【文献】
Journal of Biomedical Materials Research,1991年,Vol.25,pp.1347-1361
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液凝固の亢進を必要とする対象を治療するための方法で用いる単位投与量製剤であって、非抗凝固性の非糖類スルホン酸化/硫酸化ポリマーを含む治療上有効な量の組成物を前記対象に投与することを含み、前記単位投与量製剤が、治療上有効な量の請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーを含む、単位投与量製剤。
前記ポリマーが、前記単位投与量製剤が投与される対象における血液凝固を亢進するのに十分な量で前記製剤中に存在する、請求項4〜6のいずれかに記載の単位投与量製剤。
血液凝固の亢進を必要とする対象を治療するための組成物であって、非抗凝固性の非糖類スルホン酸化/硫酸化ポリマーを含み、治療上有効な量の組成物が前記対象に投与されることを特徴とし、前記ポリマーが、−SO2−X基(式中、Xはアルギニンまたはアルギニン誘導体から誘導される基を表し、そのアミノ官能基−NH−によって−SO2−基に結合する)を含まない、組成物。
前記対象が、慢性または急性出血障害、血液因子欠乏に起因する先天性凝固障害、および後天性凝固障害からなる群から選択される出血障害を有する、請求項9〜12のいずれかに記載の組成物。
前記血液因子欠乏が、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群から選択される1つ以上の因子の欠乏である、請求項13に記載の組成物。
前記組成物と組み合わせて、作用物質がさらに投与されることを特徴とし、前記作用物質が、凝固促進剤、内因性凝固経路の活性化剤、外因性凝固経路の活性化剤、非抗凝固性の硫酸化/スルホン酸化多糖類(NASP)、および前記非抗凝固性の非糖類スルホン酸化/硫酸化ポリマーとは異なる構造を有する第2の非抗凝固性の非糖類スルホン酸化/硫酸化ポリマーからなる群から選択される、請求項9〜15のいずれかに記載の組成物。
前記作用物質が、組織因子、第II因子、第V因子、第Va因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第VIIIa因子、第X因子、第X因子、第Xa因子、第IXa因子、第XI因子、第XIa因子、第XII因子、第XIIa因子、第XIII因子、プレカリクレイン、HMWK、およびフォンヴィレブランド因子からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
前記抗凝固剤が、ヘパリン、クマリン誘導体(ワルファリンまたはジクマロール等)、組織因子経路阻害剤(TFPI)、抗トロンビンIII、ループス抗凝固剤、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、およびラザキサバン(DPC906)を含む)、第Va因子および第VIIIa因子阻害剤(活性化タンパク質C(APC)および可溶性トロンボモジュリンを含む)、トロンビン阻害剤(ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランを含む)、ならびに凝固因子に結合する抗体からなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
前記抗凝固剤が、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、およびHMWKからなる群から選択される凝固因子に結合する抗体である、請求項16に記載の組成物。
対象における組織因子経路阻害剤(TFPI)活性を阻害するための組成物であって、非抗凝固性の非糖類スルホン酸化/硫酸化ポリマーを含み、前記TFPIを阻害するのに十分な量の前記組成物が前記対象に投与されることを特徴とし、前記ポリマーが、−SO2−X基(式中、Xはアルギニンまたはアルギニン誘導体から誘導される基を表し、そのアミノ官能基−NH−によって−SO2−基に結合する)を含まない、組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】トロンビンの生成を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の例示の化合物であり、かつ本発明の方法において用いられる化合物を示す。
【
図4A】硫酸化、スルホン酸化、およびリン酸化ポリマーの凝固促進活性および凝固促進の時間枠を示す。抗体誘発性血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中のポリ(アネトールスルホン酸)ナトリウム塩(
図4A)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(
図4B)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩(
図4C)、およびポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩(
図4D)のCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:ピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化またはスルホン酸化ポリマーは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、それらの凝固促進活性を示す。約30〜100μg/mLのNASSPがFVIII阻害血漿に添加された時点でトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を超える(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約100μg/mLより高い濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、それらの抗凝固活性の開始を示す。約300μg/mL時点で、ピークトロンビンは、依然としてFVIII阻害血漿の開始レベルを超えており(破線の基準線:FVIII阻害患者血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。NASSPの凝固促進活性とは対照的に、ポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩は、FVIII阻害血漿のトロンビン生成を改善しない。(
図4E)硫酸化ポリチロシンの凝固促進活性および凝固促進時間枠。血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中の硫酸化ポリチロシンのCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:トロンビンピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化ポリチロシンは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、その凝固促進活性を示す。約5μg/mLの硫酸化ポリチロシンがFVIII阻害血漿に添加された時点からトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を著しく改善する(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約700μg/mLの濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、その抗凝固活性の開始を示す。約1mg/mL時点でのみ、ピークトロンビンは、FVIII阻害血漿の開始レベルに到達し(破線の基準線:FVIII阻害正常血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。
【
図4B】硫酸化、スルホン酸化、およびリン酸化ポリマーの凝固促進活性および凝固促進の時間枠を示す。抗体誘発性血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中のポリ(アネトールスルホン酸)ナトリウム塩(
図4A)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(
図4B)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩(
図4C)、およびポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩(
図4D)のCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:ピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化またはスルホン酸化ポリマーは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、それらの凝固促進活性を示す。約30〜100μg/mLのNASSPがFVIII阻害血漿に添加された時点でトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を超える(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約100μg/mLより高い濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、それらの抗凝固活性の開始を示す。約300μg/mL時点で、ピークトロンビンは、依然としてFVIII阻害血漿の開始レベルを超えており(破線の基準線:FVIII阻害患者血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。NASSPの凝固促進活性とは対照的に、ポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩は、FVIII阻害血漿のトロンビン生成を改善しない。(
図4E)硫酸化ポリチロシンの凝固促進活性および凝固促進時間枠。血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中の硫酸化ポリチロシンのCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:トロンビンピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化ポリチロシンは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、その凝固促進活性を示す。約5μg/mLの硫酸化ポリチロシンがFVIII阻害血漿に添加された時点からトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を著しく改善する(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約700μg/mLの濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、その抗凝固活性の開始を示す。約1mg/mL時点でのみ、ピークトロンビンは、FVIII阻害血漿の開始レベルに到達し(破線の基準線:FVIII阻害正常血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。
【
図4C】硫酸化、スルホン酸化、およびリン酸化ポリマーの凝固促進活性および凝固促進の時間枠を示す。抗体誘発性血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中のポリ(アネトールスルホン酸)ナトリウム塩(
図4A)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(
図4B)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩(
図4C)、およびポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩(
図4D)のCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:ピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化またはスルホン酸化ポリマーは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、それらの凝固促進活性を示す。約30〜100μg/mLのNASSPがFVIII阻害血漿に添加された時点でトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を超える(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約100μg/mLより高い濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、それらの抗凝固活性の開始を示す。約300μg/mL時点で、ピークトロンビンは、依然としてFVIII阻害血漿の開始レベルを超えており(破線の基準線:FVIII阻害患者血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。NASSPの凝固促進活性とは対照的に、ポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩は、FVIII阻害血漿のトロンビン生成を改善しない。(
図4E)硫酸化ポリチロシンの凝固促進活性および凝固促進時間枠。血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中の硫酸化ポリチロシンのCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:トロンビンピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化ポリチロシンは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、その凝固促進活性を示す。約5μg/mLの硫酸化ポリチロシンがFVIII阻害血漿に添加された時点からトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を著しく改善する(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約700μg/mLの濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、その抗凝固活性の開始を示す。約1mg/mL時点でのみ、ピークトロンビンは、FVIII阻害血漿の開始レベルに到達し(破線の基準線:FVIII阻害正常血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。
