(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板のパターンの細線化と実装面積の縮小化が進んでおり、さらにプリント配線板を備える機器の小型化・高機能化に対応すべく、プリント配線板のさらなる軽薄短小化が望まれている。そのため、プリント配線板は、コア基板の上下に樹脂絶縁層を形成し、必要な導体回路を形成してからさらに樹脂絶縁層、導体回路を順次形成し、ビアホールなどで層間接続されて多層化されたビルドアップ配線板などの多層基板が用いられている。また、実装部品はBGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)等のエリアアレイ型実装が行われている。このような状況下において、スルーホールやバイアホール等の穴部に充填するための充填性、研磨性、硬化物特性等に優れた永久穴埋め用組成物の開発が望まれている。
【0003】
このようなプリント配線板において、例えば
図1に示されるように、基板1の表面の導体回路間の凹部や、内壁面に導電層3が形成されたスルーホール2、ビアホールなどの穴部には、印刷法などにより熱硬化性樹脂充填材4が充填される。このとき、熱硬化性樹脂充填材は、穴部から若干はみ出すように充填されるため、はみ出した部分は、硬化後、研磨などにより除去・平坦化される(例えば特許文献1など参照)。あるいは、充填された組成物を加熱して研磨可能な状態に予備硬化した後、穴部表面からはみ出している部分を研磨・除去し、その後さらに予備硬化物を加熱して本硬化する方法や、穴部に充填した熱硬化性樹脂充填材を硬化する前に、穴部からはみ出した部分を取り除いて平坦化した後、硬化したり、プリプレグや樹脂付き金属箔を積層し、加熱・加圧する方法なども行われている。
【0004】
一般に、プリント配線板の永久穴埋め用充填材としては、その硬化物が機械的、電気的、化学的性質に優れ、接着性も良好であることから、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が広く用いられている。
しかしながら、エポキシ樹脂組成物を用いてプリント配線板の永久穴埋め加工を行った場合、加熱硬化時の収縮が大きく、
図1に示すように、硬化時にクラックYが発生したり、スルーホール壁との間に隙間が生じるという問題があった。また、エポキシ樹脂組成物の場合、一般に吸水率が大きく、基板の穴埋め部とその上に積層される絶縁層5(プリプレグもしくはソルダーレジスト層)又は樹脂付き銅箔の界面にデラミネーションX(はんだレベリング時にスルーホールの周辺部が浮きあがってしまうという現象、以下、「デラミ」と略称する)が発生するという問題もあった。このようにプリント配線板の穴部に充填された樹脂組成物の硬化物にクラック、デラミ等が発生すると、この部分によって吸湿性を呈し、高温高湿下でのPCT耐性(プレッシャー・クッカー耐性)が低下し、また、プリント配線板のヒートサイクル時のクラック発生や絶縁信頼性の悪化を招いてしまう。さらに、穴部に充填された硬化物の上に形成される絶縁樹脂層や蓋メッキの層間剥離の要因ともなる。
【0005】
一方、シアネート樹脂は、一般的に熱硬化性樹脂として最も低い誘電率及び誘電損失の硬化物が得られるため、シアネート樹脂を使用することにより硬化物の電気特性が向上する。そこで、最近では、電気特性を向上させる材料として、シアネート樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物が内層材や絶縁材によく使用されている。例えば、特許文献2には、シアネート樹脂(シアン酸エステル樹脂)と室温で液状のエポキシ樹脂を含有するスルーホール充填用インクが提案されている。シアネート樹脂を用いる場合、得られるエポキシ樹脂組成物の穴部への充填性を確保するために、室温で液状のエポキシ樹脂と組み合わせて用いられる。しかしながら、粘度の低い液状エポキシ樹脂を用いた場合には経時での粘度上昇が大きくなり易く、組成物の保存安定性が悪化し、一方、粘度が高い液状エポキシ樹脂を用いた場合には印刷性(穴部充填性)が劣るため、これらの調整が難しいという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らの研究によると、熱硬化性樹脂充填材の熱硬化性成分として、シアネート化合物又はイソシアネート化合物と共に2種の特定のエポキシ樹脂、即ちフェノール型エポキシ樹脂及びアミン型エポキシ樹脂を組み合わせて用いた場合、プリント配線板の表面の導体回路間の凹部や、バイアホールやスルーホール等の穴部への充填性(印刷作業性)、保存安定性及び耐熱性に優れ、しかも、シアネート化合物又はイソシアネート化合物を含んでいるため、誘電率や誘電正接及び吸水率が低く、はんだリフローやはんだレベリングなどの高温条件下において、穴部絶縁層の周辺部でデラミが発生するという問題がない、ということを見出した。
【0013】
