(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成部は、前記流入リンクの各車線から前記流出リンクの各車線へ流出する所定期間におけるプローブ車両の発生率又は台数に基づいて、前記車線接続情報を生成する請求項1に記載の情報生成装置。
前記生成部は、前記流入リンクの各車線から前記流出リンクの各車線に至る交差点内のルートの組み合わせのうち、所定期間における前記プローブ車両の発生率又は台数が所定の閾値以上であるルートを接続関係ありと判定し、その閾値未満であるルートを接続関係なしと判定する請求項2に記載の情報生成装置。
生成された前記車線接続情報又は/及び前記通行権情報が、車両通行についての交通シミュレーションを実行する交通シミュレータに対する設定情報として用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報生成装置。
流入リンクから流出可能な方向別の各ステップの通行権の有無を表す通行権情報を生成する情報生成装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
次の第3情報と第4情報を取得するステップと、
取得した前記第3情報及び第4情報に基づいて、前記通行権情報を生成するステップと、を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
第3情報:移動体が実際に走行したリンクの車線を特定可能な走行車線情報
第4情報:移動体が交差点に進入する時点の交通信号機のステップ番号
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔用語の定義〕
本発明の実施形態を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般、具体的には、道路交通法上の車両のことをいう。同法上の車両には、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスが含まれる。本実施形態では、単に「車両」というときは、プローブ情報を生成可能な車載機を有する「プローブ車両」と、その車載機を有しない車両の双方を含む。
【0022】
「プローブ情報」:実際に道路を走行するプローブ車両の車載機から得られる、車両に関する各種情報のことをいう。プローブデータ或いはフローティングカーデータと呼ばれることもある。車両ID、車両位置、車両速度、車両方位及びこれらの発生時刻などのデータがこれに含まれる。
車両位置と時刻が分かれば車両速度を算出できるので、プローブ情報には、少なくとも車両位置と時刻が含まれておれば足りるが、後述の実勢速度をより正確に算出するには、所定時刻ごとに計測された車両速度がプローブ情報に含まれていることが好ましい。
【0023】
「リンク」:交差点などのノード間を繋ぐ、上り又は下りの方向を有する道路区間のことをいう。
「流入リンク」:ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向のリンクのことをいう。
「流出リンク」:ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向のリンクのことをいう。
【0024】
「車線」:リンクに含まれる1台の車両が通行するための幅員の区間のことをいう。リンクには、少なくとも1つの車線が含まれる。
「流入車線」:流入リンクに含まれる車線のこと、すなわち、ある交差点から見て、当該交差点に向かって流入する方向の車線のことをいう。
「流出車線」:流出リンクに含まれる車線のこと、すなわち、ある交差点から見て、当該交差点から流出する方向の車線のことをいう。
【0025】
「リンク接続情報」:流入リンクと流出リンクの交差点を介した接続関係を表す情報のことをいう。
「車線接続情報」:流入車線と流出車線の交差点を介した接続関係を表す情報のことをいう。
「通行権情報」:流入リンクから流出可能な方向別の各ステップにおける通行権の有無を表す情報のことをいう。
【0026】
「クリアランスステップ」:1つのサイクルに含まれる交通信号機のステップ(階梯)において、交差点から車両を退かせるためのステップ、具体的には、信号灯色が黄色又は赤色となるステップのことをいう。
「実勢速度」:ある道路区間を車両が実際に走行する場合に、大方の車両で計測されると推定される走行速度のことをいう。
【0027】
従って、ある道路区間の実勢速度は、交差点における信号待ちの要素を含まない、主として道路幅員や傾斜度などの道路構造に依存する速度であり、概ねその道路区間の規制速度に対して+10km/h程度の速度であるとされている。
後述の通り、本実施形態では、この実勢速度を、複数のプローブ車両1から得られたプローブ情報から推定する。
【0028】
