特許第6138869号(P6138869)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6138869ブレーキシステム、および車両のブレーキシステムを作動させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138869
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ブレーキシステム、および車両のブレーキシステムを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/06 20060101AFI20170522BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B60T7/06 E
   B60T8/00 Z
   B60T7/06 D
   B60T7/06 B
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-143536(P2015-143536)
(22)【出願日】2015年7月20日
(62)【分割の表示】特願2013-552856(P2013-552856)の分割
【原出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-214331(P2015-214331A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】102011004041.2
(32)【優先日】2011年2月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ローター・バッケス
(72)【発明者】
【氏名】オットマー・ブスマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュリッヒェンマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ダゴベルト・マズア
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−090932(JP,A)
【文献】 特開2008−308150(JP,A)
【文献】 特開2003−127846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00−8/1769
B60T 8/32−8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキシステムであって、
少なくとも部分的に内室(56)へ入るように位置調節可能なピストン(58)を備えるマスタブレーキシリンダ(54)と、
少なくとも最低力(F0)の運転者ブレーキ力(F)でブレーキペダル(50,100)が操作されたときに前記ピストン(58)を少なくとも部分的に前記内室(56)へ入るように位置調節可能であるとともに前記内室(56)の内圧を高めることが可能であるように、前記マスタブレーキシリンダ(54)の前記ピストン(58)がブレーキペダル(50,100)と連結される、ブレーキペダル(50,100)を備えるレバー装置(60,110,150)と、
内圧が上昇したときに少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(64a,64b)のブレーキ圧(p(F))を高めることが可能であるように前記マスタブレーキシリンダ(54)と液圧接続された、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(64a,64b)を備える少なくとも1つのブレーキ回路(62a,62b)と、
制御装置(66)および少なくとも1つの液圧集成装置(68a,68b)を備える液圧装置とを有しており、ブレーキペダル(50,100)の操作の操作強度(F)、および/または前記マスタブレーキシリンダ(54)における圧力、および/または少なくとも1つの前記ブレーキ回路(62a,62b)における圧力に関してセンサから供給される少なくとも1つの受信信号(66a)を前記制御装置(66)によって受信可能であるとともに、少なくとも1つの所定の参照信号と比較可能であり、少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)で増幅されるべきブレーキ液圧に関する目標量を、少なくとも1つの参照信号と少なくとも1つの受信信号(66a)との比較を考慮したうえで決定可能であり、少なくとも1つの前記液圧集成装置(68a,68b)は、少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)で前記目標量に準じてブレーキ液圧を少なくとも1つの前記液圧集成装置(68a,68b)によって変更可能であるように制御可能である、そのようなブレーキシステムにおいて、
前記レバー装置(60,110,150)は非線形のペダル伝達比のために設計されており、
前記レバー装置(60)は前記ブレーキペダル(50,100)とともに4棒リンクとして構成されており、
4棒リンクとして構成された前記レバー装置(60)は、中間レバー(70)の取付端部(72)を中心として回転可能に配置された中間レバー(70)と、第1のジョイントを介してブレーキペダル(50)と連結されるとともに第2のジョイントを介して前記中間レバー(70)と連結されたペダル連結部材(74)と、第3のジョイントを介して前記中間レバー(70)と連結され、前記ピストン(58)と連結されたピストン連結部材(80)とを含んでいることを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
