(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回路基板と、この回路基板上に形成される電極部と、この電極部上に形成されるはんだ接合部と、このはんだ接合部を介して前記電極部と電気的接合される電子部品と、前記回路基板上に形成されるフラックス残渣とを有する電子回路基板であって、
前記はんだ接合部および前記フラックス残渣は請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のソルダペースト組成物を用いて形成され、
前記フラックス残渣は前記回路基板若しくは前記回路基板上に絶縁層を形成する場合は前記回路基板および前記絶縁層の少なくとも一方と、前記電子部品と、前記はんだ接合部との間に介在してこれらに接着していることを特徴とする電子回路基板。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板やシリコンウエハといった基板上に形成される電子回路に電子部品を接合する際にはソルダペースト組成物を用いたはんだ接合方法が採用されている。このソルダペースト組成物には鉛を含有するはんだ合金を使用するのが一般的であった。しかし、環境負荷の観点からRoHS指令等によって鉛の使用が制限されたため、近年では鉛を含有しない、所謂鉛フリーはんだ合金によるはんだ接合方法が一般的になりつつある。
この鉛フリーはんだ合金としては、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系、Sn−Zn系はんだ合金等がよく知られている。その中でもテレビ、携帯電話等に使用される民生用電子機器や自動車に搭載される車載用電子機器には、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金が多く使用されている。
鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣る。しかしフラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題はカバーされており、例えば車載用電子回路基板であっても自動車の車室内のように寒暖差はあるものの比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部でも大きな問題は生じていない。
しかし近年では、例えばエンジンコンパートメントやエンジン直載、モーターとの機電一帯化といった寒暖差が特に激しく(例えば−30℃から110℃、−40℃から125℃、−40℃から150℃といった寒暖差)、加えて振動負荷を受けるような過酷な環境下での電子回路基板の配置の検討および実用化がなされている。この寒暖差が非常に激しい環境下では、実装された電子部品と回路基板との線膨張係数の差によってはんだ接合部に大きな応力が発生する。冷熱サイクルと共にはんだ接合部に繰り返し生じるこの応力は、はんだ接合部の塑性変形を何度も引き起こす。繰り返し塑性変形したはんだ接合部は非常に亀裂が生じ易くなり、また発生した亀裂の先端付近のはんだ接合部にはひずみ応力が集中するため、亀裂ははんだ接合部を横断的に深部まで進展し易くなる。また激しい寒暖差に加え電子回路基板に振動が負荷される環境にあっては、亀裂およびその進展は更に発生し易い。そうして著しく進展した亀裂は電子部品と回路基板との電気的接続を切断してしまう。
上述する過酷な環境下に置かれる車載用電子回路基板が増える中で、十分な亀裂進展抑制効果を発揮し得るSn−Ag−Cu系はんだ合金を用いたソルダペースト組成物への要望は、今後ますます大きくなることが予想される。
【0003】
また、車載用電子回路基板に搭載されるQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Pacage)といった電子部品のリード部分には、従来、Ni/Pd/Auめっきされた部品が多用されていた。しかし近年の電子部品の低コスト化や基板のダウンサイジング化に伴い、リード部分をSnめっきに替えた電子部品や下面電極をもつ電子部品の検討および実用化がなされている。
はんだ接合時において、Snめっきされた電子部品は、Snめっきおよびはんだ接合部に含まれるSnとリード部分や前記下面電極に含まれるCuとの相互拡散を発生させ易い。この相互拡散により、前記リード部分および前記下面電極とはんだ接合部の界面付近にて、金属間化合物であるCu
3Sn層が凸凹状に大きく成長する。前記Cu
3Sn層は元々硬くて脆い性質を有する上に、凸凹状に大きく成長したCu
3Sn層は更に脆くなる。そのため、特に上述する過酷な環境下においては、前記界面付近ははんだ接合部と比較して亀裂が発生し易く、また発生した亀裂はこれを起点として一気に進展するため、電気的短絡が生じ易い。
従って、今後は前記のような過酷な環境下でNi/Pd/Auめっきがなされていない電子部品を用いた場合であっても前記界面付近における亀裂進展抑制効果を発揮し得るソルダペースト組成物への要望も大きくなることが予想される。
【0004】
Snを母材とするはんだ合金にBiといった元素を添加して鉛フリーはんだ合金を高強度化することによりはんだの亀裂進展を抑制する方法はいくつか開示されている(特許文献1から特許文献7)。
実質的に母材をSnとする鉛フリーはんだ合金にBiを添加した場合、Snの結晶格子の一部はBiに置換され、その結晶格子に歪みが発生する。そのため、Biを添加した鉛フリーはんだ合金は、Sn結晶格子の一部のBi置換により前記結晶中の転移に必要なエネルギーが増大してその金属組織が強化される。特にBiはSnよりもその原子量が大きいため、前記結晶格子に発生する歪みは大きくなり、その金属組織の強化効果も高く、合金強度の向上によるはんだ亀裂進展抑制効果を発揮し得る。
