(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
成分(B)および(C)からのゴム不含ビニル(コ)ポリマー/成分(D)の芳香族ポリエステルの重量比yが0.5〜6の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
成形部品の少なくとも片面が、ポリウレタン塗料、ポリウレタンフォーム、ポリウレタンスキンから成る群から選択されるポリウレタン系で被覆され、ポリウレタン系が基材と直接接触し、ポリウレタン層の厚さが1μmから20cmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物から製造された成形部品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成分A
本発明に好適な成分Aの芳香族ポリカーボネートは、文献から公知であり、文献(芳香族ポリカーボネートの調製に対しては、Schnell、“Chemistry and Physics of Polycarbonates”、Interscience Publishers、1964年並びに独国特許出願公開第1 495 626 AS号明細書、独国特許出願公開第2 232 877 A号明細書、独国特許出願公開第2 703 376 A号明細書、独国特許出願公開第2 714 544 A号明細書、独国特許出願公開第3 000 610 A号明細書、独国特許出願公開第3 832 396 A号明細書参照;芳香族ポリエステルポリカーボネートの調製に対しては、独国特許出願公開第3 077 934 A号明細書参照)から公知の方法によって調製することができる。
【0017】
芳香族ポリカーボネートは、場合により連鎖停止剤、例えばモノフェノールを使用し、場合により三官能性以上の分岐剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノールを使用する、界面法によるジフェノールとカルボン酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンとの反応および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物との反応によって調製される。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法による調製が、同様に可能である。
【0018】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造のためのジフェノールは、好ましくは、式(I):
(式中、Aは、単結合、C
1〜C
5‐アルキレン、C
2〜C
5‐アルキリデン、C
5〜C
6‐シクロアルキリデン、‐O‐、‐SO‐、‐CO‐、‐S‐、‐SO
2‐、任意にヘテロ原子を含有する更なる芳香族環に縮合していてもよいC
6〜C
12‐アリーレンであるか、或いは式(II)または(III):
の基であり、
Bは、各場合において、C
1〜C
12‐アルキル、好ましくはメチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
xは、各場合において独立して、互いに0、1または2であり、
pは、1または0であり、
R
5およびR
6は各X
1に対して独立して選択することができ、互いに独立して水素またはC
1〜C
6‐アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを表し、
X
1は炭素を表し、
mは、4〜7、好ましくは4〜5の整数、但し、少なくとも1つの原子X
1においてR
5およびR
6が同時にアルキルである。)
の化合物である。
【0019】
好ましいジフェノールには、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス‐(ヒドロキシフェニル)‐C
5〜C
6‐シクロアルカン、ビス‐(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス‐(ヒドロキシ-フェニル)スルホキシド、ビス‐(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス‐(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α‐ビス‐(ヒドロキシフェニル)‐ジイソプロピルベンゼン並びに環上で臭素化されたおよび/または環上で塩素化されたそれらの誘導体が挙げられる。
【0020】
より好ましいジフェノールは、4,4’‐ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4‐ビス‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐メチルブタン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、4,4’‐ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’‐ジヒドロキシジフェニルスルホン、並びにそれらのジ‐およびテトラ‐臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2‐ビス‐(3‐クロロ‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロパン、2,2‐ビス‐(3,5‐ジクロロ‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロパンまたは2,2‐ビス‐(3,5‐ジブロモ‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロパン。特に好ましいのは、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)‐プロパン(ビスフェノールA)である。
【0021】
上記ジフェノールは、個々に、または所望の混合物として使用することができる。ジフェノールは文献から既知であるか、または文献から既知の方法によって得られる。
【0022】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤としては、例えば、フェノール、p‐クロロフェノール、p‐tert‐ブチルフェノールまたは2,4,6‐トリブロモフェノールが挙げられるが、更に、独国特許出願公開第2 842 005号明細書に記載の4‐[2‐(2,4,4‐トリメチルペンチル)]‐フェノール、4‐(1,3‐テトラメチルブチル)‐フェノールなどの長鎖アルキルフェノール、或いはアルキル置換基中に合計8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば3,5‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、p‐イソ‐オクチルフェノール、p‐tert‐オクチルフェノール、p‐tert‐ドデシルフェノールおよび2‐(3,5‐ジメチルヘプチル)‐フェノールおよび4‐(3,5‐ジメチルヘプチル)‐フェノールが挙げられる。用いられる連鎖停止剤の量は、用いられた特定のジフェノールのモル数の合計に対して0.5〜10モル%である。
【0023】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法、特に好ましくは用いられたジフェノールの合計をベースとして0.05〜2.0モル%の三官能性以上の化合物、例えば3つ以上のフェノール基を有する化合物の導入によって分岐されてもよい。
【0024】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方が好適である。更に、成分Aとしての本発明のコポリカーボネートを製造するために、用いられるジフェノールの総量に基づいて、1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを用いることができる。このことは既知であり(米国特許第3419634号明細書)、文献から公知の方法によって製造することができる。ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートの製造は、独国特許第3 334 782号明細書に記載されている。
【0025】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、ジフェノールの合計モル数をベースとして、15モル%以下の好ましいまたは特に好ましいものとして記載された他のジフェノール、特に2,2‐ビス(3,5‐ジブロモ‐4‐ヒドロキシフェニル)プロパンとのビスフェノールAのコポリカーボネートである。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル4,4’‐ジカルボン酸、ナフタレン‐2,6‐ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0027】
1:20〜20:1の比のイソフタル酸およびテレフタル酸の二酸二塩化物の混合物が、特に好ましい。
【0028】
更に、ポリエステルカーボネートの製造における二官能性酸誘導体として、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを共に用いる。
【0029】
また、芳香族ポリエステルカーボネートの製造に適した連鎖停止剤は、前述のモノフェノールに加えて、場合によりC
1〜C
22‐アルキル基またはハロゲン原子によって置換されてもよい、モノフェノールのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、および脂肪族C
2〜C
22‐モノカルボン酸塩化物である。
【0030】
連鎖停止剤の量は、フェノール連鎖停止剤の場合にはジフェノールのモル数をベースとして、また、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合には、二塩化物をベースとして、各場合において、0.1〜10モル%である。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートは、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有してもよい。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートは、既知の方法による直鎖状または分岐状のいずれかあってもよい(独国特許出願公開第2 940 024号明細書および独国特許出願公開第3 007 934号明細書参照)。
【0033】
使用可能な分岐剤としては、(使用されるジカルボン酸二塩化物をベースとして)0.01〜1.0モル%の量での、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8‐ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物またはピロメリット酸四塩化物などの三官能性以上のカルボン酸塩化物、或いは(使用されるジフェノールをベースとして)0.01〜1.0モル%の量での、例えば、フロログルシノール、4,6‐ジメチル‐2,4,6‐トリ(4‐ヒドロキシフェニル)‐ヘプタ‐2‐エン、4,6‐ジメチル‐2,4‐6‐トリ(4‐ヒドロキシフェニル)‐ヘプタン、1,3,5‐トリ(4‐ヒドロキシフェニル)‐ベンゼン、1,1,1‐トリ(4‐ヒドロキシフェニル)‐エタン、トリ‐(4‐ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2‐ビス[4,4‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)‐シクロヘキシル]‐プロパン、2,4‐ビス(4‐ヒドロキシフェニルイソプロピル)‐フェノール、テトラ‐(4‐ヒドロキシフェニル)メタン、2,6‐ビス(2‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンジル)‐4‐メチルフェノール、2‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐(2,4‐ヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ‐(4‐[4‐ヒドロキシフェニルイソプロピル]‐フェノキシ)‐メタン、1,4‐ビス[4,4’‐ジヒドロキシトリフェニル)‐メチル]‐ベンゼンなどの三官能性以上のフェノール類が挙げられる。フェノール分岐剤はジフェノールと共に初期に導入してもよく、酸塩化物分岐剤は酸二塩化物と共に導入してもよい。