「車両感知器」:道路を走行する車両の存在を定位置で1台ずつ検出する路側センサのことをいう。例えば、直下を通行する車両を超音波で感知する超音波式の車両感知器や、車両通過時の温度変化から車両の通過を感知する温度式の車両感知器や、インダクタンス変化で車両を感知する道路に埋め込まれたループコイル等がこれに該当する。
「感知信号」:道路の所定位置に設置された車両感知器が、1台の車両を検出した時に出力するパルス信号のことをいう。従って、複数台の車両が車両感知器を通過した場合には、各車両に対応する感知信号が時系列に出力される。
【0029】
〔交通情報処理システム〕
図1は、本発明の実施形態に係る交通情報処理システムの概略構成図である。
本実施形態の交通情報処理システムでは、少なくとも車両位置とその位置の通過時刻のデータを含むプローブ情報を、センタ装置5がプローブ車両1から収集し、収集したプローブ情報を用いて所定のデータ処理を施すことにより、道路区間の旅行時間、渋滞状況及び最適経路などの交通情報を提供するサービスが行われる。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の交通情報処理システムは、プローブ車両1に搭載された車載機2と、路側に設置された基地局(「路側通信機」ともいう。)4及びセンタ装置5と、を備えている。
車載機2と基地局4の間では、無線通信が可能であり、基地局4とセンタ装置5との間では、所定の通信回線6を介して有線通信が可能である。ただし、基地局4とセンタ装置5との間の通信も無線通信であってもよい。
【0031】
車載機2は、車速センサ、方位センサ、GPS受信機、メモリ及び計時装置などを有する。車載機2は、プローブ車両1の位置と時刻などのプローブ情報に含めるべきデータを所定時間ごと又は一定走行距離ごとに収集し、メモリに蓄積する。
車載機2には、携帯電話機やスマートフォン等よりなる通信装置3が接続されている。通信装置3は、メモリに蓄積されたデータをプローブ情報として外部に送信する。プローブ車両1が送信したプローブ情報は、基地局4を介してセンタ装置5に送られる。なお、プローブ情報は、光ビーコンやITS無線機などの路側装置(図示せず)を介して、センタ装置5に送ることにしてもよい。
【0032】
プローブ情報の送信タイミングは任意であるが、本実施形態では、搭乗者がセンタ装置5に交通情報の提供サービスの送信を要求する際に、車載機2で蓄積されたプローブ情報を送信する。
すなわち、搭乗者が、渋滞状況などの情報提供を受けることを希望すると、通信装置3を操作してサービスの要求信号をセンタ装置5に送信する。この際、通信装置3は、要求信号の送信時点でメモリに蓄積されているプローブ情報を、その要求信号と併せてセンタ装置5に送信する。
【0033】
〔センタ装置の構成〕
図2は、センタ装置5の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2に示すように、センタ装置5は、送受信部10、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14、各種のデータベース15〜17を備えている。
送受信部10は、基地局4と制御部11との間で、プローブ情報や渋滞状況などの各種のデータを送受信する。
【0034】
制御部11は、記憶部12に格納されたコンピュータプログラム18によって動作するコンピュータ装置よりなり、記憶部12は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶媒体を含む。
記憶部12に格納された本実施形態のコンピュータプログラム18は、制御部11を「情報生成装置」及び「交通シミュレータ」などの各種の装置として機能させるためのアプリケーションプログラムよりなる。
【0035】
入力部13は、操作員が制御部11に対して所定の入力操作を行うための入力インタフェースであり、例えば、マウスやキーボードなどのヒューマンインタフェースにより構成されている。
表示部14は、制御部11の画像処理用CPUにより画面表示される液晶パネルなどのディスプレイ機器よりなり、コンピュータプログラム18による所定の処理に応じた操作ウインドや動画などの各種の画像を表示する。
【0036】
プローブ用データベース15は、複数のプローブ車両1から数多く収集されるプローブ情報を格納するためのデータベースである。
図3は、プローブ用データベース15に格納されるプローブ情報のデータ構成を示す図である。
図3の「項目」の欄に示すように、本実施形態のプローブ情報には、「ノード情報」、「リンク情報」、「位置情報」及び「信号機情報」が含まれる。
【0037】
ノード情報のデータ内容には、プローブ車両1が通過したノード(交差点)の有効データ数nと、そのノード番号とが含まれる。プローブ車両1は、交差点を通過するごとに、その通過時刻(秒単位)と通過した交差点のノード番号をプローブ情報に含める。
リンク情報のデータ内容には、プローブ車両1が通行したリンクの有効データ数nと、そのリンク番号が含まれる。プローブ車両1は、特定のリンクの車線を通過するごとに、その通行時刻とリンク番号と車線番号をプローブ情報に含める。
