特許第6139078号(P6139078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139078リチウムイオン電池用固体電解質材料、リチウムイオン電池用固体電解質、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法
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  • 特許6139078-リチウムイオン電池用固体電解質材料、リチウムイオン電池用固体電解質、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139078
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用固体電解質材料、リチウムイオン電池用固体電解質、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20170522BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20170522BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20170522BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170522BHJP
   C03C 10/02 20060101ALI20170522BHJP
   C03C 3/32 20060101ALI20170522BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170522BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M4/62 Z
   H01B1/06 A
   H01B13/00 Z
   C03C10/02
   C03C3/32
   H01M10/052
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-192792(P2012-192792)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-49361(P2014-49361A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏也
(72)【発明者】
【氏名】出戸 和久
(72)【発明者】
【氏名】田村 素志
(72)【発明者】
【氏名】山本 一富
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−048973(JP,A)
【文献】 特開2011−129312(JP,A)
【文献】 特開2004−348973(JP,A)
【文献】 特開2012−048971(JP,A)
【文献】 特開2002−109955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
C03C 3/32
C03C 10/02
H01B 1/06
H01B 13/00
H01M 4/62
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として、Li、P、およびSを含み、OおよびIを含まず、
前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.1以上3.5以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.8以上4.2以下であり、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて
折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークを有さない、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料において、
回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークをさらに有する、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料において、
前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.2以上3.4以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が3.9以上4.1以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池用固体電解質。
【請求項5】
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層、前記電解質層および前記負極活物質層のうち少なくとも一つが、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池。
【請求項6】
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.0を超えて3.6以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.5以上4.5以下であるリチウムイオン電池用固体電解質材料を製造するための製造方法であって、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程と、
得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程と、
を含み、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が65モル%以上74モル%以下であり、
前記Pの含有量が22モル%以上25モル%以下であり、
前記LiNの含有量が1モル%以上13モル%以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【請求項7】
請求項に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する前記工程では、
前記混合物Aをメカニカルミリング処理することによりガラス化する、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【請求項8】
請求項またはに記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法において、
ガラス状態の前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する前記工程では、
不活性ガス雰囲気下において、前記混合物Bを180℃以上300℃以下で、かつ、0.5時間以上3時間以下加熱する、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【請求項9】
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.0を超えて3.6以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.5以上4.5以下であるリチウムイオン電池用固体電解質材料を製造するための製造方法であって、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程を含み、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が65モル%以上74モル%以下であり、
前記Pの含有量が22モル%以上25モル%以下であり、
前記LiNの含有量が1モル%以上13モル%以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する前記工程では、
