(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作ボタンは、中空部内に前記ロック部材が配置されて前記主ボタンに固定された筒状部材と、前記ロック解除ボタンをその先端部が前記主ボタンの表面から突出する向きに付勢するロック解除ボタン付勢部材と、をさらに有する請求項2または3に記載のコントローラ装置。
前記変位検出センサは、スライダを有し、該スライダの位置に応じて検出値が変化するセンサであり、前記作動部材は、その変位によって前記スライダを移動させるように配置されている請求項9に記載のコントローラ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、透視撮像装置200と、可動装置である薬液注入装置100とを有する、本発明の一実施形態による透視撮像システム1000が示されている。透視撮像装置200と薬液注入装置100とは、相互間でデータの送受信を行なえるように互いに接続されることができる。
【0014】
透視撮像装置200は、撮像動作を実行するスキャナ201と、スキャナ201の動作を制御する撮像制御ユニット210とを有している。透視撮像装置200としては、CT装置、MRI装置、PET装置、アンギオ装置および超音波画像診断装置など、任意の透視撮像装置であってよい。また、薬液注入装置100についても、透視撮像装置に適合する任意の薬液注入装置を用いることができる。
【0015】
薬液注入装置100は、例えば
図2に示すように、スタンド121の上部に旋回アーム122を介して取り付けられた注入ヘッド110と、注入制御ユニット101とを有している。注入制御ユニット101は、メイン操作パネル103および表示デバイスと入力デバイスを兼ねたタッチパネル104を有する注入制御ユニット本体106と、を有する。注入制御ユニット101および注入ヘッド110は、それぞれケーブル301、302を介して電源ユニット600に接続されている。電源ユニット600にはケーブル303を介してハンドコントローラ400が接続されている。ハンドコントローラ400は、中継コネクタを有する別のケーブル(不図示)を用いて延長して電源ユニット600に接続されていてもよい。また、注入制御ユニット101には、ケーブル304を介してハンドスイッチ500を接続することもできる。さらには、フットスイッチ(不図示)が、注型コネクタを有するさらに別のケーブル(不図示)を用いて延長して電源ユニット600に接続されていてもよい。ハンドスイッチおよびフットスイッチは、それぞれボタンを有しており、ボタンを押すことにより注入が開始され、ボタンを離すことにより注入が停止されるように構成されている。図示した形態では、各ユニットがケーブルを介して接続されているが、これらの接続の少なくとも一部は無線接続されていてもよい。
【0016】
注入ヘッド110は、薬液として例えば造影剤や抗がん剤が充填されたシリンジ800を着脱自在に装着する。シリンジ800は、薬液を保持し先端に導管が形成されたシリンダと、シリンダ内に進退移動可能に挿入されたピストンとを有する。注入ヘッド110は、シリンダを直接または適宜のアダプタ(不図示)を介して間接的に保持するシリンダ保持機構111と、シリンダ保持機構111によって保持されたシリンジ800のピストンをシリンダ内に押し込むように動作させるピストン駆動機構112(
図3参照)とをさらに有する。
【0017】
なお、シリンジ800は、アンギオ検査用の造影剤が充填されている場合は、シリンダに被せられる保護カバーをさらに有する。シリンジ800は、薬液が充填された状態で製剤メーカーから提供されるプレフィルドタイプのシリンジであってもよいし、医療現場で薬液を充填した現場充填タイプのシリンジであってもよい。さらに、シリンジ800には、RFIDタグ(不図示)が装着されていてもよい。RFIDタグには、例えば、シリンジ800に充填されている薬液に関する、製造メーカー、薬液の種類、品番、含有成分(特に、薬液が造影剤の場合はヨード含有濃度など)、充填量、ロット番号、消費期限などの他に、シリンジに関する、製造メーカー、品番といった固有識別番号、許容圧力値、シリンジの容量、ピストンストローク、必要な各部の寸法、ロット番号などの情報を記録することができる。これらの情報は、適宜のリーダ装置で読み出されて薬液注入装置100や透視撮像装置200へ送られ、注入条件の設定や撮像条件の設定に利用されることができる。シリンジ800がRFIDタグを有する場合、シリンジ800が注入ヘッド110にされることでRFIDタグに記録されている情報を読み出せるような位置にリーダが設置されていることが好ましい。