【0005】
しかしBiを添加した鉛フリーはんだ合金は延伸性が悪化し、脆性が強まるというデメリットもある。鉛フリーはんだ合金の脆性が強まればこれを用いて形成されるはんだ接合部の接続信頼性は従来よりも低下するため、寒暖の差が激しい過酷な環境下に置かれるような高信頼性の要求される電子回路基板には適さない。
【0006】
このように、Biの添加によって鉛フリーはんだ合金のはんだ亀裂進展抑制は図れるものの、一方でその延伸性を悪化させることにより、このような鉛フリーはんだ合金を用いて形成したはんだ接合部を寒暖差の激しい環境下に置くと、はんだ接合部が電子部品の電極を剥がして短絡させるという現象が生じ易くなる。
通常、リフローによるはんだ接合工程における冷却プロセスにおいては、基板の電子回路側から電子部品の電極側へはんだ合金が凝固し、はんだ接合部が形成される。そのため、その残留応力ははんだ接合部の上部に蓄積しやすい。ここで、Biの添加により延伸性が低下した鉛フリーはんだ合金はこの残留応力を緩和することが難しく、特に寒暖差の激しい環境下においては、はんだ接合部の電子部品電極近傍にて深部にまでに達する亀裂が生じ易くなる。その結果、この亀裂近傍の電子部品の電極に応力が集中してしまい、はんだ接合部が電子部品側の電極を剥離してしまうものと推測される。そして特に3.2mm×1.6mmサイズのチップ部品を用いた場合、顕著にこのような現象が顕著に観察される。
この現象は、延伸性が良好なSn−3Ag−0.5Cuはんだ合金では確認されておらず、従ってBiを鉛フリーはんだ合金に添加したことによって生じた弊害であると捉えられる。即ち、鉛フリーはんだ合金の高強度化のみでは電子部品の電極剥離現象の抑制は難しいものと考えられる。
【0007】
また、Biの添加によりはんだ接合部の亀裂進展を抑制したとしても、Ni/Pd/Auめっきがなされていない電子部品を用いてはんだ接合をした場合の電子部品とはんだ接合部の界面付近における亀裂進展の抑制は難しい。そのため、この界面付近からの亀裂が進展し易くなり、その結果、回路の短絡が発生し易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の鉛フリーはんだ合金含有ソルダペースト組成物、はんだ接合体構造および電子回路基板の一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0022】
1.ソルダペースト組成物
本実施形態のソルダペースト組成物は、例えば粉末状にした前記鉛フリーはんだ合金と前記フラックスとを混練しペースト状にすることにより作製される。
前記鉛フリーはんだ合金とフラックスとの配合比率は、はんだ合金:フラックスの比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましい配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は89:11から92:8である。
【0023】
(1)鉛フリーはんだ合金
前記鉛フリーはんだ合金には、2質量%以上4質量%以下のAgを含有させることができる。Agの含有量が2質量%よりも少ない鉛フリーはんだ合金は、その機械的強度および耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。またAgの含有量が4質量%を超えると、鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害されるので好ましくない。
またAgの含有量を3質量%以上4質量%以下とすると、鉛フリーはんだ合金の強度と延伸性のバランスをより良好にできる。
【0024】
前記鉛フリーはんだ合金には、1質量%以下のCuを含有させることができる。特に鉛フリーはんだ合金のCuの含有量を0.5質量%以上1質量%以下とした場合、その耐熱衝撃性は更に向上する。
Cuの含有量が1質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の延伸性が阻害されるので好ましくない。
【0025】
前記鉛フリーはんだ合金には、Biを3質量%以下含有させることができる。
Biの含有量が3質量%以下であれば、Sn−Ag−Cu系はんだ合金の延伸性を阻害することなくはんだ接合部の亀裂進展抑制効果を向上させることができる。なお、Biの含有量が0.5質量%以上1質量%以下の場合、鉛フリーはんだは良好な延伸性を有する。しかし本実施形態のソルダペースト組成物は形成されるフラックス残渣が一定以上の接着力を有するフラックスを用いるため、Biの含有量が1質量%以上、特に1.5質量%超3質量%以下であっても、形成されるはんだ接合部の亀裂進展抑制と電極剥離現象の抑制を両立させることができる。
即ち、Biの含有量が1.5重量%を超える鉛フリーはんだ合金の場合、鉛フリーはんだ合金自体はこれ以下のものと比較して延伸性がさほど高くはないものの、本実施形態のフラックスを用いることにより、はんだ接合部の亀裂進展抑制と電極剥離現象の抑制を両立させることが可能となる。
Biの含有量が3質量%を超えると、Sn−Ag−Cu系はんだ合金の延伸性が大きく阻害されるため、本実施形態のフラックスを含むソルダペーストを用いても、形成されるはんだ接合部の電子部品の電極剥離現象が生じ易くなるため好ましくない。
