特許第6138992号(P6138992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6138992
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電気絶縁に有用な多層構造体
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/26 20060101AFI20170522BHJP
   D21H 27/12 20060101ALI20170522BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20170522BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   D21H13/26
   D21H27/12
   B32B5/02 A
   B32B5/26
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-54792(P2016-54792)
(22)【出願日】2016年3月18日
(62)【分割の表示】特願2013-518552(P2013-518552)の分割
【原出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2016-153546(P2016-153546A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】12/825,810
(32)【優先日】2010年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】レヴィット ミハイル アール
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョン サム
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−519318(JP,A)
【文献】 特表2005−522598(JP,A)
【文献】 特開2000−034693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
B32B 1/00−43/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アラミドとセルロースを含む第1層であって、
(i)前記アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)前記セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)前記アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、前記セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、第1層と、
(b)セルロース系パルプ繊維を含む第2層であって、前記第2層がアラミドを含まないことを条件とする、第2層と、
(c)アラミドとセルロースを含む第3層であって、
(i)前記アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)前記セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)前記アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、前記セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、第3層と、
を上記の順に含む、電気絶縁性多層紙構造体。
【請求項2】
前記アラミドがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、請求項1に記載の電気絶縁性多層紙構造体。
【請求項3】
前記第1層および第3層がポリマー結合剤を全く含まない、請求項1に記載の電気絶縁性多層紙構造体。
【請求項4】
前記第1層および第3層が25〜50重量パーセントのアラミドと50〜75重量パーセントのセルロースを含む、請求項1に記載の電気絶縁性多層紙構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁に有用な多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースパルプから製造されるクラフト紙は、その優れた絶縁特性および経済性を理由として、油入り変圧器における固体電気絶縁として広く使用されている。しかしながら、セルロースポリマーは、高温に対する長期曝露から加水分解を受けやすい。セルロースパルプと高温合成繊維を配合することで、熱安定性ならびに機械的強度を改善することができる。合成繊維とセルロースパルプの間のボンディングを促すために、ポリマー結合剤が添加される。しかしながらポリマー結合剤は、紙加工の間ならびに高温動作中の変圧器コイルと接触した状態でそれを使用している間に、紙内の不均一性および粘着の問題をひき起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、加工および最終用途におけるその粘着を削減しながら、改善された熱安定性および機械的強度を有する電気絶縁向けの紙を調製することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、多層構造体であって、
(a)アラミドとセルロースの第1層であって、
(i)アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、
セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、
