(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ダーツゲーム装置として,プラスチックなどの樹脂材料製の多数の孔(ピット)が形成された標的に対して,プラスチック等の矢先(チップ)を有する矢(ダーツ)を投げ,ダーツの刺さった標的のそれぞれの領域に設定された得点により技量を競う,ソフトダーツと称されるダーツゲーム装置が知られている。
【0003】
ここで,かかるダーツゲーム装置において,ダーツを投げた結果に対して点数表示や,所定点数を超えた得点の際の演出表示を行い、ダーツゲームの遊戯者(競技者)が,よりゲームに熱中する状況を提供することが重要である。
【0004】
かかる点に対応するダーツゲーム装置として,本出願人が先に提案した特許文献1に記載の発明がある。かかる特許文献1に記載のゲーム装置は,ゲーム筐体正面に標的を配置し,この標的の上部に表示ユニットを配置している。この表示ユニットにより,所定点数を超えた得点の際の演出表示を行うようにしている。
【0005】
また,他の技術として,同様に本出願人が先に提案したゲーム筐体上部の表示ユニットで,演出表示を行うとともに,ダーツの標的盤面を複数の標的セグメントに分割し,それぞれの標的セグメントを異なる態様で照明することで,演出効果を高めるようにしている(特許文献2)。
【0006】
さらに,これまでのダーツゲーム装置にあっては,上記特許文献1,2に示されるように、標的の形態は,複数の同心円と複数の分割線で区切られて,複数のセグメントに規定される構成である。
【0007】
そこで,画像表示装置で,ダーツの標的となる画像を表示し,前記画像表示装置の表示面の前面にチップを保持する透明のパネル体を設ける構成が,本出願人により更に提案されている(特許文献3)。かかる構成により,画像表示装置に表示される画像を変えることにより,種々の形態の標的を構成することが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して,実施例を説明する。
【0020】
図1は,ダーツゲーム装置の実施例の外観形態を示す概念図である。
図1(1)は,ダーツゲーム装置の正面概略図であり,
図1(2)は,ダーツゲーム装置の側面概略図である。
【0021】
ダーツゲーム装置は,装置筐体である平板状の本体部1と,本体部1の表面に画像を投影する少なくとも1つの投影装置を有する。
図1の例では,本体部1の上部及び下部の両方に,投影装置2,3が配置されているが、投影装置は少なくとも1台あれば良い。
【0022】
本体部1の上部及び下部の両方に,投影装置2,3を配置することにより,後に詳細に説明するように,投影装置2,3からの光度を調整して,的中し保持されるダーツの影が一方向に長く生じることを回避できる。
【0023】
図2は,投影装置2,3により,本体部1の表面に投影される演出画像の一例を示す。
【0024】
図2(1)は,ダーツゲーム装置が,アドバタイズ画面を表示している例である。本体部1の表面に投影装置(プロジェクタ)2,3から本体部1の表面にアドバタイズ画像が投影される。一例として,投影された画像の領域4,5にダーツゲームの過去のゲーム結果の映像,あるいはダーツゲームが行われていない時間等に、ダーツゲームの魅力を語る画像等を投影表示して,遊戯者をダーツゲームに誘う演出画像が表示される。
【0025】
さらに,
図2(1)において,ダーツゲームを開始する場合,ゲーム料金をカード決済により徴収するために,カードをかざし,カードデータを検出する領域位置を示す投影画像6が表示される。
【0026】
図2(1)に示すカードデータの検出位置を示す投影画像6にカードをかざし,遊戯者データ(クレジットカードあるいは,会員カード等に記録されるデータ)が読み取られる。
【0027】
図2(2)は,遊戯者データが読み取られ,ダーツゲームの開始モードに移行した際の投影画像の例である。ダーツの標的像7と,得点ボード8と,複数の選択ボタン(タッチセンサー)位置9が表示される。
【0028】
さらに,
図2(3)は,ダーツゲームにおいて,所定の得点に達した際の,演出画像を表示する例である。たとえば,標的像7は,複数の色の変化を表示して得点達成を祝う演出を行う。得点ボード8には,競技結果の得点表示,あるいは,他のメッセージ像が表示される。画像10により,演出するメッセージが同様に表示される。
【0029】
なお,標的像7は,従来のダーツゲーム装置に一般的であった円形の形状に限られず,四角形等自由に演出が可能である。
【0030】
ここで,上記投影装置2,3によって投影される画像表示は,周知の技術であるプロジェクションマッピングを用いて行われる。
【0031】
プロジェクションマッピングは,建物などの凹凸をあらかじめ3次元データ化しておいて、その表面に立体的な映像をプロジェクタで映写する技術である。したがって,本体部1の表面が,凹凸を有していても、その凹凸を考慮した上での投影が可能である。
