(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(b1)トリブロック共重合体の両末端が、メチル(メタ)アクリレートのポリマー単位またはジメチル(メタ)アクリルアミド変性されたメチル(メタ)アクリレートのポリマー単位であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)ブロック共重合体と、(C)光重合開始剤と、(D)反応性希釈剤と、(E)エポキシ化合物と、を含有する。
上記成分は以下の通りである。
【0021】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上有する樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0022】
前記多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。多官能性エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100〜500が特に好ましい。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものを使用してもよい。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などを挙げることができ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。
【0025】
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応により生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を導入するためのものである。多塩基酸又はその無水物は特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0026】
本発明においては、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できるが、必要に応じて、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0027】
この感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記グリシジル化合物の反応によって、ラジカル重合性不飽和基が、多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を有することができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、その下限値は、確実なアルカリ現像の点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方、酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、硬化物の耐湿性と電気特性の劣化防止の点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0029】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から3000が好ましく、5000が特に好ましい。一方、質量平均分子量の上限値は、円滑なアルカリ現像性の点から200000が好ましく、50000が特に好ましい。
【0030】
(B)ブロック共重合体
本発明の感光性樹脂組成物では、ブロック共重合体を配合することにより、熱衝撃耐性とスプレー塗工性とがバランスよく向上した硬化物を得ることができる。ブロック共重合体の構造は特に限定されず、例えば、トリブロック共重合体、ジブロック共重合体等を挙げることができる。
【0031】
トリブロック共重合体には、例えば、[a
1]−[b
1]−[a
2]構造のブロック共重合体を挙げることができる。ここで、[a
1]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[b
1]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a
1]のガラス転移温度は、硬化物の硬度とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a
1]の重合体ブロックとしては、例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。[a
2]の重合体ブロックも、[a
1]の重合体ブロックと同様に、ガラス転移温度が[b
1]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a
2]のガラス転移温度は、[a
1]と同様に、硬化物の硬度とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a
2]の重合体ブロックとしては、例えば、[a
1]の重合体ブロックと同じく、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0032】
[b
1]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[a
1]の重合体ブロック及び[a
2]の重合体ブロックよりも低く、よって、相対的にソフトブロック構造を有する。[b
1]のガラス転移温度は、硬化物に柔軟性を付与することで熱衝撃を受けてもクラックの発生を防止する点から−20℃以下が好ましく、−30℃以下が特に好ましい。[b
1]の重合体ブロックとしては、例えば、ポリn−ブチルアクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0033】
