうかと無関係な宿主細胞による発現ベクターの取り込みをいう。多数のトランスフェクション法が当業者に公知である(例えば、CaPO
4沈殿およびエレクトロポレーション)。一般に、このベクターの任意の操作が宿主細胞内で示された場合に首尾の良いトランスフェクションと認識される。
【0109】
形質転換は、DNAが染色体外エレメントとしてか染色体組み込み体によって複製可能であるような原核生物宿主へのDNAの導入を意味する。使用した宿主細胞に応じて、形質転換を、かかる細胞に適切な標準的技術を使用して行う。塩化カルシウムを使用したカルシウム処理を、一般に、実質的な細胞壁バリアを含む細菌細胞のために使用する。別の形質転換法はポリエチレングリコール/DMSOを使用する。使用することができる別の技術はエレクトロポレーションである。
【0110】
V.融合ポリペプチドおよびそのフラグメントの産生方法
本明細書中に開示の本発明の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の産生方法を本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、融合ポリペプチドを産生する条件下で培養する工程および宿主細胞によって産生された融合ポリペプチドを回収する工程を含む本明細書中に開示の任意の融合ポリペプチドの産生方法。いくつかの態様では、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を、融合ポリペプチドを産生する条件下で培養する工程および宿主細胞によって産生された融合ポリペプチドを回収する工程を含む融合ポリペプチドの産生方法。
【0111】
(1)宿主細胞の培養
本発明の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を産生するために使用した原核細胞を、当該分野で公知であり、且つ選択された宿主細胞の培養に適切な培地中で成長させる。適切な培地の例には、ルリア培地(LB)+必要な栄養補助物質が含まれる。好ましい実施形態では、培地はまた、発現ベクターの構造に基づいて選択される発現ベクターを含む原核細胞を選択的に成長させるための選択剤を含む。例えば、アンピシリンを、アンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の成長培地に添加する。炭素、窒素、および無機リン酸源の他に必要な任意の補助物質を、単独または別の補助物質または培地(複合窒素源など)との混合物として適切な濃度で含むこともできる。任意選択的に、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコラート、ジチオエリスリトール、およびジチオトレイトールからなる群から選択される1つ以上の還元剤を含むことができる。真核生物宿主細胞を、適切な温度で培養する。大腸菌成長のために、例えば、好ましい温度は、約20℃〜約39℃、より好ましくは約25℃〜約37℃の範囲、さらにより好ましくは約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて約5〜約9の範囲の任意のpHであり得る。大腸菌のために、pHは、約6.8〜約7.4、より好ましくは約7.0である。誘導性プロモーターを発現ベクター内で使用する場合、タンパク質発現をプロモーターの活性化に適切な条件下で誘導する。例えば、PhoAプロモーターを転写調節のために使用する場合、形質転換された宿主細胞を、誘導用のリン酸制限培地中で培養することができる。当該分野で公知のように、使用したベクター構築物にしたがって種々の他の誘導物質を使用することができる。
【0112】
本明細書中に記載の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を産生するために使用した宿主細胞を、種々の培地中で培養することができる。市販の培地(Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)など)が宿主細胞培養に適切である。さらに、Hamら、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnesら、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;または同第5,122,469号;WIPO公開番号WO第90/03430号;WO第87/00195号;または米国再発行特許第30,985号に記載の任意の培地を、宿主細胞の培養培地として使用することができる。任意のこれらの培地に、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子など)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシン(商標)薬など)、微量元素(通常はマイクロモル範囲にて最終濃度で存在する無機化合物と定義する)、およびグルコースまたは等価なエネルギー源を補足することができる。任意の他の必要な補助物質を、当業者に公知の適切な濃度で含めることもできる。培養条件(温度およびpHなど)は発現のために選択された宿主細胞と共に以前に使用した培養条件であり、当業者に明らかであろう。
【0113】
(2)融合ポリペプチドおよびそのフラグメントの精製
組換え技術を使用する場合、本明細書中に記載の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)を、細胞内、細胞周辺腔内に産生するか、培地中に直接分泌することができる。ポリペプチドが細胞内に産生される場合、第1の工程として、タンパク質回収は、典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段による微生物の破壊を含む。一旦細胞が破壊されると、宿主細胞または溶解したフラグメントのいずれか由来の粒状デブリを、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992)は、大腸菌の細胞周辺腔に分泌されたポリペプチドの単離手順を記載している。簡潔に述べれば、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分間にわたって解凍した。細胞デブリを遠心分離によって除去することができる。ポリペプチドが培地中に分泌される場合、かかる発現系由来の上清を、一般に、最初に濾過し、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して濃縮する。タンパク質分解の阻害のためにプロテアーゼインヒビター(PMSFなど)を前述のいずれかの工程に含めることができ、外来性の夾雑物の成長防止に抗生物質を含めることができる。
【0114】
かかる細胞から調製した融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の組成物を、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィを使用して精製することができ、アフィニティクロマトグラフィが好ましい精製技術である。いくつかの実施形態では、プロテインAまたはプロテインGをアフィニティクロマトグラフィで用いるアフィニティリガンドとして使用する。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの安定性は、融合ポリペプチドまたはそのフラグメント中に存在する任意の免疫グロブリンFc領域の種およびアイソタイプに依存する(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1−13(1983)。1つの好ましい実施形態では、プロテインAを、本明細書中に記載の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の単離および精製のためのアフィニティリガンドとして使用する。いくつかの実施形態では、プロテインGを、本明細書中に記載の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の単離および精製のためのアフィニティリガンドとして使用する。アフィニティリガンドが結合するマトリックスは、殆どの場合アガロースであるが、他のマトリックスを利用可能である。機械的に安定なマトリックス(コントロールドポアガラスまたはポリ(スチレン−ジビニル)ベンゼンなど)により、アガロースを使用して達成できるよりも迅速な流速および短い処理時間が可能である。他のタンパク質精製技術(イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ、ヘパリン、SEPHAROSE(商標)、または陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)でのクロマトグラフィ、ならびにクロマトフォーカシング、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿など)も、回収すべき融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)に応じて利用可能である。いくつかの実施形態では、回収した融合タンパク質は実質的に純粋である。さらなる実施形態では、回収した融合タンパク質は、純度90%、91%、92.%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の少なくともいずれかである。
【0115】
任意の予備精製工程後、目的の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)および夾雑物を含む混合物を、約2.5と4.5との間のpHの溶離緩衝液を使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィに供することができ、好ましくは、低塩濃度(例えば、塩濃度約0〜0.25M)で行うことができる。
【0116】
一般に、研究、試験、および臨床適用で用いる融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)の種々の調製方法論は当該分野で十分に確立されており、これらは上記方法論と一致し、そして/または当業者は目的の特定の融合ポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、CID、VID、半減期延長ドメイン(*)など)に適切と見なしている。
【0117】
(3)融合ポリペプチドおよびそのフラグメントの生物学的活性
ポリペプチドを、一般的に知られている方法(イムノアフィニティカラムまたはイオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたは陽イオン交換樹脂(DEAEなど)によるクロマトグラフィ;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過;疎水性アフィニティ樹脂、マトリックス上に固定した適切な結合パートナーを使用したリガンドアフィニティ、ELISA、BIACore、ウェスタンブロットアッセイ、アミノ酸および核酸配列決定、ならびに生物学的活性など)を使用して精製および同定することができる。
【0118】
本明細書中に開示の融合タンパク質を、生物学的活性(標的結合パートナー(例えば、VEGFまたは補体タンパク質)に対する親和性、競合的結合(例えば、補体調節タンパク質またはVEGFRに対する標的結合パートナーの遮断)、阻害活性(例えば、補体活性化またはVEGF活性化の阻害)、半減期または融合タンパク質、細胞増殖の阻害、腫瘍成長の阻害、および血管形成(例えば、脈絡膜血管新生)の阻害が含まれるが、これらに限定されない)について特徴付けるか評価することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の融合タンパク質を、in vivoおよびin vitroでの生物学的活性について評価することができる。本明細書中に記載の任意のアッセイでは、4℃、20〜28℃(例えば、25℃)、または37℃でアッセイを行う。
【0119】
