(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の超音波診断装置は、脳・心臓・血管等に関連する生体情報を無侵襲・低侵襲で継続的に計測することが可能であるため、他の診断法に代えがたいものとして、広く普及している。
【0003】
超音波診断装置は、振動子を含むプローブ(Probe)と駆動部とを有し、出力条件に基づいて、駆動部から振動子に所定の大きさのパルスを供給し、それにより、振動子が超音波ビームを送信し、超音波エコーに基づいて生体情報を描画可能に構成されている。ここで、出力条件はプローブの種類及び送信条件を含む。
【0004】
プローブの種類は、放射状に超音波を放出する振動子であるコンベックス型、放射状に超音波を放出する振動子であるセクタ型、直線に超音波を放出する振動子であるリニア型を含む。
【0005】
振動子の動作モードとしては、超音波ビームが走査して出力される走査モードと、走査されないで出力される非走査モードとがある。走査モードの一例として、Bモード(B−mode)、カラーフローモード(Color flow−mode)、非走査モードの一例として、Mモード(M−mode)、パルスドプラモード(Pulsed Doppler−mode)がある。
【0006】
近年、装置の機能や動作モードの多様化により超音波ビームの出力(音響出力)は増加傾向にあり、生体侵襲に対する配慮が必要となりつつある。そのため、生体情報の利益と生体侵襲のリスクとのバランスを意識して、慎重に使用することが推奨される。
【0007】
超音波診断装置の安全性に関する指標としては、米国食品医薬品局(FDA)によるものが用いられる。具体的には、時間平均強度値の空間的ピーク値(Ispta:Spacial Peak Temporal Average Intensity)、パルス波連長内の平均強度値の空間的ピーク値(Isppa:Spacial Peak Pulse Average Intensity)、及び、超音波照射によって生体組織に吸収されたエネルギーにより、生体へ及ぼす熱的影響(組織の温度上昇)に関する指標(TI:Thermal Index)や超音波が生体組織を伝搬する際、伸長されてできた気泡が圧縮され破壊するときに発生するエネルギーにより、生体へ及ぼす機械的影響に関する指標(MI:Mechanical Index)がある。
【0008】
指標TIは次の式により求められる。
【0009】
【数1】
ここで、W0は、トータル音響パワー値[mW]、W
degは、生体組織を1℃上昇させるのに必要なパワー値[mW]である。
【0010】
また、音圧の強さ(1m
2を1秒間に通過するエネルギー量)I
s[W/m
2]は次の式により求められる。
【0011】
【数2】
ここで、pは音圧、ρは密度[kg/m
3]、vは音速[m/s]を表す。
音圧の強さI
sは、トータル音響パワー値W0に比例する(W0∝I
s)。
さらに、コンデンサCに交流電圧を印加して正弦波交流電流を流すとき、次の関係式が成り立つ。
【0012】
【数3】
ここで、Vは電圧の実効値を表し、Wは電力を表す。ωは角周波数を表し、2πfという表記を取る場合もある。
また、電力Wは、トータル音響パワー値W0に比例する(W0∝W)。
原理的には、トータル音響パワー値W0は振動子が駆動されるパルスの振幅値に比例するもので、次の式により求められる。次の式はパルスの振幅値に着目して表現したものである。このパルスの振幅値が「パルスの大きさ」の一例である。
【0013】
【数4】
ここで、ωは角周波数、Cは振動子の電気容量[F]、Eはパルスの振幅値(送信電圧)[V]、αは、ω、C、Eの以外の他の条件である。なお、αは、繰り返し周波数等の他の要素の影響を持ったものであるが、ここでは一定として説明する(α=const)。
【0014】
式(1)、(2)からパルスの振幅値は次の式で表わされる。
【0015】
【数5】
なお、ここでは、βを一定とする。
【0016】
また、指標MIは次式により求められる。
【0017】
【数6】
ここで、Pr.3(z)は深さzにおける負側の瞬時最大音圧(Mpa)、fcは中心周波数(MHz)である。
【0018】
超音波診断装置は、TI、MIが常に規定値の範囲内にあるように、送信条件を制御している。同時に、TI、MIは、モニタ画面上に表示され、ユーザは、TIやMIを参照しながら、送信条件の調整をする。一方で、今後、指標の精度向上のために、安全に関する国際規格やガイドラインに沿って現行のTIやMIが変更される可能性がある。
