【実施例1】
【0025】
図3は、火力発電ボイラの蒸気系の一例を示す図である。
図3において、バーナ51aを備えたボイラ火炉(以下「火炉」という)51で燃料を燃焼させることにより発生した蒸気52は、汽水分離器53、ボイラ蒸気連絡管54、過熱器55、主蒸気配管56を通って高圧タービン57に供給される。そして、高圧タービン57で仕事をした蒸気52は、低温再熱蒸気配管58を通って再熱器59に送られて加熱され、高温再熱蒸気配管60を通って中圧タービン61及び低圧タービン62に供給されて仕事を行う。また、低圧タービン62で仕事をした蒸気52は復水器63の冷却水(海水)により冷却されて復水65とされた後、低圧給水加熱器66、脱気器67、ボイラ給水ポンプP1、高圧給水加熱器68を通って再びボイラ火炉51に戻される。
【0026】
このような火力発電ボイラの蒸気系において、主蒸気配管56又は再熱蒸気配管58、60の内面には、長年の運転に伴って水蒸気酸化スケールが成長し、ある厚さになると一部が剥離・飛散してタービン損傷等のトラブルの原因となる。そのため、所定の定期点検において、これらのスケールを化学洗浄により溶解除去するスケール除去対策は行われている。
【0027】
この経時変化による劣化以外に、復水器63における海水の海水リークが発生した場合には、蒸気系統の環境は無酸素状態であると共に、乾燥状態であるので、仮に海水リークが発生した場合でも、持ち込まれた海水成分は、蒸気配管の内表面に付着する。またタービンの翼表面にも付着する。しかしながら、ボイラ運転時においては、無酸素状態であるので、海水成分に起因する腐食の発生はほとんど無い。
【0028】
これに対し、ボイラ停止時においては、発生蒸気が冷却によりドレン化するので、内部が湿潤状態となる。また、開放点検の際には、真空破壊滅により、蒸気配管内部において、酸素が飽和状態となる。この結果、各蒸気配管の内表面に付着した海水成分がドレンに溶解する。このドレンは、翼根部のチューブ曲がり部、底部等に溜まりやすいので、腐食が促進する場合がある。
【0029】
本発明は、この腐食の原因である蒸気ユニット系統の海水リークの状態を、ボイラ運転中において把握することができるものである。以下、実施例1及び2を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0030】
図1は、実施例1に係るボイラ蒸気系統の塩分監視装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るボイラ蒸気系統の塩分監視装置は、ボイラで発生した蒸気52を供給する蒸気配管13と、蒸気配管13と並列に設けられ、蒸気配管13から分岐され、蒸気52の一部の分岐蒸気52aを通過させ、再度蒸気配管13に分岐蒸気52aを戻すモニタリング用分配管21と、ボイラの運転中に、蒸気配管13からの蒸気52の一部の分岐蒸気52aの流入を停止するバルブV
1、V
2とを具備し、ボイラ11の運転中に、分岐蒸気52aをモニタリング用分配管21内に通過させ、ボイラの運転中に、バルブV
1、V
2を閉じて分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21内の塩分付着の有無を確認するものである。
【0031】
図1では、モニタリング用分配管21は、蒸気配管13から、蒸気52の一部が分岐蒸気52aとして分岐され、該分岐蒸気52aが再度蒸気配管13に流入する分岐ライン22と、分岐ライン22の分岐蒸気52aの流出、流入近傍において介装され、分岐蒸気52aの流入を停止するバルブV
1、V
2と、分岐ライン22に設けられた着脱フランジ23a、23bを介して着脱自在の検査用配管24と、を具備するものである。なお、
図1中、符号31は、フランジ23a、23bを締結する締結手段を図示する。
【0032】
本実施例のモニタリング用分配管21は、
図3に示すボイラ蒸気連絡管54に一箇所、主蒸気配管56に二箇所、低温再熱蒸気配管58、高温再熱蒸気配管60及び中圧タービン61から低圧タービン62への蒸気配管69に一箇所設けている。なお、主蒸気配管56に二箇所設けているのは、この蒸気配管の長さが他よりも長いため、複数個所で監視している。
【0033】
通常、復水器63において、海水リークが発生しない場合には、蒸気配管13を流れる蒸気52には塩分が含まれない。よって、バルブV
1、V
2を開いて、蒸気52の一部の分岐蒸気52aを分岐ライン22に導入し、検査用配管24を通過させて、再度蒸気配管13に戻して、蒸気配管13の内部と検査用配管24とを同一条件としている。なお、蒸気52に塩分を含まない場合においては、塩分(NaCl)量は、0.1ppm程度である。
【0034】
蒸気配管13の検査を行うのは、復水器63において海水リークが発生した場合となる。この海水リークの発生の確認は、