【0038】
位置情報のデータ内容には、所定時間又は所定距離ごとに収集された車両位置の情報数nと、その車両位置(緯度・経度)とが含まれる。プローブ車両1は、所定時間又は所定距離を走行するごとに、現在時刻、車両位置、車両情報(車種や全長全幅等)、車両速度及び絶対方位をプローブ情報に含める。
【0039】
信号機情報のデータ内容には、プローブ車両1が光ビーコン(図示せず)その他の路側機から取得した交通信号機の信号機情報の数と、その信号機情報の詳細内容が含まれる。プローブ車両1は、通過した交差点の時刻と、その通過時点における交通信号機の現示及びステップ番号をプローブ情報に含める。
なお、
図3では図示されていないが、信号機情報の詳細内容には、1サイクル中のどのステップ番号がクリアランスステップであるかの情報も含まれる。
【0040】
地図用データベース16には、デジタル道路地図(DRM:Digital Road Map)のデータ(以下、「地図データ」という。)が格納されている。
この地図データには、センタ装置5の管轄エリアに属するリンク及びノード(交差点)の位置(緯度・経度)、それらの識別番号、リンク接続情報、各リンクの車線数などのデータが含まれている。もっとも、デフォルト状態の地図データには、上述の「車線接続情報」や「通行権情報」は含まれていない。
【0041】
パラメータ用データベース17には、出発ゾーンと到着ゾーンごとに発生交通量と集中交通量を定義するOD表(マトリックス)、このOD表のセルごとに算出された各ゾーン間のOD交通量、リンクを走行する仮想車両の車両速度(例えば、規制速度)などの、車両通行についての交通シミュレーションに必要なパラメータが格納されている。
【0042】
本実施形態のセンタ装置5は、複数の交通信号制御機を制御する「交通管制機能」も有している。従って、送受信部10は、管轄エリア内の車両感知器や交通信号制御機(図示せず)とも、通信回線6を介して通信可能に接続されている。
センタ装置5の制御部11は、送受信部10が受信した車両感知器の感知信号に基づいて、系統制御や広域制御などの「交通感応制御」を行い、この制御の結果生成した各交差点の信号制御パラメータを、送受信部10から交通信号制御機に送信する。
【0043】
上記の交通感応制御には、例えば、MODERATO制御やプロファイル制御等を含む複数種類のものが含まれる。
センタ装置5の制御部11は、その交通感応制御の結果の出力である、所定時間ごとの信号灯器の灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令を、所定周期周期(例えば、1分等)ごとに交通信号制御機に送信する。
【0044】
〔情報生成装置の概要〕
情報生成装置として機能する場合のセンタ装置5(以下、単に「情報生成装置5」という。)の制御部11は、次の「第1情報」と「第2情報」を地図用データベース16から読み出す。
第1情報:リンク接続情報(=流入リンクと流出リンクの交差点を介した接続関係)
第2情報:流入リンク及び流出リンクの車線数
【0045】
また、情報生成装置5の制御部11は、次の「第3情報」をプローブ用データベース15から読み出す。
第3情報:プローブ車両1が実際に走行したリンクの車線を特定可能な走行車線情報
具体的には、制御部11は、上記第3情報として、
図3中の「リンク情報1〜n」を読み出し、プローブ車両1が通行したリンクのリンク番号及び車線番号と、その通行時刻を特定する。
【0046】
そして、情報生成装置5の制御部11は、読み出した第1情報〜第3情報を、いったん記憶部12に記憶させる。従って、情報生成装置5の記憶部12は、第1情報〜第3情報を取得する取得部としての機能を有する。
情報生成装置5の制御部11は、記憶部12に記憶させた第1情報〜第3情報に基づいて、前記車線接続情報(=流入車線と流出車線の交差点を介した接続関係)を生成する。
【0047】
具体的には、情報生成装置5の制御部11は、流入リンクの各車線から流出リンクの各車線に至る交差点内のルートの組み合わせのうち、所定期間(例えば、1日)におけるプローブ車両1の発生率が所定の閾値(例えば、2%)以上であるルートを接続関係「あり」と判定し、その閾値未満のルートを接続関係「なし」と判定して、流入車線と流出車線の交差点を介した接続関係を表す情報である「車線接続情報」を生成する。
【0048】
ここで、例えば
図4の交差点Iに示すように、流入リンク14に3つの流出リンク21,22,23が繋がっており、流入リンク14の左直の車線14−1から各流出リンク21,22,23の各車線に流出する、所定期間におけるプローブ車両1のルートごとの発生率が、次の通りであった場合を想定する。なお、次の発生率は、車線14−1の車両台数を母数としている。
【0049】
車線14−1→車線21−1:16%
車線14−1→車線21−2:12%
車線14−1→車線22−1:53%
車線14−1→車線22−2:18%
