【0015】
以下、
図1の編地1の画像および
図2の編成図を用いて本発明の一実施例としての編地の編成方法を説明する。本実施例で編成に使用する横編機は、前後一対の針床を備えた二枚ベッド横編機であり、各針床間で目移しが可能である。編成に使用する横編機は四枚ベッドでもよく、横編機に備える編針は、べら針または複合針のいずれであってもよい。また説明の便宜のため、
図2の編成図における編針の本数は、
図1の編地1よりもよりも少なくしている。
図2の編成図にて、図中左側の数字は編成ステップ(S)を、図中の左右方向の矢印は編成方向を、図中の上下方向の矢印は目移し方向を示す。FBは前針床を、BBは後針床を示す。大文字のA〜QはFBの編針を、小文字のa〜qはBBの編針を示す。また、太線の丸印はその編成ステップで形成される編目を、細線の丸印はその編成ステップの編成に関係せず編針に係止されたままの編目を示す。
また、実施例での表面とは前針床FB側から見た編地または編目を、裏面とは後針床BB側から見た編地または編目を指す。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例である編地1を示す画像である。編地1は、天竺組織のベース編地2の表面であり、各編目は表目である。ベース編地2の表面には紐状編地3が現れているが、紐状編地3はベース編地2の表裏に渡って挿入されている。尚、ベース編地2と紐状編地3とは異なる編糸で編成され、ベース編地2と紐状編地3は固定されていない。
【0017】
図2は、本発明の実施例である編地1の編成図である。但し、ベース編地2の表裏に紐状編地3を渡らせた一ヶ所についての編成図である。ベース編地2は公知の針抜き編成によって編成される。
【0018】
S1は、ベース編地2の編目を形成するための編成コースであり、S3以降で説明する紐状編地3の編成を開始する直前の編成コースである。S1では、ベース編地2を編成するための編糸(第一の編糸)は給糸口Xから給糸して、FBにおける編針A〜Qの区間で1本置きの編針でベース編地2を構成する編目(表目)を形成する。
【0019】
S2は、ベース編地2の表裏に紐状編地3を渡らせるための準備として、編針G,I,Kで係止するベース編地の編目を、対向する針床であるBBの編針g,i,kへ目移しする。このようにベース編地2を構成する一部の編目を対向するBBへ移動させた区間は、S3以降で説明する紐状編地3が通過し、最終的にはベース編地の表面に紐状編地3が現れる区間となる。
【0020】
S3は、紐状編地3の編成である。紐状編地3を編成するための編糸(第二の編糸)は給糸口Yから給糸して、ベース編地2を構成する編目を係止していないFBの編針B,Dで編目(表目)を形成する。編針B,Dでの編目の形成は、右行きと左行きの編成によって2コース分の編目が形成される。
【0021】
S4は、S3で形成されて編針B,Dで係止する編目を目移しにより移動させる。矢印で示すように、編針B,Dで係止する編目を対向するBBの編針b,dへ一旦目移しした後、BBをラッキングして、FBの編針F,Hへ目移しする。続いて編針F,Hにおいて、S3と同様に右行きと左行きの編成によって2コース分の編目を形成する。
【0022】
S5は、S4で形成されて編針F,Hで係止する編目を目移しにより移動させる。矢印で示すように、編針F,Hで係止する編目を対向するBBの編針f,hへ一旦目移しした後、BBをラッキングして、FBの編針J,Lへ目移しする。続いて編針J,Lにおいて、S3やS4と同様に右行きと左行きの編成によって2コース分の編目を形成する。
【0023】
S6でもS4やS5と同様の編成によって、編針J,Lで係止する編目を目移しによって編針N,Pへ移動させ、編針N,Pにおいて2コース分の編目を形成する。編針N,Pまでの編目の移動によって、紐状編地3はベース編地2の編幅方向の一方側(編針A側)から他方側(編針Q側)に向けて移動し、且つS2で対向するBBへ目移しされた編目を針床上で越えた状態になる。また紐状編地3は、編針E−g間と編糸k−Mにそれぞれ渡る第一の編糸上を交差するように通過する。
【0024】