【0019】
安全に関する国際規格やガイドラインに沿ってTIやMIが変更されると、ユーザは、変更を反映したTIやMIに応じて送信条件を調節する。Ispta、Isppa、が変更された場合も同様の影響を受ける。
【0020】
超音波ビームが走査されないで出力される非走査モードでは、音響エネルギーが集中するため、TIが増加し、温度上昇の可能性も高くなる。超音波ビームが走査して出力される走査モードでは、音響エネルギーが空間的に分散されるため、TIが低下し、温度上昇の可能性も低くなる。なお、原理上は、走査幅(視野幅)を狭くしていくと非走査モードに近づく。
【0021】
非走査モードにおいて、TIを低くするときの送信条件としては、パルスの振幅値(送信電圧)及びパルスの繰り返し周波数を含む。また、走査モードにおいて、TIを低くするときの送信条件としては、パルスの振幅値(送信電圧)、走査線密度、走査幅(視野幅)、及び、フレームレートを含む。
【0022】
一般的に、TIを下げるには、動作モードに関係なく、パルスの振幅値(送信電圧)を小さくすればよい。非走査モードでは、パルス繰り返し周波数を下げればよい。MIを下げるには、モードに関係なく、パルスの振幅値(送信電圧)を小さくすればよい。走査モードでは超音波の周波数(パルスの周波数成分)を上げればよい。
【発明を実施するための形態】
【0030】
超音波診断装置の各種の実施形態について各図を参照して説明する。
安全に関するガイドラインに沿ってTIやMIが変更される。TIやMIの変更に応じて送信条件を変更する。変更前の送信条件を知るためには、変更後の送信条件から変更前の送信条件が求められるように構成すればよく、また、変更後の送信条件により変更前の送信条件を上書きせずに、変更前の送信条件を履歴として記憶しておけばよい。
【0031】
先ず、変更後の送信条件から変更前の送信条件を求めるための構成について各図を参照して説明する。
【0032】
変更される送信条件は動作モードの種類で異なる。以下の第1実施形態では、動作モード及び送信条件の一例として、走査モード/非走査モードにおけるパルスの振幅値(送信電圧)を挙げて説明する。また、第2実施形態では、動作モード及び送信条件の一例として、非走査モードにおけるパルスの繰り返し周波数を挙げて説明する。さらに、第3から第6実施形態では、動作モード及び送信条件の一例として、走査モードにおける走査線密度、フレームレート、及び走査幅(視野幅)を挙げて説明する。なお、各実施形態の説明において、送信条件の一つに着目して説明するとき、他の送信条件は一定であるとして説明する。
【0033】
[基本構成]
超音波診断装置の基本的な構成について
図1を参照して説明する。
図1は、超音波診断装置の構成ブロック図である。
【0034】
図1に示すように、超音波診断装置においては、超音波の送受信を行う振動子22を有するプローブ2が、パルス用ライン(ケーブル)により本体1内の送受信回路11に接続されている。
【0035】
送受信回路11は、駆動部12及び制御部13を有する。駆動部12は、振動子22に印加されるパルス(送信信号)を発生するとともに、振動子22からの受信信号(受信エコー)の増幅等の処理を行う。この増幅された受信信号(場合によってはデジタルデータへの変換も実施された信号)は、信号処理系3に与えられ、ここでBモード像、ドプラ像、Mモード像のごとき超音波画像用の信号データが得られる。この信号データを表示系4にてビデオフォーマットに変換し、モニタ5等の画像表示機器に超音波画像として出力する。
【0036】
制御部13は、プローブ2内のスイッチ素子(図示省略)のオン、オフを制御する制御信号を生成する。制御部13は、第1算出手段131及び第2算出手段132を有する。
【0037】
表示系4は、表示制御手段41を有する。表示制御手段41及びモニタ5が「表示手段」の一例である。
【0038】
[第1実施形態]
次に、超音波診断装置の第1実施形態について
図1を参照して説明する。
【0039】
図1は、超音波診断装置の構成ブロック図である。なお、第1実施形態では、非走査モードにおける送信条件の一例として、パルスの振幅値(送信電圧)を挙げて説明する。
【0040】
(第1算出手段)
第1算出手段131は、指標に基づいて出力条件を求める。
ここでは、変更後の指標をTI
1、変更前の指標をTI
