(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヒートポンプ装置および有機ランキンサイクル装置には、冷媒の作動温度が170℃を超える高温となるものがある。HFO系冷媒およびHCFO系冷媒は高温環境で熱分解され、その結果、酸が生じる。そのため、HFO系冷媒およびHCFO系冷媒は、作動温度が高温となる環境下で使用できないという課題がある。
【0008】
特許文献1に記載の冷却サイクル装置は、60℃程度の温度環境での使用が想定されている。よって、特許文献1に記載の吸着器は、170℃を超える高温環境下で使用できない。そのため、冷媒の作動温度が170℃を超える冷媒循環装置には、特許文献1に記載の技術を転用できない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、作動温度が高温となる環境下でHFOまたはHCFOを冷媒として用いても、安定的な熱サイクルを維持できるヒートポンプ装置および有機ランキンサイクル装置、ならびに該装置における冷媒循環方法および酸抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の冷媒循環装置、冷媒循環方法および酸抑制方法は以下の手段を採用する。
本発明は、分子構造中に炭素−炭素二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンを含む冷媒が充填され、冷媒循環回路中に、前記冷媒の作動温度が175℃以上となる領域を有する冷媒循環装置であって、前記冷媒の温度が175℃以上になりえる領域に、前記冷媒中で発生する酸濃度の上昇を抑制する酸抑制部が設けられ、前記酸抑制部が、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、亜鉛およびSUS、からなる群から選択される少なくとも2種の材料
がそれぞれ単体で混在した構造体を主体とする酸抑制材を含むことを特徴とする冷媒循環装置を提供する。
【0011】
本発明は、分子構造中に炭素−炭素二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンを含む冷媒が充填され、冷媒循環回路中に、前記冷媒の作動温度が175℃以上となる領域を有する冷媒循環装置において、前記冷媒の温度が175℃以上になりえる領域に、前記冷媒中で発生する酸濃度の上昇を抑制する酸抑制部を設け、前記酸抑制部が、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、亜鉛およびSUS、からなる群から選択される少なくとも2種の材料
がそれぞれ単体で混在した構造体を主体とする酸抑制材を含むよう構成し、前記冷媒を前記酸抑制材と接触させる酸抑制方法を提供する。
【0012】
本発明は、分子構造中に炭素−炭素二重結合を有するハイドロフルオロオレフィンまたはハイドロクロロフルオロオレフィンを含む冷媒が充填され、冷媒循環回路中に、前記冷媒の作動温度が175℃以上となる領域を有する冷媒循環装置における冷媒循環方法であって、前記冷媒の温度が175℃以上になりえる領域に、前記冷媒中で発生する酸濃度の上昇を抑制する酸抑制部を設け、前記酸抑制部が、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、亜鉛およびSUS、からなる群から選択される少なくとも2種の材料
がそれぞれ単体で混在した構造体を主体とする酸抑制材を含むよう構成し、前記冷媒を前記酸抑制材と接触させる冷媒循環方法を提供する。
【0013】
本願発明者らは、175℃以上の高温環境では、ハイドロフルオロオレフィン(またはハイドロクロロオレフィン)が分解され、酸(フッ化水素または塩化水素)が生成されやすくなること、および、生成された酸がハイドロオレフィン(またはハイドロクロロオレフィン)の分解を加速させることを見出した。本発明によれば、酸抑制部を設けることで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。それにより、冷媒が熱分解しやすい高温領域において、酸に起因した冷媒の加速度的な分解を抑制し、ライフサイクル上実用的な熱物性を確保できる。冷媒循環において、冷媒は、加熱・冷却されてもよいし、加圧・減圧されてもよい。
【0014】
本発明によれば、酸抑制材の材料を上記から選択することで、175℃以上の高温環境下であっても、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。特に、前記酸抑制材は、銅、鉄、およびアルミニウムを混在させた構成物であることが好ましい。
【0015】
