(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を前記時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第1の抽出手段と、
前記時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を前記時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第2の抽出手段と、
前記時系列の画像データそれぞれに対して、前記第1の位置における領域内の画素の特徴と、前記第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、前記第1の位置または前記第2の位置のどちらか一方を前記関心領域の位置として設定する位置設定手段と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
前記第1の抽出手段は、前記時系列の画像データに含まれる所定の画像データに対して設定された関心領域内の基本波成分と、前記時系列の画像データにおいて前記設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して前記関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内の基本波成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を前記第1の位置として抽出し、
前記第2の抽出手段は、前記所定の画像データに対して設定された関心領域内のハーモニック成分と、前記時系列の画像データにおいて前記設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して前記関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内のハーモニック成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を前記第2の位置として抽出することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
前記位置設定手段は、前記第1の位置における基本波成分の類似度と、前記第2の位置におけるハーモニック成分の類似度とのうち、類似度が高い位置を前記関心領域の位置として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
前記位置設定手段は、前記第1の位置又は前記第2の位置における領域内の画素値の分散値が所定の閾値を上回ったことを条件に、前記第1の位置又は前記第2の位置を前記関心領域の位置として設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
前記位置設定手段は、前記第1の位置における基本波成分の類似度又は前記第2の位置におけるハーモニック成分の類似度が所定の閾値を上回ったことを条件に前記第1の位置又は前記第2の位置を前記関心領域の位置として設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
前記位置設定手段によって前記第1の位置における基本波成分の類似度及び前記第2の位置におけるハーモニック成分の類似度が所定の閾値を上回っていないと判定された場合に、操作者に対して警告を通知する通知手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を前記時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第1の抽出手段と、
前記時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を前記時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第2の抽出手段と、
前記時系列の画像データそれぞれに対して、前記第1の位置における領域内の画素の特徴と、前記第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、前記第1の位置または前記第2の位置のどちらか一方を前記関心領域の位置として設定する位置設定手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を前記時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第1の抽出手順と、
前記時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を前記時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する第2の抽出手順と、
前記時系列の画像データそれぞれに対して、前記第1の位置における領域内の画素の特徴と、前記第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、前記第1の位置または前記第2の位置のどちらか一方を前記関心領域の位置として設定する位置設定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成例を示すブロック図である。
図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0013】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0014】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0015】
例えば、装置本体10は、2次元走査用の超音波プローブ1として、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブと接続される。或いは、例えば、装置本体10は、3次元走査用の超音波プローブ1として、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブと接続される。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
【0016】