本明細書中に開示の融合タンパク質を、結合パートナー(補体タンパク質(例えば、C3b、C4b、iC3b、C3dg、C1q、またはMBP)など)に対する親和性について評価することができる。多数の結合親和性の評価方法が当該分野で公知であり、これらを結合パートナーに対する融合タンパク質の結合親和性を同定するために使用することができる。結合親和性を、解離定数(Kd)値または半数効果濃度(EC50)値として示すことができる。結合親和性(例えば、Kd値)の決定技術は当該分野で周知である(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびBIAcoreなど)。Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Publications,NY(1988);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,(2009);Altschuhら、Biochem.,31:6298(1992);およびPharmacia Biosensorによって開示のBIAcore法(その全てが本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。例えば、結合パートナーに対する融合タンパク質の結合親和性を、ELISAを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、融合タンパク質のC3bまたはC4bへの結合を、ELISAを使用してアッセイする。この例示的アッセイでは、96ウェルELISAプレートのウェルに、100ng/ウェルのC3bまたはC4bをコーティングする。約0〜1μMの精製した融合タンパク質を各ウェルに添加し、1時間インキュベーション後、洗浄して非結合のC3bまたはC4bを除去する。5000倍希釈の抗Fc HRP結合体(例えば、Sigmaカタログ番号A0170−1ML)をその後に各ウェルに添加し、1時間インキュベーションする。インキュベーション後、ウェルを洗浄し、TMB基質のための停止試薬(例えば、Sigmaカタログ番号S5814−100ML)を添加する。サンプルの吸収を450nmで測定し、計算ソフトウェア(例えば、Prism4)を使用したS字カーブフィッティングによって分析して、C3bまたはC4bへの融合タンパク質の結合についてのKd値および/またはEC50値を得る。さらなる例では、融合タンパク質のVEGF(例えば、VEGF−A VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、またはPlGF)への結合を、ELISAを使用してアッセイする。例示的アッセイでは、96ウェルELISAプレートを100ngのVEGF−A(例えば、R&D Systems)でコーティングし、約0〜10nMの精製融合タンパク質を各ウェルに添加後、1時間インキュベーションする。洗浄後、5000倍希釈の抗Fc HRP結合体を各ウェルに添加して1時間インキュベーション後、洗浄し、TMB基質のための停止試薬を各ウェルに添加する。サンプルの吸収を450nmで測定し、計算ソフトウェアを使用したS字カーブフィッティングによって分析して、融合タンパク質のVEGF−Aへの結合についてのKd値および/またはEC50値を得る。さらなる例示的アッセイでは、融合タンパク質の可溶性VEGFへの結合を、ヒトVEGF Quantikine ELISAキット(R&D Systemsカタログ番号DVE00)を使用したELISAによってアッセイする。
【0120】
本明細書中に開示の融合タンパク質を、補体経路(例えば、古典的経路、第二経路、および/またはレクチン経路)の阻害活性について評価することができる。多数の阻害活性の評価方法が当該分野で公知であり、これらを融合タンパク質の阻害活性を同定するために使用することができる。結合親和性を、半数効果濃度(EC50)値として示すことができる。例えば、融合タンパク質による古典的補体経路またはレクチン経路の阻害活性を、総溶血(CH50)アッセイを使用して決定することができる。この例示的アッセイでは、37℃で1時間のインキュベーション後に1×10
7抗体感作ヒツジ赤血球/mlの90%が溶解する正常ヒト血清の希釈物を最初に決定する。本アッセイを、0.15mM CaCl
2および0.5mM MgCl
2を含む緩衝液中で行った。古典的補体経路の阻害を、90%の抗体感作したヒツジ赤血球を溶解することができる正常ヒト血清の希釈物を0〜500nMの融合タンパク質と37℃で1時間混合することによって活性化する。次いで、抗体感作したヒツジ赤血球の溶血を、1時間のインキュベーション後、541nmでの吸収測定後に計算ソフトウェア(例えば、Prism4)を使用したS字カーブフィッティングによって分析して融合タンパク質による古典的補体経路またはレクチン経路の阻害活性についてのEC50値を得ることによってアッセイする。さらなる例示的アッセイでは、融合タンパク質による第二経路の補体の阻害活性を、CH50アッセイで使用した緩衝液中でのカルシウムイオンのキレート化のためにエチレングリコール四酢酸(EGTA)を含めることによって決定する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質による補体経路の阻害活性は、第二経路C3−コンバターゼについての崩壊促進活性(DAA)の阻害である。別の実施形態では、融合タンパク質による補体経路の阻害活性は、第二経路C3−コンバターゼについての崩壊促進活性(DAA)の阻害である。融合タンパク質によるDAAの阻害を、当該分野で公知の方法ならびに本明細書中に開示の任意の方法(例えば、実施例7)によって決定することができる。例示的なCH50アッセについては、Costabile,M.,(2010).J.Vis.Exp.29(37):1923(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0121】
本明細書中の任意の実施形態では、融合タンパク質のEC50は、活性阻害(例えば、補体活性および/またはVEGF活性の阻害)について≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)である。本明細書中の任意の実施形態では、融合タンパク質のKdは、結合パートナー(例えば、補体タンパク質および/またはVEGF)について、約1.0mM、500μM、100μM、50μM、25μM、10μM、5μM、1μM、900nM、800nM、700nM、600nM、500nM、400nM、350nM、300nM、250nM、 200nM、150nM、100nM,95nM、90nM、85nM、80nM、75nM、70nM、65nM、60nM、55nM、50nM、45nM、40nM、35nM、30nM、25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、1nM、900pM、800pM、700pM、600pM、500pM、400pM、300pM、200pM、100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、5pM、4pMまたは3pMのいずれか未満(これらの数値の両端および間の任意の値を含む)である。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の融合ポリペプチドバリアントは、本明細書中に記載の野生型融合ポリペプチドの結合と比較して高い親和性で結合パートナーに結合する。いくつかの態様では、融合ポリペプチドバリアントは、配列番号12、33〜37、および40からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む融合ポリペプチドによる結合パートナーの結合と比較して10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、または10,000倍の親和性の少なくともいずれか(これらの数値の両端および間の任意の値を含む)で結合パートナーに結合する。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書中に開示の融合タンパク質を、抗増殖活性(細胞増殖または腫瘍成長の減少など)について評価することができる。多数の融合タンパク質の抗増殖性の評価方法が当該分野で公知である。1つの例示的なアッセイでは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を使用して、VEGF依存性細胞増殖の阻害を証明することができる。このアッセイでは、HUVECを、2%FBSを有する内皮細胞成長培地(例えば、Lonza,Inc.)中に維持する。約50μlの1nMのVEGF−Aを、コラーゲンおよび種々の濃度の融合タンパク質でコーティングした96ウェル平底マイクロタイタープレートのウェルに添加する。約50μlの1×10
5細胞/mlのHUVECを含むMedium−199(例えば、Hyclone,Inc.)を各ウェルに添加し、5%CO
2を使用して37℃で72時間インキュベーションする。インキュベーション後、細胞増殖を、10μlのCCK−8(例えば、Dojindo,Inc.)を各ウェルに添加し、次いで、450/650nmでOD吸収を測定して融合タンパク質による細胞増殖の阻害を決定することによってアッセイする。例示的なin vivoアッセイでは、腫瘍成長の阻害を、一定の癌型(例えば、肝細胞癌、結腸直腸癌など)由来の腫瘍を保有する異種移植マウスにおいて評価する。このアッセイでは、種々の濃度の融合タンパク質を、特定の投薬レジメンでマウスに投与し、腫瘍成長を期間中に少なくとも2回測定して融合タンパク質による腫瘍成長の阻害を決定する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質の抗血管新生性を、当該分野で周知の技術を使用して測定する。1つの例示的なアッセイでは、湿性加齢性黄斑変性の動物モデルを使用して、融合タンパク質による眼内の血管新生の阻害をアッセイする。このアッセイでは、レーザー光凝固を動物(例えば、マウス、サルなど)の網膜に送達させて脈絡膜血管新生(CNV)を得、融合タンパク質を投与する。動物(例えば、マウス、ラット、およびサル)の眼内のCNV病変を、当該分野で公知の技術および本明細書中に開示の技術(例えば、実施例11および12)を使用して、融合タンパク質の投与によってCNV病変が減少するかどうかを測定する。Liu,J.ら、(2011).J.Biol.Chem.286(23):20991−21001;Nork,T.M.,(2011).Arch.Ophthalmol.129(8):1042−1052;およびLichtlen,P.(2010).Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.15(9):4738−4745(その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0123】
VI.融合ポリペプチドおよびそのフラグメントを使用した処置方法
本発明は、炎症性疾患、自己免疫疾患、補体関連疾患、眼疾患、および癌の処置または防止方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、炎症性疾患、自己免疫疾患、補体関連疾患、眼疾患、および/または癌を有する被験体の処置方法であって、有効量の本明細書中に記載の任意の融合タンパク質を被験体に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、有効量の少なくとも1つのさらなる治療剤(例えば、下記の治療剤)を個体に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明は、補体タンパク質の補体調節化タンパク質への結合の阻害で用いる融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の融合タンパク質を被験体に投与して補体タンパク質の補体調節化タンパク質への結合を阻害する工程を含む、被験体における補体タンパク質の補体調節化タンパク質への結合の阻害で用いる融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、VEGFのVEGFRへの結合の阻害で用いる融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の融合タンパク質を被験体に投与してVEGFのVEGFRへの結合を阻害する工程を含む、被験体におけるVEGFのVEGFRへの結合の阻害で用いる融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の融合タンパク質を被験体に投与して補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する(例えば、VEGF活性の阻害)工程を含む、被験体における補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路の阻害(例えば、VEGF活性の阻害)で用いる融合タンパク質を提供する。上記の任意の実施形態の「被験体」は、好ましくはヒトである。
