特許第6139087号(P6139087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139087X線撮像装置、及びウェッジフィルタ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139087
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】X線撮像装置、及びウェッジフィルタ制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170522BHJP
   G21K 3/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61B6/03 320M
   A61B6/03 373
   G21K3/00 W
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-220220(P2012-220220)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-69039(P2014-69039A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰男
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0206259(US,A1)
【文献】 特開2008−246206(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され被検体を透過したX線フォトンを検出するX線検出器と、
前記X線管と前記X線検出器とを支持する支持機構と、
前記X線管から発生されたX線のエネルギースペクトルに含まれる複数のエネルギー帯域の各々についてX線フォトンのカウントに関するデータセットを収集するデータ収集部と、
前記X線管からのX線の線量を減衰するために前記X線管と前記被検体との間に配置され、X線遮蔽物質内におけるX線の透過経路長を個別に変更可能な構成を有する複数のフィルタモジュールを有するウェッジフィルタ部と、
X線管と被検体との間に形状が固定された固定ウェッジフィルタが設けられるCT架台での撮像により収集されたデータに基づいて計算されたフレキシブルウェッジフィルタ形状データに従い、前記複数のフィルタモジュールを個別に動作させる制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記収集されたデータに基づいて前記ウェッジフィルタ部で吸収させる線量分布を推定し、
前記推定した線量分布に基づき、前記X線管から発生され前記被検体を透過して前記X線検出器に到達するX線の線量を空間的に略均一に分布させ、かつ、前記線量をデータ収集可能な線量率の上限付近に設定させるように、前記フレキシブルウェッジフィルタ形状データを計算するX線撮像装置。
【請求項2】
前記複数のフィルタモジュールは、チャンネル方向に配列され、
前記制御部は、前記X線検出器により検出されるX線の線量を前記チャンネル方向に関して略均一に分布させるために前記複数のフィルタモジュールを個別に動作させる、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記複数のフィルタモジュールは、前記支持機構の回転軸に平行する方向に配列され、
前記制御部は、前記X線検出器により検出されるX線の線量を前記回転軸に並行する方向に関して略均一に分布させるために前記複数のフィルタモジュールを個別に動作させる、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記ウェッジフィルタ部は、前記X線管からの距離が異なる位置に配置された第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とを有し、
前記第1のフィルタ部は、前記複数のフィルタモジュールとして、チャンネル方向に配列された複数の第1の単位フィルタを有し、
前記第2のフィルタ部は、前記複数のフィルタモジュールとして、前記支持機構の回転軸に平行する方向に配列された複数の第2の単位フィルタを有し、
前記制御部は、前記X線検出器により検出されるX線の線量を前記チャンネル方向と回転軸に平行する方向との両方に関して略均一に分布させるために前記複数の第1のフィルタモジュールと前記複数の第2のフィルタモジュールとを個別に動作させる、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項5】
既定の形状を有する他のウェッジフィルタ及び被検体透過後の前記X線検出器への入射線量分布に基づいて前記複数のフィルタモジュールの空間的配置を算出する算出部、をさらに備え、
前記制御部は、前記複数のフィルタモジュールの空間的配置に従って前記複数のフィルタモジュールを個別に移動させる、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項6】
既定の形状を有する他のウェッジフィルタ及び前記被検体透過後の前記X線検出器への入射線量分布と、前記被検体のみを透過後の前記X線検出器への入射線量分布とに基づいて前記複数のフィルタモジュールの空間的配置を算出する算出部、をさらに備え、
前記制御部は、前記複数のフィルタモジュールの空間的配置に従って前記複数のフィルタモジュールを個別に移動させる、
請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、所定ビュー毎に前記複数のフィルタモジュールを個別に動作させる、請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記複数のフィルタモジュールの各々を個別に移動可能に支持する移動支持機構をさらに備える、請求項1記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記複数のフィルタモジュールの各々は、楔形状を有する2つの楔形フィルタを有し、
前記移動支持機構は、前記2つの楔形フィルタを楔の斜面が向い合うように支持し、
前記制御部は、前記2つの楔形フィルタを互いに接近又は離反するように前記移動支持機構を駆動し、前記2つの楔形フィルタを透過するX線の透過経路長が変化させる、
請求項8記載のX線撮像装置。
【請求項10】
前記移動支持機構は、前記2つの楔形フィルタを、前記X線管から照射されるX線の経路と前記複数のフィルタモジュールの配列方向との直交方向に関して互いに接近又は離反可能に支持する、請求項9記載のX線撮像装置。
【請求項11】
X線管からのX線の線量を減衰するために前記X線管と被検体との間に配置され、X線遮蔽物質内におけるX線の透過経路長を個別に変更可能な構成を有する複数のフィルタモジュールを有するウェッジフィルタ装置の制御方法であって、
X線管と被検体との間に形状が固定された固定ウェッジフィルタが設けられるCT架台での撮像により収集されたデータに基づいて前記ウェッジフィルタ装置で吸収させる線量分布を推定し、
前記推定した線量分布に基づき、前記X線管から発生され前記被検体を透過するX線の線量を空間的に略均一に分布させ、かつ、前記線量をデータ収集可能な線量率の上限付近に設定させるよう前記複数のフィルタモジュールの各々の移動量を算出し、
前記算出された移動量に従って前記複数のフィルタモジュールを個別に動作する、