2とする。変更後の指標が「第1指標」に相当し、変更前の指標が「第2指標」に相当する。また、変更後のパルスの振幅値が「第1出力条件」に相当し、変更前のパルスの振幅値が「第2出力条件」に相当する。
【0041】
変更後のパルスの振幅値E
1[V]は次の式で示される。
【0043】
また、変更前のパルスの振幅値E
2[V]は次の式で示される。
【0044】
【数8】
ここで、βは、パルスの振幅値以外の他の送信条件であり、一定とする。
【0045】
以上により、第1算出手段131は、指標TI
1、TI
2を参照し、式(5)、(6)に基づいて、パルスの振幅値を求める。
ただし、変更前のパルスの振幅値E
2は、変更後のパルスの振幅値E
1によって上書きされ、変更前のパルスの振幅値E
2を読み出すことはできない。
【0047】
式(5)、(6)からE
2をE
1、TI
1、TI
2により表すと、次の式となる。
【0048】
【数9】
第2算出手段132は制御部13に設けられ、変更後のパルスの振幅値E
1を参照して、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値E
2を求める。
例えば、第2算出手段132は、変更後の指標TI
1が“2.3”、変更前の指標TI
2が“3.3”のとき、変更後のパルスの振幅値E
1を参照して、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値E
2を、E
1の約1.2倍として求める(E
2≒1.2*E
1)。
【0049】
(表示手段)
表示制御手段41は、変更後のパルスの振幅値E
1と、変更前のパルスの振幅値E
2と比較可能にモニタ5(
図1参照)に表示する。それにより、ユーザは、変更後のパルスの振幅値E
1と、変更前のパルスの振幅値E
2とを視認することが可能となる。
【0050】
このように、変更前後のパルスの振幅値(E
1、E
2)を表示するので、変更後にパルスの振幅値が減少する場合は、診断能の低下を来し、変更前に描画できていた腫瘍像や血流像などの生体情報が得られなくなるおそれがあるが、ユーザは、パルスの振幅値が減少されたことを認識する。そのような認識の下で、描画を見るので、生体情報の利益と生体侵襲のリスクのバランスが崩れることはない。
【0051】
また、表示制御手段41は、パルスの振幅値E
1、E
2と共に、また、独立して、変更後の指標TI
1と変更前の指標TI
2を比較可能にモニタ5に表示する。それにより、指標TIが変更されたことをユーザが認識可能となり、そのような認識の下で、描画を見るので、生体情報の利益と生体侵襲のリスクのバランスが崩れることはない。
【0052】
なお、第1実施形態では、指標TIの変更に応じて、パルスの振幅値(送信電圧)を変更する構成を示したが、指標TIの変更に応じて変更する出力条件は、パルスの振幅値に限らない。例えば、他の出力条件を変更するように構成してもよい。
【0053】
(動作)
以上に、第1実施形態に係る構成を簡単に説明した。
次に、指標が比較可能に表示されてから変更後のパルスの振幅値と変更後のパルスの振幅値とが比較表示されるまでの一連の動作について
図2を参照して説明する。
図2は、超音波診断装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【0054】
超音波診断においては、出力条件に基づいて、被検体の超音波画像が取得される。
【0055】
ここでは、変更前の指標T1
2に応じた変更前のパルスの振幅値E
2に基づいて、被検体の超音波画像が取得される。取得された超音波画像が、変更前の指標T1
2及び変更前のパルスの振幅値E
2と共にネットワーク上の記憶手段(例えば、画像サーバ)に記録される。
【0056】
安全に関するガイドラインに沿ってTIやMIが変更されると、ユーザは、変更されるTIやMIに応じて送信条件を変更する。Ispta、Isppa、Im、が変更されたときも同様である。
【0057】
この超音波診断装置は、自動的に、TIやMIの指標値の定義の変更前後の送信条件で画像(診断情報)が収集されるように構成される。収集された画像はネットワーク上のデータサーバに保管される。また、この実施形態では、検査(診断情報の収集)段階と読影段階とが分離されていない。それにより、指標値の定義の変更前後の画像の比較が読影段階でも可能となる。これに対し、検査段階と読影段階とが分離されているときでは、一旦検査が終了した後、読影段階に入った状況で、オフラインでDICOMデータベースなどから変更前後の画像が送られることにより、それらの画像の比較が可能とになる。