【0018】
図3に、薬液注入装置100のブロック図の一例を示す。
【0019】
図3に示すように、薬液注入装置100は、駆動制御手段として機能するコンピュータブロック130と、入力デバイス107と、表示デバイス108と、駆動モータによって駆動されるピストン駆動機構112とを有する。
【0020】
入力デバイス107は、
図2に示したメイン操作パネル104およびタッチパネル104に相当し、薬液注入装置100の各種設定に関するデータ等の入力を受け付け、入力されたデータをコンピュータブロック130へ送る。表示デバイス108は、
図2に示したタッチパネル104に相当し、コンピュータブロック130からの指令によって、薬液注入装置の設定および動作などに関する種々の情報を表示する。
【0021】
コンピュータブロック130は、いわゆるワンチップマイコンとして構成されており、CPU131、ROM132、RAM133、インターフェース(I/F)134などのハードウェアを有している。
【0022】
ROM132にはコンピュータプログラムが実装されており、このコンピュータプログラムに対応して各種の処理動作を実行することで、CPU131は薬液注入装置100の各部を統合制御する。なお、入力デバイス107、表示デバイス108およびピストン駆動機構112の駆動モータなどは、実際には駆動回路などを介してコンピュータブロック130に接続されるが、
図2では、説明を簡単とするため、直接接続されているように図示している。
【0023】
また、コンピュータブロック130は、ハンドコントローラ400の操作に応じた出力に従った回転速度でピストン駆動機構112の駆動モータを駆動させる。
【0024】
薬液注入装置100は、メモリーカードリーダ120をさらに備えることもできる。メモリーカードリーダ120は、記録媒体に記録されているデータを読み出したり、書き換えたり、消去したりすることができるデバイスである。メモリーカードリーダ120を有することによって、被験者情報の入力および注入履歴の管理などを、記録媒体を介して容易に行なうことができる。また、ROM132に実装されるコンピュータプログラムを更新する場合も、更新プログラムが記録された記録媒体から更新プログラムを読み出して容易に更新することができる。
【0025】
利用可能な記録媒体としては、CFカードおよびSDカードなどが挙げられ、メモリーカードリーダ120は、利用する記録媒体に適合するリーダとされる。メモリーカードリーダ120は1つであってもよいし複数であってもよい。また、薬液注入装置100がメモリーカードリーダ120を有する場合、
図2に示すように、注入制御ユニット本体106は、記録媒体を挿入するための1つまたは複数のスロット109を有し、記録媒体はこのスロット109を介してメモリーカードリーダ120に装着される。
【0026】
以下、ハンドコントローラ400について、
図5〜7等を参照して詳しく説明する。以下のハンドコントローラ400説明において「前」、「後」の方向をいうとき、ケーブル500が接続された側を「後」、それと反対側を「前」とする。また、「上」、「下」の方向は、操作ボタン405がハンドコントローラ400の外装体から突出する向きを「上」、それと反対側の向きを「下」という。
【0027】
ハンドコントローラ400は、右ケース402および左ケース403からなる中空構造の外装体を有し、その内部に主要な構造が収納されている。外装体は、操作者が握って操作するのに適したサイズの略円筒形状を有している。外装体の材料は特に限定されないが、任意の形状に形成し易いという観点からは合成樹脂で形成することが好ましい。外装体を合成樹脂で形成する場合、樹脂の材料は任意に選択することができ、例えば、必要な強度を確保するためポリカーボネート製とすることができる。また、
図4に示すように、滑り止め404が右ケース402および左ケース403に付加されていてもよい。滑り止め404は、例えばエラストマー材料で形成することができる。右ケース402および左ケース403への滑り止め404の形成は、例えば二重成形で形成することができる。あるいは、予め形成された滑り止め404を右ケース402および左ケース403へ接着によって貼り付けることもできる。
【0028】
外装体の後端からはケーブル303が延びており、ケーブル303の先端は電源ユニット600(
図2参照)に接続されている。外装体の前端部には、ピストン駆動機構112(
図3参照)の動作の制御のために操作者によって手動で操作される操作部材である操作ボタン405が、外装体の半径方向に突出している。