【0032】
図3は,ダーツゲーム装置の筐体である本体部1の構造を説明する図である。
【0033】
図3(1a),(1b)は,本体部1の第1の実施例の正面及び側断面の概略を示す図である。
図3(2a),(2b)は,本体部1の第2の実施例の正面及び側断面の概略を示す図である。
【0034】
図3において,20は,標的ユニットであり,ダーツの先端(ダーツチップ)を保持する表面と,裏面側に的中のダーツを検知するセンサーを有する。
図3(1a),(1b)の例では,標的ユニット20は,本体部1の表面側のほぼ中央部の領域に位置する大きさである。一方,
図3(2a),(2b)の例では,本体部1の表面側のほぼ全面に相当する大きさである。
【0035】
なお,標的ユニット20の表面色は,投影画像に影響を与えないような淡色の単一色である事が望ましい。
【0036】
図4に標的ユニット20の構成例を示す。
図3(1a),(1b)の例で示すが,
図3(2a),(2b)の場合も同様である。
【0037】
標的ユニット20は,
図4(1)に示すように,同一の形状の複数の標的セグメント21で構成される。複数の標的セグメント21のそれぞれは,
図4(2)に示すように,ダーツチップを受容し保持する複数の受容孔22で構成される。標的ユニット20は,標的セグメント21毎に交換可能である。複数回のダーツチップの衝撃により,受容孔22が,変形劣化し易いので,標的セグメント21毎に交換可能である事は,重要である。なお、このように標的ユニット20を同一の形状の複数の標的セグメント21で構成することにより、形状が様々な標的セグメントを有する場合に比較して、標的セグメント21の交換のしやすさが向上し、ダーツゲーム装置の管理者の負担を減らすことができる。
【0038】
図5は,標的セグメント21の一つの受容孔22を説明する図であり,理解容易に,一の受容孔22の断面を示して説明する。
【0039】
図5(1)は,ダーツ100が,標的セグメント21に当たる直前の状態を示し,
図5(2)は,ダーツ100が標的セグメント21に刺さって,その衝撃力で,標的セグメント21が後方に変位した状態を示す。
図5(3)は,更にダーツ100が標的セグメント21に刺さった状態で,標的セグメント21が,
図5(2)の状態から
図5(3)に示す位置に復帰した状態を示している。
【0040】
図5(1)に示すように,ダーツ100が当たっていない状態では,標的セグメント21の背面側の突起21aに取り付けた弾性体21bがセンサーシート21cにほとんど押力を与えない位置にあるので,センサーシート21c内に設けられた図示しないメンブレンスイッチをOFFの状態とする。
【0041】
次に,
図5(2)に示すように,ダーツ100が標的セグメント21に的中すると,ダーツチップが,標的セグメント21の受容孔22に受容されるとともに,衝撃力により標的セグメント21が後方に変位し,弾性体21bがセンサーシート21cを強く押圧するので,メンブレンスイッチの接点をONして,センサーシート21cから的中検出信号が出力される。
【0042】
さらに,メンブレンスイッチがONした後は,弾性体21bの弾性力により,ダーツ100の先端部であるダーツチップを受容孔22に受容した状態で,標的セグメント21は,
図5(3)に示す様に,原点位置に復帰する。
【0043】
ここで,ダーツ100の標的セグメント21に的中した状態を検知する方法として,
図5に示すセンサーシート21cを用いる形態に限られない。例えば,特許文献3に示される様に発光素子と受光素子を用い,ダーツ100のチップが発光素子の発光を遮るか否かで的中を判断するようにしたり、標的セグメント21を撮影するカメラを設け、画像処理を行って的中を判断してもよい。
【0044】
また,他の方法として,米国Microsoft Corporationの端末装置Kinect(登録商標)に類似の技術を備えた距離センサーを利用することも可能である。すなわち,距離センサーは,標的セグメント21を撮影するカメラと,赤外線を標的セグメント21に向けて放射する赤外線放射部と,標的セグメント21及びダーツ100から反射する赤外線を検知する赤外線検知部を有する。
【0045】
撮像カメラからの撮像画像データ,及び赤外線検知部で検知する反射赤外線に基づき,仮想の三次元空間を生成し,一定周期(一フレーム)毎に撮像画角内で仮想三次元空間画像の各ピクセル対応に,距離(深度)情報(Z軸方向の大きさ)を生成する。
【0046】
これにより,標的セグメント21までの距離と比較して,Z軸方向の大きさの小さい座標点を繋ぐとダーツ100のチップを認識することが可能である。したがって,チップのZ軸方向の大きさが標的セグメント21と一致する点が,チップの先端であり,その座標からダーツ100の当たった位置を求めることができる。
【0047】
この様に,的中した状態を検知する方法として,