上記発明の一態様において、前記酸抑制材が、ポーラス構造体、メッシュ構造体、または、ひだ状構造体であることが好ましい。
【0016】
酸抑制材を上記構造体とすることで、冷媒と酸抑制材との接触面積が大きくなる。それによって、冷媒中の酸濃度の上昇をより抑制できるようになる。
【0017】
上記発明の一態様において、冷媒循環装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮された冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張させた冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、前記酸抑制部が、前記圧縮機と前記凝縮器との間に設けられ得る。
【0018】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を順次接続してなる冷媒循環回路において、圧縮機から凝縮器までの間は、高温・高圧環境であり、冷媒がガス体として存在する。ハイドロオレフィンは、高温環境で分解反応が進みやすい傾向がある。上記一態様によれば、圧縮機と凝縮器との間に酸抑制部を設けることで、冷媒中の酸濃度が上昇することを効率的に抑制できる。
【0019】
上記発明の一態様において、前記酸抑制部は、前記凝縮器と前記膨張弁との間に設けられ得る。
【0020】
冷媒循環装置において、冷媒は、凝縮器により凝縮され、液体となる。液化された冷媒は、ガス体であるときよりも体積が小さくなる。上記発明の一態様によれば、凝縮器と膨張弁との間に酸抑制部を設けることで、より多くの冷媒が酸抑制材に接触できる。
【0021】
上記発明の一態様において、前記酸抑制部は、前記凝縮器に組み込まれてもよい。
【0022】
冷媒循環装置の構成要素には冷媒による圧力がかかる。そのため、冷媒循環装置の構成要素は、冷媒からの圧力に耐えうる剛性を備えている必要がある。上記発明の一態様によれば、酸抑制部を凝縮器に組み込むことで、新たな耐圧容器を設ける必要がなくなる。それにより、冷媒循環装置を軽くできる。
【0023】
上記発明の一態様において、冷媒循環装置は、前記冷媒を圧送するポンプと、圧送された冷媒を、熱源により加熱して蒸発させる蒸発器と、蒸発させた冷媒を膨張させる膨張機と、膨張させた冷媒を凝縮させる凝縮器と、を備え、前記酸抑制部が、前記蒸発器と前記膨張機との間に設けられ得る。
【0024】
ポンプ、蒸発器、膨張機、および凝縮器を順次接続してなる冷媒循環回路において、蒸発器から膨張機までの間は、冷媒がガス体として存在する高温・高圧環境であり、冷媒の分解が進みやすい領域である。上記一態様によれば、蒸発器と膨張機との間に酸抑制部を設けることで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【0025】
前記酸抑制部は、前記蒸発器と前記圧送するポンプとの間に設けられ得る。
上記一態様によれば、蒸発器と圧送するポンプとの間に酸抑制部を設けることで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の冷媒循環装置、酸抑制方法及び冷媒循環方法によれば、高温環境下に酸抑制部を備えることで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。それにより、作動温度が高温となる環境下でHFOを冷媒として用いても、冷媒の熱物性変化を抑え、安定的な冷媒循環回路を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係るヒートポンプ装置(冷媒循環装置)の一例を示す概略構成図である。
図2は、
図1の酸抑制部の側面図である。
図3は、
図1の酸抑制部の斜視図である。
【0029】
ヒートポンプ装置1は、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4、蒸発器5、および酸抑制部6を備えている。圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5は、順次、配管で接続され冷媒循環回路(ヒートポンプサイクル)を形成する。ヒートポンプ装置の各構成部材は、冷媒からの圧力に耐えうるよう設計されている。ヒートポンプサイクル内には、冷媒が充填されている。
【0030】
圧縮機2は、蒸発器5から流れてくる冷媒を吸入し、圧縮した後、該圧縮した冷媒を凝縮器3に吐出するものである。圧縮機2は、冷媒の温度を175℃以上に高めることができる。圧縮機2は、ターボ圧縮機などの公知のものを用いることができる。圧縮機2は、多段式圧縮機であってもよい。圧縮機は、複数設けられてもよい。