本実施形態は、超音波プローブ1により、被検体Pが2次元走査される場合であっても、3次元走査される場合であっても適用可能である。
【0017】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置3は、操作者から造影エコー法による定量解析を実行するための各種操作を受け付ける。
【0018】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像や、超音波画像における関心部位の位置等を表示したりする。
【0019】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。
図1に示す装置本体10は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。また、
図1に示す装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。以下、3次元の超音波画像データを「ボリュームデータ」と記載する場合がある。
【0020】
装置本体10は、
図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、画像メモリ16と、内部記憶部17と、制御部18とを有する。
【0021】
送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0022】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0024】
送受信部11は、被検体Pを2次元走査する場合、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部11は、被検体Pを3次元走査する場合、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0025】
なお、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
【0026】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0027】
また、Bモード処理部12は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。このBモード処理部12の機能を用いることにより、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)を実行可能である。すなわち、Bモード処理部12は、超音波造影剤が注入された被検体Pの反射波データから、微小気泡(マイクロバブル)を反射源とする反射波データ(高調波データ又は分周波データ)と、被検体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波データ)とを分離することができる。これにより、Bモード処理部12は、被検体Pの反射波データから高調波データ又は分周波データを抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。また、Bモード処理部12は、被検体Pの反射波データから基本波データを抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
【0028】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0029】
なお、本実施形態に係るBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0030】
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらを組み合わせた画像である。
【0031】
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成部14は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0032】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0033】
更に、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、「3次元のBモード画像データや3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。
【0034】
更に、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう。画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行なう処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行なう処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
【0035】
画像メモリ16は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ16は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ16が記憶する表示用の画像データは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能である。また、画像メモリ16が記憶するBモードデータやドプラデータも、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。また、画像メモリ16は、送受信部11から出力されたデータを記憶することも可能である。
【0036】
画像処理部15は、コンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis:CAD)を行なうために、装置本体10に設置される。画像処理部15は、画像メモリ16に格納されたデータを取得して、画像処理を行なう。そして、画像処理部15は、画像処理結果を、画像メモリ16や後述する内部記憶部17に格納する。なお、画像処理部15が行なう処理については、後に詳述する。
【0037】