【0124】
本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる炎症性疾患には、黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性)、急性心筋梗塞(AMI)、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎(glomernephritis)、喘息、および多発性硬化症が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる自己免疫疾患には、アルツハイマー病、自己免疫性ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、成人呼吸急迫症候群(ARDS)、多発性硬化症、真性糖尿病、ハンチントン病、パーキンソン病、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、CNS炎症性障害、重症筋無力症、糸球体腎炎、および自己免疫性血小板減少症が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる補体関連疾患には、動脈瘤、非定型溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑、特発性血小板減少性紫斑、AMD、自発性胎児消失、再発性胎児消失、外傷性脳損傷、乾癬、自己免疫性溶血性貧血、遺伝性血管浮腫、卒中、出血性ショック、敗血症性ショック、冠状動脈バイパス移植(CABG)手術などの手術由来の合併症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺合併症、虚血−再灌流傷害、移植臓器拒絶、および多臓器不全が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる癌には、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、リンパ腫、白血病、腺癌、膠芽細胞腫、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、子宮内膜癌、および乳癌が含まれる。さらなる実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる本明細書中に開示の任意の癌は転移性である。本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる眼疾患には、湿性加齢性黄斑変性、乾性加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、水晶体後線維増殖、網膜中心閉塞、網膜静脈閉塞、虚血性網膜症、高血圧性網膜症、ブドウ膜炎(例えば、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または汎ブドウ膜炎)、ベーチェット病、ビエッティ結晶状変性症、眼瞼炎、緑内障(例えば、開放隅角緑内障)、血管新生緑内障、角膜の血管新生、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜下血管新生、角膜の炎症、および角膜移植由来の合併症が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書中に記載の融合タンパク質および組成物は、黄斑変性(AMDなど)の処置に特に有用である。AMDは、米国および他の先進国の高齢者(50歳超)における失明および視力障害の主因である(Bird,A.C.,(2010).J.Clin.Invest.,120(9):3033−3041)。AMDは、大まかに2つの型(湿性および乾性)に分類され、乾性が全AMD症例の80〜90%までを構成する。乾性AMD(非滲出性)は、ドルーゼンと呼ばれる細胞片が網膜と脈絡膜との間に蓄積するAMD型である。乾性AMDは3つの病期(初期、中期、および進行期)を有し、黄斑ドルーゼンの存在によって特徴付けられる。進行性乾性AMDでは、中心地図状委縮が起こり、それにより、眼の中心部の視力が失われる。AMDの湿性(滲出性または血管新生)形態は、異常な血管(脈絡膜血管新生、CNV)が脈絡膜から黄斑後部のブルッフ膜まで成長し、それにより、急速に視力喪失するより重篤な形態である。近年、補体活性化がAMDの病理発生で主な役割を果たすという証拠が増加しつつある(Issa,P.C.ら、(2011),Graefes.Arch.Clin.Exp.Ophthalmol.,249:163−174)。例えば、高レベルの補体タンパク質がドルーゼン中に検出されている。さらに、遺伝学研究により、AMDリスクとH因子(CFH)、CFHR1、CFHR3、C2、C3、B因子、I因子を含む補体タンパク質遺伝子の多形との関連が確認されている。特に、CFH Y402H対立遺伝子はAMDリスクと高度に相関する。最後に、補体活性化産物レベルの増加もAMD患者の血漿内で見出されている。AMDを、視力検査、眼底検査、アムスラーグリッド、フルオレセイン血管造影図を用いるか、AMD関連バイオマーカーについての遺伝子検査によって被験体において検出することができる。乾性AMDから湿性AMDに進行し得ることが一般に認められている。本発明は、有効量の本明細書中に記載の融合タンパク質を含む組成物の投与によるAMD(湿性または乾性AMD形態など)の処置方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、AMDの1つ以上の様相または症状(眼のドルーゼンの形成、眼または眼組織の炎症、光受容体細胞の喪失、視力(例えば、視力および視野が含まれる)の喪失、血管新生、網膜下出血、網膜剥離、血管漏出、および任意の他のAMD関連様相が含まれるが、これらに限定されない)の処置または防止方法を提供する。
【0126】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造または調製における融合タンパク質の使用を提供する。いくつかの実施形態では、医薬は、炎症性疾患、自己免疫疾患、補体関連疾患、眼疾患、および癌の処置用である。いくつかの実施形態では、本発明は、補体タンパク質の補体調節化タンパク質への結合の阻害で用いる医薬の製造のための融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、VEGFのVEGFRへの結合の阻害で用いる医薬の製造のための融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の融合タンパク質を被験体に投与して補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する(例えば、VEGF活性の阻害)工程を含む、被験体における補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路の阻害(例えば、VEGF活性の阻害)で用いる医薬の製造のための融合タンパク質を提供する。上記の任意の実施形態の「被験体」は好ましくはヒトである。いくつかの実施形態では、医薬を、炎症性疾患(黄斑変性(例えば、加齢性黄斑変性)、急性心筋梗塞(AMI)、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎(glomernephritis)、喘息、および多発性硬化症が含まれるが、これらに限定されない)の処置のために使用する。いくつかの実施形態では、医薬を、自己免疫疾患(アルツハイマー病、自己免疫性ブドウ膜炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、成人呼吸急迫症候群(ARDS)、多発性硬化症、真性糖尿病、ハンチントン病、パーキンソン病、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、CNS炎症性障害、重症筋無力症、糸球体腎炎、および自己免疫性血小板減少症が含まれるが、これらに限定されない)の処置のために使用する。いくつかの実施形態では、医薬を、補体関連疾患(動脈瘤、非定型溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑、特発性血小板減少性紫斑、AMD、自発性胎児消失、再発性胎児消失、外傷性脳損傷、乾癬、自己免疫性溶血性貧血、遺伝性血管浮腫、卒中、出血性ショック、敗血症性ショック、冠状動脈バイパス移植(CABG)手術などの手術由来の合併症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺合併症、虚血−再灌流傷害、移植臓器拒絶、および多臓器不全が含まれるが、これらに限定されない)の処置のために使用する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の融合タンパク質によって処置または防止することができる癌には、結腸直腸癌、転移性結腸直腸癌、非小細胞肺癌、リンパ腫、白血病、腺癌、膠芽細胞腫、腎臓癌、転移性腎臓癌、胃癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、子宮内膜癌、および乳癌が含まれる。他の実施形態では、医薬を、眼疾患(湿性加齢性黄斑変性、乾性加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、水晶体後線維増殖、網膜中心閉塞、網膜静脈閉塞、虚血性網膜症、高血圧性網膜症、ブドウ膜炎(例えば、前部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または汎ブドウ膜炎)、ベーチェット病、ビエッティ結晶状変性症、眼瞼炎、緑内障(例えば、開放隅角緑内障)、血管新生緑内障、角膜の血管新生、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜下血管新生、角膜の炎症、および角膜移植由来の合併症が含まれるが、これらに限定されない)の処置のために使用する。
【0127】
薬学的投薬量
本発明の薬学的組成物の投薬量および所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて変化し得る。適切な投薬量または投与経路の決定は、十分に当業者の範囲内である。動物実験により、ヒト治療のための有効用量の決定のための信頼できるガイダンスが得られる。有効用量の種間スケーリングを、Mordenti,J.and Chappell,W.“The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,” In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobiら、Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42−46に記載の原理に従って行うことができる。
【0128】
本明細書中に記載の融合ポリペプチドのin vivo投与のために、通常の投薬量は、投与経路に応じて約10ng/kgから約100mg/kg個体体重/日以上、好ましくは約1mg/kg/日〜10mg/kg/日で変化し得る。数日間以上にわたる反復投与のために、処置すべき疾患または障害の重症度に応じて、所望の症状の抑制が達成されるまで処置を継続する。
【0129】