非線形のペダル伝達比のための前記レバー装置(60,110,150)は、前記内室における内圧および/または少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)におけるブレーキ圧(p(F))が、少なくとも値領域(W)の運転者ブレーキ力(F)について、運転者ブレーキ力(F)の連続して上昇する右曲がりの関数になるように設計されている、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記液圧集成装置(68a,68b)はポンプ、プランジャ、および/またはバルブを含んでいる、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの参照信号は、所定の閾値の目標減速設定量のために及ぼされるべきブレーキペダルストローク(s)、および/またはブレーキペダル(50,100)の操作のために印加されるべきブレーキ力(FZ)に対応している、請求項1からのうちいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの参照信号は、前記ブレーキシステムにより実行される所定の閾値の減速のときの内圧、少なくとも1つのブレーキ回路におけるブレーキ回路圧力、および/または少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおけるブレーキ圧に対応している、請求項1からのうちいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記ブレーキシステムは、ESPシステム、ABSシステム、および/またはASRシステムとして構成されている、請求項1からのうちいずれか1項に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
少なくとも部分的に内室(56)に入るように位置調節可能なピストン(58)を備えるマスタブレーキシリンダ(54)と、少なくとも最低力(F0)の運転者ブレーキ力でブレーキペダル(50,100)が操作されたときに前記ピストン(58)が少なくとも部分的に前記内室(56)に入るように位置調節されて前記内室(56)の内圧が高められ、前記マスタブレーキシリンダ(54)と液圧接続された少なくとも1つのブレーキ回路(62a,62b)の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(64a,64b)におけるブレーキ圧(p(F))が高められるように、前記マスタブレーキシリンダ(54)の前記ピストン(58)がブレーキペダル(50,100)と連結される、非線形のペダル伝達比のためのブレーキペダル(50,100)を含むレバー装置(60)とを有し、前記レバー装置(60)は前記ブレーキペダル(50,100)とともに4棒リンクとして構成されており、4棒リンクとして構成された前記レバー装置(60)は、中間レバー(70)の取付端部(72)を中心として回転可能に配置された中間レバー(70)と、第1のジョイントを介してブレーキペダル(50)と連結されるとともに第2のジョイントを介して前記中間レバー(70)と連結されたペダル連結部材(74)と、第3のジョイントを介して前記中間レバー(70)と連結され、前記ピストン(58)と連結されたピストン連結部材(80)とを含んでいる車両のブレーキシステムを作動させる方法において、
ブレーキペダルの操作の操作強度(F)、および/または前記マスタブレーキシリンダ(54)における圧力、および/または少なくとも1つの前記ブレーキ回路(62a,62b)における圧力に関する少なくとも1つの実際量(F)を判定するステップと、
少なくとも1つの実際量(F)を少なくとも1つの所定の参照量と比較するステップと、少なくとも1つの参照量と少なくとも1つの実際量(F)との比較を考慮したうえで、少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)で増幅されるべきブレーキ液圧に関する目標量を決定するステップと、
少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)で前記目標量に準じてブレーキ液圧がブレーキシステムの液圧集成装置(68a,68b)によって変更されるように、前記液圧集成装置(68a,68b)を制御するステップと、を有している方法。
【請求項8】
少なくとも1つの実際量(F)として、ブレーキペダルに及ぼされる運転者ブレーキ力(F)、ブレーキペダル(50,100)のブレーキペダルストローク(s)および/または前記レバー装置(60,110,150)のその他のコンポーネントのストローク、内圧、少なくとも1つの前記ブレーキ回路(62a,62b)におけるブレーキ回路圧力、および/または少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)におけるブレーキ圧(p(F))が判定される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの実際量(F)は、少なくとも1つの参照量としての、所定の閾値の目標減速設定のためのブレーキペダル(50,100)の操作のために及ぼされるべきブレーキペダルストロークおよび/または印加されるべきブレーキ力(FZ)と比較され、および/または前記ブレーキシステムにより実行される所定の閾値の減速のときの内圧、少なくとも1つのブレーキ回路(62a,62b)におけるブレーキ回路圧力、および/または少なくとも1つの前記ホイールブレーキシリンダ(64a,64b)におけるブレーキ圧(p(F))と比較される、請求項またはに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキシステムに関する。さらに本発明は、車両のブレーキシステムを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空ブレーキ倍力装置と、追加の液圧補助力のための液圧式のブレーキ倍力装置とを備えるブレーキシステムが記載されている。
【0003】
図1は、真空ブレーキ倍力装置と液圧式のブレーキ倍力装置とを有する従来式のブレーキシステムを解説するための座標系を示している。
【0004】