【0034】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造ユニットの含有量は、必要に応じて、変化することができる。好ましくは、カーボネート基の含有量は、エステル基およびカーボネート基の合計をベースとして、100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルおよびカーボネートの両方が、ブロックの形態またはランダムに分布して重縮合物中に存在してもよい。
【0035】
組成物を調製するための芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(η
rel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32、特に好ましくは1.24〜1.30の範囲である(塩化メチレン100mL中の0.5gのポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートの溶液について25℃で測定した)。
【0036】
GPC(標準としてポリカーボネートを用いた塩化メチレンによるゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定された組成物中の芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの重量平均分子量Mwは、好ましくは15,000〜35,000、より好ましくは22,000〜33,000、特に好ましくは23,000〜28,000の範囲である。
【0037】
成分B
成分Bは、熱可塑性ビニル(コ)ポリマー(B.1)の1つまたはいくつかの混合物、或いはゴム変性ビニル(コ)ポリマー(B.2)の1つまたはいくつかの混合物を含む。
【0038】
好適なビニル(コ)ポリマー(B.1)は、ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)から成る群から選択される少なくとも1つのモノマーのポリマーである。特に好適な(コ)ポリマーは、
(B.1.1)50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部のビニル芳香族化合物および/または環上で置換されたビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、および/または(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、並びに
(B.1.2)1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部のシアン化ビニル(不飽和ニトリル)、例えばアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えばマレイン酸、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN‐フェニルマレイミド
のポリマーである。
上記ビニル(コ)ポリマーは、熱可塑性の、ゴムを含まない樹脂である。(B.1.1)スチレンおよび(B.1.2)アクリロニトリルの共重合体が特に好ましい。
【0039】
(B.1)のゴム不含(コ)ポリマーは既知であり、ラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合またはバルク重合により調製することができる。上記(コ)ポリマーは、好ましくは15,000〜200,000g/モル、特に好ましくは80,000〜150,000g/モルの平均分子量Mw(溶媒としてアセトンおよび標準としてポリスチレンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量)を有する。
【0040】
特に好ましい態様においては、(B.1)は、重量平均分子量Mw80,000〜130,000g/モルを有する、スチレン75〜80重量%およびアクリロニトリル20〜25重量%の共重合体である。
【0041】
成分(B.2)として使用されるゴム変性ビニル(コ)ポリマーには、ゴム弾性グラフトベースとのグラフトポリマーが挙げられ、上記グラフト化は、バルク重合法、溶液重合法または懸濁重合法により行われる。成分(B.2)の好ましいグラフトポリマーは、
(B.2.2)5〜30重量部、好ましくは7〜20重量部、特に10〜15重量部のゴム弾性グラフトベースへの
(B.2.1)重量70〜95重量部、好ましくは80〜93重量部、特に85〜90重量部の
(B.2.1.1)50〜95重量部、好ましくは70〜80重量部のスチレン、α-メチルスチレン、環上でメチルによって置換されたスチレン、(C
1〜C
8)‐アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、(C
1〜C
8)‐アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、またはこれら化合物の混合物、および
(B.2.1.2)5〜50重量部、好ましくは20〜30重量部のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、(C
1〜C
8)‐アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート、(C
1〜C
8)‐アルキルアクリレート、特にメチルアクリレート、無水マレイン酸、(C
1〜C
4)‐アルキルまたはフェニルによってN‐置換されたマレイミド、或いはこれら化合物の混合物
の混合物
のグラフトポリマーを包含する。
【0042】
好ましくは、グラフトベース(B.2.2)は、−10℃より低い、特に−50℃より低いガラス転移温度を有する。
【0043】
純粋なポリブタジエンゴムまたはポリブタジエン/スチレン(SBR)共重合体ゴムをベースとするグラフトベース(B.2.2)が特に好ましく、後者の2つの異なるモノマーは、モノマーブロックで、またはランダムに配置することが可能である。種々のそのようなゴムの混合物もまた、グラフトベース(B.2.2)として使用することができる。
【0044】
成分(B.2)の好ましいグラフトポリマーは、特に、スチレンおよび/またはアクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルでグラフト化したポリブタジエンおよび/またはブタジエン/スチレンコポリマーである。グラフトベース(B.2.2)のゲル含有量は、好ましくは少なくとも70重量%である(トルエン中で測定)。
【0045】
グラフトポリマー(B.2)の平均粒径d
50は、好ましくは0.3〜5μm、特に0.4〜1.5μmである。
【0046】
好ましいグラフトポリマー(B.2)は、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、特に20〜30重量の(トルエン中で測定された)ゲル含有量を有する。
【0047】
既知のように、グラフトモノマーは、グラフト化反応の間に、必ずしも完全にグラフトベース上にグラフト化されないので、本発明においては、グラフトポリマー(B.2)は、グラフトベースの存在下でグラフトモノマーの(共)重合によって生成され、そのような作業の間に得られる生成物を意味するものとしても理解される。従って、このような生成物は、遊離の、即ち、ゴムに化学的に結合していない、グラフトモノマーの(コ)ポリマーを含有する。
【0048】
平均粒径d
50は、存在する粒子の50重量%が、それを超えるおよびそれより小さい直径である。本発明において特に規定しない限り、超遠心測定によって測定することができる(W. Scholtan、H. Lange、“Kolloid,Z.und Z. Polymere”
250(1972年)、782〜796頁)。
【0049】
本発明において特に規定しない限り、上記ガラス転移温度は一般的に、中点温度(接線法)としてTgを定義し、不活性ガスとして窒素を用いる、10K/分の加熱速度でのDIN EN 61006規格に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0050】
グラフトポリマーおよびグラフトベースのゲル含有量は、好適な溶媒(好ましくはトルエン)中、25℃で、このような溶媒に対する不溶分の含有量として測定される(M. Hoffmann、H.Kroemer、R.Kuhn、“Polymeranalytik I und II“, Georg Thieme−Verlag、Stuttgart 1977年)。
【0051】
成分C
成分Cは、乳化重合法により調製された、グラフトポリマーまたはいくつかのグラフトポリマーの混合物である。成分Cとして好ましく使用されるグラフトポリマーには、
(C.2)成分Cをベースとして、95〜20重量%、好ましくは80〜30重量%、特に70〜50重量%の1つ以上のゴム状グラフトベースへの
(C.1)成分Cをベースとして、5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、特に30〜50重量%の少なくとも1つのビニルモノマー
の1つ以上のグラフトポリマーが含まれ、上記グラフトベースのガラス転移温度は、好ましくは10℃未満、更に好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満である。
【0052】
グラフトベース(C.2)は、0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.15〜0.6μmの平均粒径(d
50値)を有することが好ましい。
【0053】
モノマー(C.1)は、好ましくは、
(C.1.1)(C.1)をベースとして、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部、特に70〜80重量部のビニル芳香族化合物および/または環上で置換されたビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α‐メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン)および/またはメタクリル酸(C
1〜C
8)‐アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、並びに
(C.1.2)(C.1)をベースとして、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、特に20〜30重量部のシアン化ビニル(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、t‐ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN‐フェニルマレイミド
の混合物である。
【0054】
好ましいモノマー(C.1.1)は、スチレン、α‐メチルスチレンおよびメチルメタクリレートから成るモノマーから選択される少なくとも一つであり、好ましいモノマー(C.1.2)は、アクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートから成るモノマーから選択される少なくとも一つである。特に好ましいモノマー(C.1.1)はスチレンであり、特に好ましいモノマー(C.1.2)はアクリロニトリルである。更に好ましい態様において、(C.1.1)および(C.1.2)はメチルメタクリレートである。更に好ましい態様では、(C.1.1)はスチレンであり、(C.1.2)はメチルメタクリレートである。
【0055】