【0029】
外装体の内部に配置されているのは、操作ボタン405を突出方向(外装体の半径方向外側に向かう方向)に付勢する付勢部材である操作ボタン付勢ばね461、操作ボタン405の操作によって変位する作動部材430、作動部材430の前後方向の位置を検出する変位検出センサユニット440、および作動部材430に連結されたオイルダンパ450である。
【0030】
操作ボタン405は、手動で操作されることにより所定の範囲内で変位するように支持され、
図8に示すように、主操作部材である主ボタン410と、主ボタン410の中心部において主ボタン410と同軸上に配置されたロック解除操作部材であるロック解除ボタン420と、を有する。主ボタン410は、操作者が押し込み操作する際に操作者が触れる部分である操作部を有する。本形態では、操作部は、操作者の指がアクセスできる、言い換えれば操作者が指を入れることのできる漏斗状凹部として形成された上面を有している。主ボタン410の上面と反対側の端部には、筒状部材412が主ボタン410と同軸上に固定されている。
【0031】
図9Aおよび
図9Bに示すように、筒状部材412は、その軸方向中間部に形成されたフランジ412aを有している。フランジ412aは、操作ボタン付勢ばね461(
図5、6参照)の付勢力によって外装体の内面に当接し、操作ボタン405が外装体から飛び出すのを防止する。なお、操作ボタン付勢ばね461の付勢力を操作ボタン405に安定して作用させるため、
図6に示すように、操作ボタン付勢ばね461と操作ボタン405との間にばね押えキャップ471を配置することが好ましい。筒状部材412の下部は、前後方向および軸方向に垂直な方向の両側が部分的に切除され、これによって、後方斜め下を向くように、操作ボタン405の変位方向に対して傾斜した傾斜面412bが形成されている。残った筒状部材412の部分は、作動部材430(
図5、6参照)の変位をガイドするガイド部412cとなる。
【0032】
図8を参照すると、ロック解除ボタン420の下部には、横方向に張り出した複数の張り出し部420aが形成されている。張り出し部420aは、筒状部材412の上端に形成されたスリット412d(
図9A、9B参照)に挿入され、これによって、ロック解除ボタン420は筒状部材412の中空部内において軸方向に移動可能に支持される。
【0033】
筒状部材412の内部にはロック解除ボタン420を突出方向に付勢するロック解除ボタン付勢ばね462が配置されている。ロック解除ボタン付勢ばね462の付勢力によって、ロック解除ボタン420はその張り出し部420aが主ボタン410の内面に当接し、ロック解除ボタン420が主ボタン410から飛び出すのを防止する。また、主ボタン410の内面によって筒状部材412のスリット412dの上端が塞がれ、これによって筒状部材412の移動範囲が制限される。このように、ロック解除ボタン420がロック解除ボタン付勢ばね462で付勢されることによって、ロック解除ボタン420は、操作部である漏斗状凹部内で主操作ボタン410の外形表面から先端部を突出させて、主ボタン410の内部に押し込まれる方向に変位するように支持されている。なお、ロック解除ボタン付勢ばね462による付勢力をより安定してロック解除ボタン420に作用させるため、
図6に示すように、ロック解除ボタン付勢ばね462とロック解除ボタン420との間にばね押えキャップ472を配置することが好ましい。
【0034】
筒状部材412の中空部内には、中空部に沿って延びるロックシャフト421がロック部材として配置されている。ロックシャフト421は、ロック解除ボタン420の下端でロック解除ボタン420に固定されており、ロック解除ボタン420を主ボタン410に対して押し込むことで、ロックシャフト421はロック解除ボタン420と一緒に、筒状部材421の軸方向に移動するもので、ロック解除ボタン420が押し込まれていないときには作動部材430の変位を不能とし、ロック解除ボタン420が押し込まれることによって作動して作動部材430の変位を可能とするように作動部材の動作を制限する働きをする。ロックシャフト421の下端部には、ロックシャフト421の軸方向と垂直な方向に張り出してガイド部412cから突出している張り出し部421aが形成されている。
【0035】
図10および