前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、第1層と、
(b)セルロース系パルプ繊維を含む第2層であって、ここで、第2層がアラミドを含まないことを条件とする、第2層と
を含む多層構造体に向けられている。
【0005】
本発明のさらなる実施形態は、第2層の第1層に面していない側に1つ以上の追加層を含む。すなわち、1つまたは複数の追加層は第1層と第2層の中間にはない。少なくとも3層または4層が存在する場合には、第1層は、構造体中の外部層を表わすとみなされている。
【0006】
1つまたは複数のいずれの層も、第1層と第2層の構造体を有していてよい。4層構造体の例としては、(任意の順序での)第1層と第2層の組成物が含まれる。
【0007】
上述の多層構造体は、導電体を伴うデバイスにおける電気絶縁に有用である。好ましい用途は、変圧器内における使用である。
【0008】
本開示においては、「層」という用語が使用されている。しかしながら、一部の場合において、層を「紙」として記載することができる。一般に、紙は1.0ミリメートル以下の厚みを有する。したがって、好ましい用途において、開示されている層の各々は1.0ミリメートル以下の厚みを有する。
【0009】
多層構造体内で求められる第1層は、アラミドとセルロースを含む層であり、ここで、 (i) アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii) セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在する。
【0010】
本明細書で使用される「アラミド」という用語は、アミド(−CONH−)連鎖の少なくとも85%が直接2つの芳香族環に付着している芳香族ポリアミドを意味する。アラミドと共に添加剤が使用されてもよく、ポリマー構造全体にわたり分散していてもよい。最高約10重量パーセントもの他のポリマー材料をアラミドと配合できることが発見された。同様にアラミドのジアミンを置換する10パーセントもの他のジアミン、またはアラミドの塩化二塩基酸を置換する10パーセントもの他の塩化二塩基酸を有するコポリマーを使用できるということも発見されている。メタアラミドは、アミド連鎖が互いに対しメタ位にあるアラミドである。好ましいメタアラミドは、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。
【0011】
本明細書で使用される「フロック」という用語は、短かい長さに切断され、ウェットレイドシートの調製において通例使用されている繊維を意味する。典型的には、フロックは3〜20ミリメートルの長さを有する。好ましい長さは、3〜7ミリメートルである。フロックは通常、当該技術分野で周知の方法を用いて所要の長さに連続繊維を切断することによって生産される。
【0012】
本明細書で使用される「フィブリド」という用語は、その3つの寸法のうちの少なくとも1つが最大の寸法に比べて規模が小さいものである非粒状、繊維質またはフィルム状の粒子を意味する。これらの粒子は、高いせん断力の下で非溶媒を用いてポリマー材料の溶液を沈殿させることによって調製可能である。フィブリドは、5:1〜10:1の長さ対幅のアスペクト比で、0.2mm〜1mmの範囲内の最大寸法長さを有する。厚み寸法は、おおよそ数分の1ミクロン、例えば0.1ミクロン〜約1.0ミクロンである。フィブリドは、乾燥前に湿った状態で使用でき、紙形成用構成要素として被着させることができる。
【0013】
メタアラミドとしてフロックおよびフィブリドの組合せが利用される場合、フロック対フィブリドの好ましい重量比は、0.5〜4.0、より好ましくは0.8〜2.0の範囲内にある。
【0014】
「セルロース系パルプ」という用語は、本材、繊維作物または古紙から繊維を化学的または機械的に分離することによって調製される繊維質のセルロース系材料を意味する。セルロース系パルプ繊維は、本発明の多層構造体の所要成分である。好ましいセルロース系パルプは、無標白針葉樹パルプである。
【0015】
さらなる要件が、多層構造体の第1層に存在する。すなわち、アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、セルロースは、25〜84重量パーセントの量で存在し、前記百分率は、アラミドとセルロースに基づくものである。より好ましい範囲の例は、25〜50重量パーセントのアラミドと、50〜75重量パーセントのセルロースである。
【0016】
所要の第2層は、それがアラミドを含まないことを条件として、セルロース系パルプ繊維を含む。本発明の多層構造体は、典型的に、従来の製紙機械装置上で形成される。追加の添加剤は不要であるが、第2層の形成において従来の添加剤を使用してよい。適切な添加剤の例としては、ポリマー結合剤、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒドおよびポリエステルが含まれる。
【0017】
1つ以上の追加層を所要の第1および第2層と組合わせて利用した場合、改善された性能を得ることができる。追加の構造体においては、第1層が外部層であることが望ましい。1つの他の追加層は、(同じまたは異なるアラミド/セルロース比をもつ)第1層の組成を有していてよく、あるいは、アラミド無しの第2のセルロース系層は、第2層と同一でも異なるものでもあり得る。
【0018】
本発明の多層構造体は、電気絶縁用紙として使用可能であり、この構造体は変圧器、すなわち誘導結合された導体(変圧器コイル)を介して電気エネルギーを1つの回路から別の回路へと伝達するデバイスの製造において特に好適である。適切な変圧器としては、少なくとも200kVAそしてより一般的には少なくとも400kVAの容量(capacity)を有する変圧器を含めた大型のものが含まれる。このような大型変圧器は、典型的に周知の油を格納する。好ましくは、電気絶縁紙を変圧器の導電性コイルに卷回する場合、絶縁紙の第1のアラミド含有層はコイルに隣接して位置設定される。接着を防止し、使用中の多層構造体の熱劣化を低減させるため、第1のアラミド含有層内にはポリマー結合剤が存在しないことが好ましい。