車線14−1→車線23−1: 1%
車線14−1→車線23−2: 0%
【0050】
この場合、制御部11は、2%以上の発生率である上4つのルートについては、流入車線14−1と繋がる接続関係ありと判定し、2%未満の発生率である下2つのルートについては、車線14−1と繋がる接続関係なしと判定する。従って、この場合の「車線接続情報」には、次の4つのルートが含まれることになる。
車線14−1→車線21−1
車線14−1→車線21−2
車線14−1→車線22−1
車線14−1→車線22−2
【0051】
なお、車線14−1→車線23−1のルートの流出と、車線14−1→車線23−2のルートの流出が殆ど発生しない原因は、これらのルートは、流入リンク14の「左直」の車線14−1から交差点Iを右折して流出リンク23に向かうルートであり、一般に危険な車両走行となるからである。
【0052】
情報生成装置5の制御部11は、上記の処理を流入リンク11〜14に含まれるすべての車線11−1〜3,12−1〜3,13−1〜3,14−1〜3について実行し、接続関係ありと判定したルートの車線接続情報を地図用データベース16に格納する。
これにより、後述の交通シミュレータ5の操作員が、入力部13を操作して車線接続情報を入力する必要がなくなり、交通シミュレータ5に対する設定情報の入力作業を簡素化することができる。
【0053】
なお、上記の例では、車線接続情報を生成する場合の接続関係の有無の判定を、所定期間におけるプローブ車両1の「発生率」に基づいて行っているが、所定期間におけるプローブ車両1の「台数」に基づいてその判定を行ってもよい。
【0054】
また、情報生成装置5の制御部11は、次の「第4情報」をプローブ用データベース15から読み出す。
第4情報:プローブ車両1が交差点を進入する時点の交通信号機のステップ番号
具体的には、制御部11は、上記第4情報として、
図3中の「信号機情報」を読み出し、プローブ車両1が交差点に進入した時刻(流入リンクの終端通過時刻)と、その時点の現示及びステップ番号を特定する。
【0055】
そして、情報生成装置5の制御部11は、読み出した第4情報を、いったん記憶部12に記憶させる。従って、情報生成装置5の記憶部12は、第4情報を取得する取得部としての機能も有する。
情報生成装置5の制御部11は、記憶部12に記憶させた第3情報と第4情報に基づいて、前記通行権情報(=流入リンクから流出可能な方向別の各ステップにおける通行権の有無を表す情報)を生成する。
【0056】
具体的には、制御部11は、流入リンクから流出可能な方向ごとに、各プローブ車両1が通過したステップ番号を収集してデータベース化することにより(例えば
図8参照)、通行権情報を生成する。
例えば、
図8に示す例では、流入リンクから流出可能な方向(左折、直進及び右折)ごとに、各プローブ車両1が通過したステップ番号に○印を付することにより、通行権があるステップ番号が示されている。
【0057】
情報生成装置5の制御部11は、上記の処理をすべての流入リンクについて実行し、その流入リンクごとの通行権情報をパラメータ用データベース17に格納する。
これにより、後述の交通シミュレータ5の操作員が、操作員が入力部13を操作して通行権情報を入力する必要がなくなり、交通シミュレータ5に対する設定情報の入力作業を簡素化することができる。
【0058】
本実施形態では、情報生成装置5の制御部11は、多数のプローブ車両1に含まれる車両速度からリンクごとの実勢速度を推定し、このリンクごとの実勢速度をパラメータ用データベース17に格納する。
【0059】
本実施形態の情報生成装置5において、制御部11が、クリアランスステップ(黄信号又は赤信号のステップ)であるステップ番号において交差点に進入したプローブ車両1における車両の通過率又は通過台数を算出し、算出した通過率や通過台数をパラメータ用データベース17に格納することにしてもよい。
このようにすれば、クリアランスステップにおける車両の通過率や通過台数を交通シミュレーションに反映させることができ、実際の交通に即した交通シミュレーションが可能となる。
【0060】
また、本実施形態の情報生成装置5において、制御部11が、流入リンクから流出可能な方向別の「分岐率」を算出し、算出した分岐率をパラメータ用データベース17に格納することにしてもよい。
このようにすれば、後述の交通シミュレータ5の操作員が、入力部13を操作して分岐率を入力する必要もなくなり、交通シミュレータ5に対する設定情報の入力作業をより簡素化することができる。
【0061】
〔交通シミュレータの概要〕
本実施形態の交通シミュレータは、デジタル地図に含まれる所定エリアのリンクに複数の模擬車両を模擬的に走行させることにより、交通評価指標を出力する装置であり、かかる交通シミュレータとして機能する場合のセンタ装置5(以下、単に「交通シミュレータ5」という。)の制御部11は、地図用データベース16とパラメータ用データベース17から交通シミュレーションに必要なデータを読み出し、車両通行についての交通シミュレーションを実行する。