図5に示すセンサーシート21cを用いる形態によらない場合は,標的セグメント21内の内部スイッチが不要になるため,演出の自由度が増し,又標的セグメント21の大きさも自由な選択が可能になるほか、装置の構造をより単純化することが可能になり,部材コストも下げることが出来る。
【0048】
図6は,上記実施例のダーツゲーム装置を制御する制御回路の一構成例を示す図である。
【0049】
かかる制御回路は,本体部1の背面スペース,あるいは,上部の投影装置2,下部の投影装置3を納める部分のスペースに配置されてもよい。
【0050】
図6において,制御ブロック200は,演出系の制御を行う回路構成であり,制御ブロック300は,センサーの制御を行う回路構成である。
【0051】
図6において,制御ブロック200は,本体部1の上部と下部に有する投影装置(プロジェクタ)2,3を備える構成である。
【0052】
ROM201に格納した制御プログラムをCPU(I)202で実行することにより,制御ブロック200における動作が実現される。
図2で説明した本体部1に投影される画像データが,RAM203に書き込まれる。
【0053】
CPU(I)202により制御プログラムに基づきRAM203から読み出される画像データは,ビデオRAM204に映像データとして変換され描画される。ビデオRAM204に描画された映像データは,順次読み出されて投影装置(プロジェクタ)2,3により投影される。
【0054】
ここで,投影装置(プロジェクタ)2,3により投影される際に,投影面の形状によって,投影像が歪むことは周知である。
【0055】
図7は,かかる投影面の形状による投影像の歪みを説明する図である。
【0056】
例えば,
図7(1)に示す様な画像を球面に投影すると,
図7(2)に示す様に,投影面の映像は歪む。したがって,かかる歪みに対する逆の歪みを先に投影画像に与えておく歪み補正処理を行うと,投影面で映像歪みを小さく抑えることが可能である。すなわち,
図7において,
図7(3)に示す様な
図7(2)の投影面の映像の歪みと反対の歪みを与えた画像データを得るように歪み補正を行ってから投影する。これにより投影面での映像は,歪みの少ない
図7(1)に対応する映像が得られる。
【0057】
実際,プロジェクションマッピングによる投影像を生成する場合は,視点位置とビュースクリーンを想定し,視点位置から見てビュースクリーンで等間隔に並んだ点を視点から見た投影点と定義する。そして,この投影点と視点位置とを結ぶ直線が,スクリーン即ち,本体部1の表面と交わる点を投影装置2,3で投影されるプロジェクタ投影点とする。この様に視点から追跡して投影点を投影装置で投影することにより歪みのない投影画像が得られる。
【0058】
したがって,
図6に戻り,投影装置2,3の入力側に,それぞれ対応する歪補正制御回路205,206を有する。歪補正制御回路205,206において,プロジェクションマッピング技術により,視点位置を追跡して,投影すべき位置決め点に対応する様に,ビデオRAM204の出力画像データを補正して対応する投影装置2,3に入力する。
【0059】
ここで,投影装置2,3による,投影領域は必ずしも固定されない。すなわち,
図3(2a),(2b)に示したように本体部1の全面に標的ユニット20が設けられる場合は,標的の像を本体部1のいずれの領域に投影することも可能である。
【0060】
すなわち,標的の像を本体部1の異なる位置に適時移動して表示することも演出の一つと考えることができる。投影装置2と投影装置3から投影される領域が,標的像位置に対応して変えられる。
【0061】
したがって,投影される標的像位置が,本体部1の上部又は下部に偏った位置である場合もある。かかる場合,先に
図7で説明した原理により,一方の投影装置から投影される標的像の歪みが,他方の投影装置から投影される標的像の歪みよりも大きくなる。
【0062】
かかる不都合を避けるべく,
図6において,画像データに対応して,CPU(I)202により,投影装置2,3に対応する歪補正制御回路205,206における歪み補正量を適応的に制御する。
【0063】
ここで,本実施例のように複数台の投影装置を用いる場合、異なる方向から本体部1の表面に画像を投影するように、それぞれの投影装置を配置することが好ましい。すなわち、1台の投影装置や、複数の投影装置を用いた場合であっても、同一方向から本体部1の表面に画像を投影した場合、ダーツ100が標的セグメント21に的中し、受容孔22によって保持されたときに、ダーツ100の影ができ、一方側に大きく延びてしまう。つまり、投影される標的像が表示されない領域が生じ、ゲームに支障が生じ得ると共に、競技者の集中力を欠くことにつながってしまう。したがって、上記のような配置にするのが好ましい。
【0064】
さらに、より影ができにくくするため、複数台の投影装置からの投影光の強さが,投影される標的像の位置において,それぞれ対向する方向においてほぼ等しいことが好ましい。