圧縮機2は、冷媒を吸入する吸入口、および、圧縮した冷媒を吐出する吐出口を備えている。圧縮機2の吐出口には、圧縮された冷媒ガスを凝縮器3へ向けて吐出するための吐出配管が接続されている。
【0031】
凝縮器3は、圧縮機2で圧縮された冷媒を冷却して凝縮し、冷媒液とすることができる。凝縮器3は、プレート式熱交換器またはシェルアンドチューブ型熱交換器などとされ得る。凝縮器3は、1つまたは複数設けられてよい。凝縮器3は、圧縮された冷媒が流入する流入配管と、凝縮器3で凝縮した冷媒を流出する流出配管とを備えている。
【0032】
膨張弁4は、凝縮器3で凝縮された冷媒液を断熱膨張させて減圧する弁である。膨張弁4としては、公知のものを用いることができる。
【0033】
蒸発器5は、膨張弁4により断熱膨張させた冷媒液を蒸発させるものである。蒸発器5は、プレート式熱交換器またはシェルアンドチューブ型熱交換器などとされ得る。
【0034】
ヒートポンプサイクル内に充填する冷媒は、分子構造中に炭素−炭素二重結合を有するハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)を含む。冷媒は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)を主成分とすることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、冷媒中に50GC%より多く、好ましくは75GC%より多く、更に好ましくは90GC%より多く含まれている。
【0035】
具体的に、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO1234yf)、(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO1234ze(Z))、(E)−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO1234ze(E))、(Z)−1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO1234ye(Z))、(E)−1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO1234ye(E))、(Z)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO1225ye(Z))、(E)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン(HFO1225ye(E))、(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz(Z))、または(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz(E))などとされる。
【0036】
具体的に、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO1233zd(E))、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO1233zd(Z))などとされる。
【0037】
ハイドロフルオロオレフィン(HFO)またはハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)の純度は、好ましくは97GC%以上、より好ましくは99GC%以上、さらに好ましくは99.9GC%以上とされる。
【0038】
冷媒は、添加物を含んでいてもよい。添加物は、ハロカーボン類、その他のハイドロフルオロカーボン類(HFC)、アルコール類、飽和炭化水素類などが挙げられる。
【0039】
<ハロカーボン類、および、その他のハイドロフルオロカーボン類>
ハロカーボン類としては、ハロゲン原子を含む塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等を挙げることができる。
ハイドロフルオロカーボン類としては、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、ジフルオロエタン(HFC−152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245ca)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソブタン(HFC−356mmz)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC−43−10−mee)等を挙げることができる。