図1に示す座標系では、横軸は、従来式のブレーキシステムを装備した車両の運転者がブレーキペダルに及ぼす運転者ブレーキ力Fを示している。座標系の縦軸は、特定の運転者ブレーキ力Fのときに、従来式のブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで生じるブレーキ圧pを表している。図1の座標系を用いて、運転者ブレーキ力Fと、その結果として少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで生じるブレーキ圧pとに関わる相関関係p(F)を表すことができる。
【0005】
従来式のブレーキシステムでは、ブレーキペダルは、運転者ブレーキ力Fが最低力F0を超えると、操作と反対の作用をする液圧の反力と、ペダルおよびマスタブレーキシリンダで設定されているスプリング力とが克服され、マスタブレーキシリンダのピストンがマスタブレーキシリンダの内室へ少なくとも部分的に入るように位置調節されるように、マスタブレーキシリンダの位置調節可能なピストンと連結されている。このようにして、マスタブレーキシリンダの内室における内圧を高めることが可能である。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダは、内圧が上昇すると、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおけるブレーキ圧pも一緒に増大するように、マスタブレーキシリンダと液圧接続されている。
【0006】
運転者ブレーキ力Fが最低力F0と飽和力F1との間にあるとき、ブレーキ圧pは、運転者ブレーキ力Fの増加にともなって線形に(一定に)上昇していく。このことは、最低力F0と飽和力F1との間のブレーキ力領域での一定の上昇にともなう、ブレーキ力pの増加として表現することもできる。
【0007】
最低力F0と飽和力F1との間のブレーキ圧pの比較的大きな上昇は、真空ブレーキ倍力装置によって具体化可能である。しかしながら飽和力F1を超えると、真空ブレーキ倍力装置によって実現可能な真空ブレーキ力増幅は使い尽くされるため、液圧式のブレーキ力増幅が行われない従来式のブレーキシステムを作動させると、飽和力F1を超えたときのブレーキ圧pの上昇は明らかに鈍ることになる(曲線10を参照)。
【0008】
しかし飽和力F1を超えたときに、液圧式のブレーキ力増幅を利用して、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダの中で追加的に変位するブレーキ液容積によって、ブレーキ圧pを上昇させることが可能である(曲線12を参照)。このように液圧式のブレーキ力増幅(Hydraulic Brake Boost)を用いて、飽和力F1に相当する飽和点(run−out point)を超えたときに、追加のブレーキ圧上昇を確保することができる。このようにして特に、車両ホイールがロックされるロック圧力pBに、印加可能なロック力FB1ですでに到達することができる。
【0009】
図2A図2Bは、ブレーキ倍力装置のない別の従来式のブレーキシステムを解説するための模式図と座標系を示している。図2Bの縦軸と横軸に関しては、図1の座標系の説明を援用する。
【0010】
このブレーキシステムは、少なくとも1つの内室18の中で位置調節可能なマスタブレーキシリンダ22の少なくとも1つのピストン20と、連結部材16を介して連結されたブレーキペダル14を含んでいる。ブレーキシステムのペダル伝達比は一定である。このことは、少なくとも1つの(図示しない)ホイールブレーキシリンダで生じるブレーキ圧pが、運転者ブレーキ力の一次関数(曲線24)であることを意味している。この関数の勾配(曲線24)は、最低力F0の印加後には(ほぼ)一定であるが、比較的低い。したがって、上に挙げたロック力FB1を明らかに上回る比較的高いロック力FB2を、ロック圧力pBへの到達のために印加しなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ドイツ特許出願公表第60133413T2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、請求項1の構成要件を備える車両のブレーキシステムを提供するものであり、および、請求項12の構成要件を備える車両のブレーキシステムを作動させる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるブレーキシステムの非線形のペダル伝達比のためのレバー装置に基づき、すでに比較的低いペダル力のときに、高いブレーキ圧を実現可能である。これを言い換えて、ブレーキペダルの操作の操作力が所定の参照信号を下回っているときすでに、ないしは、マスタブレーキシリンダおよび/または少なくとも1つのブレーキ回路における相応の圧力のときに、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける比較的高いブレーキ圧が保証されると言うこともできる。したがって本発明によるブレーキシステムは、たとえば真空ブレーキ倍力装置(真空倍力装置)のようなブレーキ倍力装置の装備を省略することが可能である。従来の方式ではブレーキシステムに存在する真空ブレーキ倍力装置を省略することで、従来技術ではまだ必要であるような、ブレーキ力増幅のための真空を車両の内燃機関によって、または追加の電気式の真空ポンプによって、真空ブレーキ倍力装置へ供給する必要がなくなる。真空ブレーキ倍力装置として構成されるのではないブレーキ倍力装置をブレーキシステムに装備することも、省略することができる。このようにして、ブレーキシステムをいっそう低コストに施工することが可能である。これに加えて本発明のブレーキシステムは、従来技術に比べて削減された所要設計スペースを有している。
【0014】
ブレーキ倍力装置の省略により、および場合によっては真空供給部の追加的な省略により、従来のブレーキシステムを下回るブレーキシステムの全重量も実現可能である。同様に、前述した各コンポーネントの省略により、いっそう好都合なパッケージングも実現される。
【0015】
本発明によるブレーキシステムは、特に、内燃機関を搭載していない電気車両で利用される場合に好ましい。特に重量が比較的小さい小型の電気車両において、本発明は、ブレーキシステムの全重量の削減に基づいて好ましく作用する。