図3に示すボイラの給水系統である復水器63から火炉51にいたるまでに設置された塩分計や電気伝導度計等の検知装置により確認される。
【0035】
この海水リークが確認された場合、ボイラ運転中において、バルブV
1、V
2を閉じて分岐蒸気52aの流入を停止する。次いで、モニタリング用分配管21の検査用配管24が冷却した後、検査用配管24内における塩分付着の有無を確認する。
【0036】
蒸気配管13中の蒸気52中に塩分が含まれる場合、並列するモニタリング用分配管21内を通過する分岐蒸気52a中にも塩分が含まれるので、海水リークが発生して塩分監視が必要な場合、蒸気配管13からの分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21が冷却した後、モニタリング用分配管21の検査用配管24をフランジ23a、23bから取り外す。そして、検査用配管24内の塩分付着の有無を確認することで、配管内の塩分状態監視をすることができる。
【0037】
また、検査用配管24を純水で洗浄し、その洗浄液を分析することで、塩分濃度を測定することができる。
【0038】
このように、復水器63での海水リークが発生していない場合に、蒸気配管13を流れる蒸気の一部を分岐蒸気52aとしてモニタリング用分配管21内に常に導入しておき、蒸気配管13を流れる蒸気52中に塩分が含まれる海水リークの発生があった場合、並列するモニタリング用分配管21内を通過する分岐蒸気52a中にも塩分が含まれることとなる。
【0039】
よって、塩分監視が必要な場合、バルブV
1、V
2を閉じて蒸気52からの分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21の検査用配管24をフランジ23a、23bから取り外して、検査用配管24内の塩分付着の有無を確認する。これにより、間接的に蒸気配管13内の塩分監視が可能となる。
【0040】
異常が無い場合には、新しい検査用配管24を準備して、フランジ23a、23bに取り付け、バルブV
1、V
2を開放して、分岐蒸気52aを流入させ、次の検査に備える。
【0041】
ここで、検査用配管24は、蒸気配管13と材質が同じものを用い、直径は例えば50mm程度と、蒸気配管(直径が400〜500mm)の1/10程度のものを用いている。またその長さは例えば200〜500mm程度としている。
【0042】
これに対して、検査用配管24内で、塩分付着が確認され、復水器63の海水リークの影響があると判断した場合には、中央制御装置に通報し、警報を発し、海水リークの対策を講じる。海水リークの程度により、純水製造装置32で製造され、純水タンク33に貯留した純水34を純水ポンプP
2により供給し、復水65の塩分濃度を低下させる対策を講じることができる。
【0043】
また、ボイラ火炉51から直接、復水器63へ給水を循環させるコールドライン処理をとり、復水65の塩分濃度が低下するまで、蒸気系統側に塩分を含む蒸気の供給を停止する対策を講じることができる。
【0044】
さらに、蒸気配管における洗浄対策が必要な場合においても、塩分付着した蒸気配管のみを開放点検して、洗浄処置を行うことができる。
この結果、従来のように、全ての蒸気配管を開放する場合における真空破壊滅により、蒸気配管内部において、酸素が飽和状態となることに起因して、塩分がドレンに溶解するという不具合を防止することができる。
この結果、海水リーク対策不要な箇所における蒸気配管の内部腐食が促進することが防止される。
【0045】
このように、ボイラ運転においても、必要な場合に、蒸気配管の内部の状態を確認することができるので、例え海水リークが発生した場合でも、蒸気系統の蒸気ラインにおける早期の対策を講じることができる。これにより、2年に1回の定期点検の時期まで、延命を図ることで、ボイラの運転停止を回避することができる。
【0046】
本実施例によれば、分岐ライン22に介装されたバルブV
1、V
2を閉じることで、分岐蒸気52aの流入が検査用配管24への流入が停止される。その後、検査用配管24を着脱フランジ23a、23bから取り外すことで、検査用配管24内の内部を確認することができる。また、検査用配管24内を洗浄液により洗浄し、洗浄液を分析することで、塩分の有無を確認することができる。
【0047】
本実施例のボイラ蒸気系統の塩分監視方法は、ボイラからの蒸気52を供給する蒸気配管13の内面の塩分付着の有無を監視するボイラ蒸気系統の塩分監視方法であって、蒸気配管13にモニタリング用分配管21を並列に配置してなり、並列に配置したモニタリング用分配管21に常時分岐蒸気52aを供給し、ボイラ運転中において塩分監視が必要な場合、分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21が冷却した後、モニタリング用分配管21内における塩分付着の有無を確認する。
【0048】