例示的な投与レジメンは、約2mg/kgの初回量、その後の隔週に約1mg/kgの維持量の融合タンパク質の投与を含む。医師が達成を望む薬物動態学的減衰パターンに応じて他の投薬レジメンが有用であり得る。例えば、1〜21回/週の個体への投与が本明細書中で意図される。一定の実施形態では、約3μg/kg〜約2mg/kg(約3μg/kg、約10μg/kg、約30μg/kg、約100μg/kg、約300μg/kg、約1mg/kg、および約2/mg/kgなど)の範囲の投与を使用することができる。一定の実施形態では、投与頻度は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに1回、1週間に1回、2週間毎に1回、4週間毎に1回、5週間毎に1回、6週間毎に1回、7週間毎に1回、8週間毎に1回、9週間毎に1回、10週間毎に1回、または1ヶ月に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、またはそれより長期の間隔である。治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投与レジメン(融合タンパク質の投与を含む)は、使用される用量と独立して期間に応じて変化し得る。
【0130】
特定の融合タンパク質の投薬量を、融合タンパク質を1回以上投与されている被験体において経験的に決定することができる。個体に漸増用量の融合タンパク質を投与する。融合タンパク質の有効性を評価するために、炎症性疾患(AMDなど)の臨床症状をモニタリングすることができる。
【0131】
例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的または予防的のいずれであるか、および当業者に公知の他の要因に応じて、本発明の方法にしたがって融合タンパク質を継続的または間欠的に投与することができる。融合タンパク質を、例えば、炎症性疾患(AMDなど)の発症中または発症後のいずれかに予め選択された期間にわたって継続的に投与するか、一定間隔を開けて投与することができる。
【0132】
特定の投薬量および送達方法に関するガイダンスは、文献に提供されている(例えば、米国特許第4,657,760号;同第5,206,344号;または同第5,225,212号を参照のこと)。異なる処置および異なる疾患または障害に異なる処方物が有効であり、特定の器官または組織の処置を意図する投与が別の器官または組織と異なる様式での送達が必要であり得ることは本発明の範囲内である。さらに、投薬量を、1回以上の個別の投与または連続注入によって投与することができる。数日間以上にわたる反復投与のために、条件に応じて、所望の病徴の抑制が得られるまで処置を維持する。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。
【0133】
処方物の投与
本発明の融合タンパク質(および任意のさらなる治療剤)を、任意の適切な手段(非経口、肺内、および鼻腔内、局所処置が望ましい場合、病巣内投与が含まれる)によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投与が短期間か慢性かに一部依存して、任意の適切な経路(例えば、注射(静脈内または皮下注射など))によって投与することができる。種々の投与計画(単回投与または種々の時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、およびパルス注入が含まれるが、これらに限定されない)が本明細書中で意図される。いくつかの実施形態では、組成物を、眼または眼組織に直接投与する。いくつかの実施形態では、組成物を、例えば、点眼薬で眼に局所的に投与する。いくつかの実施形態では、組成物を、眼(眼内注射)または眼に関連する組織への注射によって投与する。組成物を、例えば、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、サブコンジェクトバル注射、結膜下注射、テノン間隙下注射、球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍送達によって投与することができる。組成物を、例えば、硝子体、視神経、眼房水、強膜、結膜、強膜と結膜との間の領域、網脈絡膜組織、黄斑、または個体の眼内または眼近傍の他の領域に投与することもできる。いくつかの実施形態では、組成物を、眼移植片として個体に投与する。
【0134】
本発明の融合タンパク質を、良好な医療行為と調和する様式で処方、服用、および投与するであろう。この文脈で考慮すべき要因には、処置される特定の疾患または障害、処置される特定の哺乳動物、各患者の臨床症状、疾患または障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に公知の他の要因が含まれる。融合タンパク質は、問題の疾患または障害を防止または処置するために現在使用されている1つ以上の薬剤を必要としないが、任意選択的にこれらとともに処方する。かかる他の薬剤の有効量は、処方物中の融合タンパク質の存在量、疾患、障害、または処置の型、および上記で考察した他の要因に依存する。これらを、一般に、本明細書中に記載のものと同一の投薬量および投与経路、または本明細書中に記載の投薬量の約1〜99%、または経験的/臨床的に適切と決定された任意の投薬量および任意の経路で使用する。
【0135】
併用処置
本発明の融合タンパク質を、単独または1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて使用することができる。かかる併用療法は、組み合わせ投与(2つ以上の治療剤が同一または個別の処方物中に含まれる場合)、および個別投与(この場合、本発明の融合タンパク質をさらなる治療剤および/またはアジュバントの投与前、同時、および/または投与後に投与することができる)を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質を、治療剤(補体インヒビター(例えば、ARC1905、TT30、コンプスタチン、および/またはPOT−4)、補体に対する抗体(例えば、エクリズマブ、FCFD4514S、TNX−558、および/またはTNX−234)、VEGFRインヒビター(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、バタラニブ、および/またはバンデタニブ)、VEGFR抗体(例えば、ラムシルマブ)、またはVEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、および/またはペガプタニブ)が含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与する。例示的な補体タンパク質に対する薬剤については、Ehrnthaller,C.ら、(2011),Mol.Med.,17:317−329を参照のこと。さらなる実施形態では、融合タンパク質を、薬剤(抗酸化剤(例えば、ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、ルテイン、および/またはゼアキサンチン)、長鎖ω−3脂肪酸(例えば、ドコサヘキサエン酸(docosahexaemoic acid)および/またはエイコサペンタエン酸)、亜鉛、または銅が含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与する。さらなる実施形態では、融合タンパク質を、神経保護サイトカイン(毛様体神経栄養因子が含まれるが、これに限定されない)と組み合わせて投与する。さらなる実施形態では、融合タンパク質を、AMDの場合にレーザー処置(例えば、光力学療法)と組み合わせて投与する。いくつかの実施形態では、有効量の融合タンパク質の1つ以上のさらなる治療剤との組み合わせは、有効量の融合タンパク質または他の治療剤のみと比較して有効である。
【0137】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質を、1つ以上のさらなる治療剤と異なる投与経路によって投与する。いくつかの実施形態では、1つ以上のさらなる治療剤を、非経口(例えば、中心静脈ライン、動脈内、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、または皮下注射)、経口、胃腸、局所、鼻咽頭、および肺(例えば、吸入または鼻腔内)で投与する。
【0138】
VII.組成物
本明細書中に記載の融合タンパク質の薬学的処方物を、かかる所望の純度を有する融合タンパク質を1つ以上の任意選択的な薬学的に許容され得るキャリアと凍結乾燥処方物または水溶液の形態で混合することによって調製する。薬学的に許容され得るキャリア、賦形剤、または安定剤は本明細書中に記載されており、当該分野で周知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,Mack Publishing(2000))。薬学的に許容され得るキャリアは、一般に、使用される投薬量および濃度でレシピエントに非毒性を示し、以下が含まれるが、これらに限定されない:緩衝液(リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸緩衝液など);抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる);防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(メチルパラベンまたはプロピルパラベンなど);カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなど);モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる);キレート剤(EDTAなど);糖(スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(ポリエチレングリコール(PEG)など)。例示的な本明細書中の薬学的に許容され得るキャリアには、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの間隙薬物分散剤(例えば、ヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(rHuPH20(HYLENEX(登録商標),Baxter International,Inc.)など))がさらに含まれる。1つの態様では、sHASEGPを、1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼ(コンドロイチナーゼなど)と組み合わせる。
【0139】
本明細書中の処方物はまた、処置される特定の適応症に必要な1つを超える有効成分、好ましくは、相互に悪影響を与えない補完的活性を有する有効成分を含むことができる。例えば、VEGF抗体または補体インヒビターをさらに提供することが望ましいかもしれない。かかる有効成分は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0140】
有効成分を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリラート(methylmethacylate))マイクロカプセル)、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョン中に封入することができる。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0141】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質を含む薬学的処方物は非経口投与に適切である。そのうち、許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、リン酸緩衝生理食塩水、および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌固定油が、溶媒または懸濁化剤として従来より使用されている。この目的のために、任意のブランドの硬化鉱油または非鉱油(合成モノまたはジグリセリドが含まれる)を使用することができる。さらに、脂肪酸(オレイン酸など)は、注射剤の調製での用途がある。いくつかの実施形態では、融合タンパク質を含む薬学的処方物は、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内送達に適切である。
【0142】
徐放調製物を調製することができる。徐放調製物の適切な例には、融合タンパク質を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、マトリックスは造形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態である。薬学的組成物は、種々の薬物送達系での使用に適切である。本発明の薬物送達法の簡潔な概説については、Langer,R.(1990)Science 249:1527−33(1990)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0143】