グラフトポリマーCに好適なグラフトベース(C.2)は、例えば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、即ち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンをベースとするもの、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムおよびシリコーン/アクリレート複合ゴムである。
【0056】
好ましいグラフトベース(C.2)は、例えばブタジエンおよびイソプレンをベースとするジエン系ゴム、またはジエン系ゴムの混合物、或いはジエン系ゴムまたはそれらの混合物の共重合可能な更なるモノマー(例えばC.1.1およびC.1.2にしたがった)とのコポリマーである。
【0057】
純粋なポリブタジエンゴムが、特に好ましい。
【0058】
特に好ましいポリマーCは、例えばABSまたはMBSポリマーである。
【0059】
特に好適なグラフトポリマーCは、コア‐シェル構造を有する。
【0060】
グラフトベース(C.2)のゲル含有量は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%(トルエン中で測定)である。
【0061】
グラフトポリマーCのゲル含有量は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%(トルエン中で測定)である。
【0062】
既知のように、グラフトモノマーは、グラフト化反応の間に、必ずしも完全にグラフトベース上にグラフト化されないので、本発明においては、グラフトポリマーCは、グラフトベースの存在下でグラフトモノマーの(共)重合によって生成され、そのような作業の間に得られる生成物を意味するものとしても理解される。従って、このような生成物は、遊離の、即ち、ゴムに化学的に結合していない、グラフトモノマーの(コ)ポリマーを含有してもよい。
【0063】
(C.2)の好適なアクリレートゴムは好ましくは、任意に(C.2)をベースとして40重量%以下の他の重合性のエチレン性不飽和モノマーを有する、アクリル酸アルキルエステルのポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルには、(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n‐オクチル、2‐エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ‐(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、およびこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0064】
架橋するための、複数の重合性二重結合を有するモノマーを共重合してもよい。架橋モノマーの好ましい例としては、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸のエステル、3〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールのエステル、または2〜4個のOH基および2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;トリビニルシアヌレート、トリアリルシアヌレートなどの多価不飽和複素環化合物;例えば、ジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン等の多官能性ビニル化合物;更に、トリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートが挙げられる。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン性不飽和基を含有する複素環式化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマー、例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ‐s‐トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋性モノマーの量は、グラフトベース(C.2)をベースとして、好ましくは0.02〜5重量%、特に0.05〜2重量%である。少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、配合量をグラフトベース(C.2)の1重量%未満に限定することが有利である。
【0065】
場合により、アクリル酸エステルに加えて、グラフトベース(C.2)の調製に用いられる好ましい「他の」重合性のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α‐メチルスチレン、アクリルアミド、ビニル‐C
1〜C
6‐アルキルエーテル、メチルメタクリレート、ブタジエンである。グラフトベース(C.2)として好ましいアクリレートゴムは、少なくとも60重量%のゲル含有量を有するエマルジョンポリマーである。
【0066】
更に好適な(C.2)のグラフトベースは、独国特許出願公開(OS)第3 704 657号明細書、独国特許出願公開(OS)第3 704 655号明細書、独国特許出願公開(OS)第3 631 539号明細書に記載されているようなグラフト化活性部位を有するシリコーンゴムである。
【0067】
特に好ましい態様では、成分Cのグラフトポリマーは、グラフトベース(C.2)としてシリコーン/アクリレート複合ゴムをベースとするポリマーである。
【0068】
好ましい態様では、グラフトベース(C.2)として用いられるシリコーン/アクリレート複合ゴムは、
(C.2.1)20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、特に好ましくは40〜60重量%のシリコーンゴム、および
(C.2.2)80〜20重量%、好ましくは70〜30重量%、特に好ましくは40〜60重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートゴム
を含有し、
2つのゴム成分(C.2.1)および(C.2.2)が上記複合ゴム中で相互侵入し、実質的に互いに分離することができない。
【0069】
シリコーンゴムは、シロキサンモノマー単位、架橋剤または分岐剤(IV)および任意のグラフト化剤(V)を使用する、乳化重合により調製される。
【0070】
用いられるシロキサンモノマー単位としては、例えば、好ましくはジメチルシロキサンまたは少なくとも3員環、好ましくは3〜6員環を有する環状オルガノシロキサン、例えば、好ましくはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンである。
【0071】
オルガノシロキサンモノマーは単独でまたは2つ以上のモノマーの混合物の形で使用することができる。シリコーンゴムは、シリコーンゴム成分の総重量をベースとして、好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上のオルガノシロキサンを含有する。
【0072】
3官能性または4官能性、特に好ましくは4官能性を有するシラン系架橋剤を、架橋または分岐剤(IV)として使用することが好ましい。例えば、好ましくは、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ‐n‐プロポキシシランおよびテトラブトキシシランが挙げられる。架橋剤は、単独でまたは2つ以上を混合して用いることができる。テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0073】
架橋剤は、シリコーンゴム成分の総重量をベースとして、0.1〜40重量%の量で使用する。架橋剤の量は、トルエン中で測定したシリコーンゴムの膨潤度が、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜25、特に好ましくは3〜15となるように選択される。膨潤度は、25℃でトルエンを用いて飽和したときにシリコーンゴムによって吸収されるトルエンの量および乾燥状態でのシリコーンゴムの量の重量比として定義される。膨潤度の測定は、欧州特許第249964号明細書に詳細に記載されている。
【0074】
膨潤度が3未満である場合、即ち、架橋剤の含有量が高すぎると、シリコーンゴムは十分なゴム弾性を示さない。膨潤度が30を超える場合には、シリコーンゴムがポリマーマトリックス中にドメイン構造を形成することができなくなり、従って、衝撃強さも改良することができなくなり、そのような影響はポリジメチルシロキサンを単に添加した場合と同様である。
【0075】
膨潤度が、前述の制限内でより容易に制御可能であるため、3官能性架橋剤よりも4官能性架橋剤が好ましい。
【0076】
好適なグラフト化剤(V)は、以下の式:
CH
2=C(R
2)‐COO‐(CH
2)p‐SiR
1nO
(3−n)/2 (V−1)
CH
2=CH‐SiR
1nO
(3−n)/2 (V−2)または
HS‐(CH
2)p‐SiR
1nO
(3−n)/2 (V−3)
(式中、R
1はC
1〜C
4‐アルキル、好ましくはメチル、エチルまたはプロピル、或いはフェニルを表し、R
2は水素またはメチルを表し、nは0、1または2を表し、pは1〜6の整数を表す。)
の構造を形成することができる化合物である。
【0077】
アクリロイルオキシシランまたはメタクリロイルオキシシランは、上記構造(V−1)を形成するのに特に好適であり、高いグラフト化効率を有する。それによって、グラフト鎖の効率的な形成が可能となり、したがって得られる樹脂組成物の衝撃強さを向上する。
【0078】
例えば、好ましくは、β‐メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ‐メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ‐メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシランまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
シリコーンゴムの総重量をベースとして、0〜20重量%のグラフト化剤を用いることが好ましい。
【0080】
シリコーン/アクリレートゴムの好適なポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分は、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)とグラフト化剤(VII)から調製することができる。ここで、好ましいメタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルは、例えばメチル、エチル、n‐ブチル、t−ブチル、n‐プロピル、n‐ヘキシル、n‐オクチル、n‐ラウリルおよび2‐エチルヘキシルエステルなどのC
1〜C
8‐アルキルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ‐(C
1〜C
8)‐アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート;並びにこのようなモノマーの混合物である。n‐ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0081】
シリコーン/アクリレートゴムのポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分に用いることができる架橋剤(VI)は、複数の重合性二重結合を有するモノマーである。架橋モノマーの好ましい例としては、3〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸のエステル、3〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールのエステル、または2〜4個のOH基および2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオールのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートが挙げられる。架橋剤は、単独で、または少なくとも2つの架橋剤を混合して用いてもよい。