【0040】
<アルコール>
アルコールとしては、炭素数1〜4のメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、テトラフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0041】
<飽和炭化水素>
飽和炭化水素としては、炭素数3以上8以下のプロパン、n−ブタン、i−ブタン、ネオペンタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、n−ヘキサン、およびシクロヘキサンを含む群から選ばれる少なくとも1以上の化合物を混合することができる。これらのうち、特に好ましい物質としてはネオペンタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。
【0042】
酸抑制部6は、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制するものである。酸は、具体的にフッ化水素または塩化水素である。酸抑制部6は、冷媒の温度が175℃以上となりえる領域に設けられる。本実施形態において、冷媒の温度が175℃以上となりえる領域は、圧縮機2から凝縮器3までの間とされる。酸抑制部6は、圧縮機2と凝縮器3とを接続する配管の少なくとも一部を兼ねている。酸抑制部6は、圧縮機2と凝縮器3とを接続する配管の全部を兼ねることが好ましい。
図2において、酸抑制部6は、圧縮機2の吐出口に直接接続されている。
【0043】
酸抑制部6は、第1酸抑制材を含む。
第1酸抑制材は、種類の異なる金属が混在する構成とされる。第1酸抑制材は、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、亜鉛およびSUS、からなる群から選択される少なくとも2種の材料を主体とする。主体とするとは、最も多く含まれる成分であることを意味する。銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、および亜鉛は、それぞれ金属の単体であることが好ましい。第1酸抑制材は、銅、鉄、およびアルミニウムの3種を混在させた構成物であることが更に好ましい。第1酸抑制材の材料を上記から選択することで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。材料を上記から選択した第1酸抑制材は、175℃以上の高温環境で使用できる。
第1酸抑制材は、酸抑制材の主体となる金属が表面にあらわになった状態で使用されるとよい。
【0044】
第1酸抑制材は、ポーラス構造体、メッシュ構造体、または、ひだ状構造体であることが好ましい。第1酸抑制材は、冷媒(ガス)の流れに沿って並行に複数枚設置される薄板状の構造であってもよい。第1反応抑制材が冷媒と接触できる面積を大きしてかつ流れを阻害しなくすることで、冷媒中の酸濃度の上昇を効率的に抑制し、且つ圧力損失も抑制できる。
【0045】
本実施形態において、第1酸抑制材は、酸抑制部6内に配置されている。例えば、
図3に示すように、第1酸抑制材7として円筒状に成形されたメッシュ構造体が、酸抑制部6の内部に配置される。
図3において、メッシュ構造体の外径は、酸抑制部(配管)6の内径と略同等とされる。
第1酸抑制材7は、冷媒が圧縮機2から吐出されて凝縮器3に吸入されるまでの間、常に冷媒と接触可能であるよう配置されることが好ましい。すなわち、圧縮機2から凝縮器3までを接続する配管(吐出配管および流入配管を含む)の全長にわたり、メッシュ構造体が配置されるとよい。
【0046】
酸抑制部6の内面は、第2酸抑制材で被覆されていることが好ましい。第2酸抑制材は、銅、鉄、アルミニウム、SUS、ニッケル、チタニウム、金属シリコン、ケイ素鋼、スズ、マグネシウム、および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種の材料を主成分とする。第2酸抑制材は、メッキ、塗布または蒸着などにより、酸抑制部6の内面を覆うことができる。それにより、第1酸抑制材が、酸抑制部6内の一部にしか配置されていない領域であっても、冷媒が酸抑制材に接触できる環境となる。
【0047】
次に、ヒートポンプ装置1の動作を説明する。
ヒートポンプ装置1に充填されている冷媒は、圧縮機2で圧縮されて高温・高圧のガス体とされる。圧縮された冷媒は、圧縮機2の吐出口から吐出される。ヒートポンプ装置1において、圧縮機2の吐出口で最も冷媒の温度が高くなる。
【0048】
