(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
図1及び2は、実施形態1に係る光ファイバアレイ10が設けられたファイバ出射ヘッドHを示す。このファイバ出射ヘッドHは、例えばCTP(直接製版記録装置)等でレーザ光の照射に用いられるものである。
【0013】
このファイバ出射ヘッドHは、SUS製等の可撓管Tの先端に外嵌め状に取り付けられた円筒状部材からなるヘッド本体20を備え、そのヘッド本体20の先端の矩形開口に実施形態1に係る光ファイバアレイ10のユニットが内嵌めされた構成を有する。なお、ヘッド本体20の形状はこれに限定されるものではない。
【0014】
ヘッド本体20を形成する材料としては、例えば、SUS、アルミ等の金属が挙げられる。ヘッド本体20は、例えば、長さが30〜200mm、及び外径が8〜50mmである。
【0015】
図3〜5は、実施形態1に係る光ファイバアレイ10を示す。
【0016】
実施形態1に係る光ファイバアレイ10は、V溝基板11と複数本の光ファイバ心線12と一対の押さえ基板13とで構成されている。
【0017】
V溝基板11は、例えば、ジルコニア基板や石英基板等の矩形基板によって構成されている。V溝基板11は、例えば、長さ(ファイバ出射ヘッドHの長さ方向の寸法)が5〜20mm、幅が5〜15mm、及び厚さが0.5〜3mmである。
【0018】
V溝基板11には、両方の基板表面のそれぞれに、長さ方向に並行に延びるように複数のV溝11aが形成されている。V溝11aは、
図3に示すように幅方向に間隔を有さずに連設されていてもよく、また、幅方向に間隔をおいて、つまり、隣接するV溝11a間に平坦部を有して設けられていてもよい。V溝11aの数は例えば4〜64である。V溝11aのV角度は例えば60〜110°である。
【0020】
複数本の光ファイバ心線12のそれぞれは、光ファイバ121とそれを被覆する被覆層122とを有する。各光ファイバ心線12の外径は例えば0.8〜2mmである。
【0021】
光ファイバ121は、コア121aとそれを被覆するように一体に設けられたクラッド121bとを有する。コア121aは例えば純粋石英で形成されて相対的に高屈折率に構成されており、クラッド121bは例えば屈折率を低下させるドーパントであるフッ素やホウ素等がドープされた石英で形成されて相対的に低屈折率に構成されている。光ファイバ121は、クラッド121bを被覆するように一体に設けられた純粋石英のサポート層121cをさらに有していてもよい。光ファイバ121は、例えば、外径が125〜1500μm、コア121aの直径が50〜1200μm、クラッド121bの層厚さが3〜90μm、及びサポート層121cの層厚さが5〜60μmである。
【0022】
被覆層122は樹脂で形成されている。被覆層122を形成する樹脂材料としては、例えば、UV硬化型樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。被覆層122は、例えばUV硬化型樹脂の単一層で構成されていてもよく、また、例えばシリコーン樹脂の内側層とナイロン樹脂の外側層とからなる複数層で構成されていてもよい。被覆層122の層厚さは例えば10〜800μmである。
【0023】
複数本の光ファイバ心線12のそれぞれは、一端部において被覆層122が剥がされて光ファイバ121が露出している。そして、複数本の光ファイバ心線12のそれぞれは、その被覆層122が剥がされて露出した光ファイバ121がV溝基板11のV溝11aに沿ってV溝11aの両側の面に外周面が接して支持されて基板表面から突出するように設けられ、また、それと共に被覆層122の先端121aがV溝基板11上に位置付けられている。光ファイバ121の配設ピッチは、V溝11aの配設ピッチに依存するが、例えば50〜2000μmである。
【0024】
このような実施形態1に係る光ファイバアレイ10の構成によれば、光ファイバ心線12の一端部において被覆層122が剥がされて露出した光ファイバ121がV溝基板11のV溝11aに沿って設けられているが、それと共に、被覆層122の先端121aがV溝基板11上に位置付けられているので、V溝基板11の複数本の光ファイバ心線12が延びる側の端には被覆層122が接触し、光ファイバ121がV溝基板11の角部に直接接触することはなく、そのため光ファイバアレイ10における光ファイバ121の断線を抑制することができる。そして、その結果、歩留まりが安定し、また、高い信頼性を得ることができる。
【0025】