内部記憶部17は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部17は、必要に応じて、画像メモリ16が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部17が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、各種医用画像診断装置、画像診断を行なう医師が使用するPC(Personal Computer)や、CDやDVD等の記憶媒体、プリンター等である。
【0038】
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部17から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14及び画像処理部15の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ16や内部記憶部17が記憶する画像データをモニタ2にて表示するように制御する。
【0039】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、以下、詳細に説明する画像処理部15の処理により造影エコー法による定量解析の精度を向上させることを可能にする。ここで、従来の造影エコー法の定量解析において精度が低下する場合について説明する。例えば、造影エコー法による定量解析の手法としては、TCA(Time Curve Analysis)を用いた解析が知られている。TCAは、例えば、関心領域などの解析領域内の造影剤の時間変化を解析することで、腫瘍の特徴を確認したり、治療の経時変化を確認したりすることができる。
【0040】
ここで、上述したTCAでは、定量の精度を保つために、関心領域を解析領域として常に捉えていることが求められる。しかしながら、患者の呼吸や、心臓の拍動、操作者の動きなどによって、超音波走査領域内における関心領域の位置が変動してしまう場合がある。そのため、そのような関心領域の変動に対応する技術として、ハーモニック画像のデータを用いて関心領域を動的に追跡する技術が知られているが、ハーモニック画像のデータは造影前後の変化が激しいため、関心領域の追跡精度に一定の限界がある。また、造影剤到達前のハーモニック画像は、殆ど真っ黒の状態であるため、関心領域を指定することが困難である。
【0041】
このように、従来技術においては、関心領域の変動を追跡する精度に一定の限界があることから、関心領域を対象とする定量解析の精度においても一定の限界がある。そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、画像処理部15の処理により関心領域を精度よく検出することで、造影エコー法による定量解析の精度を向上させることを可能にする。
【0042】
図1に示すように、画像処理部15は、候補位置抽出部151と、位置設定部152とを有する。候補位置抽出部151は、造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。また、候補位置抽出部151は、時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を前記時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。
【0043】
図2は、第1の実施形態に係る候補位置抽出部151の処理対象の例を説明するための図である。例えば、候補位置抽出部151は、
図2の(A)に示すように、造影剤を投与された患者を超音波走査することで収集されたフレーム1〜フレームnまでの時系列データを対象として、関心領域の検出処理を実行する。ここで、
図2においては、フレーム1から順に時系列のフレームが並んでいる。
【0044】
例えば、
図2の(B)に示すように、フレーム3に対して関心領域R1が設定された場合に、候補位置抽出部151は、
図2の(C)に示すように、フレーム3の画像データのハーモニック成分から構成されるハーモニック画像と、基本波成分から構成されるファンドメンタル画像とを抽出する。なお、フレーム3に設定された関心領域は、時系列データを観察した操作者によって入力装置3を介して設定される場合であってもよく、或いは、時系列データに含まれる各画像データに対するパターンマッチング等の処理により自動で抽出されて設定される場合であってもよい。
【0045】
そして、候補位置抽出部151は、時系列データの各フレームからハーモニック画像とファンドメンタル画像とをそれぞれ抽出して、各画像における関心領域R1の位置を抽出する。ここで、候補位置抽出部151は、時系列の画像データに含まれる所定の画像データに対して設定された関心領域内の基本波成分と、時系列の画像データにおいて設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内の基本波成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を第1の位置として抽出する。
【0046】
図3Aは、第1の実施形態に係る候補位置抽出部151によるファンドメンタル画像における関心領域の抽出例を説明するための図である。ここで、
図3Aにおいては、フレーム3のファンドメンタル画像に設定された関心領域R1に基づいて、フレーム2のファンドメンタル画像における関心領域R1の候補位置を抽出する場合について示す。なお、
図3Aにおいては、説明上フレーム2をフレーム3よりも大きく示しているが、実際には、サイズは同じである。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Aに示すように、フレーム3に関心領域R1が設定されると、関心領域R1の中心の位置(座標)と、領域のサイズ(例えば、直径など)の情報を取得する。
【0047】
そして、候補位置抽出部151は、フレーム2のファンドメンタル画像において、フレーム3のファンドメンタル画像における関心領域R1の位置と同一の位置に関心領域R1を設定した場合に、それを網羅する領域に関心領域R1と同じサイズの複数のサブ領域を設定する。例えば、候補位置抽出部151は、関心領域R1内に含まれる画素を含むサブ領域FSR1、FSR2、FSR3などを設定する。なお、
図3Aにおいては、FSR1〜3までしか示していないが、実際には、さらに多数のサブ領域が設定される。ここで、サブ領域FSRは、例えば、関心領域R1に含まれる画素を1つずつずらしながら設定される。
【0048】
