(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
本実施形態では、核医学診断装置のひとつであり、3つの検出器を有する3検出器タイプのSPECT装置を例として説明する。
【0010】
一般的に、SPECT装置とは、放射線同位元素で標識した化合物や放射性医薬品(トレーサ)を患者に投与し、トレーサから放出されたガンマ線(フォトン)を検出して画像化する装置である。
【0011】
図1は、本実施形態におけるSPECT装置の斜視図である。本実施形態におけるSPECT装置は、撮影部として検出器1a、検出器1b、検出器1c、ガントリ2、を備え、ガントリ2は、操作パネル5、開口部入口6を備える。また、本実施形態におけるSPECT装置は、当該撮影部とは別に、寝台3、天板4、図示しないコンソールを備え、天板4は取手7を備える。当該コンソールは、図示しないデータ処理部、図示しないデータ保管部、図示しない操作部、図示しない表示部を有する。
図1において、天板4の長手方向に対して垂直で紙面右側に向かう方向がx方向、天板4の長手方向に対して垂直で紙面上側に向かう方向がy方向、x方向及びy方向と垂直でガントリ2の位置に対して寝台3側に向かう方向がz方向である。なお、
図1のx方向、y方向、z方向を用いた座標系は、
図2以降についても同様に適用される。
【0012】
図2は、本実施形態における検出器1aの構成図である。検出器1aは、コリメータ11、シンチレータ12、ライトガイド13、PMT14、カバー15、を有する。PMTとは、「Photomultiplier tube」の略称である。検出器1aの全体は遮光されており、側面はガンマ線が入射しないように図示しない鉛シールドが施されている。なお、検出器1b及び検出器1cも同様の構成である。
【0013】
図3は、本実施形態におけるコリメータ11とカバー15の斜視図である。コリメータ11は、
図3に示すように格子状に分割された構造をしており、カバー15を透過し格子面に対して略垂直に入射するガンマ線のみを通過させる。なお、カバー15は、ガンマ線を十分に透過させることができる部材から成る。コリメータ11を通過したガンマ線は、
図2に示すようなシンチレータ12によって光に変換される。シンチレータ12で発生した光は、ライトガイド13を経由してPMT14に入射され、PMT14によって電気信号に変換される。この電気信号はデータ処理部に送られる。データ処理部は、PMTから受け取った電気信号に基づいて画像を生成する。この画像は、コンソール内のハードディスクなどのデータ保管部に保管され、コンソールに設けられたキーボードやマウスなどの操作部を介したオペレータの操作によって表示部に表示される。
【0014】
図4及び
図5は、
図1におけるガントリ2の斜視図及び正面図である。本実施形態におけるSPECT装置は、
図4及び
図5に示すように検出器1a、検出器1b、検出器1cの3つの検出器を備えている。
図5に示す通り、検出器1a、検出器1bは、検出器1cは、矢印P、矢印Q、矢印Rの方向に移動可能に指示されており、尚且つ、点Oを中心として回動可能に支持されている。これらの移動および回動は、ガントリ2の内部に設けられたモータなどの図示しない検出器動作機構によって行われる。なお、検出器1a、検出器1b、検出器1cの矢印P、矢印Q、矢印R方向への移動は、例えば、後述するように患者の診断部位に応じて検出器を配置するために行われ、検出器1a、検出器1b、検出器1cの点Oを中心とした回動は、全ての回動角度からガンマ線を検出し画像を生成するために行われる。
【0015】
検出器1a、検出器1b、検出器1cは、患者内のトレーサから放出されるガンマ線を可能な限り多く検出するために、患者に接触しない程度に接近させる必要がある。
図6(a)と
図6(b)は、患者の頭部が検出器1a、検出器1b、検出器1cに囲まれた空間に位置するときと、患者の胸部が検出器1a、検出器1b、検出器1cに囲まれた空間に位置するときの検出器1a、検出器1b、検出器1cの正面図である。例えば、患者の頭部を撮影するときは、
図6(a)に示す通り、検出器1aと検出器1bとが互いに近づくように配置させる。一方で、患者の胸部を撮影するときは、
図6(b)に示す通り、検出器1a、検出器1b、検出器1cがそれぞれ遠ざかるように配置させる。
【0016】
寝台3は自身の上部に天板4を支持する。天板4は寝台3が有するモータなどの図示しない天板移動機構によって、
図1におけるx方向、x方向の逆の方向、y方向、y方向の逆の方向、z方向、z方向の逆の方向に移動可能である。
【0017】
