特許第6139072号(P6139072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139072
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】電気化学デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/52 20130101AFI20170522BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20170522BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20170522BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20170522BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01G11/52
   H01G11/84
   H01M2/18 Z
   H01M10/0587
   H01M10/052
   H01M10/058
   H01M10/0566
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-169061(P2012-169061)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29895(P2014-29895A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】加納 幸司
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−272473(JP,A)
【文献】 特開平11−283676(JP,A)
【文献】 特開2002−100396(JP,A)
【文献】 特開2011−216600(JP,A)
【文献】 特開2005−285691(JP,A)
【文献】 特開平09−180704(JP,A)
【文献】 特開平10−326629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/52
H01G 11/84
H01M 2/18
H01M 10/052
H01M 10/0566
H01M 10/058
H01M 10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、当該正極層に対向し、リチウムイオンがプレドープされた負極層と、セルロースからなり、前記正極層と前記負極層との間に配置されるセパレータと、を有し、前記負極層を内側として捲回された捲回構造とされ、当該捲回構造の所定の径より内側の部分にリチウムイオンの電解析出反応を抑制する抑制層が設けられた蓄電素子と、
前記蓄電素子を電解液とともに収容するケースと
を具備し、
前記抑制層は、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン重合体からなり、前記セパレータを被覆し、イオンの移動を抑制する樹脂層である
電気化学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイスであって、
前記抑制層は、前記正極層と前記負極層との間に配置されている
電気化学デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学デバイスであって、
前記蓄電素子における前記捲回構造の中心をなす芯軸を更に具備する、
電気化学デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
前記所定の径は、前記負極層の内径と前記正極層の外径との差の15倍より大きい
電気化学デバイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
前記電気化学デバイスは、前記正極層が炭素系の正極活物質を含むリチウムイオンキャパシタである
電気化学デバイス。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電気化学デバイスであって、
前記電気化学デバイスは、前記正極層がリチウム含有金属酸化物を含むリチウムイオン二次電池である
電気化学デバイス。
【請求項7】
セルロース系の基材を有するセパレータの一部をフッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン重合体からなる樹脂によって被覆し、前記セパレータに、前記樹脂によって被覆されていない第1の領域と、前記樹脂によって被覆され、前記第1の領域よりもイオンの透過が抑制された第2の領域とを形成し、
正極層と負極層との間に前記セパレータを配置した積層体を、前記負極層を内側として前記第2の領域側から捲回する
電気化学デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な蓄電素子を内蔵したシリンダ型電気化学デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力特性の優れる電気化学デバイスとして、いわゆるシリンダ型のものがある(例えば、特許文献1,2参照)。シリンダ型電気化学デバイスは、シリンダ形状のケースに捲回構造の蓄電素子が電解液とともに封入され、当該蓄電素子の正極及び負極に接続された端子がそれぞれケースの外に引き出された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4015993号