【
図4D】硫酸化、スルホン酸化、およびリン酸化ポリマーの凝固促進活性および凝固促進の時間枠を示す。抗体誘発性血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中のポリ(アネトールスルホン酸)ナトリウム塩(
図4A)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(
図4B)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩(
図4C)、およびポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩(
図4D)のCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:ピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化またはスルホン酸化ポリマーは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、それらの凝固促進活性を示す。約30〜100μg/mLのNASSPがFVIII阻害血漿に添加された時点でトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を超える(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約100μg/mLより高い濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、それらの抗凝固活性の開始を示す。約300μg/mL時点で、ピークトロンビンは、依然としてFVIII阻害血漿の開始レベルを超えており(破線の基準線:FVIII阻害患者血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。NASSPの凝固促進活性とは対照的に、ポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩は、FVIII阻害血漿のトロンビン生成を改善しない。(
図4E)硫酸化ポリチロシンの凝固促進活性および凝固促進時間枠。血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中の硫酸化ポリチロシンのCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:トロンビンピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化ポリチロシンは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、その凝固促進活性を示す。約5μg/mLの硫酸化ポリチロシンがFVIII阻害血漿に添加された時点からトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を著しく改善する(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約700μg/mLの濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、その抗凝固活性の開始を示す。約1mg/mL時点でのみ、ピークトロンビンは、FVIII阻害血漿の開始レベルに到達し(破線の基準線:FVIII阻害正常血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。
【
図4E】硫酸化、スルホン酸化、およびリン酸化ポリマーの凝固促進活性および凝固促進の時間枠を示す。抗体誘発性血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中のポリ(アネトールスルホン酸)ナトリウム塩(
図4A)、ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(
図4B)、ポリ(硫酸ビニル)カリウム塩(
図4C)、およびポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩(
図4D)のCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:ピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化またはスルホン酸化ポリマーは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、それらの凝固促進活性を示す。約30〜100μg/mLのNASSPがFVIII阻害血漿に添加された時点でトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を超える(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約100μg/mLより高い濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、それらの抗凝固活性の開始を示す。約300μg/mL時点で、ピークトロンビンは、依然としてFVIII阻害血漿の開始レベルを超えており(破線の基準線:FVIII阻害患者血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。NASSPの凝固促進活性とは対照的に、ポリ(ビニルリン酸)ナトリウム塩は、FVIII阻害血漿のトロンビン生成を改善しない。(
図4E)硫酸化ポリチロシンの凝固促進活性および凝固促進時間枠。血友病のモデルとしてのFVIII阻害血漿中の硫酸化ポリチロシンのCAT(有色の円:ピークトロンビン、白色の円:トロンビンピークまでの時間)。トロンビン生成は、再石灰化および低組織因子(1pM)によって誘発される。硫酸化ポリチロシンは、約0.3μg/mLの濃度でピークトロンビンの増加およびピークまでの時間の減少を開始し、その凝固促進活性を示す。約5μg/mLの硫酸化ポリチロシンがFVIII阻害血漿に添加された時点からトロンビン生成が最適になり、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を著しく改善する(黒色の基準線:ヒト正常血漿プールのピークトロンビン)。約700μg/mLの濃度でピークトロンビンが減少し、ピーク時間が増加し、その抗凝固活性の開始を示す。約1mg/mL時点でのみ、ピークトロンビンは、FVIII阻害血漿の開始レベルに到達し(破線の基準線:FVIII阻害正常血漿のピークトロンビン)、治療有効性の凝固促進時間枠を大きく広げる。
【
図5】ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム)(Mw=70kDa)(PSS)のTFPI−dPTアッセイのプロットを示す。このアッセイを0.5μg/mLの血漿濃度でヒト全長TFPI(huflTFPI)を用いて、かつ8.3mMのCaCl2を用いて正常ヒト血漿中で行った。PSSは、0.42μg/mLのEC50でヒトflTFPIを阻害する。
【
図6】ポリ(アネトールスルホン酸、ナトリウム塩)(Mw=9〜11kDa)(PAS)のTFPI−dPTアッセイのプロットを示す。このアッセイを0.5μg/mLの血漿濃度でhuflTFPIを用いて、かつ8.3mMのCaCl2を用いて正常ヒト血漿中で行った。PASは、1.27μg/mLのEC50でヒトflTFPIを阻害する。
【
図7】ポリ(硫酸ビニル、カリウム塩)(Mw=170kDa)(PVS)のTFPI−dPTアッセイのプロットを示す。このアッセイを0.5μg/mLの血漿濃度でhuflTFPIを用いて、かつ8.3mMのCaCl2を用いて正常ヒト血漿中で行った。PVSは、94.3μg/mLのEC50でヒトflTFPIを阻害する。
【
図8】ポリ(ビニルリン酸、ナトリウム塩)(Mw=200kDa超)(PVP)のTFPI−dPTアッセイのプロットを示す。このアッセイを0.5μg/mLの血漿濃度でhuflTFPIを用いて、かつ8.3mMのCaCl2を用いて正常ヒト血漿中で行った。PVPは、ヒトflTFPIの阻害を示さない。
【
図9】硫酸化ポリ(チロシン)(PVP)のTFPI−dPTアッセイのプロットを示す。このアッセイを0.5μg/mLの血漿濃度でhuflTFPIを用いて、かつ8.3mMのCaCl2を用いて正常ヒト血漿中で行った。PTは、51.7μg/mLのEC50でヒトflTFPIを阻害する。
【
図10】本発明のNASSPのCATアッセイおよびTFPI−dPTアッセイから得られたEC50値を比較する表である。
【
図11】正常ヒト血漿中での本発明のNASSPを用いたCATアッセイを示す。NASSPは、ポリ(ビニルリン酸、ナトリウム塩)(PVP)および緩衝剤とは対照的に指示濃度でトロンビン生成を改善する(白色の棒線、基準線)。NASSPによるトロンビン生成の改善は、ポリクローナル抗TFPI抗体によるTFPIのブロック時には観察されなかった(AF2974、有色の棒線)。これは、TFPIがNASSPの凝固促進作用に必要であることを示唆する。
【
図12】正常ヒト血漿中での本発明のNASSPを用いたCATアッセイを示す。NASSPは、ポリ(ビニルリン酸、ナトリウム塩)(PVP)および緩衝剤とは対照的に指示濃度でトロンビン生成を改善する(灰色の棒線)。NASSPによるトロンビン生成の改善は、TFPIのC末端に対して指向された抗TFPI抗体を用いてTFPIをブロックすることによって無効になる(有色の棒線)。TFPI断片(aa1〜160)との置換は、NASSPの凝固促進作用を回復させず(白色の棒線)、本発明のNASSPがTFPIのC末端で作用することを示唆する。硫酸化ポリ(チロシン)においていくらかの凝固促進作用がTFPI60の存在下で観察される。
【
図13A】ある種のNASSP(それらのベースポリマーに基づく)とさらなる作用物質との例示の組み合わせを示すマトリックス表である。
【
図13B】ある種のNASSP(それらのベースポリマーに基づく)とさらなる作用物質との例示の組み合わせを示すマトリックス表である。
【
図14A】
図13A〜Bで特定される組み合わせのそれぞれにおける各NASSPの例示の投与量範囲を示すマトリックス表である。
【
図14B】
図13A〜Bで特定される組み合わせのそれぞれにおける各NASSPの例示の投与量範囲を示すマトリックス表である。
【
図15】NASSPと組み合わせて使用されるあるさらなる作用物質(例えば、
図13A〜Bおよび
図14A〜Bに示される組み合わせ)の例示の投与量範囲を示す表である。
【
図16A】本発明の例示のNASSPの抗凝固特性を示す。例示のNASSPは、それらが凝血促進活性を示す濃度よりも高い濃度で抗凝固特性を有する。
【
図16B】本発明の例示のNASSPの抗凝固特性を示す。例示のNASSPは、それらが凝血促進活性を示す濃度よりも高い濃度で抗凝固特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
序文
血友病、例えば、血友病Aおよび血友病B、重度のフォンヴィレブランド疾患(svWD)、ならびに重度の第VII因子(FVII)欠乏症を含む血液凝固障害は、典型的には、因子置換(例えば、血友病AおよびsvWDには第VIII因子、血友病Bには第IX因子、ならびにFVII−欠乏には第VII因子(a)等)によって治療されている(Bishop,et al.(2004)Nat.Rev.Drug Discov.,3:684−694、Carcao,et al.(2004)Blood Rev.,18:101−113、Roberts,et al.(2004)Anesthesiology 100:722−730、およびLee(2004)Int.Anesthesiol.Clin.,42:59−76に総説される)。そのような治療が多くの場合効果的であるが、有用性を制限する特徴として、高額な費用、不便さ(すなわち、静脈内投与)、および中和抗体生成が挙げられる(Bishop,et al.(上記参照)、Carcao,et al.(上記参照)、Roberts,et al.(上記参照)、Lee(上記参照)、およびBohn,et al.(2004)Haemophilia 10 Suppl.,1:2−8)。様々な出血障害におけるFVIIaの利用が増えているが(Roberts,et al.(上記参照))、前述の制約および不利点がなく、幅広く適用される代替の単一化合物凝固促進療法が関心対象である。
【0028】
出血障害を有する個体における止血を改善する1つの一般的な方法は、血液凝固の外因性経路を上方制御することによって凝固の開始を改善することである。凝固の内因性および外因性経路はトロンビン生成およびフィブリン凝固形成に寄与するが(Davie,et al.(1991)Biochemistry,30:10363−10370)、外因性または組織因子(TF)媒介経路は開始に不可欠であり、インビボでの凝固の伝播に寄与する(Mann(2003)Chest,124(3 Suppl):1S−3S、Rapaport,et al.(1995)Thromb.Haemost.,74:7−17)。外因性経路活性を上方制御するための1つの潜在的な機構は、組織因子経路阻害剤(TFPI)の減衰である。TFPIは、外因性経路活性の持続性下方制御を提供するFVIIa/TFのKunitz型プロテイナーゼ阻害剤である(概説については、Broze(1992)Semin.Hematol.,29:159−169、Broze(2003)J.Thromb.Haemost.,1:1671−1675、およびJohnson,et al.(1998)Coron.Artery Dis.,9(2−3):83−87を参照のこと)。実際に、マウスにおけるヘテロ接合TFPI欠乏症は、血栓形成の悪化をもたらし得(Westrick,et al.(2001)Circulation,103:3044−3046)、TFPI遺伝子変異は、ヒトにおける血栓症の危険因子である(Kleesiek,et al.(1999)Thromb.Haemost.,82:1−5)。TFPIの標的を介する血友病における凝固の調節は、Nordfang,et al.およびWun,et al.によって説明されており、抗TFPI抗体が血友病血漿の凝固時間を短縮し得(Nordfang,et al.(1991)Thromb.Haemost.,66:464−467、Welsch,et al.(1991)Thromb.Res., 64:213−222)、抗TFPI IgGが、第VIII因子を欠乏したウサギの出血時間を改善したことを示した(Erhardtsen,et al.(1995)Blood Coagul.Fibrinolysis,6:388−394)。
【0029】
本明細書に記載されるように、本発明のある硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)は、NASSPが著しい抗凝固を呈する濃度よりも低い濃度で抗凝固活性を阻害する。そのような分子は、血栓形成が損なわれる状況において用いられる。