【0062】
本実施形態では、操作員による入力部13への入力操作により、例えば、交通シミュレーションを行うエリア、時間帯、渋滞区間などの所定の環境設定が行われ、その環境設定の条件下にて制御部11が交通シミュレーションを実行する。
そして、制御部11は、設定されたエリアに含まれる複数のゾーンのOD表とOD交通量を読み出し、所定の分布交通量モデルに基づくアルゴリズムにより、所定時間経過ごとの車両1台ごとの挙動を演算し、その挙動を道路ネットワークに対するアニメーションとして表示部14に表示する。
【0063】
なお、通常の交通シミュレーションでは、リンクの車両速度として、予め設定された「制限速度」(規制速度や法定速度)を用いるが、本実施形態では、情報生成装置5がパラメータ用データベース17にリンクごとの「実勢速度」を格納しているので、この実勢速度をリンクの車両速度として採用し、交通シミュレーションを行うことが好ましい。
このようにすれば、制限速度を用いる場合に比べて、実際の車両交通に即した交通シミュレーションを行うことができる。
【0064】
〔情報生成装置による処理内容の詳細〕
図4〜
図11は、情報生成装置5が行う各種情報の算出例を示す。以下、これらの図を参照しつつ、情報生成装置5が行う処理内容をより詳細に説明する。
図4は、交差点Iの構造例を示す平面図である。
図4に示すように、この交差点Iは、十字路交差点であり、南北方向の道路1,3と東西方向の道路2,4を含む。各道路1〜4の流入リンクはそれぞれ3車線であり、流出リンクはそれぞれ2車線である。
ここでは、道路1〜4の流入リンクのリンク番号をそれぞれ11〜14とし、道路1〜4の流出リンクのリンク番号をそれぞれ21〜24としている。
【0065】
3車線の流入リンク11〜14については、左直方向の車線の枝番号を「1」、直線方向の車線の枝番号を「2」、右折方向の枝番号を「3」としており、流入リンク11〜14の車線を枝番付きのリンクとして定義する。
例えば、流入リンク14の左直方向の車線は「リンク14−1」(「流入車線14−1」ともいう。)であり、直進方向の車線は「リンク14−2」(「流入車線14−2」ともいう。)であり、右折方向の車線は「リンク14−3」(「流入車線14−3」ともいう。)である。その他の流入リンク11〜13についても同様である。
【0066】
また、2車線の流出リンク21〜24については、流出リンク21〜24に属する直進方向の各車線の枝番号を「1」及び「2」としており、流出リンク21〜24の車線を枝番付きのリンクとして定義する。
例えば、流出リンク24の幅方向外側の走行車線は「リンク24−1」(「流出車線24−1」ともいう。)であり、幅方向内側の追い越し車線は「リンク24−2」(「流出車線24−1」ともいう。)である。その他の流出リンク21〜23についても同様である。
【0067】
図4において、「車両1」は、リンク(車線)14−2から交差点Iに直進方向に進入してリンク(車線)22−2に流出しており、リンク14−2の終端を時刻11:30:32に通過し、リンク22−2の始端を時刻11:30:34に通過したものとする。
また、「車両2」は、リンク(車線)14−3から交差点Iに右折方向に進入してリンク(車線)23−2に流出しており、リンク14−3の終端を時刻11:30:37に通過し、リンク23−2の始端を時刻11:30:39に通過したものとする。
【0068】
図5は、車両ごとの交差点進入時刻と挙動の対応関係を示すテーブルである。また、
図6は、車両の流入車線及び流出車線と交差点進入時におけるステップ番号の対応関係を示すテーブルである。
図6に示ように、交差点Iの交通信号機は、1サイクルが4現示でかつ1〜12までのステップ番号を含み、図示の通りの現示と灯色が割り当てられているものとする。なお、図示の「−」は青、「=」は赤、「Y」は黄、「W」は歩行者点滅を示す。
【0069】
情報生成装置5の制御部11は、プローブ車両1の交差点通過時刻がステップ1〜12のうちのどの時間帯に属するかを判定し、該当するステップにそれぞれ割り当てて、
図5の対応テーブルをデータベース化する。
図5の対応テーブルは、日付時刻、リンク(流入車線)、行動、信号ステップ、日付時刻、リンク(流出車線)、行動、信号ステップ、行動の項目を有し、交差点Iを通過した車両ごとにこれらの項目の内容が記される。
【0070】
例えば、
図4の「車両1」は、「11:30:32」にリンク14−2を流出して交差点Iに至り、「11:30:34」に交差点Iを抜けてリンク22−2に進入しており、それらの時刻はステップ3に該当する。従って、
図5の先頭行に示す記載内容となる。
また、
図4の「車両2」は、「11:30:37」にリンク14−3を流出して交差点Iに至り、「11:30:39」に交差点Iを抜けてリンク23−2に進入しており、それらの時刻はステップ5に該当する。従って、
図5の2番目の行に示す記載内容となる。
