(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139051
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】マッサージ用ブラシ
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20170522BHJP
A46B 5/02 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
A61H7/00 300E
A46B5/02
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-188719(P2011-188719)
(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公開番号】特開2013-48756(P2013-48756A)
(43)【公開日】2013年3月14日
【審査請求日】2014年2月27日
【審判番号】不服2016-7543(P2016-7543/J1)
【審判請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100113169
【弁理士】
【氏名又は名称】今岡 憲
(72)【発明者】
【氏名】早乙女 明弘
(72)【発明者】
【氏名】江川 紀義
【合議体】
【審判長】
山口 直
【審判官】
内藤 真徳
【審判官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−35807(JP,A)
【文献】
実開昭59−77430(JP,U)
【文献】
特開2003−169718(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0120299(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマッサージ用突起(14)を下面に植設したマッサージブラシであって、
各マッサージ用突起(14)は、縦長棒状の芯部(16)と、この芯部(16)の周面を覆う被覆筒部(18)と、これら芯部(16)及び被覆筒部(18)との各先端を覆う摩擦用端部(20)とからなり、
芯部(16)と摩擦用端部(20)とを、第1の色彩を有する材料で連続形成するとともに、被覆筒部(18)を、第1の色彩と異なる第2の色彩を有する材料で形成し、
上記芯部(16)と摩擦用端部(20)と被覆筒部(18)とがそれぞれ弾性材料で形成されており、
上記摩擦用端部(20)を全体として半球状に形成し、かつ、その中央部(20a)で芯部(16)に連続するとともに、外周部(20b)の上面を被覆筒部(18)の先端面(18a)に密着させていることを特徴とする、マッサージ用ブラシ。
【請求項2】
下面に嵌合凹部(6)を有する把持具(2)と、
上記嵌合凹部(6)に嵌合させた基台(12)を有し、かつこの基台(12)から上記マッサージ用突起(14)を垂設してなるブラシ具(10)と、を具備し、
このブラシ具(10)は、第1基板(12a)から複数の上記芯部(16)を垂下する第1ブラシ部(10A)と、上記第1基板(12a)に重ね合わせるとともに上記芯部(16)に対応する箇所に挿通孔(26)を形成した第2基板(12b)を有しかつ挿通孔(26)の周りから被覆筒部(18)を垂下してなる第2ブラシ部(10B)とを合体させてなり、
上記第1基板(12a)と第2基板(12b)とで基台(12)を形成させたことを特徴とする、請求項1記載のマッサージ用ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のマッサージ用ブラシとして、先端部をやや大径に形成したマッサージ用突起を基台の裏面から多数突設したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−79425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のマッサージ用ブラシは、体表を強く擦るように用いるためにマッサージ用突起の先端部が摩耗していき、所定のマッサージ効果が得られない。そうなると新たなブラシと交換する必要があるが、従来の構成では、外観からはマッサージ用突起の先端部の摩耗の具合が判りにくいという不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、マッサージ用突起の摩耗の程度が視覚により容易に認識でき、交換時期が判るマッサージ用ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、複数のマッサージ用突起14を下面に植設したマッサージブラシであって、
各マッサージ用突起14は、縦長棒状の芯部16と、この芯部16の周面を覆う被覆筒部18と、これら芯部16及び被覆筒部18との各先端を覆う摩擦用端部20とからなり、