トリブロック共重合体における[b
1]の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化物の硬度及びはんだ耐熱性と、熱衝撃耐性及びスプレー塗工性と、をバランスよく向上させる点から20〜65質量%が好ましく、良好な熱衝撃耐性及びスプレー塗工性を得つつ、硬化物の硬度とはんだ耐熱性をより向上させる点から40〜55質量%が特に好ましい。また、トリブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、タック性の点から10000が好ましく、柔軟性の点から20000が特に好ましい。一方、その上限値は、スプレー塗工性の点から200000が好ましく、現像性の点から100000が特に好ましい。
【0034】
また、トリブロック共重合体には、例えば、上記した[a
1]−[b
1]−[a
2]構造のブロック共重合体を構成するモノマーに、さらに親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基など)を有するモノマー(例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等)やジメチル(メタ)アクリルアミド等の含有したモノマー原料を共重合させた、トリブロック共重合体であってもよい。
【0035】
ジブロック共重合体には、例えば、[a
3]−[b
2]構造のブロック共重合体を挙げることができる。ここで、[a
3]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[b
2]の重合体ブロックよりも高く、よって、相対的にハードブロック構造を有する。[a
3]のガラス転移温度は、硬化物の硬度とはんだ耐熱性の点から60℃以上が好ましく、90℃以上が特に好ましい。[a
3]の重合体ブロックとしては、例えば、上記した[a
1]の重合体ブロック、[a
2]の重合体ブロックと同じく、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0036】
[b
2]の重合体ブロックは、ガラス転移温度が[a
3]の重合体ブロックよりも低く、よって、相対的にソフトブロック構造を有する。[b
2]のガラス転移温度は、硬化物に柔軟性を付与することで熱衝撃を受けてもクラックの発生を防止する点から−20℃以下が好ましく、−30℃以下が特に好ましい。[b
2]の重合体ブロックとしては、例えば、上記した[b
1]の重合体ブロックと同じく、ポリn−ブチルアクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0037】
ジブロック共重合体における[b
2]の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化物の硬度及びはんだ耐熱性と、熱衝撃耐性及びスプレー塗工性と、をよりバランスよく向上させる点から20〜65質量%が好ましく、良好な熱衝撃耐性及びスプレー塗工性を得つつ、硬化物の硬度とはんだ耐熱性をより向上させる点から40〜55質量%が特に好ましい。また、ジブロック共重合体の質量平均分子量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、タック性の点から10000が好ましく、柔軟性の点から20000が特に好ましい。一方、その上限値は、スプレー塗工性の点から200000が好ましく、現像性の点から100000が特に好ましい。
【0038】
本発明に係る感光性樹脂組成物では、ブロック共重合体として、トリブロック共重合体単独またはジブロック共重合体単独で使用してもよいが、スプレー塗工性、熱衝撃耐性、アルカリ現像性及びタック性をより向上させる点からトリブロック共重合体とジブロック共重合体とを併用することが好ましい。トリブロック共重合体とジブロック共重合体との配合割合は、特に限定されず、例えば、トリブロック共重合体100質量部に対するジブロック共重合体の配合割合の下限値は、優れたアルカリ現像性を得る点から20質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、80質量部が特に好ましい。一方、その上限値は、タック性の点から200質量部が好ましく、優れた熱衝撃耐性、塗膜硬度及びはんだ耐熱性を得る点から120質量部が特に好ましい。
【0039】
ブロック共重合体の含有量は特に限定されず、例えば、その下限値は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、熱衝撃耐性とスプレー塗工性とをよりバランスよく向上させる点から5.0質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、熱衝撃耐性をさらに向上させる点から15質量部が特に好ましい。一方、その上限値は、スプレー塗工性とアルカリ現像性の点から40質量部が好ましく、35質量部がより好ましく、塗膜硬度とはんだ耐熱性の点から30質量部が特に好ましい。
【0040】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルフォリノプロピオフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、7〜20質量部が特に好ましい。
【0042】
(D)反応性希釈剤
反応性希釈剤とは、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。
【0043】
反応性希釈剤は、上記化合物であれば特に限定されず、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングルコールモノメタクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリルレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