また、関心領域R1を網羅する領域のサイズは、任意に設定することができる。例えば、対象となる部位の呼吸の時相ごとの位置の変化を予め取得しておき、関心領域R1の位置を設定するフレームでの呼吸の時相から関心領域R1がどの程度変化するかを推定して、領域のサイズを決定する場合であってもよい。上記した例では、呼吸を一例に挙げたが、心時相を用いる場合であってもよく、或いは、検査部位の硬さなどが考慮される場合であってもよい。
【0049】
そして、候補位置抽出部151は、設定した各サブ領域と、フレーム3における関心領域R1の類似度をそれぞれ算出する。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Aに示すように、関心領域R1とサブ領域FSR1との類似度、関心領域R1とサブ領域FSR2との類似度、関心領域R1とサブ領域FSR3との類似度などを順に算出する。ここで、領域間の類似度は、例えば、画素値の平均値を用いる場合であってもよく、或いは、画素値のヒストグラムを用いる場合であってもよい。すなわち、画像の類似度を算出することができる手法であれば、どのような手法を用いる場合であってもよい。
【0050】
そして、候補位置抽出部151は、各領域間の類似度を算出すると、算出した類似度の中で最も高い類似度を示すサブ領域FSRを、ファンドメンタル画像における関心領域R1の候補位置として抽出する。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Aに示すように、サブ領域FSR2をファンドメンタル画像における関心領域R1の候補位置として抽出する。
【0051】
また、候補位置抽出部151は、所定の画像データに対して設定された関心領域内のハーモニック成分と、時系列の画像データにおいて設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内のハーモニック成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を第2の位置として抽出する。
【0052】
図3Bは、第1の実施形態に係る候補位置抽出部151によるハーモニック画像における関心領域の抽出例を説明するための図である。ここで、
図3Bにおいては、フレーム3のハーモニック画像に設定された関心領域R1に基づいて、フレーム2のハーモニック画像における関心領域R1の候補位置を抽出する場合について示す。なお、
図3Bにおいては、説明上フレーム2をフレーム3よりも大きく示しているが、実際には、サイズは同じである。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Bに示すように、フレーム3に関心領域R1が設定されると、関心領域R1の中心の位置(座標)と、領域のサイズ(例えば、直径など)の情報を取得する。
【0053】
そして、候補位置抽出部151は、フレーム2のハーモニック画像において、フレーム3のハーモニック画像における関心領域R1の位置と同一の位置に関心領域R1を設定した場合に、それを網羅する領域に関心領域R1と同じサイズの複数のサブ領域を設定する。例えば、候補位置抽出部151は、関心領域R1内に含まれる画素を含むサブ領域HSR1、HSR2、HSR3などを設定する。なお、
図3Bにおいては、HSR1〜3までしか示していないが、実際には、さらに多数のサブ領域が設定される。ここで、サブ領域HSRは、例えば、関心領域R1に含まれる画素を1つずつずらしながら設定される。また、関心領域R1を網羅する領域のサイズは、上記した場合と同様に任意に設定することができる。
【0054】
そして、候補位置抽出部151は、設定した各サブ領域と、フレーム3における関心領域R1の類似度をそれぞれ算出する。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Bに示すように、関心領域R1とサブ領域HSR1との類似度、関心領域R1とサブ領域HSR2との類似度、関心領域R1とサブ領域HSR3との類似度などを順に算出する。ここで、領域間の類似度は、例えば、画素値の平均値を用いる場合であってもよく、或いは、画素値のヒストグラムを用い用いる場合であってもよい。すなわち、画像の類似度を算出することができる手法であれば、どのような手法を用いる場合であってもよい。
【0055】
そして、候補位置抽出部151は、各領域間の類似度を算出すると、算出した類似度の中で最も高い類似度を示すサブ領域HSRを、ハーモニック画像における関心領域R1の候補位置として抽出する。例えば、候補位置抽出部151は、
図3Bに示すように、サブ領域HSR5をハーモニック画像における関心領域R1の候補位置として抽出する。なお、上述したファンドメンタル画像における類似度算出と、ハーモニック画像における類似度算出は、種々の類似度算出方法が適用できるが、適用される手法は同一の手法が適用される。
【0056】
図1に戻って、位置設定部152は、時系列の画像データそれぞれに対して、第1の位置における領域内の画素の特徴と、第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、第1の位置または前記第2の位置のどちらか一方を前記関心領域の位置として設定する。具体的には、位置設定部152は、第1の位置における基本波成分の類似度と、第2の位置におけるハーモニック成分の類似度とのうち、類似度が高い位置を関心領域の位置として設定する。
【0057】
図4Aは、第1の実施形態に係る位置設定部152による処理の一例を説明するための図である。例えば、位置設定部152は、
図4Aに示すように、候補位置抽出部151によってファンドメンタル画像から抽出された関心領域R1の候補位置であるサブ領域FSR2の類似度と、ハーモニック画像から抽出された関心領域R1の候補位置であるサブ領域HSR5の類似度とを比較して、類似度の高いサブ領域FSR2の位置をフレーム2の関心領域R1の位置として設定する。
【0058】
ここで、位置設定部152は、第1の位置又は第2の位置における領域内の画素値の分散値が所定の閾値を上回ったことを条件に、第1の位置又は第2の位置を関心領域の位置として設定する。例えば、位置設定部152は、フレーム2における関心領域R1の位置をファンドメンタル画像のサブ領域FSR2の位置として設定する際に、サブ領域FSR2に含まれる画素の画素値の分散値を算出して、所定の閾値と比較する。そして、位置設定部152は、比較した結果、サブ領域FSR2に含まれる画素の画素値の分散値が所定の閾値を上回った場合に、サブ領域FSR2の位置をフレーム2の関心領域R1の位置として設定する。これにより、関心部位がはっきりと描出された領域を関心領域とすることが可能となる。
