特許第6138967号(P6138967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138967
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】バイポーラ括約筋切開器
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-550765(P2015-550765)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公表番号】特表2016-501685(P2016-501685A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013077800
(87)【国際公開番号】WO2014105950
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年8月19日
(31)【優先権主張番号】61/746,162
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511193846
【氏名又は名称】クック・メディカル・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】マクローホーン, タイラー, エバンス
(72)【発明者】
【氏名】サーティ, ヴィルー, シー.
(72)【発明者】
【氏名】シグモン, ジョン, クラウダー
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス, ミッシェル, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーク, ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジタール, ショーン, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シスケン, リチャード, ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャーム, リチャード, ダブリュー.
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−051288(JP,A)
【文献】 特表2008−529610(JP,A)
【文献】 米国特許第06097976(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0157392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療部位において括約筋切開術を行うためのバイポーラ括約筋切開器であって、
実質的に透明な材料で形成された遠位部分を有する細長い管状部材と、
前記管状部材内に配置されたカッティングワイヤであって、前記管状部材の遠位部分において前記管状部材から半径方向外側に突出して切刃を形成する部分を有するカッティングワイヤと、
前記管状部材内に配置されかつその中で長手方向に延在するワイヤガイド内腔と、
帰還経路であって、
前記管状部材の遠位部分外面を周方向で部分的に覆うように配置されて弧状の横断面形状を有する導電性材料部分であって、前記弧状の横断面形状が前記カッティングワイヤの前記切刃の半径方向向きに対して周方向でオフセットされて、前記弧状の横断面形状の周方向での一方の端部と前記カッティングワイヤとの間の周方向での間隔を他方の端部と前記カッティングワイヤとの間の周方向での間隔より大きくして、前記カッティングワイヤと前記一方の端部との間に前記ワイヤガイド内腔への視覚的アクセスを提供するようにされている、導電性材料部分と、
前記導電性材料部分に電気的に結合された帰還ワイヤであって、前記管状部材内に配置された帰還ワイヤと、
を備え、
前記導電性材料部分が導電性インク部分を含む、帰還経路と、
を具備するバイポーラ括約筋切開器。
【請求項2】
前記管状部材の前記外面の周囲に配置された導電性カニューレであって、前記導電性インク部分を前記帰還ワイヤに電気的に結合する導電性カニューレ
をさらに具備する、請求項1に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項3】
前記導電性インク部分の少なくとも一部が、前記導電性インク部分を前記帰還ワイヤに電気的に結合するように、前記導電性カニューレの少なくとも一部の上にさらに配置されている、請求項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項4】
前記導電性カニューレの上に配置された収縮チューブ
をさらに具備する、請求項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項5】
前記導電性インク部分を前記導電性カニューレに電気的に結合するように内面が導電性材料でコーティングされたチューブ
をさらに具備する、請求項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項6】
前記外面から、前記帰還ワイヤの遠位端と連通している前記管状部材内の位置まで延在する前記管状部材の切削部
をさらに具備し、
前記導電性インク部分が、前記帰還ワイヤに電気的に結合されるように前記切削部内に延在している、請求項1に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項7】
前記細長い管状部材内に配置されかつその中で長手方向に延在する、前記ワイヤガイド内腔以外の内腔
をさらに具備し、
前記内腔が2つ以上の機能を有し、前記機能のうちの1つが、前記帰還ワイヤを収容することである、請求項1〜のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項8】
前記内腔が注入内腔を含み、前記2つ以上の機能のうちの1つの機能が、治療部位に造影剤を送達することである、請求項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項9】
前記帰還ワイヤが、前記管状部材の一体部分である、請求項1〜のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項10】
前記細長い管状部材内に配置されかつ長手方向に延在する、前記ワイヤガイド内腔以外の内腔をさらに具備し、
前記内腔が単一の機能を有し、前記単一の機能が、前記帰還ワイヤを収容することである、請求項1〜のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項11】