【0082】
好ましいグラフト化剤(VII)は、例えばアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートまたはそれらの混合物である。アリルメタクリレートはまた、架橋剤(VI)として使用することができる。グラフト化剤は、単独で、または少なくとも2つのグラフト化剤を混合して用いることができる。
【0083】
架橋剤(VI)およびグラフト化剤(VII)の量は、シリコーン/アクリレートゴムのポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の総重量をベースとして、0.1〜20重量%である。
【0084】
シリコーン/アクリレートゴムは、最初に水性ラテックスとしてシリコーンゴムを調製することによって調製する。例えば米国特許第2891920号明細書および米国特許第3294725号明細書に記載されているように、シリコーンゴムは乳化重合によって調製する。このため、オルガノシロキサン、架橋剤および任意のグラフト化剤を含む混合物は、好ましくは、例えばアルキルベンゼンスルホン酸またはアルキルスルホン酸などのスルホン酸をベースとした乳化剤の存在下で、例えばホモジナイザーによって、剪断力の作用下で水と混合され、混合物を重合してシリコーンゴムラテックスを提供する。アルキルベンゼンスルホン酸は、乳化剤としてだけでなく、重合開始剤としても作用するため、特に好適である。この場合、ポリマーが、後の工程のグラフト重合の際に、安定化されるため、上記スルホン酸とアルキルベンゼンスルホン酸の金属塩またはアルキルスルホン酸の金属塩との組み合わせが有利である。
【0085】
重合後、アルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液を加えることによって、反応混合物を中和することにより、反応を終了する。
【0086】
次いで、このラテックスに、使用するメタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)およびグラフト化剤(VII)を加え、重合を行う。フリーラジカル、例えば過酸化物開始剤、アゾ系開始剤またはレドックス開始剤によって開始される乳化重合が好ましい。レドックス開始剤系、特に硫酸鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ロンガリットおよびヒドロペルオキシドを組み合わせて調製されるスルホキシレート開始剤系の使用が、特に好ましい。
【0087】
シリコーンゴムの調製に使用されるグラフト剤(V)は、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分をシリコーンゴム成分に共有結合させる。重合の間、2つのゴム成分は相互に侵入し、重合後にシリコーンゴム成分およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の構成部分に分離できない複合ゴムを形成する
【0088】
シリコーン/アクリレートグラフトゴムCを製造するためには、モノマー(C.1)をゴムベース(C.2)にグラフト化させる。
【0089】
欧州特許第249964号明細書、欧州特許第430134号明細書および米国特許第4888388号明細書に記載の重合法を用いることができる。
【0090】
例えば、グラフト重合は、以下の重合方法によって行われる:
所望のビニルモノマーC.1を、フリーラジカルによって開始される一段階または多段階の乳化重合により、水性ラテックスの形であるグラフトベース上に重合させる。グラフト化効率は可能な限り高く、好ましくは10%以上にするべきである。グラフト化効率は、使用されるグラフト化剤(V)および(VII)に明白に依存する。重合後、シリコーン/アクリル酸グラフトゴムを得るため、水性ラテックスを、金属塩、例えば、塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウムを予め溶解した熱水中に入れる。この工程の間に、シリコーン/アクリル酸グラフトゴムは凝固し、次いで分離することができる。
【0091】
成分D
成分Dとして本発明に使用可能なポリエステルは、好ましくは芳香族ポリエステルであり、好ましい態様では、ポリアルキレンテレフタレートである。特に好ましい態様では、このような化合物は芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは無水物、および脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールの反応生成物、並びにこれらの反応生成物の混合物である。
【0092】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分をベースとして、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%のテレフタル酸基および、ジオール成分をベースとして、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%のエチレングリコール基および/またはブタン‐1,4‐ジオール基を含有する。
【0093】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、20モル%以下、好ましくは10モル%以下の8〜14個の炭素原子を有する他の芳香族または脂環式ジカルボン酸基または4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸基、例えばフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン‐2,6‐ジカルボン酸、4,4’‐ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シクロヘキサン二酢酸の基を含有することができる。
【0094】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコールまたはブタン‐1,4‐ジオールの基に加えて、20モル%以下、好ましくは10モル%以下の3〜12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオール基または6〜21個の炭素原子を有する脂環式ジオール基、例えばプロパン‐1,3‐ジオール、2‐エチルプロパン‐1,3‐ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン‐1,5‐ジオール、ヘキサン‐1,6‐ジオール、シクロヘキサン‐1,4‐ジメタノール、3‐エチルペンタン‐2,4‐ジオール、2‐メチルペンタン‐2,4‐ジオール、2,2,4‐トリメチルペンタン‐1,3‐ジオール、2‐エチルヘキサン‐1,3‐ジオール、2,2‐ジエチルプロパン‐1,3‐ジオール、ヘキサン‐2,5‐ジオール、1,4‐ジ(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシシクロヘキシル)‐プロパン、2,4‐ジヒドロキシ‐1,1,3,3‐テトラメチルシクロブタン、2,2‐ビス‐(4‐β‐ヒドロキシエトキシフェニル)‐プロパンおよび2,2‐ビス‐(4‐ヒドロキシプロポキシフェニル)‐プロパンの基を含有することができる(独国特許出願公開第2 407 674号明細書、同2 407 776号明細書、同2 715 932号明細書)。
【0095】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えば独国特許出願公開第1 900 270号明細書および米国特許第3 692 744号明細書にしたがって、比較的少量の3価または4価アルコール或いは三塩基性または四塩基性カルボン酸を組み込むによって分岐することができる。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールである。
【0096】
もっぱら、テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えば、そのジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン‐1,4‐ジオールから調製されたポリアルキレンテレフタレート、並びにこのようなポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0097】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%のポリエチレンテレフタレートおよび50〜99重量%、好ましくは70〜99重量%のポリブチレンテレフタレートを含有する。
【0098】
ポリブチレンテレフタレートが、特に好ましくは成分Dとして使用される
【0099】
好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは、ウベローデ粘度計により25℃で、ISO 307にしたがって0.05g/mLの濃度のフェノール/o‐ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で測定した粘度0.4〜1.5dL/g、好ましくは0.5〜1.2dL/gを有する。
【0100】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法により製造することができる(例えば、Kunststoff−Handbuch、第VIII巻、第695頁以降、 Carl−Hanser−Verlag、ミュンヘン 1973年を参照)。
【0101】
成分E
成分Eとして、熱可塑性成形組成物は、例えばタルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、珪灰石、カオリン、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、白亜、長石、硫酸バリウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、炭素繊維およびガラス繊維からなる群から選択される、充填剤又は強化物質、或いは少なくとも二つの異なる充填剤および/または強化物質の混合物を含んでもよい。好ましい態様では、充填剤および強化物質として、小板形状充填剤、特に好ましくはタルクをベースとする充填剤を使用する。
【0102】
本発明に使用することができるタルク系鉱物充填剤は、当業者がタルクまたは滑石と関連付けて考えるすべての粒状充填剤である。また、市販されており、製品の説明に特徴としてタルクまたは滑石の語が含まれるすべての粒子状充填剤を、同様に使用することができる。
【0103】
充填剤の総重量をベースとして、50重量%を超える、好ましくは80重量%を超える、より好ましくは95重量%を超える、特に好ましくは98重量%を超える、DIN 55920に従ったタルク含有量を有する鉱物充填剤が好ましい。
【0104】
タルクは、天然または合成により製造されたタルクを意味する。
【0105】
純粋なタルクは、化学組成3MgO・4SiO
2・H
2Oを有し、従って31.9重量%のMgO含有量、63.4重量%のSiO
2含有量および4.8重量%の化学的結合水含有量を有する。層状構造を有するケイ酸塩である。
【0106】
他の元素による、いくらかのマグネシウムの交換、例えばアルミニウムによる、いくらかのケイ素の交換および/または例えば、ドロマイト、マグネサイトや緑泥石などの他の鉱物との相互生長によって不純化されているため、天然のタルク材料は、一般に、前述のような理想的な組成を有していない。
【0107】
成分Eとして用いられる特に好ましいタルクの種類は、28〜35重量%、好ましくは30〜33重量%、特に好ましくは30.5〜32重量%のMgO含有量および、55〜65重量%、好ましくは58〜64重量%、特に好ましくは60〜62.5重量%のSiO