芯部16と摩擦用端部20とを、第1の色彩を有する材料で連続形成するとともに、被覆筒部18を、第1の色彩と異なる第2の色彩を有する材料で形成し、
上記芯部16と
摩擦用端部20
と被覆筒部18とがそれぞれ弾性材料で形成されており、
上記摩擦用端部20を全体として半球状に形成し、かつ、その中央部20aで芯部16に連続するとともに、外周部20bの上面を被覆筒部18の先端面18aに密着させている。
【0007】
本手段は、異色の2種類の材料により形成されたマッサージ用突起14を有するマッサージ用ブラシであって、各マッサージ用突起14の先端の摩擦用端部20が摩耗することで異なる色彩の材料が現れるように構成したものと提案する。上記マッサージ用突起14は、棒状の芯部16と芯部16を囲む被覆筒部18とこれら芯部16及び被覆筒部18の各先端を覆う摩擦用端部20とを有し、この摩擦用端部20は、中央部20a上面で芯部16に連続させる(
図3(A)参照)
。マッサージ用突起14のうち摩擦用端部20及びこれと連続する部分は、第1の色彩を有する材料で、摩擦用端部20と連続しない部分は、第1の色彩と異なる第2の色彩を有する材料でそれぞれ形成する。未使用の状態ではマッサージ用突起14の先部には第1の色彩のみが見え、使用による摩擦用端部20の摩耗により第2の色彩を有する材料が現れる。
また本手段は、図3(A)に示すように摩擦用端部20の外周部20bが被覆筒部18を覆う態様を示している。図3(B)→図4(B)→図5(B)のように摩擦用端部20の摩耗が進行するに伴い、第2の色彩を有する被覆筒部18の先端面18aの露出面積が徐々に露出するため、摩耗の進行状況を把握し易い。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
下面に嵌合凹部6を有する把持具2と、
上記嵌合凹部6に嵌合させた基台12を有し、かつこの基台12から上記マッサージ用突起14を垂設してなるブラシ具10と、を具備し、
このブラシ具10は、第1基板12aから複数の上記芯部16を垂下する第1ブラシ部10Aと、上記第1基板12aに重ね合わせるとともに上記芯部16に対応する箇所に挿通孔26を形成した第2基板12bを有しかつ挿通孔26の周りから被覆筒部18を垂下してなる第2ブラシ部10Bとを合体させてなり、
上記第1基板12aと第2基板12bとで基台12を形成させた。
【0009】
本手段は、
図1に示す本発明のマッサージ用ブラシの基本構造を示す図である。このブラシは、マッサージ用突起14を有するブラシ具10と、このブラシ具10を嵌合するための嵌合凹部6を有する把持具2とで構成されている。これにより把持具2の性能・特性と関係なく、ブラシ具10をマッサージに適した柔軟な材料(エラストマーなど)で形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
第1の手段に係る発明によれば、第1の色彩を有する材料で形成した摩擦用端部20の摩耗により、第1の色彩と異なる第2の色彩が現われ、商品の交換時期が判る。
また第1の手段に係る発明によれば、摩擦用端部20が第1の色彩を有し、かつ摩擦用端部20の外周部20bの上面を、第2の色彩を有する被覆筒部18の先端面18aに密着させたから、摩擦用端部20の摩耗に伴って第2の色彩の露出面積が増大することを視認でき、摩耗し尽くす前に交換用の商品を買い足すことができる。
第2の手段に係る発明によれば、ブラシ具10は把持具2とは別体であり、ブラシ作用に適した材料を選択して形成できる
。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るマッサージ用ブラシの縦断面図である。
【
図3】
図1のマッサージ用ブラシのマッサージ用突起の拡大図であり、同図(A)は縦断面図、同図(B)は底面図である。
【
図4】
図3のマッサージ用突起の摩擦用端部の摩耗がある程度進んだ状態を示す図であり、同図(A)は縦断面図、同図(B)は底面図である。
【
図5】
図3のマッサージ用突起の摩擦用端部が摩耗し尽くした状態を示す図であり、同図(A)は縦断面図、同図(B)は底面図である。
【
図6】本発明の
参考例に係るマッサージ用ブラシの縦断面図である。
【
図7】
図6のマッサージ用ブラシのマッサージ用突起の縦断面図である。
【
図8】
図7のマッサージ用突起の摩擦用端部の摩耗が進行した状態を示す図であり、同図(A)は縦断面図、同図(B)は底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1から
図5は、本発明の第1の実施形態に係るマッサージ用ブラシを示している。このマッサージ用ブラシは、本実施形態では、
図1に示す如く、別体である把持具2とブラシ具10とで形成されている。
【0017】
把持具2は、水平盤状の本体4の裏面中央に嵌合凹部6を有している。本体4の上面にはハンドル(図示せず)を付設することができる。把持具2は、例えば合成樹脂材で形成することができる。