前記導電性インク部分が、前記カッティングワイヤの遠位端が前記管状部材に固定して取り付けられる固定点を越えて遠位側に延在している、請求項1〜10のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項12】
前記導電性インク部分の厚さが約500マイクロメートル以下であり、導電性インク部分が、約3マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲のサイズの導電性インク粒子を含み、前記導電性インク部分が約10,000センチポイズ以下の粘度を有し、前記導電性インク部分が、約20オーム以下の長手方向抵抗を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項13】
前記帰還経路を電源の帰還ポートに電気的に結合するケーブルをさらに具備し、
前記ケーブルが第1ワイヤおよび第2ワイヤを含み、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの遠位端において互いに短絡し、
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤが、前記遠位端において前記帰還ワイヤの近位端に接続されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項14】
抵抗素子が前記第1ワイヤまたは前記第2ワイヤのうちの一方に含まれ、前記抵抗素子の抵抗値により、前記電源、分割型対極板を使用しているものとして前記バイポーラ括約筋切開器を認識させるようにされた、請求項13に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項15】
抵抗素子が前記第1ワイヤまたは前記第2ワイヤのうちの一方に含まれ、前記抵抗素子の抵抗値により、前記電源、非分割型対極板または分割型対極板を認識させるようにされた、請求項13に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【請求項16】
第1抵抗素子が前記第1ワイヤに含まれ、第2抵抗素子が前記第2ワイヤに含まれ、前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との和により、前記電源、前記バイポーラ括約筋切開器が非分割型対極板または分割型対極板を有することを認識させるようにされた、請求項13に記載のバイポーラ括約筋切開器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療デバイスに関し、より詳細には、バイポーラ括約筋切開器(sphincterotome)に関する。
【背景技術】
【0002】
括約筋切開器は、オッディ括約筋等の括約筋の切断を伴う、括約筋切開術を行うために使用される医療デバイスである。括約筋は、その収縮する性質を緩和し、1つまたは複数の医療デバイスが通過するのを可能にするために、切断する必要がある場合がある。たとえば、胆管結石または乳頭狭窄の形成等、胆道系で発生する問題を、胆道系内に送達される医療デバイスを用いて治療することができる。胆道系にアクセスするために、医療デバイスは、オッディ括約筋を通過する可能性がある。医療デバイスがオッディ括約筋を通過するのを容易にするために、括約筋を、括約筋切開器を用いて切断することができる。
【0003】
括約筋切開器は、一般に、カテーテル等の細長い管状部材と、括約筋を切断するために用いられるカッティングワイヤとを含む可能性がある。カッティングワイヤは、カテーテルの遠位部分を除き、カテーテルの内腔を通して延在することができ、カテーテルの遠位部分では、カッティングワイヤは、突出してカテーテルの外側に露出され得る。切刃とも呼ぶ場合があるその露出部分を用いて、括約筋を切断することができる。
【0004】
括約筋切開術は、一般に2部プロセス、すなわち、胆道系のカニュレーションと、カッティングワイヤを通して電流を送ることにより括約筋を切断すること(すなわち、電気手術)とを含む。胆道系のカニュレーションは、カテーテルの遠位部分を乳頭内に挿入することと、遠位部分および切刃を用いて乳頭の上方部分(すなわち、蓋(roof))を持ち上げることとを含むことができる。ピンと張ったカッティングワイヤを近位側に引っ張り、管状部材の遠位部分が曲がって弧を形成するようにすることによって、乳頭の蓋を持ち上げることができる。カニュレーションの後、切刃に電流を与えて括約筋を切断することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、治療部位において括約筋切開術を行うためのバイポーラ括約筋切開器が提供される。バイポーラ括約筋切開器は、細長い管状部材と、管状部材内に配置されたカッティングワイヤと、帰還経路とを含む。帰還経路は、管状部材の遠位部分において外面の上に配置された導電性材料部分と、導電性材料部分に電気的に結合された帰還ワイヤであって、管状部材内に配置された帰還ワイヤとを含む。導電性材料部分は、外面に、管状部材内で延在するワイヤガイド内腔への視覚的アクセスを提供する円周方向配置を有することができる。
【0006】
第2態様では、患者の体内の治療部位において括約筋切開術を行うためのバイポーラ括約筋切開器が提供される。バイポーラ括約筋切開器は、細長い管状部材と、カッティングワイヤであって、カッティングワイヤの切刃を除いて管状部材内に配置され、切刃が前記管状部材から突出している、カッティングワイヤと、第1帰還経路と、第1帰還経路から実質的に電気的に隔離された第2帰還経路とを含む。第1帰還経路は第1帰還ワイヤを含み、第2帰還経路は第2帰還ワイヤを備えている。第1帰還ワイヤおよび第2帰還ワイヤは、管状部材内で管状部材の遠位部分から近位部分まで長手方向に延在している。
【0007】
第3態様では、医療デバイスの細長い管状部材の外面に導電性インクを付着させる方法であって、細長い管状部材がフルオロポリマー材料を含む、方法が提供される。本方法は、細長い管状部材の外面に下塗インクを塗布するステップと、下塗インクの上に導電性インクを塗布するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】バイポーラ括約筋切開器の側断面図を示す。
図1A図1に示すバイポーラ括約筋切開器の遠位部分の代替実施形態の側断面図を示す。
図2】導電性インク部分の円周方向の向きを示す、図1のバイポーラ括約筋切開器の遠位部分の軸方向断面図を示す。
図3】導電性インク部分の代替的な円周方向の向きを示す、図1のバイポーラ括約筋切開器の遠位部分の軸方向断面図を示す。
