【実施例1】
【0016】
(構成)
まず、
図1〜4を用いて、本実施例のヒートシンク1の構成を説明する。本実施例のヒートシンク1は、ベース2と、ベース2に略垂直に固定される複数のフィン7と、を備えている。
【0017】
ベース2は、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって、四角形の板状に形成されている。ベース2は、熱源(不図示)と密着する第1の面と、複数のフィン7が直立配置される第2の面と、を備えている。なお、ベース2は、四角形でなくてもよく、八角形などの他の多角形であってもよいし、円形であってもよいし、固定用の穴が設けられていてもよい。
【0018】
第2の面は、複数の凹溝3及び複数の凸条4(5)を交互に有している。これらの複数の凹溝3及び複数の凸条4(5)は、四角形のベース2の第1の辺から向かい合う第2の辺まで、互いに平行に延びている。
【0019】
図4の拡大図に示すように、凹溝3の断面は、底面と対向する内側面とを有するコ字状(U字状)に形成されている。詳細にいうと、凹溝3の断面は、入口側が狭く、かつ、底側が広い、逆テーパ形状にされている。換言すると、凹溝3の少なくとも一方の内側面、すなわちフィン7と面接触する一方の側面41は、ベース2に対して垂直な方向よりも、若干だけ、底面寄りに倒れるように傾斜している(
図9参照)。
【0020】
この逆テーパ形状にされた凹溝3の内側面の傾斜角度は、−2度から0度の範囲にされることが好ましい(
図9、10参照)。なお、この傾斜角度の最適範囲は、後述する実施例2に示す実験によって決められている。
【0021】
凸条4(5)は、ベース2の第2の面において、前述した凹溝3を反転させた構成である。すなわち、前述した凹溝3の内側面は、凸条4、5の側面を構成する。
【0022】
フィン7は、アルミニウム合金やマグネシウム合金などの熱伝導性の良好な金属によって、四角形の薄い板状に形成されている。なお、フィン7の形状は、四角形でなくてもよく、角を面取りした形状や、大きく斜めにカットした形状や、開口を有する形状などであってもよい。フィン7の厚さは、凹溝3の幅よりも薄くされている。
【0023】
そして、本実施例では、各凹溝3内に各フィン7の基端部71が挿入されるとともに、各フィン7の一方側(
図4では右側)の凸条5のみに各フィン7側に突出する突出部51が形成されて、各フィン7の基端部71が、各フィン7の一方側の凸条5の突出部51と各フィン7の他方側(
図4では左側)の凸条4の側面41との間でかしめ固定されている。
【0024】
より詳細にいうと、他方側の凸条4の側面41が各フィン7の基端部71の第1の側面に全面的に接触するとともに、一方側の凸条5の突出部51が各フィン7の基端部71の第2の側面に噛み込んで部分的に接触するようになっている。
【0025】
突出部51は、所定幅の凸条5において、凸条5のフィン7寄りの幅の半分程度の部分を、ベース2に対して略垂直に押圧することによって、扁平に塑性変形させることによって形成する。なお、凸条5は、押圧した際にフィン7と面接触する他方の側面が塑性変形しない程度の所定幅を有することが好ましい。
【0026】
また、
図3に示すように、平面内では、一方側の凸条5の突出部51は、凸条5の延長方向に沿って間隔をあけて断続的(不連続的)に形成されて、フィン7の基端部71が凹溝3の延長方向に沿って断続的にかしめ固定されている。逆に言うと、突出部51が形成される一方側の凸条5には、突出部51が形成されずにフィン7と接触しない部分が残されている。
【0027】
なお、本実施例では、ベース2の全面にフィン7を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、熱源のある位置のみに局所的にフィン7を設けてもよい。
(本実施例の製造方法)
【0028】
次に、
図5A〜5C、6を参照して、本実施例のヒートシンク1の製造方法について説明する。以下に述べるように、本実施例のヒートシンク1の製造方法は、準備する工程と、保持する工程と、挿入する工程と、かしめ固定する工程と、を含んでいる。
【0029】
このうち、保持する工程、挿入する工程、及びかしめ固定する工程を、各フィン7に対して繰り返し実施して、複数のフィン7をベース2に固定する。
【0030】