in vivo投与のために使用すべき処方物は、一般に無菌である。無菌性を、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成することができる。
【0144】
VIII.製品またはキット
別の態様では、融合タンパク質処方物を含む製品またはキットを提供する。製品またはキットは、本発明の方法におけるその使用説明書をさらに含むことができる。したがって、一定の実施形態では、製品またはキットは、有効量の融合タンパク質を個体に投与する工程を含む、個体における炎症性疾患(加齢性黄斑変性など)、補体関連疾患、および/または癌の処置または防止方法における融合タンパク質の使用説明書を含む。一定の実施形態では、個体はヒトである。
【0145】
製品またはキットは容器をさらに含むことができる。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(シングルまたはデュアルチャンバーシリンジなど)および試験管が含まれる。容器を、種々の材料(硝子またはプラスチックなど)から形成することができる。容器は処方物を保持する。製品またはキットは、容器上または容器と一体になっており、且つ処方物の再構成および/または使用についての指示を示すことができるラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、処方物が個体における炎症性疾患(加齢性黄斑変性など)、補体関連疾患、および/または癌の処置または防止のための皮下投与または他の投与様式に有用であるか意図することをさらに示すことができる。処方物を保持する容器は、再構成した処方物の単回使用バイアルまたは反復投与(例えば、2〜6回の投与)が可能な複数回使用バイアルであり得る。製品またはキットは、適切な希釈剤(例えば、BWFI)を含む第2の容器をさらに含むことができる。希釈剤および凍結乾燥処方物の混合の際、再構成処方物中のタンパク質、ポリペプチド、または小分子の最終濃度は、一般に、少なくとも50mg/mlであろう。製品またはキットは、商業的、治療的、および使用者の観点から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジ、および添付文書が含まれる)を使用説明書と共にさらに含むことができる。
【0146】
本明細書中の製品またはキットは、任意選択的に、第2の医薬を含む容器をさらに含み、ここで、融合ポリペプチドが第1の医薬であり、製品は有効量の第2の医薬で被験体を処置するための説明を添付文書上にさらに含む。第2の医薬は上記のいずれかであり得、例示的な第2の医薬は、融合タンパク質を加齢性黄斑変性の処置のために使用する場合、補体インヒビター(例えば、ARC1905、TT30、コンプスタチン、および/またはPOT−4)、補体に対する抗体(例えば、エクリズマブ、FCFD4514S、TNX−558、および/またはTNX−234)、VEGFRインヒビター(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、バタラニブ、および/またはバンデタニブ)、VEGFR抗体(例えば、ラムシルマブ)、またはVEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、および/またはペガプタニブ)である。
【0147】
別の実施形態では、自動注入デバイスでの投与のための本明細書中に記載の処方物を含む製品またはキットを本明細書中に提供する。自動注入器を、活性化の際に患者または管理者がさらなる必要とされる作業を行うこと無くその内容物を送達させる注射デバイスと説明することができる。これらは、送達速度が一定でなければならず、且つ送達時間が数秒よりも長い場合の治療処方物の自己投薬に特に適切である。
【0148】
炎症性疾患(加齢性黄斑変性など)、補体関連疾患、および/または癌の処置および/または防止のための単位投薬形態も提供し、投薬形態は、本明細書中に記載の融合タンパク質または処方物のいずれか1つを含む。
【0149】
本発明は、以下の実施例を参照してより完全に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。本開示を通した全引用は、明確に本明細書中で参考として援用される。
VIIII.例示的な実施形態
1.融合タンパク質が補体阻害ドメイン(CID)、VEGF阻害ドメイン(VID)、および半減期延長ドメインを含む、補体活性化およびVEGFシグナル伝達経路を阻害する融合タンパク質;
2.実施形態1中の半減期延長ドメインは免疫グロブリンFc領域であり、ここで、Fc領域は野生型のFc領域または任意のヒト免疫グロブリンアイソタイプ、サブクラス、アロタイプのバリアントである;
3.実施形態2中のFc領域は、配列番号7中の配列を有するFc領域である;
4.実施形態1中の半減期延長ドメインは、in vivoでの半減期が長い抗体、抗体のフラグメント、ヒト血清アルブミン、または任意の他のヒトタンパク質である;
5.実施形態2中のCIDおよびVIDは、Fc領域のいずれかの末端またはFc領域の同一の末端に存在し得る(すなわち、VID−Fc−CID、CID−Fc−VID、VID−CID−Fc、CID−VID−Fc、Fc−VID−CID、またはFc−CID−VID);
6.実施形態1中のCIDはヒト補体受容体1型(CR1)細胞外領域の一部であり、ここで、CIDの配列は配列番号1〜6に由来する;
7.実施形態1中のCIDはヒトDAF、MCP、H因子、C4BPの一部であり、ここで、CIDの配列は配列番号13〜16に由来する;
8.実施形態1中のCIDは、B因子、またはD因子、またはP因子、C3、またはC5に対する抗体の抗体フラグメント、またはscFv、または可変領域(VHまたはVK)である;
9.実施形態1中のCIDは、B因子、またはD因子、またはP因子、C3、またはC5に対するペプチドインヒビターまたはオリゴヌクレオチドインヒビターである;
10.実施形態1中のCIDは、実施形態5〜8中のCIDのバリアントまたは組み合わせである;
11.実施形態1中のVIDは、VEGFRの細胞外ドメインの一部を含む;
12.実施形態1中のVIDは、配列番号11中の配列を有するVEGFR−1の第2の細胞外ドメインおよびVEGFR−2の第3の細胞外ドメインである。;
13.実施形態1中の融合タンパク質は、配列番号12中の配列を有する。
14.補体活性化を阻害する融合タンパク質、ここで、融合タンパク質はCIDおよび半減期延長ドメインを含む;
15.実施形態14中の半減期延長ドメイン(**)は免疫グロブリンFc領域であり、ここで、Fc領域は野生型のFc領域または任意のヒト免疫グロブリンアイソタイプ、サブクラス、およびアロタイプのバリアントである;
16.実施形態15中のFc領域は、配列番号7中の配列を有するFc領域である;
17.実施形態14中の半減期延長ドメインは、in vivoでの半減期が長い抗体、抗体のフラグメント、ヒト血清アルブミン、または任意の他のヒトタンパク質である;
18.実施形態14中のCIDは、Fc領域のいずれかの末端に存在し得る(すなわち、CID−FcまたはFc−CID);
19.実施形態14中のCIDはヒト補体受容体1型(CR1)細胞外領域の一部であり、ここで、CIDの配列は配列番号1〜6に由来する;
20.実施形態14中のCIDはヒトDAF、またはMCP、またはH因子、またはC4BPの一部であり、ここで、CIDの配列は配列番号13〜16に由来する;
21.実施形態14中のCIDは、B因子、またはD因子、またはP因子、またはC3、またはC5に対する抗体の抗体フラグメント、またはscFv、または可変領域(VHまたはVK)である;
22.実施形態14中のCIDは、B因子、またはD因子、またはP因子、C3、またはC5に対するペプチドインヒビターまたはオリゴヌクレオチドインヒビターである;
23.実施形態14中のCIDは、実施形態19〜22中のCIDのバリアントまたは組み合わせである;
24.実施形態5〜8中のCIDの少なくとも1つ、バリアント、または組み合わせを含む改変タンパク質、ここでペプチドは半減期延長ドメインと結合体化している;
25.実施形態24中の改変タンパク質は実施形態11〜12中のVIDを含む;
26.実施形態24中の半減期延長ドメインは、in vivoでの半減期が長いPEGまたは別のポリマーである;
27.実施形態24中の半減期延長ドメインは免疫グロブリンFc領域であり、ここで、Fc領域は野生型のFc領域または任意のヒト免疫グロブリンアイソタイプ、サブクラス、アロタイプのバリアントである;
28.実施形態24中の半減期延長ドメインは、in vivoでの半減期が長い抗体、抗体のフラグメント、ヒト血清アルブミン、または任意の他のヒトタンパク質である。
【実施例】
【0150】
実施例1:抗補体タンパク質(ACP)の発現および精製
補体阻害ドメイン(CID)およびFcドメインを含む一連の融合タンパク質を産生するために、種々のCIDをコードするcDNAを合成し、IgG1 FcドメインのN末端(
図1A中のACP−1〜ACP−5を参照のこと)またはC末端(
図1A中のACP−6〜ACP−10を参照のこと)に融合した。CIDは、ヒトCR1の細胞外領域の一部である。特に、ACP−1およびACP−6のCID−WTは野生型ヒトCR1 SCR1−3であり;ACP−2およびACP−7のCID−KNはアミノ酸置換変異N29KおよびD109Nを有するヒトCR1 SCR1−3であり;ACP−3およびACP−8のCID−YDはアミノ酸置換変異S37YおよびG79Dを有するヒトCR1 SCR1−3であり;ACP−4およびACP−9のCID−KYDNはアミノ酸置換変異N29K、S37Y、G79D、およびD109Nを有するヒトCR1 SCR1−3であり;ACP−5およびACP10のCID−NTはヒトCR1 SCR8−10であった(
図1A)。合成CID cDNAおよびIgG1 Fcドメインを、EcoRI/NotI消化pCI−neo哺乳動物発現ベクター(Promegaカタログ番号E1841)にライゲーションした。6グリシン残基の短い可動性ペプチドを、CIDとFcドメインとの間で使用した。全Fc融合タンパク質は、ACPの細胞外分泌を可能にするためにN末端にシグナルペプチドSP2を含んでいた。
【0151】
構築されたACP−1〜ACP−10のプラスミドを、HEK293細胞にそれぞれ一過性にトランスフェクションした。ACPが分泌された細胞培養培地をトランスフェクションの72時間後に採取し、各ACPをプロテインAクロマトグラフィによって精製した。簡潔に述べれば、分泌されたACPを含む培養上清を、プロテインAアガロースビーズと一晩混合後、ポリプロピレンカラムにアプライした。ビーズを0.1M Tris(pH8.0)で洗浄後、溶離緩衝液(0.1Mグリシン緩衝液、pH2.5)でACPを溶離し、Tris緩衝液(pH8.0)で中和した。溶離されたACPを濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析後、BCAアッセイによって最終タンパク質濃度を決定した。各単離ACPの純度は90%超と決定された。各精製ACP−6(レーン5)、ACP−7(レーン4)、ACP−8(レーン3)、ACP−9(レーン2)、およびACP−10(レーン1)タンパク質の2μgサンプルを、非還元条件下でSDS−PAGEゲルにロードした(
図2A)。二量体Fc融合タンパク質の分子量は約94kDであった。
【0152】
DAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3がCIDとしてIgG1 Fcドメインに融合されたACPを、類似の様式で構築し、発現し、精製した。
【0153】
実施例2:ACPによる古典的補体経路の阻害
CH50アッセイを使用して、古典的補体経路の活性度を定量した。このアッセイは、古典的経路の血清補体成分(すなわち、サンプル中に存在する)がウサギ抗ヒツジ赤血球抗体でプレコーティングされたヒツジ赤血球(EA、抗体感作ヒツジ赤血球、Complement Technologyカタログ番号B200)を溶解する機能を決定する。EAを、例えば、試験血清、マグネシウムイオン、およびカルシウムイオンとインキュベーションする場合、補体の古典的経路が活性化され、溶血する。固定容積の最適に感作されたEAを各血清希釈物に添加する。インキュベーション後、混合物を遠心分離し、溶血度を、上清中に放出されたヘモグロビンの約540nmの吸光度の測定によって定量する。補体活性量を、試験血清の種々の希釈物がEAを溶解する能力の試験によって決定する。アッセイの結果を、標準的な条件下で所定数の赤血球の50%を溶解するのに必要な血清希釈物の逆数として示す。
