特許第6139119号(P6139119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139119
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A61B5/05 311
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-269515(P2012-269515)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2013-163012(P2013-163012A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-5519(P2012-5519)
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 匡朗
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−155309(JP,A)
【文献】 特開2004−236848(JP,A)
【文献】 特開2011−025009(JP,A)
【文献】 特開平06−261877(JP,A)
【文献】 特開2001−161662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速スピンエコー法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に傾斜磁場が印加されず、時定数が短い渦成分による影響を低減する空き時間を有するパルスシーケンスを実行する制御部と、
前記パルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する画像再構成部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記パルスシーケンスは、前記励起用のRFパルスが印加されてから前記最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの時間がエコースペースの半分より長い、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記パルスシーケンスは、複数のリフォーカスパルスそれぞれが印加された後にスポイラー用傾斜磁場を印加するものであって、前記最初のリフォーカスパルスが印加された後に印加される最初のスポイラー用傾斜磁場が、2番目以降に印加されるスポイラー用傾斜磁場より強く、前記最初のリフォーカスパルスが180°パルスである、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
スピンエコー法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加された後に印加される位相エンコード用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に傾斜磁場が印加されず、時定数が短い渦成分による影響を低減する空き時間を有するパルスシーケンスを実行する制御部と、
前記パルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する画像再構成部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記制御部は、操作者からの指示に応じて前記空き時間を変更する、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
スピンエコー系の撮像法による撮像が行われる場合に、ディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に、装置のハードウェアで補償しきれない程度の短い渦磁場の時定数から求められた空き時間を有するパルスシーケンスを実行する制御部と、
前記パルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する画像再構成部と備える、
磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置に関する撮像法として、高速スピンエコー(Fast Spin Echo:FSE)法がある。このFSE法は、被検体に対して励起用のRF(Radio Frequency)パルスを印加した後に複数のリフォーカス用のRFパルスを順次印加することで、エコートレインと呼ばれる複数のエコー信号を収集する撮像法である。かかるFSE法による撮像では、渦磁場によってスピンエコー信号とスティミュレイテッドエコー信号のエコーピーク又は位相がずれることで、画質劣化が生じることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6369568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、渦磁場に含まれる時定数が短い渦成分による画質劣化を抑えることができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、制御部と、画像再構成部とを備える。制御部は、高速スピンエコー法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に傾斜磁場が印加されず、時定数が短い渦成分による影響を低減する空き時間を有するパルスシーケンスを実行する。画像再構成部は、前記パルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。
図2図2は、従来のFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るMRI装置の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの第1の変形例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの第2の変形例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るMRI装置による撮像の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、従来のFSE法により撮像されたファントム画像を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るFSE法により撮像されたファントム画像を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係るSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面に基づいて、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。