前記混合物Aをメカニカルミリング処理することによりガラス化する、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用固体電解質材料、リチウムイオン電池用固体電解質、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、一般的に、携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯機器の電源として使用されている。また、最近では小型携帯機器以外に、電気自動車や電力貯蔵などの電源としてもリチウムイオン電池は使用され始めている。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されている。一方、電解液を固体電解質に変えて、電池を全固体化したリチウムイオン電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。このような固体電解質に用いられる固体電解質材料としては、硫化物系の材料が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
硫化物系の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性が高いため、電池の高出力化を図る上で有用であり、従来から種々の研究がなされている。硫化物系の固体電解質としては、例えば、LiS−P系の固体電解質材料が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/119706号パンフレット
【特許文献2】特開2012−43654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した硫化物系の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性に優れているものの、電解液に比べたらまだまだ低く、リチウムイオン電池用固体電解質材料としては十分に満足するものではなかった。
【0007】
そこで、本発明では、リチウムイオン伝導性に優れる硫化物系のリチウムイオン電池用固体電解質材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、リチウムイオン伝導性に優れる、硫化物系のリチウムイオン電池用固体電解質材料を提供するため、固体電解質材料の製造に用いる原料の種類、それらの配合割合、製造条件などについて鋭意検討した。その結果、構成元素として、Li、P、およびSを特定の割合で含む硫化物系の材料がリチウムイオン伝導性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、
構成元素として、Li、P、およびSを含み、OおよびIを含まず、
上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.1以上3.5以下であり、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.8以上4.2以下であり、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて
折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークを有さない、リチウムイオン電池用固体電解質材料が提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、
上記リチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池用固体電解質が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
上記正極活物質層、上記電解質層および上記負極活物質層のうち少なくとも一つが、上記リチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.0を超えて3.6以下であり、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.5以上4.5以下であるリチウムイオン電池用固体電解質材料を製造するための製造方法であって、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程と、
得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程と、
を含み、
上記混合物A中の上記LiS、上記Pおよび上記LiNの合計を100モル%としたとき、
上記LiSの含有量が65モル%以上74モル%以下であり、
上記Pの含有量が22モル%以上25モル%以下であり、
上記LiNの含有量が1モル%以上13モル%以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチウムイオン伝導性に優れる硫化物系のリチウムイオン電池用固体電解質材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例および比較例で得られた固体電解質材料のX線回折スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
[リチウムイオン電池用固体電解質材料]
はじめに、本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質材料について説明する。
本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質材料(以下、固体電解質材料とも呼ぶ。)は、構成元素として、Li、P、およびSを含んでいる。そして、本実施形態の固体電解質材料は、上記Pの含有量に対する上記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.0を超えて3.6以下であり、好ましくは3.1以上3.5以下であり、より好ましくは3.2以上3.4以下であり、特に好ましくは3.3である。また、上記Pの含有量に対する上記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.5以上4.5以下であり、好ましくは3.8以上4.2以下であり、より好ましくは3.9以上4.1以下であり、特に好ましくは4.0である。
ここで、本実施形態の固体電解質材料中のLi、P、およびSの含有量は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができる。
【0017】
Li/Pのモル比およびS/Pのモル比を上記範囲内とすることにより、優れたリチウムイオン伝導性を得ることができる。この理由については必ずしも明らかではないが、以下の理由が推察される。
固体電解質材料のイオン伝導度を向上させるためには、化合物の安定性を維持しつつ、リチウムイオンが容易にホッピングするような構造に変化させることが重要である。例えば、安定なオルト組成化合物のLiPSのLi組成を増加または減少させることが重要な因子である。Li組成を増加または減少させる一般的な手法としては、LiS混合量を変化させる手法が挙げられる。しかし、この手法ではLi組成だけでなく、S組成も変化してしまうためP−Sの結合状態が変わってしまい目的の効果が得られにくい。
本実施形態では、後述するように、LiPSのLi組成を増加させる手法として、LiNを利用する手法を採用している。LiN中のNはNとして系内に排出されるため、LiNを利用することで、LiPSに対し、Li組成のみを増加させることが可能となる。こうすることにより、Li/Pのモル比およびS/Pのモル比を今までにない上記範囲内にすることができる。Li/Pのモル比およびS/Pのモル比が上記範囲内であると、化合物の安定性とLi組成とが高度にバランスされ、その結果、高いイオン伝導度の発現につながったと考えられる。
【0018】
本実施形態の固体電解質材料は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークを有し、回折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークを有さない回折スペクトルを示すのが好ましい。