【0026】
前記鉛フリーはんだ合金には、0.25質量%以上6質量%以下のInを含有させることができる。Inの添加により、鉛フリーはんだ合金の溶融温度を低下させると共に、機械的特性および亀裂進展抑制効果が向上する。
Inの含有量が0.25質量%よりも少ないと鉛フリーはんだ合金の亀裂進展抑制効果はさほど向上せず、またInの含有量が6質量%を超えると鉛フリーはんだ合金の延伸性が低下するため好ましくない。
【0027】
前記鉛フリーはんだ合金には、NiおよびCoの少なくとも一方を0.05質量%以上0.25質量%以下含有させることができる。
NiおよびCoの少なくとも一方を前記含有量にて鉛フリーはんだ合金に含有させることにより、Ni/Pd/Auめっきがなされていない電子部品を用いてはんだ接合を行う場合であっても電子部品とはんだ接合部の界面付近におけるCu
3Sn層の成長が抑制されて前記界面付近の亀裂進展抑制効果が向上する。特にNiおよびCoの少なくとも一方の含有量を0.1質量%以上0.2質量%以下とした場合、前記界面付近におけるCu
3Sn層の成長がより抑制される。
【0028】
前記鉛フリーはんだ合金には、1質量%以下のZnを含有させることができる。
Znを前記含有量にて鉛フリーはんだ合金に含有させることにより、はんだ接合部の耐クリープ性および亀裂進展抑制効果が向上する。鉛フリーはんだ合金に含まれるZnの含有量が1質量%を超えると鉛フリーはんだ合金が酸化し易くなり、その濡れ性が阻害されるので好ましくない。
【0029】
前記鉛フリーはんだ合金には、Fe、Mn、Cr、およびMoの少なくとも1種を0.005質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。
Fe、Mn、Cr、およびMoの少なくとも1種を前記含有量にて鉛フリーはんだ合金に含有させることにより、その機械的特性および亀裂進展抑制効果が向上する。鉛フリーはんだ合金に含まれるこれらの含有量が0.05質量%よりも多いとその溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0030】
前記鉛フリーはんだ合金には、P、Ga、およびGeの少なくとも1種を0.005質量%以上0.05質量%以下含有させることができる。
P、Ga、およびGeの少なくとも1種を前記含有量にて鉛フリーはんだ合金に含有させることにより、その酸化を防止することができる。鉛フリーはんだ合金に含まれるこれらの含有量が0.05質量%を超えるとその溶融温度が上昇し、またはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため好ましくない。
【0031】
なお、本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、その効果を阻害しない範囲において、他の成分(元素)、例えばCd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al、Mgを含有させることができる。また本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、当然ながら不可避不純物も含まれるものである。
【0032】
(2)フラックス
前記フラックスは、合成樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含む。
【0033】
前記合成樹脂としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル酢酸ビニルの少なくとも1種のモノマーを重合してなるアクリル樹脂、カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびロジン系樹脂等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
【0034】
前記アクリル樹脂の中でも、特にメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2から20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0035】
また前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物(以下、「ロジン誘導体化合物」という。)に使用するカルボキシル基を有するロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体等が挙げられ、これら以外にもカルボキシル基を有するロジンであれば使用することができる。またこれらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0036】
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
【0037】
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい重量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
【0038】
前記合成樹脂の酸価は10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることが好ましく、その配合量はフラックス全量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0039】