本発明は、このような知見に基づきなされたものである。前記したような本発明の熱硬化性樹脂充填材を用いることにより、プリント配線板の表面の導体回路間の凹部や、内壁面に導電層が形成されたスルーホール、ビアホールなどの穴部に作業性良く充填でき、絶縁信頼性の悪化、穴部に充填された硬化物の上に形成される絶縁樹脂層や蓋メッキの層間剥離等がなく、絶縁信頼性や耐熱性、低吸水性、保存安定性等の特性に優れた信頼性の高いプリント配線板を製造できる。以下、本発明の熱硬化性樹脂充填材の各構成成分について説明する。
【0014】
本発明の熱硬化性樹脂充填材に用いる(A)フェノール型エポキシ樹脂としては、1分子中に1個以上のフェノール構造及び2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば使用でき、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、常温で液状のフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。これらの市販品としては、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂としては三菱化学(株)製jER(登録商標)828、新日鐵化学(株)製YD128、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂としては三菱化学(株)製jER807、新日鐵化学(株)製YDF−170、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ダウ・ケミカル社製DEN431などが挙げられる。
尚、ここでいう「常温」又は「室温」とは、作業環境下での温度範囲と同義であり、例えば一般に約15℃以上、30℃以下の温度範囲に設定される。
【0015】
次に、本発明の熱硬化性樹脂充填材に用いる(B)アミン型エポキシ樹脂としては、1分子中に1個以上のアミノ基及び2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば使用でき、例えば、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン等の4官能エポキシ樹脂、トリグリシジルメタアミノフェノール、トリグリシジルパラアミノフェノール等の3官能エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルトトルイジン等の2官能エポキシ樹などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも常温で液状のアミン型エポキシ樹脂が好ましい。これらの市販品としては、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては新日鐵化学(株)製のエポトート(登録商標)YH434、エポトートYH434L、住友化学(株)製のスミエポキシELM434、スミエポキシELM434HV(以上、商品名)、トリグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては住友化学(株)製のスミエポキシELM-120、スミエポキシELM-100(以上、商品名)、DIC(株)製のエピクロン(登録商標)430−L、エピクロン430、パラアミノフェノール型液状エポキシ樹脂としては三菱化学(株)製jER630、ハンツマン・アドバンテスト・マテリアルズ社製MY0510などが挙げられる。
【0016】
前記したようなアミン型エポキシ樹脂は、硬化物のクラックの発生を抑える作用を有するとともに、その粘度が低い。そのため、得られる熱硬化性樹脂充填材の粘度も低くなり、スルーホール等の穴部に充填する際の作業性が大きく向上する。さらに、粘度が低いため、無機充填材を多量に配合することができ、硬化物のクラック発生をより確実に抑えることが可能になる。尚、アミン型エポキシ樹脂は官能基が少ないほうが粘度は低いが、はんだリフロー工程における硬化物の収縮を抑えるためには、より多官能であるほうが好ましい。しかし、4官能以上では、硬化物が剛性の高いものとなり、この硬化物そのものにクラックが発生することがある。これら粘度と剛性とを併せ考えれば、これらのアミン型エポキシ樹脂のうち、常温において液状であって、粘度が低く、且つ熱硬化性樹脂充填材が硬化して得られる硬化物のガラス転移点の高い3官能のアミン型エポキシ樹脂が好ましい。また、より粘度が低く、熱硬化性樹脂充填材をスルーホールに充填する際の作業性に優れ、充填不良を生ずることがなく、且つ硬化物のクラック発生も十分に抑えられる3官能のトリグリシジルパラアミノフェノールが特に好ましい。
【0017】