上述した検出器動作機構による検出器1a、検出器1b、検出器1cの移動および回動と、天板移動機構による天板4の移動は、例えば、操作パネル5に備えられている図示しない操作ボタンをオペレータが押下することで行われる。また、天板4のz方向及びz方向の逆の方向の移動については、オペレータが取手7を掴んでz方向に引っ張ったり、z方向の逆の方向に押したりすることで、手動での操作が可能である。
【0018】
以上、SPECT装置の構成と機能について簡単に説明したが、これらの詳細は本実施形態と深く関係しないため割愛する。
【0019】
本実施形態では、SPECT装置の所定の部位に蓄光塗料を塗布する。
【0020】
図7は、本実施形態における寝台3及び天板4の斜視図である。
図7に示すように、寝台3は、天板支持部21、中間部22、基台部23を有する。本実施形態では、天板支持部21においてx方向及びx方向の逆の方向を向いた面を面A、天板支持部21においてy方向を向いた面を面B、天板支持部21においてz方向を向いた面をC、基台部23においてy方向を向いた面を面D、基台部23においてx方向及びx方向の逆の方向を向いた面を面E、基台部23においてz方向を向いた面を面F、取手7においてz方向を向いた面を面G、天板4においてy方向を向いた面を面Hとする。
【0021】
例えば、面A、面B、面Cに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において天板支持部21の表面が光ることになるため、患者とオペレータは天板支持部21の輪郭を視覚的に把握することができる。これによって、オペレータが寝台3から患者を退避させる際に、誤って患者が寝台3から転落してしまうことを防ぐことが可能になる。
【0022】
面D、面E、面Fに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において基台部23の表面が光ることになるため、患者は基台部23の位置を視覚的に把握することができ、間接的に床の位置を把握することができる。これによって、例えばオペレータの誘導に従って患者が寝台3から降りる際に、患者は足を挫いたりすることなく着地することができる。
【0023】
面Gに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において取手7の表面が光ることになるため、オペレータは取手7の位置を視覚的に把握することができる。これによって、オペレータは確実に取手7を掴むことができるため、検出器1a、検出器1b、検出器1cの間の空間に位置する天板4を手動で引き出す際に、オペレータが天板支持部21と天板4の間に指を挟んでしまうといった事故を防ぐことができる。
【0024】
面Hに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において天板4の患者が位置していない部分は光ることになり、天板4の患者が位置している部分は患者の影になる。これによって、オペレータは、天板4上の患者の位置を視覚的に把握することができる。
【0025】
図8は、ガントリ2の正面図である。
図8に示すように、検出器1a、検出器1b、検出器1cの開口部入口6側の側面で、尚且つ、カバー15側の縁部分をそれぞれ縁I、縁J、縁Kとする。
【0026】
また、
図9は、カバー15の方向から見た検出器1aの平面図であり、この平面での検出器1aの縁部分を縁Lとする。なお、検出器1bと検出器1cについても同様に縁部分を縁Lとする。
【0027】
通常、SPECT装置の検出器1a、検出器1b、検出器1cは、
図5あるいは
図8に示すように、矢印P、矢印Q、矢印Rの方向に移動し、点Oを中心として回動するため、これらの移動および回動中に停電になってしまった場合、検出器1a、検出器1b、検出器1cの正確な位置をオペレータあるいは患者が把握できない可能性がある。
【0028】
縁I、縁J、縁Kに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において検出器1a、検出器1b、検出器1cの開口部入口6側の側面で、尚且つ、カバー15側の縁部分が光ることになるため、オペレータは、検出器1a、検出器1b、検出器1cの正確な位置関係を視覚的に把握することができる。これによって、検出器1a、検出器1b、検出器1cの間の空間から天板4及び患者を出す際に、患者を検出器1a、検出器1b、検出器1cにぶつけることなく安全に退避させることができる。
【0029】
