(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139203
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20170522BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20170522BHJP
H02K 37/14 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
H02K3/46 C
H02K3/52 E
H02K37/14 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-62761(P2013-62761)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-187851(P2014-187851A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】金原 修平
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−074054(JP,U)
【文献】
特開昭62−051175(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0261697(US,A1)
【文献】
特開平04−049826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 3/52
H02K 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き線が巻回され、内周に前記巻き線の保護壁を有する筒状の一対のインシュレータと、
前記一対のインシュレータが一端側及び他端側に嵌装されるステータと、
前記インシュレータの一端側の形状とほぼ同形で、前記一対のインシュレータにおける一方のインシュレータの一端側に有する筒状体の内側で重ねられて配置され、前記ステータの外周の一部の外側に隣接されて配置されるコネクタハウジングを一体に有する配線部材と、を備え、
前記コネクタハウジングは、前記配線部材の裏側に突出されており、
前記一対のインシュレータは、前記保護壁に複数の第1係止部が形成され、
前記配線部材は、前記インシュレータの内面に対向して延在され前記第1係止部に対応して設けられる第2係止部が形成され、
前記配線部材は、前記第1係止部と前記第2係止部の相互の係止によって、前記インシュレータに対し径方向および軸方向の移動が規制されて配置されることを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記配線部材の外周の一部に切欠きが設けられ、
前記切欠きを通して、前記配線部材の前記インシュレータと反対側の表面に引き出された前記インシュレータに巻回された前記巻き線の一端である引き出し線は、前記配線部材の表側に突出するように設けられたコネクタピンに電気的に接続されることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記配線部材の表面に、前記巻き線の一端の引き回し方向を規制する配線中継部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステッピングモータに係り、特に、巻き線とコネクタとの間の配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、たとえば、ステータの突極に巻回されたコイルをインシュレータの上部に配置したプリント配線基板に接続し、該配線基板に搭載させたコネクタ端子を介して電源を該コイルに供給するように構成したものが知られている(特許文献1参照)。
また、他の構成として、インシュレータにコネクタハウジングを一体あるいは別体として構成し、渡り線を介して該コネクタハウジングのコネクタ端子にコイルを電気的に接続させた構成のものが知られている(特許文献2参照)。
さらに、他の構成として、ステータコアに装着されるインシュレータの磁極の根元部のつばの長さを磁極の先端部のつばの長さよりも長くし、磁極の根元部のつばの内周に楔形突起を設け、プリント基板を該楔形突起と磁極の先端部のつばの端面とで支持する構成のものが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−32762号公報
【特許文献2】特開2001−145325号公報
【特許文献3】特開平9−327165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のステッピングモータは、それに用いられるプリント配線基板が高価であるという不都合を有していた。
また、特許文献2に記載のステッピングモータは、それに用いられるインシュレータがその上下で別の形状となり、その形成が高価であるという不都合を有していた。