【特許文献2】国際公開第2007/026492号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダ型電気化学デバイスには、特に高出力での良好な充放電特性が期待されるため、高出力での長期間の使用に耐え得る、より優れた長期信頼性が要求される。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、長期信頼性に優れる電気化学デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは蓄電素子とケースとを具備する。
上記蓄電素子は、正極層と、当該正極層に対向し、リチウムイオンがプレドープされた負極層と、上記正極層と上記負極層との間に配置されるセパレータと、を有し、上記負極層を内側として捲回された捲回構造とされ、当該捲回構造の所定の径より内側の部分にリチウムイオンの電解析出反応を抑制する抑制層が設けられる。
上記ケースは、上記蓄電素子を電解液とともに収容する。
【0007】
本発明の一形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、セパレータに、第1の領域と、当該第1の領域よりもイオンの透過が抑制された第2の領域とを形成し、正極層と負極層との間に上記セパレータを配置した積層体を、上記負極層を内側として上記第2の領域側から捲回する。
【0008】
本発明の別の形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、負極層に、第1の領域と、上記第1の領域よりも負極活物質の量が多い第2の領域とを形成し、上記第1の領域と上記第2の領域とが形成された上記負極層にリチウムイオンをプレドープし、上記負極層にセパレータを介して正極層を配置した積層体を、上記負極層を内側として上記第2の領域側から捲回する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタの斜視図である。
図1B図1Aに示したリチウムイオンキャパシタの上面図である。
図2図1Aに示したリチウムイオンキャパシタのケースを破断して示した斜視図である。
図3A図2に示したリチウムイオンキャパシタの蓄電素子の製造過程における断面図である。
図3B図2に示したリチウムイオンキャパシタの蓄電素子の断面図である。
図4図3Bに示した蓄電素子の最外層における負極層の内径と正極層の外径との関係を示したグラフである。
図5】正極層、セパレータ及び負極層の総厚tと、負極層の内径の臨界径yとの関係を示したグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタの製造過程における断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタの製造過程における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは蓄電素子とケースとを具備する。
上記蓄電素子は、正極層と、当該正極層に対向し、リチウムイオンがプレドープされた負極層と、上記正極層と上記負極層との間に配置されるセパレータと、を有し、上記負極層を内側として捲回された捲回構造とされ、当該捲回構造の所定の径より内側の部分にリチウムイオンの電解析出反応を抑制する抑制層が設けられる。
上記ケースは、上記蓄電素子を電解液とともに収容する。
一般的なシリンダ型電気化学デバイスでは、例えば100C以上の充放電を繰り返し、大電流が流れる場合に、捲回構造の内側部分においてリチウム金属のデンドライトが発生しやすい。しかし、この電気化学デバイスでは、リチウム金属のデンドライトが発生しやすい上記捲回構造の内側部分においてリチウムイオンの電解析出反応が抑制される。つまり、この電気化学デバイスでは、上記蓄電素子の上記捲回構造の内側部分においてリチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0011】
上記抑制層は、上記正極層と上記負極層との間に配置されていてもよい。
この電気化学デバイスによれば、抑制層において、イオンが上記正極層と上記負極層との間を移動しにくいため、上記蓄電素子の上記捲回構造の内側部分において大電流が流れることが抑制され、リチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0012】
上記抑制層は、上記セパレータを折り返して重ね合わせることにより形成されていてもよい。
この電気化学デバイスによれば、抑制層において、上記正極層と上記負極層との間に、複数の上記セパレータが積層されているため、イオンが上記正極層と上記負極層との間を移動しにくく、リチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0013】
上記抑制層は、上記セパレータを被覆する樹脂層を含んでもよい。
この電気化学デバイスによれば、上記抑制層において、上記正極層と上記負極層との間に、上記セパレータに加えて上記樹脂層が設けられているため、イオンが上記正極層と上記負極層との間を移動しにくい。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0014】
上記蓄電素子は、上記抑制層における負極活物質の量が相対的に多くなるように構成されていてもよい。