【0071】
図6の対応テーブルは、交差点Iのステップ番号ごとの項目を有し、各ステップ番号の時間帯に車両が通行した流入車線と流出車線が当該項目ごとの記載内容となっている。
例えば、
図4の「車両1」は、流入車線がリンク14−2でかつ流出車線がリンク22−2であるから、それらの車線データが「ステップ3」に割り当てられ、
図4の「車両2」は、流入車線がリンク14−3でかつ流出車線がリンク22−2であるから、それらの車線データが「ステップ5」に割り当てられる。
【0072】
以下同様に、情報生成装置5の制御部11は、
図3のプローブ情報が得られた各プローブ車両1(
図6の車両3,4,5,6……)について、そのプローブ車両1が交差点Iに進入した時のステップ番号と、そのプローブ車両1がどの流入車線から交差点Iに入りどの流出車線に進んだかを特定し、特定したステップ番号に特定した流入車線と流出車線を記すことにより、
図6の対応テーブルをデータベース化する。
【0073】
図7は、特定の交差点Iについての車線接続情報を定義するテーブルである。具体的には、
図7は、交差点Iの流入車線ごとに、その流入車線と接続関係にある流出車線と、接続関係にある流出車線に車両が進む場合の交差点Iにおける進行方向(直進、左折及び右折)を定義するテーブルである。
情報生成装置5の制御部11は、多数のプローブ車両1のプローブ情報から
図6の対応テーブルのデータ内容を集積し、集積したデータ内容に基づいて、
図7の定義テーブルを生成する。
【0074】
具体的には、情報生成装置5の制御部11は、まず、
図6の対応テーブルに含まれる多数のデータ内容から、同じステップ番号に含まれる流入車線と流出車線との対を集計する。この集計は、全車種で行う場合と車種ごと(大型貨物、路線バス、普通車ごと等)に行う場合のいずれであってもよい。そして、制御部11は、特定の流入車線に対して所定値以上の発生率又は台数となる流出車線を、当該流入車線と接続関係がある車線と判定して、
図7に定義するテーブル形式の車線接続情報を生成する。
【0075】
例えば、流入車線14−1に着目し、この流入車線14−1から各流出車線に流出した所定期間におけるプローブ車両1の発生率が、前述と同様に、次の通りであったとする。
流入車線14−1→流出車線21−1:16%
流入車線14−1→流出車線21−2:12%
流入車線14−1→流出車線22−1:53%
流入車線14−1→流出車線22−2:18%
流入車線14−1→流出車線23−1: 1%
流入車線14−1→流出車線23−2: 0%
【0076】
この場合、制御部11は、発生率が2%以上である4つの流入車線21−1,21−2,22−1,22−2については、流入車線14−1と接続関係ありと判定し、発生率が2%である2つの流出車線23−1,23−2については、流入車線14−1とは接続関係なしと判定する。
【0077】
そして、制御部11は、流入車線が「14−1」であるデータ項目に関して、接続関係ありと判定した「21−n(n=1〜2)」及び「22−n(n=1〜2)」の流出車線のデータを残し、流出車線が「23−n(n=1〜2)」であるデータを消去して、流入車線14−1に対応する流出車線の接続関係を特定する。
従って、「流入車線14−1」から右折方向となる「流出車線23−n(1〜2)」については、最終的に
図7の定義テーブルから省かれることになる。
【0078】
制御部11は、データ項目が「14−1」以外の他の流入車線についても、交差点Iを介した車線間の経路の発生率に基づいて、上記と同様の判定と取捨選択を含む処理を行うことにより、
図7の定義テーブルを完成させる。
すなわち、
図7に例示する定義テーブルには、各流入車線に対して物理的に接続し得る最多の接続関係が含まれており、所定期間内の発生率が2%未満となる接続関係が逐次省かれることにより、
図7の定義テーブルが完成する。そして、制御部11は、完成したテーブル形式による車線接続情報を地図用データベース16に格納する。
【0079】
図8は、流出リンクから流出可能と推定されるステップを流出方向別に示したテーブルである。
図8において、○印を付したステップ番号の時間帯が、当該流入リンクから当該方向への通行権が認められる時間帯を示している。
情報生成装置5の制御部11は、
図7の定義テーブル(車線接続情報)により定義された流入リンクの進行方向別に、その進行方向へ車両の流出が生じた時刻に対応するステップ番号を収集してデータベース化し、
図8に示すテーブル形式の通行権情報を生成する。
【0080】
具体的には、情報生成装置5の制御部11は、まず、取得したプローブ情報のリンク情報(
図3参照:
図3のリンク情報にはプローブ車両1が実際に走行した車線番号が含まれているので、前記「走行車線情報」の一例である。)に含まれる車線番号から、プローブ車両1が実際に走行した流入車線と流出車線を特定し、特定した流入車線と流出車線の対応関係を