【0018】
ブラシ具10は、基台12の裏面から多数のマッサージ用突起14を垂下してなる。このブラシ具10は、軟材質のエラストマー等で形成することが好適である。上記基台12は上記嵌合凹部6内に嵌合させる。基台12を嵌合凹部6に対して着脱自在に形成して、ブラシ具10のみを交換できるようにしてもよい。
【0019】
上記マッサージ用突起14は、
図1に示す如く、縦長棒状の芯部16と、この芯部16の外周面全体を覆う被覆筒部18と、芯部16及び被覆筒部18の各先端を覆う摩擦用端部20とで形成されている。
【0020】
本実施形態では、摩擦用端部20は、
図3(A)の如く、その中央部20aで芯部16と連続するとともに、外周部20bの上面で被覆筒部18の先端面18aを覆っている。
その摩擦用端部20は、略半球状
に形成されている。
【0021】
図示のブラシ具10は、第1ブラシ部10Aと第2ブラシ部10Bとからなり、インサート成形や2色成形などにより形成することができる。
【0022】
上記第1ブラシ部10Aは、水平な第1基板12aの適所から複数の上記芯部16を垂下するとともに、芯部16の先端に上記摩擦用端部20の中央部20aを連結している。
【0023】
上記第2ブラシ部10Bは、上記第1基板12aに重ね合わせた第2基板12bを有し、この第2基板12bのうち芯部16に対応する個所に、芯部16の横断面に対応する形状の挿通孔26を開口して、この挿通孔26の孔縁から被覆筒部18を垂下している。この被覆筒部18は上記芯部16の外周面に密接している。また図示例では、上記第2基板12bの周縁からは短い嵌合周壁28を起立し、この嵌合周壁28内に第1基板12aを嵌合させている。第1基板12aと第2基板12bとで
図1に示す如く、前述の基台12を形成している。
【0024】
第1ブラシ部10A及び第2ブラシ部10Bは、マッサージ用突起14が適度のマッサージ作用を発揮するように、適当な強度を有する弾性材料、特にエラストマーで形成することが望ましい。第1ブラシ部10Aは、摩擦用端部20が体表面に対してソフトな感触を生ずるように柔らかい素材に、そして第2ブラシ部10Bは相対的に硬い素材に形成してもよい。
【0025】
ここで説明の便宜上、第1ブラシ部10Aの素材の色彩を第1の色彩といい、また第2ブラシ部10Bの素材の色彩を第2の色彩というものとすると、これら両者は、十分に識別可能な程度に相違するものとする。これにより摩擦用端部20の摩耗の状況が容易に判るようにするためである。
【0026】
本実施形態では、把持具2とブラシ具10とを別体として構成しているが、これは発明の必須条件ではなく、適宜変更できる。
【0027】
上記構成によれば、未使用の状態において、
図2に示すようにマッサージ用突起14の突出方向からみたときに、マッサージ用突起14の先部は、第1の色彩のみを呈する。マッサージ用ブラシを使用し始めると、半球状の摩擦用端部20は下面側から摩耗する。摩耗が進行すると、
図4(B)に示すように第2の色彩を有する被覆筒部18の先端面18aが徐々に露出する。被覆筒部18の先端面18aが露出し始めると、体表面に対する触感が悪くなるので、マッサージ用ブラシ(又はブラシ具)を交換することが望ましい。
図5(B)に示すように摩擦用端部20が摩耗し尽くされると、第2の色彩を有する上記先端面18aが完全に露出する。
【0029】
図6から
図8は、本発明の
参考例に係るマッサージ用ブラシを示している。
その説明において、第1の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付することで説明を省略する。参考例では、摩擦用端部20が芯部16に代えて被覆筒部18に連続している。すなわち、
図7に示すように摩擦用端部20の外周部20bが被覆筒部18に連続するとともに、摩擦用端部20の中央部20aで芯部16の先端面16aを覆っている。図示の芯部16の先端面16aは略半球状に形成している。
【0030】
本参考例では、第2ブラシ部10Bは、摩擦用端部20が体表面に対してソフトな感触を生ずるように柔らかい素材に、そして第1ブラシ部10Aは相対的に硬い素材に形成してもよい。
【0031】
上記構成において、摩擦用端部20が摩耗すると、
図8(A)及び
図8(B)に示す如く芯部16の先端面16aの一部が露出する。これにより、マッサージ用ブラシの交換時期が判る。
【0032】
この参考例では、未使用状態では、マッサージ用突起14全体から第2基板12bの下面に亘る範囲で第1の色彩を有しており、摩擦用端部20の摩耗により第2の色彩が露出したときに目立ち易い。
【符号の説明】
【0033】
2…把持具 4…本体 6…嵌合凹部
10…ブラシ具 10A…第1ブラシ部 10B…第2ブラシ部
12…基台 12a…第1基板 12b…第2基板
14…マッサージ用突起 16…芯部 16a…先端面
18…被覆筒部 18a…先端面
20…摩擦用端部 20a…中央部 20b…外周部
26…挿通孔 28…嵌合周壁