図1に示すように、このMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10、及び計算機システム20を備える。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0011】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gss、位相エンコード用傾斜磁場Gpe及びリードアウト用傾斜磁場Groにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gssは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Gpeは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Groは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0012】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向及び上下方向へ移動する。
【0013】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から供給される高周波パルス電流によりRF(Radio Frequency)パルス(高周波磁場パルス)を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルス電流を送信RFコイル6に供給する。受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記のRFパルスの影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。この受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0014】
受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。この受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル変換することによってMR信号データを生成する。このMR信号データには、前述したスライス選択用傾斜磁場Gss、位相エンコード用傾斜磁場Gpe及びリードアウト用傾斜磁場Groによって、位相エンコード方向、リードアウト方向、スライスエンコード方向の空間周波数の情報が対応付けられてk空間に配置される。そして、MR信号データを生成すると、受信部9は、そのMR信号データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0015】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pのスキャンを実行する。ここでいうシーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。なお、シーケンス制御部10は、シーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動した後に、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0016】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、MRI装置100が有する各部を駆動することで、被検体Pのスキャンや画像再構成などを行う。この計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0017】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、このインタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。MR信号データを受信すると、インタフェース部21は、各MR信号データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0018】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0019】
記憶部23は、後述する制御部26によって実行される処理に必要な各種データや各種プログラムなどを記憶する。例えば、記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたMR信号データや、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。この記憶部23は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。
【0020】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。この入力部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0021】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。この表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0022】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。この制御部26は、例えば、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することによってスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10からMR信号データが送られた場合に、そのMR信号データに基づいて画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0023】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、MRI装置100では、制御部26が、スピンエコー系の撮像法による撮像が行われる場合に、ディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に、装置のハードウェアで補償しきれない程度の短い渦磁場の時定数から求められた空き時間を有するパルスシーケンスを実行する。例えば、制御部26は、スピンエコー系の撮像法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加されてから最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの時間を所定の延長時間だけ延長したパルスシーケンスを実行する。そして、画像再構成部22が、かかるパルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する。なお、本実施形態では、リードアウト方向にディフェーズ用傾斜磁場が印加される場合について説明するが、スライス選択方向にディフェーズ用傾斜磁場が印加される場合も、当該ディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に空き時間を設けることで、同様に実施が可能である。