ことを具備するウェッジフィルタ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線撮像装置、及びウェッジフィルタ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(computed tomography)では、CT値の定量性を向上することが求められている。CT値の定量性を向上するための撮像方式として、例えば、DECT(dual energy CT)とPCCT(photon counting CT)とが提案され開発されている。DECTは、2種類のX線エネルギーに関する投影データを用いて簡易的に物質を区分する撮像方式である。PCCTは、DECTよりもさらに定量性を向上させることを改善する撮像方式である。よく知られているように、PCCTにおいては、X線フォトンを1個ずつ計測する必要がある。X線フォトン計測に関するオーバーフロー(X線フォトンの数え落とし。パイルアップ)を防止するため、X線の線量率(単位時間及び単位面積あたりのX線の線量)の上限を低く設定せざるを得ない。一方、被検体を透過してX線検出器に到達するX線の線量は、16bit以上のダイナミックレンジがある。このため、PCCTに関する画像再構成に用いられるデータにはオーバーフローのリスクが高い高線量のデータと、ノイズが大きい極小線量のデータとが混在している。オーバーフローを回避するための条件下においてPCCTデータ収集を実行した場合、極小線量のデータが支配的となり、計測誤差によるノイズが増大してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
実施形態の目的は、オーバーフローのリスクの低減及びダイナミックレンジの縮小を可能とするX線撮像装置、及びウェッジフィルタ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本実施形態に係るX線撮像装置は、X線を発生するX線管と、前記X線管から発生され被検体を透過したX線フォトンを検出するX線検出器と、前記X線管と前記X線検出器とを支持する支持機構と、前記X線管から発生されたX線のエネルギースペクトルに含まれる複数のエネルギー帯域の各々についてX線フォトンのカウントに関するデータセットを収集するデータ収集部と、前記X線管からのX線の線量を減衰するために前記X線管と前記被検体との間に配置され、X線遮蔽物質内におけるX線の透過経路長を個別に変更可能な構成を有する複数のフィルタモジュールを有するウェッジフィルタ部と、前記X線管から発生され前記被検体を透過して前記X線検出器に到達するX線の線量を空間的に略均一に分布させ、かつ、前記線量をデータ収集可能な線量率の上限付近に設定させるために前記複数のフィルタモジュールを個別に動作させる制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の大局的な構成を示す図。
図2図1のCT架台の構成を示す図。
図3図1のPCCT架台の構成を示す図。
図4図3のフレキシブルウェッジフィルタの構成を示す図。
図5図1のコンソールの構成を示す図。
図6図2の固定ウェッジフィルタを搭載したCT架台の簡易的な構成と入射線量分布とを示す図。
図7図3のフレキシブルウェッジフィルタを搭載したPCCT架台の簡易的な構成と入射線量分布とを示す図。
図8図3のフレキシブルウェッジフィルタの概略的な斜視図。
図9図8のフレキシブルウェッジフィルタの列方向から見た平面図。
図10図8及び図9のフィルタモジュールの概略的な斜視図。
図11図10の2つの楔フィルタのスライドによりX線透過経路長を変化する動作を説明するための図。
図12図5のシステム制御部の制御のもとに行われるX線コンピュータ断層撮影装置の動作の典型的な流れを示す図。
図13図12のステップSA2に関する、CT撮像用のキャリブレーションデータとCT用投影データとを用いた被検体減衰分布の計算方法を説明するための図。
図14図12のステップSA6において行われる、フレキシブルウェッジフィルタによるチャンネル方向に関するX線透過経路長の分布の制御を説明するための図。
図15図12のステップSA5において実行されるPCCT撮像における線量分布を示す図。
図16】変形例1に係る他のフィルタモジュールの斜視図。
図17】変形例1に係る2つの楔フィルタのスライドによる他のフィルタモジュール内のX線透過経路長を変化する動作を説明するための図。
図18】変形例2に係るシステム制御部の制御のもとに行われるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作の典型的な流れを示す図。
図19】変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタの概略的な斜視図。
図20】変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタの列方向から見た平面図。
図21】変形例3に係るフレキシブルウェッジフィルタの概略的な斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるX線撮像装置、ウェッジフィルタ装置、及びウェッジフィルタ制御方法を説明する。
【0007】
本実施形態に係るX線撮像装置としては、X線を利用した医用画像診断装置、すなわち、X線コンピュータ断層撮影装置とX線診断装置とが適用可能である。以下の説明を具体的に行うため、本実施形態に係るX線撮像装置としてX線コンピュータ断層撮影装置を例に挙げて説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1の大局的な構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、CT架台3、PCCT架台5、及びコンソール7を有している。CT架台3とPCCT架台5とは、ネットワークを介してコンソール7に接続されている。CT架台3とPCCT架台5とは、同一または異なる検査室に設置されている。コンソール7は、例えば、検査室に隣接する制御室に設置されている。CT架台3は、通常のCT、すなわち、積分型のデータ収集(電流型のデータ収集)を行うための撮像機構である。PCCT架台5は、フォトンカウンティングCT(以下、PCCTと呼ぶ)を行うための撮像機構である。コンソール7は、CT架台3とPCCT架台5とを個別に制御するコンピュータ装置である。このようにX線コンピュータ断層撮影装置1は、CT架台3による通常のCT撮像とPCCT架台5によるPCCT撮像との両方を実行可能な複合システムを実現している。
【0009】
図2は、本実施形態に係るCT架台3の構成を示す図である。図2に示すように、CT架台3は、通常の積分型のCT架台と略同一の構成を有している。すなわち、CT架台3は、略円筒形状を有する回転フレーム11を装備している。回転フレーム11には、回転軸Z1を挟んで対向するようにX線管12とX線検出器13とが取り付けられている。回転フレーム11の内周の一部空間領域は、FOV(field of view)に設定される。回転フレーム11の開口部内には、天板14が位置決めされる。天板14には被検体Pが載置される。天板14に載置された被検体Pの撮像部位がFOV内に含まれるように天板14が移動される。回転フレーム11は、回転駆動部15からの駆動信号の供給を受けて回転軸Z1回りに一定の角速度で回転する。回転駆動部15は、CT用架台制御部16からの制御に従って回転フレーム11を回転軸Z1回りに一定の角速度で回転させる。
【0010】
X線管12は、高電圧発生部17からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生部17は、CT用架台制御部16からの制御に応じた高電圧をX線管12に印加し、CT用架台制御部16からの制御に応じたフィラメント電流をX線管12に供給する。
【0011】
X線管12と被検体Pとの間には固定ウェッジフィルタ18が設けられている。固定ウェッジフィルタ18は、形状が固定されたウェッジフィルタである。なお、固定ウェッジフィルタ18と被検体Pとの間にスリット等の他のフィルタが設けられていても良い。
【0012】