図4】複数の機能を有する内腔内に配置された帰還ワイヤを示す、帰還経路の結合領域の近位側で取り出された図1のバイポーラ括約筋切開器の軸方向断面図を示す。
図5】帰還ワイヤがバイポーラ括約筋切開器の管状部材に埋め込まれている、図4に示すバイポーラ括約筋切開器の断面の代替実施形態の軸方向断面図を示す。
図6】帰還ワイヤが、帰還ワイヤを収容するという唯一の機能を有する内腔内に配置されている、図4に示すバイポーラ括約筋切開器の断面の別の代替実施形態の軸方向断面図を示す。
図7】帰還経路が単一帰還経路である、図1のバイポーラ括約筋切開器の遠位部分の側面図を示す。
図8】帰還経路が2つの帰還経路を含み、2つの導電性インク部分を分離する間隙が実質的に直線方向に延在している、図1の括約筋切開器の遠位部分の代替実施形態の側面図を示す。
図9】帰還経路が2つの帰還経路を含み、間隙がジグザグパターンを有する、図1の括約筋切開器の遠位部分の第2代替実施形態の側面図を示す。
図10】帰還経路が2つの帰還経路を含み、間隙が正弦波パターンを有する、図1の括約筋切開器の遠位部分の第3代替実施形態の側面図を示す。
図11】ケーブルであって、ケーブルにおける単一の帰還ワイヤを単一ワイヤに電気的に結合するケーブルの断面図を示す。
図12】ケーブルが、各々が帰還ワイヤに電気的に結合されている2本のワイヤを含む、図11のケーブルの代替実施形態の断面図を示す。
図13】ケーブルが、互いに短絡し単一帰還ワイヤに電気的に結合されている2本のワイヤを含む、図11のケーブルの第2代替実施形態の断面図を示す。
図14】ケーブルが2本のワイヤを含み、ワイヤのうちの1本が抵抗素子を含む、図11のケーブルの第3代替実施形態の断面図を示す。
図15】ケーブルが2本のワイヤを含み、ワイヤの各々が抵抗素子を含む、図11のケーブルの第4代替実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、バイポーラ構成を有する、またはバイポーラ括約筋切開器と呼ばれる括約筋切開器のさまざまな実施形態について記載する。括約筋切開器は、カテーテル等の細長い管状部材と、括約筋切開術を行う時に括約筋を切断するために使用されるカッティングワイヤとを含むことができる。カッティングワイヤを、電気手術器(ESU)等の高周波(RF)発生器に結合しかつ/または電気的に連通させることができる。RF発生器は、起動すると、カッティングワイヤに電流を供給することができ、それによりカッティングワイヤは括約筋を切断することができる。電流は、カッティングワイヤに沿って括約筋を通り、その後帰還経路に沿って進むことができ、それにより回路が完成する。
【0010】
モノポーラ構成を有する括約筋切開器の場合の帰還経路は、非分割型(solid)対極板または分割型対極板であり得る対極板を含むことができ、それを、括約筋切開術を受けている患者の大腿部に配置することができる。バイポーラ括約筋切開器の場合の帰還経路は、モノポーラ括約筋切開器とは異なる可能性があり、それは、カッティングワイヤ(すなわち、アクティブ経路)のように、帰還経路を、カテーテルに取り付け、カテーテルと一体化し、カテーテル内に配置し、またはカテーテルの一部として含めることができるためである。
【0011】
図1は、例としてのバイポーラ括約筋切開器100の部分側断面図を示す。例としてのバイポーラ括約筋切開器100は、近位部分104が遠位部分106まで延在している細長い管状部材102を含むことができる。括約筋を切断するために用いられるカッティングワイヤ108を、管状部材102の(図1には示さない)内腔内において近位部分104から遠位部分106まで配置することができる。遠位部分106において、カッティングワイヤ108は、管状部材102内から、管状部材102の第1開口部110を通って管状部材102の外側まで延在または突出することができる。管状部材102の外側では、カッティングワイヤ108は、管状部材102と実質的に平行に、第1開口部110の遠位側の管状部材102の第2開口部または固定点112まで長手方向に延在することができ、第2開口部又は固定点112において、カッティングワイヤ108の遠位端は管状部材102に再入し、かつ/または固定して取り付けられ得る。カッティングワイヤ108の露出部分114を切刃と呼ぶことができ、それは、括約筋を切断するカッティングワイヤ108の一部であり得る。
【0012】
バイポーラ括約筋切開器100は、帰還経路124をさらに含むことができる。バイポーラ構成では、帰還経路124を、管状部材102に取り付け、接着し、一体化させ、その中に配置し、またはその一部として含めることができる。バイポーラ括約筋切開器100の実施形態例では、帰還経路124は、管状部材102の遠位部分106の外面の上に配置されるかまたはそれを覆う導電性材料部分126と、導電性材料部分126に電気的に結合された帰還ワイヤ132とを含むことができる。
【0013】
帰還経路124の1つの実施形態例では、導電性材料部分126を、導電性インクから作製することができる。導電性材料部分126は、以下、導電性インク部分126と呼ぶが、インク以外の導電性材料を使用することができる。導電性インク部分126を、遠位部分106において管状部材102の外面に取り付けることができる。いくつかの実施形態例では、導電性インク部分126を構成する導電性インク(または、別法として、導電性塗料または導電性コーティングと呼ぶ)は、約20マイクロメートル(ミクロン)〜40マイクロメートルの範囲の厚さを有することができるが、最大500ミクロンを含む他の厚さを使用することができる。導電性インクの粒子は、約3ミクロン〜30ミクロンの範囲のサイズを有することができる。また、それらの粒子を、銀から作製することができ、かつ/またはポリエステルバインダ内に懸濁させることができる。さらに、導電性インクは、約250センチポイズ(cP)の粘度を有することができるが、最大約10,000cPを含む他の粘度を使用することができる。また、導電性インク部分126の抵抗は、長手方向に測定した場合、約ゼロ(または実質的にゼロ)から10オームの範囲であり得る。上述した特性のすべてを含む場合もあれば含まない場合もある導電性インク例は、Conductive Compounds,Inc.のAG−510 Silver Filled Electrically Conductive Screen Printable Ink/Coatingであり得る。
【0014】