本発明の熱硬化性樹脂充填材に使用される(C)シアネート化合物(シアン酸エステル化合物)又はイソシアネート化合物は、得られる熱硬化性樹脂充填材に高耐熱性、低誘電正接、低熱膨張率等を付与させることができる。また、窒素含有化合物であることから、難燃性付与に寄与することもできる。なお、本発明においては、(C)シアネート化合物及びイソシアネート化合物のうちの少なくともいずれか1種が含まれていればよい。
【0018】
シアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、シアネート基(−O−C≡N)を有するシアン酸エステルモノマーや多官能シアン酸エステルモノマーを予備反応させたプレポリマーを用いることができ、例えば、ノボラック型(フェノールノボラック型、アルキルフェノールノボラック型など)シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型など)シアネート樹脂、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。また、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン等の多官能シアン酸エステル類のモノマー又はプレポリマーとビスマレイミド等の多官能マレイミド類のモノマー又はプレポリマ−とを95:5〜5:95の質量比で予備反応あるいは予備混合させたもの(例えば、三菱瓦斯化学(株)製BTレジン)を用いることもできる。これらのシアネート樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
シアネート化合物の具体例としては、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアネートフェニル)エタン等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエン構造含有フェノール樹脂等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。
【0020】
市販されているシアネート化合物としては、フェノールノボラック型多官能シアネート樹脂としてはロンザジャパン(株)製PT30(シアネート当量124)、ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマーとしてはロンザジャパン(株)製BA230(シアネート当量232)、ジシクロペンタジエン構造含有シアネート樹脂としてはロンザジャパン(株)製DT−4000、DT−7000等が挙げられる。
【0021】
イソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物、又は1分子中に2個以上のブロック化イソシアネート基を有するブロックイソシアネートなどが挙げられ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネートが用いられる。芳香族イソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が挙げられる。脂肪族イソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式イソシアネートの具体例としては、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。並びに先に挙げられたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。また、IPDI(イソホロンジイソシアネート)などの公知の脂環式イソシアネート樹脂も好適に用いることができる。
【0023】
ブロックイソシアネートとしては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。ブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、イソシアヌレート型、ビウレット型、アダクト型等が挙げられる。このイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネートが用いられる。芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートの具体例としては、先に例示したような化合物が挙げられる。
【0024】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール、エチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤などが挙げられる。
【0025】
前記(A)フェノール型エポキシ樹脂、(B)アミン型エポキシ樹脂及び(C)シアネート化合物又はイソシアネート化合物の配合割合は、エポキシ樹脂全量を100質量部とした場合に、(A)フェノール型エポキシ樹脂は20〜60質量部、(B)アミン型エポキシ樹脂は40〜80質量部であり、さらに上記エポキシ樹脂全量を100質量部とした場合に、(C)シアネート化合物又はイソシアネート化合物が4〜50質量部であることが好ましい。