反応性希釈剤の含有量は特に限定されず、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0〜500質量部が好ましく、10〜300質量部が特に好ましい。
【0045】
(E)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、硬化塗膜の架橋密度を上げて十分な強度の硬化塗膜を得るためのものであり、例えば、エポキシ樹脂を添加する。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0046】
エポキシ化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化後に十分な強度の塗膜を得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜60質量部が好ましく、20〜50質量部が特に好ましい。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した成分(A)〜成分(E)の他に、必要に応じて、種々の成分、例えば、フィラー、顔料、各種添加剤、溶剤などを含有させることができる。
【0048】
フィラーは、感光性樹脂組成物の塗膜の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、タルク、硫酸バリウム、疎水性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等を挙げることができる。これらのうち、熱衝撃耐性のさらなる向上の点から、タルクが好ましい。フィラーの含有量は特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、20〜40質量部が特に好ましい。
【0049】
顔料は、特に限定されず、例えば、白色着色剤である酸化チタンや、白色以外の着色剤として、フタロシアニングリーン及びフタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アントラキノン系、並びにアゾ系等の有機顔料や、カーボンブラック等の無機顔料を挙げることができる。
【0050】
各種添加剤には、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等の消泡剤、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール類、イミダゾリウム塩類並びにトリエタノールアミンボレート等の熱硬化促進剤、ポリカルボン酸アマイド等のチキソ剤などを挙げることができる。
【0051】
溶剤は、感光性樹脂組成物の乾燥性を調節するためのものである。溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類等を挙げることができる。
【0052】
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。また、必要に応じて、前記混合分散前に、攪拌機にて予備混合してもよい。
【0053】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例を説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を、プリント配線板にスプレーにて塗工して、ソルダーレジスト膜等の絶縁被膜を形成する方法を例にして説明する。
【0054】
プリント配線板に、所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さで、上記のように製造した本発明の感光性樹脂組成物をスプレーにて塗布する。スプレー塗工の手段としては、適宜選択可能であるが、例えば、静電スプレー塗装機、エアースプレー塗装機、エアレススプレー塗装機等を挙げることができる。スプレー塗工後、必要に応じて、熱風炉または遠赤外線炉等でスプレー塗工した感光性樹脂組成物を予備乾燥し、感光性樹脂組成物から溶剤を揮発させて塗膜の表面をタックフリーの状態にする。予備乾燥の温度は60〜80℃、予備乾燥の時間は15〜60分が、それぞれ、好ましい。その後、塗布した感光性樹脂組成物上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液を使用することができる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、プリント配線板上に目的とするパターンを有する絶縁被膜を形成させることができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1〜11、比較例1〜2
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜11、比較例1〜2にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。そして、調製した感光性樹脂組成物を以下のように塗工して試験片を作製した。下記表1中の数字は質量部を示す。また、下記表1中の空欄は配合なしを意味する。
【0057】
【表1】
【0058】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