図11に示すように、作動部材430は、その前部が前方斜め上を向くように、作動部材430の変位方向に対して傾斜した傾斜面430aとなっている。この傾斜面430aの角度は、筒状部材412の傾斜面412bと面接触により当接するように、筒状部材412の傾斜面412bと平行な角度で形成されている。つまり、作動部材430の傾斜面430aおよび筒状部材412の傾斜面412bは、両者を連動させるために互いに当接する作用面として働く。また、作動部材430には、その前端から後方に向かって延びる作動部材430の底部には、ロックシャフト421の張り出し部421aが下方から係合する凹部430bが形成されている。その後方には、複数のスリット430cが、前後方向に等間隔に並んで形成されている。
【0036】
作動部材430の傾斜面412bが形成された前部には、傾斜面412bを2分するように、作動部材430を上下方向に貫通するガイド溝430dが形成されている。このガイド溝430dには、筒状部材412のガイド部412c(
図9A、9B参照)が挿入され、これによって、操作ボタン405と作動部材430との相対的な移動は、上下方向および前後方向に制限される。
【0037】
作動部材430には、外装体の内部で外装体に固定されたオイルダンパ450が、作動部材430の変位方向に直列に連結され、また、作動部材430は作動部材付勢ばね452によって前方に付勢されている。この作動部材付勢ばね452による付勢力および操作ボタン付勢ばね462による付勢力で、作動部材430および操作ボタン405は互いに傾斜面430a、421b同士が押圧される。よって、作動部材430は、操作ボタン405が変位することによって、操作ボタン405の変位量に対応した変位量だけ変位するように操作ボタン405と連動する。
【0038】
再び
図5〜7を参照すると、変位検出センサユニット440は、作動部材430のスリット430cの位置に配置されている。変位検出センサユニット440は、作動部材430の変位に伴って通過するスリット430cの数をカウントすることによって、作動部材430の変位量を検出することのできるセンサ441(
図3参照)を備えている。センサ441としては任意のセンサを用いることができるが、好ましいセンサは、発光素子およびこの発光素子から出射された光を受光する受光素子を備えた光学式のセンサである。光学式のセンサは、発光素子と受光素子がスリット430cを間において対向配置された透過型であってもよいし、発光素子と受光素子がスリット430cに対して同じ側に配置された反射型であってもよい。
【0039】
変位検出センサユニット440は、このセンサを駆動するドライバ回路基板を備えており、変位検出センサユニット440からの出力信号は、ケーブル303を介して薬液注入装置100のコンピュータブロック130(
図3参照)へ送られる。
【0040】
以上説明した透視撮像システム1000を用いて被験者の透視画像を撮像するとき、透視撮像装置200による透視画像の撮像に先立って、薬液注入装置100によって被験者に薬液として造影剤が注入される。
【0041】
造影剤を注入するために、操作者は造影剤が充填されたシリンジ800を注入ヘッド110に装着する。シリンジ800の装着後、操作者は、必要なデータを、入力デバイス107を通じて入力し、注入ヘッド110による造影剤の注入動作を開始させる。
【0042】
ここで、造影剤の注入プロトコルを予め設定し、その注入プロトコルに従って造影剤を注入する場合は、コンピュータブロック130は入力されたデータ等に基づいて造影剤の注入速度等を算出し、算出された注入速度等で造影剤が注入されるように、ピストン駆動機構112(駆動モータ)の動作を制御する。
【0043】
一方、リアルタイム制御により造影剤を注入する場合は、操作者がハンドコントローラ400を操作することによって造影剤が注入される。ハンドコントローラ400は、その操作に応じた電気信号を生成し、この電気信号が、ケーブル303を介してコンピュータブロック130に入力される。コンピュータブロック130は、入力した電気信号に応じた注入速度で造影剤が注入されるようにピストン駆動機構112の動作を制御する。
【0044】
ここで、ハンドコントローラ400の動作について詳しく説明する。
【0045】
操作ボタン405が操作されていない場合の操作ボタン405と作動部材430との関係を
図12に示す。上述のように、作動部材付勢バネ452の付勢力および操作ボタン付勢ばね462の付勢力によって、作動部材430および操作ボタン405は、互いに傾斜面430a、421b同士が押圧されている。しかし、操作ボタン405は、ロック解除ボタン付勢バネ462の付勢力により上方に付勢されており、それによってロックシャフト421も上方に位置し、張り出し部421cが作動部材430の凹部430bに係合しているため、作動部材430は操作ボタン405に対して変位することはできない。したがって、