【0026】
シアネート化合物又はイソシアネート化合物の配合割合が、エポキシ樹脂の全量を100質量部とした場合に、4質量部よりも低くなると、得られる硬化物の誘電率や誘電正接及び吸水率を低くすることが困難になり、吸湿リフロー耐性が悪くなるので好ましくない。一方、シアネート化合物又はイソシアネート化合物が50質量部を超える場合は、得られる充填材の粘度が上昇し、ペースト化が困難になり、良好な印刷性や穴埋め充填性を得ることが困難となる。
【0027】
低粘度のアミン型エポキシ樹脂の配合割合が、エポキシ樹脂の全量を100質量部とした場合に、80質量部よりも高くなると、経時での粘度上昇が大きくなり易く、良好な保存安定性が得られ難くなり、さらにアミン型エポキシ樹脂は、吸水性が高いことから、プレシャークッカー試験などの高温多湿条件下において、穴部絶縁層の周辺部でデラミが発生しやすくなるため好ましくない。一方、アミン型エポキシ樹脂が40質量部よりも低い場合は、得られる充填材の粘度が十分に低くならず、良好な印刷性や穴埋め充填性を得ることが困難となる。
【0028】
本発明の熱硬化性樹脂充填材は、前記エポキシ樹脂やシアネート化合物又はイソシアネート化合物を効率的に硬化させるために、(D)硬化促進剤を含有する。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂やシアネート化合物又はイソシアネート化合物の硬化反応を促進する効果があれば何れのものも使用でき、例えば、有機金属化合物、イミダゾール類とその誘導体、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、ホスホニウムイリドなどが挙げられ、特定のものには限定されないが、これらの中でも、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤及びイミダゾール系硬化促進剤から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらの硬化促進剤は単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0029】
金属系硬化促進剤としては、特に制限はないが、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、硬化性、溶剤溶解性の観点から、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、鉄(III)アセチルアセトナートが好ましく、コバルト(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛がより好ましい。
【0030】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に制限はないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0031】
アミン系硬化促進剤としては、特に制限はないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(略称:DBU)などのアミン化合物などが挙げられる。また、変性脂肪族ポリアミン系硬化促進剤又は変性脂環式ポリアミン系硬化促進剤を使用すると、ポットライフ(エポキシ樹脂やシアネート化合物又はイソシアネート化合物と硬化促進剤とを混合してから使用することのできるおおよその時間)が長くなり、また、毒性や皮膚刺激性が少なく、作業性が改善されるので好ましい。上記ポリアミン系硬化促進剤は、炭素数2以上6以下のアルキレンジアミン、炭素数2以上6以下のポリアルキレンポリアミン、炭素数8以上15以下である芳香環含有脂肪族ポリアミンなどの脂肪族ポリアミンのアダクト化合物、又はイソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ポリアミンのアダクト化合物、又は上記脂肪族ポリアミンのアダクト化合物と上記脂環式ポリアミンのアダクト化合物との混合物を主成分とするものが挙げられる。特に、キシリレンジアミン又はイソホロンジアミンのアダクト化合物を主成分とする硬化剤が好ましい。
【0032】
また、ジシアンジアミドや、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどのグアナミン及びその誘導体、及びこれらの有機酸塩やエポキシアダクトなどは、銅との密着性や防錆性を有することが知られており、エポキシ樹脂の硬化促進剤として働くとともに、プリント配線板の銅の変色防止に寄与することができることから、好適に用いることができる。
【0033】