前記チキソ剤としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記チキソ剤の配合量は、フラックス全量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0040】
前記活性剤としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩を配合することができる。更に具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩、酸塩、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記活性剤の配合量は、フラックス全量に対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0041】
前記溶剤としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコールエーテル等を使用することができる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記溶剤の配合量は、フラックス全量に対して20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0042】
前記フラックスには、鉛フリーはんだ合金の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。この酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダードフェノール系酸化剤が好ましく用いられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
【0043】
前記フラックスには、その他の樹脂、並びにハロゲン、つや消し剤および消泡剤等の添加剤を加えてもよい。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5質量%以下である。
【0044】
前記フラックスにより形成されるフラックス残渣は、これに−40℃/30分から125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の接着力を0.2N/mm
2以上に保つことができる。前記接着力は、フラックスに配合する樹脂成分の酸価およびガラス転移温度により適宜調整することができる。
【0045】
なお、本明細書において、前記フラックス残渣の接着力は、以下の測定方法にて測定される。
フラックスまたはこれを用いたソルダペースト組成物を用いて基板上にチップ部品を表面実装し、当該基板上にフラックス残渣を形成する。当該フラックス残渣は前記基板、前記チップ部品および前記はんだ接合部とに囲まれる空間に介在し、これらに接着するように形成される。
その後、冷熱衝撃試験装置等を用いて前記基板に−40℃/30分から125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与える。
【0046】
そして当該冷熱衝撃試験後の基板上にあるフラックス残渣について、オートグラフ等を用いてその接着力を測定する。測定の条件はJIS規定C60068−2−21に準拠する。測定に用いるジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグとする。測定にあたっては、当該せん断ジグを前記冷熱衝撃試験後のチップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度にて前記基板に平行な力を加えてその最大試験力を求め、この値を前記チップ部品の面積で除してフラックス残渣の接着力を算出する。この時、せん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とする。
【0047】
電子部品としてチップ部品を用いる場合、一般的にその電極下に位置するはんだ接合部にひずみが集中し易く、この箇所に亀裂が発生し易い。寒暖差のある環境下においては、冷熱衝撃によって回路基板は膨張および収縮を繰り返し、これにより電極下に発生した亀裂面は押し広げられて開口し、亀裂が進展してしまうと推定される。しかし本実施形態のソルダペースト組成物は、その延伸性を阻害しない範囲でBiを含有させた鉛フリーはんだ合金と、形成されるフラックス残渣が一定以上の接着力を有するフラックスとを含む。そのため、このソルダペースト組成物を用いて形成したはんだ接合部は適度な延伸性と金属強度を有すると共に、フラックス残渣が回路基板とはんだ接合部と電子部品とを強固に接着させ自身が硬化収縮するため、寒暖の差が激しい環境下においてはんだ接合部に亀裂が発生したとしても、発生した亀裂の先端付近に集中するひずみを分散するため前記亀裂面の開口を防止することができ、亀裂の進展を抑制することができる。
このような構成を有する本実施形態のソルダペースト組成物は、過酷な環境下におけるはんだ接合部の亀裂進展抑制効果の向上とはんだ接合部による電子部品の電極剥離現象の抑制を両立させることができる。
【0048】
更には、本実施形態のソルダペースト組成物は、前記鉛フリーはんだ合金にNiおよびCoの少なくとも一方を一定量含有させることにより、Snめっきされた電子部品であっても、そのはんだ接合時に電子部品とはんだ接合部の界面付近において発生するCu