準備する工程では、複数の凹溝3及び複数の凸条4、5が交互に設けられたベース2と、凹溝3の溝幅よりも薄い板状に形成された複数のフィン7と、を準備する。このベース2及びフィン7の構成は、前述したとおりである。そして、ベース2をプレス台(不図示)に設置するとともに、複数のフィン7を1枚ずつ取得しやすいように並べておく。
【0031】
保持する工程では、
図5Aに示すように、フィン7をスライド可能に保持する保持手段81を有するパンチ8によって、各フィン7をパンチ先端82から突出した状態で保持する。
【0032】
ここで、プレスのパンチ8の構成について説明する。パンチ8の保持手段81は、パンチ8の表面に設けた吸盤内部の空気を吸引することによって、フィン7を吸引する方式が好ましいが、これに限定されず、フィン7をスライド自在に保持するものであればよい。例えば、機械式に保持する方式や、磁力によって保持する方式などを採用できる。
【0033】
パンチ先端82は、
図6に示すように、突出爪82aと切欠82bとを交互に有しており、凸条5を断続的(不連続的)に押圧できるようになっている。また、パンチ8の部材厚さは、強度を高めるために、隣接するフィン7の間隔と比べて広くすることができる。
【0034】
挿入する工程では、
図5Bに示すように、各フィン7を保持しているパンチ8をベース2に向かって移動させて、各フィン7の基端部71を各凹溝3内に挿入する。フィン7の先端が、凹溝3の底部に接触した時点以降は、次に説明するかしめ固定する工程となる。
【0035】
かしめ固定する工程では、
図5Cに示すように、パンチ8のみをベース2に向かってスライド移動させ、パンチ先端82で各フィン7の一方側の凸条5のフィン7側部分のみを押しつぶすことによって、フィン7側に突出する突出部51を形成し、フィン7の基端部71をかしめ固定する。すなわち、凹溝3に挿入されたフィン7は移動せずに、パンチ8のみがスライド移動する。
【0036】
そして、あらかじめ設定した押圧荷重になった時点で、コントローラ(図示しない)はかしめ固定が完了したと判断し、パンチ8のスライド移動(下降)を終了する。
【0037】
その後、パンチ8は、ベース2から離れるように移動して、次のフィン7を保持する工程、挿入する工程、及び、かしめ固定する工程のために移動する。この隣接するフィン7を挿入する工程、かしめ固定する工程のための移動では、パンチ8を、押しつぶされた一方側の凸条5の側に位置する別の凹溝3に順に移動させる。
【0038】
また、かしめ固定する工程では、上述したようにパンチ先端82の不連続な突出爪82aによって、一方側の凸条5をこの凸条5の延長方向に沿って間隔をあけて断続的に押しつぶし、フィン7の基端部71を断続的にかしめ固定する。
【0039】
さらに、凹溝3及び凸条4(5)の延びる方向に沿ったパンチ8の長さは、フィン7の長さよりも短くなっているため、かしめ固定する工程は、凸条4(5)の延長方向に複数回に分けて実施される。
(従来の製造方法)
【0040】
これに対して、
図7A〜7C、8に示す従来の製造方法は、以下のようにフィンbをかしめ固定していた。すなわち、はじめに、
図7Aに示すように、フィン押えブロックcによって、ベースaに配置されたフィンbの上面を押さえる。次に、
図7Bに示すように、ベースaに形成したV字状の溝に向かってパンチ先端を近づける。最後に、
図7Cに示すように、パンチ先端をV字状の溝に押し込んで、フィンbの基端部をかしめ固定する。
【0041】
しかしながら、以下のような問題が生じるおそれがあった。まず、
図7A〜7Cに示すように、周囲のフィンbよりも長さの短いフィンb1がある場合には、フィン押えブロックcによってフィンb1の上面を押さえることができない。その結果、短いフィンb1に浮きが生じたり、傾いたりした状態でかしめ固定されることになって、十分な強度で固定できなくなるおそれがあった。
【0042】
また、
図8に示すように、ベースaの厚さが位置によって異なっている場合、例えば、中央で厚く周辺で薄い場合には、フィン押えブロックcによって周辺のフィンb2、b3の上面を押さえることができない。その結果、周辺のフィンb2、b3に浮きが生じたり、傾いたりした状態でかしめ固定されることになって、十分な強度で固定できなくなるおそれがあった。
【0043】
(効果)
次に、本実施例のヒートシンク1の奏する効果を列挙して説明する。
【0044】