この電気化学デバイスによれば、上記抑制層において、負極活物質の量が多く、より多くのリチウムイオンのプレドープが可能となる。そのため、上記蓄電素子の上記捲回構造の内側部分において大電流が流れる場合にも、上記正極層から上記負極層へのイオンの移動に上記負極層にプレドープされたリチウムイオンが追従可能となり、リチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0015】
上記電気化学デバイスは、上記蓄電素子における上記捲回構造の中心をなす芯軸を更に具備してもよい。
この電気化学デバイスによれば、上記蓄電素子の捲回構造を容易に形成できるようになる。
【0016】
上記所定の径は、上記負極層の内径と上記正極層の外径との差の15倍より大きくてもよい。
この電気化学デバイスによれば、リチウム金属の析出によりデンドライトが発生しやすい上記蓄電素子の上記捲回構造の内側部分においてリチウム金属の析出がより効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0017】
上記電気化学デバイスは、上記正極層が炭素系の正極活物質を含むリチウムイオンキャパシタであってもよい。
【0018】
上記電気化学デバイスは、上記正極層がリチウム含有金属酸化物を含むリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0019】
本発明の一形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、セパレータに、第1の領域と、当該第1の領域よりもイオンの透過が抑制された第2の領域とを形成し、正極層と負極層との間に上記セパレータを配置した積層体を、上記負極層を内側として上記第2の領域側から捲回する。
この電気化学デバイスの製造方法によれば、上記第2の領域において、イオンが上記正極層と上記負極層との間の移動しにくい電気化学デバイスを製造することができる。この電気化学デバイスの上記第2の領域では大電流が流れることが抑制され、リチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0020】
上記電気化学デバイスの製造方法における上記第2の領域を形成することは、上記セパレータの長手方向の一端を折り返して上記セパレータを重ね合わせることを含んでもよい。
この電気化学デバイスの製造方法によれば、上記正極層と上記負極層との間の移動しにくい電気化学デバイスを容易に製造することができる。
【0021】
本発明の別の形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、負極層に、第1の領域と、上記第1の領域よりも負極活物質の量が多い第2の領域とを形成し、上記第1の領域と上記第2の領域とが形成された上記負極層にリチウムイオンをプレドープし、上記負極層にセパレータを介して正極層を配置した積層体を、上記負極層を内側として上記第2の領域側から捲回する。
この電気化学デバイスの製造方法によれば、上記第2の領域において、上記第1の領域よりも上記負極層におけるリチウムイオンのプレドープ量が多い電気化学デバイスを製造することができる。この電気化学デバイスでは、蓄電素子の周方向の内側部分において大電流が流れる場合にも、上記負極層へのイオンの移動に上記負極層にプレドープされたリチウムイオンが追従するため、リチウム金属の析出が効果的に抑制される。したがって、この電気化学デバイスは、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態では、電気化学デバイスとしてリチウムイオンキャパシタを例示する。
【0023】
<第1の実施形態>
図1Aは本発明の第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10の斜視図であり、図1B図1Aに示したリチウムイオンキャパシタ10の上面図である。なお、図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。X軸、Y軸、およびZ軸は全図において共通である。
【0024】
リチウムイオンキャパシタ10は、底部を備えた円筒状の容器11a及び当該容器11aを密閉する蓋11bとからなるケース11と、当該ケース11の蓋11bから引き出された正極端子12a(第1の端子)及び負極端子12b(第2の端子)からなる端子部12と、を具備する。正極端子12aは負極端子12bよりも長く、正極端子12aと負極端子12bとは容易に識別可能である。
【0025】
容器11aの外径や高さは適宜決定される。具体的には、容器11aのXY平面における外径は、例えば、12.5mmや18.0mmや25.0mmとすることができる。また、容器11aのZ軸方向に沿った高さは、例えば、35.0mmや40.0mmとすることができる。容器11aの外径に併せて、正極端子12aと負極端子12bとのX軸方向における間隔も適宜決定される。正極端子12aと負極端子12bとの間隔は、例えば、容器11aの外径が12.5mmの場合に5.0mmとされ、容器11aの外径が18.0mmの場合に8.0mmとされ、容器11aの外径が25.0mmの場合に13.0mmとされる。
【0026】
ケース11の容器11a及び蓋11bは、内部に収容する電解液によって腐食されにくい金属材料や樹脂材料によって形成される。正極端子12a及び負極端子12bは高い導電性を有する金属材料によって形成される。
【0027】
図2は、ケース11の一部を破断して示したリチウムイオンキャパシタ10の斜視図である。リチウムイオンキャパシタ10は、ケース11内に収容された蓄電素子19を具備する。図2では、説明の便宜上、蓄電素子19の外周部分を各構成ごとに分離して示している。