【0016】
液圧装置を用いて具体化可能な液圧ブレーキ力増幅と、非線形のペダル伝達比のためのレバー装置(非線形のブレーキペダル機構)との組み合わせは、満足のいくブレーキペダル操作感覚ももたらす。ブレーキペダルを軽く操作するときでも強いブレーキペダル操作のときでも、印加されるべきブレーキペダル力が明らかに削減される。この利点は、本発明によるブレーキシステムでは、簡素に構成された低コストな制御装置のエレクトロニクスによって保証可能である。
【0017】
本発明によるブレーキシステムのさらに別の利点は、軽いブレーキ操作のときに、すなわちブレーキペダルの操作の操作強度が所定の参照信号を下回っているときに、ないしはそのような圧力のときに、液圧集成装置の作動を省略できることにある。したがって運転者は、軽いブレーキペダル操作のとき、場合によりマスタブレーキシリンダと液圧集成装置との間で成立する液圧接続にもかかわらず、反動の感覚を受けることがない。すなわち運転者はブレーキペダルを軽く操作したとき、液圧集成装置の作動によって引き起こされる反動を感じることがない。この利点は、そのために少なくとも1つのホイールブレーキシリンダと液圧集成装置とがマスタブレーキシリンダから液圧的に切り離されることを要することなく保証される。ブレーキペダル操作が強くなったときに初めて、すなわち操作強度が少なくとも1つの参照信号を超えたときに、運転者は、場合により液圧集成装置の作動により引き起こされる反動をブレーキペダルで感じることがある。しかしこのような状況では、運転者はそうした反動を不都合なものとは感じない。運転者は、自分が要求する車両の有意な減速に対する、ブレーキペダルの反応の操作としてこれを感じるからである。
【0018】
本発明によるブレーキシステムを適用するための車両は、ESP機能性(エレクトロニック・スタビリティプログラム)を装備しているのが好ましい。このようにして、既存のESPシステムないしすでに使用されているESPシステムの設計システムに、全部の機能性を格納することができる。したがって液圧装置については、追加のコンポーネントを車両に取り付ける必要がない。
【0019】
ESPシステムの構成の代替または追加として、ブレーキシステムはABS機能性および/またはASR機能性のために構成されていてもよい。このようにして、前の段落で説明した利点を同じく保証することが可能である。
【0020】
上の各段落で説明した本発明によるブレーキシステムの利点は、これらに対応する方法でも保証される。
【0021】
次に、本発明のその他の構成要件や利点について、図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】真空ブレーキ倍力装置と液圧式のブレーキ力増幅とを有する従来式のブレーキシステムを解説するための座標系である。
図2A】ブレーキ倍力装置のない別の従来式のブレーキシステムを解説するための模式図である。
図2B】ブレーキ倍力装置のない別の従来式のブレーキシステムを解説するための座標系である。
図3】ブレーキシステムの第1の実施形態を示す模式図である。
図4】ブレーキシステムの第2の実施形態を示す模式図である。
図5】ブレーキシステムの第3の実施形態を示す模式図である。
図6】上に説明した各実施形態の機能形態を説明するための座標系である。
図7】上に説明した各実施形態の機能形態を説明するための別の座標系である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図3は、ブレーキシステムの第1の実施形態の模式図を示している。
【0024】
図3に模式的に掲げるブレーキシステムは、ブレーキペダル50を有している。ブレーキペダル50は、一例として取付端部52で、ブレーキシステムを備える車両の(図示しない)シャーシに回転可能に配置/支承されている。したがってブレーキペダル50の操作は、取付端部52を中心とするブレーキペダル50の回転運動を惹起する。
【0025】
ブレーキシステムは、図示した実施形態ではタンデム型マスタブレーキシリンダとして構成されたマスタブレーキシリンダ54を有している。マスタブレーキシリンダ54は、このような種類の構成の場合、それぞれ少なくとも部分的に内室56に入るように位置調節可能な2つのピストン58を有している。両方のピストン58は、一緒に位置調節可能であるように相互に連結されている。ただし付言しておくと、ブレーキシステムはタンデム型マスタブレーキシリンダとして構成されたマスタブレーキシリンダ54の装備だけに限定されるものではない。タンデム型マスタブレーキシリンダに代えて、ブレーキシステムは、これ以外のマスタブレーキシリンダ型式を有することもできる。
【0026】
ブレーキペダル50を含むレバー装置60は、これを介してたとえば踏力のような運転者ブレーキ力がマスタブレーキシリンダ54の両方のピストン58に伝達されるものであり、4棒リンクとして構成されている。レバー装置60はブレーキペダル50を両方のピストン58と連結して、少なくとも最低力によってブレーキペダル50が操作されたときに、両方のピストン58が少なくとも部分的にそれぞれの内室56に入るように位置調節可能であるようになっている。このようにして、各々の内室56の内圧を高めることが可能である。
【0027】
ブレーキシステムは、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ64aおよび64bを有する、少なくとも1つの(ここには模式的にのみ図示する)ブレーキ回路62aおよび62bも含んでいる。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ64aおよび64bは、マスタブレーキシリンダ54の内圧が上昇したときに、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ64aおよび64bにおけるブレーキ圧を高めることが可能であるように、マスタブレーキシリンダ54と液圧接続されており、もしくは、液圧接続されるように切換可能である。
【0028】