【0030】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の製剤またはプロセスパラメータに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が本発明の特定の実施形態を説明するためだけに用いられ、限定的であるようには意図されないことも理解されたい。
【0031】
本明細書に記載の方法および物質と同様または同等のいくつかの方法および物質が本発明の実践において使用され得るが、好ましい物質および方法は、本明細書で説明される。
【0032】
定義
本発明を説明する際、以下の用語が用いられ、以下に示されるように定義されるよう意図される。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのNASSP(a NASSP)」への言及は、2つ以上のそのような作用物質の混合物等を含む。
【0034】
「NASSP」は、本明細書で使用されるとき、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイにおいて抗凝固活性を呈する硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーを指し、未分画ヘパリンの抗凝固活性(凝固時間の増加)の3分の1以下、好ましくは10分の1未満である(例えば、1μg/mL当たりの増加によって測定される)。本発明のNASSPは、デノボ合成され得、約5,000ダルトン〜約150,000ダルトンを含む、約10ダルトン〜約1,000,000ダルトン、例えば、約100ダルトン〜約900,000ダルトン等、約500ダルトン〜約500,000ダルトン等、約1,000ダルトン〜約250,000ダルトン等の分子量の範囲であり得る。NASSPは、約1,000ダルトン〜約150,000ダルトンを含む、約10ダルトン〜約500,000ダルトン、約100ダルトン〜約300,000ダルトン等、約1,000ダルトン〜約250,000ダルトン等の平均分子量の範囲であり得る。本発明のNASSPは、本発明の方法、とりわけ、出血障害、特に凝固因子の欠乏を伴う出血障害の治療時の止血を改善するか、または抗凝固剤の作用を逆転させるための方法で用いられ得る。凝固を亢進し、かつ出血を減少させる本発明のNASSPの能力は、様々なインビトロでの包括的な止血および凝固アッセイ(例えば、TFPI−dPTおよびCATアッセイ)およびインビボ出血モデル(例えば、血友病マウスまたはイヌにおける尾切断、横切断、全血凝固時間、または表皮出血時間決定)を用いて容易に決定される。例えば、PDR Staff.Physicians’ Desk Reference.2004,Anderson,et al.(1976)Thromb.Res.,9:575−580、Nordfang,et al.(1991)Thromb Haemost.,66:464−467、Welsch,et al.(1991)Thrombosis Research,64:213−222、Broze,et al.(2001)Thromb Haemost,85:747−748、Scallan,et al.(2003)Blood,102:2031−2037、Pijnappels,et al.(1986)Thromb.Haemost.,55:70−73、およびGiles,et al.(1982)Blood,60:727−730を参照されたい。
【0035】
「凝固促進剤」は、血栓形成を開始するか、または加速させることができる任意の因子もしくは試薬を指すためにその従来の意味で本明細書において使用される。例示の凝固促進剤には、本発明のNASSP、血栓形成を開始するか、または加速させることができる凝固因子もしくは試薬が挙げられる。本発明の組成物において使用される例示の凝固促進剤には、NASSP等の内因性または外因性凝固経路の任意の活性化剤、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、HMWK、組織因子、第VIIa因子、および第Va因子からなる群から選択される凝固因子が挙げられる。凝固を促進する他の試薬には、カリクレイン、APTT開始剤(すなわち、リン脂質および接触活性化剤を含有する試薬)、ラッセルクサリヘビ蛇毒(RVV)、およびトロンボプラスチン(dPT)が挙げられる。凝固促進試薬として本発明の方法で用いられ得る接触活性化剤には、当業者に既知の微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、カオリン等が挙げられる。凝固促進剤は、粗天然抽出物、血液または血漿試料、単離および実質的に精製された合成物質または組み換え体由来であり得る。凝固促進剤は、天然に存在する凝固因子もしくは断片、変異体、または生物学的活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)その共有結合的に修飾された誘導体を含み得る。選択された疾患を治療するのに最適な凝固促進剤の濃度および投与量は、当業者によって決定され得る。
【0036】
「多糖類」という用語は、本明細書で使用されるとき、複数(すなわち、2つ以上)の共有結合された糖類残基を含むポリマーを指す。結合は、天然または非天然であり得る。天然結合には、例えば、グリコシド結合が含まれ、非天然結合には、例えば、エステル、アミド、またはオキシム結合部分が含まれ得る。ポリマーは、広範囲の平均分子量(MW)値のいずれかを有し得るが、一般的には、少なくとも約100ダルトンのものである。例えば、ポリマーは、少なくとも約500、1000、2000、4000、6000、8000、10,000、20,000、30,000、50,000、100,000、500,000ダルトンの分子量、またはさらに高い分子量を有し得る。ポリマーは、直鎖または分岐鎖構造を有し得る。ポリマーは、大きなポリマーの分解(例えば、加水分解)によって生成されるポリマーの断片を含み得る。分解は、ポリマーを酸、塩基、熱、酸化剤、または酵素で処理して断片ポリマーを産出するプロトコルを含む任意の便利なプロトコルによって達成され得る。ポリマーは、化学的に改変され得、修飾(硫酸化、ポリ硫酸化、エステル化、およびメチル化を含むが、これらに限定されない)され得る。
【0037】
例示の実施形態において、本発明のNASSPは多糖類ではない。例示のNASSPは、糖類サブユニットを含む。様々な実施形態において、本発明のNASSPは、足場または足場から垂れ下がった基、例えば、アリールまたはヘテロアリール部分に直接共有結合する1つ以上の硫酸塩またはスルホン酸塩部分を有するポリ(ビニル)足場に基づく。様々な実施形態において、足場は、モノマーがペプチド結合を介して共有結合するポリ(アミノ酸)足場である。硫酸塩またはスルホン酸塩部分は、足場または足場から垂れ下がった部分、例えば、アリールまたはヘテロアリール部分に直接共有結合する。
【0038】
「分子量」は、本明細書において論じられるとき、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかとして表され得る。別途示されない限り、本明細書における分子量への全ての言及は、重量平均分子量を指す。数平均分子量決定も重量平均分子量決定もいずれも、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーまたは他の液体クロマトグラフィー技法を用いて測定され得る。
【0039】
「薬学的に許容される」とは、一般的に安全で非毒性であり、かつ生物学的にもその他の点でも望ましい薬学的組成物を調製する際に有用であることを意味し、獣医学的用途ならびにヒト薬学的用途に許容されることを含む。
【0040】
「治療上有効な量」という語句は、本明細書で使用されるとき、妥当な利益/危険比で望ましい治療効果をもたらすのに有効な本発明の化合物を含む化合物、材料、または組成物の量、例えば、当技術分野で標準の薬剤を用いた出血障害の治療に一般に適用可能な量を意味する。「治療上有効な用量または量」のNASSP、血液因子、または他の治療薬は、本明細書に記載されるように投与されるときに出血の減少または凝固時間の短縮等の正の治療応答をもたらす物質の量を指す。
【0041】
「薬学的に許容される塩」という用語は、概して、−SO
3−M
+および−OSO
3−M
+等の塩に関連し、本明細書に記載の化合物に見られる特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有するとき、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態をそのままでまたは好適な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望の塩基と接触させることによって得られ得る。薬学的に許容される塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、もしくはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有するとき、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態をそのままでまたは好適な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望の酸と接触させることによって得られ得る。薬学的に許容される酸付加塩の例として、塩化水素酸、臭化水素酸、硝酸、カルボン酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、または亜リン酸等の無機酸由来の塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソブチル酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、コハク酸、スベル酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等の比較的非毒性の有機酸由来の塩が挙げられる。アルギニン酸塩等のアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツノル酸等の有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Science,66:1−19(1977)を参照のこと)。本発明のある特定の化合物は、塩基性官能基および酸性官能基のいずれも含有し、化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換されることを可能にする。
【0042】
残基が「SO
3−」として定義されるとき、この式は、有機または無機カチオン性対イオンを任意に含むよう意図される。好ましくは、この化合物の結果として生じる塩形態は、薬学的に許容される。この構造は、プロトン化種「SO
3H」も含む。
【0043】
化合物の中性形態は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって再生される。化合物の親態形は、極性溶媒における溶解性等のある物理的な特性の点で様々な塩形態とは異なるが、その他の点では、この塩は、本発明の目的のために化合物の親形態と同等である。
【0044】
「出血障害」という用語は、本明細書で使用されるとき、先天性凝固障害、後天性凝固障害、または外傷誘発性出血状態等の過剰出血を伴う任意の障害を指す。そのような出血障害には、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド疾患、特発性血小板減少症、1つ以上の凝固因子欠乏症(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、およびHMWK)、臨床的に有意な出血を伴う1つ以上の因子欠乏症(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)、ビタミンK欠乏症、フィブリノゲン障害(無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、および異常フィブリノゲン血症を含む)、α2−抗プラスミン欠乏症、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温症、月経、および妊娠等に起因する過剰出血が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
「対象」とは、制限なく、ヒトおよび他の霊長類(チンパンジーならびに他の類人猿およびサル種等の非ヒト霊長類を含む)、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマ)、家畜哺乳類(例えば、イヌおよびネコ等)、実験動物(マウス、ラット、およびモルモット等の齧歯類を含む)、鳥類(ニワトリ、七面鳥、および他のキジ鳥、アヒル、ガチョウ等の家畜、野生、および狩猟鳥)を含む脊索動物亜門の任意の構成員を意味する。この用語は、特定の年齢を意味しない。したがって、成人個体および新生個体のいずれも関心対象である。
【0046】
「患者」という用語は、本発明のNASSPの投与によって予防または治療され得る状態に罹患するか、またはその状態に罹りやすい生きている生物を指すためにその従来の意味で使用され、ヒト種および非ヒト種の両方を含む。
【0047】
「TFPI」および「flTFPI」は、本明細書で使用されるとき、それぞれ、組織因子経路阻害剤および全長組織因子経路阻害剤を指す。
【0048】
「TFPI160」は、TFPIのKD1およびKD2ドメインを含むアミノ酸1〜160を含むポリペプチドを指す。全長TFPIのKD3およびC末端は存在しない。
【0049】
実施形態
本発明の様々な態様は、対象における血液凝固を亢進するための方法を含む。ある実施形態に従って方法を実践する際に、ある量の非抗凝固性の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)が、対象における血液凝固を亢進するのに十分であるように対象に投与される。本発明の方法を実践するための組成物およびキットも提供される。
【0050】