【0024】
なお、第1の実施形態では、高速スピンエコー(Fast Spin Echo:FSE)法による撮像が行われる場合の例について説明する。FSE法では、通常、スピンエコー信号とスティミュレイテッドエコー信号のエコーピーク及び位相を揃えるようにして画像化が行われる。そして、これらの信号のエコーピーク又は位相がずれることによって、画質劣化(感度むら、信号低下、ゴーストなど)が発生することが知られている。この画質劣化を防ぐため、従来、プリスキャンを行って、RFパルスや傾斜磁場の調整を行う方法が広く利用されている。
【0025】
一方、近年では、FSE法のパルスシーケンスにおいて、リフォーカス用のRFパルスのフリップ角をエコーごとに変化させるVFA(Variable Flip Angle)法が開発されている。このVFA法では、1ショット(1TR(Repetition Time))で多くのエコー信号が収集されるため、ブラーの少ない画像を得るためには、エコースペース(以下、ETS)を短くすることが望ましい。しかし、ETSを短く(例えば、5ms以下)すると、時定数が非常に短い渦成分(時定数が数100μs程度の渦成分)が生じている場合や、傾斜磁場が理想的に立ち上がらないことで時定数が短い渦のような振る舞いをする場合に、プリスキャンを行う方法でも画質劣化が生じることがある。
【0026】
図2は、従来のFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。ここで、図2に示す例は、VFA法を用いた場合のパルスシーケンスの例であり、さらに、各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を非選択とした場合の例である。また、図2において、横軸は時間を示しており、「RF」は、励起用のRFパルス(以下、励起パルスと呼ぶ)及びリフォーカス用のRFパルス(以下、リフォーカスパルスと呼ぶ)の印加タイミングを示している。また、「Gss」はスライス選択用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を、「Gpe」は位相エンコード用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を、「Gro」はリードアウト用傾斜磁場の印加タイミング及び強度を、それぞれ示している。
【0027】
そして、図2に示すように、FSE法では、励起パルスA0(90°パルス)が印加された後に、複数のリフォーカスパルスA1、A2、A3が順次印加される。ここで、図2に示す例は、VFAのパルスシーケンスであるので、リフォーカスパルスごとにフリップ角が異なっている。また、図2では、簡便化のために3番目のリフォーカスパルスまでを示しているが、実際には、さらに続けて複数のリフォーカスパルスが印加される。
【0028】
また、スライス選択方向には、励起パルスA0が印加される際にスライス選択用傾斜磁場S0が印加される。さらに、各リフォーカスパルスが印加された後に、リフォーカスパルスにより発生するFID信号を無信号化するためのスポイラー用傾斜磁場S1がそれぞれ印加され、各リフォーカスパルスが印加される前に、スライス選択方向の位相ずれをキャンセルするためのリワインド用傾斜磁場S2がそれぞれ印加される。なお、図2に示す例は、各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を非選択とした場合の例であるので、各リフォーカスパルスが印加される際には、スライス選択用傾斜磁場は印加されない。
【0029】
また、リードアウト方向には、励起パルスA0が印加された後に、ディフェーズ用傾斜磁場R0が印加される。さらに、各エコー信号が発生するタイミングで、リードアウト用傾斜磁場R1がそれぞれ印加される。また、位相エンコード方向には、各リフォーカスパルスが印加された後に、位相エンコード用傾斜磁場P1がそれぞれ印加される。ここで、各位相エンコード傾斜磁場は、エコー信号ごとに位相エンコード量が変化するように、それぞれリフォーカスパルスごとに強度が変化する。
【0030】
なお、図2において、Tpdはディフェーズ用傾斜磁場の印加時間を示しており、Ttrは各傾斜磁場の立下り(transient)の時間を示している。また、Tpeは位相エンコード用傾斜磁場の印加時間を示しており、Troはリードアウト用傾斜磁場の印加時間を示している。そして、励起パルスA0から最初のリフォーカスパルスA1までの時間はETSの半分であり、2番目のリフォーカスパルスA2以降は、ETSの間隔でリフォーカスパルスが印加される。この結果、複数のエコー信号Echo1、Echo2、・・・がリフォーカスパルスごとにETSの間隔で収集される。
【0031】
このようなパルスシーケンスを用いてFSE法による撮像が行われる場合には、本スキャンの前にプリスキャンを行うことによって、エコーピークのずれ(画像空間では、リードアウト方向の1次の位相ずれ)が測定される。そして、プリスキャンによって測定されたずれの量に基づいてディフェーズ用傾斜磁場R0の面積を調整することで、渦磁場の影響による画質劣化が抑えられる。
【0032】
しかし、前述したように、VFA法では、ブラーの少ない画像を得るためにはETSを短縮することが望ましく、そのためには、リフォーカスパルスの印可時間やTpd、Ttrなどを全て短縮する必要がある。ところが、ETSを短縮すると、時定数が長い渦成分(数10ms〜数100msの渦成分)に対しては画質劣化が起きにくいが、時定数が非常に短い渦成分(時定数が数100μs程度の渦成分)がある場合や、傾斜磁場が理想的に立ち上がらないことで時定数が短い渦のような振る舞いをする場合には、画質劣化が起きやすくなってしまう。
【0033】
