【実施例】
【0019】
実施例の配電系統保護装置のブロック図を
図1に示す。
実施例の配電系統保護装置は定格電圧6600Vの配電系統に適宜配置され、短絡事故等が発生した時に配電線や配電系統内の機器を保護するための装置であって、
図1に示すように以下の構成を有している。
(1)遮断器(PGB)1
(2)PGB1の近傍における配電線の電圧を1サイクル、16.7ミリ秒(以下「ms」という。)毎に検出する電圧検出手段2
(3)PGB1の近傍における配電線の電流を1サイクル毎に検出する電流検出手段3
(4)電流検出手段3で検出された電流の潮流方向を判別する電流方向判別手段4
(5)電圧検出手段2で検出された電圧値が5280V(定格電圧の80%)以下である時に電圧異常と判別する電圧異常判別手段5
(6)電流検出手段3で検出された電流値及び電流方向判別手段4で判別された電流の潮流方向に基づいて電流増分値を演算する電流増分値演算手段6
(7)電流増分値演算手段6で演算された電流増分値が50A以上である時に電流異常と判別する電流異常判別手段7
(8)電圧異常判別手段5で電圧異常と判別され、かつ、電流異常判別手段7で電流異常と判別された状態が900ms以上に亘って継続後、電流検出手段3で検出された電流値が50A以上である時にPGB1を作動させる遮断器作動手段8
(9)電圧異常判別手段5で1400ms以上に亘って電圧異常と判別され、かつ、そのように判別された際において電流検出手段3で検出された電流値が50A以上である時にPGB1を作動させる後備保護手段9
【0020】
図2は、実施例の配電系統保護装置における処理の流れを示すフローチャートである。
このフローチャートの各ステップについて順を追って説明する。
ST01:電圧検出手段2から電圧値を取得する。
ST02:電流検出手段3から電流値を取得する。
ST03:電流方向判別手段4により、電流の潮流方向を判別する。
なお、潮流方向の判別は取得した電流値と電圧値に基づいて行う。
ST04:電圧異常判別手段5により、ST01で取得した電圧値が5280V以下であるか否かを判別する。
そして、判別結果がYesならばST05及びST10に進み、NoならばST01及びST02に戻って次サイクルの電圧値及び電流値を取得する。
ST05:電流増分値演算手段6により、電流増分値を演算する。
ここで、電流増分値の演算は、潮流方向を考慮して行う。例えば、基準となる電流値が160A、潮流方向が逆方向であり、現在の電流値が200A、潮流方向が順方向である場合、電流増分値は200A−(−160A)=360Aとなる。
なお、ST01において電圧検出手段2で取得した電圧値が小さく潮流方向が判定できない場合、現在値は絶対値で電流増分を算出した上でST06に進む。
ちなみに、上記の場合、基準となる電流値が160A、潮流方向が逆方向であり、現在の電流値が200A、潮流方向が順方向であるが電圧値が小さく現在の潮流方向判定を誤った場合、電流増分は−200A−(−160A)=−40Aとなり、PGB1は作動しないこととなる。ここで、現在値を絶対値で電流増分を算出すると、|−200A|−(−160A)=360Aとなり、電流増分値は実際と異なるが、PGB1を作動させることができる。
【0021】
ST06:電流異常判別手段7により、ST05で演算された電流増分値が50A以上であるか否かを判別する。
そして、判別結果がYesならばST07に進み、NoならばST01及びST02に戻って次サイクルの電圧値及び電流値を取得する。
ST07:電流増分値50A以上の継続時間が、900ms経過したか否かを判別する。
そして、判別結果がYesならばST08に進み、NoならばST01及びST02に戻って次サイクルの電圧値及び電流値を取得する。
ST08:ST02で取得した電流値が50A以上であるか否かを判別する。
そして、判別結果がYesならばST09に進んで遮断器を作動させ、NoならばST01及びST02に戻って次サイクルの電圧値及び電流値を取得する。
ST09:遮断器を作動させる。
ちなみに、上記の例では電流増分値は360Aなので、ST01で取得した電圧値が5280V以下であった場合遮断器が作動するが、ST05において、潮流方向を考慮せずに電流増分値の演算を行うと、電流増分値が200A−160A=40Aとなるので、ST01で取得した電圧値が5280V以下であった場合でも遮断器は作動しないこととなる。