(1)本実施例のヒートシンク1は、複数の凹溝3及び複数の凸条4、5が交互に設けられたベース2と、凹溝3の溝幅よりも薄い板状に形成された複数のフィン7と、を備えるヒートシンク1である。そして、各凹溝3内に各フィン7の基端部71が挿入されるとともに、各フィン7の一方側の凸条5のみに各フィン7側に突出する突出部51が形成されて、各フィン7の基端部71が、各フィン7の一方側の凸条5の突出部51と各フィン7の他方側の凸条4の側面41との間でかしめ固定されている。
【0045】
この構成によれば、ヒートシンク1を製造する際に、パンチ8を一方側の凸条5の側に位置する別の凹溝3に順に移動させて、次のフィン7を挿入・かしめ固定できる。したがって、フィン7どうしの間にパンチ8を挿入する必要がないため、フィン7の配置間隔を狭くできる。
【0046】
また、フィン7どうしの間にパンチ8を挿入しないことにより、フィン7の高さを高くしても、パンチ8を高くする必要がなくなるため、フィン7の高さを高くできる。
【0047】
さらに、他方側の凸条4の側面41が、各フィン7の基端部71に全面的に接触することで、ベース2からフィン7への熱伝達を面−面間で効率よく行うことができる。
【0048】
このように、フィン7の配置間隔を狭くできること、フィン7の高さを高くできること、及び、ベース2からフィン7への熱伝達を効率よく行うこと、によって、冷却性能に優れたヒートシンク1となる。
【0049】
さらに、フィン7を1枚ずつかしめ固定することによって、1プレス当たりのかしめ荷重を小さくできる。したがって、製造装置を小型化できるうえ、初期投資の額を軽減できる。
【0050】
(2)一方側の凸条5の突出部51は、該凸条5の延長方向に沿って間隔をあけて断続的に形成されて、フィン7の基端部71が凹溝3の延長方向に沿って断続的にかしめ固定されていることによって、いっそう1プレス当たりのかしめ荷重を小さくできる。
【0051】
具体的にいうと、幅120mm長さ100mmのベースを従来の製造方法で3回かしめる場合には必要な荷重は180tであった。これに対して、本発明では、必要な荷重は0.8tとなる。したがって、装置を小型化できるうえ、初期投資の額を軽減できる。
【0052】
(3)そして、本実施例のヒートシンク1の製造方法は、複数の凹溝3及び複数の凸条4、5が交互に設けられたベース2と、凹溝3の溝幅よりも薄い板状に形成された複数のフィン7と、を準備する工程と、フィン7をスライド可能に保持する保持手段81を有するパンチ8によって、各フィン7をパンチ先端82から突出した状態で保持する工程と、各フィン7を保持しているパンチ8をベース2に向かって移動させ、各フィン7の基端部71を各凹溝3内に挿入する工程と、パンチ8のみをベース2に向かってスライド移動させ、パンチ先端82で各フィン7の一方側の凸条5のみを押しつぶすことによって、フィン7側に突出する突出部51を形成し、フィン7の基端部71をかしめ固定する工程と、を含み、保持する工程、挿入する工程、及びかしめ固定する工程を各フィンに対して繰り返し実施して、複数のフィン7をベース2に固定する。
【0053】
そして、パンチ8を、押しつぶされた一方側の凸条5の側に位置する別の凹溝3に順に移動させて、次のフィン7を挿入する工程及びかしめ固定する工程を実施する。
【0054】
このため、フィン7どうしの間にパンチ8を挿入する必要がなく、反対側の空間を利用できるため、フィン7の間隔を狭くできる。また、フィン7どうしの間にパンチ8を挿入しないことにより、フィン7の高さを高くしても、パンチ8を高くする必要がなくなるため、フィン7の高さを高くできる。
【0055】
さらに、フィン7を1枚ずつ固定していくため、同一製品内においてフィンの配置間隔やフィンの厚みを容易に変更できる。すなわち、フィンの配置間隔やフィンの厚みが変わっても、段取換えなく同一のパンチ8を使用することができる。
【0056】
加えて、従来の製造方法のように、フィン押えブロックcを使用しないため、フィンbの高さやベースaの厚みのばらつきの影響を受けることなく、ベース2にフィン7を十分な強度で固定できる。
【0057】
(4)かしめ固定する工程は、一方側の凸条5を該凸条5の延長方向に沿って間隔をあけて断続的に押しつぶすことによって、フィン7の基端部71を断続的にかしめ固定することができる。したがって、1プレス当たりのかしめ荷重を小さくできる。
【0058】