また、時定数が短い渦成分は画像空間上で単純な1次の位相ずれを示さないため、ディフェーズ用傾斜磁場の面積の調整だけでは画質劣化(特にリードアウト方向の面内感度むら)を解決しきれない場合がある。例えば、渦調整によって傾斜磁場波形の劣化を補償することでも画質劣化は解決できるが、傾斜磁場波形を10%以上オーバーシュートさせる必要があるため、MRI装置の持つ最大傾斜磁場を使用できなくなる場合もある。また、時定数が短い渦成分の測定や調整に時間がかかる場合もある。
【0034】
このような課題を解決するため、第1の実施形態に係るMRI装置100では、制御部26が、FSE法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの間に空き時間を有するパルスシーケンスを実行する。例えば、制御部26は、FSE法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加されてから最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より所定の延長時間だけ長い時間となるように延長したパルスシーケンスを実行する。以下では、かかるMRI装置100の機能について詳細に説明する。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係るMRI装置100の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、図3では、図1に示した計算機システム20が有する各部のうち、インタフェース部21、記憶部23、及び制御部26を示している。
【0036】
図3に示すように、記憶部23は、延長時間記憶部23aと、シーケンス実行データ記憶部23bとを有する。
【0037】
延長時間記憶部23aは、FSE法による撮像が行われる場合に、励起用パルスが印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの間に設定される空き時間を延長時間として記憶する。ここで、延長時間記憶部23aに記憶される延長時間は、例えば、MRI装置100が設置される際にシステム管理者などによってあらかじめ登録される。この延長時間には、例えば、数100μs程度から数十ms程度の時間が設定される。より具体的には、延長時間には、例えば1msが設定される。
【0038】
ここで、延長時間記憶部23aには、MRI装置100のハードウェアで補償しきれない程度の短い渦磁場の時定数から求められた空き時間が設定される。例えば、空き時間は、MRI装置100の据付時に計測された渦磁場の時定数や、プリスキャンにより計測された渦磁場の時定数に基づいて設定される。具体的な例として、例えば、計測された渦磁場の時定数が200μsであった場合には、約3倍の600μsが空き時間として設定される。
【0039】
シーケンス実行データ記憶部23bは、後述する生成部26bによって生成されるシーケンス実行データが記憶される。ここでいうシーケンス実行データは、前述したように、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体のスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。
【0040】
また、制御部26は、スピンエコー系の撮像法による撮像が行われる場合に、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を所定の延長時間だけ延長したパルスシーケンスを実行する。第1の実施形態では、制御部26は、FSE法による撮像が行われる場合に、励起用のRFパルスが印加されてから最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より所定の延長時間だけ長い時間となるように延長したパルスシーケンスを実行する。具体的には、制御部26は、変更部26aと、生成部26bと、実行部26cとを有する。
【0041】
変更部26aは、操作者からの指示に基づいて所定の延長時間を変更する。具体的には、変更部26aは、入力部24を介して操作者から延長時間の変更指示を受け付け、受け付けた変更指示に応じて、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間を変更する。このとき、例えば、変更部26aは、表示部25に表示されたテキストボックスやスライドバーなどのGUI(Graphical User Interface)を用いて操作者が指定した延長時間を受け付ける。
【0042】
生成部26bは、FSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスが印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場の立下り後から最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの間に空き時間を有するシーケンス実行データを生成する。例えば、生成部26bは、FSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を所定の延長時間だけ長い時間となるように延長したシーケンス実行データを生成する。具体的には、生成部26bは、FSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を、ETSの半分より延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間だけ延長したシーケンス実行データを生成する。
【0043】
なお、生成部26bは、操作者からの指示に応じて所定の延長時間を変更し、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を変更後の延長時間だけ延長したシーケンス実行データを生成する。具体的には、生成部26bは、変更部26aによって延長時間が変更された場合に、変更後の延長時間を延長時間記憶部23aから読み出す。そして、生成部26bは、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を延長時間記憶部23aから読み出した延長時間だけ延長したシーケンス実行データを生成する。その後、生成部26bは、生成したシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23bに記憶させる。これにより、操作者が任意に延長時間を調整することができるので、感度むらの緩和の調整やJ−Couplingによる脂肪信号の増大の調整を行うこともできるようになる。
【0044】