【0154】
CH50アッセイは、古典的補体経路の任意の成分の減少、非存在、および/または不活性に感受性を示すので、このアッセイを使用してACP−6、−7、−9、および−10が古典的経路の補体活性化を阻害する能力を評価した。このアッセイのために、37℃で1時間のインキュベーション後に1×10
7EA/mlの90%を溶解した正常ヒト血清の希釈物(Complement Technologyカタログ番号NHS)を最初に決定した。アッセイを、0.15mM CaCl
2および0.5mM MgCl
2を含むGVB
++緩衝液(0.1%ゼラチン、5mMベロナール、145mM NaCl、0.025%NaN
3(pH7.3))中で行った。古典的補体経路の阻害を、EAの90%を溶解することができる正常ヒト血清の希釈物を0〜500nMの融合タンパク質ACP−6、ACP−7、ACP−9、またはACP−10と37℃で1時間混合することによって活性化した。次いで、EAの溶血を、血清およびEAの1時間のインキュベーション後にOD541nmでの吸収の測定によってアッセイした。データを、Prism4(GraphPad、Inc.)を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
【0155】
融合タンパク質の存在下でのEAの溶血率の分析により、ヒトCR1 SCR1−3ドメインがIgG1 FcのC末端に融合したACP−6が16.2nMのEC50で補体活性を強く阻害したことが証明された(
図3A、黒円)。ヒトCR1 SCR1−3 N29K/D109NバリアントをIgG1 FcのC末端に融合したACP−7は、1.6nMのEC50まで阻害効果を10倍有意に増強させた(
図3A、黒四角)。ヒトCR1 SCR1−3 N29K/D109N S37Y/G79DバリアントをIgG1のC末端に融合したACP−9は、阻害活性を0.6nMのEC50までさらに2.7倍増加させた(
図3A、黒三角)。対照的に、ヒトCR1 SCR8−10をIgG1のC末端に融合したACP−10は500nMまでに補体活性のいかなる阻害も示さなかった(
図3A、逆三角)。
【0156】
DAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3 CIDを含むACPによる古典的補体経路の阻害を、同様に評価する。
【0157】
実施例3:ACPによる第二補体経路の阻害
活性化にマグネシウムイオンおよびカルシウムイオンの両方が必要な古典的およびレクチン補体経路と対照的に、第二補体経路の活性化にはマグネシウムイオンのみを必要とする。したがって、ACPの存在下での第二経路補体活性を定量するために、ウサギ赤血球(Er)を血清、0〜500nM ACP、5mM Mg
2+、および5mM EGTA(カルシウムイオンと優先的にキレート化する)とインキュベーションするように上記アッセイを修正した。
【0158】
このアッセイのために、1.25×10
7ウサギ赤血球/ml(Er、Complement Technologyカタログ番号B300)の90%を溶解する正常ヒト血清(Complement Technologyカタログ番号NHS)の希釈物を、37℃で30分間のインキュベーション後に最初に決定した。アッセイを、5mMのMgCl
2および5mMのEGTAを含むGVB
0緩衝液(0.1%ゼラチン、5mMベロナール、145mM NaCl、0.025%NaN
3(pH7.3))中で行った。第二補体経路の阻害を、Erの90%を溶解すべき正常ヒト血清の希釈物を0〜500nMのFc融合タンパク質ACP−6、ACP−7、ACP−9、またはACP−10と37℃で1時間混合することによって開始した。次いで、Erの溶血を、血清およびErの30分間のインキュベーション後にOD412nmでの吸収の測定によってアッセイした。データを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
【0159】
融合タンパク質の存在下でのEAの溶血率(%)の分析により、ACP−6が319.9nMのEC50で非常に低い阻害活性を示したことが証明された(
図3B、黒円)。ACP−7は、127.0nMのEC50に阻害効果を改善した(2.5倍)(
図3B、黒四角)。ACP−9は、31.9nMのEC50へのさらに高い阻害効果を示した(すなわち、野生型配列(APC−6)の10倍)(
図3B、黒三角)。対照的に、ACP−10は、500nMまでに補体活性のいかなる効果も示さなかった(
図3B、逆三角)。
【0160】
DAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3 CIDを含むACPによる第二補体経路の阻害を、同様に評価した。
【0161】
実施例4:補体経路およびVEGF経路の両方を阻害した二重特異性タンパク質ACVPの発現および精製
補体阻害ドメイン(CID)、VEGF阻害ドメイン(VID)、およびFcドメイン(すなわち、ヒトIgG1 Fc領域)を含む一連の二重特異性融合タンパク質を産生した(
図1B)。二重特異性融合タンパク質のために使用したVIDは、VEGFR1の第2のIg様ドメインおよびVEGFR2の第3のIg様ドメインのVEGFR1_D2−VEGFR2_D3融合物であった(すなわち、アフリベルセプトとしても公知のVEGF−trap−eyeに類似する)(例えば、Frampton(2012). Drugs Aging 29:839−46およびOhrら(2012).Expert Opin.Pharmacother.13:585−91を参照のこと)。融合タンパク質ACVP−1をコードする核酸を、ACP−9のN末端でSP2シグナルペプチドの下流のVIDをコードする核酸をプラスミドpV131に挿入することによって構築した。構築されたACVP−1プラスミドを、HEK293細胞に一過性にトランスフェクションした。分泌されたACVP−1を含む細胞培養培地をトランスフェクションの72時間後に採取し、タンパク質をプロテインAクロマトグラフィによって精製した。簡潔に述べれば、分泌されたACVP−1を含む培養上清を、プロテインAアガロースビーズと一晩混合後、ポリプロピレンカラムにアプライした。ビーズを0.1M Tris(pH8.0)で洗浄後、溶離緩衝液(0.1Mグリシン緩衝液、pH2.5)でACVP−1を溶離し、Tris緩衝液(pH8.0)で中和した。溶離されたタンパク質を濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析後、BCAアッセイによって最終タンパク質濃度を決定した。各単離ACVP−1の純度は90%超と決定された。精製ACVP−1の2μgサンプル(レーン1および3)を、還元条件下(レーン3および4)または非還元条件下(レーン1および2)でのSDS−PAGEゲル上での泳動によって精製ACP−9(レーン2および4)と比較した(
図2B)。二量体ACVP−1の分子量は約139kDであった。
【0162】
ACVP−1のFcドメイン、CID、およびVIDの位置を、相互に関連させて再構成する。さらに、別のCID(ACP中に存在するものなど)および別のVIDを使用する。上記のように、
図1Bに示す任意のACVPをコードする核酸構築物を調製し、哺乳動物細胞中で発現させる。同様に、本明細書中に記載のように、かかるACVPをプロテインAクロマトグラフィによって精製する。
【0163】
DAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3 CIDを含むACVPを構築する。
【0164】
実施例5:ACVPのVEGFへのin vitro結合
ACVPがVEGFに直接結合するかどうかを決定するためにELISAを行った。簡潔に述べれば、96ウェルELISAプレートのウェルに、100ng VEGF−A(R&D Systemsから入手可能)をコーティングした。次いで、0〜10nMの精製ACVPを各ウェルに添加し、1時間インキュベーションした。0.1%(v/v)Tween20を含む400μL PBSで3回の洗浄後、100μlの抗Fc HRP結合体(Sigmaカタログ番号A0170−1ML)の5000倍希釈物を、各ウェルに添加して1時間インキュベーションした。0.1%(v/v)Tween20を含む400μL PBSでの3回の洗浄後、TMB基質反応停止剤(Sigmaカタログ番号S5814−100ML)を各ウェルに添加し、450nmでのOD吸収を測定した。データを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
図4Aに示すように、ACVP−1は、0.22nMのEC50でVEGFへの強い結合を示した。
【0165】
溶液中のACVPのVEGFへの結合親和性をより良好に評価するために、5pMのVEGF−Aを、0〜100pMの精製ACVPと希釈緩衝液RD5K(R&D Systemsカタログ番号DVE00)中にて4℃で一晩インキュベーションした。インキュベーション後、緩衝液中の遊離VEGF濃度を、ヒトVEGF Quantikine ELISAキット(R&D Systemsカタログ番号DVE00)を使用したサンドイッチELISAによって決定した。ACVP−1を使用した2つの独立した試験由来のデータを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
図4Bに示すように、ACVP−1は、3.4pMの親和性で同一のVEGFへの強い結合を示した。
【0166】
ACVP−1、VID、およびアバスチンのVEGF−Aへの結合親和性を比較するためにもELISAを行った。試験したVIDは、VIDがそのC末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。約40pMのVEGF165(293−VE)を、1nMの精製されたACVP−1、VID、またはアバスチンと37℃で45分間インキュベーションした。インキュベーション後、遊離VEGFを、製造者の説明書にしたがってヒトVEGF DuoSet ELISA Developmentキット(R&D Systemsカタログ番号DY293B)を使用して検出した。データを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
図4Cに示すように、ACVP−1は、VEGFに対する親和性(約0.01nMのEC50)を示し、この親和性はアバスチンまたはVIDのVEGFへの結合(それぞれ、約0.7nMのEC50)の70倍である。
【0167】
上記のように、他のACVP(例えば、CIDとしてDAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3を含む)を、そのVEGFに結合する能力についてアッセイし、そのVEGFに対する結合親和性を決定する。
【0168】
実施例6:ACPまたはACVPのC3bまたはC4bへのin vitro結合
ACPまたはACVPのC3bまたはC4bへの結合を、直接Elisa実験でアッセイする。96ウェルELISAプレートのウェルに、100ng/ウェルのC3bまたはC4b(Complement Technology、Inc.から入手可能)をコーティングする。次いで、
図1に示した0〜1μMの精製ACPまたはACVPを各ウェルに添加し、1時間インキュベーションする。非結合のC3bまたはC4bの洗い流した後、100μlの抗Fc HRP結合体(Sigmaカタログ番号A0170−1ML)の5000倍希釈物を、各ウェルに添加して1時間インキュベーションする。洗浄後、TMB基質反応停止剤(Sigmaカタログ番号S5814−100ML)を添加し、OD450nmでの吸収を測定する。
【0169】
実施例7:ACPまたはACVPによる第二経路コンバターゼのDAAの阻害
第二経路C3−コンバターゼの崩壊促進活性(DAA)をELISAによって決定する。96ウェルELISAプレートのウェルに、1μg/mlのC3b(Complement Technology,Inc.から入手可能)を最初にコーティングし、次いで、ブロッキングする。次いで、各ウェルを、400ng/mlのB因子(Complement Technology,Inc.から入手可能)、25ng/mlのD因子(complement Technology,Inc.から入手可能)、および2mMのNiCl