【0059】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルビトールアセテート250質量部に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学工業(株)製、ESCN−220、エポキシ当量220)220質量部及びアクリル酸64.8質量部を溶解し、還流下に反応させて、クレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。次いで、得られたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートに、ヘキサヒドロ無水フタル酸138.6質量部を加え、酸価が理論値になるまで還流下で反応させた後、グリシジルメタクリレート56.8質量部を加え、さらに反応させて、固形分66質量%のカルボキシル基含有感光性樹脂の溶液(A−1)を得た。
【0060】
(B)ブロック共重合体
・LA2140e:ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体、ポリn−ブチルアクリレートの含有量は60質量%以上、質量平均分子量80000、分子量分布は1.1、(株)クラレ製。
・LA4285:ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体、ポリn−ブチルアクリレートの含有量は50質量%、質量平均分子量65000、分子量分布は1.1、(株)クラレ製。
【0061】
LA2140e、LA4285ともに、下記式
[a
1]−[b
1]−[a
2]
(式中、[a
1]は、ポリメチルメタクリレートであり、ガラス転移温度は100〜120℃である重合体ブロック。[a
2]は、ポリメチルメタクリレートであり、ガラス転移温度は100〜120℃である重合体ブロック。[b
1]は、ポリn−ブチルアクリレートであり、ガラス転移温度は−50〜−45℃である重合体ブロック。[a
1]と[a
2]の質量の合計/[b]の質量=1/1。)で表される。
【0062】
・M52N:ジメチルアクリルアミドが共重合したポリメチルメタクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体、ジメチルアクリルアミドが共重合したトリブロック共重合体の総質量に対して、ジメチルアクリルアミドの重合割合は10〜15質量%(原料換算)、質量平均分子量15000、アルケマ社製。
【0063】
また、M52Nは、下記式
[a
1]−[b
1]−[a
2]
(式中、[a
1]は、N,N−ジメチルアクリルアミド変性されたポリメチルメタクリレートであり、[a
2]は、N,N−ジメチルアクリルアミド変性されたポリメチルメタクリレートである重合体ブロック。[b
1]は、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等で変性されていないポリn-ブチルアクリレートである重合体ブロック。[a
1]と[a
2]の質量の合計/[b
1]の質量=1/1。)で表され、ガラス転移温度は135℃(示差走査熱量測定法(DSC法))である。
【0064】
・LA1114:メチルメタクリレート−ブチルアクリレートのジブロック共重合体、片末端PMMA、ブチルアクリレートの含有量は60質量%以上、質量平均分子量80000、酸価OmgKOH/g、(株)クラレ製。
【0065】
(C)光重合開始剤
・イルガキュア907、イルガキュア819、イルガキュアOXE−02:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製。
・KAYACURE JETX:日本化薬(株)製。
【0066】
(D)反応性希釈剤
・EBECRYL8402:ダイセル・オルネクス社製。
(E)エポキシ化合物
・N695:DIC社製。
・YX−4000:三菱化学(株)製。
【0067】
フィラー
・硫酸バリウムB−34:堺化学工業(株)製。
・LMS200:富士タルク(株)製。
・レオロシールDM−20S:トクヤマ(株)製。
顔料
・ファーストゲングリーン:DIC社製。
添加剤
・粉末メラミン:日産化学工業(株)製。
・アンテージMB:川口化学工業(株)製。
・DICY−7:ジャパンエポキシレジン社製。
・BYK−405:ビックケミー社製。
溶剤
・EDGAC:三洋化成品(株)製。
ウレタンビーズ
・RHC732:大日精化工業(株)製。
【0068】
試験片作製工程
基板:プリント配線基板(ガラスエポキシ基板「FR−4」、板厚1.6mm、導体(Cu箔)厚50μm)
基板表面処理:バフ研磨
塗工:スプレー塗工
塗装条件:吐出量(110cc/min)、コンベアー速度(2.3m/min)、ディスク回転数(30000rpm)、印加電圧(−35KV)
DRY膜厚:35〜40μm
予備乾燥:80℃、20分
露光:感光性樹脂組成物上300mJ/cm
2(オーク社製「HMW−680GW」)
アルカリ現像:1%Na
2CO
3、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
ポストキュア:150℃、60分
【0069】
評価・測定項目は以下の通りである。
(1)熱衝撃耐性試験
上記試験片作製工程にて作製した試験片100枚について、熱衝撃試験機(日立アプライアンス(株)製、日立ヒートショック試験装置「ES−76LMS」)にて、−65℃/30分〜125℃/30分を1サイクルとして1000サイクルの試験を行った。その後、顕微鏡(×200)にてプリント配線基板の塗膜を観察して、塗膜のクラック発生率を以下の基準にて評価した。塗膜の観察位置は、露出したCu箔(2.0mm角パット)の周りを囲むように正方形状(2.4mm角)にアルカリ現像された塗膜の各角部とした。
◎:クラック発生率が10%以下
○:クラック発生率が11〜30%
△:クラック発生率が31〜50%
×:クラック発生率が50%以上
【0070】
(2)塗膜硬度
上記試験片作製工程にて作製した試験片の、Cu箔上の塗膜について、任意の硬度の鉛筆を用いて角度45度、荷重1Kg条件で引っ掻き試験を行った。試験後、目視にてプリント配線基板の塗膜を観察して、Cu箔表面が暴露しない最大の塗膜硬度を以下の基準にて評価した。