図12に示す状態では、主ボタン410を押し下げることはできない。
【0046】
図12に示す状態では、主ボタン410を押し下げることができないが、
図5に示すようにロック解除ボタン420は主ボタン410の外形表面から先端部が突出しており、ロック解除ボタン420を押し下げることは可能である。ロック解除ボタン420を押し込むと、ロックシャフト421もロック解除ボタン420と一緒に下方に変位し、
図13に示すように、張り出し部421cが作動部材430の凹部430bから脱する。これにより、作動部材430は後方(
図13における右方向)に変位することが可能となる。
【0047】
ロック解除ボタン420を押し下げたままさらに操作ボタン405に下向きの力を加えると、
図14に示すように、操作ボタン405の傾斜面421bと作動部材430の傾斜面430aとの間で滑りが生じ、作動部材430を後方に変位させながら操作ボタン405が押し下げられる。
【0048】
操作ボタン405は操作ボタン付勢ばね462によって上向きに付勢されているので、操作ボタン405に加える力を弱めると操作ボタン405は上向きに戻される方向へ移動する。このとき、作動部材430は作動部材付勢ばね462によって前方へ付勢されているので、操作ボタン405の上向きへの移動に伴って、傾斜面430a、421b間で滑りを生じさせながら、作動部材430は前方へ変位する。
【0049】
作動部材430が変位すると、変位検出センサユニット440は、通過するスリット430cの数をカウントすることにより作動部材430の変位量をリアルタイムで検出し、変位量に応じた電気信号を検出値として出力する。出力された検出値は、コンピュータブロック130に送られ、コンピュータブロック130は、変位検出センサユニット440からの検出値に応じて、変位量が大きいほど、すなわち、操作ボタン405の押し込み量が多いほど、大きな注入速度で造影剤が注入されるようにピストン駆動機構112の動作を制御する。変位検出センサユニット440はリアルタイムで作動部材430の変位量を検出しているので、造影剤の注入動作中であっても操作ボタン405の押し込み量が変化すれば、その変化に応じて造影剤の注入速度が変更される。
【0050】
操作者が操作ボタン405に加える力をさらに弱めていくと、最終的には、
図12に示した初期位置へ操作ボタン405が復帰する。そして、操作者が操作ボタン405から指を離すと、ロック解除ボタン420もロック解除ボタン付勢ばね462の付勢力によって上向きに移動する。ロック解除ボタン420の移動によりロックシャフト421の張り出し部421aが作動部材430の凹部430bに係合し、これによって操作ボタン405がロックされる。
【0051】
以上説明したように、操作ボタン405は、ロックシャフト421の働きによって、ロック解除ボタン420の先端部が主ボタン410の表面から突出しているときは、作動部材430を主ボタン410との間での相対移動を不能とするようにロックシャフト421が作動部材430と係合し、ロック解除ボタン420が主ボタン410に対して押し込まれることによって、ロックシャフト421と作動部材430との係合が解除されるように構成されている。したがって、主ボタン410を意図せずに誤って押してしまったり、ハンドコントローラ400の落下や衝突などにより主ボタン410に下向きの力が加わったりしても、ロック解除ボタン420が押し込まれていない限り、操作ボタン405が下向きに押し込まれることを防止することができる。
【0052】
しかも、ロック解除ボタン420は、操作ボタン405の操作の際に操作者が押し込み操作する部分である主ボタン410の漏斗状凹部内で先端部を突出させて配置されている。そのため、操作ボタン405の通常の押し込み操作だけでロック解除ボタン420を操作することができるので、ロック解除ボタン420のための特別な操作は不要である。
【0053】
また、操作ボタン405の押圧力は、傾斜面412b、430aを介して作動部材430に作用して作動部材430を変位させるので、操作ボタン405の変位方向と作動部材430の変位方向を互いに異なる方向とすることができる。その結果、操作ボタン405の変位方向を任意に設計することができ、ハンドコントローラ400の設計の自由度が向上する。
【0054】