図4は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。ここで、図4に示す例は、図2と同様にVFA法を用いた場合のパルスシーケンスの例であり、さらに、各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を非選択とした場合の例である。ただし、このパルスシーケンスでは、励起パルスA0から最初のリフォーカスパルスA1までの区間の長さが、図2に示したものより延長されている。
【0045】
図4に示すように、具体的には、生成部26bは、励起パルスA0から最初のリフォーカスパルスA1までの区間をETSの半分よりTplusだけ延長する。ここで、Tplusは、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間である。このとき、例えば、図4に示すように、生成部26bは、励起RFパルスA0が印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間をTplusだけ延長する。なお、2番目のリフォーカスパルスA2以降は、ETSの間隔でリフォーカスパルスが印加される。
【0046】
このように、ディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間を所定の延長時間Tplusだけ延長することによって、延長された時間の間に、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場の時定数が短い渦成分を消滅させることができる。これにより、ディフェーズ用傾斜磁場R0の面積の調整では解決しきれなかった時定数が短い渦成分による影響を緩和することができるので、リードアウト方向の画質劣化を抑えることができる。
【0047】
さらに、生成部26bは、ディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間に加えて、ディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間(Tpd)をさらに延長してもよい。このとき、例えば、生成部26bは、Tplusを2つの時間に分け、一方の時間をディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間の延長に割り当て、もう一方の時間をディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間の延長に割り当てる。このように、ディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間を延長することによって、ディフェーズ用傾斜磁場R0の振幅(強度)を小さくすることができるので、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場を小さくすることができる。これにより、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場に含まれる時定数が短い渦成分による影響をより小さくすることができる。
【0048】
なお、図4に示す例では、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスA1から2番目のリフォーカスパルスA2までの区間についても、Tplusだけ延長している。このとき、例えば、図4に示すように、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスA1が印加されてから最初の位相エンコード用傾斜磁場P1が印加されるまでの時間をTplusだけ延長する。または、生成部26bは、Troの前のTtrの区間を延長してもよいし、Tpeの区間を延長してもよい。
【0049】
また、図4に示す例では、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より所定の延長時間だけ長い時間となるように延長することとしたが、この場合には、エコー信号が静磁場の不均一性の影響を受ける場合もあり得る。そこで、例えば、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスが印加された後に印加される最初のスポイラー用傾斜磁場や、最初のリフォーカスパルスが印加される前に印加される最初のリワインド用傾斜磁場の強さを調整してもよい。
【0050】
図5は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの第1の変形例を示す図である。図5に示すように、例えば、生成部26bは、図4に示したパルスシーケンスと基本的には同じであるが、最初のリフォーカスパルスA1が印加された後に印加される最初のスポイラー用傾斜磁場S1’が、2番目以降に印加されるスポイラー用傾斜磁場より強く、最初のリフォーカスパルスA1が180°パルスであるパルスシーケンスを生成する。また、このとき、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスA0が印加される前に印加される最初のリワインド用傾斜磁場S0’も、スポイラー用傾斜磁場S1’と同じ分だけ強くする。これにより、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より延長した場合でも、エコー信号に対する静磁場の不均一性の影響を抑えることができる。
【0051】
また、図4に示す例では、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より所定の延長時間だけ長い時間となるように延長することとしたが、実施形態はこれに限られない。例えば、生成部26bは、図2に示したパルスシーケンスのように、励起パルスから最初のリフォーカスパルまでの時間をETSの半分としたパルスシーケンスを生成してもよい。
【0052】
図6は、第1の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの第2の変形例を示す図である。ここで、図6に示す例は、図2と同様にVFA法を用いた場合のパルスシーケンスの例であり、さらに、各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を非選択とした場合の例である。図6に示すように、例えば、生成部26bは、図2に示したパルスシーケンスにおいて、励起パルスA0から最初のリフォーカスパルA1までの時間はETSの半分にしたまま、励起パルスA0が印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間Tpdを短縮することで、ディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後からリフォーカスパルスA1が印加されるまでの間に空き時間Tplusを確保する。これにより、空き時間Tplusの間に、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場の時定数が短い渦成分を消滅させることができる。