【0058】
図3は、指標を含むアイテム、及びアイテム毎の割合を示す図である。各アイテムの割合は、各出力条件を参照し、予め定められた計算式に基づいて求められる(この割合の計算には、例えば、超音波診断装置に設けられたシミュレータが用いられる)。
図3に、温度上昇、Ispta、MI、及びTIのアイテムを横並びに配置し、各アイテムの規定値(100%)を棒グラフでハッチングを付して示し、各アイテムに隣接させてそのアイテム毎の調整値(割合)を棒グラフで示す。ここでは、温度上昇の規定値が“+27℃”、Ispta.3の規定値が“720mW/cm
2、MIの規定値が“1.9”、TIの規定値が“6.0”である。この図ではTIが6.0として既定値に達している状態を表している。
【0059】
図3に示すように、アイテム及びアイテム毎の割合がモニタ5に表示され、例えば、パルスの振幅値を変更すると、それに応じてアイテム毎の割合が変動する。アイテム毎の割合を見ながらユーザはパルスの振幅値を調整する。いずれかのアイテムの割合が100%となることで、調整を終了する。ここでは、TIの割合が100%となり、パルスの振幅値の調整が終了する。このように調整されたパルスの振幅値を“E
1”とする。
【0060】
このようにして、変更後の指標T1
1に応じた変更後のパルスの振幅値E
1に基づいて、被検体の超音波画像が取得される。取得された超音波画像が、変更後の指標T1
1及び変更後のパルスの振幅値E
1と共にネットワーク上の記憶手段に記録される。このとき、変更前のパルスの振幅値E
2が変更後のパルスの振幅値E
1に書き替えられる。
【0061】
なお、前述したように、この実施形態では、検査(診断情報の収集)と読影とが分離されていない。すなわち、検査後に、変更後のパルスの振幅値E
1に基づいて取得された超音波画像に基づいて読影が行われる。このとき、
図2に示すように、表示制御手段41は、モニタ5に超音波画像を表示する共に、変更後の指標と変更前の指標とを比較表示する(S101)。それにより、指標が変更されたことをユーザ(操作者、若しくは読影者)が認識可能となる。
【0062】
次に、操作部(図示省略)の操作による指示を受けて、第2算出手段が、変更後のパルスの振幅値E
1を参照して、式(7)に基づいて変更前のパルスの振幅値E
2を求める(S102)。
【0063】
次に、表示制御手段41は、変更後のパルスの振幅値E
1と変更前のパルスの振幅値E
2とを比較可能にモニタ5に表示する(S103)。それにより、パルスの振幅値が変更されたことをユーザ(読影者)が認識可能となる。
【0064】
[第2実施形態]
次に、超音波診断装置の第2実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0065】
第1実施形態では、走査モード、非走査モードに関わらず、変更後のパルスの振幅値E
1を参照し、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値E
2を求める構成を示したが、第2実施形態では、非走査モードにおいて、変更後の超音波ビームの繰り返し周波数を参照し、予め定められた式に基づいて、変更前の繰り返し周波数を求める構成を有する。
【0066】
(第1算出手段)
第1算出手段131は、指標に基づいて繰り返し周波数を求める。
ここでは、変更後の繰り返し周波数が「第1出力条件」に相当し、変更前の繰り返し周波数が「第2出力条件」に相当する。
【0067】
なお、W0は次の式により求められる。
【0068】
【数10】
ここで、f
rは繰り返し周波数、γは他の送信条件である。ここでは、他の条件γを一定とする(γ=const)。
【0069】
式(1)、(8)からパルスの振幅値は次の式で表わされる。
【0071】
変更後の繰り返し周波数f
r1は次の式で示される。
【0073】
また、変更前の繰り返し周波数f
r2は次の式で示される。
【0075】
以上により、第1算出手段131は、指標TI
1、TI
2を参照し、式(10)、(11)に基づいて、繰り返し周波数f
rを求める。
ただし、変更前の繰り返し周波数f
r2は、変更後の繰り返し周波数f
r1によって上書きされ、変更前の繰り返し周波数f
r2を読み出すことはできない。
【0076】
(第2算出手段)
式(10)、(11)からf
r1をf
r2を用いて表わすと、次の式となる。
【0078】