図7の定義テーブルに当てはめることにより、そのプローブ車両1が走行した流入リンクと、交差点Iに入った後に進んだ進行方向(左折、直進又は右折)を特定する。
【0081】
次に、制御部11は、プローブ情報の信号機情報に含まれるステップ番号から、プローブ車両1が交差点Iに進入する時点の交通信号機のステップ番号を特定する。
そして、制御部11は、1つのプローブ車両1について、流入リンクから流出可能な方向とステップ番号が特定されるごとに、対応する項目の車両台数値をインクリメントすることにより、
図8の推定テーブルを生成する。
図8に○印で示す各項目には、車両の台数値を記しても良い。
【0082】
ここで、
図8中の例えば「流入リンク14から左折」に着目すると、ステップ番号1〜4までの項目に台数値データが記されているる。
このため、
図8の推定テーブルによれば、「流入リンク14から左折」する流出方向については、ステップ番号1〜4までに通行権があり、ステップ番号5〜12までには通行権がないと推定できる。そして、制御部11は、
図8の推定テーブルよりなる通行権情報を、パラメータ用データベース17に格納する。
【0083】
なお、本実施形態では、プローブ情報の信号機情報に、どのステップ番号かクリアランスステップであるかが含まれており、
図8に「※」で示すステップ番号が、当該信号機情報に含まれるクリアランスステップである。このように、実際の車両交通においては、黄信号や赤信号でも交差点Iを通過する車両が存在する。
そこで、情報生成装置5の制御部11は、例えば次の算出式により、「クリアランス通過率」を算出する。
図9は、そのクリアランスステップでの車両の通過率を流出方向別に算出した結果を示すテーブルである。
【0084】
現示に対するクリアランス通過率の算出式:
流入交通量に対する割合の場合には、通過率=Cya/VLt
分岐交通量に対する割合の場合には、通過率=Cya/VLd
【0085】
ただし、上記算出式における各パラメータの定義は、次の通りである。
Cya:現示aにおけるクリアランスステップの通過交通量(台)
VLt:流出リンクに対する現示aにおける流入交通量(台)
VLd:流出リンクに対する現示aにおける流入交通量のうち、所定の流出方向への分岐交通量
【0086】
なお、上記算出式を用いることにより、
図9の例では、「流入リンク12」についての左折方向のステップ4(黄信号)におけるクリアランス通過率が13%と算出され、直進方向のステップ4(黄信号)におけるクリアランス通過率が15%と算出され、右折方向のステップ6(全赤)のクリアランス通過率が30%と算出されている。
【0087】
ここで、従来の交通シミュレータでは、通行可能なステップ(通常は青ステップ)のみで車両通行が発生すると仮定して交通シミュレーションを行う。しかし、実際は、黄信号や赤信号のステップでの通行は、車両の走行速度や位置によっては発生し得る。
このため、情報生成装置5の制御部11は、算出したクリアランス通過率についても、交通シミュレータ5によるシミュレーションの設定情報として採用し、パラメータ用データベース17に格納する。
【0088】
このように、本実施形態では、実際の車両交通において往々にして発生する、クリアランスステップにおける車両の通過率についても、交通シミュレータ5の設定情報として採用するので、車両交通の実態により近い交通シミュレーションが可能となる。
なお、クリアランス通過率は、現示に対する通過率ではなく、クリアランスステップに対する通過率であってもよく、この場合には次の算出式を採用すればよい。
【0089】
クリアランスステップに対するクリアランス通過率の算出式:
流入交通量に対する割合の場合には、通過率=Cya/VLyat
分岐交通量に対する割合の場合には、通過率=Cya/VLyad
【0090】
ただし、上記算出式における各パラメータの定義は、次の通りである。
Cya:現示aにおけるクリアランスステップの通過交通量(台)
VLyat:流出リンクに対する現示aのクリアランスステップにおける流入交通量(台)
VLyad:流出リンクに対する現示aにおけるクリアランスステップにおける流入交通量のうち、所定の流出方向への分岐交通量
【0091】
なお、例えば、独立現示方式の場合(方向別に青の早期打ち切りを行う場合等)のように、クリアランスステップが進行方向別に発生するような場合には、クリアランス通過率をその進行方向ごとに算出すればよい。
例えば、左折矢→全赤1→直進矢→全赤2→右折矢→全赤3の順序で現示が切り替わる交差点の場合には、各全赤1〜3の通過率はそれぞれ次のようになる。
全赤1のクリアランス通過率=左折のクリアランス通過率
全赤2のクリアランス通過率=直進のクリアランス通過率
全赤3のクリアランス通過率=右折のクリアランス通過率
【0092】
図10は、特定の流出車線からの所定時間における流出車線ごとの流出台数を示すテーブルであり、
図10の例では、
図4における流入リンク14の場合を例示している。
図10に示すように、情報生成装置5の制御部11は、通行可能な現示において発生した車両台数を、