ここで、「回折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークを有さない」とは、本実施形態の固体電解質材料の原料であるLiS、PおよびLiNの結晶回折ピークが消失していることを意味する。また「回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークを有し、」とは、原料であるLiS、PおよびLiNとは異なる新たな結晶構造が生成していることを意味している。詳細は後述するが、原料であるLiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化することにより、回折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内の原料由来の結晶回折ピークは消失し、得られたガラス状態の混合物Bを加熱処理することにより、回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークが現れるからである。
したがって、回折角2θ=28〜32°の範囲内の回折ピークは、LiS、PおよびLiNが規則構造を構成したために現れた新規の回折ピークであると推測される。なお、ガラス状態の混合物を加熱処理して結晶化させることにより得られる化合物は、一般的に、結晶化ガラスと呼ばれている。
本実施形態の固体電解質材料は、こうした構造を有することにより、より一層リチウムイオン伝導性を向上させることができる。
【0019】
本実施形態の固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。本実施形態の粒子状の固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50が、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0020】
[リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法]
つづいて、本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法について説明する。
本実施形態の固体電解質材料は、例えば、原料であるLiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aをガラス化し、得られたガラス状態の混合物Bを加熱(熱処理とも呼ぶ)することにより得ることができる。より具体的には、本実施形態の固体電解質材料は、以下の(1)および(2)の工程を含む製造方法により得ることができる。
【0021】
(1)LiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aをガラス化する工程
(2)得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程
以下、各工程について説明する。
【0022】
<混合物Aをガラス化する工程>
はじめに、LiS、PおよびLiNを特定の割合で含む混合物Aを調製する。ここで、混合物A中のLiSの含有量が好ましくは65モル%以上74モル%以下、より好ましくは70モル%以上72モル%以下であり、Pの含有量が好ましくは22モル%以上25モル%以下、より好ましくは23モル%以上25モル%以下であり、LiNの含有量が好ましくは1モル%以上13モル%以下、より好ましくは4モル%以上6モル%以下となるように、LiS、PおよびLiNを混合する。こうした混合モル比で混合することにより、構成元素として、Li、P、およびSを特定の割合で含む本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。ここで、上記混合モル比が、通常はそのまま反応モル比となる。また、本実施形態の混合モル比は、例えば、ICP発光分光分析により求めることができるが、通常は仕込みの重量比から算出できる。
【0023】
つぎに、LiS、PおよびLiNを上記割合で含む混合物Aをガラス化する。
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する方法としては、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化できる方法であれば特に限定されないが、例えば、メカノケミカル処理および溶融急冷法などによりおこなうことができる。
これらの中でも、メカノケミカル処理によりおこなうことが好ましい。常温での処理が可能であり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。また、メカノケミカル処理は、乾式メカノケミカル処理であっても、湿式メカノケミカル処理であってもよい。
メカノケミカル処理を用いると、LiS、PおよびLiNを微粒子状に粉砕しながら混合することができるため、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。それにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0024】
ここで、メカノケミカル処理とは、混合対象に、せん断力、衝突力または遠心力のような機械的エネルギーを加えつつガラス化する方法である。メカノケミカル処理によるガラス化をおこなう装置としては、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミルなどの粉砕・分散機が挙げられる。これらの中でもボールミルが好ましく、遊星型ボールミルが特に好ましい。遊星型ボールミルでは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転するので、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。そのため、所望の固体電解質材料を効率良く得ることができる。
【0025】
また、メカノケミカル処理は非活性雰囲気下でおこなうことが好ましい。これにより、LiS、PおよびLiNと、水蒸気や酸素などとの反応を抑制することができる。
また、上記非活性雰囲気下とは、1〜10−5Paの真空雰囲気下または不活性ガス雰囲気下のことである。上記非活性雰囲気下では、水分の接触を避けるために露点が−50℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることがより好ましい。上記不活性ガス雰囲気下とは、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下のことである。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法などが挙げられる。
【0026】
また、LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する時に、ヘキサン、トルエン、またはキシレンなどの非プロトン性有機溶媒を添加して、溶媒に各原料を分散させた状態でガラス化してもよい。こうすることにより、より効率良くガラス化することができる。
【0027】
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化するときの回転速度や処理時間、温度、反応圧力、混合物に加えられる重力加速度などの混合条件は、混合物Aの処理量によって適宜決定することができる。一般的には、回転速度が速いほど、ガラスの生成速度は速くなり、処理時間が長いほどガラスヘの転化率は高くなる。例えば、一般的な遊星型ボールミル機を使用した場合は、回転速度を数十〜数百rpmとし、0.5時間〜500時間処理すればよい。通常は、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析をしたとき、原料であるLiS、PおよびLiNの回折ピークが消失していたら、上記混合物Aはガラス化され、混合物Bが得られていると判断することができる。
【0028】
本実施形態の固体電解質材料は、非晶質性がより高いほどリチウムイオンの伝導性を向上させることができるため、非晶質性がより高いほど好ましい。
【0029】
(LiS)
本実施形態のLiSとしては特に限定されず、市販されているLiSを使用してもよいし、例えば、水酸化リチウムと硫化水素との反応により得られるLiSを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないLiSを使用することが好ましい。