第2算出手段132は、変更後の繰り返し周波数f
r1を参照して、式(12)に基づいて、変更前の繰り返し周波数f
r2を求める。変更前の繰り返し周波数f
r2求めるときは、変更前のパルスの振幅値E
2を求めるときや変更前の他の出力条件を求めるときであってもよく、それらと独立して求めてもよい。
【0079】
例えば、第2算出手段132は、変更後の指標TI
1が“2.3”、変更前の指標TI
2が“3.3”のとき、変更後の繰り返し周波数f
r1を参照して、式(12)に基づいて、変更前の繰り返し周波数f
r2を、f
r1の約1.4倍として求める(f
r2≒1.4*f
r1)。
【0080】
指標がTI
2からTI
1に低くなったときでも、変更前のパルスの振幅値と同じパルスの振幅値で超音波画像を取得したいときは(E
1=E
2)、繰り返し周波数をf
r2からf
r1に低くすればよい。それにより、パルスの振幅値を低減させないで超音波画像を取得することができる。
【0081】
(表示手段)
表示制御手段41は、変更後の繰り返し周波数f
r1と、変更前の繰り返し周波数f
r2と比較可能にモニタ5に表示する。それにより、ユーザは、変更後の繰り返し周波数f
r1と、変更前の繰り返し周波数f
r2とを視認することが可能となる。それにより、繰り返し周波数f
rが減少されたことをユーザが認識可能となる。
【0082】
[第3実施形態]
次に、超音波診断装置の第3実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第3実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0083】
第1実施形態では、走査モード、非走査モードに関わらず、変更後のパルスの振幅値(送信電圧)を参照し、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値を求める構成を示したが、第3実施形態では、走査モードにおいて、走査線密度を参照し、予め定められた式に基づいて、変更前の走査線密度を求める構成を有する。
【0084】
(第1算出手段)
第1算出手段131は、指標に基づいて走査線密度を求める。
ここでは、変更後の走査線密度が「第1出力条件」に相当し、変更前の走査線密度が「第2出力条件」に相当する。
【0085】
なお、W0は次の式により求められる。
【0086】
【数15】
ここで、d
sは走査線密度、δは他の送信条件である。ここでは、他の条件δを一定とする(δ=const)。
【0087】
式(1)、(13)から走査線密度は次の式で表わされる。
【0089】
変更後の走査線密度d
s1は次の式で示される。
【0091】
また、変更前の走査線密度d
s2は次の式で示される。
【0093】
以上により、ここでは、第1算出手段は、指標TI
1、TI
2を参照し、式(15)、(16)に基づいて、走査線密度d
sを求める。
【0094】
ただし、変更前の走査線密度d
s2は、変更後の走査線密度d
s1によって上書きされ、変更前の走査線密度d
s2を読み出すことはできない。
【0095】
(第2算出手段)
式(15)、(16)からd
s2をd
s1を用いて表わすと、次の式となる。
【0097】
第2算出手段132は、変更後の走査線密度d
s1を参照して、式(17)に基づいて、変更前の走査線密度d
s2を求める。変更前の走査線密度d
s2を求めるときは、変更前のパルスの振幅値E
2を求めるときや変更前の他の出力条件を求めるときであってもよく、それらと独立して求めてもよい。
【0098】
例えば、第2算出手段132は、変更後の指標TI
1が“2.3”、変更前の指標TI
2が“3.3”のとき、変更後の走査線密度d
s1を参照して、式(17)に基づいて、変更前の走査線密度d
s2を、d
s1の約1.4倍として求める(d
s2≒1.4*d
s1)。
【0099】
(表示手段)
表示制御手段41は、変更後の走査線密度d
s1と、変更前の走査線密度d
s2と比較可能にモニタ5に表示する。それにより、ユーザは、変更後の走査線密度d
s1と、変更前の走査線密度d
s2とを視認することが可能となる。それにより、走査線密度d
sが減少されたことをユーザが認識可能となる。
【0100】
指標がTI
2からTI
1に低くなったときでも、変更前のパルスの振幅値と同じパルスの振幅値で超音波画像を取得したいときは(E
1=E
2)、走査線密度をd
s2からd