導電性インク部分126は、固定点112を超えて遠位側に延在することができる。導電性インク部分126を、固定点を超えて遠位側に延在させることにより、帰還経路124が括約筋(または括約筋の近くの組織)と接触して治療部位において適切な接続をもたらすことを確実にするかまたはその可能性を増大させることができる。さらに、導電性インク部分126は、遠位先端128の前の位置まで、または、ワイヤガイド内腔内のワイヤガイドが帰還経路124の一部とならないかまたは帰還経路124から隔離されるように、遠位先端128における(図1には示さない)ワイヤガイド内腔の開口部から十分に離れて、遠位側に延在することができる。さらに、導電性インク部分126は、第1開口部110を越えて近位側に延在することができる。
【0015】
導電性インク部分126を、帰還経路124を形成しかつ/またはその一部となることができる帰還ワイヤ132に、電気的に結合することができる。帰還ワイヤ132は、管状部材102内で、帰還ワイヤ132が導電性インク部分126に電気的に結合される場所から近位部分104まで延在することができる。帰還ワイヤ132は、管状部材102内で、カッティングワイヤ108に対して概してまたは実質的に平行に延在することができる。さらに、帰還ワイヤ132は、管状部材102内で、カッティングワイヤ108に対してさまざまな位置で延在することができる。図1は、アクティブワイヤ108および帰還ワイヤ132を、概して同じ断面で示している。しかしながら、図4図6に示すように、帰還ワイヤ132を、管状部材102内においてカッティングワイヤ108に対してさまざまな位置で配置することができる。また、後により詳細に記載するように、帰還ワイヤ132を、管状部材102の内腔内に配置しかつ/またはその中で延在させることができ、または別法として、管状部材102内に埋め込みかつ/または管状部材102と共押出成形することができる。
【0016】
導電性インク部分126を、帰還ワイヤ132にさまざまな方法で電気的に結合することができる。たとえば、図1に示すように、導電性インク部分126は、導電性リングまたはカニューレ130まで近位側に延在することができ、導電性リングまたはカニューレ130は、導電性インク部分126を帰還ワイヤ132に電気的に結合することができる。いくつかの実施形態例では、導電性カニューレ130を、管状部材102の外面に取り付けるかまたは圧着することができる。導電性カニューレ130を、例として、ステンレス鋼、銀、金、タンタルまたはタングステン等の金属から作製することができる。導電性インクを、導電性カニューレ130の少なくとも一部に塗布することができ、かつ/またはその上および/あるいは下に堆積させることができ、それにより、導電性インク部分126および導電性カニューレ130は電気的に結合され、導電性カニューレ130は帰還経路124の一部となる。図1に示すように、帰還ワイヤ132を、導電性インク部分126に電気的に結合されるように導電性カニューレ130に接続することができる。たとえば、帰還ワイヤ132を、管状部材102の外面まで延在するように、その遠位端において丸めることができ、導電性カニューレを、帰還ワイヤ132の遠位端の上で管状部材102に圧着することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、バイポーラ括約筋切開器100は、導電性カニューレ130の上に配置されたチューブ134と、導電性カニューレ130を覆っているかまたはその上に配置される導電性インクとをさらに含むことができる。図1に示すように、チューブ134は、管状部材102の第1開口部110まで、または別法として、カニューレ130と第1開口部110との間の位置まで、遠位側に延在することができる。いくつかの実施形態では、チューブ134を収縮チューブ134とすることができ、収縮チューブ134は、熱が加えられた時等、収縮チューブ134が覆っている面に沿う。チューブ134は、約0.0002インチの厚さを有することができるが、他の厚さを使用することができる。(相対的に可撓性が高い可能性がある)管状部材102と(相対的に剛性が高い可能性がある)金属カニューレ130との間の可撓性が異なることによってもたらされる歪みに対して緩和を提供するように、カニューレ130の上にチューブ134を配置することができる。さらに、チューブ134は、導電性インクがかき消されるのを防止するかまたは最小限にすることができる、保護コーティングまたは耐引っ掻き性を提供することができる。
【0018】
チューブ134のいくつかの実施形態例では、チューブ134の内面を、例として導電性インク、導電性粉末、導電性接着剤またはそれらの組合せ等、1つまたは複数の導電性材料でコーティングすることができる。導電性材料は、導電性インク部分126を構成する導電性インクと同じ材料である場合もあれば異なる材料である場合もある。内面が導電性材料でコーティングされているチューブ134は、導電性インク部分126と導電性カニューレ130との間の電気的連続性を強化することができる。
【0019】
図1は、導電性インク部分126および導電性カニューレ130を互いに電気的に接続することができるように、導電性インク部分126の一部が導電性カニューレ130の上に配置されるかまたは堆積した状態を示す。遠位部分106の代替実施形態では、導電性インク部分126を管状部材102の外面に堆積させることができ、かつ/または導電性カニューレ130を導電性インク部分に対して、それらが物理的に分離するように、かつ/またはそれら自体が互いに電気的に切り離されるように、配置することができる。この代替実施形態では、導電性インク部分126を導電性カニューレ130に電気的に接続するために、内面が導電性材料でコーティングされているチューブ134を、導電性カニューレ130および導電性インク部分126の両方の上に配置することができる。
【0020】
さらに他の代替実施形態では、チューブ134の代りに、接着剤、エポキシ樹脂、切欠き付きカニューレ、波状あるいは可撓性遠位先端を備えたカニューレまたはそれらのあらゆる組合せを用いることができる。さらに他の代替実施形態では、チューブ134または他のカバーあるいはコーティングが含まれない場合もある。
【0021】
図1Aを参照すると、バイポーラ括約筋切開器100の別の代替実施形態例は、帰還ワイヤ132を導電性インク部分126に電気的に結合するために、金属カニューレ130の代りに管状部材102の壁に開口部150を含むことができる。管状部材102の切削部(skive)または切れ目等の開口部150は、管状部材102の外面から、帰還ワイヤ132の遠位端が配置される内側部分まで延在することができる。導電性インク部分126を、帰還ワイヤ132に電気的に結合されるように、開口部150内に延在するように堆積させることができる。
【0022】