【0030】
本実施形態のLiSのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。それにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、LiSの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0031】
(P
本実施形態のPとしては特に限定されず、市販されているPを使用することができる。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないPを使用することが好ましい。また、Pに代えて、相当するモル比の単体リン(P)および単体硫黄(S)を用いることもできる。単体リン(P)および単体硫黄(S)は、工業的に生産され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
【0032】
本実施形態のPのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。それにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、Pの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0033】
(LiN)
本実施形態のLiNとしては特に限定されず、市販されているLiNを使用してもよいし、例えば、金属リチウム(例えば、Li箔)と窒素ガスとの反応により得られるLiNを使用してもよい。高純度な固体電解質材料を得る観点および副反応を抑制する観点から、不純物の少ないLiNを使用することが好ましい。
【0034】
本実施形態のLiNのレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d50は、好ましくは平均粒子径d50が30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。平均粒子径d50を上記上限値以下とすることにより、LiS、PおよびLiNの接触面積を大きくすることができる。それにより、LiS、PおよびLiNの反応を促進することができるため、より一層効率良く本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
また、LiNの平均粒子径d50の下限値は特に限定されないが、取り扱い性の観点から、例えば1μm以上である。
【0035】
<混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程>
つづいて、得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、上記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程について説明する。
本実施形態の固体電解質材料の製造方法では、LiS、PおよびLiNを特定の割合で含むガラス状態の混合物Bを加熱することにより、混合物Bの少なくとも一部を結晶化させ、本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0036】
上記混合物Bを加熱する際の温度としては特に限定されないが、例えば、結晶化温度以上の温度であることが好ましい。結晶化温度以上の温度であれば、結晶化に伴う発熱による悪影響を防止できるからである。なお、結晶化温度は、示差熱分析(DTA)により決定することができる。熱処理の温度の上限は、特に限定されないが、結晶化温度+100℃であることが好ましく、結晶化温度+50℃であることがより好ましい。熱処理の温度が高すぎると、リチウムイオン伝導度が低下する場合があるからである。また、熱処理の温度は、具体的には180℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましく、180℃以上250℃以下の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
上記混合物Bを加熱する時間は、所望の固体電解質材料が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば、1分間以上24時間以下の範囲内であり、好ましくは0.5時間以上3時間以下である。加熱の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。なお、このような加熱する際の温度、時間などの条件は、本実施形態の固体電解質材料の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
【0038】
また、上記混合物Bの加熱は、例えば、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、固体電解質材料の劣化(例えば、酸化)を防止することができる。
上記混合物Bを加熱する時の不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどが挙げられる。これらの不活性ガスは、製品への不純物の混入を防止するために、高純度である程好ましく、また、水分の接触を避けるために、露点が−50℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることが特に好ましい。混合系への不活性ガスの導入方法としては、混合系内が不活性ガス雰囲気で満たされる方法であれば特に限定されないが、不活性ガスをパージする方法、不活性ガスを一定量導入し続ける方法などが挙げられる。
【0039】
このような製造方法により、本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0040】
<粉砕、分級、または造粒する工程>
本実施形態の固体電解質材料の製造方法では、必要に応じて、得られた固体電解質材料を粉砕、分級、または造粒する工程をさらにおこなってもよい。例えば、粉砕により微粒子化し、その後、分級操作や造粒操作によって粒子径を調整することにより、所望の粒子径を有する固体電解質材料を得ることができる。上記粉砕方法としては特に限定されず、乳鉢、回転ミル、コーヒーミルなど公知の粉砕方法を用いることができる。また、上記分級方法としては特に限定されず、篩など公知の方法を用いることができる。
これらの粉砕または分級は、空気中の水分との接触を防ぐことができる点から、不活性ガス雰囲気下または真空雰囲気下で行うことが好ましい。
また、粉砕、分級、または造粒する工程は、上記(1)の工程の前に、原料であるLiS、PおよびLiNに対しておこなってもよいし、上記(1)の工程の後に、上記混合物Bに対しておこなってもよい。
【0041】
本実施形態の固体電解質材料を得るためには、上記の各工程を適切に調整することが重要である。ただし、本実施形態の固体電解質材料の製造方法は、上記のような方法には限定されず、種々の条件を適切に調整することにより、本実施形態の固体電解質材料を得ることができる。
【0042】
本実施形態の固体電解質材料は、少なくとも5V〜−5Vの範囲で分解が起こらず、室温において10−3Scm−1台という、高いリチウムイオン伝導性を示す。したがって、本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン電池用固体電解質として極めて有用である。
また、上記の特性を有する本実施形態の固体電解質材料を使用したリチウムイオン電池は、安全性および充放電サイクル特性が優れている。
【0043】
本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を必要とする任意の用途に用いることができる。中でも、本実施形態の固体電解質材料は、リチウムイオン電池に用いられるものであることが好ましい。さらに、本実施形態の固体電解質材料をリチウムイオン電池に用いる場合、正極に用いてもよいし、負極に用いてもよいし、固体電解質層に用いてもよい。
【0044】
[リチウムイオン電池用固体電解質]