2含有量によって特徴付けられる特に高い純度に特徴がある。特に好ましいタルクの種類は、更に5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.7重量%未満のAl
2O
3含有量に特徴がある。
【0108】
0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.5〜5μm、最も好ましくは0.7〜2.5μm、特に好ましくは1.0〜2.0μmの平均粒径d
50を有する微砕化タイプの形態での本発明によるタルクの使用が特に有利であり、この点で好ましい。
【0109】
本発明に用いられるタルク系鉱物充填剤は、50μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは6μm未満、特に好ましくは2.5μm未満の上方粒径d
97を有する。上記充填剤のd
97およびd
50値は、ISO 13317−3に従って、SEDIGRAPH D 5000を用いる沈降分析によって測定される。
【0110】
タルク系鉱物充填剤は、場合により、ポリマーマトリックスへのより良好な結合を達成するために表面処理を行うことができる。例えば、官能化シランをベースとした接着促進剤系を用いて提供することができる。
【0111】
成形用組成物へのまたは成形品への処理によって、成形用組成物または成形品中の粒状充填剤は、元々使用される充填剤よりも小さいd
97およびd
50値を有することができる。
【0112】
成分F
上記組成物は、成分Fとして、市販のポリマー添加剤を含む。
【0113】
成分Fにしたがって使用可能な市販のポリマー添加剤は、例えば、難燃剤(例えば、リン化合物またはハロゲン化合物)、難燃相乗剤(例えば、ナノスケール金属酸化物)、煙抑制剤(例えば、ホウ酸またはホウ酸塩)、防滴剤などの添加剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミド繊維の物質群からの化合物)、内部および外部潤滑剤および離型剤(例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、モンタンワックスまたはポリエチレンワックス)、流動助剤、帯電防止剤(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、他のポリエーテルまたはヒドロキシエーテル、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミドまたはスルホン酸塩)、導電性添加剤(例えば、導電性カーボンブラック、導電性カーボンナノチューブ)、安定化剤(例えば、紫外線/光安定化剤、熱安定化剤、酸化防止剤、エステル交換抑制剤、加水分解抑制剤)、抗菌剤(例えば、銀または銀塩)、耐引っかき性向上剤(例えば、シリコーンオイル)、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、蛍光添加剤、および染料および顔料(例えば、カーボンブラック、二酸化チタンまたは酸化鉄)、または前述の添加物の複数の混合物などの添加剤である。
【0114】
特に好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1つの離型剤、好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレート、および少なくとも1つの安定剤、好ましくはフェノール系酸化防止剤、特に好ましくは2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノールを含有する。
【0115】
更に好ましくは、少なくとも二つの安定化剤の組み合わせを用い、第二の安定化剤が、ブレンステッド酸化合物を含む。好ましくは、第二の安定化剤は、リン酸、リン酸水溶液或いは、リン酸またはリン酸水溶液の微細化親水性シリカゲルとの自由流動性混合物である。
【0116】
本発明はまた、本発明の組成物から形成された基材の少なくとも片面に、ポリウレタン(PU)系を用いたコーティングを有する、前述の組成物から製造した成形品、好ましくはシートなどの平坦成形品、ミラーケース、泥よけ、スポイラー、ボンネットなどの自動車車体部品に関する。
【0117】
ポリウレタン層は、例えば、1μm〜20cmのポリウレタン層厚さを有する、PU塗料、PUフォームまたは緻密なPUスキンであってもよい。
【0118】
好ましい態様では、ポリウレタン層は、1〜1000μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜60μmの層厚を有する塗装である。
【0119】
更に好ましい態様では、ポリウレタン層は、1〜10mmの厚さを有する緻密なスキンである。
【0120】
更に好ましい態様では、ポリウレタン層は、4mm〜20cmの厚さを有するフォームである。
【0121】
複合コンポーネントは、基本的に既知の方法により基材(本発明の熱可塑性組成物の支持体)およびポリウレタン層から製造することができる。
【0122】
好ましくは、ポリウレタン層は、熱可塑性組成物から形成され予め固化された支持体と直接接触した、
少なくとも1つのポリイソシアネート成分、
少なくとも1つの多価活性水素化合物、および
任意の少なくとも1つのポリウレタン添加剤および/または加工助剤
を含有する反応性ポリウレタン原料混合物の完全重合によって製造される。
【0123】
支持体は、例えば、本発明による組成物から予め製造することができ、反応性ポリウレタン原料混合物を塗布し完全に反応させることができる。ポリウレタン反応成分の反応性に依存して、これらは予備混合しても、または既知の方法で塗布中に混合してもよい。塗布は、特にスプレーコーティング、ナイフコーティングまたはカレンダーコーティングにより、行うことができる。
【0124】
好ましい態様では、反応性ポリウレタン混合物の塗布前に、支持体表面を、好ましくはイソプロパノールで清浄化し、更に好ましくは上記表面を活性化するために火炎処理を行う。
【0125】
しかしながら、既知の方法によって、共押出による本発明の複合物を製造することも可能である。
【0126】
発泡複合物を製造する場合、反応混合物を、既知の方法で予め形成され固化された支持体を含んだ型内に導入することができる。上記型は、場合により、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリウレタンスプレースキンのさらなる装飾層(しばしば、「スキン」という)を含んでもよい。型中では、発泡性反応混合物が支持体部品および任意の装飾層と接触して発泡し、複合部品を形成する。発泡成形は、複合部材品が表面に気泡構造を有するように行ってもよい。しかしながら、発泡成形はまた、複合部品が緻密スキンおよび多孔性コア(一体型フォーム)を有するように行ってもよい。ポリウレタン成分は、高圧または低圧装置で型内に導入することができる。
【0127】
ポリウレタンフォームはまた、ブロックフォームとして製造することができる。
【0128】
ポリウレタン複合体を、サンドイッチ構造に製造することもできる。この方法は、堆積形成法または外被形成法として行うことができる。堆積形成法または外被形成法の両方は、それ自体、既知である。堆積法(充填構造法)では、2つの半殻型(例えば、プラスチックの仕上げ層)を予め作製し、型中に配置し、半殻型間の中空キャビティを発泡によりPUフォームで充填する。外被形成法においては、PUフォームのコアを最初に型中に導入し、次いで、好適な外被材料、例えば前述の熱可塑性樹脂の1つによって包む。外被形成法は、サンドイッチ複合体の製造に好ましい。
【0129】
本発明の特定の態様では、複合部品は、
(i)第一工程において、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を第一金型キャビティ内に注入し、続いて冷却する、
(ii)第二工程において、射出成形金型キャビティのサイズを増大させ、それによって隙間が形成される、
(iii)第三工程において、
少なくとも1つのポリイソシアネート成分、
少なくとも1つの多官能性活性水素化合物、および
任意に少なくとも一つのポリウレタン添加剤および/または加工補助剤
を含む反応性ポリウレタン原料混合物を、熱可塑性樹脂部品と拡げられたキャビティの型表面との間にこのようにして得られる隙間に注入し、ポリウレタン原料混合物は、熱可塑性支持体の表面と直接接触して完全に重合して、緻密なポリウレタン層、またはポリウレタン発泡層を形成し、
(iv)第四工程において、金型キャビティから複合部品を金型から取り除く、
を含む方法によって作製される。
【0130】
ポリウレタン
コーティングとして、ポリウレタンフォームまたは緻密なポリウレタン層を用いることが好ましい。
【0131】
本発明により使用されるポリウレタンは、ポリイソシアネートと活性水素多官能性化合物、好ましくはポリオールとの反応によって得られる。
【0132】
また、本明細書中で用語「ポリウレタン」は、N−H官能性を有するそのような化合物が、場合によりポリオールとの混合物中で、活性水素多官能性化合物として用いられる、ポリウレタン‐尿素をも意味するものとして理解されている。
【0133】
好適なポリイソシアネートは、好ましくは2以上のNCO官能性を有する、当業者に知られている芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートであり、イミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、アロファネート、ビウレット、尿素、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシル尿素および/またはカルボジイミド構造を有することもできる。これらは単独でまたは相互の所望の混合物として使用することができる。
【0134】
前述したポリイソシアネートは、当業者に知られており、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族化合物に結合したイソシアネート基を有するジイソシアネートおよびトリイソシアネートをベースとしており、ホスゲンを用いて製造されたかまたはホスゲンフリー法によって製造されたかということは重要でない。そのようなジイソシアネートまたはトリイソシアネートの例として、1,4‐ジイソシアナトブタン、1,5‐ジイソシアナトペンタン、1,6‐ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2‐メチル‐1,5‐ジイソシアナトペンタン、1,5‐ジイソシアナト‐2,2‐ジメチルペンタン、2,2,4‐および2,4,4‐トリメチル‐1,6‐ジイソシアナトヘキサン、1,10‐ジイソシアナトデカン、1,3‐および1,4‐ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3‐および1,4‐ビス(イソシアナトメチル)‐シクロヘキサン、1‐イソシアナト‐3,3,5‐トリメチル‐5‐イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’‐ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標)W、ドイツ、レーバークーゼンのBayer社)、4‐イソシアナトメチル‐1,8‐オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、ω、ω’‐ジイソシアナト‐1,3‐ジメチルシクロヘキサン(H
6XDI)、1‐イソシアナト‐1‐メチル‐3‐イソシアナトメチルシクロヘキサン、1‐イソシアナト‐1‐メチル‐4‐イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス‐(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,5‐ナフタレンジイソシアネート、1,3‐および1,4‐ビス(2‐イソシアナトプロプ‐2‐イル)‐ベンゼン(TMXDI)、2,4‐および2,6‐ジイソシアナトトルエン(TDI)、特に2,4‐および2,6‐異性体および二つの異性体の工業用混合物、2,4’‐および4,4’‐ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、ポリマーMDI(pMDI)、1,5‐ジイソシアナトナフタレン、1,3‐ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)および前述の化合物の所望の混合物が挙げられる。