【0065】
したがって,投影される的の画像位置に対応し,歪み補正量が制御されるとともに,投影装置2と投影装置3から投射される投影光の強さも的の画像位置において同程度になるようにCPU(I)202により制御される。
【0066】
次に,
図6において,センサーの制御を行う制御ブロック300について説明する。
各種センサーとして,カードセンサー301,タッチセンサー302,センサーシート303を備える。
【0067】
図2(1)に示される,投影画像6によって示される位置に対応して,本体部1の表面パネルに,磁気センサーあるいは,RFIDセンサー等のカードに対応するカードセンサー301が埋め込まれる。
【0068】
同様に,
図2(2)に示される,投影画像6によって示される選択ボタン位置9に対応して,タッチセンサー302が本体部1の表面パネルに形成される。
【0069】
センサーシート303は,先に
図5で説明したセンサーシート21cに対応する。
【0070】
図6に戻り,上記のカードセンサー301,タッチセンサー302,センサーシート303により得られるセンサー出力は,I/O制御ボード304に入力される。
【0071】
制御ブロック300に有するCPU(II)305は,ROM306に格納された制御プログラムに従い,I/O制御ボード304に入力されたセンサー出力を処理する。
【0072】
すなわち,カードセンサー301で,
図2(1)の投影画像の状態で,遊戯者(競技者)のカードを認識すると,CPU(II)305は,CPU(I)202に対して,ダーツゲームの開始画像(
図2(2)を生成し,投影する様に制御する。
【0073】
タッチセンサー302で,いずれかのタッチセンサーが触れられたことを検知するとCPU(II)305は,CPU(I)202に対して通知して,対応する演出画像を生成して投影させる。
【0074】
さらに,センサーシート303の出力を検知すると,CPU(II)305は,RAM307に記録累積し,その結果をCPU(I)202に対して通知して,対応する演出画像を生成して投影させる。
【0075】
上記説明において,的中したダーツ位置を検知するセンサーが,本体部1にあることを説明したが,本発明は,かかる構成に限定されない。たとえば,投影装置からの投影光を,本体部1の表面を順次走査するように投影し,投影光に対する反射光を検知するセンサーを投影装置側に設けることも可能である。
【0076】
すなわち,投影装置において,投影光に対する反射光の強さで,ダーツの有無を検知することができる。
【0077】
ここで,上記した
図6に示した構成は,ダーツゲーム装置を単独の装置として説明したが,これに限定されない。複数のダーツゲーム遊戯者(競技者)が,技量を競う場合が多くある。
【0078】
図8は,
図6で説明したダーツゲーム装置と同様構成の複数のダーツゲーム端末T1〜Tnをインターネット,LAN等のネットワークNWを通して,サーバSVに接続し,ダーツゲーム装置を構成した概念図である。
【0079】
複数のダーツゲーム端末T1〜Tnのそれぞれの構成は,基本的に
図6に説明したものと同様である。NWポート308を通して,ダーツゲーム端末T1〜Tnのそれぞれが,ネットワークNWに接続される。
【0080】
このような構成の場合、複数のダーツゲーム端末T1〜TnそれぞれのCPUを用いてゲーム進行制御を行わずに、複数のダーツゲーム端末T1〜Tnのゲーム進行制御をサーバSVで一括して行うことができる。
【0081】
さらに,
図9に示す様にサーバSVにより,システム全体の演出表示が制御される。例えば,
図9において,複数台のダーツゲーム端末T1〜Tnの表面全体を一つの画面領域と想定して大きな像500を表示する演出を行おうことができる。かかる場合は,大きな像500の部分を表示するダーツゲーム端末T1〜Tnのそれぞれに,サーバSVから対応する部分画像のデータを送信する。
【0082】
ダーツゲーム端末T1〜Tnのそれぞれは,サーバSVにより制御されるクロックに同期して,サーバSVから送信された画像データを
図6で説明したように,投影装置2,3により投影することにより,
図9に示す様にシステム全体として形成される演出画像を表示することが可能である。
【0083】
上記したように,本発明は,ダーツゲーム装置の本体部(筐体)1の全体を表示部として機能させることにより,ダーツゲーム装置の筐体を大きくすることなく大きな演出表示を行うことができる。
【0084】
すなわち,従来装置では,ダーツゲーム装置の筐体の特定部位(例えば筐体上部)にのみに演出表示が限られていたが,筐体全面を利用することが可能であるので,本発明装置により,演出の自由度をより高めることが可能である。
【0085】
さらに,ダーツゲーム装置の的を特定箇所に限定する必要がなく,標的の形状も従来の円形に限定されない形にすることができる。