つぎに、本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質について説明する。本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質(以下、固体電解質とも呼ぶ。)は、本実施形態の固体電解質材料を主成分として含んでいる。
そして、本実施形態の固体電解質は特に限定されないが、本実施形態の固体電解質材料以外の成分として、例えば、本発明の目的を損なわない範囲内で、上述した本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでもよい。
【0045】
(上述した本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料)
本実施形態の固体電解質は本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでいてもよい。本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的にリチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料などを挙げることができる。これらの中でも、硫化物固体電解質材料が好ましい。これにより、出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池とすることができる。硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS−GeS材料、LiS−Al材料などが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れている点から、LiS−P材料が好ましい。
【0046】
[リチウムイオン電池]
本実施形態のリチウムイオン電池は、例えば、正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えている。そして、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層の少なくとも一つが、本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含有する。また、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層のすべてが、本実施形態のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含有していることが好ましい。なお、本実施形態では特に断りがなければ、正極活物質を含む層を正極活物質層と呼び、集電体上に正極活物質層を形成させたものを正極と呼ぶ。また、負極活物質を含む層を負極活物質層と呼び、集電体上に負極活物質層を形成させたものを負極と呼ぶ。
本実施形態のリチウムイオン電池は、一般的に公知の方法に準じて製造される。例えば、本実施形態の正極、固体電解質層またはセパレーター、および負極を重ねたものを、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成し、必要に応じて、非水電解液を封入することにより作製される。
【0047】
(リチウムイオン電池用正極)
本実施形態のリチウムイオン電池用正極は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。本実施形態の正極は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、正極活物質を含む正極活物質層をアルミ箔などの集電体の表面に形成することにより得ることができる。
【0048】
本実施形態のリチウムイオン電池用正極の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0049】
本実施形態の正極活物質としては特に限定されず一般的に公知のものを使用することができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)などの複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロールなどの導電性高分子;LiSなどの硫化物を用いることができる。
【0050】
本実施形態の正極は特に限定されないが、本実施形態の正極活物質以外の成分として、例えば、バインダー、増粘剤、導電助剤、固体電解質材料などから選択される1種以上の材料を含んでもよい。以下、各材料について説明する。
【0051】
<バインダー>
本実施形態の正極は、正極活物質同士および正極活物質と集電体とを結着させる役割をもつバインダーを含んでもよい。
本実施形態のバインダーはリチウムイオン電池に使用可能な通常のバインダーであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミドなどが挙げられる。これらのバインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
<増粘剤>
本実施形態の正極は、塗布に適したスラリーの流動性を確保する点から、増粘剤を含んでもよい。本実施形態の増粘剤としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の増粘剤であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩、ポリカルボン酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーなどが挙げられる。これらの増粘剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
<導電助剤>
本実施形態の正極は、正極の導電性を向上させる観点から、導電助剤を含んでもよい。本実施形態の導電助剤としてはリチウムイオン電池に使用可能な通常の導電助剤であれば特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラックなどのカーボンブラック、気相法炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。
【0054】
<固体電解質材料>
本実施形態の正極は上述した本実施形態の固体電解質材料を含んでいてもよいし、本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料を含んでいてもよい。本実施形態の固体電解質材料とは異なる種類の固体電解質材料としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的に全固体リチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料などを挙げることができる。これらの中でも、硫化物固体電解質材料が好ましい。これにより、出力特性に優れた全固体リチウムイオン電池とすることができる。硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P材料、LiS−SiS材料、LiS−GeS材料、LiS−Al材料などが挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン伝導性が優れている点から、LiS−P材料が好ましい。
【0055】
本実施形態のリチウムイオン電池用正極中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途などに応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0056】
(リチウムイオン電池用負極)
本実施形態のリチウムイオン電池用負極は特に限定されず、リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。本実施形態の負極は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層を銅などの集電体の表面に形成することにより得ることができる。
【0057】
本実施形態のリチウムイオン電池用負極の厚みや密度は、電池の使用用途などに応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0058】