さらに、特許文献3に記載のステッピングモータは、インシュレータの磁極の根元部のつばの内周部に係止構造を設けることによって、巻き線の巻回時に邪魔になり、さらに、該係止構造が充分なものでなく、配線部材が外れやすく、断線の原因になる不都合を有していた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、インシュレータの巻き線の巻回時に邪魔になることはなく、該インシュレータにガタなく強固に取り付けられる配線部材を備えた安価なステッピングモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のステッピングモータは、巻き線が巻回され、内周に前記巻き線の保護壁を有する筒状のインシュレータと、前記インシュレータを嵌装するステータと、前記インシュレータの一端側の形状とほぼ同形で前記一端側に重ねられて配置され、前記ステータの外周の一部に隣接されて配置されるコネクタハウジングを一体に有する配線部材と、を備え、前記インシュレータは、前記保護壁に複数の第1係止部が形成され、前記配線部材は、前記インシュレータの内面に対向して延在され前記第1係止部に対応して設けられる第2係止部が形成され、前記配線部材は、前記第1係止部と前記第2係止部の相互の係止によって、前記インシュレータに対し径方向および軸方向の移動が規制されて配置されることを特徴とする。
(2)本発明のステッピングモータは、(1)の構成において、前記配線部材の外周の一部に切欠きが設けられ、前記切欠きを通して、前記インシュレータに巻回された前記巻き線の一端を前記配線部材の前記インシュレータと反対側の表面に引き出し前記配線部材に設けられたコネクタピンに導くようにしたことを特徴とする。
(3)本発明のステッピングモータは、(1)又は(2)の構成において、前記配線部材の表面に、前記巻き線の一端の引き回し方向を規制する配線中継部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように構成されたステッピングモータは、インシュレータの巻き線の巻回時に邪魔になることはなく、該インシュレータにガタなく強固に取り付けられる配線部材を備えた安価なものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のステッピングモータを示す構成図である(回転軸を有するロータは省略)。
【
図2】本発明のステッピングモータに具備されるインシュレータを示す斜視図である。
【
図3】本発明のステッピングモータに具備される配線部材を示す斜視図である。
【
図5】本発明のステッピングモータのコネクタピンの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1は、本発明のステッピングモータを示す構成図で、回転軸を有するロータを省略した図となっている。
すなわち、
図1では、ロータの周辺を囲んで配置されるステータ20があり、このステータ20の上下からインシュレータ10が嵌装され、インシュレータ10の巻回部に巻き線が巻回されるようになっている。インシュレータ10に巻き線が巻回されたステータ20は、ロータの周囲に配置されるようになっている。
【0010】
また、インシュレータ10の一端側には、該一端側の形状と一部同形の配線部材30が、インシュレータ10の該一端側に重ねて配置されている。配線部材30は、ステータ20の外周の一部に隣接して配置されるコネクタハウジング40が一体に形成されている。
配線部材30は、インシュレータ10に巻回された巻き線が該インシュレータ10と反対側の表面に引き出し線50として引き出され、配線部材のコネクタハウジング40に設けられたコネクタピン41に電気的に接続されるようになっている。コネクタハウジング40は、インシュレータ10の巻き線に電源を供給する給電コネクタ(図示せず)が嵌合されるようになっている。
【0011】
以下、インシュレータ10、配線部材30について、さらに詳細に説明する。
図2は、インシュレータ10を示す斜視図である。
図2に示すように、多角形(図ではたとえば8角形)をなす筒状体11の内周側の面に、周方向に沿って等間隔に複数(図ではたとえば8個)の突状板12が形成され、この突状板12の表面には該突状板12の外周からはみ出た辺を有する保護壁13が設けられている。
【0012】
筒状体11と保護壁13の間の各突状板12には巻き線(図示せず)が巻回され、該巻き線は保護壁13によって突状板12から巻きこぼれるのを防止するようになっている。
各保護壁13は、筒状体11と同軸の円上に配置され、該保護壁13によって囲まれる空間部には、回転軸を有するロータ(図示せず)が配置されるようになっている。
【0013】
また、各保護壁13のうち、たとえば互いに対向する一対の保護壁13の一端側(インシュレータ10の中心軸に沿った一端側)に、それぞれ爪部(この明細書で第1係止部と称する場合がある)15が設けられている。爪部15は、保護壁13とたとえば一体に形成され、インシュレータ10の中心軸に沿った該一端側から他端側にかけて高さが高くなる傾斜15Aを有する突起部として形成されている。この爪部15は、後述する配線部材30の爪受け部(
図3において符号38で示す)と係止される係止部として機能するようになっている。
図3(a)、(b)は、配線部材30を示す斜視図である。
図3(a)は配線部材30を表側から観た斜視図、
図3(b)は配線部材30を裏側から観た斜視図である。
【0014】