(5)パンチ8の横方向の長さは、フィン7の横方向の長さよりも短くなっており、かしめ固定する工程は、凸条5の延長方向に複数回に分けて実施されることによって、いっそう1プレス当たりのかしめ荷重を小さくできる。
【実施例2】
【0059】
以下、
図9、10を用いて、ベース2の凹溝3の内側面の傾斜角度θの最適範囲を求めた実験について説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0060】
はじめに、
図9を用いてフィン7の傾斜角度θを定義する。傾斜角度θは、入口側が狭い逆テーパのときにθは負(マイナス)の値と定義し、入口側が広い正テーパのときにθは正(プラス)の値と定義する。換言すると、凹溝3の内側面が凹溝3の底部に向かって倒れている状態のときにθ<0とする。
【0061】
実験では、幅120mmで長さ100mmのベースに深さ2.5mmの凹溝3を形成した。この凹溝3に高さ100mmのフィン7を挿入し、かしめ固定して、フィン高さ100mm先端における位置ずれ量(mm)を計測して傾きとした。例えば、傾斜角度θ=−1°は、傾き0.04mmに相当する。
【0062】
表1、
図10に実験結果を示している。表1、
図10には、溝角度が−2°から2°の範囲で計測したフィン高さ100mmにおける傾きを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
以下、本実施例の効果について説明する。実験結果についても考察する。
【0065】
(1)本実施例のヒートシンク1は、凹溝3の断面が、コ字状に形成されており、入口側が狭く、かつ、底側が広い、逆テーパ形状にされていることによって、フィン7を略垂直に固定できるようになる。
【0066】
すなわち、ベース2は押出成形されるため、凹溝3の断面寸法には誤差が避けられない。このため、凹溝3を垂直(傾斜角度θ=0°)に設計すると、テーパ形状(入口側が広い形状)の凹溝3が形成されるおそれがある。このようなテーパ形状の凹溝3にフィン7をかしめ固定すると、傾斜に即応してフィン7が傾斜することになる。
【0067】
そこで、あらかじめ凹溝3の内側面を倒して逆テーパ形状に設計しておくことで、テーパ形状となることを防止している。ただし、テーパ形状にすると凹溝3の内側面が内側に倒れ過ぎてしまうおそれがある。しかし、その場合でも、かしめ固定する工程において、傾いて挿入されたフィン7をパンチ8の上部側面によって押し戻すことになる。したがって、フィン7の傾斜を抑えることができる。
【0068】
(2)逆テーパ形状にされた凹溝3の内側面の傾斜角度θは、−2°から0°の範囲にされていることによって、フィン7の傾斜を最小限に抑えることができる。
【0069】
すなわち、表1、
図10に示すように、傾斜角度θが−2°から0°の範囲では、傾きは平均値で0.1〜0.3mmになり、最大値でも0.2〜0.5mmとなる。これに対して、傾斜角度θが0.5°から2°の範囲では、傾きは平均値で1.8〜5.0mmとなり、最大値で2.1〜5.2mmとなる。
【0070】
このように、傾斜角度θが−2°から0°の範囲にあることによって、フィン7先端での位置ずれ量を小さくできる。
【0071】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例3】
【0072】
以下、
図11A〜18を用いて、実施例1、2とは別の形態のヒートシンク1A〜1Hについて説明する。なお、実施例1、2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0073】
(構成)
前提として、本実施例のヒートシンク1A〜1Hは、実施例1で説明したヒートシンク1の構成を基本構成として備えている。すなわち、本実施例のヒートシンク1A〜1Hは、複数の凹溝3及び複数の凸条4、5が交互に設けられたベース2と、凹溝3の溝幅よりも薄い板状に形成された複数のフィン7と、を備えている。そして、各凹溝3内に各フィン7(7A、7B、7C、7D、7E)の基端部71が挿入されるとともに、各フィン7の一方側の凸条5のみに各フィン7側に突出する突出部51が形成されて、各フィン7の基端部71が、各フィン7の一方側の凸条5の突出部51と各フィン7の他方側の凸条4の側面41との間でかしめ固定されている。
【0074】
そして、本実施例のヒートシンク1A〜1Hは、基本構成とは別に以下のような特徴を備えている。
【0075】