【0028】
蓄電素子19は、正極層13a及び正極集電体13bからなる正極シート13と、負極層14a及び負極集電体14bからなる負極シート14と、正極層13aと負極層14aとの間を隔てるセパレータ15とを有する。正極集電体13bは正極層13aのセパレータ15側とは反対側の面に対面し、負極集電体14bは負極層14aのセパレータ15側とは反対側の面に対面している。
【0029】
また、蓄電素子19は、正極集電体13bに、正極層13a側とは反対側に対面するセパレータ16を有する。セパレータ16、正極シート13、セパレータ15及び負極シート14が厚さ方向に積層されたシート状の積層体を、説明の便宜上、蓄電ユニット100と呼称することとする。
【0030】
蓄電素子19は、蓄電ユニット100が捲回されるための軸となる芯軸18を有する。芯軸18は、Z軸方向に延びる円柱状の部材である。芯軸18は電解液によって腐食されにくい材料で形成されている。そのような材料としては、例えば、鉄、ニッケル、SUS(Steel Use Stainless)等の金属材料や、ポリオレフィン等の樹脂材料が挙げられる。
【0031】
芯軸18のXY平面における外径はCであり、Cの値は適宜決定可能である。芯軸18のZ軸方向の長さは、蓄電ユニット100のZ軸方向の幅よりもやや大きく、芯軸18は蓄電ユニット100を捲回する際における中心軸とされるとともに、蓄電ユニット100をZ軸方向全体にわたって保持する。
【0032】
蓄電ユニット100は、負極14側を内側とし、セパレータ16を外側とした状態で芯軸18を中心として捲回されて捲回構造とされる。したがって、蓄電素子19では、蓄電ユニット100の捲回構造における各周はセパレータ16によって隔てられる。より詳細には、隣接する蓄電ユニット100の周において、内側の周の正極集電体13bと外側の周の負極集電体14bとの間に内側の周のセパレータ16が配置される。セパレータ16は蓄電ユニット100における隣接する各周の間を電気的に絶縁する役割を有する。
【0033】
リチウムイオンキャパシタ10では、蓄電素子19がリチウム塩の有機溶媒溶液からなる電解液とともにケース11内に封入される。電解液に用いられるリチウム塩としては、LiPFやLiBFが挙げられる。電解液に用いられる有機溶媒としては、上記のリチウム塩を溶解可能なものであればその制限はない。
【0034】
正極層13aは、活物質を含むシートで構成される。ここで正極層13aに用いられる活物質を正極活物質と呼ぶこととする。正極活物質は、電解質イオン(例えば、自然電位より高い電位ではPF(ヘキサフルオロリン酸イオン)であり、自然電位より低い電位ではLi(リチウムイオン)である。)をその表面に吸着させ、電気二重層を形成させる物質である。正極活物質としては、例えば、活性炭やPAS(Polyacenic Semiconductor:ポリアセン系有機半導体)が挙げられる。電気二重層によって正極活物質と電解液との間でキャパシタが形成される。
【0035】
正極層13aは、具体的には、正極活物質の粒子、導電補助剤(例えばケッチェンブラック)及びバインダ(例えばPTFE(polytetrafluoroethylene))の混合物を圧延してシート状に形成し、それを所定サイズに裁断することで作製される。このように作製された正極層13aは、捲回される際に、それに伴う程度の長手方向の伸延変形や圧縮変形が可能である。
【0036】
負極層14aは、リチウムイオンを吸蔵可能な活物質を含むシートで構成される。ここで負極層14aに用いられる活物質を負極活物質と呼ぶこととする。負極活物質は、リチウムイオン(Li)を吸蔵及び放出を行なうことにより、充放電可能な物質である。負極活物質としては、例えば、黒鉛や難黒鉛化炭素やPASが挙げられる。
【0037】
負極層14aは、具体的には、負極活物質の粒子、導電補助剤(例えばケッチェンブラック)及びバインダ(例えばPVdF(PolyVinylidene Fluoride))の混合物を分散媒中に分散させたペーストを金属箔に塗布することでシート状に形成し、それを所定サイズに裁断することで作製される。このように作製された負極層14aは、捲回される際に、それに伴う程度の長手方向の伸延変形や圧縮変形が可能である。なお、上記ペーストを作製する際の分散媒としては、例えば、有機溶剤や水を用いることができる。特に、分散媒として水を用いる場合には、バインダとしてSBR(スチレンブタジエンゴム)を使用し、粘度調整にはCMC(カルボキシメチルセルロース)を使用することができる。
【0038】
セパレータ15は、正極層13aと負極層14aとの間に配置され、電解液を保持可能な絶縁材料で構成される。セパレータ15は、その厚み方向にイオンが通過可能な多孔質の材料からなる。セパレータ15としては、例えば、電解コンデンサ紙やクラフト紙などのセルロース系の基材、ポリプロピレンやポリエチレンなどの多孔質フィルム基材、ガラス繊維基材を採用することができる。セパレータ15の厚さは、適宜決定可能であり、特に限定されない。本実施形態では、セパレータ15の厚さを0.02〜0.2mm程度とした。
【0039】
セパレータ16は、セパレータ15と同様の構成とすることができる。セパレータ16は、蓄電ユニット100における隣接する各周の間を電気的に絶縁することが主な役割であり、セパレータ15とはその厚さ方向のイオンの透過性が異なっていてもよい。そのため、セパレータ16を形成する材料としては、多種多様なものを採用することができる。しかし、本実施形態では、製造工程の簡略化のため、セパレータ15と同一の材料を用いた。