吐出された冷媒は、酸抑制部6を経由して凝縮器3へと流れる。冷媒は、酸抑制部6を通過する際に、酸抑制材(第1酸抑制材、第2酸抑制材)と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度が上昇するのを抑えられる。
【0049】
酸抑制部6を経由した冷媒は、凝縮器3に吸入される。凝縮器3に吸い込まれた冷媒は、凝縮され、低温・高圧の冷媒液となる。
【0050】
凝縮された冷媒は、膨張弁4により断熱膨張させられ、低温・低圧の冷媒液となる。断熱膨張させた冷媒は、蒸発器5に供給され、蒸発し高温・低圧のガス体となる。蒸発した冷媒は、圧縮機2に吸い込まれ、以降同じサイクルが繰り返される。
【0051】
本実施形態に係るヒートポンプ装置1は、圧縮機2と凝縮器3との間に酸抑制部6を設けることで、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制し、安定的な熱サイクルを維持できる。
【0052】
図2のように、酸抑制部6を圧縮機2に直接接続した場合には、オーバーホール時、または冷媒交換時に、適宜、酸抑制部のメンテナンス(酸抑制材の交換など)を実施できる。
【0053】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係るヒートポンプ装置の構成は、特に説明がない限り、第1実施形態と同様とされる。
図4は、本実施形態に係るヒートポンプ装置(冷媒循環装置)の一例を示す概略構成図である。
図5は、酸抑制部の断面図である。
図6および
図7は、酸抑制材の一例を示す斜視図である。
【0054】
酸抑制部16は、圧縮機2から凝縮器3までを接続する配管に、直列に接続されている。酸抑制部16は、収容室11、冷媒入口12および冷媒出口13を有する。収容室11は、圧力容器構造とされ、内部に第1酸抑制材17が冷媒と接触可能に収容されている。収容室11は、ヒートポンプ装置10の凝縮器3またはその周辺に設置されるフレームに固定される。冷媒入口12は、バルブ14を介して吐出配管15に接続されている。冷媒入口12は、圧縮機2から吐出された冷媒の全量を収容室11へと導く。冷媒入口12は、冷媒(ガス)が入口部から滑らかに内部を旋回ながら流れる構造を有する。冷媒入口12の流路断面は、冷媒(ガス)の損失が発生しないよう十分な流路面積を有する構造とされる。冷媒出口13は、収容室11へと導かれた冷媒が第1酸抑制材17を経由して凝縮器3へと流れ出る位置に設けられている。冷媒出口13は、バルブ18を介して流入配管19に接続されている。
【0055】
酸抑制部16は、メンテナンス部を備えているとよい。
図5において、酸抑制部16には、メンテナンス部20が設けられている。メンテナンス部20は、酸抑制部16に設けられた開口を塞ぐ蓋部材とされる。蓋部材は、ボルトなどにより酸抑制部16に固定されている。
図4に示すように、メンテナンス部20’として、ディスチャージバルブが設けられていてもよい(簡略化のため、
図5では記載を省略した)。メンテナンス部20を設けることで、第1酸抑制材17を交換できるなど、酸抑制部16のメンテナンスが容易となる。
【0056】
第1酸抑制材17の材料は、第1実施形態と同様とされる。
第1酸抑制材17は、固定具などによって酸抑制部内に固定されていると良い。
図5では、第1酸抑制材17とメンテナンス部20との間に固定具22が設けられている。固定具22は、ばねなどとされる。第1酸抑制材17と冷媒出口13側の酸抑制部16との間には、別の固定具23が設けられている。別の固定具23は、パッキンまたはシール材などとされる。
【0057】
図6および
図7に、第1酸抑制材を例示する。
図6に示す第1酸抑制材17は、極細線のワイヤーメッシュを積層し、それを巻いた形状とされる。酸抑制部16に第1酸抑制材17を収容したときの、酸抑制部内の空間率は、冷媒の流れを阻害しない程度、例えば95%を超えるものされる。
図7に示す第1酸抑制材17は、多孔質構造の円筒ブロックとされる。
図7の第1酸抑制材17はスポンジ形状とされ、適度な剛性を有する固体とされる。「適度な剛性」とは、冷媒の流れを受けても、元の形状を維持し、冷媒流路を塞がない程度の硬さを意味する。
【0058】
酸抑制部16の内面は、第2酸抑制材で被覆されているとよい(不図示)。第2酸抑制材の材料は、第1実施形態と同様とされる。それにより、冷媒が酸抑制材と接触できる面積がより広くなる。
【0059】
吐出配管15および流入配管19の内面も、第2酸抑制材で被覆されているとよい。それにより、吐出配管15および流入配管19の内面が酸抑制部の一部として作用する。
【0060】