◎:4H以上
○:2H〜3H
×:H以下
【0071】
(3)はんだ耐熱性
上記試験片作製工程にて作製した試験片に、フラックス((株)タムラ製作所製、「ULF−210R」)を塗布後、25℃にて乾燥した。その後、塗布面を下側に向け、260〜262℃のはんだ槽に浸せきし、10秒間加熱した。その後、はんだ槽から試験片を取り出し、常温まで冷却した。冷却後、IPAでフラックス残渣をふき取って、セロハン粘着テープによるピーリング試験(剥離試験)を1サイクルとし、これを1〜3回繰り返した後の塗膜状態を目視により観察し、以下の基準にて評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も塗膜に変化が認められない
○:2〜3サイクル繰り返し後に塗膜に変化が認められる
×:1サイクルにて塗膜に変化が認められる
【0072】
(4)タック性
上記試験片作製工程における予備乾燥後に、Cu箔上の塗膜を指触し、塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準にて評価した。
◎:塗膜に指紋痕は残るものの、塗膜にべたつきはない
○:塗膜に指紋痕が残り、塗膜に若干のべたつきがあるが、指に塗膜が付着しない
×:塗膜にべたつきがあり、指に塗膜が付着する
【0073】
(5)アルカリ現像性
上記試験片作製工程にて使用したプリント配線基板に、上記のように調製した感光性樹脂組成物をスプレー塗工法にて塗布後、80℃にて、40、50、60分間、予備乾燥した。その後、予備乾燥炉から試験片を取り出し、上記試験片作製工程のアルカリ現像条件にて現像を行い、現像後の塗膜の除去状態を目視により観察し、以下の基準にて評価した。
○:予備乾燥時間60分でも完全に塗膜が除去されている
△:予備乾燥時間40分で完全に塗膜が除去されているが、50分間または60分間で若干塗膜が残っている
×:予備乾燥時間40分で塗膜が残っている
【0074】
(6)スプレー塗工性
上記試験片作製工程における予備乾燥後の塗膜表面外観を目視により観察し、以下の基準にて評価した。
◎:気泡、ゆず肌ともなく、レベリング性良好である
○:若干のゆず肌がある、またはCu箔付近のカバーリングが若干薄い
△:若干のゆず肌に加え、塗膜表面が若干失沢している
×:ゆず肌がある、またはスプレー塗工が不可である
【0075】
上記評価の結果を下記表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
上記表2に示すように、ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのブロック共重合体を配合した実施例1〜8では、塗膜硬度、はんだ耐熱性、タック性及びアルカリ現像性等の基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とスプレー塗工性に優れた硬化物を得ることができた。ブロック共重合体として、トリブロック共重合体とジブロック共重合体とを併用した実施例7、8は、トリブロック共重合体のみを配合した実施例6と比較して、熱衝撃耐性とスプレー塗工性がさらにバランスよく向上し、より優れたアルカリ現像性とタック性を得ることができた。また、ポリn−ブチルアクリレート含有量が50質量%のポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体である実施例4〜6は、ポリn−ブチルアクリレート含有量が60質量%以上のポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体である実施例1〜3と比較して、塗膜硬度とはんだ耐熱性がさらに向上した。
【0078】
カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して約24.4質量部のブロック共重合体を配合した実施例3、6は、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して約12.2質量部のブロック共重合体を配合した実施例2、5と比較して、熱衝撃耐性がより向上した。また、実施例1、2から、タルクを配合することで熱衝撃耐性がより向上した。
【0079】
また、ジメチルアクリルアミドが共重合した、ポリメチルメタクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体を、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して約12.2質量部配合した実施例9〜11でも、ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートのトリブロック共重合体を配合した実施例1〜8と同様に、上記基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とスプレー塗工性に優れた硬化物を得ることができた。ブロック共重合体として、トリブロック共重合体に加えて、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して約3.5質量部のジブロック共重合体をさらに配合した実施例10、11は、トリブロック共重合体のみを配合した実施例9と比較して、熱衝撃耐性とスプレー塗工性がさらにバランスよく向上した。
【0080】
また、エポキシ化合物として、ビフェニル型エポキシ樹脂のみを配合した実施例11は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂とを併用した実施例9、10と同様に、上記基本諸特性を損なうことなく、熱衝撃耐性とスプレー塗工性に優れた硬化物を得ることができた。
【0081】
一方で、ブロック共重合体を配合しない比較例1、2では、熱衝撃耐性とスプレー塗工性とがバランスよく向上した硬化物を得ることができなかった。