前記したような硬化促進剤の配合割合は、通常の割合で充分であり、例えば、エポキシ樹脂(A及びB)100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下、好ましくは1質量部以上、20質量部以下が適当である。硬化促進剤の配合割合が、エポキシ樹脂(A及びB)100質量部に対して0.1質量部未満の場合、一般にエポキシ樹脂組成物の予備硬化速度が遅くなり、硬化物にボイドの残留とクラックの発生を生じ易くなるので好ましくない。他方、配合割合が30質量部を超えて多量に配合すると、室温下での貯蔵安定性が損なわれるので好ましくない。
【0034】
本発明の熱硬化性樹脂充填材において、無機充填材(無機フィラー)は、硬化収縮による応力緩和や線膨張係数の調整のために用いられるものである。このような無機充填材としては、通常の樹脂組成物に用いられる公知の無機充填材を用いることができる。具体的には、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ノイブルク珪土、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、タルク、有機ベントナイトなどの非金属フィラーや、銅、金、銀、パラジウム、シリコーンなどの金属フィラーが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0035】
これらの無機充填材のなかでも、低吸湿性、低体積膨張性に優れるシリカや、炭酸カルシウムが好適に用いられる。シリカとしては、非晶質、結晶のいずれであってもよく、これらの混合物でもよい。特に非晶質(溶融)シリカが好ましい。また、炭酸カルシウムとしては、天然の重質炭酸カルシウム、合成の沈降炭酸カルシウムのいずれであってもよい。
【0036】
このような無機充填材の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、中空状、不定形状、六角状、キュービック状、薄片状などが挙げられるが、無機充填材の高配合の観点から球状が好ましい。
【0037】
また、これら無機充填材の平均粒径は、例えば、0.1μm以上、25μm以下、好ましくは0.1μm以上、15μm以下の範囲が適当である。平均粒径が0.1μm未満では、比表面積が大きくフィラー同士の凝集作用の影響により分散不良が発生し易く、またフィラーの充填量を増やすのが困難になる。一方、25μmを超えると、プリント配線板の穴部への充填性が悪くなるうえ、穴埋めした部分に導体層を形成したときに平滑性が悪くなるという問題がある。より好ましくは、1μm以上、10μm以下である。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製LA−500等を使用することができる。
【0038】
このような無機充填材の配合割合は、例えば、熱硬化性樹脂充填材全体量に対して40質量%以上、90質量%以下、好ましくは40質量%以上、80質量%以下が適当である。40質量%未満の場合、得られる硬化物の熱膨張が大きくなり過ぎ、さらに十分な研磨性や密着性を得ることが困難となる。一方、90質量%を超えると、ペースト化が困難になり、良好な印刷性や穴埋め充填性を得ることが困難となる。より好ましくは、50質量%以上、75質量%以下である。
【0039】
本発明の熱硬化性樹脂充填材には、チキソ性を付与するために脂肪酸で処理したフィラー、又は有機ベントナイト、タルクなどの不定形フィラーを添加することができる。
上記脂肪酸としては、一般式:(R
1COO)n−R
2(置換基R
1は炭素数が5以上の炭化水素、置換基R
2は水素又は金属アルコキシド、金属であり、nが1以上4以下である)で表される化合物を用いることができる。当該脂肪酸は、置換基R
1の炭素数が5以上のとき、チキソ性付与の効果を発現させることができる。より好ましくはnが7以上である。脂肪酸としては、炭素鎖中に二重結合あるいは三重結合を有する不飽和脂肪酸であってもよいし、それらを含まない飽和脂肪酸であってもよい。その他、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸を用いることもできる。その他の金属石鹸の元素としては、Ca、Zn、Li、Mg,Naなどがある。
【0040】
また、本発明の熱硬化性樹脂充填材においては、さらにシラン系カップリング剤を用いることができる。シラン系カップリング剤を配合することにより、無機充填材とエポキシ樹脂やシアネート化合物又はイソシアネート化合物との密着性を向上させ、その硬化物におけるクラックの発生を抑えることが可能となる。
【0041】
シラン系カップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン、メルカプトシラン、メタクリロキシシラン、アミノシラン、スチリルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシランなどが挙げられる。また、シラン系カップリング剤は、予めシラン系カップリング剤で表面処理をした無機充填材を用いることにより配合されてもよい。