また、縁Lに蓄光塗料が塗布されている場合、停電時において検出器1a、検出器1b、検出器1cの患者側の面の縁部分が光ることになり、検出器1a、検出器1b、検出器1cの間の空間内にいる患者が、検出器1a、検出器1b、検出器1cの輪郭を視覚的に把握することができる。これによって、検出器1a、検出器1b、検出器1cにぶつからないように患者自身が気をつけることができる。また、オペレータも検出器1a、検出器1b、検出器1cの輪郭を把握することができるため、検出器1a、検出器1b、検出器1cの間の空間から天板4及び患者を出す際に、患者を検出器1a、検出器1b、検出器1cにぶつけることなく安全に退避させることができる。
【0030】
図10(a)と
図10(b)は、SPECT装置が設置されている検査室内の照明が通常通り点灯している時における本実施形態のSPECT装置の斜視図と、停電時における本実施形態のSPECT装置の斜視図である。なお、
図10(a)及び
図10(b)のSPECT装置の面A、面B、面C、面D、面E、面F、面G、面H、縁I、縁J、縁K、縁Lに相当する部位には、全て蓄光塗料を塗布しているものとする。
図10(b)からわかるように、蓄光塗料を寝台3、天板4、検出器1a、検出器1b、検出器1cに塗布することで、患者及びオペレータが、停電時においても寝台3、天板4、検出器1a、検出器1b、検出器1c、の位置関係を視覚的に把握することができる。これによって、停電時における患者の不安を低減することができ、患者は安全に装置から退避することができる。また、停電時におけるオペレータの不安も低減することができ、オペレータはより安全性の高い退避誘導を行うことができる。なお、本実施形態は、検出器が一つあるいは複数備わっているSPECT装置であれば適用できる。
【0031】
上述した部分以外にも蓄光塗料を塗布することで、効果的な作用が期待できる。例えば、1検出器タイプや2検出器タイプのSPECT装置の場合、3検出器タイプのSPECT装置に比べて検出器が非常に大きい。そのため、頭部撮影を行う目的で患者の頭部を検出器の中心に位置するように固定させると、患者の視線の移動だけでは
図9に示すような縁Lに塗布された蓄光塗料の光などを確認できなくなる可能性がある。その場合、カバー15全体に蓄光塗料を塗布したり、カバー15の中心に蓄光塗料で印をつけたりする。これによって、患者の頭部撮影を行っているときに停電が起こった場合おいても、患者は容易に検出器の位置を把握することができる。
【0032】
検出器1a、検出器1b、検出器1cの開口部入口6側の側面に塗布する位置は、カバー15側の縁部分の縁I、縁J、縁Kではなく、開口部入口6側の側面全体であっても良い。更に、寝台3における蓄光塗料の塗装位置が、例えば面Aと面Bの間の辺といった縁部分でも良い。このように、蓄光塗料の塗布範囲を変えることによって、停電時の明るさを調整することができる。
【0033】
また、本実施形態では、寝台3、天板4、検出器1a、検出器1b、検出器1cに蓄光塗料を塗布する場合を説明したが、別の部位に蓄光塗料を塗布しても良い。例えば、停電時においてガントリ2の輪郭を視覚的に把握できるように、ガントリ2の表面や縁部分に蓄光塗料を塗布した場合、停電時においてガントリ2の表面や縁が光ることになる。これによって、停電時において患者及びオペレータがガントリ2と接触することを防止できる。
【0034】
更に、本実施形態はSPECT装置以外の医用診断装置にも適用できる。
【0035】
図11は一般的なCT装置のガントリの斜視図である。通常、CT装置のガントリの中央には開口部7が設けられている。
図11のCT装置や図示しないPET装置の場合、検出器はガントリの内部に設置されており、本実施形態のSPECT装置のようにガントリの外側に検出器が突出するようなことはない。また、図示しないMR装置についても、コイルはガントリ内部に設置されているため、ガントリの外側に突出するような構造物は無い。このような医用診断装置の場合、
図11に示すような、開口部7の壁面Nや開口部入口6の周辺Mに蓄光塗料を塗布する。これによって、本実施形態のSPECT装置の例と同様の効果が期待できる。
【0036】
また、本実施形態をSPECT装置に適用させる場合においても、例えば、検出器と患者の間にカバーを設け、患者から直接検出器が見えないようにすることもある。この場合、前述した開口部入口6や開口部7のように、カバーの縁や内壁に蓄光塗料を塗布することで、停電時においてオペレータや患者がカバーの正確な位置を把握することができる。
【0037】
なお、本実施形態では蓄光塗料を用いた場合を述べたが、面A、面B、面C、面D、面E、面F、面G、面H、縁I、縁J、縁K、縁Lなどの部位が蓄光機能を有する蓄光材料から成っていても良い。この場合、塗装部分の磨耗によって塗装が剥げてしまうといった心配がなくなる。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。