図3(a)、(b)に示すように、配線部材30は、その中央に円形の孔31が設けられている。この孔31の径は、インシュレータ10の保護壁13の内周面によって形成される円の径とほぼ等しくなっている。
配線部材30の外周の一部は径方向に延在する延在部30Aを有し、この延在部30Aには該配線部材30と一体にコネクタハウジング40が形成されている。コネクタハウジング40は、配線部材30の裏側に突出して設けられた箱状をなし、この箱内には複数(図ではたとえば4個)のコネクタピン41が植設されている。このコネクタピン41は、
図3(a)から明らかなように、配線部材30の表側に突出されるようになっている。
配線部材30の外周には切欠き33が設けられ、該切欠き33を通して、インシュレータ10に巻回される巻き線の一端(引き出し線50)が配線部材30の表側に引き出されるようになっている(
図1参照)。
【0015】
また、配線部材30の表側には、孔31の周辺のうちコネクタハウジング40側の一部に円周突起35が設けられ、さらに、この円周突起35と突出されたコネクタピン41との間に突起棒からなる配線中継部36が設けられている。円周突起35は、配線部材30の表側に引き回される巻き線の一端(引き出し線50)が孔31の領域内に配置されるのを妨げ、配線中継部36は、巻き線の一端(引き出し線50)をコネクタピン41に電気的な接続を図る場合において、その方向転換が図れるようになっている(
図1参照)。
【0016】
そして、配線部材30の孔31の周辺であって、インシュレータ10に設けた前記爪部15に対応する位置に、爪受け部(この明細書で第2係止部と称する場合がある)38が設けられている。爪受け部38は、孔31の側面から配線部材30の裏面を超えて該孔31の中心軸の方向に沿って延在する板材38Aの表面(孔の中心軸側の面)に凹陥部38Bを形成することによって設けられている。
【0017】
図4は、
図1のIV−IV線における断面を示す図である。
図4に示すように、配線部材30は、図中A方向から該インシュレータ10の一端側に重ねるようにして該インシュレータ10に配置されるようになる。この場合、
図4から明らかとなるように、インシュレータ10の保護壁13に形成された爪部15は、配線部材30に形成された爪受け部38の凹陥部38Bに嵌め込まれ、該爪受け部38に係合されるようになる。
【0018】
この場合、爪部15の幅と爪受け部38の凹陥部38Bの幅はほぼ等しく形成され、これにより、配線部材30は、孔31の中心軸の周りの移動が規制され、配線部材30の径方向(孔の径方向)および軸方向への移動が規制されるようになる。このため、配線部材30のインシュレータ10に対する移動による巻き線の引き出し線50(
図1参照)の断線を起こり難くできる。
また、上述のように構成された配線部材30は、たとえばプリント配線基板と比較した場合に、簡単かつ低コストで構成することができる。
【0019】
なお、
図4では、ステータ20の他端側においても、インシュレータ10’が嵌装され、このインシュレータ10’は、上述したインシュレータ10と同様に構成となっており、爪部15を備えた構成となっている。インシュレータ10’をこのように構成することによって、必要に応じて前記配線部材30を該インシュレータ10’の側に取り付けることができる。
【0020】
(実施形態2)
実施形態1では、インシュレータ10に形成された爪部15は2個とし、これに対応して配線部材30に形成された爪受け部38も2個としたものである。しかし、この数に限定されることはなく、3個あるいは3個以上であってもよいことはいうまでもない。
【0021】
(実施形態3)
実施形態1では、インシュレータ10に形成された第1係止部を爪部15とし、配線部材30に形成された第2係止部を爪受け部38としたものである。しかし、これに限定されることはなく、インシュレータ10に形成された第1係止部を爪受け部38とし、配線部材30に形成された第2係止部を爪部15とするようにしてもよいことはいうまでもない。
【0022】
(実施形態4)
実施例1では、コネクタピン41は棒状で、配線部材30にインサートまたはアウトサートされていたが、
図5に示すように、コネクタピンを折り曲げて配線部材30の切欠き部33の近くまで延長し、切欠き部33の近くで外方に突出するように、コネクタピン42を配線部材30にインサート成型し,インシュレータ10に巻回された巻線の一端を、切欠き部33の近くで外方に突出した部分にからげ、導通処理を行ってもよい。
これにより、円周突起35や配線中継部36を必要とせずに、巻線のからげ位置を切欠き部33に近付けることができ、 断線の防止効果をより向上させることができる。
【0023】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0024】
10……インシュレータ、
11……筒状体、
12……突状板、
13……保護壁、
15……爪部(第1係止部)、
15A……傾斜、
20……ステータ、
30……配線部材、
30A……延在部、
31……孔、
33……切欠き部、
35……円周突起、
36……配線中継部、
38……爪受け部(第2係止部)、
38A……板材、
38B……凹陥部、
40……コネクタハウジング、
41、42……コネクタピン、
50……引き出し線。