図11A、11Bに示すヒートシンク1Aは、フィン7の上端に段差を設けた別の実施形態である。
図11Aは、熱源91、92に対応して温度の均一化を図った例である。この実施形態では、複数のフィン7は、高いフィン7Aと低いフィン7Bとから構成される。そして、高いフィン7Aの一群と低いフィン7Bの一群とを、熱源91、92の発熱量に対応して分けて配置している。すなわち、発熱量が多い熱源91の裏側には高いフィン7Aを配置し、発熱量が少ない熱源92の裏側には低いフィン7Bを配置する。
【0076】
図11Bは、他部品93との干渉を回避した例である。この実施形態では、複数のフィン7は、高いフィン7Aと低いフィン7Bとから構成される。そして、高いフィン7Aの一群と低いフィン7Bの一群とを、ベース2上方の他部品93との干渉を回避するように分けて配置している。すなわち、他部品93が存在する側に低いフィン7Bを配置し、他部品93が存在しない側に高いフィン7Aを配置する。
【0077】
図12に示すヒートシンク1Bは、フィン7の上端に千鳥状の凹凸を設けた別の実施形態である。この実施形態では、複数のフィン7は、高いフィン7Aと低いフィン7Bとから構成される。そして、高いフィン7Aと低いフィン7Bとを交互に配置することによって、複数のフィン7の上端の包絡面に千鳥状の凹凸が形成されている。この千鳥状の凹凸が形成された包絡面の上方には、ファン94が設置される。
【0078】
図13に示すヒートシンク1Hは、フィン7の高さが徐々に変化することによって、フィン7の上端の包絡面に階段状の傾斜を設けた別の実施形態である。この実施形態では、複数のフィン7は、高いフィン7から低いフィン7まで高さの異なるフィン7によって構成される。そして、高いフィン7から低いフィン7へと順にベース2に配置することによって、複数のフィン7の上端の包絡面に階段状の傾斜が設けられる。
【0079】
図14に示すヒートシンク1Cは、ベース2を部分的に厚く形成した別の実施形態である。すなわち、熱源91をベース2にビス61、61で固定する際に、ビス穴の長さを確保するために、フィン7が配置される側のベース2表面に厚い部分6を設けている。そして、厚い部分6のフィン7を短くすることで、フィン7の上面を面一に揃えている。
【0080】
図15に示すヒートシンク1Dは、厚いフィン7Cと薄いフィン7Dとを組み合わせた別の実施形態である。すなわち、厚いフィン7Cを最も外側に配置し、内側に薄いフィン7Dを配置する。
【0081】
図16に示すヒートシンク1Eは、フィン7の間隔がベース2内の位置によって異なる別の実施形態である。すなわち、熱源91に近い部分ではフィン7の配置間隔を密にし、熱源91から遠い部分ではフィン7の配置間隔を疎にする。
【0082】
さらに、フィンの厚みを変えつつ配置間隔を変えることもできる。例えば、最も外側のフィンの厚みを厚くしつつ、フィンの配置間隔を熱源の近くで密にすることもできる。
【0083】
図17に示すヒートシンク1Fは、フィン7が2つのビード部72、72を有する別の実施形態である。ビード部72は、帯状の薄い突出部であり、型押加工などによって形成される。ビード部72は、フィン7の基端部71側から先端側に向かって半分以上の高さまで伸びている。なお、ビード部の数や配設方向は本実施形態に限定されない。例えば、ビード部は、1本でも5本でもよいし、横方向に配設してもよいし、斜め方向に配設してもよい。
【0084】
図18に示すヒートシンク1Gは、フィン7Fが少なくとも1つのエンボス部73を有する別の実施形態である。エンボス部73は、円形の薄い突出部であり、型押加工などによって形成される。エンボス部73は、フィン7の全面に略均等に千鳥状に配置されている。なお、エンボス部73の形状、数、配置は本実施形態に限定されない。
【0085】
(効果)
次に、本実施例のヒートシンク1A〜1Hの奏する効果をそれぞれ説明する。
【0086】
(1)ヒートシンク1Aの複数のフィンは、高いフィン7Aと低いフィン7Bとから構成され、複数のフィン7の上端の包絡面に段差が形成されている。このため、熱源91、92に合わせてフィン7の高さを変えることによって、温度を均一化できる。さらに、ベース2の上方に他部品93が存在しても、容易に回避することができる。
【0087】
(2)ヒートシンク1Bの複数のフィンは、高いフィン7Aと低いフィン7Bとから構成され、複数のフィン7の上端の包絡面に千鳥状の凹凸が形成されている。このため、フィン7A、7Bの上方にファン94が設置される場合に、目詰まりを軽減できる。