本実施形態の負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料;リチウム金属、リチウム合金などのリチウム系金属;シリコン、スズなどの金属;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0059】
本実施形態の負極は特に限定されないが、本実施形態の負極活物質以外の成分として、例えば、バインダー、増粘剤、導電助剤、固体電解質材料などから選択される1種以上の材料を含んでもよい。これらの材料としては、とくに限定はされないが、例えば、上述した正極に用いる材料と同様のものを挙げることができる。
【0060】
(電解質層)
次に、本実施形態の電解質層について説明する。本実施形態の電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。
本実施形態の電解質層とは、セパレーターに非水電解液を含浸させたものや、固体電解質を含む固体電解質層が挙げられる。
【0061】
<セパレーター>
本実施形態のセパレーターとしては正極と負極を電気的に絶縁させ、リチウムイオンを透過する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、多孔性膜を用いることができる。
【0062】
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステルなどが挙げられる。特に、多孔性ポリオレフィンフィルムが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルムなどが挙げられる。
【0063】
<非水電解液>
本実施形態の非水電解液とは、電解質を溶媒に溶解させたものである。
上記電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CH SOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウムなどが挙げられる。
【0064】
上記電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されず、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類;トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソランなどのオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどの含窒素類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホランなどのスルホラン類;3−メチル−2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン類;1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン類;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
<固体電解質層>
本実施形態の固体電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層であり、固体電解質材料を含む固体電解質により形成される層である。固体電解質層に含まれる固体電解質材料は、リチウムイオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、本実施形態においては、本実施形態の固体電解質材料であることが好ましい。
本実施形態の固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、所望の絶縁性が得られる割合であれば特に限定されるものではないが、例えば、10体積%以上100体積%以下の範囲内、中でも、50体積%以上100体積%以下の範囲内であることが好ましい。特に、本実施形態においては、固体電解質層が本実施形態の固体電解質材料のみから構成されていることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態の固体電解質層は、バインダーを含有していてもよい。バインダーを含有することにより、可撓性を有する固体電解質層を得ることができる。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有結着材を挙げることができる。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下の範囲内、中でも、0.1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
構成元素として、Li、P、およびSを含み、
前記Pの含有量に対する前記Liの含有量のモル比(Li/P)が3.0を超えて3.6以下であり、前記Pの含有量に対する前記Sの含有量のモル比(S/P)が、3.5以上4.5以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
2.
1.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料において、
線源としてCuKα線を用いたX線回折により得られるスペクトルにおいて、
回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークを有し、
回折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークを有さない、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
3.
1.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料において、
原料であるLiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化し、得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより得られる、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
4.
3.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料において、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が65モル%以上74モル%以下であり、
前記Pの含有量が22モル%以上25モル%以下であり、
前記LiNの含有量が1モル%以上13モル%以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料。
5.
1.乃至4.いずれか一つに記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池用固体電解質。
6.
正極活物質層を含む正極と、電解質層と、負極活物質層を含む負極とを備えた、リチウムイオン電池であって、
前記正極活物質層、前記電解質層および前記負極活物質層のうち少なくとも一つが、1.乃至4.いずれか一つに記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料を含む、リチウムイオン電池。
7.
1.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法であって、
LiS、PおよびLiNを含む混合物Aをガラス化する工程と、
得られたガラス状態の混合物Bを加熱することにより、前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する工程と、
を含み、
前記混合物A中の前記LiS、前記Pおよび前記LiNの合計を100モル%としたとき、
前記LiSの含有量が65モル%以上74モル%以下であり、
前記Pの含有量が22モル%以上25モル%以下であり、
前記LiNの含有量が1モル%以上13モル%以下である、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
8.