【0059】
そして、位置設定部152は、関心領域を設定すると、設定した関心領域の情報を、例えば、内部記憶部17に格納する。
図4Bは、第1の実施形態に係る位置設定部152によって格納される関心領域の情報の一例を示す図である。
図4Bに示すように、位置設定部152は、フレームごとに関心領域中心と、関心領域サイズと、フラグとを対応付けた関心領域の情報を内部記憶部17に格納する。ここで、関心領域中心とは、設定された関心領域の中心の位置の座標を意味する。また、関心領域サイズとは、関心領域のサイズを意味する。また、フラグとは、該当するフレームの関心領域の情報を利用するか否かを示すフラグを意味する。
【0060】
例えば、フレーム3に対して関心領域R1が設定されると、設定された関心領域R1の情報「フレーム:3、関心領域中心:(5,5)、関心領域サイズ:2cm、フラグ:−」が位置設定部152によって格納される。そののち、候補位置抽出部151は、
図4Bに示すフレーム3の関心領域の情報を取得して、上述した処理を実行し、位置設定部152が、フレーム2の関心領域の情報として「関心領域中心:(6,7)=(5,5)+(1,1)、関心領域サイズ:2cm、フラグ:−」を格納する。
【0061】
ここで、位置設定部152は、
図4Bに示すように、「関心領域中心」の情報を移動後の座標情報「(6,7)」として格納することもでき、或いは、最初に設定された関心領域R1の座標「(5,5)」の情報と、オフセットの「+(1,1)」情報とで格納することも可能である。すなわち、位置設定部152は、フレームそれぞれにおいて関心領域がどこにあるのかを示す情報を格納することもでき、或いは、最初に設定された関心領域を基準として、各フレームがそこからどれだけ動いているかを示す情報を格納することができる。
【0062】
そして、上述した処理が時系列データの全てのフレームにおいて実行される。すなわち、候補位置抽出部151は、関心領域が設定された画像データを基準として、時系列の正順及び逆順にそれぞれ第1の位置を抽出する。また、候補位置抽出部151は、関心領域が設定された画像データを基準として、時系列の正順及び逆順にそれぞれ第2の位置を抽出する。例えば、候補位置抽出部151は、フレーム3に対して関心領域R1が設定されると、上述したフレーム2の処理と同様に、フレーム4における関心領域R1の位置の候補を示す候補位置をファンダメンタル画像及びハーモニック画像それぞれから抽出する。
【0063】
また、候補位置抽出部151は、位置設定部152によってフレーム2における関心領域R1の位置が設定され、関心領域R1の情報が格納されると、フレーム2の関心領域R1の情報を読み出して、フレーム1における関心領域R1の位置の候補を示す候補位置をファンダメンタル画像及びハーモニック画像それぞれから抽出する。このように、第1の実施形態に係る画像処理部15は、時系列データの各フレームについて、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像それぞれで関心領域の位置を抽出して、比較することで、より精度の高い関心領域の位置設定を実行する。それにより、例えば、
図5に示すように、時系列データのすべてのフレームに渡って、関心領域R1の位置が設定されることとなる。なお、
図5は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100によって設定される関心領域の一例を示す図である。
【0064】
ここで、
図5に示す関心領域の位置は、ファンドメンタル画像とハーモニック画像の両方を用いて設定したことからより精度の高い位置となっている。その結果、
図5に示す各フレームに設定された関心領域を用いてTCAを実行することで、造影エコー法による定量解析の精度を向上させることが可能となる。
【0065】
なお、上述した関心領域の位置の設定は、関心領域が設定されたフレームを基準としてすべてのフレームの関心領域の位置を設定することもでき、或いは、時系列的に連続する2つのフレーム間によって関心領域の位置を設定することもできる。例えば、最初に関心領域の位置が設定されたフレーム3における関心領域の位置に基づいて、すべてのフレームの関心領域の位置を設定する場合であってもよく、或いは、フレーム3の関心領域の位置に基づいて、フレーム2における関心領域の位置が設定され、設定されたフレーム2における関心領域の位置に基づいて、フレーム1における関心領域の位置が設定される場合であってもよい。ここで、例えば、超音波プローブの操作ミスや、被検体が大きく動いてしまった場合を把握するためには、時系列的に連続する2つのフレーム間によって関心領域の位置を設定することが望ましい。すなわち、連続するフレーム間で、類似度が所定の閾値よりも低い場合に、超音波プローブの操作ミスや、被検体が大きく動いてしまった場合について推測することができる。
【0066】
次に、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100による処理の手順を示すフローチャート(1)である。第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、例えば、
図6に示すように、関心領域の位置が設定され、位置補正がスタートされると(ステップS101肯定)、候補位置抽出部151は、関心位置が設定されたフレームに連続するフレームのファンドメンタル画像とハーモニック画像それぞれについて、候補位置を抽出する(ステップS102)。
【0067】
そして、位置設定部152は、類似度及び画素値の分散値のうち、少なくとも一方に基づいて、ファンドメンタル画像又はハーモニック画像のどちらかの候補位置を当該フレームの関心領域の位置として設定して(ステップS103)、設定した関心領域の位置及びオフセット情報を格納する(ステップS104)。そして、候補位置抽出部151は、次のフレームがあるか否かを判定する(ステップS105)。
【0068】
ここで、次のフレームがあると判定した場合には(ステップS105肯定)、候補位置抽出部151は、ステップS102に戻って、処理を継続する。一方、次のフレームがないと判定した場合には(ステップS105否定)、候補位置抽出部151は、処理を終了する。