図7の定義テーブルに含まれる接続関係ごとに集計してデータベース化することにより、
図10のテーブルを生成する。
【0093】
そして、制御部11は、
図10の集計テーブルに基づいて、例えば次の算出式により、流入車線ごとの流出車線の分岐率を算出し、算出した分岐率をパラメータ用データベース17に格納する。
流入路交通量に対する割合を採用する場合の算出式:
分岐率=LN/VLt
分岐交通量に対する割合を採用する場合の算出式:
分岐率=LN/VLd
【0094】
ただし、上記算出式における各パラメータの定義は、次の通りである。
LN:流入リンクの特定の車線から流出リンクの特定の走行車線への交通量(台)
VLt:流入リンクに対する流入交通量(台)
VLd:流入リンクに対する流入交通量のうち、所定の流出方向への分岐交通量
【0095】
なお、上記算出式を用いることにより、
図10の例では、「流入リンク14」からの左折方向において、流入車線14−1→流出車線21−1の分岐率が17%と算出され、流入車線14−1→流出車線21−2の分岐率が2%と算出され、流入車線14−2→流出車線21−2の分岐率が1%と算出されている。
【0096】
このため、交通シミュレータ5の制御部11が、パラメータ用データベース17に含まれる交差点ごとの上記分岐率をパラメータに含めて交通シミュレーションを行えば、シミュレーションの精度をより向上させることができる。
ここで、道路管理者等が入力する「工事情報」や「規制情報」とリンクさせることができるならば、通常のデータとして採用されるかどうか、工事等によるデータとしてデータベースに格納されるかを選択でき、シミュレーションの更なる精度向上を図ることができる。
【0097】
例えば、「工事情報」や「規制情報」が各交差点に、時間帯データ毎(例えば、1時間)に紐付けられており、分岐率やクリアランス通過率も各交差点に、時間帯データ毎に紐付けられている場合、各交差点の時間帯データ毎の分岐率あるいはクリアランス通過率を、工事や事故等による規制の有無とリンクさせる。
そして、通常のシミュレーションを行う場合は、規制が「なし」となっているときの分岐率、クリアランス通過率を使い、規制ありの場合のシミュレーションを行う場合は、規制が「あり」となっているときの分岐率、クリアランス通過率を使うことができる。
【0098】
なお、上記の算出式で得られる分岐率は、いわば現示ごとの「車線対車線利用率」を意味するが、データ数によっては分岐率をステップごとに求めることにしてもよい。
また、分岐率は、1日平均で算出してよく、曜日平均で算出してもよい。更に、各々の日において時間帯別(朝通勤交通時間帯、昼間通行情報、夕帰宅交通時間帯、深夜時間帯、時台など)に分岐率を集計することにより、シミュレーションの精度を向上させることも可能である。
【0099】
図11は、特定の流出車線からの所定時間における流出車線ごとの流出割合を示すテーブルであり、
図11の例においても、
図4における流入リンク14の場合を例示している。
図11に示すように、情報生成装置5の制御部11は、通行可能な現示において発生した流出割合を、
図7の定義テーブルに含まれる接続関係ごとに集計してデータベース化することにより、
図11のテーブルを生成することにしてもよい。
【0100】
なお、
図11の例では、「流入リンク14」からの左折方向において、流入車線14−1→流出車線21−1の分岐率が19%と算出され、流入車線14−1→流出車線21−2の分岐率が2%と算出され、流入車線14−2→流出車線21−2の分岐率が1%と算出されている。
【0101】
この場合、制御部11は、
図11の集計テーブルを用いることにより、上記と同様の算出式によって、流入車線ごとの流出車線の分岐率を算出することができる。
従って、
図10の場合と同様に、算出された分岐率はパラメータ用データベース17に格納することにすればよい。
【0102】
〔その他の変形例〕
本発明の権利範囲は、上述の実施形態(変形例を含む。)ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内のすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、プローブ車両1が生成するプローブ情報(
図3)に、ノード情報とリンク情報が含まれているが、プローブ車両1は
図3中の位置情報のみを外部に送信し、その他の情報を基地局4やセンタ装置5などの路側装置が生成することにしてもよい。
【0103】
この場合、路側装置は、プローブ情報に含まれる時系列の位置情報からマップマッチング等によってノード情報やリンク情報を生成することにすればよい。
また、センタ装置5は、管轄エリア内の各交差点のステップ番号を把握していることが多い。従って、この場合には、プローブ情報には信号機情報が含まれている必要はなく、センタ装置5自身が、プローブ車両1の交差点進入時におけるステップ番号を自律的に算出することにすればよい。