特許第6139196号(P6139196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139196有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139196
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20170522BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20170522BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170522BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   H05B33/10
   G09F9/30 365
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-53469(P2013-53469)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-179278(P2014-179278A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 哲仙
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−250370(JP,A)
【文献】 特開2007−157606(JP,A)
【文献】 特開2008−108628(JP,A)
【文献】 特開2001−284041(JP,A)
【文献】 特開2010−231979(JP,A)
【文献】 特開2008−098148(JP,A)
【文献】 米国特許第06099746(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0054867(US,A1)
【文献】 特開2013−247021(JP,A)
【文献】 特表2011−508374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/12
H05B 33/22
H05B 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、それぞれが有機発光素子を持つ複数の画素と、
前記複数の画素を覆う封止膜と、を有し、
前記封止膜は、
第1バリア層と、
前記第1バリア層の上面を覆う下地層と、
前記下地層の上面局所的に覆う有機層と、
前記下地層及び前記有機層の上面を覆う第2バリア層と、を備え、
前記中間層は、前記下地層上面の段差を被覆し、
前記第1バリア層及び前記第2バリア層は、それぞれ、シリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜を有し、
前記下地層は、シリコン酸化膜又はアモルファスシリコン膜を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記有機層は、前記下地層に対する親和性が前記第1バリア層に対する親和性よりも高い請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記第1バリア層又は前記第2バリア層よりも、前記下地層の方が薄い請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記複数の画素それぞれの前記有機発光素子は、
陽極と、
前記陽極上に形成された発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層と、
前記有機エレクトロルミネッセンス層上に形成された陰極と、を有し、
前記陽極の周囲を覆い前記陽極の上面の一部を露出させる画素分離絶縁膜が配置され、
前記画素分離絶縁膜によって前記有機層は分離されるように配置される請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記陽極に対する前記画素分離絶縁膜の接触角は、前記下地層に対する前記有機層の接触角よりも大きい請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記有機発光素子は前記基板から離れる方向に光を発光する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタによって制御される画素電極と、
前記画素電極上に配置され、発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス層と、
前記有機層上に配置された対向電極と、
を備える画素を基板上に形成した表示装置であって、
前記画素は、封止膜によって覆われ、
前記画素上の前記封止膜は、
第1バリア層と下地層と第2バリア層とがこの順で積層し、前記下地層と前記第2バリア層が接する第1領域と、
前記第1バリア層と前記下地層と有機層と前記第2バリア層とがこの順で積層した第2の領域と、
を有し、
前記第1バリア層及び前記第2バリア層は、それぞれ、シリコン窒化膜又はシリコン酸窒化膜を有し、
前記下地層は、シリコン酸化膜又はアモルファスシリコン膜を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
前記第1領域には前記有機層が配置されていない請求項7の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項9】
前記画素電極の端部が画素分離膜によって覆われ、
前記第1領域は前記画素分離膜と重なり、
前記第2領域は前記画素の発光領域と重なる請求項8の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項10】
前記画素電極に対する前記画素分離膜の接触角は、前記下地層に対する前記有機層の接触角よりも大きい請求項9の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項11】
前記画素は前記基板から離れる方向に光を発光する請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、有機エレクトロルミネッセンス発光(organic electro luminescent)素子が注目を集めており、多数の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を備える画像表示装置が開発されている。有機エレクトロルミネッセンス発光素子は、発光層を有する有機層が、陽極と陰極とで挟まれた構造を有する。
【0003】
特許文献1においては、このような有機エレクトロルミネッセンス表示装置として、有機層の上面が封止膜によって覆われた構成が開示されている。この封止膜は、平坦化材であるデカップリング層と、水分の侵入を防ぐバリア層とが積層してなる。また、デカップリング層の外縁もバリア層によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4303591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成によれば、デカップリング層の上面を覆うバリア層に、傷などが生じることにより、そこからデカップリング層に水分が浸透するおそれがある。また、デカップリング層の上面に凹凸があると、バリア層を形成する工程において、凹凸の周囲におけるバリア層の成膜が妨げられる。このため、凹凸の周囲からデカップリング層に水分が浸透するおそれがある。