さらにブレーキシステムは、少なくとも1つの制御装置66と、少なくとも1つの液圧集成装置68aおよび68bとを有する液圧装置を追加的に有している。制御装置66により、ブレーキペダル50の(操作の)操作強度、および/またはマスタブレーキシリンダ54における圧力、および/または少なくとも1つのブレーキ回路62aおよび62bにおける圧力に関して、(図示しない)センサから供給される少なくとも1つの受信信号66aを受信可能である。
【0029】
たとえば少なくとも1つの受信信号66aは、ブレーキペダル50に及ぼされる運転者ブレーキ力に関する、ブレーキペダル50に配置されたブレーキ力センサ、ブレーキペダルストロークセンサ、および/またはブレーキペダル角度センサの情報/実際量であってよく、もしくはこれらを含むことができる。特に少なくとも1つの受信信号66aは、ブレーキペダル50および/またはレバー装置60のその他のコンポーネントがブレーキペダル50の操作時に位置調節される、ブレーキペダルストロークセンサから提供されるブレーキペダルストロークに関する、ないしはこれに対応する撓みに関する、情報/実際量を含むことができる。付言しておくと、操作強度に関するこれ以外の量も、そのために設計されたセンサから受信信号66aを通じて制御装置66へ供給し、これによって受信することができる。
【0030】
このような種類の操作強度の代替または追加として、少なくとも1つの内室56における内圧、いずれかのブレーキ回路62aおよび62bにおけるブレーキ回路圧力、および/またはホイールブレーキシリンダ64aおよび64bで生じている最新のブレーキ圧を、制御装置66によって受信することもできる。
【0031】
制御装置66には、少なくとも1つの所定の参照信号/基準信号も保存されており、受信された受信信号66aをこれと比較可能である。このような種類の参照信号/基準信号は、たとえばブレーキペダル50が操作されるときの(たとえば0.5gの所定の閾値の)目標減速設定量のための(実行されるべき)ブレーキペダルストローク、および/もしくは(実行されるべき)運転者ブレーキ力、あとで詳しく説明する中間力に応じた(実行されるべき)運転者ブレーキ力のときの(実行されるべき)ブレーキペダルストローク、ブレーキシステムにより実行される定義された(たとえば0.5gの所定の閾値の)目標減速のときの内圧、ブレーキ回路圧力、および/もしくはホイールブレーキ圧、ならびに/または中間力に等しい運転者ブレーキ力のときの内圧、ブレーキ回路圧力、および/もしくはブレーキ圧であってよい。しかしながら参照信号の設定は、ここに列挙した値だけに限定されるものではない。
【0032】
さらに制御装置66は、受信信号66aと少なくとも1つの参照信号/基準信号との比較を考慮したうえで、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで増幅されるべきブレーキ液圧に関わる目標量を決定するように設計されている。次いで、少なくとも1つの液圧集成装置68aおよび68bを、制御装置66により少なくとも1つの制御信号66bの出力によって制御して、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ64aおよび64bで、液圧集成装置68aおよび68bを用いてブレーキ液圧を目標量に準じて変更可能であるようにすることができる。少なくとも1つの液圧集成装置68aおよび64bは、特にポンプ、プランジャ、および/またはバルブであってよい。しかしながらブレーキシステムは、このように構成された液圧集成装置68aおよび68bだけに限定されるものではない。
【0033】
4棒リンクとして構成されたレバー装置60は、非線形のペダル伝達比のために設計されている。そのためにレバー装置60は中間レバー70を有しており、この中間レバーは、中間レバー70が取付端部72を中心として回転可能であるように、取付端部72でシャーシに支承されている。ペダル連結部材74が、ブレーキペダル50の連結部材接触点75を、中間レバー70のペダル接触点76と連結している。
【0034】
(連結部材接触点75での)ブレーキペダル50とペダル連結部材74の連結部は、第1のジョイントとして構成されている。このように、ブレーキペダル50と中間レバー70との間のペダル連結部材74の配置は、ブレーキペダル50(および中間レバー70)に対するペダル連結部材74の向きを変更可能であるように構成されている。これを言い換えて、ペダル連結部材74と、連結部材接触点75におけるブレーキペダル50の接線/長手方向との間の角度αを変更可能であると言うこともできる。(ペダル接触点76における)中間レバー70とペダル連結部材74の連結部も第2のジョイントとして構成されており、それにより、ペダル連結部材74と、接触点76における中間レバー70の接線/長手方向との間の角度βを変更可能である。
【0035】
接触点76と取付端部72との間にはピストン接触点78があり、ここには、中間レバー70を(少なくとも1つの隣接する)ピストン58と連結するピストン連結部材80が配置されている。(ピストン接触点78における)中間レバー70とピストン連結部材80との連結部は、第3のジョイントとして構成されている。したがって、中間レバー70に対するピストン連結部材80の位置も変更可能である。同様に、ピストン連結部材80と、中間レバー70のピストン接触点78における接線/長手方向との間の角度γを変更可能である。
【0036】
4棒リンクによって具体化されるレバー装置60の非線形のペダル伝達比に基づき、たとえば真空ブレーキ倍力装置のようなブレーキ倍力装置をブレーキシステムに装備するのを省略することができる。その代わりにレバー装置60は、あとで詳しく説明する非線形の運転者ブレーキ力・ブレーキ圧・伝達比を具体化する。このように、すでに比較的軽微なブレーキペダル50の操作だけで、ブレーキ倍力装置が欠如しているにもかかわらず、比較的高いブレーキ圧を惹起することができる。
【0037】
図3に示すブレーキシステムは、非線形のペダル伝達比のための4棒リンクの考えられる1つの実施例を有しているにすぎない。しかしながら、ブレーキペダル50とマスタブレーキシリンダ54との間で希望される運動力学を具体化するために、これ以外のジオメトリーの4棒リンクも適している。