【0053】
実行部26cは、生成部26bによって生成されたシーケンス実行データに基づいてパルスシーケンスを実行する。具体的には、実行部26cは、生成部26bによってシーケンス実行データが生成された場合に、生成されたシーケンス実行データをシーケンス実行データ記憶部23bから読み出す。そして、実行部26cは、生成したシーケンス実行データをインタフェース部21経由でシーケンス制御部10に送信することで、シーケンス実行データによって定義されたパルスシーケンスを実行する。
【0054】
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100による撮像の流れについて説明する。
【0055】
図7は、第1の実施形態に係るMRI装置100による撮像の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、第1の実施形態に係るMRI装置100では、制御部26が、操作者からFSE法による撮像の開始指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、以下に示す処理手順を実行する。
【0056】
まず、変更部26aが、操作者から延長時間の変更指示を受け付け(ステップS102,Yes)、受け付けた変更指示に応じて、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間を変更する(ステップS103)。なお、変更部26aは、操作者から延長時間の変更指示を受け付けなかった場合には(ステップS102,No)、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間を変更せずに処理を進める。
【0057】
続いて、生成部26aが、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間を延長したシーケンス実行データを生成する(ステップS104)。このとき、生成部26bは、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカス用のRFパルスが印加されるまでの時間を、ETSの半分より延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間だけ延長したパルスシーケンスを実行する。
【0058】
続いて、実行部26cが、生成部26bによって生成されたシーケンス実行データに基づいてパルスシーケンスを実行する(ステップS105)。そして、画像再構成部22が、実行部26cがパルスシーケンスを実行することにより収集された磁気共鳴データから画像を再構成する(ステップS106)。
【0059】
上述したように、第1の実施形態によれば、FSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスが印加されてから最初のリフォーカスパルスが印加されるまでの時間をETSの半分より長い時間となるように延長することで、延長された時間の間に時定数が短い渦成分を消滅させることができる。したがって、第1の実施形態によれば、FSE法による撮像において、ETSを短くした場合でも、時定数が短い渦成分による感度むら、リンギング、信号低下などの画質劣化がない画像を得ることができる。
【0060】
図8は、従来のFSE法により撮像されたファントム画像を示す図である。また、図9は、第1の実施形態に係るFSE法により撮像されたファントム画像を示す図である。図8及び9において、上下方向がリードアウト方向を示している。図8に示すように、従来のFSE法によって撮像されたファントム画像では、リードアウト方向の端部で信号低下が発生している。これに対し、図9に示すように、第1の実施形態に係るFSE法によって撮像されたファントム画像では、リードアウト方向の端部での信号低下が抑えられる。
【0061】
(第2の実施形態)
なお、上記実施形態では、FSE法のパルスシーケンスにおいて各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を非選択とした場合の例について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上記実施形態で説明した技術は、FSE法のパルスシーケンスにおいて各リフォーカスパルスにおけるスライス選択を行う場合でも同様に実施が可能である。以下では、この場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態に係るMRI装置は、基本的には、図1及び3に示したものと同様であるが、生成部26bによって生成されるパルスシーケンスが異なる。
【0062】
図10は、第2の実施形態に係るFSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。ここで、図10に示す例は、図2と同様にVFA法を用いた場合のパルスシーケンスであるが、各リフォーカスパルスにおいてスライス選択が行われる点で、図2のパルスシーケンスとは異なる。具体的には、図10に示す例では、各リフォーカスパルスが印加される際に、スライス選択用傾斜磁場S3を印加することでスライス選択が行われる。
【0063】
そして、第2の実施形態では、生成部26bは、このようなパルスシーケンスを用いてFSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスA0から最初のリフォーカスパルスA1までの区間をETSの半分よりTplusだけ延長する。ここで、Tplusは、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間である。このとき、例えば、図10に示すように、生成部26bは、励起RFパルスA0が印加された後にリードアウト方向に印加されるディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間をTplusだけ延長する。なお、図10に示す例の場合も、2番目のリフォーカスパルスA2以降は、ETSの間隔でリフォーカスパルスが印加される。
【0064】
このように、第2の実施形態でも、ディフェーズ用傾斜磁場R0の立下り後の時間を所定の延長時間Tplusだけ延長することによって、延長された時間の間に短い渦磁場の成分を消滅させることができる。これにより、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場に含まれる時定数が短い渦成分による影響を緩和することができるので、リードアウト方向の画質劣化を抑えることができる。