さらに、作動部材430がオイルダンパ450に連結されているため、操作ボタン405を押し込んでいる間、操作ボタン405には、作動部材430を介してオイルダンパ450による一定の負荷が作用する。オイルダンパ450による負荷は、操作ボタン405の操作感覚に、シリンジのピストンを押し込むときと類似した操作感覚を与える。その結果、操作者はシリンジの操作に近い感覚で操作ボタン405を操作することができる。
【0055】
このように、本形態では、操作ボタン405の操作感をシリンジの操作感に近くするためのオイルダンパ450を備えているが、この目的のためには、オイルダンパ450に限らず、ガス圧を利用したダンパ、空気圧を利用したダンパ、あるいは水圧を利用したダンパなど、任意の流体圧ダンパを用いることができる。これらの流体圧ダンパは、本発明においては必須の要素ではなく、操作部材にシリンジの操作感を付与する必要が無い場合は、流体圧ダンパを有していなくてもよい。
【0056】
上述した形態では、主操作部材が、押し込み操作される主ボタン410である場合を示したが、本発明において、主操作部材はボタンに限定されず、操作方向に外装体表面から突出したものであれば、例えばスライド操作されるレバーであってもよい。
【0057】
次に、ハンドコントローラの他の形態について、
図15〜23を参照して説明する。なお、以下の説明において、「上」、「下」というときは、前述の形態と同様、操作ボタンがハンドコントローラの外装体から突出する向きを「上」、それと反対側の向きを「下」という。
【0058】
本形態のハンドコントローラ700も、前述した形態と同様、左右のケース701aからなる中空構造の外装体701を有し、その内部に主要な構造が収納されている。外装体701は、
図24に示すように操作者が握りやすい形状にデザインされている。外装体701からはケーブルが延びており、このケーブルの先端は電源ユニット600(
図2参照)に接続される。外装体701の上部には、ピストン駆動機構(
図3)の動作の制御のために操作者によって手動で操作される操作部材を含むボタンモジュール702の一部が突出している。外装体701の内部に配置されているのは、このボタンモジュール702と、変異検出センサユニット740である。
【0059】
ボタンモジュール702は、操作者によって手動で操作される操作部材である操作ボタン705と、外装体701に固定され、かつ操作ボタン705を上下方向にスライド自在に保持するモジュールケース770と、操作ボタン705と連動する作動部材730とを有する。
【0060】
操作ボタン705は、主操作部材である主ボタン710と、主ボタン710と同軸上に配置されたロック解除ボタン720とを有する。主ボタン710は、操作者が押し込み操作する際に操作者が触れる部分である操作部を有する。本形態では、操作部は、漏斗状凹部として形成された上面を有している。
【0061】
主ボタン710の側面には、主ボタン710の半径方向に延びる横穴が形成されており、この横穴に作動部材730の一部が挿入されて主ボタン710に固定されている。作動部材730は棒状の部材であり、従って、作動部材730は主ボタン710の側面から主ボタン730の半径方向に延びて突出している。
【0062】
主ボタン710は、上記の作動部材730が挿入される横穴とは別に、主ボタン710の半径方向に延びるもう一つの横穴が形成されている。この横穴には、後述するロック解除ボタン720と協働するロック部材725が、主ボタン710の側面から突出および後退するようにスライド自在に挿入されている。ロック部材725は、詳しくは後述するが、ロック解除ボタン720が押し込まれていないときには作動部材730の変位を不能とし、ロック解除ボタン720が押し込まれることによって作動して作動部材730の変位を可能とするように作動部材730の動作を制限する働きをする。
【0063】
一方、モジュールケース770は、有底筒状の部材であり、操作ボタン705の上部をモジュールケース770から突出させた状態で収容することによって操作ボタン705を保持している。モジュールケース770には、その側壁を厚み方向に貫通し、かつ上下方向に延びる長穴771が形成されている。作動部材730は、この長穴771を貫通して主ボタン710に固定されており、これによって、主ボタン710は、長穴771の長手方向の範囲内で、モジュールケース770の上下方向にスライド自在に保持される。
【0064】
主ボタン710の中間部外周面には、操作ボタン705を外装体701から突出する方向に付勢する付勢部材である操作ボタン付勢ばね761が配置されている。操作ボタン付勢ばね761は、具体的には、主ボタン710とモジュールケース770との間に配されたコイルばねである。