【0038】
図4は、ブレーキシステムの第2の実施形態の模式図を示している。
【0039】
図4に模式的に掲げるブレーキシステムは、マスタブレーキシリンダ54、ならびに少なくとも1つのブレーキ回路62aおよび62bに配置された、制御装置66と少なくとも1つの液圧集成装置68aおよび68bとを備える液圧装置に追加して、カムディスク102が配置/構成されたブレーキペダル100を有している。ブレーキペダル100は、操作によってブレーキペダル100が取付端部104を中心として回転可能になるように、取付端部104のところでシャーシに配置されている。ブレーキペダル100に構成されたカムディスク102は、その湾曲面106が、利用者による(特に足による)ブレーキペダル100の操作時に接触される操作面108から離れる方向を向くような向きを有している。これを言い換えて、カムディスク102は、車室から離れる方向を向くブレーキペダル100の側に構成されていると言うこともできる。
【0040】
カムディスク102は円弧状の縁部を有しているのが好ましく、すなわち、円形の縁部を有してはいるが、その縁部が360°にわたって延びていないのが好ましい。しかしながら円弧状のカムディスク102に代えて、部分楕円状のカムディスク102をブレーキペダル100に取り付けることも可能である。湾曲面106は、部分円筒外套の形状を有しているのが好ましい。
【0041】
この実施形態でもブレーキペダル100は、非線形のペダル伝達比のためのレバー装置110の一部として、ピストン58と連結されている。このレバー装置110は、取付端部114のところでシャーシに回転可能に支承された接触レバー112を有している。接触レバー112には、カムディスク102の湾曲面106に接触するロール116が配置されている。ブレーキペダル110が操作されると、ロール116がカムディスク102の湾曲面106に沿って転動する。
【0042】
カムディスク102の湾曲面106に沿ったロール116の転動は、取付端部114を中心とした接触レバー112の回転を惹起する。ロール116は、ピストン接触点118と、接触レバー112の取付端部114との間に配置されている。ピストン接触点118とピストン58との間には、ピストン連結部材120が延びている。(ピストン接触点118における)接触レバー112とピストン連結部材120との連結部はジョイントとして構成されており、それにより、ブレーキペダルが操作され、湾曲面106に沿ってロール116が転動している間に、ピストン接触点118におけるピストン連結部材120と接触レバー112の接線/長手方向との間の角度δを変更可能である。このようにしてレバー装置110により、あとで詳しく説明する非線形のペダル伝達比とその利点を保証することが可能である。
【0043】
図5は、ブレーキシステムの第3の実施形態の模式図を示している。
【0044】
図5に模式的に示されている実施形態は、マスタブレーキシリンダ54、ならびに少なくとも1つのブレーキ回路62aおよび62bに配置された、制御装置66と少なくとも1つの液圧集成装置68aおよび68bとを備える液圧装置に追加して、上ですでに説明したカムディスク102を備えるブレーキペダル100を有している。
【0045】
ブレーキペダル100は、ここで説明する実施形態では、レバー装置150の一部としての、マスタブレーキシリンダ54の(少なくとも1つの隣接する)ピストン58と連結されており、このレバー装置は、カムディスク102の湾曲面106と接触するロール152と、軸方向に案内されたタペット154とを追加的に含んでいる。タペット154の軸方向の案内は、たとえば切欠きからタペット154が両側に突き出す案内部156によって具体化可能である。タペット154により、ロール152はピストン58と連結されている。
【0046】
ブレーキペダル100の操作は、カムディスク102の湾曲面106に沿ったロール152の転がり運動を惹起する。しかしながらロール152の中心点は、軸方向に案内されるタペット154の長手方向に沿ってのみ位置調節可能である。タペット154の長手方向に対して垂直方向では、ロール152の中心点の運動は可能ではない。
【0047】
したがってこのレバー装置150でも、非線形のペダル伝達が実行されるように、可変の伝達比が保証される。特にレバー装置150により、運転者ブレーキ力の少なくとも1つの値領域について、運転者ブレーキ力の累進的な関数として、運転者ブレーキ力を内圧/ブレーキ圧へペダル伝達することも具体化可能である。このことは、この実施形態においても、あとで説明する利点を保証する。
【0048】
図6は、以上に説明した各実施形態の機能形態を説明するための座標系を示している。
【0049】
図6の座標系の横軸は、ブレーキシステムの実施形態を有する車両の運転者がブレーキペダルに及ぼす、運転者ブレーキ力Fに相当している。図6の座標系の縦軸は、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで、運転者ブレーキ力Fの結果として生じるブレーキ圧pを表している。
【0050】
以下に説明する利点は上に挙げたどの実施形態にも当てはまるが、これらの実施形態だけに限定されるわけではない。
【0051】
好ましいブレーキシステムのブレーキペダルは、レバー装置によってマスタブレーキシリンダのピストンと連結されており、それにより、少なくとも最低力F0でブレーキペダルが操作されたときに、ピストンを少なくとも部分的にマスタブレーキシリンダの内室に入るように位置調節可能であるようになっている。このようにして、内室における内圧を高めることが可能である。
【0052】
少なくとも1つのホイールブレーキシリンダを備える少なくとも1つのブレーキ回路が、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに配置されている。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダは、ブレーキシステムの少なくとも1つの動作モードのとき、マスタブレーキシリンダと液圧接続されて、内圧が上昇したときに、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおけるブレーキ圧p(F)を高めることが可能であるようになっている。したがって最低力F0を上回る運転者ブレーキ力Fになると、ブレーキ圧p(F)は、両方の座標でゼロに等しくない値を有している。