【0069】
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、各フレームのファンドメンタル画像とハーモニック画像とから関心領域の候補位置を抽出して、類似度などにより位置を設定する。この処理の詳細について、
図7を用いて説明する。
図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置による処理の手順を示すフローチャート(2)である。
【0070】
なお、
図7においては、ファンドメンタル画像の候補位置とハーモニック画像の候補位置との比較を類似度によって実行する場合について示す。
図7に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、位置補正がスタートされると(ステップS201)、候補位置抽出部151は、現在フレーム(Reference Frame)、関心領域オフセット=0の情報を取得する。ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、時系列データにおいて関心領域が設定されたフレームから時系列で正順及び逆順で処理を実行する。
図7においては、過去方向に若いステップ番号を振っているが、実際には、過去方向(逆順)と未来方向(正順)とが同時に実行される。
【0071】
以下、過去方向の処理から先に説明する。候補位置抽出部151は、ステップS202にて現在フレームの関心領域の位置、オフセット、サイズを取得する。そして、候補位置抽出部151は、目標フレーム(現在−1)のフレームを更新して(ステップS203)、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像それぞれについて、関心領域を含む所定の範囲内の各位置の類似度をそれぞれ算出する(ステップS204)。そして、位置設定部152は、算出された類似度のうち、最も高い類似度に対応する位置を関心領域の位置としてマッチングして、マッチングした位置を更新(関心領域の位置+オフセット)する(ステップS205)。
【0072】
そして、候補位置抽出部151は、(現在=現在−1)とすることにより、次のフレームへ対象を移す(ステップS206)。そして、現在のフレームがスタートフレーム(start Frame)であるか否かを判定する(ステップS207)。ここで、スタートフレームであると判定した場合には(ステップS207肯定)、過去方向の処理を終了する。一方、スタートフレームではないと判定した場合には(ステップS207否定)、候補位置抽出部151は、ステップS202に戻って、次のフレームに対する処理を実行する。
【0073】
次に未来方向の処理について説明する。未来方向においても、候補位置抽出部151は、ステップS202にて現在フレームの関心領域の位置、オフセット、サイズを取得する。そして、候補位置抽出部151は、目標フレーム(現在+1)のフレームを更新して(ステップS208)、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像それぞれについて、関心領域を含む所定の範囲内の各位置の類似度をそれぞれ算出する(ステップS209)。そして、位置設定部152は、算出された類似度のうち、最も高い類似度に対応する位置を関心領域の位置としてマッチングして、マッチングした位置を更新(関心領域の位置+オフセット)する(ステップS210)。
【0074】
そして、候補位置抽出部151は、(現在=現在+1)とすることにより、次のフレームへ対象を移す(ステップS211)。そして、現在のフレームがエンドフレーム(End Frame)であるか否かを判定する(ステップS212)。ここで、エンドフレームであると判定した場合には(ステップS212肯定)、未来方向の処理を終了する。一方、エンドフレームではないと判定した場合には(ステップS212否定)、候補位置抽出部151は、ステップS202に戻って、次のフレームに対する処理を実行する。
【0075】
ここまで説明した処理は、収集済みの時系列データを用いる場合について説明した。第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、リアルタイムに時系列データを収集している場合にも適用することができる。
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100による処理の手順を示すフローチャート(3)である。
【0076】
図8に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100においては、位置補正がスタートされると(ステップS301)、候補位置抽出部151は、現在フレーム(Reference Frame)、関心領域オフセット=0の情報を取得する。すなわち、候補位置抽出部151は、ステップS302にて現在フレームの関心領域の位置、オフセット、サイズを取得する(ステップS302)。そして、候補位置抽出部151は、目標フレーム(現在+1)のフレームを更新して(ステップS303)、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像それぞれについて、関心領域を含む所定の範囲内の各位置の類似度をそれぞれ算出する(ステップS304)。ここで、位置設定部152は、算出された類似度のうち、最も高い類似度が所定の閾値を下回ったか否かを判定する(ステップS305)。
【0077】
ここで、最も高い類似度が所定の閾値を下回ったと判定されなかった場合には(ステップS305否定)、位置設定部152は、最も高い類似度に対応する位置を関心領域の位置としてマッチングして、マッチングした位置を更新(関心領域の位置+オフセット)する(ステップS306)。
【0078】
そして、候補位置抽出部151は、(現在=現在+1)とすることにより、次のフレームへ対象を移す(ステップS307)。そして、現在のフレームがエンドフレーム(End Frame)であるか否かを判定する(ステップS308)。ここで、エンドフレームであると判定した場合には(ステップS308肯定)、未来方向の処理を終了する。一方、エンドフレームではないと判定した場合には(ステップS308否定)、候補位置抽出部151は、ステップS302に戻って、次のフレームに対する処理を実行する。
【0079】