【0040】
なお、負極シート14は正極シート13よりもZ軸方向の幅がやや広く、セパレータ15,16は負極シート14よりもZ軸方向の幅がやや広い。これにより、正極シート13と負極シート14とがショートすることが防止される。
【0041】
集電体13b,14bとしては、導電性を有する金属箔を用いることができる。正極集電体13bを形成する材料としては、例えば、アルミニウムやチタンが挙げられる。また、負極集電体14bを形成する材料としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル、及びこれらの合金が挙げられる。集電体13b,14bの厚さは適宜決定可能であり、特に限定されない。正極集電体13bと負極集電体14bとでその厚さが異なるように構成してもよい。本実施形態では、正極集電体13bとして10〜50μm程度のアルミニウム箔を用い、負極集電箔14bとして10〜30μm程度の銅箔を用いた。
【0042】
上述した正極端子12aは正極集電体13bに接続され、負極端子12bは負極集電体14bに接続されている。正極端子12a及び負極端子12bは、ケース11の蓋11bを内側から外側に挿通し、それぞれケース11の外側に引き出されている。
【0043】
図3Aは捲回前における蓄電素子19の模式図であり、図3Bは捲回後における蓄電素子19の模式図である。図3A及び図3Bは、蓄電素子19の図1A図2におけるXY平面に平行な面における断面を示している。
【0044】
芯軸18は2つの半円柱状部18b,18cからなる。2つの半円柱状部18b,18cは、その円柱状の側面とは反対の平面状の側面が相互に対向するように配置されることにより一体として円柱形状をなしている。2つの半円柱状部18b,18cは、その端部で互いに接合されて単一の部材に固定されていても、別部材によって固定されていてもよい。
【0045】
芯軸18は、2つの半円柱状部18b,18cの間に形成された隙間部18aを有する。隙間部18aの幅(半円柱状部18b,18cの間隔)は、セパレータ15の厚さよりやや大きく形成され、隙間部18aにはセパレータ15の一端が通される。芯軸18は、隙間部18aによってセパレータ15を挟んだ状態(図3A参照)で、回転させられる。これにより、芯軸18に蓄電ユニット100が捲回されて捲回構造とされる。芯軸18の隙間部18aがセパレータ15を挟み込んでことにより、蓄電ユニット100の捲回時に芯軸18が蓄電ユニット100に対して空転することが防止される。
【0046】
なお、芯軸18の形状は、図3Aに示した形状に限らない。芯軸18は、図3Aに示す半円柱状部18b,18cのように、2つの部分の間にセパレータを挟むことが可能な構成を有していればよい。したがって、芯軸18は、例えば、2本の円柱部によって構成されていても、2本の多角柱部によって構成されていてもよい。
【0047】
蓄電素子19では、図3Aに示すように、セパレータ15の一端が、芯軸18の隙間部18aに通され、更に、芯軸18の外周を巻き回されることにより折り返され、セパレータ15上に重ねられている。これにより、蓄電ユニット100は、セパレータ15が1層の領域Aに隣接して、セパレータ15が2層の領域Bが形成される。
【0048】
領域Bでは、セパレータ15が2重になっているため、領域Aよりもイオンがセパレータ15を透過しにくい。具体的には、同条件で領域Aと領域Bとにおいてイオンがセパレータ15を透過する場合を仮定すると、セパレータ15をイオンが透過する速度は、領域Bでは領域Aの2分の1となる。換言すると、領域Aでは、領域Bよりもイオンがセパレータ15を2倍透過しやすい。したがって、領域Bでは領域Aよりも正極層13aと負極層14aとの間でイオンが移動しにくい。このように、領域Bにおける2層のセパレータ15は、正極層13aと負極層14aとの間のイオンの移動を抑制する抑制層として機能する。
【0049】
蓄電ユニット100は、芯軸18が図3Aのブロック矢印が示す方向に回転させられることにより、芯軸18に捲回されて捲回構造とされる。芯軸18に蓄電ユニット100を捲回する工程では、実際には、セパレータ16、正極集電体13b、正極層13a、セパレータ15、負極層14a及び負極集電体14bが個別に供給され、芯軸18に巻き取るとともに蓄電ユニット100として一体化される。勿論、図3Aに示すように、蓄電ユニット100として一体化した後に芯軸18に巻き取ってもよい。
【0050】
図3Bは、芯軸18に蓄電ユニット100を2周巻き取った状態を示している。捲回された蓄電素子19の同じ周における負極層14aの内周と正極層13aの外周とでは正極層13aの外周の方が長い。したがって、蓄電素子19の蓄電ユニット100では、対応する正極層13aの面積と負極層14aの面積とでは、相対的に正極層13aの面積の方が大きい。そのため、捲回された蓄電ユニット100では、平板状の蓄電ユニットと比較して、充放電時における単位面積あたりにおける正極層13aと負極層14aとの間のイオンの移動量が多くなる。この現象は、負極層14aの面積に対して正極層13aの面積が大きい場合ほど顕著である。
【0051】
そのため、蓄電ユニット100の捲回構造は、例えば100C以上の充放電を繰り返し、大電流が流れる場合に、内側部分においてリチウム金属のデンドライトが発生しやすい構造と言える。つまり、正極層13aと負極層14aとの間に大電流が流れる場合に、正極層13aから負極層14aにイオンが供給される速度に、負極層14aに吸蔵されたリチウムイオンが追従できなくなることが想定される。具体的には、負極層14aにおける充電時の主反応である「Li+C+e→LiC」が進行するとともに、この主反応に付随しうる副反応である「Li+e→Li(リチウム金属)」が進行する場合がある。ここで、この副反応をリチウムイオンの電解析出反応と呼ぶこととする。