【0006】
封止膜は複数の画素にわたって共通して形成されている。このため、デカップリング層に水分が浸透することにより、複数の画素にわたって水分が拡散する。そして、水分が拡散したデカップリング層は膨張してバリア層から剥離するため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の輝度の低下や、強度の低下などの問題が生じる。このため、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化及び信頼性の向上を実現することは困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化及び信頼性の向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板上に形成された複数の画素と、前記複数の画素を覆う封止膜と、を有し、前記封止膜は、第1バリア層と、前記第1バリア層の上面を覆う下地層と、前記下地層の上面に局所的に形成された中間層と、前記下地層の上面及び前記中間層の上面を覆う第2バリア層と、を備え、前記中間層は、前記下地層上面の段差を被覆するように形成されている、ことを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(1)において、複数の前記画素内に形成された前記中間層が、隣接する前記画素間において互いに分離されていてもよい。
【0010】
(3)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(1)または(2)において、前記中間層が有機物からなっていてもよい。
【0011】
(4)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(1)または(2)において、前記第1バリア層がSiからなっていてもよい。
【0012】
(5)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(1)または(2)において、前記第2バリア層がSiからなっていてもよい。
【0013】
(6)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタによって制御される画素電極と、前記画素電極上に配置された有機層と、前記有機層上に配置された対向電極と、を備える画素を基板上に形成した表示装置であって、前記画素は、封止膜によって覆われ、前記画素上の前記封止膜は、第1バリア層と下地層と第2バリア層とを積層した第1領域と、前記第1バリア層と前記下地層と中間層と前記第2バリア層とを積層した第2の領域と、を有することを特徴とする。
【0014】
(7)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(6)において、前前記画素電極の端部が画素分離膜によって覆われ、前記第1領域は前記画素の発光領域と重なり、前記第2領域の一部は前記画素分離膜上に重なることを特徴する。
【0015】
(8)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、(6)において、前記画素電極の端部が前記画素分離膜によって覆われ、前記発光領域における前記中間層の前記下地膜との接触角が、前記画素分離膜の前記画素電極に対する接触角よりも小さくてもよい。
【0016】
(9)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、複数の有機エレクトロルミネッセンス発光素子を基板上に画素毎に形成する工程と、複数の前記画素にわたって前記有機エレクトロルミネッセンス発光素子上を覆うように封止膜を形成する工程と、を有し、前記封止膜を形成する工程が、第1バリア層を形成する工程と、前記第1バリア層の上面を覆う下地層を形成する工程と、前記下地層の上面に、中間層を局所的に形成する工程と、前記下地層の上面及び前記中間層の上面を覆う、第2バリア層を形成する工程と、を備え、前記下地層の材料と前記中間層の材料との親和性が、前記第1バリア層と前記中間層の材料との親和性よりも高く、前記中間層を形成する工程において、前記下地層の上面の局所的に突出した部分と前記下地層の上面との段差を被覆する、ことを特徴とする。
【0017】
(10)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、(9)において、前記中間層を形成する工程において、前記中間層を、隣接する前記画素において互いに分離するように形成してもよい。
【0018】
(11)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、(9)または(10)において、有機物からなる前記中間層を形成してもよい。
【0019】
(12)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、(9)または(10)において、前記第1バリア層がSiからなっていてもよい。
【0020】
(13)本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法は、(9)または(10)において、前記第2バリア層がSiからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記(1)乃至(8)のいずれかによれば、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べて、中間層への水分の拡散が防がれ、中間層が剥がれる領域の拡大を防ぐことができる。また、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の高輝度化及び信頼性の向上を実現することができる。
【0022】
上記(9)乃至(13)のいずれかによれば、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べて、水分の拡散による中間の剥がれを防止可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置を形成することができるため、歩留まりが向上する。また、高輝度化で、かつ、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の概略平面図である。
図2図2図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のII−II切断線における概略断面図である。
図3図3図2に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIII領域の部分拡大図である。
図4図4図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のIV領域の部分拡大図である。
図5図5図4に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のV−V切断線における概略断面図である。
図6図6は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図である。
図7図7は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図である。