本発明をより詳細に説明する前に、本明細書に記載の特定の実施形態が変化し得るため、本発明がそのような実施形態に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明するためだけに用いられ、そのような専門用語が限定的であるようには意図されないことも理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値の間の各介在値(別途内容が明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1まで)およびその表示される範囲内の任意の他の表示される値または介在値は、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれ得、本発明内にも包含されるが、その表示された範囲内の具体的に除外された上下限値の対象となる。表示された範囲が上限値および下限値のうちの一方または両方を含む場合、それらの包含される上限値および下限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に包含される。ある範囲は、本明細書において、「約」という用語が前に付く数値で提示される。「約」という用語は、それが前に付く正確な数、ならびにその用語が前に付く数の前後であるか、またはそれに近い数に文字通りの支援を提供するために本明細書で使用される。数が具体的に列挙される数の前後であるか、またはそれに近いかを決定する際に、その前後またはそれに近い列挙されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に列挙される数の実質的な等価数を提供する数であり得る。本明細書に引用される全ての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることを明確かつ個別に示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、それぞれの引用される出版物、特許、または特許出願は、それらの出版物の引用に関連して主題を開示および記載するために参照により本明細書に組み込まれる。任意の出版物の引用は、出願日の前にそれを開示するためであり、本明細書に記載の本発明が先行発明によりそのような出版物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる場合があり、別々に確認する必要があり得る。
【0051】
特許請求の範囲が任意の要素を除外するように作成されてもよいことに留意する。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」および「のみ」等の排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用の先行詞となるよう意図される。本開示を読めば当業者に明らかになるように、本明細書に記載および図示される個々の実施形態はそれぞれ、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離されるか、またはそれらの特徴と組み合わせられ得る別個の構成要素および特徴を有する。任意の列挙される方法は、列挙される事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。本明細書に記載の方法および物質と同様または同等の任意の方法および物質を本発明の実践または試験において使用することもできるが、代表的な例示の方法および物質は、これから説明される。
【0052】
A.NASSP
一態様において、本発明は、インビボまたはインビトロで哺乳類血液の凝固を亢進する能力を有する硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーを提供する。様々な実施形態において、この硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーは、凝固促進活性を有する。様々な態様において、本発明のポリマーの凝固促進活性は、標準の凝固アッセイ、例えば、トロンビン生成アッセイ(TGA)を用いて測定できる十分な規模である。
【0053】
本発明の例示の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーは、これらのポリマーのうちの1つを投与された対象に治療上有効な凝固促進作用を提供する。本発明の例示の化合物は、対象への投与時に抗凝固作用も及ぼし、様々な実施形態において、本発明のポリマーは、ポリマーの治療上有効な凝固促進作用を完全に相殺するのに十分な程度の抗凝固作用を誘導しない。本発明の例示のNASSPは、約0.1μg/mL〜約700μg/mLの血漿(例えば、ヒト血漿)、例えば、約0.3μg/mL〜約600μg/mLの血漿、例えば、約1μg/mL〜約500μg/mLの血漿、例えば、約3μg/mL〜約400μg/mL、例えば、約10μg/mL〜約300μg/mLの血漿、例えば、約20μg/mL〜約200μg/mLの血漿、例えば、約30μg/mL〜約100μg/mLの血漿濃度の凝固促進剤である。本発明の例示のNASSPは、トロンビン生成が校正自動トロンボグラム(CAT)等の標準のアッセイで測定されたときに血友病血漿レベルを上回るため、前述の濃度で実質的に非抗凝固性であり、その例は本明細書に記載されている。例えば、実施例1および
図4A〜Eを参照されたい。凝固促進作用およびピークトロンビンはいずれも、CATによって測定され得る。
【0054】
本発明の例示のNASSPは、凝固促進活性および抗凝固活性を有する硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーである。潜在的なNASSPの抗凝固特性は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝固アッセイを用いて決定される。本発明の例示のNASSPは、未分画ヘパリンの抗凝固活性(凝固時間の増加によって測定される)の2分の1以下、好ましくは3分の1以下、好ましくは10分の1未満の抗凝固活性を呈する。
【0055】
様々な実施形態において、本発明は、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有する非糖類硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーを提供し、式中、R
1は、H、置換または非置換アルキル、およびスルホン酸化アリールから選択される。R
2は、R
1およびR
2のうちの少なくとも1つがスルホン酸もしくは硫酸基(例えば、SO
3−M
+、もしくはSO
3H(M
+は、無機もしくは有機カチオンである))であるか、またはそれを含むように、H、置換または非置換アルキル、およびスルホン酸塩から選択される。例示の実施形態において、R
1およびR
2のうちの1つのみがスルホン酸塩または硫酸塩部分を含む。指数nは、0よりも大きい整数に相当し、ポリマー中の繰り返しサブユニットの数を意味する。例示の実施形態において、nは、約7kDa〜約300kDa、例えば、約9kDa〜約200kDa、例えば、約11kDa〜約100kDaの分子量を有するポリマーを提供するように選択される。例示の実施形態において、nの値は、ポリマーが、約300kDa以下、約250kDa以下、約200kDa以下、150kDa以下、約100kDa以下、約50kDa以下、約25kDa以下、または約10kDa以下の分子量を有するように選択される。例示の実施形態において、nの値は、ポリマーが、約9kDa以下、約8kDa以下、約7kDa以下、約6kDa以下、約5kDa以下、約4kDa以下、約3kDa以下、または約2kDa以下の分子量を有するように選択される。
【0056】
本発明の例示の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーは、これらのポリマーのうちの1つを投与される対象に治療上関連する凝固促進作用を提供することを特徴とする。本発明の例示の化合物は、対象への投与時に抗凝固作用も与える。様々な実施形態において、本発明のポリマーは、ポリマーの凝固促進作用を完全に相殺するのに十分な程度の抗凝固作用を誘導しない。本発明の例示のNASSPは、約0.1μg/mL〜約700μg/mLの血漿(例えば、ヒト血漿)、例えば、約0.3μg/mL〜約600μg/mLの血漿、例えば、約1μg/mL〜約500μg/mLの血漿、例えば、約3μg/mL〜約400μg/mL、例えば、約10μg/mL〜約300μg/mLの血漿、例えば、約20μg/mL〜約200μg/mLの血漿、例えば、約30μg/mL〜約100μg/mLの血漿濃度の凝固促進剤である。
【0057】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、約400μg/mL以下、例えば、約350μg/mL以下、例えば、約300μg/mL以下、例えば、約250μg/mL以下、例えば、約200μg/mL以下、例えば、約150μg/mL以下、例えば、約100μg/mL以下、例えば、約50μg/mL以下の濃度の凝固促進作用を有する。
【0058】
様々な実施形態において、R
1は、
【化6】
であり、式中、R
3は、HおよびOR
4から選択される。指数sは、0、1、2、3またはそれ以上である。R
4は、H、および置換または非置換アルキルから選択される。R
1が置換フェニル基(III)である様々な実施形態において、R
2はHである。
【0059】
本発明に従う例示のポリマーは、
図3に記載される。
【0060】
他の実施形態では、本発明のNASSPは、TFPI希釈プロトロンビン時間(TFPI−dPT)凝固アッセイにおいて試験されるときに血液凝固時間を減少させる。様々な実施形態において、本発明のNASSPは、ヒト血漿中の外因性flTFPIの抗凝固作用を逆転させる。様々な実施形態において、本発明の化合物は、TFPIの作用を妨害する。様々な実施形態において、本発明のNASSPは、凝固促進活性を提供するためにTFPIのC末端と相互作用する。
【0061】
例示の実施形態において、本発明は、凝固促進活性を有する硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーを提供し、これは、ポリビニル、ポリスチレン、ポリチロシン、またはポリアネトールに基づく。
【0062】
様々な実施形態において、本発明は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、または少なくとも約20%の硫黄を含むNASSPを提供する。例示の実施形態において、この硫黄量は、NASSPの元素分析によって決定される。
【0063】
例示の実施形態において、NASSPは、この特性についての標準のアッセイにおいて凝固促進作用を有することを特徴とする。
【0064】
例示の実施形態において、凝固促進作用は、NASSPが血液凝固の亢進を必要とする対象を治療するための方法での使用に十分である。この方法は、非抗凝固性の非糖類硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)を含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することを含む。
【0065】
他の実施形態では、NASSPは、上述の化合物の1つ以上の低分子量の断片から選択される。好ましい実施形態において、NASSPの断片は、TFPI−dPTアッセイにおいて試験されるときに血液凝固時間を減少させる。一実施形態において、NASSPは、TFPI−dPTアッセイにおいて試験されるときに血液凝固時間を減少させる硫酸塩またはスルホン酸塩ポリマーの断片である。例示の実施形態において、これらの断片は、治療上有効な凝固促進作用を有するポリマーに関して上に記載される特性を、この作用がその抗凝固特性によって相殺される場合であっても、有する。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明は、1つ以上の異なるNASSPとともに、かつ/または1つ以上の他の治療薬と組み合わせて共製剤化されるNASSPを提供する。
【0067】
凝固を促進し、かつ出血を減少させるNASSPの能力は、様々なインビトロ凝固アッセイ(例えば、TFPI−dPT、トロンビン生成、および回転トロンボエラストメトリー(ROTEM)アッセイ)およびインビボ出血モデル(例えば、血友病マウスまたはイヌにおける尾切断または表皮出血時間決定)を用いて容易に決定される。例えば、PDR Staff.Physicians’Desk Reference,2004,Nordfang,et al.(1991)Thromb Haemost.,66:464−467、Anderson,et al.(1976)Thromb.Res.,9:575−580、Welsch,et al.(1991)Thrombosis Research,64:213−222、Broze,et al.(2001)Thromb Haemost,85:747−748、Scallan,et al.(2003)Blood,102:2031−2037、Pijnappels,et al.(1986)Thromb.Haemost.,55:70−73、およびGiles,et al.(1982)Blood,60:727−730を参照されたい。凝固アッセイは、NASSPおよび1つ以上の血液因子、凝固促進剤、または他の試薬の存在下で行われ得る。例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、HMWK、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、およびフォンヴィレブランド因子、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子を含むが、これらに限定されない1つ以上の凝固因子、ならびに/またはAPTT試薬、トロンボプラスチン、フィブリン、TFPI、ラッセルクサリヘビ蛇毒、微粉化シリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、およびカオリンを含むが、これらに限定されない1つ以上の試薬が添加され得る。
【0068】
本明細書に添付される実施例および図面は、本明細書においてNASSPと称される作用物質が、真に「非抗凝固性」であり、言い換えると、それらが選択された濃度範囲内で凝固時間を著しく増加させないことを確認する。そのような化合物は、本発明の方法および組成物において用いられ得るが、但し、それらが呈し得る任意の抗凝固活性が、それらが凝固促進活性を呈する濃度を著しく超える濃度でのみ現れることを条件とする。望ましくない抗凝固特性が生じる濃度と所望の凝固促進活性が生じる濃度との比率は、問題のNASSPの凝固促進指数(または、例えば、治療指数)と称される。本発明のNASSPの凝固促進指数は、約5、10、30、100、300、1000以上であり得る。
【0069】
B.薬学的組成物
様々な実施形態において、本発明のNASSPは、薬学的製剤に組み込まれる。様々な実施形態において、NASSPの所望の作用および効力に応じて、1つ以上のNASSPが一緒に製剤化され得る。例えば、3つ以上のNASSPおよび4つ以上のNASSPを含む2つ以上のNASSPが一緒に製剤化され得る。2つ以上のNASSPが用いられるとき、組成物中の各NASSPの質量パーセントは、組成物の全質量の1%以上、例えば、2%以上、例えば、5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上の範囲、および組成物の全質量の50%以上を含む範囲で変化し得る。
【0070】