【0052】
負極層14aにおいてリチウムイオンの電解析出反応が進行すると、リチウム金属のデンドライトが発生する。負極層14aの面積に対して正極層13aの面積が大きい場合ほど、負極層14aにおけるリチウムイオンの電解析出反応が発生しやすい。したがって、捲回された蓄電素子19において、負極層14aの面積に対して正極層13aの面積が大きい部分ほどリチウムイオンの電解析出反応が進行しやすく、デンドライトが発生しやすい。以下に詳述するが、そのような部分とは蓄電素子19の周方向の内側部分である。
【0053】
ここで、図3Bに示すように、1周目の蓄電ユニット100における、負極層14aの内径をDIN1とし、正極層13aの外径をDOUT1とする。また、2周目の蓄電ユニット100における、負極層14aの内径をDIN2とし、正極層13aの外径をDOUT2とする。そうすると、1周目の蓄電ユニット100における、負極層14aの内周の長さはDIN1×πと表され、正極層13aの外周の長さはDOUT1×πと表される。また、2周目の蓄電ユニット100における、負極層14aの内周の長さはDIN2×πと表され、正極層13aの外周の長さはDOUT2×πと表される。
【0054】
1周目及び2周目の蓄電ユニット100における、正極層13aの外周の長さと負極層14aの内周の長さとの差の、負極層14aの内周の長さに対する割合は以下の数式(1),(2)で表される。
【0055】
(1)100×(DOUT1―DIN1)/DIN1 [%]
(2)100×(DOUT2―DIN2)/DIN2 [%]
【0056】
ここで、蓄電ユニット100は、正極層13aが負極層14aよりも幅が狭い構成ではあるものの、正極層13aの幅と、正極層13aに対向する負極層14aの幅とは等しいと考えられる。そのため、正極層13aの外周面の面積と負極層14aの内周面の面積(本明細書では、負極層14aにおける正極層13aに対向する部分の面積をいうものとする。)との差の、負極層14aの内周面の面積に対する割合も同様に数式(1),(2)で表される。蓄電ユニット100における正極層13a、セパレータ15及び負極層14aの総厚tは捲回された蓄電ユニットの周に関わらず一定である。具体的には、数式(1)における(DOUT1―DIN1)と数式(2)における(DOUT2―DIN2)とでは、(DOUT1―DIN1)=(DOUT2―DIN2)=2tである。
【0057】
一方、図3Bに示すように、DIN1、DOUT1、DIN2、DOUT2の大小関係は、DIN1>DOUT1>DIN2>DOUT2と表される。具体的には、DIN1とDIN2とではDIN1<DIN2である。そのため、数式(1)と数式(2)との大小関係は、数式(1)>数式(2)と表される。
【0058】
この関係は、蓄電ユニット100の、1週目と2周目に限らず、隣接する全ての周において成立する。したがって、これらを一般化し、n周目の蓄電ユニット100における負極層14aの内周の長さをDINnとすると、蓄電素子19における、正極層13aの外周面の面積と負極層14aの内周面の面積との差の、負極層14aの内周面の面積に対する割合は以下の数式(3)で表され、以下の数式(4)が成立する。
【0059】
(3)100×2t/DINn [%]
(4)100×2t/DINn>100×2t/DIN(n+1)
【0060】
数式(3)で得られる値は、正極層13aの外周の面積と負極層14aの内周の面積との差の、負極層14aの内周の面積に対する割合を示しており、この値が大きいほど充放電時にリチウム金属が析出しやすく、この値が小さいほど充放電時にリチウム金属が析出しにくい。
【0061】
数式(3)から明らかなように、数式(3)で得られる値は、蓄電素子19における、周方向の内側(nの値が小さい側)ほど大きく、周方向の外側(nの値が大きい側)ほど小さい。したがって、蓄電素子19の周方向の内側ほど負極層14aにリチウム金属が析出しやすく、蓄電素子19の周方向の外側ほど負極層14aにリチウム金属が析出しにくい。正極層13aと負極層14aとの関係のみで考えると、図3Aにおける領域B側では領域A側よりも相対的にリチウム金属が析出しやすい。
【0062】
本発明者は、数式(3)が20%以上となる場合に負極層14aにおけるリチウム金属の析出が生じやすく、逆に数式(3)が20%未満となる場合に負極層14aにおけるリチウム金属の析出が生じにくいことを見出した。
【0063】
この結果に基づいて、本実施形態では、蓄電素子19の設計を、捲回後に数式(3)が20%以上となる部分を領域Bとし、捲回後に数式(3)が20%未満となる部分を領域Aとするものとした。つまり、蓄電素子19は、図3Aに示した状態から、芯軸18に蓄電ユニット100を巻き進めて、数式(3)が20%未満となるまで領域Bが続き、数式(3)が20%未満となる位置で領域Bから領域Aに切り替わる構成を有している。
【0064】
当該設計に基づいて4つのサンプルA〜Dを作製した。4つのサンプルA〜Dにおける各構成の厚さ(単位は「mm」である。)は以下の表1のとおりである。
【0065】
【表1】
【0066】
図4は、サンプルA〜Dにおける負極層14aの内径(横軸)と、正極層13aの外周面の面積と負極層14aの内周面の面積との差の、負極層14aの内周面の面積に対する割合X(縦軸)との関係を示したグラフである。
【0067】