図8図8は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図である。
図9図9は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するためのフロー図である。
図10図10は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の画素部の平面図である。
図11図11図10に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置のVI−VI切断線に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、各構成要素はそれらと異なっていてもよく、その要旨を変更しない範囲で変更して実施することが可能である。
【0025】
図1は本発明の本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の概略平面図であり、図2図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1のII−II切断線における概略断面図である。
【0026】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1は、基板10と、回路層12と、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30と、封止膜40と、対向基板50と、を有している。
【0027】
基板10は、絶縁性の基板であって、その上面に後述する薄膜トランジスタ11及び有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が形成される部材である。基板10の上面10aには、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が設けられている。なお、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30は基板10の上面10aに複数設けられているが、説明の便宜上、図2においては詳細な図示を省略する。
【0028】
有機エレクトロルミネッセンス発光素子30は、例えば平面視で基板10よりも小さい外周を有する表示領域Dに設けられており、その外側の領域には、例えば図2に示すように、図示しない充填剤を堰止めるための堰DMが配置されている。基板10上の、表示領域Dに対応する領域には、図示しない制御信号線や、データ信号線や、電源線等の配線が設けられている。また、表示領域Dには、多数の画素が規則的に、例えばマトリクス状に配置されている。
【0029】
基板10の上面10aのうち、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が形成されていない領域10aには、フレキシブル回路基板2が接続され、さらに、ドライバ3が設けられている。ドライバ3は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の外部からフレキシブル回路基板2を介して画像データを供給されるドライバである。ドライバ3は画像データを供給されることにより、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30に、図示しないデータ線を介して各画素に印加する電圧信号を供給する。
【0030】
次に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の表示領域Dの構成について、その詳細を説明する。図3図2に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1のIII領域の部分拡大図である。このIII領域は、表示領域Dにおける1つの画素Pに対応する領域である。III領域の基板10上には、回路層12と、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30と、封止膜40と、充填剤45と、対向基板50とが積層されている。
【0031】
回路層12は、各画素Pに流れる電流の量を制御するための電気回路が規則的に配置される層である。回路層12は例えば、薄膜トランジスタ11と、パッシベーション膜13を有している。
【0032】
薄膜トランジスタ11は、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30を駆動するためのトランジスタであり、基板10上に画素Pごとに設けられている。薄膜トランジスタ11は、具体的には例えば、ポリシリコン半導体層11a、ゲート絶縁層11b、ゲーゲート電極11c、ソース・ドレイン電極11d、第1の絶縁膜11e及び第2の絶縁膜11fから構成されている。
【0033】
パッシベーション膜13は、薄膜トランジスタ11上を覆うように形成されている。パッシベーション膜13が薄膜トランジスタ11上に形成されていることにより、隣接する薄膜トランジスタ11間や、薄膜トランジスタ11と有機エレクトロルミネッセンス発光素子30の間が電気的に絶縁される。パッシベーション膜13には、薄膜トランジスタ11を有機エレクトロルミネッセンス発光素子30に接続するコンタクトホール32aが画素P毎に形成されている。パッシベーション膜13は、例えばSiOやSiN、アクリル、ポリイミド等の絶縁性を有する材料からなる。パッシベーション膜13の材料として、アクリルやポリイミド等の有機系のポリマー樹脂を用いることにより、パッシベーション膜13の上面を平坦化でき、有機エレクトロルミネッセンス発光素子の形成が容易になる。
【0034】
なお、回路層12の構成は、上記の構成に限られず、適宜の絶縁層と、走査信号線、映像信号線、電源線及び接地線等を有してもよい。
【0035】
パッシベーション膜13上の各画素Pに対応する領域には、反射膜31がマトリクス状に形成されていてもよい。反射膜31は、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30から発出した光を封止膜40側へ向けて反射するために設けられている。反射膜31は、光反射率が高いほど好ましく、例えばアルミニウムや銀(Ag)等からなる金属膜を用いることができる。
【0036】
パッシベーション膜13上には、例えば複数の有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が形成されている。有機エレクトロルミネッセンス発光素子30は、薄膜トランジスタによって制御される画素電極(陽極)32と、画素電極32上に配置される、少なくとも発光層を有する有機層33と、有機層33上を覆うように形成された対向電極(陰極)34と、を有することにより、発光源として機能する。本実施形態においては画素電極32を陽極とし、対向電極34を陰極として説明するが、画素電極32を陰極とし対向電極を陽極としてもよい。
【0037】
陽極32は、各画素Pに対応してマトリクス状に形成されている。また、陽極32はコンタクトホール32aを介して薄膜トランジスタ11のドレイン電極に接続している。このような構成を有することにより、陽極32は駆動用の薄膜トランジスタ11に電気的に接続され、薄膜トランジスタ11から供給される駆動電流は、陽極32を介して有機層33に注入される。
【0038】