【実施例】
【0019】
試験方法
以下で提供する実施例においては、次の試験方法が使用された。
【0020】
坪量は、ASTM D645およびASTM D645−M−96に準じて測定され、g/m2単位で報告された。
【0021】
厚みは、ASTM D646−96に準じて測定され、mm単位で報告された。
【0022】
引張り強度は、幅2.54cmの供試体および18cmのゲージ長を用いてASTM D828−93に準じて測定され、MPa単位で報告された。
【0023】
経年劣化研究は、ASTM D2413に準じて実施された。窒素が充填されたヘッドスペースを伴う従来の実験用オーブン内に、160℃で340〜2,720時間、単一温度セル経年劣化システムを入れた。115±5℃の温度、75Pa(0.5Torr)以下の絶対圧力で少なくとも16時間供試体を完全に乾燥させ、続いて8時間以上大気圧で紙用油中に曝露して油の中で完全に含浸された状態となるようにすることによって、油含浸を実施した。
【0024】
カナダ規格濾水度は、ISO 5267/2およびTAPPI T227に準じて測定され、ml単位で報告された。
【0025】
ショッパ・リグラー型濾水度は、ISO 5267/1に準じて測定され、ml単位で報告された。
【0026】
多層紙構造体は、従来の製紙技術を用いて調製された。
【0027】
比較例A
100重量パーセントのセルロース系パルプ繊維2層から、2層紙構造体を作製した。各層を、Celco Company(Chile)製のセルロース系木材パルプ(針葉樹)3gの水性分散液から調製した。パルプを、250mlのカナダ規格濾水度まで精製した。水性分散液を8リットルの水と共に、21×21cmのハンドシートモールド内に注ぎ込み、ウェットレイドシートを形成させた。セルロース系パルプ繊維の2枚のウェットレイドシートを2枚の吸い取り紙の間に合わせて置き、麺棒を用いてハンドクーチ(hand couch)し、ハンドシート乾燥機内で10分間150℃で乾燥させた。乾燥させた2層シートを、金属ロールを80℃まで加熱した状態で、金属ロールとソフトロールの間で2800N/cmの線形圧力でカレンダー加工した。結果として得られた2層紙構造体の特性は、表に列挙されている。
【0028】
実施例1〜4
本発明に係る2層紙構造体を、アラミドを含む1層とアラミドを含まない1層から作製した。アラミド含有層は、乾燥されたことのないポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フィブリドスラリーの水性分散液から調製した。米国特許第3,756,908号明細書中に一般的に記載されている要領でメタアラミドフィブリドを作製し、フィブリドは330mlのショッパ・リグラー型濾水度を有していた。
【0029】
アラミドに含まない層を、比較例Aに記載の通りにセルロース系木材パルプを用いて調製した。
【0030】
アラミド対セルロース系パルプ繊維比を、層が20、30、40および50重量パーセントのアラミド含有量を有するように調製した。水性分散液をBritish Pulp Evaluation Apparatus内で3分間合わせて混合し、その後8リットルの水と共に21×21cmのハンドシートモールド内に注ぎ込み、ウェットレイドシートを形成させた。同じ機器を用いて同じセルロース系木材パルプの水性分散液から、アラミドを含まない層を調製した。アラミド含有ウェットレイドシートとアラミドを含まないウェットレイドシートを2枚の吸い取り紙の間に合わせて置き、麺棒を用いてハンドクーチし、ハンドシート乾燥機内で150℃で乾燥させた。乾燥させた2層シートを、比較例Aに記載した通りにカレンダー加工した。結果として得られた2層紙構造体の特性は、表に列挙されている。
【0031】
比較例B
アラミド含有量100重量パーセントの2層から、2層紙構造体を作製した。層は、セルロース系パルプ繊維無しで100%のアラミド含有量を使用したという点を除き、実施例1〜4に記載のアラミド含有層方法を用いて、層を作製した。結果として得られた2層紙構造体の特性は、表に列挙されている。
【0032】
比較例C
典型的な先行技術紙構造体を例証する単層紙構造体を作製した。水性分散液として70重量パーセントのセルロース系木材パルプ、ポリマー結合剤としての20重量パーセントのElvanol(登録商標)70−62ポリ(ビニルアルコール)(Du Pont Companyより入手可)および10重量パーセントのアラミドフロックを使用したという点を除いて、実施例1〜4に記載のアラミド含有層方法を用いて層を作製した。メタアラミドフロックは、線密度0.22tex、長さ0.64cmのポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)フロックであった(Du Pont CompanyよりNOMEX(登録商標)の商標名で販売)。結果として得られた2層紙構造体の特性は、表に列挙されている。
【0033】
以下の実施例4および5は、製紙機械装置を用いた連続プロセスにおける本発明の多層構造体の調製を例証している。
【0034】
実施例5
4本の成形用シリンダを用いて、マルチシリンダ製紙機上で3層構造体をもつ紙を形成させた。
【0035】
第1と第4のシリンダに送り込まれたスラリーは、実施例1〜4に記載のアラミドフィブリドとセルロースパルプを含む水で構成され、総含有量は25重量パーセントのアラミドフィブリドと75重量パーセントのセルロースパルプであった。
【0036】
第2および第3のシリンダに送り込まれたスラリーは水とセルロースパルプだけで構成されていた。
【0037】
スラリー由来の固体を成形用シリンダのスクリーン上に被着させ、これらのシリンダから移動するフエルト上に移送した。