ステップS305において、最も高い類似度が所定の閾値を下回ったと判定された場合には(ステップS305肯定)、位置設定部152は、モニタ2からユーザに対して警告を出すように制御し、当該フレームの関心領域の情報を使用しない旨のフラグを立てる(ステップS309)。すなわち、位置設定部152は、
図4Bに示すデータの対象となるフレームのフラグ領域にフラグを立てる。そして、候補位置抽出部151が、ステップS303に戻っての処理を実行する。なお、上述したリアルタイムの処理において、次のフレームにおける所定の範囲の決定は、例えば、患者の呼吸やECGの情報をもとに推定することができる。
【0080】
上述したように、第1の実施形態によれば、候補位置抽出部151は、造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。また、候補位置抽出部151は、時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。位置設定部152は、時系列の画像データそれぞれに対して、第1の位置における領域内の画素の特徴と、第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、第1の位置または第2の位置のどちらか一方を関心領域の位置として設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、時系列データにおいて各フレームのファンドメンタル画像とハーモニック画像とで安定して情報が得られる側の情報を用いて関心領域の位置を設定することができ、関心領域の位置を精度よく設定することを可能にする。その結果、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、高精度で位置決めされた関心領域をTCAに用いることで、定量解析の精度を向上させることを可能にする。
【0081】
また、第1の実施形態によれば、候補位置抽出部151は、時系列の画像データに含まれる所定の画像データに対して設定された関心領域内の基本波成分と、時系列の画像データにおいて設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内の基本波成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を第1の位置として抽出する。また、候補位置抽出部151は、所定の画像データに対して設定された関心領域内のハーモニック成分と、時系列の画像データにおいて設定された関心領域と同一位置の領域を網羅する領域に対して関心領域と同一の大きさで設定された複数の候補領域内のハーモニック成分との類似度をそれぞれ算出し、算出した類似度が最も高い候補領域の位置を第2の位置として抽出する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、関心領域の位置の変化を考慮した上で、細かく設定した領域ごとに類似度の算出を行うことで、より高精度に関心領域を抽出することを可能にする。
【0082】
また、第1の実施形態によれば、位置設定部152は、第1の位置における基本波成分の類似度と、第2の位置におけるハーモニック成分の類似度とのうち、類似度が高い位置を関心領域の位置として設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、より高精度の関心領域を設定することを可能にする。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、位置設定部152は、第1の位置又は第2の位置における領域内の画素値の分散値が所定の閾値を上回ったことを条件に、第1の位置又は第2の位置を前記関心領域の位置として設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、対象となる部位が領域内で明瞭に描出された領域を関心領域に設定することを可能にする。例えば、ハーモニック画像において、領域全体が真っ暗な状態、或いは、領域全体が光っている状態の場合に、類似度が高くても、上記した条件によって関心領域として設定されることを抑止することができる。
【0084】
また、第1の実施形態によれば、候補位置抽出部151は、関心領域が設定された画像データを基準として、時系列の正順及び逆順にそれぞれ前記第1の位置を抽出する。また、候補位置抽出部151は、関心領域が設定された画像データを基準として、時系列の正順及び逆順にそれぞれ第2の位置を抽出する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、時系列データにおけるどの位置で関心領域を設定する場合にも対応することができる。すなわち、観察者が最も見やすい(判断しやすい)関心領域を時系列データ内のいずれのフレームからでも自由に選択することが可能である。
【0085】
また、第1の実施形態によれば、位置設定部152は、第1の位置における基本波成分の類似度又は第2の位置におけるハーモニック成分の類似度が所定の閾値を上回ったことを条件に第1の位置又は第2の位置を関心領域の位置として設定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、イレギュラーな位置の移動を検出することができ、例えば、超音波プローブの操作ミスなどを指摘することができる。
【0086】
また、第1の実施形態によれば、モニタ2は、位置設定部152によって第1の位置における基本波成分の類似度及び第2の位置におけるハーモニック成分の類似度が所定の閾値を上回っていないと判定された場合に、操作者に対して警告を通知する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、イレギュラーなことが生じた場合に、即座に対応させることを可能にする。
【0087】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0088】
上述した第1の実施形態においては、2次元の時系列データを用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、3次元の時系列データを用いる場合であってもよい。
図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置100による3次元の時系列データを用いる場合の一例を説明するための図である。なお、