陽極32は透光性及び導電性を有する材料からなる。陽極32の材料は、具体的には例えば、ITO(Indium Tin Oxide)であることが好ましいが、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム複合酸化物等の透光性及び導電性を有する材料であってもよい。特に、陽極32は、後述する有機層33のホール注入層と接触するため、その材料は仕事関数が大きいほど好ましい。
【0039】
なお、反射膜31が銀等の金属からなり、かつ、陽極32に接触するものであれば、反射膜31は陽極32の一部となる。
【0040】
隣接する各陽極32同士の間には、画素分離膜14が形成されている。画素分離膜14は、隣接する陽極32同士の接触と、陽極32と陰極34の間の漏れ電流を防止する機能を有する。画素分離膜14は、例えば、平面視で隣接する画素P同士の境界に沿って形成されており、これにより、陽極32の外周端部を覆っている。画素分離膜14の開口部では、陽極32と有機層33とが接触している。画素分離膜14は絶縁性を有する材料からなり、具体的には例えば、感光性の樹脂組成物からなる。
【0041】
発光層を有する有機層33は、陽極32上を覆うように形成されている。有機層33は光を発する機能を有しており、その発光は、白色でも、その他の色であってもよい。有機層33は、画素P毎に形成されていてもよく、また、表示領域Dの画素Pの配置されている領域全面を覆うように形成されていてもよい。
【0042】
有機層33は、例えば、陽極32側から順に、図示しないホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が積層されてなる。なお、有機層33の積層構造はここに挙げたものに限られず、少なくとも発光層を含むものであれば、その積層構造は特定されない。
【0043】
発光層は、例えば、正孔と電子とが再結合することによって発光する有機エレクトロルミネッセンス物質から構成されている。このような有機エレクトロルミネッセンス物質としては例えば、一般に有機発光材料として用いられているものを用いてよく、具体的には例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’―ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系等、一重項状態から発光可能な公知の蛍光性低分子材料や、希土類金属錯体系の三重項状態から発光可能な公知の燐光性低分子材料を用いることができる。
【0044】
陰極34は、有機層33上を覆うように形成されている。陰極34は、画素P毎に独立しておらず、表示領域Dの画素Pの配置されている領域全面を覆うように形成される。このような構成を有することにより、陰極34は複数の有機エレクトロルミネッセンス発光素子30の有機層33に共通に接触する。
【0045】
陰極34は透光性及び導電性を有する材料からなる。陰極34の材料は、具体的には例えば、ITOであることが好ましいが、ITOやIZO等の導電性金属酸化物に銀やマグネシウム等の金属を混入したもの、あるいは銀やマグネシウム等の金属薄膜と導電性金属酸化物を積層したものであってもよい。
【0046】
有機エレクトロルミネッセンス発光素子30上である陰極34の上面34aは、複数の画素Pにわたって封止膜40により覆われている。封止膜40は、有機層33をはじめとする各層への酸素や水分の侵入を防止することにより保護する透明の膜である。本実施形態における封止膜40は、第1バリア層40aと、下地層40bと、中間層40cと、第2バリア層40dとを有している。
【0047】
第1バリア層40aは、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30への酸素や水分の侵入を防止する機能を有する。第1バリア層40aの材料はSiN、SiON、SiOなどが挙げられるが、水分や酸素に対するバリア性を有するものであればこれらに限定されない。なお、第1バリア層40aは表示領域D内の画素Pの配置されている領域の全面を覆うように形成されている。
【0048】
第1バリア層40aの上面40aは、下地層40bによって覆われている。下地層40bは、中間層40cの材料に対する親和性を有する。下地層40bは、第1バリア層40a上の全面を覆うように形成されている。また、下地層40bの材料としては、例えばa-Si(アモルファスシリコン)、SiO、SiOを用いることができるが、中間層40cの材料に対する親液性を有するのであれば、その材料はここに挙げたものに限定されない。
【0049】
中間層40cは、下地層40bの上面40bに局所的に形成されている。中間層40cは、下地層40bの上面40bの局所的に突出した部分を被覆する機能を有する。以下、中間層40cの構成についてその詳細を説明する。
【0050】
第2バリア層40dは、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30への酸素や水分の侵入を防止する機能を有する。第2バリア層40dの材料としてはSiN、SiON、SiOなどが挙げられるが、水分や酸素へのバリア性を有するものであればこれらに限定されない。また第2バリア層40dは表示領域D内の画素Pの配置されている領域の全面を覆うように形成されている。
【0051】
図4図1に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1のIV領域の部分拡大図であり、図5図4に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1のV−V切断線における概略断面図である。図4、5は、画素Pの領域内の対向電極である陰極34上に付着したダストなどの異物41aが、封止膜40によって覆われた状態を示す断面図である。また、図5は、異物41aがバリア層40aと下地層40bに覆われたときに、局所的に突出した部分41が形成された構成の例である。なお、説明の便宜上、図4においては、後述する対向基板50と充填剤45と第2バリア層40dの記載を省略している。
【0052】
突出した部分41とは、第1バリア層40aと下地層40bの製造の工程において生じる、下地層40bの上面40bにおける凹凸のうち、製造の工程による誤差の範囲を超えた高さを有する凸部をいう。具体的には例えば、製造の工程により生じた気泡による凸部や、陰極34上や第1バリア層40a上や下地層40b上に付着したダストなどの異物41aにより生じた凸部が挙げられる。
【0053】
本実施形態においては、異物41aが陰極34上に付着した際の、本発明の作用について説明する。特に、突出した部分41を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を例として説明する。本実施形態の例における部分41は、異物41aと、第1バリア層40aのうち異物41aを覆う部分である第1バリア層被覆部40aと、下地層40bのうち第1バリア層被覆部40aを覆う部分である下地層被覆部40bと、から構成されている。
【0054】
部分41と下地膜40bの上面40bとの段差Sは、中間層40cによって被覆されている。中間層40cのうち、段差Sを被覆する部分を、第1被覆部40cとする。なお、段差Sとは、部分41のうち、最も基板10に近い箇所である下部41cと、最も基板10に遠い箇所である上部41dとの段差をいう。段差Sの高さを高さdとする。
【0055】