X線検出器13は、X線管12から発生されたX線を検出する。X線検出器13は、2次元状に配列された複数の検出素子を搭載する。各検出素子は、X線管12からのX線を検出し、検出されたX線のエネルギーに応じた電気信号を生成する。生成された電気信号は、CT用データ収集部(DAS:data acquisition system)19に供給される。CT用データ収集部19は、CT用架台制御部16による制御に従って、X線検出器13を介して電気信号を読み出し、読み出された電気信号を積分モードでビュー(view)毎に収集する。より詳細には、積分モードにおいてCT用データ収集部19は、複数のビューの各々について検出素子毎に電気信号を積分して積分信号を生成する。CT用データ収集部19は、収集されたアナログの電気信号(積分信号)をデジタルデータに変換する。デジタルデータは、CT用生データと呼ばれている。CT用生データは、非接触型の伝送部20を介してコンソール7に供給される。
【0013】
図3は、本実施形態に係るPCCT架台5の構成を示す図である。図3に示すように、PCCT架台5は、略円筒形状を有する回転フレーム31を装備している。回転フレーム31には、回転軸Z2を挟んで対向するようにX線管32とX線検出器33とが取り付けられている。回転フレーム31の内周の一部空間領域は、FOVに設定される。回転フレーム31の開口部内には、天板34が位置決めされる。天板34には被検体Pが載置される。天板34に載置された被検体Pの撮像部位がFOV内に含まれるように天板34が移動される。回転フレーム31は、回転駆動部35からの駆動信号の供給を受けて回転軸Z2回りに一定の角速度で回転する。回転駆動部35は、PCCT用架台制御部36からの制御に従って回転フレーム31を回転軸Z2回りに一定の角速度で回転させる。
【0014】
X線管32は、高電圧発生部37からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生部37は、PCCT用架台制御部36からの制御に応じた高電圧をX線管32に印加し、PCCT用架台制御部36からの制御に応じたフィラメント電流をX線管32に供給する。
【0015】
X線管32と被検体Pとの間には、X線管32からのX線の線量を減衰するためにフレキシブルウェッジフィルタ38が設けられている。フレキシブルウェッジフィルタ38は、形状を変更可能なウェッジフィルタである。なお、フレキシブルウェッジフィルタ38と被検体Pとの間にスリット等の他のフィルタが設けられていても良い。
【0016】
図4は、フレキシブルフィルタ38の構成を示す図である。図4に示すように、フレキシブルフィルタ38は、複数のフィルタモジュール39、モジュール支持機構40、及びモジュール駆動部41を有している。複数のフィルタモジュール39の各々は、X線遮蔽物質により構成され、X線遮蔽物質内におけるX線の透過経路長を個別に変更可能な構成を有している。モジュール支持機構40は、複数のフィルタモジュール39を個別に動作可能に支持する。モジュール駆動部41は、モジュール支持機構40に内蔵されるモータ等の動力発生源である。モジュール駆動部41は、PCCT用架台制御部36からの制御に従って各フィルタモジュール39を動作させるための動力を発生して各フィルタモジュール39を動作させる。PCCT用架台制御部36は、X線管32から発生され被検体Pを透過してX線検出器33に検出されるX線の線量を空間的に略均一にするために、モジュール駆動部41を制御して複数のフィルタモジュール39を個別に動作する。より詳細には、PCCT用架台制御部36は、後述のフィルタ形状計算部54により計算されたフィルタ形状に従ってモジュール駆動部41を制御して複数のフィルタモジュール39を個別に動作する。フレキシブルウェッジフィルタ38の詳細については後述する。
【0017】
図3に示すように、X線検出器33は、X線管32から発生されたX線を検出する。X線検出器33は、2次元状に配列された複数の検出素子を搭載する。例えば、複数の検出素子は、回転フレーム31の回転軸Z2を中心とした円弧に沿って配列される。この円弧に沿う検出素子の配列方向はチャンネル方向と呼ばれる。チャンネル方向に沿って配列された複数の検出素子は、検出素子列と呼ばれる。複数の検出素子列は、回転軸Z2に沿う列方向に沿って配列される。各検出素子は、X線管32からのX線フォトンを検出し、検出されたX線フォトンのエネルギーに応じた電気パルス(電気信号)を生成する。検出素子は、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられてなる半導体ダイオードにより構成される。半導体に入射したX線フォトンは、電子・正孔対に変換される。1つのX線フォトンの入射により生成される電子・正孔対の数は、入射X線フォトンのエネルギーに依存する。電子・正孔対は電極に引き寄せられる。電極は、各電子・正孔対に応じた電荷に応じた波高値を有する電気パルスを発生する。電子・正孔対に起因する電荷は、例えば、X線フォトンの標準的な入射時間間隔に応じた微小時間だけ蓄積される。蓄積時間の経過後、蓄積された電荷は、電気パルス(電気信号)としてPCCT用データ収集部42により各検出素子から読み出される。読み出された一個の電気信号は、入射X線フォトンのエネルギーに応じた波高値を有する。本実施形態に係る半導体材料としては、X線フォトンを効率良く正孔・電子対に変換可能な比較的原子番号が大きい物質が用いられると良い。PCCTに好適な半導体材料としては、例えば、CdTeやCdZnTe等が知られている。
【0018】
PCCT用データ収集部42は、PCCT用架台制御部36による制御に従って、X線検出器33を介して電気信号を読み出し、読み出された電気信号をPCCTモードでビュー(view)毎に収集する。すなわち、PCCT用データ収集部42は、X線検出器33から電気信号をビュー切替周期に従うタイミングで読み出す。PCCT用データ収集部42は、X線管32から発生されるX線フォトンのエネルギースペクトルに含まれる複数のエネルギー帯域(以下、エネルギー・ビン(energy bin)と呼ぶ)の各々について、X線検出器33により検出されたX線フォトンのカウントを表現する生データを、X線検出器15からの電気信号に基づいて生成する。以下、X線フォトンのカウントを表現する生データをカウントデータと呼ぶことにする。エネルギー・ビンは、ユーザによる操作部56を介した指示に従って予め設定されている。カウントデータは、非接触型の伝送部43を介してコンソール7に供給される。
【0019】
図5は、本実施形態に係るコンソール7の構成を示す図である。図5に示すように、コンソール7は、システム制御部51を中枢として、前処理部52、画像再構成部53、フィルタ形状計算部54、キャリブレーションデータ設定部55、表示部56、操作部57、及び記憶部58を有している。
【0020】
前処理部52は、CT用生データに前処理を施して画像再構成処理の入力データである投影データを生成する。CT用生データに基づく投影データをCT投影データと呼ぶことにする。また、前処理部52は、複数のエネルギー・ビンに関するカウントデータに前処理を施し複数のエネルギー領域に関する投影データを生成する。以下、カウントデータに基づく投影データをPCCT投影データと呼ぶことにする。CT投影データとPCCT投影データとは、ビュー毎に記憶部58に供給される。CT撮像に係る前処理としては、例えば、ログ変換(対数変換)とキャリブレーション補正とを含む。PCCT撮像に係る前処理としては、画像化対象のエネルギー・ビンに属するカウントデータのビュー毎の重み付け加算を含んでも良い。重み付け加算処理によりカウントデータから画像化対象のエネルギー・ビンに属するX線フォトンのエネルギー積分値が計算される。エネルギー積分値のデータは、CT用生データと略同一に扱われる。エネルギー積分値のデータに対してログ変換(対数変換)とキャリブレーション補正とが行われる。キャリブレーション補正においては、キャリブレーションデータ設定部55により設定されたキャリブレーションデータが用いられる。PCCTに関する前処理としては、画像化対象のエネルギー・ビンは、操作部56を介して任意に設定可能である。
【0021】