図4から明らかなように、割合Xが20%未満となる負極層14aの内径は、サンプルによって異なる。したがって、サンプルによって、領域Bから領域Aに切り替わる位置を調整する必要がある。領域Bから領域Aに切り替わる位置における負極層14aの内径は、芯軸18の径Cや領域Bの長さ(蓄電ユニット100の巻き数)により調整可能である。
【0068】
図5は、蓄電ユニット100における正極層13a、セパレータ15及び負極層14aの総厚t(横軸)と、負極層14aの内径y(縦軸)との関係を示したグラフである。図5における負極14aの内径yは、割合Xが20%となる径であり、ここでは臨界径yと呼ぶこととする。図5に示すグラフは、y=15tと表される一次関数によってほぼ近似可能である。つまり、図4において20%未満とする条件と、図5においてy>15tとする条件とは実質的に等価である。
【0069】
したがって、本実施形態における蓄電素子19は、図3Aに示した状態から、芯軸18に蓄電ユニット100を巻き進めて、負極層14aの内径が正極層13a、セパレータ15及び負極層14aの総厚tの15倍より大きくなるまで領域Bが続き、負極層14aの内径が正極層13a、セパレータ15及び負極層14aの総厚tの15倍より大きくなる位置で領域Bから領域Aに切り替わるように設計されていてもよい。
【0070】
上記のような設計によって作製された蓄電素子19を備えたリチウムイオンキャパシタ10では、大電流が充放電される場合にも、リチウム金属が析出しやすい周方向の内側部分において、セパレータ15が2重になっていることにより、正極層13aから負極層14aにイオンが供給される速度が抑制される。したがって、蓄電素子19では、正極層13aから負極層14aにイオンが供給される速度に、負極層14aに吸蔵されたリチウムイオンが追従可能となるため、リチウム金属が析出しにくい。そのため、本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10は、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0071】
<第2の実施形態>
図6は本発明の第2の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ20の蓄電素子29の模式図である。本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ20は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10と同様の構成を有する。図6は第1の実施形態に係る図3Aに対応する断面図である。
【0072】
本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ20でも、第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10と同様に、蓄電ユニット200の領域Bが領域Aよりも正極層23aと負極層24aとの間をイオンが移動しにくく構成されている。蓄電ユニット200では、領域Bのセパレータ25を被覆する被覆層27が形成されている。
【0073】
本実施形態では、被覆層27を、P(VdF/HEP)(フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン重合体:Poly(Vinylidene Fluoride−co−hexafluoropropylene))のアセトン溶液をセパレータ25に塗布することにより形成した。
【0074】
なお、本実施形態では、被覆層27が正極層23a側に形成されている。しかし、被覆層27は負極層24a側に形成されていてもよく、正極層23a側と負極層24a側の双方に形成されていてもよい。さらに、第1の実施形態に係る領域Bのように、セパレータ26を2重に重ねる構成することに加えて、被覆層27を形成する構成としてもよい。いずれにしても、被覆層27は、正極層13aと負極層14aとの間のイオンの移動を抑制する抑制層として機能する。
【0075】
また、被覆層27は、セパレータ25と類似する機能を有し、イオンの移動を抑制するものであればよい。したがって、被覆層27としては、例えば、電解コンデンサ紙やクラフト紙などのセルロース系の基材、ポリプロピレンやポリエチレンなどの多孔質フィルム基材、ガラス繊維基材を採用することができる。
【0076】
これにより、リチウムイオンキャパシタ20では、大電流が充放電される場合にも、リチウム金属が析出しやすい周方向の内側部分において、被覆層27が形成されていることにより、正極層23aから負極層24aにイオンが供給される速度が抑制される。したがって、リチウムイオンキャパシタ20では、正極層23aから負極層24aにイオンが供給される速度に、負極層24aに吸蔵されたリチウムイオンが追従可能となるため、リチウム金属が析出しにくい。そのため、本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ20は、リチウム金属のデンドライトが発生することによる蓄電容量の低下やショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0077】
<第3の実施形態>
図7は本発明の第3の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ30の蓄電素子39の模式図である。本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ30は、以下に示す構成以外は、第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10と同様の構成を有する。図7は第1の実施形態に係る図3Aに対応する断面図である。