第1被覆部40cは、部分41のうち、少なくとも上部41dを被覆している。本実施形態における第1被覆部40cは例えば、部分41の表面全体と、下部41cから一定の範囲内の下地層40bの上面40bを被覆している。
【0056】
また、中間層40cから露出する下地層40bの上面40bから、第1被覆部40cの上面40cまでの高さを高さdとすると、段差Sが第1被覆部40cに被覆されることにより、高さdよりも高さdの方が低くなる。すなわち、下地層40bの上面40bと突出した部分41とが成す面の平坦性よりも、中間層40c(第1被覆部40c)の上面40cと中間層40cから露出する上面40bとが成す面の平坦性の方が高くなる。即ち、中間層40cは、中間層40cより下層の凹凸を平坦化させる作用を備える。このように中間層40cが形成された結果として、中間層40cの上に形成される膜は平坦化され、下層の段差や凹凸による断裂を防止できる。
【0057】
また、中間層40cは、段差Sを被覆する他に、例えば、下地層40bの上面40bのうち、角部42を被覆するように形成されていてもよい。角部42とは、画素P内の下地層40bの上面40bと、画素分離膜14上の下地層40bの上面40bとの境界を示す。角部42を被覆する中間層40cを第2被覆部40cとすると、第2被覆部40cは、上面40bにおいて、画素分離膜14の内周に沿うように形成される。
【0058】
また、複数の画素P内に形成された中間層40cは、隣接する画素P同士の間において互いに分離されていることが好ましい。具体的には例えば、画素P内の下地層40bの上面40bに、中間層40cの第1被覆部40cや、中間層40cの第2被覆部40cや、その他、島状の中間層40cが形成され、これらは隣接する画素P内に形成された他の中間層40cから分離される。
【0059】
このため、発光領域において、上面40b上に形成された個々の中間層40cの下地層の上面40bに対する接触角αは、90°よりも小さくなる。なお、本実施形態における「発光領域」とは、陽極32と有機層33が接触する領域のうち、画素分離膜14から露出する領域をいう。さらに、接触角αは、画素分離膜14の陽極32への接触角βよりも小さくなる。このように接触角αが接触角βよりも小さくなることにより、第2バリア膜が画素分離膜14と陽極32によって構成される段差が緩やかになる。なお、中間層40cは、少なくとも段差Sを被覆していればよく、その他のどの箇所に形成されていてもよい。
【0060】
中間層40cは絶縁体からなる。このような中間層40cの材料としては有機物が好ましく、具体的にはアクリルを用いることができる。また、中間層40cの材料はアクリルに限られず、その材料と下地層40bの材料との親和性が、中間層40cの材料と後述する第2バリア層40dの材料との親和性よりも高いものであれば、その材料は制限されない。中間層40c、下地層40b及び第2バリア層40dが、このような条件を満たす材料からなることにより、下地層40bの表面エネルギーは、第2バリア層40dの表面エネルギーよりも小さくなる。
【0061】
第2バリア層40dは、中間層40cなど、第2バリア層40dよりも基板10側の各層への酸素や水分の侵入を防止する機能を有する。第2バリア層40dはSiNからなり、下地層40bの上面40b及び中間層40cの上面40cを覆うように形成されている。
【0062】
封止膜40の上面は、例えば充填剤45を介して対向基板50によって覆われている。対向基板50は例えば平面視で基板10よりも小さい外周を有するガラス基板であり、基板10と対向するように配置されている。このような対向基板50としては具体的には例えば、カラーフィルタ基板を用いることができる。
【0063】
本発明における有機エレクトロルミネッセンス表示装置1は、少なくとも下地層40bの上面40bに突出した部分41と下地層40bの上面40bとの段差Sが第1被覆部40cによって被覆されている。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べ、下地層40bの上面40bと突出した部分41とが成す面の平坦性よりも、中間層40c(第1被覆部40c)の上面40cと中間層40cから露出する上面40bとが成す面の平坦性を高めることができる。
【0064】
また、中間層40cが局所的に形成されていることにより、中間層40cの一部に水分が浸透しても、その水分の拡散は、水分の侵入箇所の中間層40cが形成された局所的な領域内に収まる。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べて、中間層40cを介しての水分の拡散が防がれる。よって、中間層40cが剥がれる領域の拡大を防ぐことができる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の高輝度化及び信頼性の向上を実現することができる。
【0065】
また、中間層40cの第2被覆部40cが角部42を被覆することにより、画素P内における下地膜40bの上面40bと、画素分離膜14上における下地層40bの上面40bとの段差がなだらかになる。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べ、第2バリア層40dが画素P内外にわたって均等に被覆される。これにより、中間層40cへの水分の侵入を防ぐことができ、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の信頼性向上を実現することができる。
【0066】
また、複数の画素P内に形成された中間層40cが、隣接する画素P同士の間において互いに分離されていることにより、一部の中間層40cに水分が侵入しても、侵入箇所に隣接する画素Pまでは水分が拡散しない。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べて、隣接する画素Pまでにわたって水分が拡散することを防ぐことができる。
【0067】
また、中間層40cの材料として有機物を用いるとともに、下地層40bの材料として有機物との親和性を有する材料を用いることにより、下地膜40bの上面40bの平坦な部分よりも、部分41と下地膜40bの上面40bとの段差Sや、陽極32と画素分離膜14との境界に対応する角部42や、その他、凹凸がある部分から優先的に中間層40cが形成される。このため、中間層40cを段差Sなどの段差のある部分に局所的に形成し、画素P内の平坦な部分や画素分離膜14上の平坦な部分には中間層40cを形成しないように、その形成箇所を制御することができる。
【0068】
次いで、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の製造方法について図面を用いて説明する。図6は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図であり、封止膜40形成前の構成である。
【0069】
本実施形態における有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の製造方法は、基板10上に回路層12と、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30と、封止膜40と、対向基板50とを形成する工程を有する。
【0070】
初めに絶縁性の基板10を用意する。次いで、基板10の表示領域D上に、例えば、ポリシリコン半導体層11a、ゲート絶縁層11b、ゲーゲート電極11c、ソース・ドレイン電極11d、第1の絶縁膜11e及び第2の絶縁膜11fを積層することにより薄膜トランジスタ11を形成する。次いで、薄膜トランジスタ11を覆うように絶縁性を有する材料からなるパッシベーション膜13を形成することにより、回路層12が形成される。