画像再構成部53は、CT投影データに画像再構成処理を施して、被検体に関するCT画像のデータを発生する。また、画像再構成部53は、画像化対象のエネルギー・ビンに属するPCCT投影データに画像再構成処理を施して、PCCT投影データから被検体に関するPCCT画像のデータを発生する。画像再構成アルゴリズムとしては、FBP(filtered back projection)法等の解析学的画像再構成法や、ML−EM(maximum likelihood expectation maximization)法やOS−EM(ordered subset expectation maximization)法等の逐次近似画像再構成等の既存のアルゴリズムが採用可能である。
【0022】
フィルタ形状計算部54は、基準線量分布に基づいてフレキシブルウェッジフィルタ38の形状を所定ビュー毎に計算する。基準線量分布は、例えば、固定ウェッジフィルタ18及び被検体透過後のX線検出器13への入射線量分布である。また、基準線量分布は、固定ウェッジフィルタ18の非存在下における被検体透過後のX線検出器13への入射線量分布でも良い。フレキシブルウェッジフィルタ38の形状は、複数のフィルタモジュール40の配置により規定される。フィルタ形状計算部54は、被検体透過後のX線線量の空間分布が空間的に略均一となるようなフレキシブルウェッジフィルタ38の形状、すなわち、複数のフィルタモジュール40の配置を計算する。フィルタ形状計算部54による処理の詳細については後述する。
【0023】
キャリブレーションデータ設定部55は、キャリブレーション補正のためのキャリブレーションデータを設定する。キャリブレーション補正は、フレキシブルウェッジフィルタ38によるX線の減弱をPCCT投影データから除去するために行われる。CT投影データに対するキャリブレーションデータは、被検体Pの非存在下における固定ウェッジフィルタ18透過後のX線検出器13への入射線量分布に基づいて設定される。また、PCCT投影データに対するキャリブレーションデータは、被検体Pの非存在下におけるフレキシブルウェッジフィルタ38透過後のX線検出器33への入射線量分布に基づいて設定される。入射線量分布は、X線検出器13またはX線検出器33に対応するX線の線量の空間分布に規定される。キャリブレーションデータ設定部55による処理の詳細については後述する。
【0024】
表示部56は、CT画像やPCCT画像等の種々の情報を表示機器に表示する。表示機器としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0025】
操作部57は、入力機器を介してユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。
【0026】
記憶部58は、投影データ、CT画像、PCCT画像、キャリブレーションデータ等の種々のデータを記憶する。また、記憶部58は、X線コンピュータ断層撮影装置1の制御プログラムを記憶している。この制御プログラムは、フレキシブルウェッジフィルタ38を利用したPCCT撮像を行うための制御機能をシステム制御部51に実行させるためのものである。
【0027】
システム制御部51は、X線コンピュータ断層撮影装置1の中枢として機能する。具体的には、システム制御部51は、記憶部58に記憶されている制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線コンピュータ断層撮影装置1内の各部を制御する。
【0028】
本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置1は、PCCT撮像に係るダイナミックレンジを縮小するため、フレキシブルウェッジフィルタ38に含まれる複数のフィルタモジュール39を個別に動作して被検体存在下におけるX線検出器33への入射線量分布を略均一にする。なお本実施形態において線量は、単位時間に亘る入射X線フォトンのエネルギーの積分値を意味する。単位時間は、例えば、単一のビュー期間やCT撮像期間、PCCT撮像期間に規定される。
【0029】
以下、PCCT架台5に搭載されたフレキシブルウェッジフィルタ38と当該フレキシブルウェッジフィルタ38を活用したPCCT撮像とについて順番に説明する。
【0030】
図6は、固定ウェッジフィルタ18を搭載したCT架台3の簡易的な構成と入射線量分布とを示す図である。図6に示すように、CT架台3においてはX線管12と被検体Pとの間に固定ウェッジフィルタ18が設けられている。X線管12から照射されたX線は、固定ウェッジフィルタ18、スリット、及び被検体Pを透過してX線検出器13の検出素子に到達する。ここで、X線管12(より詳細には、X線焦点)から入射検出素子への方向をX線経路方向と呼ぶことにする。固定ウェッジフィルタ18は、チャンネル方向に関する中央部から端部に行くにつれ厚くなるように加工されたX線遮蔽物質である。固定ウェッジフィルタ18及び被検体Pの存在下におけるX線検出器13への入射線量分布は、高線量から低線量までの幅広い線量値範囲に亘る。
【0031】
図7は、フレキシブルウェッジフィルタ38を搭載したPCCT架台5の簡易的な構成と入射線量分布とを示す図である。図7に示すように、PCCT架台5においてはX線管32と被検体Pとの間にフレキシブルウェッジフィルタ38が設けられている。X線管32から照射されたX線は、フレキシブルウェッジフィルタ38、スリット、及び被検体Pを透過してX線検出器33の検出素子に到達する。前述のように、フレキシブルウェッジフィルタ38は、少なくともチャンネル方向に沿ってX線透過経路長を変更可能であり、被検体Pを透過してX線検出器33に入射するX線の線量を空間的に略一定にする。入射線量の線量値範囲を狭めることにより、ダイナミックレンジを縮小することができる。フレキシブルフィルタ38及び被検体Pの存在下におけるX線検出器33への入射線量は、空間分解能の向上のため、データ収集可能な線量率の上限付近に設定されると良い。
【0032】
図8は、フレキシブルウェッジフィルタ38の概略的な斜視図であり、図9、フレキシブルウェッジフィルタ38の列方向から見た平面図である。図8及び図9に示すように、フレキシブルウェッジフィルタ38は、線量の均一化対象の方向に沿って配列された複数のフィルタモジュールを有している。線量の均一化対象の方向は、図7図8、及び図9の場合、チャンネル方向に規定される。複数のフィルタモジュール39は、図8及び図9に示すように、円弧状に配列されても良いし、平行に配列されても良い。円弧状に配列する場合、各フィルタモジュール39のチャンネル方向の厚さは、X線管32側で薄く、被検体P側で厚くなるように設計される必要がある。なお、フィルタモジュール39の配列方向、すなわち、線量の均一化対象の方向は、チャンネル方向のみに限定されず、列方向であっても良い。なお、以下の説明の簡単のため、特に言及しない限り、線量の均一化対象の方向はチャンネル方向であるとする。
【0033】
次に、フィルタモジュール39の構成について説明する。図10は、フィルタモジュール39の概略的な斜視図である。図10に示すように、フィルタモジュール39は、2つの楔形状のフィルタ(以下、楔フィルタと呼ぶ)391を有する。2つの楔フィルタ391は、略同一形状及び体積を有する。2つの楔フィルタ391は、楔の斜面が向かい合うようにモジュール支持機構(図示せず)により支持されている。一方の楔フィルタ391の長辺面がX線入射面に設定され、他方の楔フィルタ391の長辺面がX線出力面に設定される。X線入射面とX線出力面とが平行するように2つの楔フィルタ391は、モジュール支持機構(図示せず)により支持される。このような楔フィルタ391の配置により、フィルタモジュール39を透過するX線の透過経路長が列方向に依らず略同一となる。楔フィルタ391は、X線の線量を減衰するためのX線遮蔽物質により構成される。楔フィルタ391の材質としては、アルミニウムや金属、プラスチック等のX線の線量を減衰可能な如何なる物質も適用可能である。
【0034】
フィルタモジュール39内のX線透過経路長を変更可能にするため、モジュール支持機構40は、2つの楔フィルタ391を配列方向(チャンネル方向)とX線経路方向との直交方向、すなわち、列方向に沿って個別にスライド可能に支持している。換言すれば、モジュール支持機構40は、2つの楔フィルタ391を列方向に沿って互いに接近又は離反可能に支持している。2つの楔フィルタ391は、モジュール駆動部41により列方向に関して互いに反対方向にスライドされる。