再び図1を参照すると、バイポーラ括約筋切開器100は、近位部分104および/またはカッティングワイヤ108の近位端に結合されたハンドルアセンブリ116をさらに含むことができる。ハンドルアセンブリ116を、切刃114を弛緩状態と切断状態との間で移動させるように、カッティングワイヤ108に動作可能に結合することができる。たとえば、ハンドルアセンブリ116を、ピンと張ったカッティングワイヤ108を近位方向に引っ張ることにより、切刃114を弛緩状態から切断状態に移動させるように構成することができる。カッティングワイヤ108が引っ張られると、管状部材102の遠位部分106は曲がるかまたは丸まって弧を形成することができる。ピンと張った切刃114は、弧の割線を形成することができる。遠位部分106が丸められ、切刃114がピンと張っている時、遠位部分106および切刃114は、括約筋を切断するように構成されているかまたは切断する位置にあり得る。ハンドルアセンブリ116はまた、遠位部分106をまっすぐにし切刃114をピンと張った状態から弛緩状態に移動させるように、カッティングワイヤ108を解除するかまたは遠位方向に押すように構成することも可能である。遠位部分106がまっすぐになり(または、少なくとも、切刃114がまっすぐになっている時より小さい程度まで丸められた位置にあり)、切刃114が弛緩状態にある時、遠位部分106および切刃114を、括約筋を切断するように構成することはできず、かつ/または治療部位まで往復するように移動するように構成するかあるいは移動するような位置とすることはできない。
【0023】
カッティングワイヤ108および帰還ワイヤ132の両方を、電気手術を行うためにカッティングワイヤ108に電流を供給する、高周波(RF)発生器または電気手術器(ESU)等の電源118に電気的に結合することができる。一実施形態例では、カッティングワイヤ108を、ハンドルアセンブリ116まで近位側に延在させることにより電源118に電気的に結合することができ、ハンドルアセンブリ116では、カッティングワイヤ108の近位端を、ハンドルアセンブリ116のポート136まで延在する金属ピン134に接続することができる。金属ピン134および/またはポート136は、電源118のアクティブポート140に接続することができる供給ケーブル138に接続するように適合可能であり得る。
【0024】
帰還ワイヤ132を、管状部材102に接続されたサイドポート142を通して遠位側に延在させることにより、電源118に電気的に結合することができ、サイドポート142では、帰還ワイヤ132の近位端を、帰還ワイヤを帰還ケーブル144の1つまたは複数のワイヤにはんだ付けすることによる等、帰還ケーブル144に接続することができる。別法として、帰還ケーブルを、金属カニューレの内側に配置された帰還ワイヤ132に圧着することにより、帰還ワイヤ132を帰還ケーブル144に接続することができる。帰還ケーブル144は、電源118の帰還ポート146に接続するように適合可能であり得る。電源118は、起動すると、供給ケーブル138および金属ピン134を介してカッティングワイヤ108に電流を送達することができる。電流は、カッティングワイヤ108を通って切刃114まで進むことができ、そこで、括約筋に対して電気手術を行うことができる。電流は、負荷として作用する括約筋を通過し、その後、導電性インク部分126および帰還経路を含む帰還経路124に沿って、帰還ケーブル144を介して電源118に戻ることができる。
【0025】
図2は、図1において線2−2に沿って取り出されたバイポーラ括約筋切開器100の実施形態例の断面図を示す。管状部材102はワイヤガイド内腔202を含むことができ、ワイヤガイド内腔202は、ワイヤガイド203を受け入れ、かつそこを通してワイヤガイド203を移動可能に配置しているように構成されている。動作時、ワイヤガイド203を、患者の体内の治療部位まで送達することができる。ワイヤガイド内腔202を、ワイヤガイド203にわたって挿入することができ、バイポーラ括約筋切開器100の遠位部分106を、治療部位まで送達することができる。管状部材102は、治療部位に造影剤を送達するために使用することができる、注入内腔204等の1つまたは複数の他の内腔を含むことができる。
【0026】
図2に示すように、導電性インク部分126を、管状部材102の外面の周囲に部分的に円周方向に配置することができる。導電性インク部分126の円周方向配置は、固定点112またはカッティングワイヤ108の切刃114の半径方向向きに対して画定されまたは確定される向きを有することができる。固定点112または切刃114の半径方向向きを、切刃114が管状部材から半径方向に延在する方向によって画定することができ、かつ/または管状部材102の中心点あるいは原点から固定点112を通って延在する点線矢印206によって特定することができる。導電性インク部分126の円周方向配置の向きを、導電性インク部分126の円周方向端部210a、210bを通って延在する点線208によって特定することができる。固定点112または切刃114の半径方向向きに対する導電性インク部分126の円周方向配置の向きを、点線206および208の間の半径方向の差または角度の差として画定または確定することができる。1つの構成例では、図2に示すように、導電性インク部分126の円周方向配置を、点線206および208の間の90度の半径方向差または垂直交差点として特定されるように、固定点112または切刃114の半径方向向きに対して垂直または実質的に垂直に向けることができる。
【0027】
管状部材102を、透明な、または少なくとも半透明な材料から作製することができる。管状部材102は、視覚化の目的で、透明または半透明であり得る。たとえば、側視内視鏡は、医師またはバイポーラ括約筋切開器100の他の術者に、管状部材102の側部への視覚的アクセスを提供することができる。透明な材料は、医師または術者に、管状部材102の1つまたは複数の内腔への視覚的アクセス等、管状部材102内側への視覚的アクセスをさらに提供することができる。特に、透明な材料は、医師または術者が、ワイヤガイド203がワイヤガイド内腔202を通って移動するのを見ることができるように、ワイヤガイド内腔202への視覚的アクセスを提供することができる。
【0028】
しかしながら、導電性インク部分126は、不透明なまたは実質的に不透明な材料である場合があり、それが、管状部材102、特にワイヤガイド内腔202内への視覚的アクセスを遮るかまたは妨げる可能性がある。したがって、導電性インク部分126を管状部材102の周囲で、ワイヤガイド内腔202への視覚的アクセスを提供するように方向付けることが望ましい可能性がある。図2に示すようないくつかの管状部材構成例では、固定点112または切刃114の半径方向向きに対する導電性インク部分126の円周方向配置の垂直向きが、ワイヤガイド内腔202への視覚的アクセスを遮るかまたは阻止する可能性があるように、ワイヤガイド内腔202が、管状部材102内において固定点112またはワイヤガイド108に対して配置される可能性がある。図2は、眼球212および点線214、216によって表される視覚的アクセスが、垂直向きによっていかに遮られる可能性があるかを示す。