ST10:電圧値が5280V以下の継続時間が1400ms以上であるか否かを判別する。
そして、判別結果がYesならばST08に進み、NoならばST01及びST02に戻って次サイクルの電圧値及び電流値を取得する。
【0022】
図3は実施例の配電系統保護装置の動作イメージ図であり、
図16と同様にPGBaが設置されている配電線(
図3では上側の配電線)で短絡が発生した場合を示している。
図16とは過電流か電流増分かの違いはあるが、PGBbが設置されている分岐線(
図3では下側の配電線)に電圧低下が波及しても、分岐線の電流増分が過大となることはないので、分岐線において誤遮断は発生しない。
【0023】
図4は実施例の配電系統保護装置の論理ブロック図である。
図4に示すとおり、実施例の配電系統保護装置は2つの論理ブロックを有し、第1の論理ブロック(上段のブロック)では、電圧異常判別手段5により電圧低下が検出されると、基準となる電流値と現在の電流値から電流増分値を演算して電流増分判定を行い、電流増分値が50A以上の状態が900ms継続し、かつ、電流検出手段3で検出された電流値が50A以上であれば、PGB1が作動する。
第2の論理ブロック(下段のブロック)では、PGB1が投入されている時に電圧異常判別手段5により電圧低下が検出されると、カウンタによるカウントを開始し電圧低下が1400ms間継続した段階において、電流検出手段3で検出された電流値が50A以上であればPGB1が作動する。
【0024】
図5は、実施例の配電系統保護装置における電圧低下検出及び復帰条件を示す図である。
実施例における配電線は3相であり、それぞれをU相、V相、W相と呼ぶこととする。
図5の上側に示すとおり、電圧低下はU相とV相の間における電圧(UV間電圧)、V相とW相の間における電圧(VW間電圧)及びW相とU相の間における電圧(WU間電圧)のいずれか一つが、3サイクル(約50ms)に亘って5280V以下である場合に検出される。
また、
図5の下側に示すとおり、電圧低下状態からの復帰は、UV間電圧、VW間電圧及びWU間電圧の全てが、3サイクル(約50ms)に亘って5280V×1.05以上(約5544V以上)となった場合に判定される。
【0025】
図6は実施例の配電系統保護装置における電流増分検出及び復帰条件を示す図である。
図6の上側に示すとおり、電流増分の異常は、U相を流れる電流の増分(U相電流増分)、V相を流れる電流の増分(V相電流増分)及びW相を流れる電流の増分(W相電流増分)のうちいずれか二つが、50A以上である場合に検出される。
また、
図6の下側に示すとおり、電流増分異常状態からの復帰は、U相電流増分、V相電流増分及びW相電流増分の全てが40A以下となった場合に判定される。
【0026】
図7は実施例の配電系統保護装置におけるタイムチャートの例を示す図である。
図7の横軸は時間軸で1目盛が1サイクル(16.7ms)であり、縦軸はPGB、電圧、電流、電流増分、基準値、遮断CT及び後備遮断CTの各状態を示している。
なお、基準値は電流増分値を演算するに際して基準となる値であり、実施例においては、短絡事故発生後、電圧が低下し、3サイクル継続した時点で電圧低下検出と判定し、電圧低下検出から8サイクル前における電流値及び潮流方向に基づいて基準値を定める。
また、遮断CT及び後備遮断CTはPGB作動までの時間をカウントするカウンタであり、それぞれ900ms及び1400msカウントすると開放出力を発する。
【0027】
図7のタイムチャートについて、順を追って説明する。
(1)配電線に短絡が発生すると電圧が低下する。
(2)電圧が5280V以下の状態が3サイクル継続すれば、電圧低下検出と判定する。
(3)(2)の時点より8サイクル前の電流値を基準値としてラッチし、(4)により電流増分に異常があるか否かを判別する。
(5)電流増分に異常があれば、遮断CTをカウントする。
(6)遮断CTのカウントが継続し、900msまでカウントした(7)の時点で開放出力を発しPGBを作動させる。
(9)(2)の時点で、後備遮断CTのカウントを開始し、1400msまでカウントした(7)の時点で開放出力を発しPGBを作動させるが、このタイムチャートでは遮断CTでPGBを作動させているため、後備遮断CTはクリアされている。
【0028】
図7の右側には、電圧異常及び電流増分異常からの復帰の様子を示している。