【0088】
(3)ヒートシンク1Hの複数のフィン7は、高いフィン7から低いフィン7まで異なる高さのフィン7によって構成され、複数のフィン7の上端の包絡面に階段状の傾斜が設けられる。このため、フィン7の上方にファン(不図示)が配置される場合に、目詰まりを軽減できる。また、ベース2の上方に他部品(不図示)が存在しても、容易に回避することができる。
【0089】
(4)ヒートシンク1Cのベース2は、熱源91の固定用ビス61を取り付けるために、複数のフィン7が配置される表面から面外に突き出た厚い部分6を有している。このように厚い部分6を有していても、フィン7の高さを部分的に低くすることによって、フィン7の上端の包絡面に段差を生じることなく、平面に形成できる。
【0090】
(5)ヒートシンク1Dの複数のフィン7は、厚いフィン7Cと薄いフィン7Dとから構成されている。このため、必要な強度を備えつつ、冷却効率の優れたヒートシンク1になる。
【0091】
(6)ヒートシンク1Eの複数のフィン7の配置間隔が、ベース2内の位置によって異なっている。このため、熱源91の配置に応じてフィン7の配置間隔を変えることで、最適なフィン7配置を実現できる。
【0092】
(7)ヒートシンク1Fのフィン7Eは、少なくとも1つのビード部72を有している。このため、フィン7Eの剛性を高めることができる。これによって、フィン7Eを薄く形成しても、フィン7Eが共振することを防止できる。
【0093】
(8)ヒートシンク1Gのフィン7Fは、少なくとも1つのエンボス部73を有している。このため、フィン7Fの剛性を高めることができる。これによって、フィン7Fを薄く形成しても、フィン7Fが共振することを防止できる。
【0094】
以上(1)〜(8)に説明したように、本実施例のヒートシンク1A〜1Hは、様々な特徴をそなえている。このようなヒートシンク1A〜1Hは、実施例1に示す基本構成を備えていることによって実現可能である。
【0095】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【実施例4】
【0096】
以下、
図19を用いて、本発明のヒートシンク1の熱特性の計算結果について説明する。なお、実施例1〜3で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0097】
計算では、実施例2と同様に、幅120mm、長さ100mmのベースに高さ100mmのフィン7を挿入してかしめ固定した状態を想定して熱特性を計算した。
【0098】
比較のために、本実施例のヒートシンク1に加えて、従来技術(特許文献1、2参照)のヒートシンク11に相当する条件でも風速−熱抵抗の関係を計算した。本実施例のヒートシンク1、従来技術のヒートシンク11の(フィン間隔(mm)、フィン肉厚(mm)、フィン枚数)は、それぞれ、(1.9、1.2、38)、(3.2、0.8、29)である。なお、フィン間隔(mm)は、フィン7の面間の距離をいう。
【0099】
図19は、風速0.5(m/s)から5.0(m/s)の熱抵抗の計算値(K/W)を示している。
図19から読み取れるように、本実施例のヒートシンク1は、従来技術のヒートシンク11と比べて、優れた熱特性を備えている。具体的にいうと、風速3m/s時には、従来技術のヒートシンク11よりも約35%特性が向上している。
【0100】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0101】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0102】
例えば、実施例1〜4では、凹溝3の内側面を逆テーパ形状に形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ほとんど誤差なく凹溝を形成できる場合には、内側面は垂直に設計することもできる。
【0103】
また、実施例1〜4では、ベース2に対してフィン7を一方向にかしめ固定する場合について説明したが、すべてのフィン7を一方向にかしめ固定することに限定する意図はない。例えば、ベース2の中央から、一方側に向かって半分のフィン7をかしめ固定し、ベース2を反転させたうえで残りの半分のフィン7をかしめ固定することも可能である。