【0035】
図11は、2つの楔フィルタ391のスライドによりX線透過経路長を変化する動作を説明するための図である。図11の(a)はX線透過経路長が最大時、図11の(b)はX線透過経路長が中間時、図11の(c)はX線透過経路長が最小時のときの2つの楔フィルタ391の配置例を示している。図11の(a)、(b)、及び(c)の各々には2つの楔フィルタ391の斜視図と平面図とが図示されている。X線は、列方向に関するX線透過経路の中心軸ACを中心として所定幅を有している。X線透過経路が2つの楔フィルタ391に交わる領域(図11の斜線領域)のX線経路方向に関する合計距離がX線透過経路長に規定される。すなわち、X線透過経路が上側の楔フィルタ391に交わる領域のX線経路方向に関する距離d1とX線透過経路が下側の楔フィルタ391に交わる領域のX線経路方向に関する距離d2との合計がX線透過経路長に規定される。X線透過経路長は2つの楔フィルタ間の列方向に関する間隙距離に応じて変化する。間隙距離が短くなるほどX線透過経路長が長くなる。反対に、間隙距離が長くなるほどX線透過経路長が短くなる。X線透過経路長の変更可能幅は、楔フィルタ391の斜面の角度とスライド可能距離とに応じて任意に設計可能である。また、X線透過経路長の変更可能幅は、X線透過経路長の最大時においても最小時においても、X線が2つの楔フィルタ391を通過するように設定されると良い。
【0036】
次に、フレキシブルウェッジフィルタを活用したPCCT撮像について説明する。
【0037】
図12は、システム制御部51の制御のもとに行われるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作の典型的な流れを示す図である。図12に示すように、本実施形態においてはCT撮像とPCCT撮像とが行われる。CT撮像は、フレキシブルウェッジフィルタ38の制御用のデータ、すなわち、フレキシブルウェッジフィルタ形状のデータを収集するために行われる。PCCT撮像は、CT撮像により収集された制御用のデータを利用してフレキシブルウェッジフィルタ38を制御しながら行われる。
【0038】
図12に示すように、CT撮像の準備が整うと、ユーザは、操作部56を介してCT撮像の開始指示を入力する。CT撮像の開始指示が入力されたことを契機としてシステム制御部51は、CT架台3内のCT用架台制御部16を制御して被検体Pに対してCT撮像を行う(ステップSA1)。CT撮像がフレキシブルウェッジフィルタ形状のデータを収集することのみを目的する場合、低解像度及び極低線量で撮像されると良い。フレキシブルウェッジフィルタ形状のデータの収集とともに画像診断等のためのCT画像を収集することも目的とする場合、CT撮像は、通常の解像度及び線量で行われると良い。
【0039】
CT撮像においてCT用架台制御部16は、回転駆動部15を制御して回転フレーム11を回転し、高電圧発生部17を制御してX線管12からX線を発生し、CT用データ収集部19を制御してCT用生データをビュー毎に収集する。CT用生データは、コンソール7に供給され記憶部58に記憶される。前処理部52は、ビュー毎のCT用生データに前処理を施してビュー毎のCT用投影データを生成し、画像再構成部53は、複数のビューに関するCT用投影データに基づいてCT画像のデータを発生する。CT用生データは、固定ウェッジフィルタ18及び被検体P透過後の入射線量分布を示している。CT用投影データは、固定ウェッジフィルタ18及び被検体P透過後のX線線量の対数変換の空間分布を示している。空間分布とは、チャンネル方向に関する分布を意味する。ビュー毎のCT用投影データとCT画像のデータとは、記憶部58に記憶される。
【0040】
CT撮像が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54に透過線量分布の計算処理を実行させる(ステップSA2)。ステップSA2においてフィルタ形状計算部54は、CT撮像用のキャリブレーションデータとCT用投影データまたはCT画像データとに基づいてビュー毎の被検体減衰分布を計算する。被検体減衰分布は、被検体Pにより減衰する線量値のチャンネル方向に関する分布を示す。CT撮像用のキャリブレーションデータは、固定ウェッジフィルタ18及び被検体の非存在下における入射線量分布を示す。
【0041】
図13は、CT撮像用のキャリブレーションデータとCT用投影データとを用いた被検体減衰分布の計算方法を説明するための図である。図13の(a)は、CT撮像用のキャリブレーションデータ、すなわち、固定ウェッジフィルタ18及び被検体の非存在下における入射線量分布を示す。図13の(b)は、CT投影データ、すなわち、固定ウェッジフィルタ18及び被検体透過後の入射線量分布を示す。図13の(c)は、被検体減衰分布を示す。図13に示すように、被検体減衰分布は、キャリブレーションデータとCT投影データとの差分に等しい。フィルタ形状計算部54は、キャリブレーションデータからCT投影データを減算して被検体減衰分布を計算する。被検体減衰分布は、ビュー毎に計算される。被検体減衰分布は、ビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0042】
ステップSA2が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54に吸収線量分布の計算処理を実行させる(ステップSA3)。ステップSA3においてフィルタ形状計算部54は、被検体減衰分布から、CT撮像で使用した固定ウェッジフィルタ18の材質及び形状を利用してビュー毎の吸収線量分布を計算する。固定ウェッジフィルタ18の形状は、具体的には、X線経路毎の固定ウェッジフィルタ18内のX線透過経路長に規定される。吸収線量分布は、吸収線量値のチャンネル方向に関する分布である。吸収線量値は、PCCT撮像においてフレキシブルウェッジフィルタ38により吸収させるX線の線量値に規定される。PCCT撮像においては、ダイナミックレンジの縮小等のため、X線検出器13への入射X線の線量がチャンネル方向に関して略均一であることが望ましい。すなわち、吸収線量値は、被検体のみ透過後の入射線量値から目標線量値の減算値に規定される。目標線量値は、PCCT撮像における入射線量値の目標値である。目標線量値は、チャンネル方向に関して略均一の値を有している。目標線量値は、空間分解能の向上の観点から言えば、オーバーフローが発生しない条件下において可能な限り高い値に設定されると良い。目標線量値は、ユーザにより操作部56を介して任意の値に設定可能である。吸収線量分布は、ビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0043】
ステップSA3が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54にフィルタ形状の計算処理を実行させる(ステップSA4)。ステップSA4においてフィルタ形状計算部54は、ビュー毎の吸収線量分布から、PCCT撮像で使用するフレキシブルウェッジフィルタ38の材質を利用してビュー毎のフレキシブルウェッジフィルタ形状を計算する。より詳細には、まず、フィルタ形状計算部54は、吸収線量分布からフレキシブルウェッジフィルタ38の材質を利用して、フレキシブルウェッジフィルタ38の各フィルタモジュール39について、入射線量値を目標線量値にするためのX線透過経路長をビュー毎に計算する。次に、フィルタ形状計算部54は、X線透過経路長に基づいて楔フィルタ391の配置をビュー毎に計算する。上述のように、X線透過経路長と2つの楔フィルタ391の配置とには対応関係が存在している。フィルタ形状計算部54は、この対応関係に従ってX線透過経路長から、各フィルタモジュール39における楔フィルタ391の配置をフレキシブルウェッジフィルタ形状データとして計算する。フレキシブルウェッジフィルタ形状データはビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0044】