本実施形態に係るヒートポンプ装置10では、圧縮機2から吐出された冷媒の全量が、酸抑制部16に導かれる。冷媒は酸抑制部16を通過する際に、酸抑制材と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【0061】
酸抑制部16を経由した冷媒は、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5を経由して圧縮機2に吸い込まれ、以降同じサイクルが繰り返される。
【0062】
(変形例)
図8に、本実施形態に係るヒートポンプ装置(冷媒循環装置)の別の例を示す概略構成図である。本変形例の構成は、酸抑制部の接続位置が異なる以外、第2実施形態と同様とする。
【0063】
酸抑制部26は、圧縮機2から凝縮器3までを接続する配管に、並列に接続されている。冷媒入口は、バルブ24を介して配管の上流側Aに接続されている。冷媒入口は、圧縮機2から吐出された冷媒の一部または全部を収容室へと導くことができる。収容室に導く冷媒量は、バルブ24の開閉によって調整できる。冷媒出口は、収容室へと導かれた冷媒が酸抑制材を経由して凝縮器3へと流れ出る位置に設けられている。冷媒出口は、バルブ28を介して配管の下流側Bに接続されている。小さなサーキットを作成することで、酸抑制部のメンテナンスが容易となる。
【0064】
冷媒出口は、冷媒が凝縮器3に直接吸入されるよう設計されてもよい。
【0065】
本実施形態に係るヒートポンプ装置では、圧縮機2から吐出された冷媒の一部が、分流されて酸抑制部26に導かれる。例えば、圧縮機2と凝縮器3とをつなぐ配管のA地点から、ヒートポンプサイクルを循環する冷媒の2体積%を分流し、収容室へと導く。収容室に導かれた冷媒は、酸抑制材(第1酸抑制部、第2酸抑制部)と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【0066】
酸抑制部26を経由した冷媒は、凝縮器3、膨張弁4および蒸発器5を経由して圧縮機2に吸い込まれ、以降同じサイクルが繰り返される。
【0067】
〔第3実施形態〕
本実施形態に係るヒートポンプ装置の構成は、凝縮器と膨張弁との間に、別途、酸抑制部が設けられる以外は、第1実施形態と同様とされる。
図9は、本実施形態に係るヒートポンプ装置(冷媒循環装置)の一例を示す概略構成図である。
【0068】
酸抑制部36は、凝縮器3と膨張弁4との間に直列に接続されている。
酸抑制部36は、収容室、冷媒入口、および冷媒出口を備えている。冷媒入口は、バルブ34を介して流出配管31に接続されている。冷媒入口は、凝縮器3から流出した冷媒の全量を収容室へと導く。収容室は、耐圧容器とされ、内部に第1酸抑制材が冷媒と接触可能に収容されている。第1酸抑制材の材料は、第1実施形態と同様とされる。第1酸抑制材は、ポーラス構造体、メッシュ構造体、または、ひだ状構造体であることが好ましい。冷媒出口は、収容室に導かれた冷媒が、第1酸抑制材を介して膨張弁4へ向けて流出するよう設計されている。
【0069】
冷媒は、凝縮器3で凝縮されて液化する。液化された冷媒は、ガス体であるときよりも体積が小さくなる。凝縮器3と膨張弁4との間に酸抑制部36を設けることで、より多くの冷媒を酸抑制材と接触させることができる。
【0070】
酸抑制部36の内面は、第1実施形態と同様に、第2酸抑制材で被覆されているとよい。
凝縮器3から膨張弁4までをつなぐ配管の内面も、第2酸抑制材で被覆されているとよい。
【0071】
本実施形態に係るヒートポンプ装置30では、圧縮機2から吐出された冷媒は、酸抑制部6を経由して凝縮器3へと流れる。冷媒は、酸抑制部6を通過する際に、酸抑制材(第1酸抑制材、第2酸抑制材)と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度が上昇するのを抑えられる。酸抑制部6を経由した冷媒は、凝縮器3に吸入され、凝縮される。凝縮された冷媒は、凝縮器3から流出して、酸抑制部36に導かれる。冷媒は酸抑制部36を通過する際に、酸抑制材と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【0072】
酸抑制部36を経由した冷媒は、膨張弁4および蒸発器5を経由して圧縮機2に吸い込まれ、以降同じサイクルが繰り返される。
【0073】
なお、本実施形態では、酸抑制部36が凝縮器3と膨張弁4とをつなぐ配管に直列に接続させたが、第2実施形態の変形例と同様に、並列に接続してもよい。
【0074】
〔第4実施形態〕
本実施形態に係る冷媒循環装置は、酸抑制部が、別途、凝縮器に組み込まれている。その他、説明のない構成は、第1実施形態と同様とされる。
【0075】