【0065】
なお、図10に示すように、各リフォーカスパルスにおいてスライス選択を行う場合には、生成部26bは、例えば、最初のリフォーカスパルスA1の際に印加されるスライス選択用傾斜磁場については、磁場を立上げるタイミングを早めて、励起パルスA0の際に印加されるスライス選択用傾斜磁場の直後から印加を始めてもよいし、リフォーカスパルスA1の直前に印加をしてもよい。
【0066】
また、第2の実施形態でも、生成部26bは、励起パルスA0が印加されてから最初のリフォーカスパルスA1が印加されるまでの時間に加えて、ディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間をさらに延長してもよい。このとき、例えば、生成部26bは、Tplusの一部の時間をディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間の延長に割り当て、残りの時間を最初のリフォーカスパルスA1から2番目のリフォーカスパルスA2までの区間の延長に割り当てる。このように、ディフェーズ用傾斜磁場R0の印加時間を延長することによって、ディフェーズ用傾斜磁場R0の振幅(強度)を小さくすることができるので、第1の実施形態と同様に、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場を小さくすることができる。これにより、第2の実施形態でも、ディフェーズ用傾斜磁場R0によって生じる渦磁場に含まれる時定数が短い渦成分による影響をより小さくすることができる。
【0067】
また、図10に示す例では、第1の実施形態と同様に、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスA1から2番目のリフォーカスパルスA2までの区間についても、Tplusだけ延長している。このとき、例えば、図10に示すように、生成部26bは、最初のリフォーカスパルスA1が印加されてから位相エンコード用傾斜磁場が印加されるまでの時間をTplusだけ延長する。または、生成部26bは、Troの前のTtrの区間を延長してもよいし、Tpeの区間を延長してもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、VFA法を用いた場合の例について説明したが、実施形態はこれに限られない。上記実施形態で説明した技術は、例えば、FSE法のパルスシーケンスにおいて、リフォーカスパルスのフリップ角を一定にして複数のエコー信号を収集するCFA(Constant Flip Angle)法でも同様に実施が可能である。
【0069】
(第3の実施形態)
また、上記実施形態では、FSE法による撮像が行われる場合の例について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上記実施形態で説明した技術は、スピンエコー(Spin Echo:SE)法による撮像が行われる場合でも同様に実施が可能である。以下では、この場合の例を第3の実施形態として説明する。なお、第3の実施形態に係るMRI装置は、基本的には、図1及び3に示したものと同様であるが、生成部26bによって生成されるパルスシーケンスが異なる。
【0070】
図11は、第3の実施形態に係るSE法のパルスシーケンスの一例を示す図である。図11に示すように、SE法では、励起パルスA0(90°パルス)が印加されてからTE(Echo Time)/2が経過した後に、リフォーカスパルスA1が印加される。これにより、励起パルスA0が印加されてからTEが経過した後に、被検体からエコー信号Echo1が発生する。
【0071】
また、スライス選択方向には、例えば、励起パルスA0が印加される際にスライス選択用傾斜磁場S0が印加され、リフォーカスパルスA1が印加される際にもスライス選択用傾斜磁場S3が印加される。また、リードアウト方向には、例えば、励起パルスA0におけるスライス選択用傾斜磁場S0が印加された後にディフェーズ用傾斜磁場R0が印加され、その後、エコー信号Echo1が発生するタイミングに合わせてリードアウト用傾斜磁場R1が印加される。また、位相エンコード方向には、例えば、励起パルスA0におけるスライス選択用傾斜磁場S0が印加された後に、位相エンコード用傾斜磁場P1が印加される。
【0072】
SE法では、上述した励起パルスA0の印加からリードアウト用傾斜磁場R1の印加までのシーケンスを実行することによって、1つのエコー信号Echo01が収集される。さらに、SE法では、このようなエコー信号の収集を位相エンコード傾斜磁場の強度を変えながらTR間隔で繰り返し行うことで、位相エンコード量を変えた複数のエコー信号が収集される。
【0073】
そして、第3の実施形態では、生成部26bは、SE法による撮像が行われる場合に、励起パルスA0が印加された後に印加される位相エンコード用傾斜磁場P1の立下り後から最初のリフォーカスパルスA1が印加されるまでの間に空き時間を有するパルスシーケンスを生成する。例えば、生成部26bは、このようなパルスシーケンスを用いてSE法による撮像が行われる場合に、励起パルスA0が印加された後に印加される位相エンコード用傾斜磁場P1の立下り後の時間をTplusだけ延長する。ここで、Tplusは、延長時間記憶部23aに記憶されている延長時間である。なお、生成部26bは、2回目以降のデータ収集についても、同様に、励起パルスA0が印加された後に印加される位相エンコード用傾斜磁場P1の立下り後の時間を所定の延長時間Tplusだけ延長したシーケンスを実行する。
【0074】
このように、第3の実施形態では、位相エンコード用傾斜磁場P1の立下り後の時間を所定の延長時間Tplusだけ延長することによって、延長された時間の間に、位相エンコード用傾斜磁場P1によって生じる渦磁場の時定数が短い成分を消滅させることができる。これにより、位相エンコード方向に生じる時定数が短い渦成分による影響を緩和することができるので、位相エンコード方向の画質劣化を抑えることができる。
【0075】
以上で説明した実施形態によれば、渦磁場に含まれる時定数が短い渦成分による画質劣化を抑えることができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0077】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
20 計算機システム
22 画像再構成部
26 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11