【0038】
湿った多層シートを、湿式プレスおよび乾燥区分に通し、最後に約80℃まで加熱した金属ロールで機械カレンダー加工した。
【0039】
生産された紙は、3層構造体を有し、第1層はアラミド−セルロース、第2層は100%セルロース、そして第3層はアラミド−セルロースであった。結果的に、各層の坪量は39、78および39g/m2であった。紙の総坪量は、156g/cm3、厚みは0.130mm、見かけ密度は0.85g/cm3であった。
【0040】
実施例6
一次および二次ヘッドボックスの備わった長網抄紙機上で2層構造体を形成させた。
【0041】
一次ヘッドボックスに送り込まれたスラリーは、実施例1〜4に記載のセルロースパルプを伴う水で構成されていた。
【0042】
二次ヘッドボックスに送り込まれたスラリーは、セルロースパルプ、メタアラミドフィブリドおよびメタアラミドフロックで構成されていた。このスラリーの固体組成は以下の通りであった。
− セルロースパルプ:50重量パーセント
− メタアラミドフィブリド:30重量パーセント
− メタアラミドフロック:20重量パーセント
【0043】
セルロースパルプ、メタアラミドフィブリドおよびメタアラミドフロックは、フロック長が3mmであったという点を除いて、実施例1〜4の場合と同じであった。
【0044】
ワイヤーの後、2層シートを、湿式プレスと乾燥機区分に通した。
【0045】
乾燥したシートを、180℃まで加熱した2本の金属ロールの間で追加でカレンダー加工した。
【0046】
最終的2層紙構造体は、130g/m2の坪量、0.125mmの厚みそして0.85g/cm3の見かけ密度を有していた。その流れ方向の初期引張り強度は82MPa、横断方向では−43MPaであった。
【0047】
【表1】
【0048】
表に見られる引張り強度は、本発明の実施例1〜4のアラミド含有層を含む多層紙構造体が、アラミド含有量を一切含まない比較例Aおよび単層構造体内にアラミドとポリマー結合剤と含有する先行技術の紙構造体を表わす比較例Cと比べた場合に、加速された熱経年劣化の下でより高い引張り強度保持百分率を有することを示している。
【0049】
本発明の多層紙構造体のアラミド含有層が変圧器コイルと接触させられた場合、紙構造体は、熱劣化に耐え、かつアラミド含有層内にポリマー結合剤材料が存在しないことに起因する粘着の問題を阻止する。
【0050】
次に、本発明の態様を示す。
1.(a)アラミドとセルロースを含む第1層であって、
(i)前記アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)前記セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)前記アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、前記セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、第1層と、
(b)セルロース系パルプ繊維を含む第2層であって、前記第2層がアラミドを含まないことを条件とする、第2層と
を含む多層構造体。
2. 前記アラミドがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である、上記1に記載の多層構造体。
3. 前記第1層がポリマー結合剤を全く含まない、上記1に記載の多層構造体。
4. 前記第1層が25〜50重量パーセントのアラミドと50〜75重量パーセントのセルロースを含む、上記1に記載の多層構造体。
5. 前記第1層が、0.5〜4.0の重量比で存在するフロックとフィブリドを含む、上記1に記載の多層構造体。
6. 前記重量比が0.8〜2.0である、上記5に記載の多層構造体。
7. 少なくとも1つの追加層を有し、前記追加層が、
(a)アラミドとセルロースを含む層であって、
(i)前記アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)前記セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)前記アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、
前記セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、
前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、層、または、
(b)セルロース系パルプ繊維を含む追加層であって、ここで、前記第2層がアラミドを含まないことを条件とする、追加層
を含む、上記1に記載の多層構造体。
8. 両方の追加層が存在する、上記7に記載の多層構造体。
9. 追加層が前記第1層または第2層と同一である、上記7に記載の多層構造体。
10. 導電体と電気絶縁性多層構造体材料とを含むデバイスであって、多層構造体材料が、
(a)アラミドとセルロースを含む第1層であって、
(i)前記アラミドは、0〜50重量パーセントのフロックと50〜100重量パーセントのフィブリドの量のメタアラミドとして存在し、
(ii)前記セルロースは、セルロース系パルプ繊維の形で存在し;かつ
(iii)前記アラミドは、16〜75重量パーセントの量で存在し、
前記セルロースが25〜84重量パーセントの量で存在し、
前記百分率はアラミドとセルロースに基づくものである、第1層と、
(b) セルロース系パルプ繊維を含む第2層であって、ここで、前記第2層がアラミドを含まないことを条件とする、第2層と、
を含む、デバイス。
11. 変圧器である、上記10に記載のデバイス。
12. 油入りである、上記11に記載の変圧器。
13. 少なくとも200kVAの容量を有する、上記10に記載の変圧器。
14. 少なくとも400kVAの容量を有する、上記13に記載の変圧器。