【0053】
好ましいブレーキシステムのレバー装置は、非線形のペダル伝達比のために設計されている。レバー装置は、内室で生成されるマスタブレーキシリンダの内圧が、少なくとも運転者ブレーキ力Fの1つの値領域Wで、運転者ブレーキ力Fの累進的な関数となるペダル伝達比のために設計されているのが好ましい。この場合、マスタブレーキシリンダの内圧は少なくとも値領域Wにおいて、正の第1の微分と負の第2の微分とを有する運転者ブレーキ力Fの関数であるのが好ましい。これを言い換えると、内圧の関数は、値領域Wの範囲内にある運転者ブレーキ力Fに依存して、連続して上昇する右曲がりの(凹面状の)曲線/関数であると言うこともできる。値領域Wは、最低力F0を上回る、印加可能な運転者ブレーキ力Fの少なくとも1つの部分領域である。値領域Wは最低力F0に接しているのが好ましい。最低力F0は、特に、値領域Wの下限を定義することができる。値領域Wは、最低力F0から、あとで詳しく説明する液圧装置によって規定可能である中間力FZまで延びているのが好ましい。
【0054】
このような種類の非線形のペダル伝達比を有するレバー装置の実施例については、すでに上で説明している。特に、値領域Wの内部で連続して上昇する右曲がりの(凹面状の)運転者ブレーキ力Fの関数としての内圧は、これらの実施例によって簡単な仕方で低コストに具体化可能である。しかしながら付言しておくと、これらの実施形態は、このような種類の非線形のペダル伝達比を有するレバー装置を具体化するための一例にすぎず、特に、値領域Wの内部で連続して上昇する右曲がりの(凹面状の)運転者ブレーキ力Fの関数としての内圧を具体化するための一例にすぎず、したがって、以下に掲げる利点もこれらの実施形態だけに限定されるものではない。
【0055】
レバー装置により具体化される非線形のペダル伝達比に基づき、図6に掲げる少なくとも1つのホイールブレーキシリンダでのブレーキ圧p(F)も、少なくとも、特に最低力F0と中間力FZの間に位置する値領域Wの運転者ブレーキ力Fのとき、正の第1の微分と負の第2の微分とを有する運転者ブレーキ力Fの関数である。したがって、運転者ブレーキ力Fが値領域Wにあるとき、ブレーキ圧p(F)は連続して上昇する右曲がりの(凹面状の)運転者ブレーキ力Fの曲線/関数である。
【0056】
このように、好ましい非線形のペダル伝達比のためのレバー装置は、累進的な運転者ブレーキ力・ブレーキ圧・伝達比も惹起する。このような累進的な運転者ブレーキ力・ブレーキ圧・伝達比に基づき、最低力F0と中間力FZの間の運転者ブレーキ力Fについて好ましいペダル伝達比を有するブレーキシステムのブレーキ圧p(F)は、たとえば真空ブレーキ倍力装置および/または電気機械式のブレーキ倍力装置のようなブレーキ倍力装置がなくても、マスタブレーキシリンダに及ぼされる補助力に追加して好ましい高い値を有している(比較のため、図2Bのブレーキ倍力装置をもたない従来式のブレーキシステムの曲線24が記入されている)。このように、非線形のペダル伝達比のための、特に累進的な運転者ブレーキ力・ブレーキ圧・伝達比のためのレバー装置は、線形/一定のペダル伝達比を有するレバー装置とは異なり、たとえば真空ブレーキ倍力装置および/または電気機械式のブレーキ倍力装置のようなブレーキ倍力装置をブレーキシステムに装備するのを省略することができ、それにもかかわらず、軽微に印加可能な運転者ブレーキ力ですでに、信頼度の高い車両減速が保証されるという利点を実現する。
【0057】
特に、このような種類のブレーキペダルとマスタブレーキシリンダとの間の非線形のペダル伝達比によって、低い運転者ブレーキ力F(最低力F0と中間力FZの間)のときすでに、比較的高いブレーキ圧p(F)を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで(ブレーキ倍力装置なしに)具体化することができる。このように好ましい非線形のペダル伝達比は、ブレーキシステムへのブレーキ倍力装置の搭載に代わる低コストな代替案を保証する。これに加えて、非線形のペダル伝達比のためのレバー装置によって、ブレーキシステムの所要設計スペースおよび/または全重量を削減することが可能である。
【0058】
非線形のペダル伝達比のためのレバー装置のさらに別の利点は、非線形のペダル伝達比によって具体化される「ブレーキ圧増幅」が、最低力F0よりも上方の、ただしその近傍の運転者ブレーキ力Fのときすでに成立することにある。これを言い換えて、ブレーキペダルが軽く(最低力F0と中間力FZの間の運転者ブレーキ力Fで)操作されただけで、好ましく高いブレーキ圧p(F)が少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで保証されると言うこともできる。したがって運転者は、このように低い運転者ブレーキ力によってすでに、市街地交通にとって通常は十分である車両の減速を実現することができる。このように運転者は市街地交通で走行するとき、特にブレーキ倍力装置のないブレーキシステムを操作するために、比較的低い運転者ブレーキ力を及ぼすだけでよい。運転者は市街地交通での走行時に、車両を比較的頻繁に軽く制動しなくてはならないので、非線形のペダル伝達比によって具体化される「ブレーキ圧増幅」は、特にブレーキ倍力装置のないブレーキシステムの向上した操作快適性と結びついている。
【0059】
図6に掲げるブレーキシステムの実施形態は、制御装置と少なくとも1つの液圧集成装置とを備える液圧装置も含んでいる。制御装置により、ブレーキペダルの操作の操作強度、および/またはマスタブレーキシリンダにおける圧力、および/または少なくとも1つのブレーキ回路における圧力に関してセンサから供給される少なくとも1つの受信信号を受信可能である。受信可能な受信信号の例は、すでに上に挙げたとおりである。受信信号は制御装置によって、所定の参照信号と比較される。参照信号はたとえばブレーキペダルストローク(ペダルストローク)、ブレーキ力(ペダル力)、内圧、ブレーキ回路圧力、および/または中間力FZに相当するブレーキ圧である。中間力FZは比較的自由に設定可能である。特に中間力FZは、少なくとも、0.5gの閾値の減速/全制動モーメントに相当することができる。