ステップSA4が行われるとシステム制御部51は、キャリブレーションデータ設定部55に設定処理を行わせる(ステップSA5)。ステップSA5においてキャリブレーションデータ設定部55は、種々の方法により、ステップSA4において計算されたフレキシブルフィルタ形状に応じたキャリブレーションデータを設定する。キャリブレーションデータは、PCCT用投影データから被検体Pによる減衰成分のみを抽出するために利用される。
【0045】
キャリブレーションデータの設定方法としては、例えば、実際に設定したフレキシブルウェッジフィルタ38を使用して直接的に測定する方法、予め収集しておいた様々な形状の分布データから最も近いものを選択する方法、あるいは、フレキシブルウェッジフィルタ38のフィルタモジュール39毎に複数のX線透過経路長で測定したデータから補間して対応する検出素子のデータを求め、分布形状を得る方法などがある。キャリブレーションデータは、ビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0046】
ステップSA5が行われるとシステム制御部51は、PCCT撮像の開始指示がなされることを待機している。PCCT撮像の準備が整うと、ユーザは、PCCT撮像の開始指示を操作部56を介して入力する。
【0047】
PCCT撮像の開始指示が入力されたことを契機としてシステム制御部51は、PCCT架台5内のPCCT用架台制御部36を制御して被検体Pに対してPCCT撮像を行う(ステップSA6)。ステップSA6においてPCCT用架台制御部36は、回転駆動部35を制御して回転フレーム31を回転させ、高電圧発生部37を制御してX線管32からX線を発生し、PCCT用データ収集部42を制御して複数のエネルギー・ビンに関するカウントデータをビュー毎に収集する。この際、PCCT用架台制御部36は、フレキシブルウェッジフィルタ形状データに従って複数のフィルタモジュール39が配置されるように、ビュー毎にモジュール駆動部41を制御する。モジュール駆動部41は、PCCT用架台制御部36からの制御に従って、複数のフィルタモジュール39の各々について2つの楔フィルタ391をスライドし、フレキシブルウェッジフィルタ形状に応じた配置まで複数の楔フィルタ391を移動する。これにより、X線検出器33への入射線量がチャンネル方向に略均一に分布される。
【0048】
図14は、フレキシブルウェッジフィルタによるチャンネル方向に関するX線透過経路長の分布の制御を説明する。図14の(a)は、例示的な複数のフィルタモジュールの配置におけるフレキシブルウェッジフィルタの斜視図であり、図14の(b)は、図12の(a)の配置における複数のフィルタモジュールの平面図であり、図14の(c)は、図14の(a)の配置におけるフレキシブルウェッジフィルタの断面図であり、図14の(d)は、図14の(a)の配置におけるX線透過経路長分布である。図14の(b)の平面図は、チャンネル方向から見たフィルタモジュールの平面図である。図14の(c)の断面図は、チャンネル方向とX線経路方向とにより規定される断面に関する断面図である。図14(c)中の斜線部は楔フィルタ391が占める領域を示し、空白部は楔フィルタ391が存在しない空間を示している。図14に示すように、2つの楔フィルタ391間の列方向に関する距離に応じてX線経路方向に関するX線透過経路長が変化する。X線透過経路長を変化させることによりチャンネル方向に関して線量分布を変化させることができる。PCCT用架台制御部36は、フレキシブルウェッジフィルタ形状に応じたフィルタモジュール配置をビュー毎に実現するように、フレキシブルウェッジフィルタ形状に従ってビュー毎にモジュール駆動部41を制御する。チャンネル方向の中央部から端部に行くにつれてX線透過経路長を短くしたい場合、チャンネル方向に関する2つの楔フィルタ391間の距離は、チャンネル方向の中央部から端部に行くにつれて長く設定される。
【0049】
PCCT用データ収集部42により収集された複数のエネルギー・ビンに関するカウントデータは、伝送部43によりコンソール7に供給され、記憶部58に記憶される。前処理部52は、複数のエネルギー・ビンに関するカウントデータに前処理を施して、複数のエネルギー・ビンに関するPCCT用投影データを生成する。前処理においてキャリブレーションデータを利用したキャリブレーション補正が施される。
【0050】
図15は、本実施形態に係るPCCT撮像における線量分布を示す図である。図15の(a)は、被検体減衰分布を示し、図15の(b)は、PCCT撮像用のキャリブレーションデータを示し、図15の(c)は、CT撮像時に比して線量を低下した場合のキャリブレーションデータを示し、図15の(d)は、入射線量分布を示し、図15の(e)は、キャリブレーション補正後の線量分布を示している。被検体減衰分布は、ステップSA2においてCT撮像用のキャリブレーションデータとCT用投影データまたはCT画像データとに基づいて計算されたものである。被検体減衰分布に対して、チャンネル方向に均一な線量分布を加算したものが、キャリブレーションデータ設定部55によりキャリブレーションデータに設定される。PCCT撮像においては、オーバーフローが生じにくい程度まで線量率が低下される。線量率を低下した場合であっても、線量分布の形状は保たれる。従ってキャリブレーション設定部55は、被検体減衰分布に一定値が加算された線量分布と、CT撮像時の線量とPCCT撮像時の線量との変化分とに基づいて、PCCT撮像用のキャリブレーションデータを計算すると良い。例えば、図15の(b)の線量を全体的に低下させた図15の(c)の線量分布をキャリブレーションデータに設定すると良い。PCCT撮像によるX線検出器33への入射線量分布は、上述のフレキシブルウェッジフィルタ38のフィルタモジュール39に対する制御により、チャンネル方向に関して略均一となる。X線検出器33への入射線量分布に基づくPCCT用投影データは、前処理部52によりキャリブレーション補正が施される。キャリブレーション補正において前処理部52は、PCCT用投影データからPCCT用のキャリブレーションデータを減算する。減算後のPCCT用投影データが示す線量分布は、図15の(e)のように、被検体により吸収された線量値のチャンネル方向に関する分布を示すこととなる。
【0051】
なお、例示のため、図15の(e)には一つのキャリブレーション補正後の線量分布を示しているが、エネルギー・ビン毎にキャリブレーション補正後の線量分布は異なる形状を有することを言及しておく。
【0052】
画像再構成部53は、複数のエネルギー・ビンのうちの画像化対象のエネルギー・ビンに関するPCCT用投影データに基づいて、画像化対象のエネルギー・ビンに関するPCCT画像を発生する。PCCT画像は、表示部57に表示される。
【0053】
以上で、本実施形態に係るフレキシブルウェッジフィルタ38を活用したPCCT撮像の説明を終了する。
【0054】
なお、線量の均一化精度の観点から言えば、単一のフィルタモジュール39を透過したX線が到達する検出素子のチャンネル方向に関する検出素子数は一つであることが望ましい。しかしながら、フィルタモジュール39と検出素子との体積の関係上、単一のフィルタモジュール39を透過したX線が複数の検出素子に到達することが想定される。この場合、入射線量値をチャンネル方向に関して完全に均一にすることはできない。しかしながら、本実施形態は、線量のダイナミックレンジを縮小することを目的としているので、入射線量値が完全に均一であることを必要としない。フレキシブルウェッジフィルタ38によるフィルタモジュール39の搭載数に応じて入射線量分布に凹凸が生じても構わない。
【0055】
また、上記の実施形態においては、フレキシブルウェッジフィルタ形状データに従ってビュー毎にフィルタモジュール39を動作制御するとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。線量の均一度合が低減しても良いのであれば、2以上の所定ビュー毎にフィルタモジュール39が動作制御されれば良い。この場合であっても、従来例に比して線量のダイナミックレンジを縮小することが可能である。