3Sn層の成長を抑制することができる。
このような構成を有する本実施形態のソルダペースト組成物は、はんだ接合部のみならず前記界面付近における亀裂進展を抑制することができるため、過酷な環境にも耐え得る高い信頼性の求められる電子回路基板にも使用することができる。
【0049】
また本実施形態のソルダペースト組成物は、前記鉛フリーはんだ合金にIn、
Znを含有させることによりその亀裂進展抑制効果を更に向上させ、更にはんだ接合部に発生するボイドを抑性しつつFe、Mn、Cr、およびMoの少なくとも1種、並びにP、Ga、およびGeの少なくとも1種を含有させて他のはんだ特性をも更に向上させることができる。このような構成を有する本実施形態のソルダペースト組成物は、信頼性の高いはんだ接合部を提供できると共に、はんだ接合部の寿命を延命することができる。
【0050】
2.はんだ接合体構造および電子回路基板
本実施形態のはんだ接合体構造および電子回路基板の構成を
図1を用いて説明する。
本実施形態の電子回路基板100は、基板1と、絶縁層2と、電極部3と、電子部品4と、はんだ接合体構造10とを有する。はんだ接合体構造10は、はんだ接合部6とフラックス残渣7とを有し、電子部品4は、外部電極5と、端部8を有する。
基板1としては、プリント配線板、シリコンウエハ、セラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず基板1として使用することができる。
フラックス残渣7は、これに−40℃/30分から125℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験を2000サイクル与えた後の接着力が0.2N/mm
2以上となる。
電極部3は、はんだ接合部6を介して電子部品4の外部電極5と電気的接合している。
フラックス残渣7は、絶縁層2、はんだ接合部6および電子部品4とに囲まれた空間を充填し、これらに接着するように形成される。またこれとは別に、フラックス残渣7は絶縁層2、はんだ接合部6、電子部品4の端部8を覆うようにも形成される。
【0051】
このようなはんだ接合体構造10および電子回路基板100は、例えば以下のように作製される。
先ず、所定のパターンとなるように形成された絶縁層2および電極部3を備えた基板1上に、本実施形態のソルダペースト組成物を上記パターンに従い印刷する。
次いで印刷後の基板1上に電子部品4を実装し、これを220℃から260℃の温度でリフローを行う。このリフローにより基板1上にはんだ接合部6およびフラックス残渣7を有するはんだ接合体構造10が形成されると共に、基板1と電子部品4とが電気的接合された電子回路基板100が作製される。
【0052】
このような構成を有する本実施形態のはんだ接合体構造10およびこれを有する電子回路基板100は、フラックス残渣7が絶縁層2、はんだ接合部6および電子部品4とをより強固に接着させるため、はんだ接合部6にかかる応力を分散し易くする。そのため、はんだ接合部6に亀裂が生じた場合であってもこの強固な接着構造は亀裂面の開口防止効果を更に発揮し、過酷な環境下におけるはんだ接合部6の亀裂進展抑制効果を更に向上することができる。
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
合成樹脂の作製
メタクリル酸10質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51質量%、ラウリルアクリレート39質量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、還流管および窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。次いで前記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2質量%から5質量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を前記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を110℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、合成樹脂を得た。なお、合成樹脂の重量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
【0055】
フラックスの作製
以下の各成分を混練し、実施例および比較例に係るフラックスを得た。
合成樹脂 41質量%
水添酸変性ロジン(製品名:KE−604、 荒川化学工業(株)製) 10質量%
チキソ剤(硬化ひまし油) 6質量%
活性剤(アジピン酸 5質量%、マロン酸 1質量%、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 2質量%) 計8質量%
酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、製品名:イルガノックス245、BASFジャパン(株)製) 1質量%
溶剤(ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル) 34質量%
なお、当該フラックスを用いたフラックス残渣の接着力は2.0N/mm
2である。この接着力は以下の通り算出した。