【0060】
これに加えて制御装置は、少なくとも1つの参照信号と受信信号の比較を考慮したうえで、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで増幅されるべきブレーキ液圧に関する目標量を決定するように設計されている。たとえば制御装置は、受信信号が少なくとも1つの参照信号を下回っているときには、増幅されるべきブレーキ液圧に関する目標量をゼロに等しく決定することができ、受信信号が少なくとも1つの参照信号を上回っているときには、増幅されるべきブレーキ液圧に関する目標量をゼロに等しくなく決定することができる。
【0061】
少なくとも1つの液圧集成装置は、液圧集成装置によって少なくとも1つのホイールブレーキシリンダのブレーキ液圧を決定された目標量に応じて変更可能であるように、制御装置によって制御可能である。したがって目標量は、たとえばマスタブレーキシリンダから転送されるべきブレーキ液容積、少なくとも1つの液圧集成装置の目標ポンプ仕事量、少なくとも1つの液圧集成装置の目標ポンプ周波数、および/または少なくとも1つの液圧集成装置の目標供給電流信号であってよい。しかしながら制御装置の構成の可能性は、ここに述べた例だけに限定されるものではない。少なくとも1つの液圧集成装置は、特にポンプ、プランジャ、および/またはバルブであってよい。
【0062】
図6に掲げるブレーキシステムでは、ブレーキ液圧は、運転者ブレーキ力Fが中間力FZよりも大きいときに、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで増幅される。したがって液圧装置は、中間力FZよりも大きいブレーキ力Fについては、液圧装置が不作動のときの(破線の曲線162で掲げる)ブレーキ圧に比べて、曲線160で明らかに図示されているブレーキ圧p(F)の上昇を引き起こす。それによりブレーキ圧p(F)を、ブレーキ倍力装置と液圧装置のないブレーキシステムのブレーキ圧(曲線24)に比べて、追加的に高めることが可能である。
【0063】
好ましいブレーキシステムにより、特に、すでに上に挙げたロック圧力pBを(ブレーキ倍力装置の非存在にもかかわらず)、従来式のブレーキシステムのロック力FB2を明らかに下回る低いロック力FB3のときすでに実現可能である。
【0064】
それにより、非線形のペダルレバーと液圧装置との組み合わせによって、満足のいくペダル感覚を実現可能である。好ましい組み合わせ(非線形のペダル伝達比のためのレバー装置と液圧装置)を有する、図6により図示するブレーキシステムは、最低力F0と(比較的自由に決定可能な)中間力FZとの間の運転者ブレーキ力Fのときに、ブレーキ圧p(F)が純粋に機械式に生成されるように設計されている。中間力FZを超える運転者ブレーキ力Fのときには、ブレーキ圧p(F)の生成は、液圧装置による追加の液圧式の補助によって行われる。
【0065】
中間力FZよりも低い運転者ブレーキ力Fのときには液圧装置の作動を省略することができ、それが運転者にとって満足のいくペダル感覚の犠牲と結びついていないので、好ましい組み合わせを有するブレーキシステムは、比較的低いエネルギー消費量を有している。好ましい非線形のペダル伝達比に基づき、ないしは、その結果として生じる累進的な運転者ブレーキ力・ブレーキ圧・伝達比に基づき、少なくとも5m/sの車両減速のときに初めて、ブレーキ液圧の増幅のために少なくとも1つの液圧集成装置を作動させれば十分である。したがって、中間力FZないし少なくとも1つの所定の参照値は、5m/sの車両減速のためにブレーキペダルに印加されるべき運転者ブレーキ力Fに相当していてよい。このように、液圧装置の作動が車両の電力消費量を犠牲にすることがなく、もしくはほとんどない。
【0066】
図7は、上に説明した各実施形態の機能形態を説明するための別の座標系を示している。
【0067】
図7の座標系の横軸は、ブレーキペダルが操作されたときのブレーキペダルストロークsに対応している。図7の座標系の縦軸は、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダで結果として生じるブレーキ圧pを表している。
【0068】
レバー装置の非線形のペダル伝達比に基づき、ブレーキ圧p(s)のために及ぼされるべきブレーキペダルストロークsはわずかに長くなる場合がある(破線の曲線164は、従来式のブレーキシステムにおけるブレーキペダルストローク・ブレーキ圧・関係を表している)。特にブレーキ圧p(s)は、ブレーキ圧p(s)の正の第2の微分(左曲がり)を有する関数であってよい。
【0069】
しかしながら運転者は、印加されるべき低い運転者ブレーキ力に基づき、ブレーキペダルストロークが若干拡張されても不都合と感じることはない。その代わりに、若干拡張されたブレーキペダルストロークsは、少ない力で設定可能な車両減速を正確に調整するという可能性を運転者にもたらす。
【0070】
本方法の各方法ステップについては、以上の説明によって間接的に説明しているので、ここであらためて説明することはしない。
【符号の説明】
【0071】
50 ブレーキペダル
54 マスタブレーキシリンダ
56 内室
58 ピストン
60 レバー装置
62a,62b ブレーキ回路
64a,64b ホイールブレーキシリンダ
66 制御装置
66a 受信信号
68a,68b 液圧集成装置
70 中間レバー
80 ピストン連結部材
100 ブレーキペダル
102 カムディスク
106 湾曲面
110 レバー装置
112 接触レバー
114 取付端部
116 ロール
120 ピストン連結部材
152 ロール
F 運転者ブレーキ力、操作強度、実際量
F0 最低力
FZ 印可されるべきブレーキ力、中間力
p(F) ブレーキ圧
s ブレーキペダルストローク
W 値領域
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7