s1に低くすればよい。それにより、パルスの振幅値を低減させないで超音波画像を取得することができる。
【0101】
[第4実施形態]
次に、超音波診断装置の第4実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第4実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0102】
第1実施形態では、走査モード、非走査モードに関わらず、変更後のパルスの振幅値(送信電圧)を参照し、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値を求める構成を示したが、第4実施形態では、走査モードにおいて、フレームレートを参照し、予め定められた式に基づいて、変更前のフレームレートを求める構成を有する。
【0103】
(第1算出手段)
第1算出手段131は、指標に基づいてフレームレートを求める。
ここでは、変更後のフレームレートが「第1出力条件」に相当し、変更前のフレームレートが「第2出力条件」に相当する。
【0104】
なお、W0は次の式により求められる。
【0105】
【数20】
ここで、r
fはフレームレート、εは他の送信条件である。ここでは、他の条件εを一定とする(ε=const)。
【0106】
式(1)、(18)からフレームレートは次の式で表わされる。
【0108】
変更後のフレームレートr
f1は次の式で示される。
【0110】
また、変更前のフレームレートr
f2は次の式で示される。
【0112】
以上により、ここでは、第1算出手段131は、指標TI
1、TI
2を参照し、式(20)、(21)に基づいて、フレームレートr
fを求める。
【0113】
ただし、変更前のフレームレートr
f2は、変更後のフレームレートr
f1によって上書きされ、変更前のフレームレートr
f2を読み出すことはできない。
【0114】
(第2算出手段)
式(20)、(21)からr
f2をr
f1を用いて表わすと、次の式となる。
【0116】
第2算出手段132は、変更後のフレームレートr
f1を参照して、式(22)に基づいて、変更前のフレームレートr
f2を求める。変更前のフレームレートr
f2を求めるときは、変更前のパルスの振幅値E
2を求めるときや変更前の他の出力条件を求めるときであってもよく、それらと独立して求めてもよい。
【0117】
例えば、第2算出手段132は、変更後の指標TI
1が“2.3”、変更前の指標TI
2が“3.3”のとき、変更後のフレームレートr
f1を参照して、式(22)に基づいて、変更前のフレームレートr
f2を、r
f1の約1.4倍として求める(r
f2≒1.4*r
f1)。
【0118】
(表示手段)
表示制御手段41は、変更後のフレームレートr
f1と、変更前のフレームレートr
sf2と比較可能にモニタ5に表示する。それにより、ユーザは、変更後のフレームレートr
f1と、変更前のフレームレートr
f2とを視認することが可能となる。それにより、フレームレートr
fが低くなったことをユーザが認識可能となる。
【0119】
指標がTI
2からTI
1に低くなったときでも、変更前のパルスの振幅値と同じパルスの振幅値で超音波画像を取得したいときは(E
1=E
2)、フレームレートをr
f2からr
f1に低くすればよい。それにより、パルスの振幅値を低減させないで超音波画像を取得することができる。
【0120】
[第5実施形態]
次に、装置の第5実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第5実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0121】
第1実施形態では、走査モード、非走査モードに関わらず、変更後のパルスの振幅値(送信電圧)を参照し、式(7)に基づいて、変更前のパルスの振幅値を求める構成を示したが、第5実施形態では、走査モードにおいて、走査幅を参照し、予め定められた式に基づいて、変更前の走査幅を求める構成を有する。
【0122】
(第1算出手段)
第1算出手段131は、指標に基づいて走査幅を求める。
ここでは、変更後の走査幅が「第1出力条件」に相当し、変更前の走査幅が「第2出力条件」に相当する。
【0123】
なお、W0は次の式により求められる。
【0124】
【数25】
ここで、b
sは走査幅、ηは他の送信条件である。ここでは、他の条件ηを一定とする(η=const)。
【0125】