【0042】
このようなシラン系カップリング剤の配合割合は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上、2.5質量部以下とすることが好ましい。0.05質量部未満であると、十分な密着性が得られず、クラックの発生を招き易い。一方、2.5質量部を超えると、熱硬化性樹脂充填材をプリント配線板の穴部に充填・硬化した後、穴部内に気泡が残存するなど、消泡性が悪化し、ボイドやクラックを生じ易くなる。
【0043】
本発明の熱硬化性樹脂充填材は、さらにゴム微粒子を含有させることにより、メッキ密着性を向上させることができる。ゴム微粒子としては、特に限定はされないが、当該熱硬化性樹脂充填材のワニスを調製する際に使用する有機溶剤にも溶解せず、必須成分であるシアネート化合物又はイソシアネート化合物やエポキシ樹脂などとも相溶しないものを用いることができる。従って、該ゴム微粒子は、本発明の熱硬化性樹脂充填材のワニス中では分散状態で存在する。ゴム微粒子としては、コアシェル型ゴム微粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム微粒子、架橋スチレンブタジエンゴム微粒子、アクリルゴム微粒子などが好ましく、その平均粒径は、0.005μm以上、1μm以下が好ましく、0.2μm以上、0.6μm以下がより好ましい。ゴム微粒子の含有量は、熱硬化性樹脂充填材中の不揮発分100質量%に対し、1質量%以上、10質量%以下が好ましく、2質量%以上、5質量%以下がより好ましい。
【0044】
本発明の熱硬化性樹脂充填材は、さらに難燃剤を含有させることにより、難燃性を付与することができる。難燃剤としては、特に限定はされないが、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。有機リン系難燃剤としては、三光(株)製のHCA、HCA−HQ、HCA−NQ等のフェナントレン型リン化合物、昭和高分子(株)製のHFB−2006M等のリン含有ベンゾオキサジン化合物、味の素ファインテクノ(株)製のレオフォス30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、TIBP、北興化学工業(株)製のPPQ、クラリアント(株)製のOP930、大八化学(株)製のPX200等のリン酸エステル化合物、新日鐵化学(株)製のFX289、FX305等のリン含有エポキシ樹脂、新日鐵化学(株)製のERF001等のリン含有フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製のYL7613等のリン含有エポキシ樹脂等が挙げられる。有機系窒素含有リン化合物としては、四国化成工業(株)製のSP670、SP703等のリン酸エステルミド化合物、大塚化学(株)製のSPB100、SPE100、(株)伏見製作所製のFP−series等のホスファゼン化合物等が挙げられる。金属水酸化物としては、宇部マテリアルズ(株)製のUD65、UD650、UD653等の水酸化マグネシウム、巴工業(株)社製のB−30、B−325、B−315、B−308、B−303、UFH−20等の水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
本発明の熱硬化性樹脂充填材は、室温で液状のエポキシ樹脂を用いている場合、必ずしも希釈溶剤を用いる必要はないが、組成物の粘度を調整するため、少量の希釈溶剤を添加してもよい。希釈溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
希釈溶剤の配合割合は、熱硬化性樹脂充填材の全体量の10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが望ましい。希釈溶剤の配合割合が、10質量%を超えると、硬化時に、揮発成分の蒸発の影響により、硬化後の穴部絶縁層に泡やクラックが発生し易くなる。従って、特に望ましいのは無溶剤の熱硬化性樹脂充填材である。
【0047】
本発明の熱硬化性樹脂充填材には、その他必要に応じて、フェノール化合物、ホルマリン及び第一級アミンを反応させて得られるオキサジン環を有するオキサジン化合物を配合してもよい。オキサジン化合物を含有することにより、プリント配線板の穴部に充填された熱硬化性樹脂充填材を硬化した後、形成された硬化物上に無電解めっきを行なう際、過マンガン酸カリウム水溶液などによる硬化物の粗化を容易にし、めっきとのピール強度を向上させることができる。
【0048】
また、通常のスクリーン印刷用レジストインキに使用されているフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知の着色剤を添加してもよい。