【0135】
ポリイソシアネートは、2.0〜5.0、好ましくは2.2〜4.5、特に好ましくは2.2〜2.7の平均NCO官能価、および5.0〜37.0重量%、好ましくは14.0〜34.0重量%のイソシアネート基含有量を有する。
【0136】
好ましい態様では、脂肪族および/または脂環式イソシアネート基のみを有する前述の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物が用いられる。
【0137】
特に好ましくは、前述の種類のポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’‐イソシアナトシクロヘキシル)‐メタンおよびそれらの混合物をベースとしている。
【0138】
より高い分子量の変性ポリイソシアネートのうち、ポリウレタン化学分野で知られている400〜15,000、好ましくは600〜12,000の分子量範囲の末端イソシアネート基を有するプレポリマーは、特に興味深い。このような化合物は、過剰量の前述の種類の単純なポリイソシアネートと、イソシアネート基との反応性を有する少なくとも2つの基を有する有機化合物、特に有機ポリヒドロキシ化合物とを反応させることにより、既知の方法で調製される。好適なそのようなポリヒドロキシル化合物は、62〜599、好ましくは62〜200の分子量範囲の単純な多価アルコール、例えば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロパン‐1,2‐ジオールまたはブタン‐1,4‐ジオール、またはブタン‐2,3‐ジオールであるが、特に、少なくとも2つの、通常2〜8の、好ましくは2〜6の1級および/または2級ヒドロキシル基を有し、600〜12,000、好ましくは800〜4,000の分子量を有するポリウレタン化学分野で知られている種類の、より高分子量のポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである。例えば、前述の種類の低分子量ポリイソシアネートおよびポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル基を含有するポリアセタール、ポリヒドロキシ‐ポリカーボネート、ヒドロキシル基含有ポリエステル‐アミドまたはオレフィン性不飽和化合物のヒドロキシル基含有コポリマーなどのイソシアネート基との反応性を有する基を含有するあまり好ましくない化合物から得られた、このようなNCOプレポリマーも、もちろん使用することができる。
【0139】
イソシアネート基との反応性を有する基、特にヒドロキシル基を含有し、NCOプレポリマーの調製に好適な化合物は、例えば、米国特許出願公開第4218543号明細書に開示された化合物である。NCOプレポリマーの調製において、イソシアネート基との反応性を有する基を含有するこのような化合物は、NCO過剰を維持しながら、前述の種類の単純なポリイソシアネートと反応する。NCOプレポリマーは、一般に10〜26重量%、好ましくは15〜26重量%のNCO含有量を有する。このことから、本明細書中では、「NCOプレポリマー」または「末端イソシアネート基を有するプレポリマー」は、反応生成物および、しばしば「セミプレポリマー」と呼ばれる、過剰量の未反応の原料ポリイソシアネートとの混合物の両方を意味していると理解されるべきであることが既に明らかである。
【0140】
500mgKOH/gを超えるOH価を有する使用可能な脂肪族ジオールとしては、一般に、ポリウレタン化学分野において従来から使用される鎖延長剤、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタン‐1,4‐ジオール、プロパン‐1,3‐ジオールである。例えば、2‐ブタン‐1,4‐ジオール、ブテン‐1,3、ブタン‐2,3‐ジオールおよび/または2‐メチルプロパン‐1,3‐ジオールなどのジオールが好ましい。互いとの混合物の脂肪族ジオールを使用することももちろん可能である。
【0141】
好適な活性水素成分は、5〜600mgKOH/gの平均OH価および2〜6の平均官能価を有するポリオールである。10〜50mgKOH/gの平均OH価を有するポリオールが好ましい。本発明に適したポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4‐ジヒドロキシブタン、1,6‐ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはスクロースなどの好適な開始剤分子をアルコキシル化することによって容易に得られるポリヒドロキシポリエーテルである。アンモニアまたはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,4‐ジアミノトルエン、アニリンまたはアミノアルコール、或いはビスフェノールAなどのフェノール類が、同様に開始剤として機能する。アルコキシル化は、任意の順序でまたは混合物として、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドを用いて行われる。
【0142】
ポリオールに加えて、アミンおよびアミノアルコール、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、N,N’‐ジメチル(ジエチル)‐エチレンジアミン、2‐アミノ‐2‐メチル(またはエチル)‐1‐プロパノール、2‐アミノ‐1‐ブタノール、3‐アミノ‐1,2‐プロパンジオール、2‐アミノ‐2‐メチル(エチル)‐1,3‐プロパンジオール、アルコール類、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4‐ジヒドロキシブタン、1,6‐ジヒドロキシヘキサン、ジメチロールプロパン、グリセロールおよびペンタエリスリトール、並びにソルビトールおよびスクロース、或いはこれら化合物の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの更なる架橋剤および/または鎖延長剤を更に含有してもよい。
【0143】
また、既知の方法で、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸またはこれらの酸の無水物等の多価カルボン酸と低分子量アルコールを反応させることによって得ることができるポリエステルポリオールが、活性水素成分の粘度が高くなり過ぎない限り、やはり好適である。エステル基を含む好ましいポリオールは、ヒマシ油である。また、例えば、アルデヒド‐ケトン樹脂等の樹脂を溶解することによって、ならびに他の天然油をベースとしたヒマシ油およびポリオールの変性によって得ることができるヒマシ油を含有する配合物が、好適である。
【0144】
高分子量の重付加物または重縮合物またはポリマーが、微細分散形態、溶解形態またはグラフト化形態で含まれる、より高い分子量のポリヒドロキシポリエーテルが同様に好適である。そのような変性ポリヒドロキシ化合物が、例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物においてそのままの状態(イン・サイチュー)で、重付加反応(例えばポリイソシアネートおよびアミノ官能性化合物の反応)または重縮合反応(例えばホルムアルデヒドおよびフェノールおよび/またはアミンの反応)を進行させる場合、既知の方法によって得られる。しかしながら、既製の水性ポリマー分散体をポリヒドロキシ化合物と混合した後、混合物から水を除去することもできる。
【0145】
例えば、ポリエーテルまたはポリカーボネートポリオールの存在下でスチレンとアクリロニトリルを重合することによって得られるような、ビニルポリマーによって変性されるポリヒドロキシル化合物はまた、ポリウレタンの製造に適している。独国特許出願公開第2 442 101号明細書、同第2 844 922号明細書および同第2 646 141号明細書にしたがって、ビニルホスホン酸エステルおよび任意に(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドまたはOH‐官能性(メタ)アクリル酸エステルを用いるグラフト重合によって変性されたポリエーテルポリオールを用いる場合、特有の難燃性を有するプラスチックが得られる。
【0146】
活性水素化合物として使用される前述の化合物の代表例が、例えば、High Polymers、第XVI巻、“Polyurethanes Chemistry and Technology”、Saunders−Frisch(編)、Interscience Publishers、ニューヨーク、ロンドン、第1巻、第32〜42、44、45頁および第II巻、1984年、第5〜6頁および第198〜199頁に記載されている。
【0147】
挙げられた化合物の混合物も使用可能である。
【0148】
活性水素成分の平均OH価および平均官能価を制限することによって、特に得られるポリウレタンの脆化を増大することになる。しかしながら、ポリウレタンのポリマー物性に影響を与える可能性が当業者に知られているので、NCO成分、脂肪族ジオールおよびポリオールを好ましい形で互いに調整することができる。
【0149】
ポリウレタン層(b)は、例えば塗料またはコーティングとして、発泡していても、中実であってもよい。
【0150】
例えば、離型剤、発泡剤、充填剤、触媒および難燃剤などの既知のすべての助剤および添加剤をそれらの製造に用いることができる。
【0151】
任意に使用される補助剤および添加剤は、以下の通りである。
(a)発泡剤としての水および/または易揮発性無機または有機物質
使用可能な有機発泡剤としては、例えばアセトン、酢酸エチル、ハロゲン置換アルカン、例えば塩化メチレン、クロロホルム、エチリデンクロリド、塩化ビニリデン、モノフルオロトリクロロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、更に、ブタン、ヘキサン、ヘプタンまたはジエチルエーテルなどが挙げられ、使用可能な無機発泡剤としては、空気、CO
2またはN
2Oが挙げられる。発泡効果はまた、窒素などのガスの放出を伴い室温以上の温度で分解する化合物、例えばアゾジカルボンアミドまたはアゾイソブチル酸ニトリルなどのアゾ化合物を添加することによって達成することができる。
【0152】
(b)触媒
触媒には、例えば、第三級アミン(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、N‐メチルモルホリン、N‐エチルモルホリン、Ν,Ν,Ν’,Ν’‐テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンおよび高級同族化合物、1,4‐ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、Ν‐メチル‐Ν’‐ジメチルアミノエチルピペラジン、ビス‐(ジメチルアミノアルキル)ピペラジン、Ν,Ν‐ジメチルベンジルアミン、Ν、Ν‐ジメチルシクロヘキシルアミン、Ν,Ν‐ジエチルベンジルアミン、ビス‐(Ν,Ν‐ジエチルアミノエチル)アジペート、Ν,Ν,Ν’,Ν’‐テトラメチル‐1,3‐ブタンジアミン、Ν,Ν‐ジメチル‐β‐フェニルエチルアミン、1,2‐ジメチルイミダゾール、2‐メチルイミダゾール)、
単環式および二環式アミド、ビス‐(ジアルキルアミノ)アルキルエーテル、
アミド基(好ましくはホルムアミド基)を含有する第三級アミン、
第二級アミン(例えば、ジメチルアミン)およびアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド、或いはアセトン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノン等のケトン類)およびフェノール類(例えば、フェノール、ノニルフェノールまたはビスフェノール)のマンニッヒ塩基、