7.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法において、
前記混合物Aをガラス化する前記工程では、
前記混合物Aをメカニカルミリング処理することによりガラス化する、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
9.
7.または8.に記載のリチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法において、
ガラス状態の前記混合物Bの少なくとも一部を結晶化する前記工程では、
不活性ガス雰囲気下において、前記混合物Bを180℃以上300℃以下で、かつ、0.5時間以上3時間以下加熱する、リチウムイオン電池用固体電解質材料の製造方法。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
[1]測定方法
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
【0070】
(1)粒度分布
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で得られた固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、各固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒径)をそれぞれ求めた。
【0071】
(2)ICP発光分光分析
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、実施例および比較例で得られた固体電解質材料中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それに基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
【0072】
(3)X線回折分析
X線回折装置(リガク社製、RINT2000)を用いて、X線回折分析法により、実施例および比較例で得られた固体電解質材料の回折スペクトルをそれぞれ求めた。なお、線源としてCuKα線を用いた。
【0073】
(4)リチウムイオン伝導度の測定
実施例および比較例で得られた固体電解質材料に対して、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度の測定を27.0℃でおこなった。
リチウムイオン伝導度の測定は日置電機社製、ケミカルインピーダンスメータ3532−80を用い、測定条件は、印加電圧100mV、測定周波数域4Hz〜1MHzとした。
【0074】
[2]固体電解質材料の製造
<実施例1>
原料には、LiS(Alfa Aesar製、純度99.9%)、P(関東化学製試薬)を使用した。LiNは、以下の手順で作製した。
まず、アルゴングローブボックス中で、Li箔(本城金属社製純度99.8%、厚さ0.5mm)をカーボンるつぼに入れ、窒素ガス導入バルブと排出バルブをつけたガラス容器中に密封した。次いで、そのガラス容器を電気炉にセットし、窒素ガス導入バルブから毎分100mlの流量で窒素を流し入れ、排出バルブから窒素を系外に排出した。電気炉を70℃で12時間加熱後、空冷し、アルゴングローブボックス中で反応生成物であるLiNを取り出したLiNは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、75μm以下の粉末を回収し固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLiS:P:LiN=71.1:23.7:5.3(モル%)になるように精秤し、これら粉末を10分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、アルミナ製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、95rpmで200〜300時間混合粉砕した。混合粉砕後の粉末はカーボンボートに入れアルゴン気流中で180℃、1時間加熱処理し、平均粒子径d50が10μmの固体電解質材料1を得た。
【0075】
(物性)
実施例1で得られた固体電解質材料1のX線回折スペクトルを図1に示す。加熱処理することにより、回折角2θ=28〜32°の範囲内に回折ピークが発生した。また、回折角2θ=25〜27°、44〜46°および52〜55°の範囲内に回折ピークは見られなかった。
また、得られた固体電解質材料1のLi/Pのモル比は3.3であり、S/Pのモル比は4.0であった。
また、リチウムイオン伝導度は1.2×10−3S・cm−1であった。
【0076】
<比較例1>
各原料の割合をLiS:P:LiN=75.0:25.0:0(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径d50が10μmの固体電解質材料2を得た。
【0077】
(物性)
比較例1で得られた固体電解質材料2のX線回折スペクトルを図1に示す。
また、得られた固体電解質材料2のLi/Pのモル比は3.0であり、S/Pのモル比は4.0であった。
また、リチウムイオン伝導度は4.6×10−4S・cm−1であった。
【0078】
<比較例2>
各原料の割合をLiS:P:LiN=64.3:21.4:14.3(モル%)に変えた以外は実施例1と同様にして、平均粒子径d50が10μmの固体電解質材料3を得た。
【0079】
(物性)
比較例2で得られた固体電解質材料3のX線回折スペクトルを図1に示す。
また、得られた固体電解質材料3のLi/Pのモル比は4.0であり、S/Pのモル比は4.0であった。
また、リチウムイオン伝導度は1.9×10−4S・cm−1であった。
図1