【0056】
(変形例1)
上記の説明においてフィルタモジュール39は、2つの楔フィルタ391からなる構成のみに限定されない。例えば、最小のX線透過経路長がある程度長い場合、他のタイプのフィルタモジュールを利用することが可能である。以下、他のフィルタモジュールについて説明する。なお以下の説明において、フィルタモジュールと略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0057】
図16は、他のフィルタモジュール39´の斜視図である。図16に示すように、他のフィルタモジュール39´は、2つの楔フィルタ391と1つの固定フィルタ392とを有している。2つの楔フィルタ391はチャンネル方向に関して個別に移動可能に、また、固定フィルタ392は固定してモジュール支持機構40(図示せず)により支持されている。固定フィルタ392の材料としては、アルミニウムや金属、プラスチック等のX線の線量を減衰可能な如何なる物質も適用可能である。固定フィルタ392は、チャンネル方向及び列方向に関して一定の厚み、すなわち、チャンネル方向及び列方向に関して一定のX線透過経路長を有している。このような固定フィルタ392の幾何学的条件により、固定フィルタ392がチャンネル方向または列方向にスライドされた場合であっても、固定フィルタ392内のX線透過経路長は一定となる。
【0058】
図17は、2つの楔フィルタ391のスライドによる他のフィルタモジュール39´内のX線透過経路長を変化する動作を説明するための図である。図17の(a)はX線透過経路長が最大時、図17の(b)はX線透過経路長が中間時、図17の(c)はX線透過経路長が最小時のときの2つの楔フィルタ391と1つの固定フィルタ392との配置例を示している。図17の(a)、(b)、及び(c)の各々には2つの楔フィルタ391と1つの固定フィルタ392の平面図が図示されている。X線は、列方向に関するX線透過経路の中心軸ACを中心として所定幅を有している。X線透過経路が楔フィルタ391と固定フィルタ392とに交わる領域(図17の斜線領域)のX線透過方向に関する合計距離がX線透過経路長に規定される。すなわち、X線透過経路が上側の楔フィルタ391に交わる領域のX線経路方向に関する距離d1とX線透過経路が下側の楔フィルタ391に交わる領域のX線経路方向に関する距離d2とX線透過経路が固定フィルタ392に交わる領域のX線経路方向に関する距離d3との合計がX線透過経路長に規定される。固定フィルタ392は、最小のX線透過経路長がある程度長い場合に設けられると良い。モジュール駆動部42による楔フィルタ391の移動制御の精度を向上するため、固定フィルタ392の採用に伴いフィルタモジュール39の軽量化を図ることもできる。例えば、楔フィルタ391の楔の斜面の角度を比較的浅く設計することにより、楔フィルタ391の軽量化が図られる。なお、固定フィルタ392は、フィルタモジュール39の各々に設けられても良いし、所定数のフィルタモジュール39について一つ設けられても良いし、フレキシブルウェッジフィルタ38に搭載されている全てのフィルタモジュール39について一つ設けられても良い。
【0059】
(変形例2)
上述の説明においてフィルタ形状計算部54は、CT撮像用のキャリブレーションデータを利用してフレキシブルウェッジフィルタ形状を計算するとした。しかしながら、フレキシブルウェッジフィルタ形状の計算方法はこれのみに限定されない。変形例2に係るフィルタ形状計算部54は、CT撮像用のキャリブレーションデータを利用せずにフレキシブルウェッジフィルタ形状データを計算する。以下、変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタ形状データの計算について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0060】
図18は、変形例2に係るシステム制御部51の制御のもとに行われるX線コンピュータ断層撮影装置1の動作の典型的な流れを示す図である。
【0061】
図18に示すように、CT撮像の準備が整うと、ユーザは、操作部56を介してCT撮像の開始指示を入力する。CT撮像の開始指示が入力されたことを契機としてシステム制御部51は、CT架台3内のCT用架台制御部16を制御して被検体Pに対してCT撮像を行う(ステップSA1)。
【0062】
CT撮像が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54に透過線量分布の計算処理を実行させる(ステップSB2)。ステップSB2においてフィルタ形状計算部54は、ビュー毎のCT用投影データまたはCT画像データに基づいてビュー毎の透過線量分布を計算する。透過線量分布は、固定ウェッジフィルタ18及び被検体P透過後のX線検出器13への入射線量分布を示している。すなわち、透過線量分布は、CT用生データに含まれる検出素子毎の出力値の分布に略等しい。CT画像データに基づいてX線線量分布を計算する場合、リプロジェクション(再投影:reprojection)等の処理が用いられる。
【0063】
ステップSB2が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54に吸収線量分布の計算処理を実行させる(ステップSB3)。ステップSB3においてフィルタ形状計算部54は、透過線量分布から、CT撮像で使用した固定ウェッジフィルタ18の材質及び形状を利用してビュー毎の吸収線量分布を計算する。吸収線量分布は、吸収線量値のチャンネル方向に関する分布である。吸収線量値は、PCCT撮像においてフレキシブルウェッジフィルタ38により吸収させるX線の線量値に規定される。PCCT撮像においては、ダイナミックレンジの縮小等のため、X線検出器13への入射X線の線量がチャンネル方向に関して略均一であることが望ましい。すなわち、吸収線量値は、透過線量値から目標線量値の減算値に規定される。目標線量値は、PCCT撮像における入射線量値の目標値である。目標線量値は、チャンネル方向に関して略均一の値を有している。目標線量値は、空間分解能の向上の観点から言えば、オーバーフローが発生しない条件下において可能な限り高い値に設定されると良い。目標線量値は、ユーザにより操作部56を介して任意の値に設定可能である。吸収線量分布は、ビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0064】
ステップSB3が行われるとシステム制御部51は、フィルタ形状計算部54にフィルタ形状の計算処理を実行させる(ステップSB4)。ステップSB4においてフィルタ形状計算部54は、ビュー毎の吸収線量分布から、PCCT撮像で使用するフレキシブルウェッジフィルタ38の材質を利用してビュー毎のフレキシブルウェッジフィルタ形状を計算する。より詳細には、まず、フィルタ形状計算部54は、吸収線量分布からフレキシブルウェッジフィルタ38の材質を利用して、フレキシブルウェッジフィルタ38の各フィルタモジュール39について、入射線量値を目標線量値にするためのX線透過経路長をビュー毎に計算する。次にフィルタ形状計算部54は、X線透過経路長に基づいて楔フィルタ391の配置をビュー毎に計算する。フィルタ形状計算部54は、X線透過経路長と2つの楔フィルタ391の配置との対応関係に従ってX線透過経路長から、各フィルタモジュール39における楔フィルタ391の配置をフレキシブルウェッジフィルタ形状データとして計算する。フレキシブルウェッジフィルタ形状はビュー毎に記憶部58に記憶される。
【0065】
ステップSA4が行われるとシステム制御部51は、キャリブレーションデータ設定部55に設定処理を行わせる(ステップSA5)。ステップSA5においてキャリブレーションデータ設定部55は、本実施形態と同様の方法により、ステップSA4において計算されたフレキシブルフィルタ形状に応じたキャリブレーションデータを設定する。
【0066】