これにより、蒸気配管13中の蒸気52中に塩分が含まれる場合、並列するモニタリング用分配管21内を通過する分岐蒸気52a中にも塩分が含まれるので、塩分監視が必要な場合、蒸気52からの分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21が冷却した後、該モニタリング用分配管21内の塩分付着の有無を確認することで、ボイラ運転中においても、配管内の塩分監視をすることができる。
【0049】
また、モニタリング用分配管21の一部を着脱自在とした検査用配管24とし、検査用配管24を取り外して、内部の塩分の付着の有無を確認する。
これにより、検査用配管24を取り外すことで、検査用配管24内の内部を確認することができる。
【0050】
また、モニタリング用分配管21の一部を着脱自在とした検査用配管24とし、検査用配管を取り外して、内部に洗浄液を供給して洗浄した後、洗浄液を分析し、塩分の付着の有無を確認する。
これにより、検査用配管24内を洗浄液により洗浄し、洗浄液を分析することで、塩分の有無を確認することができる。
【実施例2】
【0051】
図2は、実施例2に係るボイラ蒸気系統の塩分監視装置の概略図である。なお、実施例1に係るボイラ蒸気系統の塩分監視装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係るボイラ蒸気系統の塩分監視装置のモニタリング用分配管21は、蒸気配管13から、蒸気52の一部が分岐蒸気52aとして分岐され、分岐蒸気52aが再度蒸気配管13に流入する分岐検査用配管26と、分岐検査用配管26に介装され、分岐蒸気52aの流入を停止する入口側と出口側に設けたバルブV
1、V
2と、分岐検査用配管26内に、外部より洗浄液27を供給する洗浄液供給手段28と、洗浄後の洗浄液を分析する分析手段29と、を具備する。
【0052】
実施例1と同様に、海水リークが確認された場合、ボイラ運転中において、バルブV
1、V
2を閉じて分岐蒸気52aの流入を停止する。次いで、モニタリング用分配管21の分岐検査用配管26が冷却した後、分岐検査用配管26内に、洗浄液供給手段28から洗浄液(純水)27を供給し、内部を洗浄する。
【0053】
洗浄液27は、分析手段29に導入され、オンラインで計測される。
なお、洗浄液を別途容器で捕集し、その後分析手段29で分析するようにしてもよい。この分析手段29により、塩分濃度を測定することができる。ここで、分析手段29としては、例えば電導度計、Naイオン計、Clイオン計等を単独又は適宜組み合わせて用いることができる。
また、電気伝導度、Kイオン、Mgイオン、SO
4イオン、Naイオン、Clイオン、Feイオン等を別途分析することで、塩害状況と錆状況とを評価することができる。
【0054】
このように、復水器での海水リークが発生していない場合に、蒸気配管13を流れる蒸気の一部を分岐蒸気52aとしてモニタリング用分配管21内に常に導入しておき、蒸気配管13を流れる蒸気52中に塩分が含まれる海水リークの発生があった場合、並列するモニタリング用分配管21内を通過する分岐蒸気52a中にも塩分が含まれることとなる。
【0055】
よって、塩分監視が必要な場合、バルブV
1、V
2を閉じて蒸気52からの分岐蒸気52aの流入を停止し、冷却する。次いで、バルブV
3、V
4を開き、モニタリング用分配管21の分岐検査用配管26内に洗浄液27を導入し、分析手段29で分析して、分岐検査用配管26内の塩分付着の有無を確認する。これにより、間接的に蒸気配管13内の塩分監視が可能となる。
【0056】
異常が無い場合には、洗浄液供給手段28からの洗浄液27の導入を停止し、バルブV
3、V
4を閉じ、次いでバルブV
1、V
2を開放して、分岐蒸気52aを流入させ、次の検査に備える。
【0057】
本実施例によれば、海水リークがある場合、分岐ライン22に介装されたバルブを閉じることで、分岐蒸気52aの分岐検査用配管26への流入が停止され、その後分岐検査用配管26内に洗浄液27を供給し、分岐検査用配管26内を洗浄し、洗浄後の洗浄液27を分析手段29で分析することで、塩分の有無をオンラインで確認することができる。
【0058】
本実施例に係るボイラ蒸気系統の塩分監視方法は、モニタリング用分配管21に、外部からの洗浄液27を洗浄液供給手段28により供給して洗浄した後、洗浄液27を分析手段29で分析し、塩分の付着の有無を確認する。
【0059】
蒸気配管13中の蒸気52中に塩分が含まれる場合、並列するモニタリング用分配管21内を通過する分岐蒸気52a中にも塩分が含まれるので、塩分監視が必要な場合、蒸気52からの分岐蒸気52aの流入を停止し、モニタリング用分配管21が冷却した後、該モニタリング用分配管21内を洗浄液27で洗浄し、その洗浄液27を分析手段29で分析して塩分付着の有無を確認することで、配管内の塩分監視をすることができる。