はんだ付パターンを有していない、ソルダレジストを備えたガラスエポキシ基板と、3.2mm×1.6mmサイズのチップ部品と、当該チップ部品を実装するために形成された開口を持つ厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いてフラックスを印刷し、前記チップ部品を搭載した。その後、酸素濃度1500±500ppmの窒素雰囲気下において、ピーク温度を240℃に設定したリフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記基板を加熱し、フラックス残渣にて当該基板と前記チップ部品とを接着した。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、 日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを2000回繰り返す環境下に前記基板を曝した後これを取り出した。そして、この基板と前記チップ部品の接着力(フラックス残渣の接着力)をオートグラフ(製品名:EZ−L−500N、(株)島津製作所製)を用いて測定した。測定条件は、JIS規定C60068−2−21に準拠した。また接着力の測定に際しては、ジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグを用いた。このせん断ジグを前記チップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度で前記基板に平行な力を加えて最大試験力を求め、この値をフラックス残渣の接着力(N)とし、この値を前記チップ部品の面積で除してフラックス残渣の接着力(N/mm
2)を算出した。この時、せん断高さは前記チップ部品高さの1/4以下とし、せん断速度は5mm/分とした。
【0056】
ソルダペースト組成物の作製
前記フラックス11.0質量%と、表1から表3に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから36μm)89.0質量%とを混合し、実施例1から50、参考例1および参考例2、および比較例1から18に係る各ソルダペースト組成物を作製した。
【0060】
<はんだ亀裂試験>
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×1.2mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱して前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を2℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。なお、リフローにより形成されたフラックス残渣は、前記ソルダレジストと、はんだ接合部と、前記チップ部品とに囲まれた空間を充填し、これらに接着している。
次に、−40℃(30分間)から125℃(30分間)の条件に設定した冷熱衝撃試験装置(製品名:ES−76LMS、日立アプライアンス(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを2,000、2,500、3,000サイクル繰り返す環境下に前記各基板をそれぞれ曝した後これを取り出し、各試験基板を作製した。
そして、各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、はんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かを走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準にて評価した。その結果を表4から表6に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価チップ数は20個とした。
◎:3,000サイクルまではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,501から3,000サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
△:2,001から2,500サイクルの間ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
×:2,000サイクル未満ではんだ接合部を完全に横断する亀裂が発生
【0061】
<電極剥離試験>
冷熱衝撃サイクルを2,000、3,000、3,500サイクル繰り返す環境下に各基板を置く以外ははんだ亀裂試験と同じ条件にて各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、
図2に表すような、はんだ接合部が前記チップ部品の電極を剥離してしまうような現象が発生しているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下のように評価した。その結果を表4から表6に表す。
◎:3,500サイクルまでチップ部品の電極剥離現象発生せず
○:3,001から3,500サイクルの間でチップ部品の電極剥離現象発生
△:2,001サイクルから3000サイクルの間で電極剥離現象発生
×:2,000サイクル未満でチップ部品の電極剥離現象発生
【0062】
<SnめっきQFPにおけるはんだ亀裂試験>