様々な実施形態において、本発明の薬学的製剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を任意に含有する。例示の賦形剤には、制限なく、炭水化物、無機塩、抗菌剤、抗酸化剤、界面活性剤、緩衝剤、酸、塩基、およびこれらの組み合わせが挙げられる。液体賦形剤には、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、および界面活性剤が挙げられる。糖等の炭水化物、アルジトール等の誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーは、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤には、例えば、単糖類(例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等)、二糖類(例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等)、ポリマー(例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、スターチ等)、およびアルジトール(例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等)が挙げられる。賦形剤は、無機塩または緩衝剤、例えば、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸ナトリウム、一塩基リン酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせも含み得る。
【0071】
本発明の組成物は、微生物増殖を阻止または抑止するために抗菌剤も含み得る。本発明に好適な抗菌剤の非限定的な例として、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
抗酸化剤も同様に組成物中に存在し得る。抗酸化剤は、酸化を防止し、それによってNASSPまたは調製物の他の成分の劣化を防止するために用いられる。本発明で用いるのに好適な抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
界面活性剤が賦形剤として存在し得る。例示の界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、「Tween 20」および「Tween 80」)ならびにプルロニック(例えば、F68およびF88(BASF,Mount Olive,N.J.);ソルビタンエステル;脂質(例えば、レシチン等のリン脂質および他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(好ましくはリポソーム形態でないが)、脂肪酸、および脂肪エステル);コレステロール等のステロイド;EDTA等のキレート剤;ならびに亜鉛および他のそのような好適なカチオンが挙げられる。
【0074】
酸または塩基は、製剤中の賦形剤として存在し得る。用いられ得る酸の非限定的な例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸が挙げられる。好適な塩基の例には、制限なく、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基が挙げられる。
【0075】
組成物中のNASSPの量は、いくつかの要素に応じて変化するが、最適には、組成物が単位剤形(例えば、丸剤もしくはカプセル)または容器(例えば、バイアルまたは袋)中に存在するときに治療上有効な用量である。治療上有効な用量は、どの量が臨床的に望ましいエンドポイントを実現するか決定するために増加量の組成物を繰り返し投与することによって実験的に決定され得る。
【0076】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の性質および機能、ならびに組成物の特定のニーズに応じて変化する。典型的には、任意の個々の賦形剤の最適な量は、日常的な実験によって、すなわち、可変量(低〜高の範囲)の賦形剤を含有する組成物を調製し、安定性および他のパラメータを試験し、その後、著しく悪影響を及ぼすことなく最適な性能が実現される範囲を決定することによって決定される。しかしながら、概して、賦形剤(複数を含む)は、約1重量%〜約99重量%、好ましくは約5重量%〜約98重量%、より好ましくは約15〜約95重量%の賦形剤の量で、最も好ましくは30重量%未満の濃度で組成物中に存在する。他の賦形剤に加えてこれらの前述の薬学的賦形剤は、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams(1995)、the“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)、およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,2000に記載されている。
【0077】
この組成物は、全ての種類の製剤、具体的には、経口投与または注入に適した製剤を含む。さらなる好ましい組成物には、経口、眼内、または局所送達用の組成物が含まれる。
【0078】
本明細書における薬学的調製物は、意図される送達方法および用途に応じて、輸液バッグ、シリンジ、移植デバイス等にも収容され得る。好ましくは、本明細書に記載のNASSP組成物は、単位剤形であり、予め測定された形態または予め包装された形態の単回投与に適切な本発明の抱合体または組成物の量を意味する。
【0079】
製剤は、単位剤形で好都合に提示され、薬学分野において周知の方法のいずれかによって調製され得る。全ての方法は、化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(「活性成分」)を1つ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。概して、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉化した固体担体またはこれら両方と均一かつおよび密接に会合させ、その後、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。経口製剤は、当業者に周知であり、それらを調製するための一般的な方法は、任意の標準の製薬学の教科書、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.R.Gennaro,ed.(1995)で見出され、この全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
様々な実施形態において、本発明は、1つ以上の本発明のNASSPを含む単位投与量製剤を提供する。例示の実施形態において、単位投与量製剤は、好ましくは、臨床的に検出可能であり、好ましくは、単回投与製剤が投与される対象の凝固状態の臨床的に有意な変化を引き起こすのに十分な治療上有効な投与量のNASSPを含む。例示の実施形態において、製剤中の本発明のNASSPの量は、約0.01mg/kg〜約200mg/kgのNASSP投与量を提供するのに十分な量の範囲である。様々な実施形態において、本発明のNASSPの量は、約0.01mg/kg〜20mg/kg、例えば、約0.02mg/kg〜2mg/kgの投与量を提供するのに十分な量である。単位投与量製剤中の化合物の量は、特定のNASSPの効力、所望の程度または凝固促進作用、および投与経路に依存する。
【0081】
例示の単位投与量製剤は、有効な用量の活性成分もしくはその適切な画分、またはその薬学的に許容される塩を含有するものである。予防的または治療的用量は、典型的には、治療される状態の性質および重症度、ならびに投与経路によって異なる。投与量、恐らく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、および応答性により異なる。概して、本発明の化合物の場合、本発明の単位剤形中の全用量は、約1mg〜約7000mg、例えば、約2mg〜約500mg、例えば、約10mg〜約200mg、例えば、約20mg〜約100mg、例えば、約20mg〜約80mg、例えば、約20mg〜約60mgの範囲である。いくつかの実施形態において、単位剤形中の本発明のNASSPの量は、約50mg〜約500mg、例えば、約100mg〜約200mgの範囲である。
【0082】
本明細書におけるNASSP製剤は、1つ以上のさらなる作用物質、例えば、止血剤、血液因子、または対象の状態または障害を治療するために用いられる他の薬物を任意に含み得る。様々な実施形態において、本発明は、1つ以上の血液因子、例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、HMWK、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子、プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、活性化プロトロンビン複合体濃縮物(aPCC)、例えば、FEIBAを含む組み合わせ調製物を提供する。NASSP組成物は、他の凝固促進剤、例えば、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、およびVIIIa、プレカリクレイン、およびHMWKを含むが、これらに限定されない内因性凝固経路の活性化剤、ならびに/または組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含むが、これらに限定されない外因性凝固経路の活性化剤も含み得る。NASSP組成物は、生物学的活性を保持する(すなわち、凝固を促進する)天然に存在する凝固因子、合成凝固因子、もしくは組換え凝固因子、またはその断片、変異体、もしくは共有結合的に修飾された誘導体を含み得る。あるいは、そのような作用物質は、NASSPとは別の組成物に含有され、本発明のNASSP組成物と同時に共投与され得るか、その前に投与され得るか、またはその後に投与され得る。
【0083】
ある種のNASSP(それらのベースポリマーに基づく)とさらなる作用物質との例示の組み合わせは、
図13A〜Bに示される。図中のそれぞれの組み合わせは、大文字(NASSPの種類を指す)によって識別され、その後に数(さらなる作用物質を指す)が続く。例えば、「C5」は、ポリチロシンベースポリマーを有するNASSPと第V因子との組み合わせを指す。
図14A〜Bは、
図13A〜Bで識別される組み合わせ(NASSPの種類(ベースポリマーに基づく)とさらなる作用物質)のそれぞれにおける各NASSPの例示の投与量範囲を提供する。
【0084】
そのような組み合わせの個々の成分は、単位剤形で同時にまたは連続して投与され得る。単位剤形は、単一または複数の単位剤形であり得る。例示の実施形態において、本発明は、組み合わせを単一の単位剤形で提供する。単一の単位剤形の例は、本発明の化合物およびさらなる治療薬が両方ともに同一のカプセル内に含有されるカプセルである。例示の実施形態において、本発明は、組み合わせを2つの単位剤形で提供する。2つの単位剤形の例は、本発明の化合物を含有する第1のカプセルおよびさらなる治療薬を含有する第2のカプセルである。したがって、「単一の単位」または「2つの単位」または「複数の単位」という用語は、物体の内部成分ではなく、患者が摂取する物体を指す。既知の治療薬の適切な用量は、当業者により容易に理解される。
【0085】
様々な実施形態において、本明細書におけるNASSP組成物は、経口投与を目的とするとき、1つ以上の透過亢進剤を任意に含み得る。適切な透過亢進剤、および凝固促進剤、例えば、本発明によって提供される凝固促進剤とのそれらの使用については、2011年7月19日出願の米国仮特許出願第61/509,514号、表題「Absorption Enhancers as Additives to Improve the Oral Formulation of Non−Anticoagulant Sulfated Polysaccharides」に開示されている。いくつかの実施形態において、透過亢進剤は、胃腸上皮バリア透過亢進剤である。対象の生理機能に応じて、「胃腸上皮」という語句は、本明細書で使用されるとき、胃および腸管(例えば、十二指腸、空腸、回腸)等の消化管の上皮組織を指し、食道下部、直腸、および肛門を含む身体の消化管機能に関与する他の構造をさらに含み得る。様々な実施形態において、本発明の組成物は、胃腸上皮バリア透過亢進剤と組み合わせて凝固促進量のNASSPを含む。本発明において用いる透過亢進剤の量は、概して、上述の米国仮特許出願第61/509,514号に記載される量と同一である。同様に、例示の実施形態において、適切な量のNASSPは、上述の出願においてNASPについて記載される量と同一である。様々な実施形態において、本発明の組成物は、凝固促進量のNASSPと胃腸上皮バリア透過亢進剤および血液凝固因子との組み合わせを含む。NASSPおよび第2の作用物質、例えば、血液凝固因子の例示の量は、本明細書に記載される。胃腸上皮バリア透過亢進剤は、経口投与されるときに胃腸系によって吸収されるNASSPの量を増加させる化合物を含む。さらに、胃腸透過亢進剤は、胃腸上皮を通るNASSP吸収の開始も加速させ(すなわち、吸収が開始するまでの時間量を低減させ)得るとともに、対象の胃腸上皮にわたるNASSPの全体的な輸送速度を加速させる(すなわち、胃腸系によるNASSP吸収が完了するまでの時間量を低減させる)。本発明の実施形態において、胃腸上皮バリア透過亢進剤は、特定の血液凝固障害、対象の生理機能、および胃腸系による所望の吸収促進に応じて変化し得る。いくつかの実施形態において、胃腸上皮バリア透過亢進剤は、密着結合調節物質である。「密着結合」という用語は、その従来の意味において、隣接した細胞の膜が一緒に結合される密接に会合した細胞部分を指すために用いられる。本発明の実施形態において、密着結合調節物質には、酵素、胆汁酸、多糖類、脂肪酸およびその塩、ならびにこれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の例示の実施形態において、本発明は、a)本発明の化合物、b)さらなる治療薬、およびc)薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的製剤を提供する。例示の実施形態において、この薬学的製剤は、単位剤形である。例示の実施形態において、この薬学的製剤は、単一の単位剤形である。例示の実施形態において、この薬学的製剤は、2つの単位剤形である。例示の実施形態において、薬学的製剤は、第1の単位剤形および第2の単位剤形を含む2つの単位剤形であり、第1の単位剤形は、a)本発明の化合物およびb)第1の薬学的に許容される賦形剤を含み、第2の単位剤形は、c)さらなる治療薬およびd)第2の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0087】
上で具体的に言及される成分に加えて、本発明の製剤は、当の製剤の種類を考慮して当技術分野における従来の他の作用物質を含み得、例えば、経口投与に好適な本発明の製剤は、香味剤を含み得ることを理解されたい。
【0088】
