【実施例1】
【0011】
以下、本発明を適用した車体前部構造の実施例1について説明する。
実施例1の車両前部構造は、例えば乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、実施例1の車両前部構造を車幅方向中央部で切って見た断面図である。
車体前部構造は、ラジエータパネルロワ10、バンパビーム20、バンパフェイス100、衝撃吸収(EA)ブラケット200等を備えて構成されている。
【0012】
ラジエータパネルロワ10は、車体前部における下部に設けられ、車幅方向にほぼ沿って延びた梁状の部材である。
ラジエータパネルロワ10は、図示しないラジエータコア、エアコンディショナのコンデンサの下端部を保持するものである。
ラジエータパネルロワ10は、例えば鋼板をプレス成型した複数のパネルを集成し、スポット溶接して構成されており、閉断面を有し、バンパフェイス100、EAブラケット200に対して比較的強固に形成されている。
ラジエータパネルロワ10は、ホワイトボディ(未艤装車体)の一部を構成している。
【0013】
バンパビーム20は、図示しない車体のフロントサイドフレームの前側に設けられ、車幅方向にほぼ沿って延びた梁状の部材である。
バンパビーム20は、ラジエータパネルロワ10よりも高くかつ車両前方側へ突き出した位置に配置されている。
バンパビーム20は、正面衝突時に衝突対象物からの荷重を受けて車体後方側へ伝達する部材である。
バンパビーム20は、例えば、鋼板をロール成形するなどして形成され、閉断面形状となっている。
バンパビーム20の前方側には、EAフォーム21が取り付けられている。
【0014】
バンパフェイス100は、車両の前端部において車外に露出して配置された外装部品であって、例えばPP等の樹脂系材料によって一体に形成されている。
バンパフェイス100は、バンパビーム20の前方側に配置された本体部110、及び、本体部110の下方に配置されたエアダム部120等を備えて構成されている。
本体部110とエアダム部120との間には、ラジエータコア等に走行風を導入するための開口Oが設けられている。
本体部110の上方には、グリル130が設けられ、グリル130の上端部は、フードHの前端部と隣接して配置されている。
エアダム部120は、車幅方向から見た横断面形状が、車両前方側が凸となるように湾曲して形成されている。
【0015】
EAブラケット200は、エアダム部120の後方側でありかつラジエータパネルロワ10の前方側に配置され、衝突時に変形することによってエアダム部120から入力されるエネルギを吸収するとともに、荷重をラジエータパネルロワ10に伝達するものである。
EAブラケット200の前端部は、エアダム部120の内部に車両後方側から挿入されている。
EAブラケット200の後端部は、ラジエータパネルロワ10に固定されている。
【0016】
図2は、EAブラケット200の模式的外観斜視図であって、斜め前方かつ斜め上方から見た図である。
図3は、
図2のIII−III部矢視断面図(車幅方向両端部)である。
図4は、
図2のIV−IV部矢視断面図(車幅方向中央部)である。
EAブラケット200は、本体部210、基部220、連結部230等を、例えばPP等の樹脂系材料をインジェクション成形することによって一体に形成したものである。
【0017】
本体部210は、EAブラケット200の前端部から前後方向における中間部までを構成する部分である。
図3、
図4に示すように、本体部210は、第1車幅方向リブ211、第2車幅方向リブ212、第3車幅方向リブ213、第4車幅方向リブ214、第5車幅方向リブ215、前後方向リブ216、天面部217、突出部218等を有して構成されている。
【0018】
第1車幅方向リブ211〜第5車幅方向リブ215は、バンパフェイス100のエアダム部120の後面部に対向して配置されるとともに、車幅方向にほぼ沿って延在している。
第1車幅方向リブ211〜第5車幅方向リブ215は、車両前方側から間隔を隔てて順次配列されている。
第1車幅方向リブ211〜第5車幅方向リブ215は、天面部217の下面部から下方に突き出して形成されている。
【0019】
前後方向リブ216は、第1車幅方向リブ211の後面部から第5車幅方向リブ215の前面部にかけて、車両の前後方向に延びて配置されている。
前後方向リブ216は、車幅方向に離間して複数設けられ、第2前後方向リブ212〜第4前後方向リブ214と格子状に交差して配置されている。
前後方向リブ216は、天面部217の下面部から下方に突き出して形成されている。
【0020】
天面部217は、本体部210の上面部を構成する部分であって、水平方向にほぼ沿って延びた平板状に形成されている。
天面部217の前端部は、第1車幅方向リブ211の上端部と接続されている。
天面部217の後端部は、第5車幅方向リブ215の上端部と接続されている。
【0021】
突出部218は、第1車幅方向リブ211の他の部分に対して、車両前方側に突出した部分である。
突出部218は、
図2に示すように、EAブラケット200における車幅方向の両端部に設けられている。
突出部218の前端部は、EAブラケット200の最前端部に配置されている。
【0022】
基部220は、EAブラケット200の後端部に設けられラジエータパネルロワ10に締結される部分である。
基部220は、本体部210に対して実質的に車両後方側の同じ高さに設けられ、例えばボックス状に形成されている。
基部220の後端部からは、ラジエータパネルロワ10への締結に用いられるブラケット220aが突出している。
ブラケット220aは、本体部210の天面部217と実質的に同じ高さに配置されている。
【0023】
また、基部220の車幅方向両端部には、上方へ突出した突出部221が形成されている。
基部220は、
図3に示す車幅方向両端部においては、突出部221の上端部をラジエータパネルロワ10に締結されている。