【0071】
次いで、薄膜トランジスタ11に接続するコンタクトホール32aをパッシベーション膜13および第2の絶縁膜11fに形成する。この後、金属膜からなる反射膜31をパッシベーション膜13上の各画素Pに対応する領域に形成する。
【0072】
次いで、複数の有機エレクトロルミネッセンス発光素子30を、基板10上に回路層12を介して画素P毎に形成する。有機エレクトロルミネッセンス発光素子30を形成する工程は、陽極32を形成する工程と、少なくとも発光層を有する有機層33を形成する工程と、陰極34を形成する工程と、を有する。
【0073】
まず、例えばスパッタ法により、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性及び導電性を有する材料からなる陽極32を、パッシベーション膜13上(反射膜31上)の各画素Pに対応する領域に形成する。これにより、陽極32は、コンタクトホール32aを介して、薄膜トランジスタ11に電気的に接続される。なお、金属からなる反射膜31の上面に接するように陽極32を形成した場合、反射膜31は陽極32の一部となる。
【0074】
次いで、隣接する画素P同士の間の一部の領域に、フォトリソグラフィー法により、感光性の絶縁材料からなる画素分離膜14を形成する。まず、表示領域Dの一面を覆うように画素分離膜14を成膜し、その後、画素電極である陽極32の端部が露出しないように、各画素Pの陽極32の上面を露出するように開口を形成する。これにより、陽極32の外周を覆う、バンク状の画素分離膜14が形成される。
【0075】
次いで、陽極32上に、発光層を有する有機層33を形成する。有機層33は、例えば、陽極32側から順に、図示しないホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を順に積層することにより形成される。有機層33を形成する方法は、真空蒸着法、ノズルプリンティング法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法、凸版印刷法等、公知の方法であってよい。
【0076】
次いで、有機層33上を覆うように、例えばスパッタ法により、ITO等の透光性及び導電性を有する材料からなる陰極34を、表示領域Dの画素Pの配置されている領域全面を覆うように形成する。これにより、複数の画素Pに配置された有機エレクトロルミネッセンス発光素子30の有機層33に共通に接触する陰極34が形成される。
【0077】
図7は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図である。本実施形態においては、異物41aが、画素P内の陰極34の上面34aに付着した構成を例として、封止膜40を形成する工程を説明する。
【0078】
封止膜40を形成する工程は、第1バリア層40aを、複数の画素Pにわたって有機エレクトロルミネッセンス発光素子30上を覆うように形成する工程と、下地層40bを第1バリア層40aの上面40aを覆うように形成する工程と、中間層40cを下地層40bの上面40bに局所的に形成する工程と、を有する。以下に、画素Pの配置されている領域への封止膜40の形成工程を図9のフローに沿って説明するが、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が形成されていない周辺領域10aにも同時に封止膜40を形成してもよい。
【0079】
まず、表示領域Dの画素Pの配置されている領域の全面を覆うように、第1バリア層40aを例えばプラズマCVD法により形成する。第1バリア層40aを形成する方法はプラズマCVD法に限られず、スパッタリング、蒸着、昇華、CVD(化学蒸着法)、ECR−PECVD(電子サイクロトロン共鳴−プラズマ増強化学蒸着法)及びそれらの組合せなど、任意の方法を選択してよい。第1バリア層40aはSiNを材料として形成することが望ましい。第1バリア層40aとしてSiN膜を形成することにより、SiO膜よりも緻密な膜を形成することができる。このため、SiO膜からなるバリア層よりも外部からの水分の進入を防ぐことができる。
【0080】
これにより、複数の画素Pにわたって、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30上である陰極34の上面34aと、異物41aとが第1バリア層40aによって覆われる。なお、第1バリア層40aのうち、異物41aを覆う部分を第1バリア層被覆部40aとする。
【0081】
なお、異物41aと陰極34の上面34aとの接触する部分を接触面41bとすると、第1バリア層40aの材料を蒸着する際に、接触面41bの周囲の上面34aへの材料の蒸着が異物41aによって遮られる。このため、図7に示すように、接触面41bの周囲の上面34aを覆う第1バリア層40aの厚さは、その外側の第1バリア層40aの厚さよりも薄くなる。
【0082】
次いで、第1バリア層40aの上面40aを覆うように、例えばアモルファスシリコンからなる下地層40bをプラズマCVD法により形成する。下地層40bを形成する方法はプラズマCVD法に限られず、スパッタリング、蒸着、昇華、CVD(化学蒸着法)、ECR−PECVD(電子サイクロトロン共鳴−プラズマ増強化学蒸着法)及びそれらの組合せなど、任意の方法を選択してよい。また、下地層40bの材料はアモルファスシリコンに限られず、例えば、SiO,SiOでもよく、中間層40cの材料に対して親液性を有するものであれば、その他の材料であってもよい。
【0083】
これにより、第1バリア層40aの上面40aと、第1バリア層被覆部40aが下地層40bによって覆われる。そして、異物41aと、第1バリア層被覆部40aと、下地層40bのうち第1バリア層被覆部40aを覆う部分である下地層被覆部40bと、から構成される、突出した部分41が形成される。
【0084】
なお、下地層40bの材料を蒸着する際に、接触面41bの周囲の上面40aへの材料の蒸着は、異物41a及び第1バリア層被覆部40aによって遮られる。このため、接触面41bの周囲の下地層40bの厚さは、その外側の下地層40bの厚さよりも薄くなる。
【0085】
なお、突出した部分41は、上記の構成に限られず、第1バリア層40aと下地層40bの製造の工程において生じる、下地層40bの上面40bにおける凹凸のうち、製造の工程による誤差の範囲を超えた高さを有する凸部であればよい。例えば、製造の工程により生じた、気泡による凸部や、第1バリア層40a上や下地層40b上に付着したダストなどの異物41aにより生じた凸部が挙げられる。
【0086】
図8は本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の製造方法を説明するための、V−V切断線に対応する概略断面図である。次いで、下地層40bの上面40bに、絶縁体からなる中間層40cを局所的に形成する。この中間層40cの形成工程においては、中間層40cを下地層40bの全面に渡って覆わずに、中間層40cが段差Sや、角部42に形成された時点で成膜を停止する。
【0087】
中間層40cの材料としては有機物が好ましく、具体的にはアクリルを用いることが特に好ましい。なお、中間層40cの材料はアクリルに限られず、その材料と下地層40bの材料との親和性が、中間層40cの材料と後述する第2バリア層40dの材料との親和性よりも高いものであれば、その種類は制限されない。また、この材料は、中間層40cの形成時に、優先的に段差Sや、角部42に付着する材料であることが望ましい。