26mm×26mm×1.6mmサイズの0.5mmピッチQFP部品(リード数176ピン、製品名:R5F5630ADDFC、ルネサスエレクトロニクス(株)製)と、当該QFP部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記QFP部品を接続する電極(0.25mm×1.3mmの電極が176個)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペースト組成物を印刷し、前記QFP部品を搭載した。その後、冷熱衝撃サイクルを1,000、2,000、3,000サイクル繰り返す環境下に各基板を置く以外ははんだ亀裂試験と同じ条件にて前記基板に冷熱衝撃を与え、各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤および硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol−25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記QFP部品の中央断面が分かるような状態とし、はんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、はんだ母材に発生した亀裂と、はんだ接合部とQFP部品のリードとの界面に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。その結果を表4から表6に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価QFP数は20個とし、QFP1個あたり4角の8リードを観察し、合計160リードの断面を確認した。
・はんだ母材に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
・はんだ接合部とQFP部品のリードとの界面に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
【0063】
<SnめっきSONにおけるはんだ亀裂試験>
6mm×5mm×0.8mmサイズの1.3mmピッチSON(Small Outline Non−leaded package)部品(端子数8ピン、製品名:STL60N3LLH5、STMicroelectronics社製)と、当該SON部品を実装できるパターンを有するソルダレジストおよび前記SON部品を接続する電極(メーカー推奨設計に準拠)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用いる以外はSnめっきQFPにおけるはんだ亀裂試験と同じ条件にて各試験基板を作製、およびはんだ接合部に発生した亀裂がはんだ接合部を完全に横断して破断に至っているか否かについて走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察した。この観察に基づき、はんだ母材に発生した亀裂と、はんだ接合部とSON部品の電極の界面に発生した亀裂に分けて以下のように評価した。その結果を表4から表6に表す。なお、各冷熱衝撃サイクルにおける評価SON数は20個とし、SON1個あたりゲート電極の1端子を観察し、合計20端子の断面を確認した。
・はんだ母材に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満ではんだ母材を完全に横断する亀裂が発生
・はんだ接合部とSON部品の電極の界面に発生した亀裂
◎:3,000サイクルまで前記界面を完全に横断する亀裂が発生しない
○:2,001から3,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
△:1,001から2,000サイクルの間で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
×:1,000サイクル未満で前記界面を完全に横断する亀裂が発生
【0064】
<ボイド試験>
はんだ亀裂試験と同様の条件にてチップ部品を各基板上に搭載した各試験基板を作製した。そして各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、はんだ接合部が形成されている領域に占めるボイドの総面積の割合(ボイドの面積率)を測定した。ボイドの発生状況は各試験基板中40箇所のランドにおけるボイドの面積率の平均値を求めて、以下のように評価した。その結果を表4から表6に表す。
◎:ボイドの面積率の平均値が3%以下であって、ボイド発生の抑制効果が極めて良好
○:ボイドの面積率の平均値が3%超5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイドの面積率の平均値が5%超10%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイドの面積率の平均値が10%超15%以下であって、ボイド発生の抑制効果が不十分
【0068】
以上、実施例に示す通り、実施例に係るソルダペースト組成物は、寒暖の差が激しく、振動が負荷されるような過酷な環境下においてもはんだ接合部の亀裂進展性の抑制とはんだ接合部による電子部品の電極剥離現象の抑制を両立することができる。
特にNiおよびCoの少なくとも一方を適量添加した実施例に係るソルダペースト組成物においては、Snめっきの電子部品を用いた場合であっても、はんだ接合部とチップ部品のリードまたは電極との界面における亀裂発生抑制効果も発揮し得る。
このようなソルダペースト組成物は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。