また、このような実施形態1に係る光ファイバアレイ10の構成では、被覆層122の先端121aがV溝基板11上に位置付けられ、そのため
図5に示すようにV溝基板11上における光ファイバ121の高さ位置が後方側よりも先端側の方が低くなるが、それによる光ファイバアレイ10の寸法精度への影響を小さく抑える観点からは、被覆層122の層厚さは30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、被覆層122が剥がされて露出した光ファイバ121の長さは2mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。なお、V溝基板11上に載る被覆層122の長さは例えば2〜10mmである。
【0026】
複数本の光ファイバ心線12は、ファイバ出射ヘッドH内においてV溝基板11よりも後方に延びて可撓管Tに導かれている。なお、複数本の光ファイバ心線12は、
図2に示すように、可撓管Tに挿通されてファイバ出射ヘッドHの中間部まで導入された筒状の樹脂ネット30に挿通されて可撓管Tに導かれていてもよい。
【0027】
一対の押さえ基板13のそれぞれは、例えば、ジルコニア基板や石英基板等の両面が平坦面の矩形基板によって構成されている。押さえ基板13の長さは例えば4〜15mmであり、
図4及び5に示すようにV溝基板11よりも短くてもよく、また、V溝基板11よりも長くてもよく、さらに、V溝基板11と同一長さであってもよい。押さえ基板13の幅は例えば5〜15mmであり、
図3及び4に示すようにV溝基板11と同一幅であってもよく、また、V溝基板11よりも幅狭であってもよく、さらに、V溝基板11よりも幅広であってもよい。押さえ基板13の厚さは例えば0.5〜2mmであり、
図3に示すようにV溝基板11と同一厚さであってもよく、また、V溝基板11よりも薄くてもよく、さらに、V溝基板11よりも厚くてもよい。
【0028】
一対の押さえ基板13は、一方がV溝基板11上の一方の面に配設された光ファイバ121の上に、V溝基板11との間で光ファイバ121を挟持すると共に、各光ファイバ121を、V溝11aの両側の面及び押さえ基板13のより三点支持するように設けられており、また、他方がV溝基板11上の他方の面に配設された光ファイバ121の上に、V溝基板11との間で光ファイバ121を挟持すると共に、各光ファイバ121を、V溝11aの両側の面及び押さえ基板13のより三点支持するように設けられている。そして、これにより、この実施形態1に係る光ファイバアレイ10は、V溝基板11の両側のそれぞれに並行に並ぶように光ファイバ121が配設され、さらにその両側から押さえ基板13で挟まれた2行配列の構成を有する。
【0029】
各押さえ基板13は、
図4及び5に示すように、複数本の光ファイバ心線12の被覆層122の先端122aを覆うように設けられている。この構成によれば、押さえ基板13の角部に光ファイバ121が接触しないので、その断線を抑制することができる。被覆層12におけるV溝基板11と押さえ基板13との間に挟まれた部分の長さは例えば4〜10mmである。
【0030】
また、この場合、複数本の光ファイバ心線12のそれぞれは、
図7に示すように、被覆層122における押さえ基板13に覆われた部分に薄肉化加工が施されていてもよい。つまり、その部分の被覆層122の厚さが、元来の被覆層122の厚さよりも薄く形成されていてもよい。この構成によれば、光ファイバ121の押さえ基板13の角部への接触回避による断線抑制効果に加え、V溝基板11と押さえ基板13との平行度が高められ、光ファイバアレイ10の寸法精度を向上させることができる。薄肉化加工は、少なくとも被覆層122におけるV溝基板11と押さえ基板13との間に挟まれている部分に施されていればよく、例えばV溝基板11上に設けられる全ての部分に施されていてもよい。但し、光ファイバ121をV溝基板11の角部から保護する観点からは、V溝基板11の角部では被覆層122の厚さは厚いことが好ましく、従って、薄肉化加工は、V溝基板11上に設けられている部分のうちさらに先端側の一部分だけに施されていることが好ましい。被覆層122における薄肉化加工が施された部分の厚さは例えば2〜15μmであり、元来の被覆層122の厚さの例えば80〜20%程度の厚さである。また、この部分では、光ファイバ心線12の外径が細径化されて光ファイバ121の外径に近いことが好ましく、具体的には、前者の外径が後者の外径の120%以下であることが好ましい。薄肉化加工としては、当該部分に対し例えば250〜450℃での熱処理を5〜60秒間かけて被覆層122に含まれる成分を蒸散させることにより被覆層122を収縮させる加工等が挙げられる。