イソシアネート基に対して活性な水素原子を含有する三級アミン(例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、Ν-メチルジエタノールアミン、Ν‐エチルジエタノールアミン、Ν,Ν‐ジメチルエタノールアミン)、およびそれらのアルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドとの反応生成物、
第二級−第三級アミン、
炭素‐ケイ素結合を有するシラアミン(2,2,4‐トリメチル‐2‐シラモルホリンおよび1,3‐ジエチル‐アミノメチルテトラメチルジシロキサン)、
窒素含有塩基(例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム)、
アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、ナトリウムフェノラートなどのアルカリ金属フェノラート)、
アルカリ金属アルコラート(例えば、ナトリウムメチラート)、および/または
ヘキサヒドロトリアジンが挙げられる。
【0153】
NCO基とZerewitinoff活性水素原子との反応はラクタムおよびアザラクタムによって既知の方法で激しく促進され、最初にラクタムと酸性水素を含有する化合物との間に会合を形成する。
【0154】
また、有機金属化合物、特に有機錫化合物および/または有機ビスマス化合物を、触媒として使用することができる。使用可能な有機錫化合物は、硫黄含有化合物に加えて、例えばジ‐n‐オクチル錫メルカプチド、好ましくカルボン酸の錫(II)塩、例えば錫(II)アセテート、錫(II)オクトエート、錫(II)エチルヘキソエートおよびスズ(II)ラウレート、並びに錫(IV)化合物、例えばジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロリド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエートまたはジオクチル錫ジアセテートが挙げられる。有機ビスマス触媒は、例えば、国際公開第2004/000905号パンフレットに記載されている。
【0155】
もちろん、すべての前述の触媒は混合物として使用することができる。有機金属化合物と、アミジン、アミノピリジンまたはヒドラジノピリジンとの組み合わせが、特に興味深い。
【0156】
触媒は、一般に、イソシアネートに対して反応性を有する少なくとも2つの水素原子を有する化合物の総量に基づいて、約0.001〜10重量%の量で使用される。
【0157】
(c)界面活性添加剤、例えば乳化剤および気泡安定剤
使用可能な乳化剤としては、ヒマシ油スルホネートのナトリウム塩またはオレイン酸ジエチルアミンまたはステアリン酸ジエタノールアミン等のアミンと脂肪酸の塩である。
ドデシルベンゼンスルホン酸またはジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸の、
リシノール酸などの脂肪酸の、或いはポリマー脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩も、界面活性添加剤として共に使用することができる。
【0158】
使用可能な気泡安定剤は、とりわけ、ポリエーテルシロキサン(特に水溶性の代表例)である。この化合物は、一般に、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーをポリジメチルシロキサン基に結合させるように形成される。アロファネート基によって数箇所で分岐したポリシロキサン/ポリオキシアルキレンコポリマーが、特に興味深い。
【0159】
(d)反応遅延剤
使用可能な反応遅延剤は、例えば、酸性反応物質(例えば、塩酸または有機酸ハロゲン化物など)である。
【0160】
(e)添加剤
使用可能なPU添加剤としては、例えば、既知の種類の気泡調節剤(例えば、パラフィンまたは脂肪アルコールなど)またはジメチルポリシロキサン、および顔料または染料および既知の種類の難燃剤(例えば、トリスクロロエチルホスフェート、トリクレジルホスフェートまたはリン酸アンモニウムおよびポリリン酸)、更に老化および風化に対する安定剤、可塑剤、並びに静真菌活性物質および静菌活性物質、充填剤(例えば、硫酸バリウム、珪藻土、カーボンブラックまたは精製白亜など)が挙げられる。
【0161】
場合により本発明にしたがって共に用いられる界面活性添加剤および気泡安定剤、加えて気泡調節剤、反応遅延剤、安定剤、難燃剤物質、可塑剤、染料および充填剤、並びに静真菌活性物質および静菌活性物質の更なる例は、当業者に既知であり、文献に記載されている。
【0162】
本発明に用いられる塗料には、一成分および二成分系の塗料系、好ましくは水性塗料が挙げられる。本発明の二成分系塗料(2−C)は、本発明にしたがって、水性塗料に加えて、硬化剤を含有する。
【0163】
1つの態様では、本発明の水性塗料は一成分塗料である。
【0164】
別の態様では、少なくとも片面のコーティングは、水性二成分ポリウレタン塗料である。
【0165】
コーティングは、少なくとも1つの塗料層(ベース塗装)と好ましくは保護層(トップ塗装)を有する。ベース塗装は、特に好ましくは2つの層を有する。
【0166】
本発明にしたがって用いられる二成分ポリウレタン塗料は、本質的に
(a)任意の有機溶媒または溶媒混合物の存在下で、場合により親水化されるポリイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性を有する基を有し、水および任意の有機溶媒または溶媒混合物の存在下で、場合により親水化される化合物、
(c)任意の更なる添加剤および助剤
を含み、
上記(a)+(b)の量が20〜100重量部であり、上記(c)の量が0〜80重量部である(但し、それぞれの成分(a)〜(c)の合計量が100重量部である)
ことを特徴とする。
【0167】
本発明の二成分系は、その反応性のために、成分(a)および(b)を別々の容器に保存しなければならない塗料を意味すると解釈される。2つの成分は、塗布直前にのみ混合し、次いで一般的には、更に活性化することなしに反応する。
【0168】
(ポリ)イソシアネート成分(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族化合物に結合した遊離イソシアネート基を有し、室温で液状であるか、またはこの目的のために溶剤で希釈される所望の有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネート成分(a)は、23℃で10〜15,000、好ましくは10〜5,000mPasの粘度を有する。ポリイソシアネート成分(a)は特に好ましくは、2.0〜5.0の(平均)NCO官能価および23℃で10〜5,000mPasの粘度を有する、もっぱら脂肪族および/または脂環式化合物に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0169】
水性二成分ポリウレタン塗料から特に高レベルの塗装を得るために、遊離NCO基を有するポリイソシアネートを架橋剤として使用することが好ましい。好適な架橋剤樹脂として、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4‐ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4‐イソシアナトシクロヘキシル)‐メタン、1,3‐ジイソシアナトベンゼン、2,4‐および/または2,6‐ジイソシアナトトルエン(TDI)、ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)およびω、ω’‐ジイソシアナト‐1,3‐ジメチルシクロヘキサン(HeXDI)をベースとしたポリイソシアネートが挙げられる。イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4‐イソシアナトシクロヘキシル)‐メタンおよびω、ω’‐ジイソシアナト‐1,3‐ジメチルシクロヘキサン(HeXDI)をベースとしたポリイソシアネートが好ましい。
【0170】
前述のジイソシアネートは、場合によりそのまま使用することができるが、通常、ジイソシアネートの誘導体が使用される。好適な誘導体として、ビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、ウレタン、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、カルボジイミド、アシル尿素およびアロファネート基を含有するポリイソシアネートが挙げられる。
【0171】
好ましい誘導体は、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオンおよびウレトジオン構造を含むものである。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,4‐ジイソシアナトシクロヘキサン、ビス(4‐イソシアナトシクロヘキシル)メタンからのこのような構成要素を有する低モノマー塗料ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0172】
また、TIN(トリイソシアナトノナン)などのトリイソシアネートも好適である。
【0173】
(ポリ)イソシアネート成分(a)を、場合により、親水性化してもよい。水溶性または水分散性ポリイソシアネートは、例えば、カルボキシレート基、スルホネート基および/またはポリエチレンオキシド基および/またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド基を用いて変性することによって得ることができる。
【0174】
ポリイソシアネートの親水化は、例えば、不足量の一価の親水性ポリエーテルとの反応により、行うことができる。そのような親水化ポリイソシアネートの製造は、例えば、欧州特許出願公開第0 540 985号明細書、第3頁第55行〜第4頁第5行に記載されている。アロファネート基を含有し、アロファネート化条件下で低モノマーポリイソシアネートとポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールとの反応によって調製される、欧州特許出願公開第0 959 087号明細書第3頁第39〜51行に記載されているポリイソシアネートが特に好適である。また、例えば独国特許出願公開第10 024 624号明細書第3頁第13〜33行または国際公開第01/88006号パンフレットに記載されている、イオン性基(スルホネート、ホスホネート基)で親水性化したポリイソシアネートと同様に、独国特許出願公開第10 007 821号明細書第2頁第66行〜第3頁第5行に記載されている、トリイソシアナトノナンをベースとした水分散性ポリイソシアネート混合物も好適である。乳化剤の添加による外部親水性化も同様に用いることができる。
【0175】
使用されるポリイソシアネート成分(a)のNCO含有量は、例えば、いわゆるポリエーテルアロファネート(ポリエーテルによる親水性化)の場合に、5〜25重量%の範囲であってもよい。スルホン酸基を用いる親水性化の場合、4〜26重量%のNCO含量が達成され、このような数値は例示の目的のみを意図しているものと解釈されるべきである。
【0176】
使用されるイソシアネート成分は、例えば、存在するイソシアネート基の1/3以下まで、イソシアネートに対して反応性を有する成分によって、部分的にブロックされてもよい。この場合には、更なる架橋を誘導するため、更なるポリオールとブロックイソシアネート成分の反応が、後の工程で起こってもよい。
【0177】
このようなポリイソシアネートの好適なブロッキング剤としては、例えば、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類等の一価アルコール、ε-カプロラクタム等のラクタム類、フェノール類、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジメチルピラゾールまたはトリアゾールなどのアミン類、およびマロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステルまたはマロン酸ジブチルエステルである。
【0178】