図10に、本実施形態に係る冷媒循環装置(ヒートポンプ装置)の凝縮器の縦断面図を示す。凝縮器43はシェルアンドチューブ式の熱交換器とされる。凝縮器43は、複数の伝熱管41、冷媒入口管42、冷媒出口管44を備えている。複数の伝熱管41は、水平に配設され、内部には冷却流体が流れる。冷媒は冷媒入口管42から入り、伝熱管41を流れる冷却流体と熱交換を行い、冷媒出口管44から流出する。本実施形態において酸抑制部46は、冷媒出口管44に設けられている。凝縮器43の出口部では、冷媒(液)は冷媒出口管44を液封する状態で存在するため、酸抑制部は冷媒(液)中に沈める形で設置される。酸抑制部46が冷媒の流れを阻害すると、最大負荷域の運転時において、凝縮器43に冷媒(液)が滞留し、ヒートポンプの性能を低下するなどの弊害が生じる。そのため、酸抑制部46は、十分な空間をもって設置されることが好ましい。酸抑制部46は、酸抑制材そのものである。酸抑制材は、第2実施形態の第1酸抑制材と同様のものを用いることができる。
【0076】
酸抑制部46を凝縮器43に組み込むことで、別途耐熱容器を設けなくてよいため、ヒートポンプ装置を軽くできる。
【0077】
なお、上記実施形態において、凝縮器は1つであるが、これに限定されず、凝縮器は複数設けられてもよい。凝縮器を2以上備える場合、第3実施形態および第4実施形態の酸抑制部は、一番上流側(圧縮機側)にある凝縮器から膨張弁までの間に設けることができる。例えば、圧縮機側から順に第1凝縮器、第2凝縮器および膨張弁を備えるヒートポンプ装置では、第1凝縮器と第2凝縮器との間に酸抑制部が設けられてもよい。
【0078】
〔第5実施形態〕
図11は、本実施形態に係る有機ランキンサイクル装置(冷媒循環装置)の一例を示す概略構成図である。
【0079】
有機ランキンサイクル装置50は、ポンプ52、蒸発器55、膨張機54、凝縮器53、および酸抑制部56を備えている。ポンプ52、蒸発器55、膨張機54および凝縮器53は、順次、配管で接続され冷媒循環回路(有機ランキンサイクル)を形成する。有機ランキンサイクル装置の各構成部材は、冷媒からの圧力に耐えうるよう設計されている。有機ランキンサイクル内には、冷媒として第1実施形態と同様のHFOが充填されている。
【0080】
ポンプ52は、凝縮器53から流れてくる冷媒を吸入した冷媒を、蒸発器55に向けて圧送するものである。
【0081】
蒸発器55は、圧送された低温・高圧の冷媒を、外部からの熱源を利用して加熱し、蒸発させることができる。熱源は、タービンまたはエンジンの排気などの廃熱とされ、冷媒の温度を175℃以上に高めることができる。蒸発器55は、ボイラまたはエバポレータなどとされ得る。
【0082】
膨張機54は、蒸発させた高温・高圧の冷媒を膨張させてタービン等を回転させ、発電機を駆動させ電力を発生させるものである。
【0083】
凝縮器53は、膨張機54で膨張された高温・低圧冷媒を冷却して凝縮し、冷媒液とすることができる。凝縮器53は、復水器などとされる。
【0084】
酸抑制部56は、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制するものである。酸抑制部56は、冷媒の温度が175℃以上となりえる領域に設けられる。本実施形態において、冷媒の温度が175℃以上となりえる領域は、蒸発器55から膨張機54までの間とされる。酸抑制部56は、蒸発器55と膨張機54とを接続する配管の少なくとも一部を兼ねている。酸抑制部56は、蒸発器55と膨張機54とを接続する配管の全部を兼ねることが好ましい。
【0085】
酸抑制部56は、第1実施形態と同様の第1酸抑制材を含む。
第1酸抑制材は、冷媒が蒸発器55から出て膨張機54に吸入されるまでの間、常に冷媒と接触可能であるよう配置されることが好ましい。すなわち、蒸発器55から膨張機54までを接続する配管の全長にわたり、第1酸抑制材が配置されるとよい。
【0086】
酸抑制部56の内面は、第1実施形態と同様に、第2酸抑制材で被覆されていることが好ましい。
【0087】
次に、有機ランキンサイクル装置50の動作を説明する。
有機ランキンサイクル装置50に充填されている冷媒は、蒸発器55において外部からの熱源により加熱され、高温・高圧の蒸気となる。有機ランキンサイクル装置50において、蒸発器55の出口で最も冷媒の温度が高くなる。
【0088】
蒸気は、酸抑制部56を経由して膨張機54へと流れる。冷媒は、酸抑制部56を通過する際に、酸抑制材(第1酸抑制材、第2酸抑制材)と接触することができる。それにより、冷媒中の酸濃度の上昇を抑制できる。
【0089】
冷媒は、膨張機54にて断熱膨張され、これによって発生する仕事によって、タービンを駆動させる。膨張した冷媒は、凝縮器53へと流れ、冷却されて液体となる。凝縮された冷媒は、ポンプ52に吸い込まれ、以降同じサイクルが繰り返される。