【0065】
主ボタン710の下部外周面にはOリング711が取り付けられており、このOリング711がモジュールケース770の内周面に当接することにより、モジュールケース770の内面と操作ボタン705の下面とで囲まれた空間である気室770aがモジュールケース770の内部に形成される。
【0066】
モジュールケース770の下壁には、気室770aの内部と外部とを連通する連通路772が形成されている。連通路772の中には、気室770aの内部と外部との間での空気の流通を制限する制限部材であるボール773が移動可能に配置されている。ボール773は、モジュールケース770の内側から連通路772の開口772aを塞ぐことができる程度の直径を有しており、不図示の付勢ばねによって、モジュールケース770の内側から開口772aに当接するように付勢されている。付勢ばねの付勢力は、開口772aとボール773と間に隙間を生じさせ、操作ボタン705のスライド動作によって気室770a内の空気が連通路772を通じて流通することができる程度とされる。これによって、例えば、操作者が操作ボタン705を押し込み、その力を解除したとき、気室770a内への空気の流入がボール773によって制限されるので、操作ボタン705が操作ボタン付勢ばね761の付勢力によって一気に押し戻されることが防止される。
【0067】
また、モジュールケース770の側壁には、係合穴774が形成されている。係合穴774は、操作ボタン705がモジュールケース770に対して最上昇端位置にあるときに、主ボタン710のロック部材725が挿入されている横穴と同一直線上となる位置に形成され、横穴から突出したロック部材725を受け入れることができる。
【0068】
ロック解除ボタン720は、主ボタン710の上面の漏斗状凹部から突出したボタン本体721と、ボタン本体721の下面から操作ボタン705の長手方向に沿って下方に延びるロッド部材722と、ロッド部材722の長手方向中間部においてロッド部材722の外周面に固定された保持部材723とを有する。
【0069】
ロック解除ボタン720は、主ボタン710にその上面から下向きに形成された縦穴内に、ボタン本体721の上面を露出させた状態で挿入されている。保持部材723は、主ボタン710の縦穴内でロック解除ボタン720がその半径方向に動かないように保持する働きをする。
【0070】
ロッド部材722の先端部は、その長手方向に沿って一部除去されている。一方、ロック部材725には、ロッド部材722の一部除去された先端部が進入している凹部725aが形成されている。ロッド部材722およびロック部材725にはそれぞれ互いに対向する傾斜面722a、725bが形成されている。これら傾斜面722a、725bは、ロック部材725の先端部がモジュールケース770の係合穴774に挿入される方向へのロック部材725の移動を「前進」、その逆方向への移動を「後退」としたとき、ロック解除ボタン720が主ボタン710に対して押し込まれることによってロック部材725を後退させ、逆に、ロック部材725が前進することによってロック解除ボタン720を主ボタン710に対して上昇させるように形成されている。
【0071】
また、
図19に示すように、ロック部材725を前進方向に付勢するロック部材付勢ばね762が主ボタン710に取り付けられている。
図21に示すように、ロック部材725は、ロック部材付勢ばね762の付勢力によって最も前進した位置にあるとき、先端部が主ボタン710の側面から突出してモジュールケース770の係合穴774に進入しているように設計されている。これによって、主ボタン710は、モジュールケース770に対する移動が阻止されるようになっている。
【0072】
図16に示すように、ケース701aにはボタンモジュール702を受け入れる凹部が形成され、ボタンモジュール702はこの凹部に嵌め込まれて、操作ボタン705を動作可能に保持されている。ケース701aには、変位検出センサユニット740がさらに固定されている。
【0073】
変位検出センサユニット740は、作動部材730の変位量、すなわち主ボタン710の変位量に応じて所定の電気量を検出値として出力する。変位検出センサユニット740としては、作動部材730の変位をリアルタイムに検出できるものであれば任意のセンサを用いることができ、その例としては、磁気センサ、抵抗式センサ、光学式センサなどが挙げられる。本実施形態では、スライダ742を有し、このスライダ742の位置に応じて検出値が変化するものを用いている。スライダ742は、板ばね、コイルばね、トーションばねなど不図示の付勢部材によって作動部材730に当接するように付勢されている。