【0078】
本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ30では、第1の実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ10とは異なり、蓄電ユニット300の領域Aと領域Bとで正極層33aと負極層34a1,34a2との間をイオンの移動しやすさが異なる構成ではない。
【0079】
その代わりに、本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ30では、領域Aにおける負極層34a1と領域Bにおける負極層34a2とでリチウムイオンのプレドープ量が異なる構成としている。具体的には、領域Bの負極層34a2はリチウムイオンのプレドープが可能な負極活物質の量が領域Aの負極層34a1より多いため、領域Bにおける負極層34a2のリチウムイオンのプレドープ量は、領域Aにおける負極層34a1のリチウムイオンのプレドープ量より多い。
【0080】
負極層34a1,34a2を作製するには、まず、領域Bにおける負極層34a2が領域Aにおける負極層34a1よりも相対的に厚くなるように負極活物質を塗布する。そして、負極層34a1,34a2にリチウムイオンをプレドープする。その後、負極層34a2のみに更にリチウムイオンをプレドープする。これにより、領域Bで領域Aよりもリチウムイオンのプレドープ量の多い負極層34a1,34a2が形成される。
【0081】
したがって、大電流が充放電される場合にも、負極層34a2には吸蔵されているリチウムイオンが多いため、リチウム金属が析出しやすい周方向の内側部分において、正極層33aから負極層34a2にイオンが供給される速度に、負極層34a2に吸蔵されたリチウムイオンが追従可能となるため、リチウムイオンの電解析出反応が生じにくい。このように、負極層34a2は、負極層14aにおけるリチウムイオンの電解析出反応を抑制する抑制層として機能する。
【0082】
そのため、本実施形態に係るリチウムイオンキャパシタ30は、リチウム金属のデンドライトが発生することによるショートなどの不具合を防止できるため、長期信頼性に優れる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0084】
例えば、本実施形態のリチウムイオンキャパシタはいずれも芯軸を有しているが、この構成は必須ではない。リチウムイオンキャパシタの製造過程では、芯軸なしに蓄電素子の捲回構造を形成しても、芯軸を用いて蓄電素子の捲回構造を形成した後に芯軸を抜き取ってもよい。
【0085】
<その他の電気化学デバイス>
以上の実施形態では、電気化学デバイスとしてリチウムイオンキャパシタを例示して説明した。しかし、本発明は、リチウムイオンキャパシタのみならず、リチウムイオン二次電池にも容易に適用可能である。
【0086】
本発明を適用したリチウムイオン二次電池としては、例えば、図1図3Bに示すリチウムイオンキャパシタ10において、正極層13aを一例としてLiCoOが挙げられるリチウム含有金属酸化物に変更する。このように、リチウムイオン二次電池は、正極層13aとして使用されるリチウム含有金属酸化物にリチウムイオンが含まれているため、リチウムイオンをプレドープしない負極層14aを用いることが可能である。
【0087】
しかし、リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンをプレドープした炭素材料からなる負極層14aを用いることにより大容量化できる。リチウムイオン二次電池では、初回の充電量より初回の放電量が小さい、すなわち充放電効率が100%未満となるのが一般的である。しかし、リチウムイオン二次電池の負極に、あらかじめ効率低下分に相当するリチウムをドープすることで放電量を大きくすることができ、すなわち充放電損失を補償することができる。これにより、リチウムイオン二次電池は大容量化する。
【0088】
なお、このリチウムイオン二次電池においても、セパレータ15が1層のみの領域Aと、セパレータ15が2層重なっている領域Bとが形成されていれば、負極層14aやセパレータ15の材質や、電解液の成分は適宜変更可能である。また、領域A及び領域Bの構成としては、例えば、第2の実施形態や第3の実施形態などの他の形態を採用することも可能である。
【0089】
上述したリチウムイオンキャパシタと同様の構成により、このリチウムイオン二次電池でも、捲回構造の内側となる領域Bにおいて、捲回構造の外側となる領域Aよりも、正極層13aと負極層14aとの間のイオンの移動が抑制される。したがって、リチウム金属のデンドライトが比較的発生しやすいリチウムイオン二次電池の捲回構造の内側部分においてリチウム金属のデンドライトの発生が抑制される。そのため、このリチウムイオン二次電池では、大電流による充放電を繰り返しても蓄電容量の低下やショートなどを防止することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
10…リチウムイオンキャパシタ
11…ケース
12…端子
13…正極シート
13a…正極層
13b…正極集電体
14…負極シート
14a…負極層
14b…負極集電体
15…セパレータ
16…セパレータ
18…芯軸
19…蓄電素子
100…蓄電ユニット
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7