【0090】
<HFO中の酸濃度>
酸抑制材の効果を以下の試験で確認した。
試験は、JIS K2211 シールドチューブ試験に準拠した方法で実施した。
【0091】
冷媒は、HFO1234ze(Z)(セントラル硝子株式会社製、純度99.8%)を用いた。
【0092】
酸抑制材は、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、SUS304、SUS316、または、鉄と銅とアルミニウムとをそれぞれ同体積で混在させたものとした。
鉄は、JIS C 2504に規定する材質で、直径1.60mm、長さ50mmの試験片を用いた。銅は、JIS C 3102に規定する材質で、直径1.60mm、長さ50mmの試験片を用いた。アルミニウムは、JIS H 4040に規定する材質で、直径1.60mm、長さ50mmの試験片を用いた。SUS304およびSUS316は、JISオーステナイト系ステンレス鋼の試験片を用いた。酸抑制材は、試験前に脱脂処理および研磨処理を施し、新しいはだを出したものを使用した。
【0093】
Pyrex(登録商標)ガラス管(直径10mm×内径8mm×長さ200mm)に、冷媒0.5gおよび各酸抑制材の試験片を入れ、密封した。密封したガラス管を試験温度175℃〜250℃で14日間加熱した。試験片は、酸抑制材が1種類の金属である場合には3片、3種類の金属を混在させる場合には金属種毎に1片入れた。
【0094】
14日後の冷媒を、水素炎イオン化検出器(FID)を備えるガスクロマトグラフ(島津製作所製,GC−2010plus)、および、イオンクロマトグラフィー(IC,日本ダイオネクス社製,ICS−2100)にて分析した。また、試験前後に冷媒の外観を目視で確認した。
【0095】
比較対照として、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)を冷媒に用いて、同様の試験を実施した。
【0096】
FID分析結果、およびIC分析結果を表1に示す。
【表1】
【0097】
図12に、冷媒中のフッ素イオン濃度を示す。同図において、横軸は試験温度(℃)、縦軸は冷媒中のフッ素イオン(F
−)濃度(ppm)である。同図において、●は試料No.1,3,5,7に対応する。▲は、試料No.2,4,6,8に対応する。○は、冷媒HFC245fa/酸抑制材なしの試料に対応する。△は冷媒HFC245fa/酸抑制材Fe,Cu,Alを混在させた試料に対応する。HFC245fa中のフッ素イオン濃度は、いずれの試験温度でも5ppm以下であった。
【0098】
酸抑制材が無い場合(試料No.1,3,5,7)、試験温度が高くなるにつれて、HFO1234ze(Z)中のフッ素イオン濃度が上昇した。特に、試験温度が225℃を超えると、フッ素イオン濃度の増加は顕著となった。酸抑制材が無い場合、HFO1234ze(Z)中のフッ素イオン濃度は、試験温度175℃で6ppm、試験温度250℃で20ppmであった。
【0099】
一方、酸抑制材を入れた冷媒中のフッ素イオン濃度は、試験温度175℃(試料No.2)で3ppm、試験温度250℃(試料No.8)で5ppmとなった。酸抑制材を入れた冷媒中のフッ素イオン濃度は、試験温度が225℃を超えても、変化の傾きが大きく変わらなかった。
【0100】
次に、試験温度250℃の試料(No.7−14)に着目する。酸抑制材として金属の単品を用いた試料(試料No.9−13)のフッ素イオン濃度は、酸抑制材が無い試料(試料No.7)と同等もしくはそれよりも高かった。一方、3種の金属(鉄、銅及びアルミニウム)を混在させた試料(試料No.8)、及び、2種の金属(鉄及び銅)を混在させた試料(試料No.14)のフッ素イオン濃度は、他の試料(No.7,9〜13)よりも低く抑えられていた。
【0101】
HFC245faの純度は、試験温度によらず99.9GC%より高かった。
HFO1234ze(Z)の純度は、試料No.7(試験温度250℃)で75.2GC%まで低下したが、試料No.8(試験温度250℃)では96.3GC%を維持していた。試料No.14(試験温度250℃)では94.1GC%を維持していた。
【0102】
HFO1234ze(Z)は、熱分解されると、トルフルオロプロピンおよびフッ化水素になる。上記結果から、HFO中に二種または三種の金属を混在させた酸抑制材を入れることで、HFO中のフッ素イオン濃度(すなわちフッ化水素濃度)の上昇が抑えられるとともに、HFOが安定化されることが確認された。
【0103】
三種の金属を混在させた酸抑制材を用いた試料において、試験前後の冷媒の外観に変化はなく、冷媒およびガラス管は無色透明を維持し、スラッジなどの不要物の生成もみられなかった。