経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル(例えば、軟ゲルカプセル)、それぞれ既定量の活性成分を含有するカシェ剤もしくは錠剤等の別個の単位として、粉末もしくは顆粒として、水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、または水中油液体乳剤もしくは油中水液体乳剤として提示され得る。活性成分は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提示され得る。
【0089】
錠剤は、1つ以上の副成分を任意に用いて圧縮または成形によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑化剤、表面活性剤、または分散剤と任意に混合される粉末または顆粒等の活性成分を好適な機械において自由流動形態で圧縮することによって調製され得る。成形された錠剤は、不活性希釈液で湿潤させた粉末化化合物の混合物を適切な機械で成形することによって作製され得る。錠剤は、任意にコーティングまたは割線が施され得、その中の活性成分の持続放出、遅延放出、または制御放出を提供するように製剤され得る。経口および非経口持続放出薬物送達系は、当業者に周知であり、経口または非経口投与された薬物の持続放出を達成する一般的な方法は、例えば、The Science and Practice of Pharmacy,pages 1660−1675(1995)において見出され、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
例示の実施形態において、本発明は、注入(例えば、輸液)投与に適した形態で本発明のNASSPの単位投与量製剤を提供する。単位投与量製剤は、使用直前に適切な薬学的に許容される希釈剤で希釈され得るか、または輸液用に希釈された単位投与量として包装され得る。注入前の希釈に好適な形態には、例えば、使用前に溶媒で再構成され得る粉末または凍結乾燥剤、ならびに注入可能な溶液または懸濁液、使用前にビヒクルと組み合わせるための乾燥不溶性組成物、ならびに投与前に希釈するためのエマルジョンおよび液体濃縮物が含まれる。注入前の固体組成物の再構成に好適な希釈剤の例には、注入用の静菌水、水中5%デキストロース、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、およびこれらの組み合わせが挙げられる。液体の薬学的組成物について、溶液および懸濁液が想定される。概して、経口単位剤形に適した量として上で論じられる量は、注入可能な単位投与にも適用可能である。
【0091】
さらなる例示の実施形態において、本発明は、注入可能な単位投与量製剤、および注入(例えば、輸液)による単位投与量製剤の投与のためのデバイスを提供する。様々な実施形態において、デバイスは、輸液用のデバイス、例えば、輸液バッグである。本実施形態の例において、本発明は、単位投与量製剤が希釈に適した形態で予め充填されるか、または希釈される輸液バッグまたは同様のデバイスを提供する。
【0092】
本発明の製剤に有用に組み込まれるNASSP活性(すなわち、凝固促進活性)を有する硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーには、ベースポリマーが、ポリビニル、ポリアネトール、ポリチロシンおよびポリスチレンから選択される硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
C.凝固促進剤としてのNASSP
本発明は、非抗凝固性の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)が出血障害を有する患者の治療において凝固促進剤として使用され得るという発見に基づく。止血を調節するための新規の手法は、凝固を促進するために硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(すなわち、ヘパリン様)を利用する本発明者によって発見された。本明細書に記載の選択された硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマーは、抗凝固活性を大きく欠くか、またはそれらが抗凝固活性を呈する濃度よりも著しく低い濃度で凝固促進活性を呈するため、「非抗凝固性の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー」と表される。
【0094】
実施例1に示されるように、NASSPは、トロンビン生成およびTFPI−dPT凝固アッセイに従って血友病A(hemA)または血友病B(hemB)を有する対象由来の血漿の凝固を促進する。本明細書に開示される実験において、ある候補NASSPは、凝固アッセイにおいて、ヘパリンと比較して少なくとも10倍低い抗凝固活性を示すことが示されている。これらの結果は、選択されたNASSPの全身投与が、出血障害における止血を調節するための特有の技法に相当することを示す。したがって、様々な実施形態において、本発明は、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷誘発性出血状態を含む出血障害を有する対象における止血を制御するためのNASSPの使用に関する。
【0095】
例示の実施形態において、本発明のNASSPは、CATアッセイにおいて測定されるとき、約0.001μg/mL〜約30μg/mL、例えば、約0.01μg/mL〜約10μg/mL、例えば、約0.05μg/mL〜約5μg/mLの血漿のEC50を有する。様々な実施形態において、本発明のNASSPは、そのEC50で実質的に抗凝固性ではない。本発明の例示のNASSPは、最大約1.1倍、1.3倍、1.6倍、1.9倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4.0倍のそのEC
50の濃度で実質的に抗凝固性ではない。
【0096】
D.適用
一態様において、NASSPは、出血障害、具体的には、凝固因子の欠乏を伴う出血障害の治療時に止血を改善するか、または対象における抗凝固剤の作用を逆転させるために本発明の方法において用いられ得る。NASSPは、先天性凝固障害、後天性凝固障害、および外傷誘発性出血状態を含む出血障害を治療するために対象に投与され得る。NASSPで治療され得る出血障害の例には、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド疾患、特発性血小板減少症、1つ以上の凝固因子欠乏症(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、およびHMWK)、臨床的に有意な出血を伴う1つ以上の因子欠乏症(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)、ビタミンK欠乏症、フィブリノゲン障害(無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、および異常フィブリノゲン血症を含む)、α2−抗プラスミン欠乏症、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠等に起因する過剰な出血が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、NASSPは、血友病A、血友病B、およびフォンヴィレブランド疾患を含む先天性凝固障害を治療するために用いられる。他の実施形態では、NASSPは、第VIII因子、フォンヴィレブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子および第XIII因子の欠乏、具体的には、血液凝固因子に対する阻害剤もしくは自己免疫に起因する障害、または凝固因子合成の減少をもたらす疾患もしくは状態に起因する止血障害を含む後天性凝固障害を治療するために用いられる。
【0097】
E.投与
例示の実施形態において、NASSPを用いて少なくとも1つの治療上有効な治療サイクルが対象に投与される。「治療上有効な治療サイクル」とは、投与されると、個体の出血障害の治療に対して正の治療応答をもたらす治療サイクルを指す。止血を改善するNASSPでの治療のサイクルが特に関心対象である。例えば、1つ以上の治療上有効な治療サイクルは、包括的な止血および凝固アッセイ(例えば、CAT、aPTT(以下で詳細に説明される))によって決定される凝固速度を1%以上、例えば、5%以上、例えば、10%以上、例えば、15%以上、例えば、20%以上、例えば、30%以上、例えば、40%以上、例えば、50%以上、例えば、75%以上、例えば、90%以上、例えば、95%以上増加させ得る(トロンビン生成を99%以上増加させることを含む)。他の例では、1つ以上の治療上有効な治療サイクルは、血栓形成を1.5倍以上、例えば、2倍以上、例えば、5倍以上、例えば、10倍以上、例えば、50倍以上増加させ得る(血栓形成を100倍以上増加させることを含む)。いくつかの実施形態において、本発明の方法によって治療される対象は、正の治療応答を呈する。本明細書で使用されるとき、「正の治療応答」とは、本発明に従って治療を受けた個体が、血液凝固時間の短縮および出血の減少、ならびに/または因子置換療法の必要性の減少等の改善を含む、出血障害の1つ以上の症状の改善を呈することを意味する。
【0098】
本発明は、本明細書に提供されるNASSPを含む抱合体を抱合体または組成物に含有されるNASSPでの治療に応答する状態に罹患する患者に投与するための方法も提供する。この方法は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかを介して、好ましくは薬学的組成物の一部として提供される治療上有効な量の抱合体または薬物送達系を投与することを含む。この投与方法を用いて、NASSPでの治療に応答する任意の状態を治療することができる。より具体的には、本明細書における組成物は、血友病A、血友病B、フォンヴィレブランド疾患、特発性血小板減少症、1つ以上の凝固因子欠乏症(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、およびHMWK)、臨床的に有意な出血を伴う1つ以上の因子欠乏症(例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、およびフォンヴィレブランド因子)、ビタミンK欠乏症、フィブリノゲン障害(無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、および異常フィブリノゲン血症を含む)、α2−抗プラスミン欠乏症、ならびに肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能異常症、血腫、内出血、関節血症、手術、外傷、低体温、月経、および妊娠等に起因する過剰な出血を含む出血障害の治療に効果的である。
【0099】
ある実施形態において、1つ以上のNASSPおよび/または他の治療薬、例えば、止血剤、血液因子、または他の薬物を含む1つ以上の治療上有効な用量の組成物が投与される。本発明の組成物は、典型的に、必ずしもではないが、経口投与されるか、注入を介して(皮下、静脈内、または筋肉内)投与されるか、輸液によって投与されるか、または局所投与される。この薬学的製剤は、投与直前は液体溶液または懸濁液の形態であり得るが、別の形態、例えば、シロップ、クリーム、軟膏、錠剤、カプセル、粉末、ゲル、マトリックス、坐薬等の形態もとり得る。肺、直腸、経皮、経粘膜、鞘内、心膜、動脈内、脳内、眼内、腹腔内等のさらなる投与方法も企図される。NASSPおよび他の作用物質を含む薬学的組成物は、当技術分野において既知の任意の医学的に許容される方法に従って同一または異なる投与経路を用いて投与され得る。
【0100】
NASSPは、他の作用物質の投与前、その投与と同時に、またはその投与後に投与され得る。他の作用物質として同時に提供される場合、NASSPは、同一の組成物または異なる組成物中に提供され得る。したがって、NASSPおよび他の作用物質は、併用療法によって個体に提供され得る。「併用療法」とは、物質の組み合わせの治療効果が治療を受ける対象にもたらされるように意図された対象への投与である。例えば、併用療法は、NASSPを含む薬学的組成物の容量および少なくとも1つの他の作用物質、例えば、止血剤または凝固因子(例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、HMWK、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子等の1つ以上の血液因子を含む)を含む薬学的組成物の用量を投与することによって達成され得る。NASSP組成物は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、およびVIIIa、プレカリクレイン、およびHMWKを含むが、これらに限定されない内因性凝固経路の活性化剤、ならびに/または組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含むが、これらに限定されない外因性凝固経路の活性化剤等の他の凝固促進剤も含み得、これらは、組み合わせて、特定の投与レジメンに従って治療上有効な用量を含む。同様に、1つ以上のNASSPおよび治療薬は、少なくとも1つの治療用量で投与され得る。NASSPおよび他の治療薬(複数を含む)が別個の薬学的組成物として投与されるとき、別個の薬学的組成物の投与は、これらの物質の組み合わせの治療効果が治療を受ける対象にもたらされる限り、同時に、または異なる時点で(すなわち、連続して、いずれかの順序で、同日または異なる日に)行われ得る。
【0101】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、病変、損傷、または手術の結果としての出血の治療のためにNASSPの局所送達に使用される。本発明に従う調製物は、局所治療にも好適である。例えば、NASSPは、出血部位での注入によって、または固体、液体、もしくは軟膏の形態で、好ましくは、絆創膏もしくは創傷被覆物を用いて投与され得る。坐薬、カプセル、具体的には、胃液耐性カプセル、ドロップ、またはスプレーも使用され得る。出血部位を標的するために特定の調製物および適切な投与方法が選択される。
【0102】
別の実施形態において、NASSPおよび/または他の作用物質を含む薬学的組成物は、例えば、予定されている手術の前に予防的に投与される。一般に実用的であるが、そのような予防的使用は、既知の既存の血液凝固障害を有する対象にとって特に有益である。
【0103】
本発明の別の実施形態において、NASSPおよび/または他の作用物質を含む薬学的組成物は、徐放性製剤または徐放デバイスを用いて投与される製剤中に存在する。そのようなデバイスは、当技術分野において周知であり、例えば、経皮パッチ、および非徐放性薬学的組成物を用いて徐放効果を達成するために様々な用量で連続した一定の状態で経時的に薬物送達を提供することができる小型の埋め込み型ポンプを含む。