ステップSA5が行われるとシステム制御部51は、PCCT撮像の開始指示がなされることを待機している。PCCT撮像の準備が整うと、ユーザは、PCCT撮像の開始指示を操作部56を介して入力する。PCCT撮像の開始指示が入力されたことを契機としてシステム制御部51は、PCCT架台5内のPCCT用架台制御部36を制御して被検体Pに対してPCCT撮像を行う(ステップSA6)。
【0067】
以上で、変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタ38を活用したPCCT撮像の説明を終了する。
【0068】
このように変形例2によれば、CT撮像用のキャリブレーションデータを利用することなくフレキシブルウェッジフィルタ形状を計算することができる。
【0069】
(変形例3)
上述の説明において線量値の均一化対象方向は、チャンネル方向であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、線量値の均一化対象方向は、列方向でも良い。以下、線量値の均一化対象方向が列方向の場合におけるフレキシブルウェッジフィルタについて説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0070】
図19は、変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタ38´の概略的な斜視図であり、図20、変形例2に係るフレキシブルウェッジフィルタ38´の列方向から見た平面図である。図19及び図20に示すように、フレキシブルウェッジフィルタ38´は、線量の均一化対象方向、すなわち、列方向に沿って配列された複数のフィルタモジュール39を有している。複数のフィルタモジュール39は、図19及び図20に示すように、円弧状に配列されても良いし、平行に配列されても良い。円弧状に配列する場合、各フィルタモジュール39の列方向の厚さは、X線管32側で薄く、被検体P側で厚くなるように設計される必要がある。
【0071】
このように変形例3によれば、線量値を列方向に関して略一定にすることができ、列方向に関してもダイナミックレンジを縮小することができる。
【0072】
(変形例4)
上述の説明において線量値の均一化対象方向は、チャンネル方向または列方向であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、線量値の均一化対象方向は、チャンネル方向と列方向との両方向でも良い。以下、線量値の均一化対象方向がチャンネル方向と列方向との両方向の場合におけるフレキシブルウェッジフィルタについて説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0073】
図21は、変形例3に係るフレキシブルウェッジフィルタ38´´の概略的な斜視図である。図21に示すように、フレキシブルウェッジフィルタ38´´は、チャンネル方向に配列された複数のフィルタモジュール39を有するフレキシブルウェッジフィルタ38と列方向に配列された複数のフィルタモジュール39を有するフレキシブルウェッジフィルタ38´とを装備している。フレキシブルウェッジフィルタ38とフレキシブルウェッジフィルタ38´とは、互いに直交するように設けられる。フレキシブルウェッジフィルタ38がX線管32側に配置されても良いし、とフレキシブルウェッジフィルタ38´がX線管32側に配置されても良い。このように、フレキシブルウェッジフィルタ38とフレキシブルウェッジフィルタ38´とは、各フィルタモジュール39の2つの楔形フィルタ391がX線経路方向と配列方向との直交方向に関して互いに接近又は離反可能にモジュール支持機構40により支持される。
【0074】
このように変形例4によれば、線量値をチャンネル方向と列方向との両方向に関して略一定にすることができ、チャンネル方向と列方向との両方向に関してダイナミックレンジを縮小することができる。
【0075】
(変形例5)
上述の説明においてCT架台3とPCCT架台5とは別体の撮像機構であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、CT架台3とPCCT架台5とが一体の撮像機構であるとしても良い。この場合、PCCT架台5にさらにCT用データ収集部19が設けられれば良い。この構成によれば、よりコンパクトな構成で本実施形態を実現することができる。
【0076】
(変形例6)
上述の説明においてX線撮像装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であるとした。しかしながら、上述のように、本実施形態に係るX線撮像装置は、X線診断装置でも良い。X線診断装置は、回転フレーム11,31の代わりにCアームを装備している。Cアームは、X線管12,32とX線検出器13,33とを回動自在に支持する支持機構である。その他の構成は、X線コンピュータ断層撮影装置1と同様の構成であるので記載は省略する。
【0077】
従って、変形例6によれば、フォトンカウンティングモードを実装するX線診断装置において、オーバーフローのリスクの低減及びダイナミックレンジの縮小を実現することができる。
【0078】
[効果]
上記の説明の通り、本実施形態に係るX線撮像装置は、少なくともX線管32、X線検出器33、回転支持機構(回転フレーム)31、PCCT用データ収集部42、フレキシブルウェッジフィルタ38、及びPCCT用架台制御部36を有している。X線管32は、X線を発生する。X線検出器33は、X線管32から発生され被検体Pを透過したX線を検出する。回転支持機構31は、X線管32とX線検出器33とを支持する。PCCT用データ収集部42は、X線管32から発生されたX線のエネルギースペクトルに含まれる複数のエネルギー帯域の各々についてX線フォトンのカウントに関するデータセットを収集する。フレキシブルウェッジフィルタ38は、X線管32からのX線の線量を減衰するためにX線管32と被検体Pとの間に配置され、X線遮蔽物質内におけるX線の透過経路長を個別に変更可能な構成を有する複数のフィルタモジュール39を有する。PCCT用架台制御部36は、X線管32から発生され被検体Pを透過してX線検出器33に到達するX線の線量を空間的に略均一に分布させるために複数のフィルタモジュール39を個別に動作させる。
【0079】
上記構成により、本実施形態に係るX線撮像装置は、X線検出器33に到達するX線の線量を空間的に略均一に分布させることにより、X線検出器33に到達するX線の線量のばらつきを低減する。これにより本実施形態に係るX線撮像装置は、ダイナミックレンジを縮小することができる。X線検出器33に到達するX線の線量を、また、オーバーフローが生じる可能性の低い程度の線量に設定することにより、極低線量のデータに含まれるノイズを低減しつつオーバーフローのリスクを低減することができる。これにより、高精度且つ信頼性の高いPCCT撮像を実現することができる。
【0080】
かくして本実施形態によれば、オーバーフローのリスクの低減及びダイナミックレンジの縮小を実現することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、3…CT架台、5…PCCT架台、7…コンソール、11…回転フレーム、12…X線管、13…X線検出器、14…天板、15…回転駆動部、16…CT用架台制御部、17…高電圧発生部、18…固定ウェッジフィルタ、19…CT用データ収集部、20…伝送部、31…回転フレーム、32…X線管、33…X線検出器、34…天板、35…回転駆動部、36…PCCT用架台制御部、37…高電圧発生部、38…フレキシブルウェッジフィルタ、39…フィルタモジュール、40…モジュール支持機構、41…モジュール駆動部、42…PCCT用データ収集部、43…伝送部、51…システム制御部、52…前処理部、53…画像再構成部、54…フィルタ形状計算部、55…キャリブレーションデータ設定部、56…操作部、57…表示部、58…記憶部
図1
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