塗装膜の特に高レベルの特性を達成することができるため、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネート、特に好ましくは、脂肪族または脂環式イソシアネートをベースとする遊離イソシアネート基を有する低粘度、疎水性または親水性ポリイソシアネートを使用することが好ましい。本発明のバインダー分散体の利点は、このような架橋剤と組み合わせた場合に、最も明白に現れる。このようなポリイソシアネートは、通常、23℃において10〜3,500mPasの粘度を有する。必要であれば、前述の範囲内の数値まで粘度を下げるために、ポリイソシアネートを、少量の不活性溶媒と混合して使用することができる。架橋剤として、トリイソシアナトノナンも、単独または混合物で使用することができる。
【0179】
原則的には、もちろん、種々のポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0180】
イソシアネートに対して反応性を有する基を含有する好適な化合物(b)は、例えば、ヒドロキシル基、スルホネート基および/またはカルボキシレート基、好ましくはカルボキシレート基および任意にスルホン酸基および/またはカルボキシル基、好ましくは、カルボキシル基を含有するポリマー、オレフィン性不飽和モノマー(いわゆるポリアクリレートポリオール)のポリマー、ジオールおよびジカルボン酸(いわゆるポリエステルポリオール)の組合せのポリマー、ジオール、ジカルボン酸およびジイソシアネート(いわゆるポリウレタンポリオール)の組合せのポリマー、および/または前述のポリオール類の混成系のポリマー、例えばポリアクリレート‐ポリエステルポリオール、ポリアクリレート‐ポリウレタンポリオール、ポリエステル‐ポリウレタンポリオールまたはポリエステル‐ポリウレタンポリオールであり、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定することができる(数平均)分子量Mn500〜50,000、特に1,000〜10,000を有し、16.5〜264、好ましくは33〜165mgKOH/gの固形樹脂ベースの水酸基価を有し、0〜150、好ましくは0〜1000mgKOH/gの固形樹脂ベースの酸価(非中和スルホン酸基および/またはカルボキシル基をベースとした)、および固形分100g当たり、5〜147、好ましくは24〜278ミリ当量のスルホネート基および/またはカルボキシル基の含有量を有する。
【0181】
このようなアニオン性基は、特に好ましくは、カルボキシレート基である。種々のバインダーの概要が、例えば欧州特許出願公開第0 959 115号明細書第3頁第26〜54行に記載されている。しかしながら、単純なジオール成分も用いることができる。水中に溶解または分散され、イソシアネートに対して反応性を有する基を含有する全てのバインダーが、原則的には、バインダー成分(b)として好適である。これらには、例えば、水中に分散され、ウレタン基または尿素基中に存在する活性水素原子によってポリイソシアネートと架橋することができるポリウレタンまたはポリ尿素を包含する。しかしながら、ポリオール、即ち、遊離OH基を有する化合物が好ましい。
【0182】
バインダー成分(b)は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%濃度の水溶液および/または分散体の形で、コーティング組成物の調製に使用され、一般に10〜10
5、好ましくは100〜10,000mPas/23℃の粘度および5〜10、好ましくは6〜9のpH値を有する。場合により、補助溶媒を使用することができる。
【0183】
バインダー成分(b)の分子量およびアニオン性基または遊離酸基、特にカルボキシル基の含有量に依存して、上記ポリマーを含有する水性系は、真の分散液、コロイド状または分子状分散液であるが、一般的にはいわゆる「部分分散液」、即ち、部分的コロイド状分散液および部分的分子状分散液である水性系である。
【0184】
成分(a)からのイソシアネート基の成分(b)からのイソシアネート反応性基、例えばヒドロキシル基に対する比(NCO-OH比)は、広い範囲にわたることができる。従って、0.2:1.0〜4.0:1.0の比率は、塗装技術用途で使用することができる。0.35:1〜2.0:1.0好ましく、1.0:1.0〜1.5:1.0の範囲が特に好ましい。
【0185】
1〜10,000ppmの市販の触媒を、任意に、上記の組成物に添加することができる。
【0186】
本発明の水性バインダー分散液の製造前、製造中または製造後に、および少なくとも1つの架橋剤の添加によってコーティング組成物を製造する場合に、塗料技術の従来の補助剤および添加剤(d)、例えば、消泡剤、増粘剤、顔料、分散助剤、成分(c)と異なる更なる触媒、皮張り防止剤、沈降防止剤または乳化剤を添加してもよい。
【0187】
本発明による二成分ポリウレタン系は、水および任意の有機溶媒、または溶媒としてのそれらの混合物を含有する。
【0188】
使用可能な有機溶媒は、全て既知の溶媒である。塗料工業において用いられる溶媒、例えば、キシレン、酢酸ブチル、酢酸エチル、ブチルグリコールアセテート、ブトキシル、メトキシプロピルアセテート、Solvesso(登録商標) 100(Exxon Mobil Chemicals)(代わりに、Solvent Naphthaも使用することができる)などの炭化水素またはN‐メチルピロリドンが好ましい。
【0189】
すべてで、現在使用されている量で通常は必要であれば、
有機溶媒が通常使用されるが、その場合には、必要な量だけ使用する。従って、例えば、用いられたポリイソシアネート(a)の予備希釈用として、或いは水に溶解または分散させたバインダー成分(b)の調製にちょうど必要とされる量で使用される。
【実施例】
【0190】
成分A
1.28の相対溶液粘度(η
rel;25℃で100mLの塩化メチレンの0.5gのポリカーボネートの溶液で測定)を有するビスフェノールAをベースとする直鎖状ポリカーボネート。
【0191】
成分B.1
76重量%のスチレンおよび(標準としてポリスチレンを用いてGPCにより測定)130kg/モルの重量平均分子量Mwを有する24重量%のアクリロニトリルから、バルク重合法で調製したゴム不含コポリマー。
【0192】
成分B.2
ABSポリマーに基づいて、12重量%の直鎖状ポリブタジエンゴムの存在下での、24重量%のアクリロニトリルおよび76重量%のスチレンの混合物88重量%のバルク重合によって調製されたABSポリマー。ABSポリマーは、トルエン中で測定した25重量%のゲル含有量を有する。
【0193】
成分C
46重量%のシリコーンゴムと54重量%のブチルアクリレートゴムとからなるコアとしての72重量%の粒子状グラフトベースへの、シェルとしてのスチレン:アクリロニトリルの重量比71:29を有する28%のスチレン/アクリロニトリル共重合体から成る、乳化重合法で調製し、トルエン中で測定した95重量%のゲル含有量を有するグラフトポリマー。
【0194】
成分D‐1
ウベローデ粘度計を用いて25℃でISO 307にしたがって0.05g/mLの濃度でフェノール/o‐ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で測定された粘度1.07dL/gを有する、ポリブチレンテレフタレート(例えばPocan B1300、ドイツ、ケルンのLanxess AG)。
【0195】
成分D‐2
25℃、1重量%の濃度でジクロロ酢酸中で測定された固有粘度0.665dL/gを有するポリエチレンテレフタレート(例えば、RT6020、ドイツ、ゲルストホーフェンのInvista)。
【0196】
成分E‐1
Sedigraphにより測定された1.2μmの平均粒径D
50を有し、0.5重量%のAl
2O
3含有量を有するタルク。
【0197】
成分E‐2
7μmの平均粒径D
50とMicrotrac粒子解析によって測定された2.9m
2/gの表面積を有する珪灰石。
【0198】
成分E‐3
13μmの直径および切断長さ2.5〜3.5mmを有するホウ素‐アルミニウムガラス繊維。
【0199】
成分F‐1
滑剤/離型剤としてのペンタエリスリトールテトラステアレート
【0200】
成分F‐2
熱安定剤(80%のIrgafos(登録商標) 168(トリス(2,4‐ジ‐tert‐ブチル‐フェニル)‐ホスファイト;ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF AG)および20%のIrganox(登録商標) 1076(2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐(オクタデカンオキシカルボニルエチル)‐フェノール;ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンのBASF AG)の混合物)。
【0201】
成分F‐3
75重量%の濃リン酸および25重量%の親水性シリカゲルの自由流動性混合物。
【0202】
成分F‐4
カーボンブラック
【0203】
成形用組成物の調製
成分A〜Fを含む本発明の成形用組成物を、本発明による270〜300℃の溶融温度でCoperion、 Werner und Pfleiderer社(ドイツ)のZSK25二軸スクリュー押出機により加工した。
【0204】
試験片の作製および試験
特定の配合から得られた顆粒を、260℃の溶融温度および80℃の金型温度で射出成形機(Arburg社)によって加工して、試験片を得た。
【0205】
イソプロパノールを用いた射出成形体の洗浄および火炎処理の後に、塗装ガンで表面に塗料(ベース塗料)を塗布することによって、試験片のコーティングを行った。塗料を、次いで、80℃で15分間乾燥した。その後、保護層(クリア塗料)を、同様に塗布し、80℃で30分間乾燥した。
【0206】
得られた塗装積層物の層厚さは45μm(ベース塗料15μm、保護層30μm)であった。
【0207】
ベース塗料:
Woerwag標準水性塗料Schwarz 113161。
【0208】
保護層:
Woeropur硬化剤60738を有するWoeropurクリア塗料、高光沢 108728(両者共にWoerwag社)。
【0209】
溶融流動性(MVR)は、260℃の温度および5kgのプランジャ荷重でISO 1133に従って測定したメルト体積流量率(MVR)により評価した。
【0210】
熱変形温度は、寸法80mm×10mm×4mmの片側に射出成形した試験棒を用いて、DIN ISO 306(50Nの負荷および120K/hの加熱速度を用いる方法Bのビカット軟化温度)に従って測定した。
【0211】
溶融粘度は、260℃の温度および1,000秒
−1の剪断速度でISO 11443に従って測定した。
【0212】
ノッチ付き衝撃強さ(a
k)および衝撃強さ(a
n)の測定は、それぞれISO 180/1AおよびISO 180/1Uに従って、室温(23℃)で寸法80mm×10mm×4mmの試験棒を用いて10回の測定によって行った。
【0213】
破断時伸びおよび引張弾性率Eは、寸法170mm×10mm×4mmのショルダーバーを用いて、ISO527−1、−2に従って、室温(23℃)で測定した。
【0214】
媒体の影響下での耐応力亀裂性(環境応力亀裂=ESC)は、ISO 4599に従って、寸法80mm×10mm×4mmの試験棒を用いて室温(23℃)で測定した。型締め型板による2.4%の外端繊維歪みを伴う荷重下および媒体としてのナタネ油に完全に浸漬した試験片の破壊破損までの時間を、耐応力亀裂性の尺度として用いた。
【0215】
線熱膨張係数(CLTE)を、寸法60mm×60mm×2mmの試験片を用いて、試験片の作製時のメルトフロー方向に平行および垂直のそれぞれの場合に、−20〜80℃の温度範囲でDIN 53752に従って測定した。
【0216】
塗料接着性は、DIN ISO 2409に従ったクロスハッチ試験およびDIN 55662 8.1/8.2に従った高圧水ジェット(スチームジェット試験)に対する抵抗試験によって測定した。
【0217】
本発明の成形部品は、好ましくは、クロスハッチ試験による基材への塗料の接着性の等級分類が1以下、好ましくは0であり、スチームジェット試験による接着性の等級分類が0である。
【0218】
以下の実施例は本発明を更に説明するために提供される。
【0219】
【表1-1】
【0220】
【表1-2】