また、基部220の車両後方側(背面側)に設けられるリブ222は、上下方向から見た形状が車両前方側が凸となるアーチ状に形成され、衝突時に車体側に設けられる他部品と干渉することを防止している。
【0024】
連結部230は、本体部210の後端部と基部220の前端部とを連結する部分である。
連結部230は、車幅方向を長手方向(長辺方向)とし、車両前後方向を幅方向(短辺方向)とする帯状の領域である。
連結部230は、車幅方向(水平方向)に対する傾斜角が順次反転するように配列された複数の平面部を車幅方向に接続することによって、波板状(車両前方から見てジグザグ状)に形成されている。
連結部230の前端部は、第5車幅方向リブ215の後面部から突出し、後端部は、基部220の前面部から突出している。
連結部230の上端部及び下端部の高さ方向における位置は、第1車幅方向リブ211〜第5車幅方向リブ215の上端部と下端部との間の範囲内に設定されている。
【0025】
以上説明した車体前部構造において、例えば歩行者脚部を模したインパクタI(
図2参照)との衝突時には、インパクタIは、EAブラケット200の前端部のうち、突出部218以外の領域に衝突する可能性が高い。
この場合、
図4に示すように、EAブラケット200の本体部210から連結部230、基部220、ラジエータパネルロワ10へと、入力Fの入力方向(実質的に水平方向)にほぼ沿ってストレートに荷重が伝達される。
このため、連結部230は、荷重を各平面部の延在方向に沿って軸として受けるモードとなるため、座屈変形は生じにくくなっている。
このため、EAブラケット200は、歩行者脚部を跳ね上げて歩行者をフードHの上に転ばせるのに十分な荷重を発生させ、歩行者保護性能を向上することができる。
【0026】
一方、例えば壁面や他車両を模した平面壁状のバリアBと衝突する場合、EAブラケット200は、車両前方側に突出した突出部218のみによって入力Fを受けることになる。
この場合、EAブラケット200の突出部218と、基部220の突出部221の上端部に設けられた車体側取付箇所との高さ方向における差に起因して、EAブラケット200には、
図3に示すように先端部を下垂させる方向に回動させようとするモーメントMが発生する。
【0027】
このモーメントMを受けた場合、波板状に形成された連結部230は、他の部分よりも屈曲変形が生じやすい弱部として機能し、EAブラケット200の本体部は、連結部230回りに先端部が降下する方向に回動する。
このように変形した後のEAブラケット200を、
図3及び
図4に破線で示す。
図4に示す車幅方向中央部においては、バリアBは第1車幅方向リブ211等には(実際には図示しないエアダム部120を介して)、実質的に当接していないことがわかる。
なお、歩行者脚部が突出部218に衝突した場合にも、EAブラケット200はこのような下折れモードの変形を示す。
【0028】
以上説明した実施例1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)歩行者脚部が突出部218以外の領域に衝突した場合には、荷重を入力方向に沿ってストレートに伝達することで、歩行者脚部を跳ね上げて歩行者をフード上に転ばせるために十分な荷重を発生させ、歩行者保護性能を向上することができる。
一方、壁面等との軽衝突時においては、入力は突出部218で受けることになり、ラジエータパネルロワ10との結合箇所が突出部218よりも高い位置に配置されていることから、EAブラケット200には先端部を下垂させる方向に回動するモーメントMが発生する。
このモーメントMによってEAブラケット200を回動させ屈曲変形させることによって、ラジエータパネルロワ10に伝達される荷重を所定の許容値以下に軽減し、車体の損傷を抑制することができる。
(2)歩行者脚部との衝突時には、波板状の面部を有する連結部230が軸方向の圧縮荷重を受けることによって、歩行者保護に必要な高い荷重を発生させることができる。
一方、軽衝突時には、EAブラケット200に曲げモーメントMが発生した際に、波板状の面部が屈曲変形を誘発する弱部として機能するため、EAブラケット200を確実に屈曲させてラジエータパネルロワ10に入力される荷重を軽減することができる。
【実施例2】
【0029】
次に、本発明を適用した車体前部構造の実施例2について説明する。
なお、上述した実施例1と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
実施例2の車体前部構造は、実施例1の車体前部構造のエネルギ吸収ブラケット200に代えて、以下説明するエネルギ吸収ブラケット(EAブラケット)200Aを備えている。
【0030】
図5は、実施例2のEAブラケットを車幅方向中央部で切って見た断面図であって、実施例1における
図4に相当する断面を示している。
実施例2のEAブラケット200Aは、第1前後方向リブ211と第2前後方向リブ212との間には、天面部217を設けず、第1前後方向リブ211の下端部と第2前後方向リブ212の下端部との間に、底面部219を設けたものである。
底面部219の前後方向における中央部には、下方に凸となる屈曲部219aが形成されている。
底面部219は、屈曲部219aの前方では車両前方が上がり、屈曲部219aの後方では車両後方が上がる斜面として形成されている。
【0031】
以上説明した実施例2においては、歩行者脚部との衝突時に第1前後方向リブ211の前面部に荷重を受けると、
図5に破線で示すように底面部219が座屈変形し、EAブラケット200Aの下方に張り出すようになる。
このため、歩行者脚部からの荷重を上下方向における広い範囲で受けることが可能となり、荷重を分散して歩行者脚部の傷害を抑制することができる。
特に、荷重を受ける範囲を下方に拡大することによって、歩行者をフード上へ転ばせて傷害を抑制する効果を高めることができる。
【0032】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
例えば、衝撃吸収ブラケットを構成する各部の形状、構造、材質、製法、個数、配置等は、適宜変更することができる。