【0049】
また、保管時の保存安定性を付与するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知の熱重合禁止剤や、粘度などの調整のために、クレー、カオリン、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知の増粘剤、チキソトロピー剤を添加することができる。その他、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤、レベリング剤やイミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤のような公知の添加剤類を配合することができる。
【0050】
得られる熱硬化性樹脂充填材において、回転式粘度計により測定される粘度は、25±1℃、5rpmの30Sec値で、100dPa・Sec以上、1000dPa・Sec以下であることが好ましい。100dPa・Sec未満であると、形状保持が困難となり、ダレが発生する。一方、1000dPa・Secを超えると、プリント配線板の穴部への充填性が低下する。より好ましくは200dPa・Sec以上、800dPa・Sec以下である。
【0051】
粘度は、JIS Z 8803に記載されているコーンローター(円錐ロータ)とプレートから成るコーンプレート型粘度計で、たとえばTV−30型(東機産業製、ロータ3°×R9.7)で測定される。
【0052】
本発明の熱硬化性樹脂充填材は、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法など公知のパターニング方法を用いて、例えば表面及び穴部の壁面に銅などの導電層が形成されたプリント配線板の穴部に充填される。このとき、穴部から少しはみ出るように完全に充填される。そして、穴部が熱硬化性樹脂充填材で充填されたプリント配線板を、例えば、約150℃で60分程度加熱することにより、熱硬化性樹脂充填材を硬化させ、硬化物を形成する。好ましくは、例えば約90℃以上、約130℃以下で約30分以上、約90分以下程度加熱して予備硬化させる。このようにして予備硬化された硬化物の硬度は比較的に低いため、基板表面からはみ出している不必要部分を物理研磨により容易に除去でき、平坦面とすることができる。その後、再度約140℃以上、約180℃以下で約30分以上、約90分以下程度加熱して本硬化(仕上げ硬化)させる。この際、低膨張性のために硬化物は殆ど膨張も収縮もせず、寸法安定性良く低吸湿性、密着性、電気絶縁性等に優れた最終硬化物となる。尚、上記予備硬化物の硬度は、予備硬化の加熱時間、加熱温度を変えることによってコントロールできる。
【0053】
そして、プリント配線板の表面からはみ出した硬化物の不要部分を、公知の物理研磨方法により除去し、平坦化する。あるいは、穴部に充填した熱硬化性樹脂充填材を硬化する前に、穴部からはみ出した部分を取り除いて平坦化した後、硬化したり、プリプレグや樹脂付き金属箔を積層し、加熱・加圧する方法を採用することもできる。その後、表面の導電層を所定パターンにパターニングして、所定の回路パターンが形成される。なお、必要に応じて過マンガン酸カリウム水溶液などにより硬化物の表面粗化を行った後、無電解めっきなどにより硬化物上に導電層を形成してもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。尚、以下において「部」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0055】
<ペーストの調製>
表1〜表3に示す成分を、それぞれの配合割合(質量部)にて撹拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて分散を行い、熱硬化性樹脂充填材である実施例1〜
9、参考例1〜6及び比較例1〜6の各ペーストを調製した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
<性能評価>
前記のようにして得られた各ペーストについて、以下に列挙するような性能評価を行った。その結果を表4〜表6にまとめて示す。
【0060】
粘度:
各ペーストの試料を0.2ml採取し、コーンプレート型粘度計(東機産業社製TV−30)を用いて、25℃、回転数5rpm/minの条件で測定した。
【0061】
印刷性(充填性):
図2に示されるように、パネルめっきにより導体層13が形成されたスルホール12を有する厚さ1.6mm/スルーホール径0.25mm/ピッチ1mmのガラスエポキシ基板11に、実施例及び比較例の各ペーストをスクリーン印刷法により下記印刷条件でスルーホール内に充填した。充填後、熱風循環式乾燥炉に入れ、170℃で60分硬化を行い、評価基板を得た。この評価基板のスルーホール内に充填された硬化物14の充填度合いにより、充填性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:完全に充填されている。