【0088】
このような条件を満たす材料からなる中間層40cを形成することにより、中間層40cは、少なくとも、部分41と下地層40bの上面40bとの段差Sを被覆するように形成される。中間層40cのうち、段差Sを被覆する部分を、第1被覆部40cとする。
【0089】
中間層40cを形成することにより、部分41のうち、少なくとも上部41dが第1被覆部40cにより被覆される。本実施形態における第1被覆部40cは例えば、部分41の表面全体と、部分41の周囲の下地層40bの上面40bを被覆する。
【0090】
また、中間層40cから露出する下地層40bの上面40bから、第1被覆部40cの上面40cまでの高さを高さdとすると、段差Sを第1被覆部40cにより被覆することで、高さdよりも高さdの方が低くなる。すなわち、下地層40bの上面40bと突出した部分41とが成す面よりも、中間層40c(第1被覆部40c)の上面40cと中間層40cから露出する上面40bとで成す面の方が、平坦になる。
【0091】
また、中間層40cは、段差Sを被覆する他に、例えば、下地層40bの上面40bのうち、角部42を被覆するように形成されてもよい。角部42とは、画素P内の下地層40bの上面40bと、画素分離膜14上の下地層40bの上面40bとの境界を示す。角部42を被覆する中間層40cを第2被覆部40cとすると、第2被覆部40cは、上面40bにおいて、画素分離膜14の開口の内周に沿うように形成される。
【0092】
このように、突出した部分41を、中間層40cの第2被覆部40cで被覆することにより、下地層40bの上面40bと突出した部分41とが成す面よりも、中間層40cの上面40cと中間層40cから露出する上面40bとで成す面の方が平坦となる。
【0093】
また、中間層40cは、隣接する画素P同士の間において互いに分離されることが好ましい。具体的には例えば、画素P内の下地層40bの上面40bに、第1被覆部40cや、第2被覆部40cや、その他、島状の中間層40cが形成され、これらは隣接する画素P内に形成された他の中間層40cから分離される。
【0094】
また、上面40b上に形成された個々の中間層40cの上面40bに対する接触角αは、90°よりも小さくなる。なお、中間層40cは少なくとも段差Sを被覆していればよく、その他のどの箇所に形成されていてもよい。
【0095】
次いで、下地層40bの上面40b及び中間層40cの上面40cを覆うように、第2バリア層40dを、例えばプラズマCVD法により形成する。第2バリア層40dを形成する方法はプラズマCVD法に限られず、任意の方法を選択してよい。第2バリア層40dも、第1バリア層40aと同様に、SiNで形成されることが望ましい。SiN膜はSiO膜よりも緻密な膜に形成でき、外部からの水分の進入を防ぐことができる。以上により、封止膜40が形成される。
【0096】
このように、周辺領域10aに封止膜40を形成することにより、周辺領域10aに形成された図示しない配線を保護することができる。また、基板10の全面に封止膜40を形成する場合は、封止膜40を形成した後、ドライバ3との接続端子及びフレキシブル回路基板2との接続端子上の封止膜40を除去することにより、封止膜40が除去された領域に接続端子を形成することができる。
【0097】
次いで、封止膜40上に充填剤45を介して対向基板50を配置することにより、図5に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1が形成される。本実施形態においては、画素P内の下地層40bの上面40bに突出した部分41が形成された構成を例として説明したが、本来であれば、画素P内に突出した部分41は異物によるものであり、無いことが望ましい。異物の付着がない場合は、中間層40cは画素P内の領域において、図3に示すように、角部42に沿うように形成され、その上面を平坦化する。
【0098】
本発明における有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の製造方法は、下地層40b上に中間層40cを形成することにより、下地層40bの上面40bに突出した部分41と下地層40bの上面40bとの段差Sが第1被覆部40cによって被覆される。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べ、下地層40bの上面40bと突出した部分41とが成す面の平坦性よりも、中間層40c(第1被覆部40c)の上面40cと中間層40cから露出する上面40bとが成す面の平坦性を高くすることができる。
【0099】
また、中間層40cを局所的に形成することにより、中間層40cの一部に水分が浸透しても、その水分の拡散は、水分の侵入箇所の中間層40cが形成された局所的な領域内に収まる。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べて、中間層40cへの水分の拡散と剥がれの防止が可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を製造することができる。これにより、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の高輝度化及び信頼性の向上を実現することができる。また、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の歩留まりを向上することができる。
【0100】
また、中間層40cの第2被覆部40cを角部42に沿うように形成することにより、画素分離膜14の傾斜面における第1バリア層40aの上面の傾斜が成す角度βよりも、画素分離膜14の傾斜面における第2バリア層40dの上面の傾斜が成す角度αよりも緩やかになる。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べ、第2バリア層40dが画素Pの内外にわたって均等に被覆され、段差による第2バリア層40dの断裂が防止できる。これにより、中間層40cへの水分の侵入を防ぐことができ、信頼性向上を実現可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を形成することができる。
【0101】
また、中間層40cを、隣接する画素P同士の間において互いに分離して形成することにより、一部の中間層40cに侵入した水分が、侵入箇所に隣接する画素Pまで拡散することが防がれる。このため、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べて、隣接する画素Pまでにわたって水分が拡散することを防止可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を製造することができる。
【0102】
また、有機物からなる中間層40cを形成することにより、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法と比べ、下地層40bと中間層40cの材料の親和性が高くなる。このため、中間層40cを中間層40b上の全面に形成する必要がない。このため、中間層40cを局所的に形成しやすくなり、水分の拡散をより防ぐことができる。
【0103】