【0029】
図3は、図1の線2−2に沿って取り出されたバイポーラ括約筋切開器100の代替実施形態の断面図を示す。図3に示す代替実施形態では、導電性インク部分126の円周方向配置は、ワイヤガイド内腔202への視覚的アクセスを遮らずまたは提供するように、(点線208によって示す)垂直向きからオフセットがある(点線308によって示す)向きを有することができる。いくつかの構成例では、(矢印318によって示す)オフセットは約30度であり得るが、ワイヤガイド内腔への視覚的アクセスを提供するあらゆる角度のオフセットを利用することができる。また、オフセットがもたらされる方向は、側視内視鏡が視覚的にアクセスすることができるように構成されるバイポーラ括約筋切開器100の側によって決まる可能性がある。たとえば、図3に示す観点からバイポーラ括約筋切開器100の断面を見ると、(眼球212および点線214、216によって示す)視覚的アクセスは、「右」側であり得る。したがって、オフセットは、右回り方向であり得る。別法として、視覚的アクセスが反対側(たとえば、図3の観点から「左」側)であった場合、オフセットは左回り方向であり得る。
【0030】
図2および図3は、導電性インク部分126の円周方向配置が、管状部材の約中間まで延在している(すなわち、点線206は、管状部材102の中心または原点を通って延在する)ことを示す。代替構成では、導電性インク部分126の円周方向配置は、管状部材の周囲を中間まで延在しない場合もあれば、中間を超えて延在する場合もある。
【0031】
図4は、図1の線4−4に沿って取り出された括約筋切開器100の実施形態の断面図を示す。図4に示す断面図は、導電性カニューレ130の近位の管状部材102の断面を表すことができる。図4は、ワイヤガイド内腔内に配置されたワイヤガイド203とともに、カッティングワイヤ内腔402内に配置されたカッティングワイヤ108を示す。さらに、図4に示すように、帰還ワイヤ132を、注入内腔204内に配置し延在させることができる。したがって、注入内腔204は、二重の役割を果たすかまたは2つの機能を有することができ、すなわち、治療部位に造影剤を送達することと、バイポーラ括約筋切開器100の帰還ワイヤ132を収容することとである。図4の実施形態は、注入内腔204内に配置された帰還ワイヤ132を示すが、帰還ワイヤ132を、注入内腔204とは異なる内腔に配置することができる。概して、括約筋切開器100を、管状部材102内の複数の内腔のうちの1つが二重または複数の目的または機能を有するように構成することができ、そのうちの1つは帰還ワイヤ132を収容することである。
【0032】
図5は、図1の線4−4に沿って取り出されたバイポーラ括約筋切開器100の代替実施形態の断面図を示す。代替実施形態では、帰還ワイヤ132を、注入内腔204内に配置するのではなく、管状部材102内に埋め込みかつ/またはその一体部分とすることができる。したがって、管状部材102内の内腔のいずれも、帰還ワイヤ132を収容するように機能することはできない。この代替実施形態では、管状部材102および帰還ワイヤ132を、帰還ワイヤ132を管状部材102に埋め込むかまたは一体化するように共押出成形することができる。
【0033】
図6は、図1の線4−4に沿って取り出されたバイポーラ括約筋切開器100の第2代替実施形態の断面図を示す。第2代替実施形態では、管状部材102は、帰還ワイヤ132を収容するという単一機能または目的を有する内腔602を含む。
【0034】
管状部材102を、限定されないが、例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはパーフルオロアルコキシ(PFA)等のフルオロポリマー材料、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ化エチレンを含む、さまざまな材料または材料の組合せから作製することができる。管状部材が、PTFEまたはPFA等のフルオロポリマー材料から作製されて、導電性インク部分126をフルオロポリマー管状部材102に最適に付着させる場合、導電性インクが塗布される前に、管状部材102に下塗インクまたはベースインクを付着させるかまたは塗布することができる。下塗インクは、下塗インクがフルオロポリマー材料及び導電性インクの両方に対して接着性であり得るようにする特性または品質を有することができる。そして、導電性インクを、下塗インクの上に塗布することができる。下塗インクは、フルオロポリマー管状部材102と導電性インク部分126との間の接着性または接合を強化しまたは増大させることができ、それにより、導電性インクが管状部材102からこすり取られるかまたは他の方法で除去される可能性を防止するかまたは低減することができる。さらに、導電性インクおよび/または下塗インクを、例として、噴霧、パッド印刷、圧延、はけ塗り、浸漬または電気めっき等、さまざまな方法のうちのいずれかにより、管状部材の上に塗布しまたは堆積させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態例では、帰還経路124は、単一帰還経路を含むことができる。これらの実施形態例に対して、導電性インク部分126は、単一帰還ワイヤ132に電気的に結合された単一の連続部分を含むことができる。図7は、導電性インク部分126のすべてではないが大部分を示す角度からの遠位部分106の実施形態例の側面図を示し、そこでは、帰還経路124が単一帰還経路である。
【0036】
代替実施形態例では、帰還経路124は、2つ等、複数の帰還経路を含むことができる。複数の帰還経路を、互いから電気的に隔離するかまたは実質的に電気的に隔離することができる。複数の帰還経路を、バイポーラ括約筋切開器100に対する安全機能を提供するために含めることができる。いくつかの電源118(図1)を、二重帰還経路用に構成することができ、それは、電源118を、帰還経路の各々が括約筋または周囲組織と接触しない限り、電流の出力を阻止するように構成することができるためである。これにより、電源118から電流を供給することができる前の、治療部位における遠位部分の適切な配置が確実になる。さらに、帰還経路のいずれかが、破断または焼損等によって切断された場合、電源118を、切断を検出または認識し、電流が治療部位に供給されないようにするように構成することができる。