2とインキュベーションする。洗浄後、プレート結合C3bBb(Ni
2+)複合体を、種々の濃度のACPまたはACVPとインキュベーションする。第2の洗浄後、残存するプレート結合C3bBb(Ni
2+)複合体を、ヤギ抗B因子ポリクローナル抗体(Complement Technology,Inc.から入手可能)およびその後のHRP結合体化ウサギ抗ヤギポリクローナル抗体(Sigma,Inc.)で検出する。洗浄後、TMB基質のための停止試薬(Sigmaカタログ番号S5814−100ML)を添加し、OD450nm吸収を測定する。
【0170】
第二経路C5−コンバターゼのDAAを、ELISAプレートのウェルを1μg/mlのC3b二量体でコーティングすることを除いて上記のELISAによって決定する。C3b二量体を、2mgのC3(Complement Technology,Inc.から入手可能)を20μgのトリプシン(Sigma,Inc.から入手可能)を使用して200μlのPBS中にて37℃で3分間処理することによって生成する。次いで、200μgのダイズトリプシンインヒビター(Sigma,Inc.から入手可能)で反応停止させる。次いで、メタノールに溶解した15μgの0.34mMビスマレイミドヘキサン(Pierce,Inc.から入手可能)を使用した4℃で3日間のチオエステル結合後にC3b二量体を形成する。C3b二量体を、SECクロマトグラフィによって精製する。
【0171】
実施例8:ACVPによる古典的補体経路の阻害
ACVPの古典的補体経路を阻害する能力を、実施例2に記載のようにアッセイした。0.15mM CaCl
2および0.5mM MgCl
2を含むGVB
++緩衝液(0.1%ゼラチン、5mMベロナール、145mM NaCl、0.025%NaN
3(pH7.3))中でアッセイを行った。古典的補体経路の阻害を、EAの90%を溶解することができる正常ヒト血清の希釈物を0〜500nMのACVP−1と37℃で1時間混合することによって活性化した。阻害データを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
図5Aに示すように、二重特異性融合タンパク質ACVP−1は、0.19nMのEC50で古典的経路の補体活性化に阻害効果を及ぼす可能性が非常に高かった。
【0172】
他のACVPs(例えば、CIDとしてDAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3を含む)を、その古典的補体経路を阻害する能力を決定するために本明細書中に記載のようにアッセイする。
【0173】
実施例9:ACVPによる第二補体経路の阻害
ACVPの第二補体経路を阻害する能力を、実施例3に記載のようにアッセイした。5mMのMgCl
2および5mMのEGTAを含むGVB
0緩衝液(0.1%ゼラチン、5mMベロナール、145mM NaCl、0.025%NaN
3(pH7.3))中でアッセイを行った。第二補体経路の阻害を、Erの90%を溶解することができる正常ヒト血清の希釈物を0〜500nMのACVP−1と37℃で1時間混合することによって開始した。次いで、Erの溶血を、血清およびErの30分間のインキュベーション後にアッセイした。阻害データを、Prism4を使用したS字カーブフィッティングによって分析した。
図5Bに示すように、二重特異性ACVP−1融合タンパク質は、21.1nMのEC50で第二経路の補体活性化に阻害効果を及ぼす可能性が非常に高かった。
【0174】
他のACVP(例えば、CIDとしてDAF SCR2−4、MCP SCR2−4、H因子SCR1−4、またはC4BPA SCR1−3を含む)を、その第二補体経路を阻害する能力を決定するために上記のようにアッセイする。
【0175】
実施例10:ACVPによるVEGF依存性HUVEC増殖の阻害アッセイ
ACVPを、細胞ベースのアッセイにおいてVEGFシグナル伝達経路を阻害する能力(例えば、VEGF活性の阻害)について試験する。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Lonza,Inc.)は、ACVPのVEGFへの結合によって阻害することができるVEGF依存性細胞増殖を証明するためにしばしば使用される。このアッセイでは、HUVECを、2%FBSを有する内皮細胞成長培地(Lonza,Inc.)中で維持する。96ウェル平底マイクロタイタープレートにコラーゲンをコーティングし、次いで、50μlのlnMのVEGF−A(R&D systems,Inc.)および種々の濃度のACVPと各ウェル中にて37℃で1時間インキュベーションする。1時間のインキュベーション後、50μlのHUVEC(1×10
5細胞/ml)を含むMedium−199(10%FBS、Hyclone,Inc.)を各ウェルに添加する。5%CO
2下にて37℃で72時間のインキュベーション後、細胞増殖を、10μlのCCK−8(Dojindo,Inc.)の各ウェルへの添加によってアッセイする。細胞増殖を、450/650nmのOD吸収で測定する。
【0176】
例えば、ACVP−1を細胞ベースのアッセイにおいてVEGFシグナル伝達経路(例えば、VEGF活性の阻害)を阻害する能力を試験し、CIDおよびVIDのVEGF阻害活性と比較した。試験したVIDは、VIDがそのC末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。試験したCIDは、CIDがそのN末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。内皮細胞増殖を測定するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、Lonza,Inc.から入手可能)を、EndoGRO−VEGF完全培地キットを使用して96ウェルプレート(4×10
4細胞/ウェル)中に播種した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、20%FBSを補足したDMEM中にて0.3nM VEGF165の存在下で35nM/mlのACVP−1、VID、またはCIDとインキュベーションした。コントロールのために、細胞を、PBS、20%FBSを補足したDMEM、0.3nM VEGF165を含む20%FBS含有DMEM、または35nM/mlのIgGを含む20%FBS含有DMEMとインキュベーションした。48時間後、10μl CCK−8(Dojindo,Inc.)を各ウェルに添加し、細胞増殖をマイクロプレートリーダーにて450/570nmのOD吸収で測定した。スチューデントt検定を使用した統計分析は、ACVP−1がDMEM+VEGFコントロールと比較してVEGF誘導性HUVEC増殖を有意に阻害し(
**p<0.01)、ACVP−1の阻害効果がVIDまたはCIDよりも高いことを示した(
図6)。
【0177】
実施例11:ACVPはVEGFR2経路を介したHUVECにおけるERKおよびAKTの活性化を阻害する
ACVPを、VEGFR経路による下流細胞内シグナル伝達の活性化を阻害する能力について試験する。このアッセイでは、HUVECを3nmol/mlのIgG、VID、CID、またはACVPで30分間前処理し、次いで、3nmol/ml VEGF
165でさらに10分間刺激する。細胞を採取し、ウェスタンブロットによって分析してVEGFR(例えば、VEGFR1、VEGFR2、またはVEGFR3)、AKT、およびERKリン酸化を評価する。GAPDHをローディングコントロールとして使用する。ブロッキングされた膜を、リン酸化VEGFR(例えば、VEGFR1、VEGFR2、またはVEGFR3)、GAPDH(3000倍希釈;Cell Signaling Technology,Beverly,MA)、リン酸化Erk(p−Erk)、Erkタンパク質、リン酸化AKT(p−Akt)、およびAktタンパク質に対する一次抗体にて4℃で一晩探索する。一次抗体の洗い流し後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化した二次抗体を膜に添加し、室温で1時間インキュベーション後、さらに洗浄し、タンパク質をHRPの化学発光基質で視覚化した。
【0178】
例えば、ACVP−1を、VEGFR2経路を介したERKおよびAKTの活性化を阻害する能力について試験した。このアッセイでは、HUVECを3nmol/mlのIgG、VID、CID、またはACVP−1で30分間前処理し、次いで、3nmol/ml VEGF
165でさらに10分間刺激した。試験したVIDは、VIDがそのC末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。試験したCIDは、CIDがそのN末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。細胞を採取し、ウェスタンブロットによって分析してVEGFR2、AKT、およびERKリン酸化を評価した。GAPDHをローディングコントロールとして使用した。ブロッキングされた膜を、リン酸化VEGFR2(1000倍希釈;Cell Signaling Technology,Beverly,MA)、GAPDH(3000倍希釈;Cell Signaling Technology,Beverly,MA)、リン酸化Erk(p−Erk)、Erkタンパク質、リン酸化AKT(p−Akt)、およびAktタンパク質に対する一次抗体にて4℃で一晩探索した。一次抗体の洗い流し後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合体化した二次抗体を膜に添加し、室温で1時間インキュベーション後、さらに洗浄し、タンパク質をHRPの化学発光基質で視覚化した。
図7に示すように、ACVP−1およびVIDは、VEGF
165誘導性のVEGFR2、ERK、およびAKTリン酸化を阻害し、CIDはERKリン酸化を阻害した。
【0179】
実施例12:マウスにおけるACVPによるレーザー誘導CNVの阻害
脈絡膜血管新生(CNV)は、湿性加齢性黄斑変性(AMD)の一般的な症状である。CNVは、眼の脈絡膜を起源とする新規の血管がブルッフ膜の破壊または欠損によって成長し、網膜下色素上皮または網膜下腔に侵入する場合に起こる。この過程は、瘢痕組織を形成し、最終的には失明を引き起こす。動物モデルとしてのレーザー誘導脈絡膜血管新生(CNV)は、湿性AMD処置を試験するために一般的に使用される。例えば、このモデルを使用して、ACVPがCNVを阻害する能力を評価することができる。
【0180】
マウスのレーザー誘導CNVを使用して、ACVPおよびACPがCNVを阻害する能力を試験する。このアッセイでは、マウスを塩酸ケタミン(100mg/kg体重)で麻酔し、1%トロピカミドで散瞳させ、532nmダイオードレーザー光凝固による3つの熱傷を各網膜に送達した。網膜後極の9時、12時、および3時の位置に熱傷を作製する。レーザー使用時にブルッフ膜の破損を示す泡の生成がCNVの重要な因子である。ACVPまたはACPがレーザー誘導CNVの形成を防止する能力を試験するために、4μgのACVPまたはACPを、レーザー熱傷の同日に硝子体内注射する。レーザー傷害の14日後、マウスに50mgフルオレセイン標識デキストランを静脈内注射し、安楽死させる。次いで、マウスの眼を切開して脈絡膜伸展標本を作製し、CNV病変サイズの変化を評価する。
【0181】
実施例13:ACVPによるサルにおけるレーザー誘導CNVの阻害
サルにおけるレーザー誘導CNVを使用して、ACVPおよびACPがCNVを阻害する能力を試験する。簡潔に述べれば、532nmダイオードレーザー光凝固による6〜9個の熱傷を、各眼内の黄斑周囲に送達させる。0.1〜0.5mgの投薬量のACVPをレーザー熱傷の同日に硝子体内注射する。およそ20日後、動物を静脈内2.5%可溶性ペントバルビトン(1mL/kg)で鎮静させる。開眼状態を維持し、アクセス可能なように眼瞼を固定する。眼底カメラを使用してカラー写真を最初に撮影する。最初の撮影後、フルオレセイン色素(20%フルオレセインナトリウム;0.05mL/kg)を下肢静脈を介して注射する。色素注射後のいくつかの時点で(動脈相、初期動静脈相、およびいくつかの後期動静脈相が含まれる)写真撮影する。CNV病変に関連するフルオレセインの漏出をモニタリングする。
【0182】