図10は本発明の一実施形態に係る表示装置である有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の画素Pの平面図であり、図11図10のVI−VI切断線に対応する概略断面図である。なお、図11においては、説明の便宜上、パッシベーション膜13から封止膜40までの構成のみを示す。
【0104】
図10及び図11において、薄膜トランジスタ11と、薄膜トランジスタ11によって制御される画素電極(陽極)32と、陽極32上に配置された有機層33と、有機層33上に配置された対向電極(陰極)34とを備える画素を基板上に形成した表示装置である点では上述の図3で説明した構成と同じであるため説明を省略する。
【0105】
画素電極32毎に形成された画素Pは、共通の封止膜40によって覆われている。画素P上の封止膜40は、第1バリア層40aと下地層40bと第2バリア層40dとが積層された領域である第1領域PA1と、第1バリア層40aと下地層40bと中間層40cと第2バリア層40dとが積層された領域である第2領域AP2とを有する。
【0106】
第1領域PA1は画素Pの発光領域と重なっている。第1領域PA1においては下地層40b上に第2バリア層40dが直接積層されているため、本構成を有さない表示装置と比べ、第2バリア層40dが下地層40bに強く接着される。このため、第2バリア層40dの下地層40bからの剥がれを防止できる。なお、第2領域PA2は、画素Pの発光領域の一部から絶縁膜である画素分離膜14に重る領域にかけて位置している。
【0107】
図10に示すように、第1領域PA1は平面視で第2領域PA2によって囲まれており、発光領域(陽極32と陰極34に接触するように挟まれている有機層33の領域)の中央部には中間層40cが形成されない。このため、発光領域全体に中間層40cが形成される従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に比べ、発光領域における中間層40cの形成される領域が少なくなる。これにより、有機層33から出射される光の減衰を抑制でき、有機エレクトロルミネッセンス表示装置1の輝度の向上を実現することができる。
【0108】
本発明によれば第1バリア層40a上に中間層40cと親和性を有する下地層40bを設けることにより、中間層40cが局所的に形成される。このため、中間層40cは、平坦な領域よりも、段差Sや角部42に優先的に形成されるため、段差Sや角部42にのみ選択的に中間層40cを形成することができる。
【0109】
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス表示装置1によれば、本構成を有さない有機エレクトロルミネッセンス表示装置と比べて、封止膜40の接着性や封止性能が良好となる。このため、封止膜40の剥がれを抑制でき、さらに、画像の視認性の及び光の取出し効率の良好な有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を提供できる。
【実施例】
【0110】
以下に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置1及びその製造方法を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
まず、絶縁性の基板10上に回路層12を形成した。次いで、陽極32と、画素分離膜14と、少なくとも発光層を有する有機層33と、陰極34と、を形成した。これにより、図6に示すように、有機エレクトロルミネッセンス発光素子30が画素P毎に形成された。
【0112】
次いで、SiH、NH、Nガスを材料として用いたプラズマCVD法により、500nmの膜厚のSiNからなる第1バリア層40aを、図7に示すように有機エレクトロルミネッセンス発光素子30上(陰極34上)に形成した。この第1バリア層40aの成膜における基板温度は100℃以下とした。
【0113】
次いで、SiHガスを材料として用いたプラズマCVD法により、2nmの膜厚のアモルファスシリコンからなる下地層40bを、第1バリア層40aの上面40aを覆うように形成した。この下地層40bの成膜における基板温度は100℃以下とした。
【0114】
次いで、下地層40bの上面40bにアクリルを塗布した。これにより、アクリルは局所的に突出した部分41と角部42にのみ局所的に被覆された。その後、UV照射によってアクリルを重合させ、図8に示す中間層40cを形成した。
【0115】
次いで、SiH、NH、Nガスを材料として用いたプラズマCVD法により、500nmの膜厚のSiNからなる第2バリア層40dを、下地層40bの上面40b及び中間層40cの上面40cを覆うように形成した。この第2バリア層40dの成膜における基板温度は100℃以下とした。以上により封止膜40が形成された。
【0116】
次いで、6μm厚のシール材BMと充填剤45を塗布した対向基板50を封止膜40上に貼りあわせることにより、図5に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置1が形成された。
【0117】
本実施例により得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を、温度85℃、湿度85%の雰囲気下に晒す試験を行なったところ、封止膜40への水分の侵入による、発光領域における未発光部分(ダークスポット)が拡大した痕跡や、封止膜40の膜浮は観察されなかった。これにより、封止膜40への水分の侵入箇所からの水分拡散が抑えられたことが確認された。
【0118】
(比較例1)
下地層40bを形成せずに、中間層40cを、第1バリア層40aの上面40aを覆うように形成した。これにより中間層40cは、上面40aのうち、画素Pの配置されている領域全面を覆うように形成された。その後、上記実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス表示装置を形成した。
【0119】
本実施例により得られた有機エレクトロルミネッセンス表示装置1を、温度85℃、湿度85%の雰囲気下に晒す試験を行なったところ、封止膜40への水分の侵入による、発光領域における未発光部分(ダークスポット)が拡大した痕跡と、封止膜40の膜浮が観察された。これにより、封止膜40への水分の侵入箇所からの水分拡散が生じたことが確認された。
【符号の説明】
【0120】
1 有機エレクトロルミネッセンス表示装置、 2 フレキシブル回路基板、 3 駆動ドライバ、 10 基板、 11 薄膜トランジスタ、 12 回路層、 13 パッシベーション膜、 14 画素分離膜、 30 有機エレクトロルミネッセンス発光素子、 32 陽極、 32a コンタクトホール、 33 有機層、 34 陰極、 40 封止膜、 40a 第1バリア層、 40a 上面、 40a 第1バリア層被覆部、 40b 下地層、 40b 上面、 40b 下地層被覆部、 40c 中間層、 40c 上面、 40c 第1被覆部、 40c 第2被覆部、 40d 第2バリア層、 41 部分、 41a 異物、 41b 接触面、 41c、41d 部分、 42 角部、 45 充填剤、 50 対向基板、 D 表示領域、 d、d 高さ、 P 画素、 S 段差、 α 接触角。
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図6
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図10
図11