【0074】
次に、本形態のハンドコントローラ700の動作について説明する。
【0075】
操作ボタン705が操作されていない場合のロック解除ボタン720とロック部材725との関係を
図21に示す。操作ボタン705は、操作ボタン付勢ばね761の付勢力によって、上端位置にある。一方、ロック部材725は、ロック部材付勢ばね762(
図19参照)の付勢力によって、前進位置にあり、その先端部はモジュールケース770の係合穴774に進入している。そのため、この状態では主ボタン710を押し下げることはできない。
【0076】
図21に示す状態では、主ボタン710を押し下げることはできないが、ロック解除ボタン720は押し下げることは可能である。ロック解除ボタン720を押し込むと、ロッド部材722の先端の傾斜面722aとロック部材725の傾斜面725bとの間で滑りが生じ、
図22に示すように、ロック部材725を後退させながらロック解除ボタン720が押し込まれる。ロック部材725が後退すると、ロック部材725は係合穴774から外れ、これによって主ボタン710は操作ボタン付勢ばね761の付勢力に抗して下方へ変位することが可能になる。
【0077】
ロック解除ボタン720を押し下げたままさらに主ボタン710を押し下げると、
図23に示すように、操作ボタン705全体が押し下げられる。この動作によって、作動部材730(
図20参照)は下方へ変位し、作動部材730の変位に伴って変位検出センサユニット740のスライダ742(
図16参照)も作動部材730の変位量と等しい変位量だけ変位する。変位検出センサユニット740は、スライダの変位量に応じた検出値を出力する。この検出値を利用した薬液注入装置の動作は前述の実施形態と同様であってよいので、その説明は省略する。
【0078】
ハンドコントローラ700を用いた薬液注入動作の終了のために、操作者は操作ボタン705から指を離すことができる。操作者が操作ボタン705から指を離すと、主ボタン710は操作ボタン付勢ばね761の付勢力によって上方へ移動し、それに伴って、作動部材730が上方へ変位するので、スライダ742も元の位置へ復帰する。それと同時に、ロック解除ボタン720に加わっていた力も解除されるため、ロック部材725はロック部材付勢ばね762の付勢力によって前進し、操作ボタン705が最も上昇した位置に達したときに、モジュールケース770の係合穴774内に先端部が進入する。これによって、操作ボタン705は再びロックされる。
【0079】
本実施形態のハンドコントローラ700によっても、前述した実施形態と同様、主ボタン710を意図せずに誤って押してしまったり、ハンドコントローラ700の落下や衝撃などにより主ボタン710に下向きの力が加わったりしても、ロック解除ボタン720が押し込まれない限り、操作ボタン705が押し込まれることを防止することができる。しかも、操作ボタン705のロックを解除するための特別な操作も不要であるので、ハンドコントローラ700の操作は容易である。
【0080】
以上、本発明について、2つの実施形態を用いて説明したが、本発明のハンドコントローラを用いて薬液を注入することにより、薬液のバリアブル注入を簡単に行えるようになる。そして、ハンドコントローラを用いた、縦軸が注入圧力で横軸が時間で表される注入グラフを含む注入結果は、医療ネットワークを通じて透視撮像装置、RIS、PACS、HISなどに注入データとして保存でき、また、保存した注入データから薬液の注入量を算出し、会計処理にも利用することができる。また、被験者の体重等の身体的情報、ID、氏名、検査部位、検査手法を、RIS、PACS、HISなどから取得して薬液注入装置に表示し、それにあった注入をハンドコントローラにより自動および手動で実施することもできる。
【0081】
また、上述した実施形態では、ハンドコントローラは、操作部材と連動する作動部材の変位量に応じて注入速度が変化するものとして説明したが、変位量に応じて注入量を変化させたり、さらには変位速度に応じて注入速度を変化させたりしてもよい。
【0082】
さらに、ハンドコントローラは、操作部材の変位量が増大するにつれて操作部材を変位させるのに必要な負荷が増大するように操作部材に負荷を付与する機構を有することも可能である。これにより、操作者は、操作部材から受ける抵抗力の大きさによって、操作部材がその可動範囲のうちどの辺りの位置にあるかを認識することができる。その結果、操作感覚で、現在の注入速度あるいは注入量などを大まかに把握することができる。