すなわち、電圧が約5544V以上の状態が3サイクル継続した時点(8)において電圧異常は解消したものと判断し、その時点で電流増分の異常も解消していれば、電流値のラッチを解除し基準値をリセットさせて通常に戻る。
【0029】
実施例の変形例を列記する。
(1)実施例の配電系統保護装置は、万一遮断動作が不動作であった場合を想定して後備保護手段9を備えているが、電圧が下がっても配電線自体は問題ないので、配電系統内の機器が低電圧でも故障や誤作動等を起こさないものである場合には、後備保護手段9を備える必要はない。
(2)実施例の電圧検出手段2及び電流検出手段3は、PGB1の近傍における配電線の電圧及び電流を16.7ms(60Hzの場合の1サイクル時間)毎に検出するが、精度良く故障を検出するものであれば16.7ms毎でなくても良い。
【0030】
(3)実施例の電圧異常判別手段5は、電圧値が5280V(定格電圧の80%)以下である時に電圧異常と判別するものであったが、5280V(定格電圧の80%)以下に限らず、電圧値が所定の電圧閾値以下(例えば5000V以下)である時、又は電圧値の定格電圧に対する比率が所定の閾比率以下(例えば75%以下)である時に電圧異常と判別するものであれば良い。
また、電圧異常状態からの復帰は、UV間電圧、VW間電圧及びWU間電圧の全てが、3サイクルに亘って5280V×1.05以上となった場合に判定されるようになっていたが、3サイクルに限らず、1〜5サイクルのいずれであっても良く、5280V×1.05以上に限らず、定格電圧の83〜95%のいずれであっても良い。
(4)実施例の電圧異常判別手段5は、UV間電圧、VW間電圧及びWU間電圧のいずれか一つが、3サイクルに亘り5280V以下である場合に検出されるようになっていたが、3サイクルに限らず、1〜5サイクルのいずれであっても良く、5280V以下に限らず、定格電圧の70〜82%のいずれであっても良い。
【0031】
(5)実施例の電流増分演算手段6は、U相電流増分、V相電流増分及びW相電流増分のうちいずれか二つが、50A以上である場合に検出されるようになっていたが、いずれか二つに限らず、いずれか一つであっても良く、50A以上に限らず、41A以上〜100A以上のいずれであっても良い。
また、電流増分異常状態からの復帰は、U相電流増分、V相電流増分及びW相電流増分の全てが40A以下となった場合に判定されるようになっていたが、三相全てに限らず、いずれか二相であっても良く、40A以下に限らず、20A以下〜40A以下のいずれであっても良い。
(6)実施例の電流増分演算手段6は、電圧低下検出から8サイクル前の電流値及び潮流方向を基準値としていたが、短絡発生時の電流の過渡状態の影響がなければ、この時間は電圧異常判別手段5と同じ時間でも良いし、8サイクルより長くても良い。
【0032】
(7)実施例の電流異常判別手段7は、電流増分値が50A以上である時に電流異常と判別するものであったが、50A以上に限らず、電流増分値が所定の電流増分閾値以上(例えば75A以上)である時に電流異常と判別するものであれば良い。
(8)実施例の遮断器作動手段8(第1の論理ブロック(
図4上段))では、電流異常と判別された状態が900ms以上に亘って継続し、かつ、電流検出手段3で検出された電流値が50A以上であればPGB1を作動させるものであったが、電流異常と判別されたらすぐにPGB1を作動させても良く、電流異常と判別された状態が900ms以上に亘って継続したら電流値の大きさにかかわらずPGB1を作動させても良い。また、継続時間は900msに限らず適宜の所定時間(例えば500ms又は1000ms)としても良く、電流値は50A以上に限らず所定の電流閾値以上(例えば20A以上)としても良い。
(9)実施例の後備保護手段9は、電圧異常判別手段5で1400ms以上に亘って電圧異常と判別され、かつ、電流検出手段3で検出された電流値が50A以上である時にPGB1を作動させるものであったが、電圧異常と判別された状態が1400ms以上に亘って継続したらすぐにPGB1を作動させても良い。また、電圧異常と判別される継続時間については、1400ms以上に限らず所定時間より長い適宜の設定時間以上(例えば2000ms以上)としても良く、電流値については、50A以上に限らず所定の電流閾値以上(例えば20A以上)であっても良い。