【0037】
図8は、導電性インク部分126のすべてではないが大部分を示す角度からの遠位部分106の実施形態例の側面図を示し、そこでは、帰還経路は二重帰還経路を含む。二重帰還経路は、第1帰還経路824aおよび第2帰還経路824bを含むことができる。第1経路824aおよび第2経路824bを形成するために、導電性インク部分126は、第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを含む2つの下位部分またはストリップを含むことができる。第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを、互いから電気的に隔離することができる。第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを構成する導電性インクを、第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを互いから電気的に隔離するように、第1下位部分826aと第2下位部分826bとの間に間隙または間隔860を形成するように堆積させることができる。いくつかの構成例では、間隙860の幅は約0.040インチであり得るが、幅に対して他のサイズを使用することができる。
【0038】
第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを、各々、それぞれの帰還ワイヤに電気的に結合することができる。たとえば、第1下位部分826aを、第1帰還ワイヤ832aに電気的に結合することができ、第2下位部分826bを、第2帰還ワイヤ832bに電気的に結合することができる。いくつかの実施形態例では、第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを、下位部分826a、826bの反対側の端部においてそれらのそれぞれの帰還ワイヤ832a、832bに電気的に結合することができる。さらに、第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを、上述した方法のようなさまざまな方法で、それらのそれぞれの帰還ワイヤ832a、832bに電気的に結合することができる。たとえば、図8に示すように、2つの金属カニューレ830a、830bを用いて、下位部分826a、826bをそれらのそれぞれの帰還ワイヤ832a、832bに電気的に結合することができる。金属カニューレ830a、830bを、下位部分826a、826bの一方のみが金属カニューレ830a、830bの各々に結合されるように、導電性インク部分126の反対側の端部に配置することができる。そうするために、第2下位部分826bが金属カニューレ830bに電気的に接続され、間隙862が金属カニューレ830a、から第2下位部分826bを隔離するように、第2下位部分826bは第1下位部分826aを越えて遠位側に延在することができる。同様に、第1下位部分826aが金属カニューレ830aに電気的に接続され、間隙864が金属カニューレ830bから第1下位部分826aを隔離するように、第1下位部分826aは第2下位部分826bを越えて近位側に延在することができる。他の実施形態例では、金属カニューレ830a、830bの一方または両方の代りに、管状部材102に(図1Aに示す開口部150等の)開口部を用いることができる。第1下位部分826aを構成する導電性インクは、第1帰還ワイヤ832aと電気的に結合されるように開口部のうちの1つの中に延在することができる。同様に、第2下位部分826bを構成する導電性インクは、第2の帰還ワイヤ832bと電気的に結合されるように、他方の開口部内に延在することができる。
【0039】
帰還ワイヤ832a、832bを、図4図6の断面に示す実施形態のさまざまな組合せで、管状部材内に配置することができる。たとえば、帰還ワイヤ832a、83bのうちの一方を、注入内腔等、内腔のうちの1つの中に配置することができ、それにより、内腔のうちの1つは、上述したように二重目的の役割を果たす。帰還ワイヤ832a、832bのうちの他方を、管状部材102の一体構成要素として埋め込むことができる。別法として、帰還ワイヤ832aの内の一方を、二重目的の役割を果たす内腔内に配置することができ、他方の帰還ワイヤ832bを、帰還ワイヤ832bを収容するという単一の目的を有する内腔内に配置することができる。別法として、帰還ワイヤ832a、832bの両方を、管状部材102内に埋め込むことができ、または帰還ワイヤ832a、832bの各々をそれぞれの内腔内に配置することができ、内腔の各々は、帰還ワイヤ832aまたは832bを収容するという単一の目的を有している。さまざまな構成が可能である。管状部材102において、帰還ワイヤ832a、832は、互いに対して平行にまたは実質的に平行に長手方向に延在することができる。
【0040】
1つの構成例では、図8に示すように、第1下位部分826aおよび第2下位部分826bを分離し電気的に隔離する間隙860は、遠位部分の外面に沿って直線方向にまたは実質的に直線方向に長手方向に延在することができる。代替構成では、間隙は、非直線的に長手方向に延在することができる。たとえば、図9に示すように、間隙960は、ジグザグパターンを有することができる。別の例として、図10を参照すると、間隙1060は正弦波パターンを有することができる。間隙に対して、例としてらせん状または渦巻き状等、他のさまざまなパターンを使用することができる。別法として、間隙は、必ずしもパターンを有してない場合もあり、遠位部分106の外面に沿って概して非直線状に延在することができる。間隙を非直線状に延在するかまたは非直線状パターンを有するように構成することは、間隙が直線状に延在する構成と比較して有利である可能性があり、それは、非直線状構成によって、導電性インクの第1下位部分および第2下位部分の両方が括約筋または周囲組織と接触することを容易にすることができるためである。
【0041】
再び図1を参照すると、帰還ケーブル144を、さまざまなタイプまたは構成の電源118および/または電源118の帰還ポート146に接続するように構成することができる。多くの状況では、バイポーラ括約筋切開器100に接続するために用いられる電源118は、製造時等に、帰還経路の一部として非分割型対極板または分割型対極板を使用することができるモノポーラ括約筋切開器に対する帰還ケーブルに接続しかつ/またはそれを受け入れるように構成されている可能性がある。いくつかの電源118を、単一帰還経路(たとえば、非分割型対極板を使用するモノポーラ括約筋切開器)、2つの帰還経路(たとえば、分割型対極板を使用するモノポーラ括約筋切開器)または両方を受け入れかつ/またはそれに接続するように構成することができる。