【0104】
予防的または治療的用量は、典型的には、治療される状態の性質および重症度、ならびに投与経路によって異なる。投与量、恐らく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、および応答性により異なる。概して、総日用量(単一用量または分割された用量で)は、約1mg/日〜約7000mg/日、例えば、約1mg/日〜約100mg/日、例えば、約10mg/日〜約100mg/日、例えば、約20mg〜約100mg、例えば、約20mg〜約80mg、例えば、約20mg〜約60mgの範囲である。いくつかの実施形態において、総日用量は、約50mg〜約500/日、例えば、約100mg〜約500mg/日の範囲であり得る。小児(例えば、乳児)、65歳以上の患者、および腎機能または肝機能不全を有する者は最初に低用量を受け、その投与量は個体の生理学的応答および/または薬物動態に基づいて滴定されるべきであることがさらに推奨される。当業者には明らかであるように、場合によってはこれらの範囲外の投与量を用いる必要があり得る。さらに、臨床医または治療医師は、個々の患者の応答とともに、治療を中断、調節、または終了する方法および時期を把握していることに留意されたい。
【0105】
当業者であれば、特定のNASSPがどの状態を効果的に治療することができるかを認識するであろう。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全身状態、ならびに治療される状態の重症度、医療専門家の判断、および投与される抱合体によって異なる。治療上有効な量は、当業者によって決定され得、それぞれの特定の症例の特定の要件に調整される。
【0106】
本発明は、対象における抗凝固作用を逆転させるための方法も提供する。この方法は、NASSPを含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することを含む。ある実施形態において、対象は、ヘパリン、クマリン誘導体(ワルファリンまたはジクマロール等)、TFPI、AT III、ループス抗凝固剤、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位ブロック第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤(フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、およびラザキサバン(DPC906)を含む)、第Va因子および第VIIIa因子阻害剤(活性化タンパク質C(APC)および可溶性トロンボモジュリンを含む)、トロンビン阻害剤(ヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、およびキシメラガトランを含む)を含むが、これらに限定されない抗凝固剤で治療されたことがある場合がある。ある実施形態において、対象における抗凝固剤は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、フォンヴィレブランド因子、プレカリクレイン、またはHMWKに結合する抗体を含むが、これらに限定されない凝固因子に結合する抗体であり得る。
【0107】
別の態様において、本発明は、外科的または侵襲的手技を受ける対象における凝固を改善するための方法を提供し、この方法は、非抗凝固性の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)を含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することを含む。ある実施形態において、NASSPは、単独で、または1つ以上の異なるNASSPとともに、かつ/または1つ以上の他の治療薬と組み合わせて、外科的または侵襲的手技を受ける対象に投与され得る。例えば、対象に、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、HMWK、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、およびフォンヴィレブランド因子からなる群から選択される治療上有効な量の1つ以上の因子が投与され得る。治療は、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、および第VIIIa因子、プレカリクレイン、およびHMWKを含む内因性凝固経路の活性化剤、または組織因子、第VIIa因子、第Va因子、および第Xa因子を含む外因性凝固経路の活性化剤等の凝固促進剤を投与することをさらに含み得る。
【0108】
上述の用途に加えて、本発明の化合物は、様々な他の治療手段における用途を見出す。例えば、一実施形態において、本発明の化合物は、間質性膀胱炎を治療するために用いられる(例えば、Urology,(2000,Dec.)164(6):2119−2125、Urology,(1999,June)53(6):1133−1139、International Congress Series,(2001,Dec.)1223:227−237、Urology,(2008,Jan.)179(1):177−185、European Urology Supplements,(2003,Sept.)2(4):14−16、Urology,(2011,Sept.)78(3):S210−S211、European Urology Supplements,(2011,Oct.)10(6)451−459、Urology,(2011,April)185(4):e384を参照のこと)。
【0109】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、抗炎症剤としての用途、ならびに神経変性障害の治療および予防における用途も見出す(例えば、Food and Chemical Toxicology,(2011,Aug.)49(8):1745−1752、Food and Chemical Toxicology,(2011,Sept.)49(9):2090−2095、Biochimica et Biophysica Acta(BBA)−Proteins&Proteomics,(2003,Sept.)1651(1−2)を参照のこと)。
【0110】
例示の実施形態において、本発明の化合物は、それらの抗癌活性における用途も見出す(例えば、Carbohydrate Polymers,(2012,Jan.4)87(1,4):186−194、Carbohydrate Polymers,(2010,May 23)81(1,23):41−48、Carbohydrate Polymers,(2012,Jan.4)87(1,4):186−194、International Journal of Biological Macromolecules,(2011,Oct.1)49(3,1):331−336、Advances in Food and Nutrition Research,(2011)64:391−402を参照のこと)。
【0111】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、付着形成予防用の作用物質としての用途も見出す(例えば、Journal of Surgical Research,(2011,Dec.171(2):495−503、Fertility and Sterility,(2009,Sept.)92(3):S58、Journal of Minimally Invasive Gynecology,(2009,Nov.−Dec.)16(6):S120を参照のこと)。
【0112】
例示の実施形態において、本発明の化合物は、抗ウイルス活性も有する(例えば、Phytomedicine,(1999,Nov.)6(5):335−340、Antiviral Research,(1991,Feb.)15(2):139−148、Phytochemistry,(2010,Feb.)71(2−3):235−242、およびAdvances in Food and Nutrition Research,(2011)64:391−402を参照のこと)。
【0113】
様々な実施形態において、本発明の化合物は、補体系の阻害剤でもある(例えば、Comparative Biochemistry and Physiology Part C:Pharmacology,Toxicology and Endocrinology,(2000,July)126(3):209−215を参照のこと)。
【0114】
これらの異なる治療手段のそれぞれにおいて、そのような治療を必要とする対象の治療は、治療上有効な量の本発明の作用物質を対象に投与することによって達成される。様々な実施形態において、化合物は、ある状態を治療するために対象に投与され、この対象は、他の点では異なる状態の本発明の化合物での治療を必要としない。
【0115】
本発明の方法を実践する際に、対象における血液凝固を亢進するか、または対象における状態を治療するためのプロトコルは、例えば、対象の年齢、体重、血液凝固障害の重症度、全体的な健康状態、ならびに投与される本発明のNASSPの特定の組成および濃度によって異なり得る。本発明の実施形態において、経口投与後および胃腸系による吸収後に対象において得られるNASSPの血漿濃度は異なり得、いくつかの例において、約0.01μg/mL〜約500μg/mLの範囲である。目的とする例示のNASSPは、それらの最適濃度の凝固促進剤である。「最適濃度」とは、NASSPが最も高い凝固促進活性を呈する濃度を意味する。例示のNASSPが最適濃度よりもはるかに高い濃度で抗凝固活性を示したため、好ましい本発明のNASSPは、その最適濃度範囲内で非抗凝固性挙動を示す。したがって、NASSPの効力、ならびに所望の作用に応じて、本発明の方法によって提供される例示のNASSPの最適濃度は、約0.01μg/mL〜約500μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約250μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約100μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約75μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約50μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約25μg/mL、例えば、約0.1μg/mL〜約10μg/mLの範囲(約0.1μg/mL〜約1μg/mLを含む)であり得る。目的とするNASPのCATアッセイによって決定される最適濃度および活性レベルは、2005年5月27日出願の米国特許出願第11/140,504号(現在の米国特許第7,767,654号)および2011年1月13日出願の米国特許出願第13/006,396号により詳細に記載されており、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。同様に、本出願は、本発明のNASSPの最適濃度の決定において用いられるCATアッセイの例を開示する。
【0116】
図13A〜Bで特定される組み合わせ(NASSPの種類(ベースポリマーに基づく)とさらなる作用物質)のそれぞれにおける各NASSPの例示の投与量が、
図14A〜Bに示される。
図14A〜Bの組み合わせの識別子に付いている小文字は、その組み合わせでの各NASPの投与量を指す。例えば、「C5a」は、ポリチロシンベースのポリマーを有するNASPと第V因子との組み合わせを指し、NASSPの用量は約0.01〜約1mg/kgである。さらなる作用物の例示の投与量は、
図15に提供される。
【0117】
本発明の様々な実施形態において、本発明のNASSPを含有する組成物の投与量(例えば、経口投与量)は、例示の実施形態において、約0.01mg/kg〜約500mg/kg/日、例えば、約0.01mg/kg〜約400mg/kg/日、例えば、約0.01mg/kg〜約200mg/kg/日、例えば、約0.1mg/kg〜約100mg/kg/日、例えば、約0.01mg/kg〜約10mg/kg/日、例えば、約0.01mg/kg〜約2mg/kg/日(約0.02mg/kg〜約2mg/kg/日を含む)の範囲で変化し得る。他の実施形態では、投与量(例えば、経口投与量)は、1日4回(QID)約0.01〜100mg/kg、例えば、QID約0.01〜約50mg/kg、例えば、QID約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば、QID0.01mg/kg〜約2mg/kg、例えば、QID約0.01〜約0.2mg/kgの範囲であり得る。他の実施形態では、投与量(例えば、経口投与量)は、1日3回(TID)約0.01mg/kg〜約50mg/kg、例えば、TID約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば、TID約0.01mg/kg〜約2mg/kg(TID約0.01mg/kg〜約0.2mg/kgを含む)の範囲であり得る。さらに他の実施形態において、投与量(例えば、経口投与量)は、1日2回(BID)約0.01mg/kg〜約100mg/kg、例えば、BID約0.01mg/kg〜約10mg/kg、例えば、BID約0.01mg/kg〜約2mg/kg(BID約0.01mg/kg〜約0.2mg/kgを含む)の範囲であり得る。投与される化合物の量は、特定のNASSPの効力および濃度、所望の程度または凝固促進作用、およびNASSPの固有の吸収性および/または生物学的利用能に依存する。これらの要素はそれぞれ、本明細書に記載の方法または当技術分野において認識される方法を用いて当業者によって容易に決定される。
【0118】
本明細書における方法の様々な実施形態において、NASSPは、1つ以上の透過亢進剤と組み合わせて経口投与される。本発明によって提供されるものなどの、適切な透過亢進剤および凝固促進剤とのそれらの使用は、米国仮特許出願第61/509,514号に開示されている。いくつかの実施形態において、透過亢進剤は、胃腸上皮バリア透過亢進剤である。様々な実施形態において、本発明は、凝固促進量のNASSPを含む組成物を胃腸上皮透過亢進剤と組み合わせて対象に経口投与することによって血液凝固を亢進するための方法を提供する。様々な実施形態において、本発明は、凝固促進量のNASSPを含む組成物を胃腸上皮透過亢進剤および血液凝固因子と組み合わせて対象に経口投与することによって血液凝固を亢進するための方法を提供する。
【0119】
別の態様において、本発明は、TFPI活性を阻害するのに十分な量のNASSPを用いてTFPI活性を阻害するインビトロ方法を提供する。ある実施形態において、対象におけるTFPI活性は、NASSPを含む治療上有効な量の組成物を対象に投与することを含む方法によって阻害される。ある実施形態において、本発明は、生体試料におけるTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、生体試料(例えば、血液または血漿)を、TFPI活性を阻害するのに十分な量のNASSPと合わせることを含む。