図9においては、t1の時点で収集されたボリュームデータと、t2の時点で収集されたボリュームデータとを示す。
【0089】
例えば、t1の時点でボリュームデータに関心領域R10が設定されると、第2の実施形態に係る候補位置抽出部151は、関心領域R10の位置とオフセットの情報を取得する。ここで、
図9においては、3次元データであるため、関心領域R10の中心の座標及びオフセットは(x,y,z)の三軸の情報となる。そして、候補位置抽出部151は、t2のボリュームデータのファンドメンタルデータと、ハーモニックデータとにおける関心領域R10の候補位置をそれぞれ抽出する。
【0090】
すなわち、候補位置抽出部151は、t1の関心領域R10の位置及びオフセットの情報や、呼吸、心時相の状態などに基づいて、ファンドメンタルデータにおける所定の3次元領域を設定し、それらの範囲内の複数の領域それぞれと、関心領域R10との類似度を算出する。候補位置抽出部151は、ハーモニックデータにおいても同様の処理を実行する。
【0091】
そして、第2の実施形態に係る位置設定部152は、例えば、
図9に示すように、ファンドメンタルデータ及びハーモニックデータにおける領域において、類似度の最も高い領域をt2の関心領域R10として設定する。例えば、t1〜t2に示す関心領域R10の位置の変化が、拍動に起因しており、1心拍での動きである場合には、最初の1心拍分だけ3次元で超音波画像を収集し、t2の時点における関心領域R10の位置を取得しておく。それにより、例えば、2心拍目からは、2次元の超音波画像を収集するようにした場合でも、t2の時点の心時相において、取得した関心領域R10の位置の情報から、
図9の右上の図に示すように、スキャン断面を関心領域側に変化させて収集することで、関心領域R10をはずさないように収集することできる。すなわち、
図9の下側の図に示すように、観察者は、関心領域R10の位置の変化の影響を全く感じることなく、超音波画像を観察することができる。
【0092】
上述した第1の実施形態では、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像からそれぞれ関心領域の候補位置を抽出して、類似度によって関心領域の位置をどちらかに設定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ファンドメンタル画像のみを用いて関心領域の位置を設定する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、送受信部11は、造影剤が投与された被検体を超音波走査して時系列の画像データを収集する。そして、候補位置抽出部151は、送受信部11によって収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の位置を前記時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。そして、位置設定部152は、候補位置抽出部151によって抽出された関心領域の位置を各時系列の画像データにおける関心領域の位置として設定する。これにより、ファンドメンタル画像及びハーモニック画像の両方を用いて比較する場合よりも処理を高速にすることができる。また、ファンドメンタル画像を用いていることから、従来ハーモニック画像では関心領域の指定が困難となる場合であっても、高精度で関心領域を設定することを可能にする。
【0093】
上記した第1の実施形態では、超音波診断装置100が時系列データにおける関心領域を設定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、画像処理装置が時系列データにおける関心領域を設定する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、画像処理装置は、造影剤が投与された被検体を超音波走査して収集された時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第1の位置を時系列の画像データ間の基本波成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。また、画像処理装置は、時系列の画像データそれぞれに含まれる関心領域の第2の位置を時系列の画像データ間のハーモニック成分の類似度に基づいてそれぞれ抽出する。そして、画像処理装置は、時系列の画像データそれぞれに対して、第1の位置における領域内の画素の特徴と、第2の位置における領域内の画素の特徴とに基づいて、第1の位置または前記第2の位置のどちらか一方を前記関心領域の位置として設定する。
【0094】
また、上述した第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成はあくまでも一例であり、各部の統合及び分離は適宜行うことができる。例えば、候補位置抽出部151と位置設定部152とを統合したり、候補位置抽出部151を、ファンドメンタル画像から候補位置を抽出する第1の抽出部と、ハーモニック画像から候補位置を抽出する第2の抽出部とに分離したりすることが可能である。
【0095】
また、第1の実施形態において説明した候補位置抽出部151及び位置設定部152の機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、候補位置抽出部151及び位置設定部152の機能は、上記の実施形態において候補位置抽出部151及び位置設定部152が行うものとして説明した処理の手順を規定した画像処理プログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。この画像処理プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、この画像処理プログラムは、CD−ROM(Compact Disc − Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布され得る。
【0096】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、造影エコー法による定量解析の精度を向上させることが可能となる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。