【0031】
押さえ基板13は、
図8に示すように、複数本の光ファイバ心線12の被覆層122の先端122aが押さえ基板13の外部に位置付けられるように設けられていてもよい。この構成によれば、V溝基板11と押さえ基板13との平行度が高められ、光ファイバアレイ10の寸法精度を向上させることができる。押さえ基板13の外部に露出する光ファイバ121の長さは短いことが好ましく、具体的には、その長さは2〜10mm程度であることが好ましい。
【0032】
実施形態1に係る光ファイバアレイ10では、V溝基板11、光ファイバ121、及び押さえ基板13の間に形成された間隙に樹脂接着剤が充填されて一体化していることが好ましい。また、ヘッド本体20の先端の矩形開口と光ファイバアレイ10との間に形成された間隙にも樹脂接着剤が充填されていることが好ましい。かかる樹脂接着剤としては例えばエポキシ樹脂系接着剤が挙げられる。
【0033】
ファイバ出射ヘッドHには、光ファイバアレイ10におけるV溝基板11及び押さえ基板13の後方部分並びにそこから後方に延びて可撓管Tに導入される複数本の光ファイバ心線12が埋設されるように、弾性樹脂系充填剤40が充填されていることが好ましい。かかる弾性樹脂系充填剤40としては例えばシリコーン樹脂系充填剤が挙げられる。
【0034】
(実施形態2)
図9及び10は、実施形態2に係る光ファイバアレイ10が設けられたファイバ出射ヘッドHを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。このファイバ出射ヘッドHもまた、例えばCTP(直接製版記録装置)等でレーザ光の照射に用いられるものである。
【0035】
図11〜13は、実施形態2に係る光ファイバアレイ10を示す。
【0036】
実施形態2に係る光ファイバアレイ10では、複数本の光ファイバ心線12のそれぞれは、一端部において被覆層122が剥がされた部分を有さず、且つV溝基板11のV溝11aに沿ってV溝11aの両側の面に接して支持されるように設けられていると共に、被覆層122における押さえ基板13に覆われた部分に薄肉化加工が施されている。
【0037】
このような実施形態2に係る光ファイバアレイ10の構成によれば、光ファイバ121が露出していないことから、光ファイバ121のV溝基板11の角部或いは押さえ基板13の角部への接触が回避されて断線が抑制され、それに加え、被覆層122における押さえ基板13に覆われた部分に薄肉化加工が施されているので、V溝基板11と押さえ基板13との平行度が高められ、光ファイバアレイ10の寸法精度を向上させることができる。
【0038】
薄肉化加工は、少なくとも被覆層122におけるV溝基板11と押さえ基板13との間に挟まれている部分に施されていればよく、例えばV溝基板11上に設けられる全ての部分に施されていてもよい。但し、光ファイバ121をV溝基板11の角部から保護する観点からは、V溝基板11の角部では被覆層122の厚さは厚いことが好ましく、従って、薄肉化加工は、V溝基板11上に設けられている部分のうちさらに先端側の一部分だけに施されていることが好ましい。
【0039】
被覆層122における薄肉化加工が施された部分の厚さは例えば2〜15μmであり、元来の被覆層122の厚さの例えば105〜140%程度の厚さである。また、この部分では、光ファイバ心線12の外径が細径化されて光ファイバ121の外径に近いことが好ましく、具体的には、前者の外径が後者の外径の120%以下であることが好ましい。
【0040】
薄肉化加工としては、当該部分に対し例えば250〜450℃での熱処理を5〜60秒間かけて被覆層122に含まれる成分を蒸散させることにより被覆層122を収縮させる加工等が挙げられる。
【0041】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
【0042】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態1及び2に係る光ファイバアレイ10では、両側にV溝11aを形成したV溝基板11を用いたが、特にこれに限定されるものではなく、片側のみにV溝を形成したV溝基板を用いた構成であってもよい。
【0043】
上記実施形態1及び2に係る光ファイバアレイ10では、光ファイバ121の2行配列の構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、単行配列の構成であってもよく、また、3行以上の配列の構成であってもよい。後者の場合、例えば2〜8行である。