例えば、レーザー誘導CNVモデルを3〜6歳の範囲のアカゲザルで準備した。全部で8匹のサルを以下の4つの投与群に分類した:1)ビヒクルコントロール(PBS);2)ACVP1(0.5mg/眼);3)VID(0.5mg/眼);または4)CID(0.5mg/眼)。群あたり全部で2匹のサル(4つの眼)が存在した。試験したVIDは、VIDがそのC末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。試験したCIDは、CIDがそのN末端に融合したFcドメインを有するACVP−1のフラグメントであった。およそ6〜9個の532nmダイオードレーザー光凝固による熱傷を、眼内の黄斑周囲に送達させた。ビヒクルコントロール(PBS)または0.5mgの投薬量のACVP−1、VID、またはCIDを、レーザー熱傷の21日後に硝子体内注射した。投与14日後、動物を静脈内2.5%可溶性ペントバルビトン(1ml/kg)で鎮静させる。開眼状態を維持し、アクセス可能なように眼瞼を固定した。眼底カメラを使用してカラー写真を最初に撮影した。最初の撮影後、フルオレセイン色素(20%フルオレセインナトリウム;0.05mL/kg)を下肢静脈を介して注射した。色素注射の5分後に写真撮影して(動脈相、初期動静脈相、およびいくつかの後期動静脈相が含まれる)、CNV病変に関連するフルオレセインの漏出をモニタリングした。写真中の斑点領域を漏出領域として測定した。斑点漏出写真の分析により、ビヒクル処置群の平均漏出領域は、注射14日後にPBS注射前の漏出領域と比較して大きいことが示された(
図8A)。対照的に、ACVP−1(
図8B)、VID(
図8C)、またはCID(
図8D)のいずれかを注射したサルの漏出は、注射14日後に注射前の漏出領域と比較して減少した。スチューデントt検定を使用した統計分析は、斑点数および漏出領域はACVP−1またはVIDで処置された動物において投与前よりも有意に小さかったことを示した(表3)。CID処置動物では、漏出領域も投与前より有意に小さかった(表3)。全体的に見て、ACVP−1は、レーザー誘導CNVの阻害においてVIDおよびCIDより有効であった。
【表3】
【0183】
実施例14:異種移植マウスにおけるACPおよびACVPによるヒト腫瘍成長の阻害
種々のヒト癌細胞(ヒト肝細胞癌Hep3B細胞(ATCC#HB−8064)およびヒト結腸直腸癌LoVo細胞(ATCC#CCL−229)など)を使用して、ヌードマウスにおける異種移植モデルを確立することができる。腫瘍成長に対するACPおよびACVPの阻害効果を評価するために、種々の濃度の各ACPおよび各ACVP(例えば、0.1〜10mg/kg)を、腫瘍細胞移植後にマウスに週2回静脈内投与する。腫瘍成長を7週目まで毎週測定する。
【0184】
実施例15:マウスおよびサルにおけるACPおよびACVPの薬物動態学的評価
10〜40mg/kgの投薬量の各ACPおよびACVPを、マウスまたはサルに皮下注射または静脈内注射によって投与する。血清サンプルを、15日目まで注射後の異なる時点で採取する。血清サンプル中の各ACPまたはACVP融合タンパク質の濃度を、サンドイッチELISAアッセイを使用して決定する。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
補体阻害ドメイン(CID)、VEGF阻害ドメイン(VID)、および半減期延長ドメインを含む融合タンパク質であって、該融合タンパク質が補体活性化およびVEGF活性を阻害する、融合タンパク質。
(項目2)
前記CIDが、CR1、H因子、C4−BP、DAF、およびMCPからなる群から選択されるヒト補体調節タンパク質の少なくとも1つのショートコンセンサスリピート(SCR)を含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目3)
前記CIDが、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の融合タンパク質。
(項目4)
前記VIDがヒトVEGF受容体の細胞外ドメインの一部を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目5)
前記VIDがヒトVEGFR−1の免疫グロブリン様(Ig)ドメイン2およびヒトVEGFR−2のIg様ドメイン3を含む、項目4に記載の融合タンパク質。
(項目6)
前記VIDが、配列番号11もしくは38のアミノ酸配列、または配列番号11もしくは38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目5に記載の融合タンパク質。
(項目7)
前記半減期延長ドメインが免疫グロブリンFc領域を含む、項目1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目8)
前記Fc領域がIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のヒトFcである、項目7に記載の融合タンパク質。
(項目9)
前記Fc領域が、配列番号7もしくは39のアミノ酸配列、または配列番号7もしくは39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目7に記載の融合タンパク質。
(項目10)
前記融合タンパク質がドメイン間にペプチドリンカーをさらに含む、項目1〜9のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目11)
前記ペプチドリンカーが、配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目10に記載の融合タンパク質。
(項目12)
前記融合タンパク質が、(1)VID、Fc、CID;(2)CID、Fc、VID;(3)CID、VID、Fc;(4)VID、CID、Fc;(5)Fc、VID、CID;および(6)Fc、CID、VIDからなる群から選択されるN末端からC末端への順序で該VID、CID、およびFcを含む、項目1〜11のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目13)
N末端からC末端へと、VEGF阻害ドメイン(VID)、免疫グロブリンFc領域、および補体阻害ドメイン(CID)を含む融合タンパク質であって、該融合タンパク質が補
体活性化およびVEGF活性を阻害する、融合タンパク質。
(項目14)
前記CIDが、配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号1〜6および13〜16からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目13に記載の融合タンパク質。
(項目15)
前記VIDがヒトVEGF受容体の細胞外ドメインの一部を含む、項目13または14に記載の融合タンパク質。
(項目16)
前記VIDがヒトVEGFR−1の免疫グロブリン様(Ig)ドメイン2およびヒトVEGFR−2のIg様ドメイン3を含む、項目15に記載の融合タンパク質。
(項目17)
前記VIDが配列番号11もしくは38のアミノ酸配列、または配列番号11もしくは38のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目15に記載の融合タンパク質。
(項目18)
前記Fc領域がIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のヒトFcである、項目13〜17のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目19)
前記Fc領域が配列番号7もしくは39の配列、または配列番号7もしくは39のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目18に記載の融合タンパク質。
(項目20)
前記融合タンパク質がドメイン間にペプチドリンカーをさらに含む、項目13〜19のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
(項目21)
前記ペプチドリンカーがFc領域と前記CIDとの間に存在する、項目20に記載の融合タンパク質。
(項目22)
前記ペプチドリンカーが配列番号8のアミノ酸配列または配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目20または21に記載の融合タンパク質。
(項目23)
前記融合タンパク質が、配列番号12もしくは40のアミノ酸配列、または配列番号12もしくは40のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目13に記載の融合タンパク質。
(項目24)
融合タンパク質であって、項目1〜23のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を、該融合タンパク質を産生する条件下で培養し、該宿主細胞によって産生された融合タンパク質を回収することによって産生された融合タンパク質。
(項目25)
各融合タンパク質が項目13〜24のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含む、2つの融合タンパク質を含む二量体融合タンパク質。
(項目26)
項目1〜24のいずれか1項に記載の融合タンパク質および薬学的に許容され得るキャリアを含む組成物。
(項目27)
前記融合タンパク質が二量体形態である、項目26に記載の薬学的組成物。
(項目28)
項目1〜23のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
(項目29)
項目1〜23のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含むベクター。
(項目30)
項目28に記載の核酸を含む宿主細胞。
(項目31)
融合タンパク質の産生方法であって、項目1〜23のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を、該融合タンパク質を産生する条件下で培養する工程、および該宿主細胞によって産生された該融合タンパク質を回収する工程を含む、方法。
(項目32)
前記融合タンパク質が細胞培養培地から回収され、そして精製される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記宿主細胞が哺乳動物細胞または酵母細胞である、項目31または32に記載の方法。
(項目34)
回収された前記融合タンパク質が二量体である、項目31〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
炎症性疾患、自己免疫疾患、眼の疾患または癌を有する被験体の処置方法であって、有効量の項目1〜25のいずれか1項に記載の融合タンパク質を該被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目36)
前記被験体が、関節リウマチ、乾癬、黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜中心静脈閉塞、または角膜移植を有する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記黄斑変性が湿性加齢性黄斑変性または乾性加齢性黄斑変性である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記被験体が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、卵巣癌、または網膜芽細胞腫を有する、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記疾患処置のための第2の治療剤を投与する工程をさらに含む、項目35に記載の方法。
(項目40)
項目1〜25のいずれか1項に記載の融合タンパク質を含むキット。
(項目41)
被験体の炎症性疾患、自己免疫疾患、眼の疾患または癌の処置のための融合タンパク質の使用説明書を含む添付文書をさらに含む、項目31に記載のキット。
【0185】
配列
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【化14-5】
【化14-6】
【化14-7】
【化14-8】
【化14-9】
【化14-10】
【化14-11】
【化14-12】
【化14-13】
【化14-14】