△:一部のスルーホールに充填不良が発生。
×:スルーホールの底部まで充填されていない。
【0062】
<印刷条件>
スキージ:スキージ厚20mm、硬度70°、斜め研磨:23°、
版:PET100メッシュバイアス版、
印圧:60kgf/cm
2、スキージスピード5cm/Sec、
スキージ角度:80°。
【0063】
保存安定性:
各ペーストの初期と25℃で7日間保管後の粘度の測定を行い、下記の計算式により増粘率を求めた。
増粘率(%)=(初期粘度)/(25℃で7日間保管後の粘度)×100
【0064】
誘電率/誘電正接:
銅箔の光沢面側に、アプリケーターにて実施例及び比較例で得られた熱硬化性樹脂充填材のペーストを塗布し、170℃で60分硬化させた。硬化後、銅箔から剥離し、硬化皮膜を得た。この硬化皮膜について、誘電率及び誘電正接を以下の条件で測定した。
・測定機器:Agilent Technologies社製E4991A RFインピーダンス・マテリアル・アナライザ。
・測定条件:測定周波数1GHz(n=3で測定)。
【0065】
吸水率:
予め重量を測定したセラミック板に、実施例及び比較例の熱硬化性樹脂充填材のペーストをスクリーン印刷法で塗布し、熱風循環式乾燥炉にて170℃で60分硬化し、評価サンプルを得た。これを室温まで冷却した後、評価サンプルの重量を測定した。
この評価サンプルを、121℃、100%R.H.、24時間の条件でPCT処理を行い、処理後の硬化物の重量を測定し、下記算式により硬化物の吸水率を求めた。
吸水率(%)=(W
2−W
g)/(W
1−W
g)×100
ここで、W
2はPCT処理後の評価サンプル重量(g)、W
1は初期の評価サンプル重量(g)、W
gはセラミック板重量(g)である。
【0066】
吸湿リフロー耐性:
試験基板作製方法:
図2に示されるように、パネルめっきにより導体層13が形成されたスルホール12を有する厚さ1.6mm/スルーホール径0.25mm/ピッチ1mmのガラスエポキシ基板11に、半自動印刷機を用いて実施例及び比較例の熱硬化性樹脂充填材のペーストを充填した。熱風循環式乾燥炉にて170℃で60分硬化後、基板表面からはみ出している硬化物14の部分をバフ研磨により除去した。次いで、PCT(121℃、100%R.H.、24時間)の条件で加湿処理後、前処理としてCZ処理を行った樹脂付き銅箔15(銅箔16にエポキシ樹脂組成物からなる硬化性樹脂17が貼り合わされたもの)をプレス機により積層した。
次いで、最高温度260℃のはんだリフローを5回通し、デラミの有無を確認した。評価基準は以下の通りである。
○:デラミの発生なし。
△:僅かにデラミが確認された。
×:多くのデラミが確認された。
【0067】
はんだ耐熱性:
図2に示されるように、パネルめっきにより導体層13が形成されたスルホール12を有する厚さ1.6mm/スルーホール径0.25mm/ピッチ1mmのガラスエポキシ基板11に、半自動印刷機を用いて実施例及び比較例の熱硬化性樹脂充填材のペーストを充填した。熱風循環式乾燥炉にて170℃で60分硬化後、基板表面からはみ出している硬化物14の部分をバフ研磨により除去した。
この評価基板を、288℃のはんだ液中に10秒間、10回浸漬した後、室温まで放冷した。得られた評価基板を目視及び光学顕微鏡で観察し、穴部絶縁層14(スルーホール部内の硬化物)にクラックの発生がないかどうかを確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:クラックの発生なし。
△:クラックがわずかに確認された。
×:多くのクラックが確認された。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
表4及び表5に示されるように、実施例1〜
9の熱硬化性樹脂充填材は、印刷性(穴部充填性)や保存安定性及びはんだ耐熱性に優れていると共に、シアネート化合物又はイソシアネート化合物を含んでいるため、誘電率や誘電正接及び吸水率が低く、吸湿リフロー耐性にも優れていた。これに対し、表6に示されるように、比較例1、比較例2及び比較例4の熱硬化性樹脂充填材は、シアネート化合物又はイソシアネート化合物を含まないため、誘電正接が劣っていた。また、シアネート化合物又はイソシアネート化合物を用いた場合に比べ、吸水率も高くなるため、吸湿リフロー試験でデラミが発生し易くなった。さらに比較例2及び比較例6において、多量に配合されたアミン型エポキシ樹脂は、経時での粘度上昇が大きくなるため保存安定性に劣っていた。シアネート化合物又はイソシアネート化合物のみを用いた比較例3の熱硬化性樹脂充填材は、得られた充填材のペースト化ができず、印刷性(穴部充填性)に劣っていた。また、比較例1〜6では、多くのクラックが発生したため、はんだ耐熱性がないことがわかった。