【0042】
バイポーラ括約筋切開器の構成では、帰還経路124を電源118の帰還ポート146に電気的に結合する帰還ケーブル144を、バイポーラ括約筋切開器100の単一経路構成および二重経路構成の両方とともに、非分割型対極板、分割型対極板または両方を認識するように構成された電源118に適応するように、さまざまな方法で構成することができる。
【0043】
バイポーラ括約筋切開器100が単一帰還経路を含む図11を参照すると、非分割型対極板を認識するように構成されている電源118に接続するために、帰還ケーブル144は、単一帰還ワイヤ132に接続される単一ワイヤ1102を含むことができる。ワイヤ1102は、近位側で、ワイヤ1102を電源118の帰還ポート146に接続しかつ電気的に結合するように適合可能なプラグ1104において終端することができる。
【0044】
バイポーラ括約筋切開器100が2つの帰還経路を含む図12を参照すると、分割型対極板を認識するように構成されている電源118に接続するために、帰還ケーブル144は、互いから電気的に隔離された2本のワイヤ1202、1203を含むことができる。帰還ケーブル144におけるワイヤ1202のうちの1本を、帰還ワイヤ1232aのうちの1本に接続することができ、帰還ケーブル144における他方のワイヤ1203を、他方の帰還ワイヤ1232bに接続することができる。ワイヤ1002、1003は、近位側で、ワイヤ1202、1203を帰還ポート146に接続しかつ電気的に結合するように適合可能なプラグ1204において終端することができる。
【0045】
いくつかの電源118に対して、電源118を、非分割型対極板を認識するように構成することができるが、帰還ポート146を、2つの帰還経路に接続するように構成することができる。これらの構成に対して、帰還ケーブル144は、電源118が非分割型対極板を認識するように構成される2つのワイヤを含むことができる。バイポーラ括約筋切開器100が単一帰還経路を含む図13を参照すると、2つの帰還経路を受け入れるように物理的に構成されているが非分割型対極板を認識するようにも構成されている電源118に接続するために、帰還ケーブル144は、遠位端において互いに短絡している2つのワイヤ1302、1303を含むことができ、そこで、それらを、単一帰還ワイヤ132の近位端に接続することも可能である。ワイヤ1302、1303の各々は、近位側で、ワイヤ1302、1303を帰還ポート146に接続しかつ電気的に結合するように適合可能なプラグ1304において終端することができる。この構成に対して、電源118は、非分割型対極板に対する場合と同様に、2つの帰還経路の間の名目抵抗を求めるかまたは認識することができる。
【0046】
帰還ポート146が2つの帰還経路に接続されるように構成され、電源118が分割型対極板を認識するように構成されている場合、帰還ケーブル144におけるワイヤのうちの1本に抵抗を含めることができ、そこでは、バイポーラ括約筋切開器の帰還経路124は単一帰還経路を含む。図14を参照すると、2本のワイヤ1402、1403の間に抵抗が存在するように、帰還ケーブル144のワイヤ1402、1403のうちの一方に抵抗素子または抵抗器1410を追加するかまたは含めることができる。そして、ワイヤ1402、1403をそれらの遠位端において互いに接続することができ、そこで、それらを単一帰還ワイヤ132に接続することができる。抵抗素子1410に対して選択される抵抗は、電源118を、分割型対極板を用いるものとしてバイポーラ括約筋切開器100を測定しまたは認識するように構成することができる。いくつかの例では、範囲は約5オーム〜150オームであり得るが、電源118に応じて他の抵抗を用いることができる。抵抗の値を、複数のまたはさまざまなタイプの電源118に対して作用するように最適化することができる。
【0047】
別法として、抵抗素子1410に対する抵抗は、電源118が、非分割型対極板または分割型対極板のいずれかを使用するものとしてバイポーラ括約筋切開器100を認識することができるようにする値であり得る。いくつかの電源118は、電源118が非分割型対極板を認識するために許容することができる抵抗に対する上限を用いる一方で、電源118が非分割型対極板を認識するために許容することができる抵抗に対する下限も有するように構成される。これらの電源118に対して、上限と下限との間に重なりがある場合、抵抗素子1410に対する抵抗を、その重なりにおいて選択することができ、電源118が非分割型対極板を認識するように設定されていても分割型対極板を認識するように設定されていても、電源118によっていかなるエラーも特定され得ない。
【0048】
代替実施形態では、ケーブルのワイヤの両方に抵抗素子を含めることができる。図15を参照すると、帰還ケーブル144のワイヤ1502に抵抗素子1510を含めることができ、ワイヤ1503に抵抗素子1512を含めることができる。抵抗素子1510、1512の抵抗の和を、ワイヤの一方のみが抵抗素子(たとえば、図14に示す抵抗素子1410)を含む場合の単一抵抗素子の抵抗に等しくすることができる。さらに、抵抗素子1510、1512の抵抗は、同じかまたは実質的に同じであり得る。2本のワイヤ1502、1503の間で電力を分割するために、ワイヤ1502、1503の両方に抵抗素子1510、1520を含めることができる。2つの抵抗素子1510、1512によって発生する熱を、図14に示す単一抵抗素子構成に比較して低減させることができ、それは、抵抗素子1510、1512の各々を通して引き込まれる電力を小さくすることができるためである。2つの抵抗素子1510、1512を用いることにより、括約筋切開器に対して安全性または性能の問題を招く可能性がある、帰還経路における有極性を最小限にするかまたはなくすことも可能である。
【0049】
本発明のさまざまな実施形態の上述した説明は、例示および説明の目的で提示されている。それは、網羅的であるようにも、本発明を開示した厳密な実施形態に限定するようにも意図されていない。上記教示に鑑みて、多数の変更または変形が可能である。考察した実施形態は、本発明の原理およびその実際的な適用を最もよく例示し、それにより、当業者が本発明を、さまざまな実施形態でかつ企図される特定の用途に適合するようにさまざまな変更を行って利用することができるように、選択されかつ記載されている。こうした変更形態および変形形態のすべては、公正に、合法的にかつ公平に権利が与えられる範囲に従って解釈される場合に添付の特許請求の範囲によって確定される本発明の範囲内にある。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15