式(1)、(23)から走査幅は次の式で表わされる。
【0127】
変更後の走査幅b
s1は次の式で示される。
【0129】
また、変更前の走査幅b
s2は次の式で示される。
【0131】
以上により、ここでは、第1算出手段は、指標TI
1、TI
2を参照し、式(25)、(26)に基づいて、走査幅b
sを求める。
【0132】
ただし、変更前の走査幅b
s2は、変更後の走査幅b
s1によって上書きされ、変更前の走査幅b
s2を読み出すことはできない。
【0133】
(第2算出手段)
式(25)、(26)からb
s2をb
s1を用いて表わすと、次の式となる。
【0135】
第2算出手段132は、変更後の走査幅b
s1を参照して、式(27)に基づいて、変更前の走査幅b
s2を求める。変更前の走査幅b
s2求めるときは、変更前のパルスの振幅値E
2を求めるときや変更前の他の出力条件を求めるときであってもよく、それらと独立して求めてもよい。
【0136】
例えば、第2算出手段132は、変更後の指標TI
1が“2.3”、変更前の指標TI
2が“3.3”のとき、変更後の走査幅b
s1を参照して、式(27)に基づいて、変更前の走査幅b
s2を、b
s1の約0.7倍として求める(b
s2≒0.7*b
s1)。
【0137】
(表示手段)
表示制御手段41は、変更後の走査幅b
s1と、変更前の走査幅b
s2と比較可能にモニタ5に表示する。それにより、ユーザは、変更後の走査幅b
s1と、変更前の幅b
s2とを視認することが可能となる。それにより、走査幅b
sが増加されたことをユーザが認識可能となる。
【0138】
指標がTI
2からTI
1に低くなったときでも、変更前のパルスの振幅値と同じパルスの振幅値で超音波画像を取得したいときは(E
1=E
2)、走査幅をb
s2からb
s1に広くすればよい。それにより、パルスの振幅値を低減させないで超音波画像を取得することができる。
【0139】
[第6実施形態]
次に、超音波診断装置の第6実施形態について
図1を参照して説明する。
なお、第6実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0140】
第1、第3から第5の実施形態では、走査モードにおいて、変更後の出力条件を参照し、予め定められた式に基づいて、変更前の出力条件を求める構成を示したが、第6実施形態では、走査幅と走査密度との関係性に基づき、変更後の走査幅及び/または走査密度を求め構成を有する。
【0141】
走査幅b
sと走査線密度d
sとには次の関係式が成り立つ。
【0142】
【数30】
ここで、変更後の走査密度をd
s1とし、変更前の走査密度をd
s2とする。また、走査幅をb
s1、b
s2とする。
【0143】
したがって、制御部13は、指標の変更に応じて走査線密度をd
s2からd
s1に変更するとき、走査線密度に替えて、走査幅をb
s2からb
s1に変更してもよい。例えば、走査線密度を変更することにより指標TIを低くするとき、走査幅を広くすれば指標TIが低くなるので、走査線密度を低くする代わりに、走査幅を広くすればよい。走査線密度を低くしないので、超音波画像の画質低下を防ぐことが可能となる。なお、同じように、走査幅をb
s2からb
s1に変更するとき、走査幅に替えて、走査線密度をd
s2からd
s1に変更してもよい。
【0144】
前記各実施形態では、変更前の送信条件を知るためには、変更後の送信条件から変更前の送信条件が求められるように構成したが、これに限らない、例えば、変更後の送信条件により変更前の送信条件を上書きせずに、変更前の送信条件を履歴として記憶するように構成すればよい。
【0145】
履歴として、診断日時、そのときの指標及び出力条件(動作モード、送信条件)を記憶部に記憶させる。
【0146】
なお、この実施形態では、TIの安全指標を一例として、その指標が変更されたとき、変更前の送信条件を求めるように構成したが、これに限らない。例えば、MI、Ispta.3やIsppa.3の指標が変更されたとき、さらには、例えば、プローブの音響レンズの表面温度やケースハウジングの表面温度の指標が変更されたとき、変更前の送信条件を求めるように構成してもよい。
【0147】
例えば、MIを安全指標としたとき、TIと同様に、出力条件として、パルスの振幅値(送信電圧)、繰り返し周波数、走査幅(視野幅)等の上記各実施態様が適用される。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。