S3〜S6にて、紐状編地3を構成する二つの編目を編幅方向の一方側から他方側に向けて移動しており、既に編成を終えて編針に係止されていない部分の紐状編地3も引き連れて同様に移動させている。
【0025】
またS3〜S6にて紐状編地3は、紐状編地3を構成する編目の形成と目移しによる移動とを交互に繰り返している。従って目移しされる編目は、毎回新たに形成された編目であり、同じ編目が繰り返して目移しされていないため、編糸の損傷を防ぐことができる。編糸が損傷する虞れが無ければ、S3で紐状編地3を構成する編目を例えばまとめて6コース分形成しておき、目移しのみを繰り返して編針N,Pまで移動させてもよい。
【0026】
またS3〜S6にて、紐状編地3を構成する連続した編目を2目として2コース分形成している。ここで、2目は紐状編地3の幅(編幅方向に直交する方向)に相当し、2コースの編成は紐状編地3の長さ(編幅方向)となる。つまり、連続する目数が増すほど、紐状編地3の幅も増す。また、その編成コース数が増すほど、紐状編地3も長くなる。このため、紐状編地3を構成する連続した編目数とその編成コース数は上述の実施例に限定されず、それらの数の選択によって、紐状編地3を変化させることができる。
【0027】
S7は、S2での目移しによってBBの編針g,i,kで係止状態を保っていた編目を、FBの編針G,I,Kへ目移しして元に戻す。これにより紐状編地3は、前述の編針E−g間と編糸k−Mにそれぞれ渡る第一の編糸によってFB側(編地の表面側)へ押し出された状態となる。その後、S1と同様にベース編地2の編目を形成するための編成コースを所望の回数繰り返して編成を終えると、横編機上でベース編地2の表裏に紐状編地3が渡った編地を得ることができる。紐状編地3は編針Eと編針Gで形成されたベース編地2の編目間で裏面から表面に出て、編針Kと編針Mで形成されたベース編地2の編目間で表面から裏面に出ていくようになる。なお、S1〜S7と同様の編成を四ヶ所で繰り返して行えば、
図1で示す編地1を得ることができる。また、S4,S5では紐状編地の編目をそれぞれ2コース分形成したが、それらのコース数を多くするほどベース編地の表面に現れる紐状編地の張りを緩ませることができる。ベース編地2の表裏に紐状編地3を渡らせる区間は、S2の目移しで決定されるため、目移しする編目数や位置などを組み合せることに種々の編地を得ることができ、編地のデザインの自由度も高い。
【0028】
本実施例では、紐状編地を構成する編目は、すべて同一の針床FB上で2目ずつ形成して、ベース編地の表面に対して紐状編地を表目したため見栄えがよい。なお、紐状編地を構成する編目を針床BB上で形成して裏目とすることも可能である。
【0029】
また変形例として、紐状編地を構成する編目をFBとBBにおける空針を利用して周回状に編目を形成して筒状編地にしてもよい。紐状編地を筒状編地にすれば、太くて丈夫なものにすることができる。この場合、これら編目の目移しを可能にするために、針抜きのピッチを広げて編針を確保する、または四枚ベッド横編機を用いる、または公知のトランスファージャックやホールディングなどの編目の預け置き手段を利用するなどすればよい。
【0030】
本願発明の編成方法を利用すれば、例えば編地表面に紐状編地が発現したデザインのニットウエアを編成することができる。また、ニットウエアのベース編地と紐状編地とで異なる素材の編糸や異なる色糸を使用してもよい。また、筒状編地にて紐状編地の始端となる編目を編針で係止しておき、複数個所で編地の表裏に紐状編地を挿入し、紐状編地の始端の編目と終端の編目とを接合することもできる。また、紐状編地をベース編地から分岐するように編み始めて、紐状編地の始端をベース編地に固定することや、紐状編地の終端をベース編地へ接合して固定させることもできる。また、
図1の編地1では、左下の紐状編地3と右下の紐状編地3、左上の紐状編地3と右上の紐状編地3はそれぞれベース編地2の同一の編目コース上で表面に現れているが、例えば左下の紐状編地3を形成後に一旦その編成を休止し、右上の紐状編地3から再度その編成を行なうことも可能である。