【0120】
別の態様において、本発明は、生体試料におけるTFPI活性を阻害する方法を提供し、この方法は、生体試料(例えば、血液または血漿)を、TFPI活性を阻害するのに十分な量の非抗凝固性の硫酸化またはスルホン酸化合成ポリマー(NASSP)と合わせることを含む。
【0121】
別の態様において、本発明は、生体試料中のNASSPによる凝固の加速度を測定する方法を提供し、この方法は、
a)生体試料をNASSPを含む組成物と合わせることと、
b)生体試料の凝固時間を測定することと、
c)生体試料の凝固時間をNASSPに曝露されていない対応する生体試料の凝固時間と比較することと、を含み、NASSPに曝露された生体試料の凝固時間の減少は、観察された場合、凝固を加速させるNASSPを示す。
【0122】
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の実施例である。これらの実施例は、単に例示目的で提供されており、決して本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【実施例】
【0123】
実施例
本明細書に記載の実施例および実施形態が単に例示のためであり、これらを考慮して様々な修正および変更が当業者に提案され、本明細書の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に包含されるべきであることが理解される。本明細書で引用される全ての出版物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(実施例1)
【0124】
この化合物のクラスの延長で、硫酸化またはスルホン酸化非炭水化物ポリマー(
図3)が本明細書に開示される。本発明は、出血障害の治療に好適な方法および組成物を提供する。
【0125】
これらの硫酸化またはスルホン酸化非炭水化物ベースのポリマー凝固促進活性をトロンビン生成アッセイ(TGA)によって評価した。それぞれの硫酸化ポリマーのトロンビン生成への影響をFluoroskan Ascent(登録商標)リーダー(Thermo Labsystems,Helsinki,Finland、フィルター:励起390nmおよび発光460nm)におけるCATを用いて二重に測定し、その後、蛍光発生基質Z−Gly−Gly−Arg−AMCを緩徐に切断した(Hemker HC.Pathophysiol Haemost Thromb 2003;33:4 15)。96ウェルマイクロプレート(Immulon 2HB、透明なU底、Thermo Electron)の各ウェルに、80μLの事前に加温(37℃)したヤギ抗FVIII抗体で処理したヒト正常血漿プールを添加した。組織因子によってトロンビン生成を誘発するために、ある量の組換えヒト組織因子(rTF)、ならびにホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンから成るリン脂質小胞(48μM)(Thrombinoscope BV,Maastricht,The Netherlands)を含有する10μLのPPP試薬を添加した。硫酸化ポリマーの凝固促進活性を試験するために、1pMの最終rTF濃度を用いて、FVIIIおよび組織因子経路阻害剤(TFPI)に試験システムの感度を提供した。いくつかの実験において、TFPI活性を、それぞれ、25nMまたは50nMの血漿濃度のポリクローナルヤギ抗ヒトTFPI抗体(R&D Systems、Af2974、Minneapolis,US)またはTFPIの正に荷電したC末端(Sanquin White Label Products、MW1848、クローンCLB/TFPI C末端、Amsterdam,The Netherlands)に対して指向されるモノクローナル抗TFPI抗体のいずれかによってNASSPの存在下または不在下でブロックした。加えて、モノクローナル抗TFPI C末端抗体で処理した血漿に組換えC末端切断TFPI(aa1−160)を補充した。プレートを事前に加温(37℃)したリーダーに設置する直前に、10μLの試験もしくは参照試料または校正化合物を添加した。蛍光発生基質およびHepes緩衝CaCl
2(100mM)を含有する20μLのFluCa試薬(Thrombinoscope BV,Maastricht,The Netherlands)を各ウェルに分注することによってトロンビン生成を開始し、蛍光強度を37℃で記録した。
【0126】
結果として生じたトロンビン生成曲線のパラメータをThrombinoscope(商標)ソフトウェア(Thrombinoscope BV,Maastricht,The Netherlands)およびトロンビン校正物質を用いて計算して、内部フィルターおよび基質消費効果について補正した(Hemker HC,Pathophysiol Haemost Thromb 2003;33(4):15)。トロンビン校正物質を参照として用いて、試験ウェル中のトロンビンのモル濃度をソフトウェアを用いて計算した。各トロンビン生成曲線(ピークトロンビン、nM)のピーク時のトロンビン量およびピーク時間を硫酸化ポリマー濃度に対してプロットし、これらの化合物の凝固促進プロファイルを得た(
図2)。トロンビン生成アッセイ結果が
図4A、4B、4C、および4Eに示される。NASSPは、約1μg/mLから始まり少なくとも2桁に及ぶ広い濃度範囲で凝固促進性であるが、リン酸化ポリマーは本質的には不活性であり、負に荷電した硫酸またはスルホン酸基の重要性の証拠を提供した(
図4D)。最適な凝固促進活性の濃度(30〜100μg/mL)で、NASSPは、ヒト正常血漿プールのトロンビン生成を上回った。100μg/mLよりも高い濃度で、硫酸化ポリマーは、活性化部分トロンボプラスチン時間を延長し、それらの抗凝固活性を示す。
【0127】
TFPIでの希釈プロトロンビン時間アッセイ。さらなる組織因子経路阻害剤(TFPI−dPT)での希釈プロトロンビン時間アッセイを用いて、異なるNASSPのTFPI阻害作用を評価した。プールされた正常ヒト血漿(George King Biomedical,Overland Park,KS)を0.5μg/mLの全長TFPI(aa 1−276、SKHep1によって構成的に産生されたもの)および各NASSP(0〜1000μg/mL)とともに室温で15分間プレインキュベートした。0.5%BSAを有するHepes緩衝生理食塩水(1:200)中で希釈したTF試薬、TriniClot PT Excel S(Trinity Biotech,Wicklow,Ireland)をACL Pro Elite止血分析装置(Instrumentation Laboratory,Bedford,MA)上の血漿試料に添加した。凝固を25mM CaCl
2で開始した。血漿:TF:CaCl
2の体積比は、1:1:1であった。データ分析のために、TFPI−dPTをlog濃度に対してプロットする。半最大有効濃度(EC50)値をS字曲線当てはめを用いて決定する。
【0128】
リン酸化ポリマー類似体(すなわち、ホスホン酸ポリビニル、リン酸ポリビニル)は、凝固促進作用(
図4D)を示さなかった。リン酸基および硫酸基が化学的に非常に類似しているため、この結果は驚くべきものであった。加えて、ポリリン酸塩の凝固促進活性についての文献(Muller et al,Cell,139,1143−1156;2009)がある。
(実施例2)
活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(aPTT)
【0129】
aPTTアッセイを行ってNASSPの抗凝固活性を試験した。手短に、50μLの解凍した正常ヒト血漿プール(George King Biomedical,Overland Park,KS)を5μLのNASSPと混合した(最終血漿濃度0〜500μg/mL)。NASSPを1%アルブミン(Baxter,Austria)を含有するイミダゾール緩衝剤(3.4g/Lイミダゾール、5.85g/L NaCl、pH7.4)中で希釈した。50μLのaPTT試薬(STA APTT,Roche)を添加した後、試料を37℃で4分間インキュベートした。凝固を50μLの25mM CaCl2溶液(Baxter,Austria)を用いて開始し、最大5分間記録した。ACL Pro Elite(Instrumentation Laboratory,Bedford,MA)器具を用いて全てのピペッティングステップおよび凝固時間測定を行った。試料を二重に泳動させた。
【0130】
データ分析のために、凝固時間をNASSP濃度に対してプロットする。凝固時間が正常血漿対照と比較して50%増加した濃度を線形曲線当てはめを用いて決定する。
図16を参照されたい。
(実施例3)
Caco−2細胞/インビボ試験
【0131】
目的:
NASSPの経口生物学的利用能を向上させるための1つの戦略は、キトサン、ブロメライン、デオキシコリン(DOC)、またはカプリン酸ナトリウム等の密着結合調節透過亢進剤の適用である。この試験の目標は、透過亢進剤の存在下および不在下でのCaco−2細胞モデルにおける選択したNASSPのインビトロ吸収を決定することである。
【0132】
方法:
半透性フィルター上で培養したヒト結腸腺癌(Caco−2)細胞は自発的分化して、融合性単層を形成する。この細胞層は、構造的にも機能的にも小腸上皮に似ている。Caco−2細胞を10%ウシ胎仔血清および1%L−グルタミンを補充したRPMI細胞増殖培地中のPETトランスウェル−24プレート中で培養した。37℃で95%空気および5%CO
2の雰囲気下のインキュベーターに置いてから21日後に融合性単層を得る。透過亢進剤を有するかまたは有しない200μLの増殖培地中に溶解した選択したNASSPを頂端区画内の細胞上に1mg/mLの濃度で添加し、37℃でインキュベートする。培地試料(100μL)を2、4、6、および8時間時点で側底側(体積850μL)から、8時間前および8時間時点で頂端側から収集する。試料回収毎に、除去したアリコートを新鮮な増殖培地と交換する。細胞層が実験中に無傷のままであることを確実にするために、経上皮電気抵抗(TEER)を監視および記録する。各実験において、三重ウェルを試験し、実験を1〜3回行う。
【0133】
8時間にわたって尖端区画から側底区画に移すNASSPの量を、半定量の活性に基づくトロンビン生成アッセイ(CAT)(全ての時点)および物質特異的液体クロマトグラフィー質量分析(8時間時点のみ)を用いて決定する。
【0134】
結果:
4つまたは5つの亢進剤と組み合わせた合成NASSPの吸収をCaco−2細胞モデルにおいて試験する。細胞の側底側のNASPの量は時間とともに増加する。理論的に可能な最大濃度(μg/mL)は、試料採取に起因する希釈因子のため各時点でわずかに異なる。最大可能NASSPをμg/mLとして表す。8時間時点での吸収も%吸収で表す。吸収は、亢進剤の存在下で増加する。
(実施例4)
【0135】
目的:
凝固改善パラメータにおける全血TEG FVIII阻害モルモットモデルにおけるエクスビボでのNASSPの有効性を試験すること。
【0136】
方法:
雄ダンキンハートリーモルモットに、ヤギ抗ヒトFVIII阻害剤血漿を42BU/kg(1.9mL/kg)の用量で試料採取の45分前に静脈内注入する。40分後、NASSPを0.05、0.15、0.45、または1.35mg/kg(N=5/群)でこの動物に静脈内投与する。300U/kg FEIBA(Baxter,BioScience,Austria)を正の対照とし、生理食塩水をビヒクル対照とする。注入直後、大静脈を穿刺し、血液を全血TEG分析のためにクエン酸の存在下(1:9比)で回収する。トロンボエラストグラフィー(TEG)止血分析装置5000(Haemonetics Corp,USA)を用いて37℃で測定を行う。全ての血液試料をTEGキュベット中の20μLの0.2M CaCl
2溶液を37℃で事前に加温し、340μLの血液を添加し、混合し、その後、TEG記録を直ちに開始することによって調製する。測定を少なくとも120分間続けた。凝固時間(R時間)、血栓強固速度(角度)、および最大血栓硬度(MA)のTEGパラメータを記録する。主要エンドポイントR時間をプロットし、異なる投与群の中央値を互いに比較する。
【0137】
結果:
aNASSPを用いたCATアッセイからのインビトロ結果に基づいて、0.05、0.15、0.45、または1.35mg/kgのNASSPを静脈内投与した後にFVIII阻害モルモット(n=5)における凝固促進作用を試験するために投与量パターンを利用する。この動物は、0.15および0.45mg/kgのNASSPを投与したときにわずかに低下した中央R時間(凝固時間)を示す。
(実施例5)
【0138】
目的:
経口投与後のCDラットにおけるNASSPの薬物動態特性を試験すること。この試験は、透過亢進剤がNASSPのインビボ経口生物学的利用能を向上させるかの疑問にも対処する。
【0139】
方法:
一晩断食させた後、雄CDラットに、NASSPの2つの液体製剤を50mg/kgおよび5mL/kgの用量で経口強制飼養する。これらの物質を亢進剤を有しない生理食塩水溶液または0.8重量%のDOCもしくは3重量%のキトサン+0.5mg/mLブロメラインを有する生理食塩水溶液中で調製する。NASSPの投与を受けた各群は、6匹のラットから成った。各製剤について、さらなる3匹のラットを媒体対照とした。血液試料を投与前、ならびに投与の15分、30分、1時間、5時間、および7時間後に、クエン酸の存在下(1:9比)で収集する。乏血小板血漿を3000rpmで10分間の2つの遠心分離ステップによって調製する。
【0140】
血漿試料中のNASSPを蛍光アッセイによって検出する。実験を黒色ハーフエリア96ウェルマイクロタイタープレート(Costar)中で行った。
【0141】
結果:
生理食塩水中50mg/kgのNASSPを経口投与したラットは、NASSPの検出可能な血漿レベルを示す。
(実施例6)
【0142】
目的:
静脈内投与後のCDラットにおけるNASSPの薬物動態特性を試験すること。
【0143】
方法:
雄CDラットにNASSPを5mg/kgの用量で静脈内投与する。これらの物質を生理食塩水溶液中で調製し、5mL/kgで注入する。各群は、3匹のラットから成った。血液試料を投与前、ならびに投与の5分、30分、1時間、3時間、6時間、および10時間後に、クエン酸の存在下(1:9比)で収集する。乏血小板血漿を3000rpmでの2つの遠心分離ステップによって調製する。血漿試料を液体クロマトグラフィー質量分析によってNASSPについて分析する。
【0144】
本明細書に記載の実施例および実施形態が単に例示のためであり、これらを考慮して様々な修正および変更が当業者に提案され、本明細書の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲に包含されるべきであることが理解される。本明細書で引用される全ての出版物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。