特許第6139304号(P6139304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139304
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】中空操作レバーとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/88 20060101AFI20170522BHJP
   B21D 47/04 20060101ALI20170522BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20170522BHJP
   B21D 5/01 20060101ALI20170522BHJP
   B21D 7/06 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   B21D53/88 Z
   B21D47/04
   B21D19/08 C
   B21D5/01 Q
   B21D7/06 M
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-143023(P2013-143023)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-16474(P2015-16474A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253455
【氏名又は名称】株式会社ヨロズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】外山 昇
(72)【発明者】
【氏名】石附 正春
(72)【発明者】
【氏名】黒井 豊
(72)【発明者】
【氏名】上野 正樹
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/124735(WO,A1)
【文献】 特開2003−053462(JP,A)
【文献】 特開2011−227738(JP,A)
【文献】 特開2000−263169(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第2821684(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/88
B21D 5/01
B21D 7/06
B21D 19/08
B21D 47/04
B60G 7/00
B60T 7/04
G05G 1/30
G05G 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板である被加工材の端部を互いに接合して成形することによって、中空形状を有しつつ、前記端部同士が接合された接合部の接合面に対して交差する交差方向から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸に対して回動可能な中空操作レバーであって、
前記屈曲形状の凹側に設けられ、回動させるための回動力を作用させる操作面側である第1の壁と、
前記支持軸を挿通する孔部が同軸上に設けられ、前記第1の壁の両端に折れ曲がって連続する一対の第2の壁と、
前記第1の壁に対向して設けられ、前記接合部を介して前記一対の第2の壁を連結する第3の壁と、
前記第1の壁における前記屈曲形状の屈曲部に設けられ、前記第1の壁から前記第3の壁に向かう方向に沿ってへこむくぼみと、
前記第1の壁の前記支持軸に交差する方向に延びて設けられ、前記第3の壁から前記第1の壁に向かう方向に沿って膨出する稜線部と、を有し、
前記支持軸に対して水平な断面視で、前記第1の壁は前記被加工材が重なり合わないように屈曲した形状からなる中空操作レバー。
【請求項2】
前記接合部において、前記端部同士がヘミング接合または溶接接合によって互いに接合されている請求項1に記載の中空操作レバー。
【請求項3】
車両用操作ペダルに用いられる請求項1または2に記載の中空操作レバー。
【請求項4】
第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向がなす第1平面に延在する平板である被加工材を、複数の成形型を用いて段階的にプレス加工することによって、中空形状を有しつつ、前記第1方向から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸に対して回動可能な中空操作レバーを製造するための中空操作レバーの製造方法であって、
前記第1方向及び第3方向がなす第2平面において、前記被加工材に前記第3方向に沿って押し出されるとともに第2方向へ伸延する押出部を形成しつつ、前記押出部の両端部に連結され前記押出部を押し出す向きと逆向きへ延在する延在部、および当該延在部の前記押出部が連結された側と逆側の両端部に連結され前記第1方向の互いに離れる向きへ延在する鍔部を形成する押出工程と、
前記第2平面において、前記押出部の中央近傍に前記押出部を押し出した向きと逆向きへ突出する突出部を形成するとともに、前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記突出部と前記押出部とを連結する連結部を中心に、前記押出部、前記延在部及び前記鍔部を、前記押出部を押し出した向きと逆向きへ屈曲させる突出工程と、
前記第2平面において、前記突出部及び前記押出部並びに前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記突出部を、前記押出部を押し出した向きへプレスすることによって、前記押出部、前記延在部及び前記鍔部を、前記連結部を中心に、前記押出部を押し出した向きと逆向きへさらに屈曲させる粗成形工程と、
前記第2平面において、前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記押出部を、前記押出部を押し出した向きと略平行となるように屈曲させ、前記鍔部同士を当接させる当接工程と、
前記鍔部同士を接合する接合工程と、
前記押出部の双方に同軸上に前記支持軸を挿通する孔部を形成する孔部形成工程と、
前記第2方向及び第3方向がなす第3平面において、前記突出部に前記押出部を押し出した向きと逆向きに沿ってへこむくぼみを形成するとともに、前記屈曲形状の屈曲部を中心に前記延在部の両端部を前記押出部を押し出した向きに屈曲させる屈曲工程と、を有する中空操作レバーの製造方法。
【請求項5】
前記粗成形工程及び前記当接工程の間に、前記第2平面において、前記突出部を、前記押出部を押し出した向きに膨出させて稜線部を形成するとともに、前記鍔部同士を近づける膨出工程をさらに有する請求項に記載の中空操作レバーの製造方法。
【請求項6】
前記接合工程において、前記鍔部同士をヘミング接合または溶接接合によって互いに接合させる請求項またはに記載の中空操作レバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空操作レバーとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のブレーキペダルのような湾曲した車両用中空操作レバーを製造する方法として、例えば特許文献1の製造方法がある。この方法は、接続部を介して連結した一対の半割部材を、当該接続部を折り曲げてプレス成形し、当該半割部材に設けられた両フランジ部を当接するとともに、ヘミング加工を施し、両フランジ部を結合するものである。この方法によれば、溶接することなく、両フランジ部を結合できるため、溶接部分のない車両用のブレーキペダルを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−247757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法によって製造された車両用のアーム部品は、車両後方側であり、かつ回動させるための回動力を作用させる操作面側に両フランジ部が結合された接合部が存在し、当該接合部によって操作性が阻害される可能性がある。このため、当該接合部をカバーで覆ったり、操作性が阻害されない程度に追加工したりする必要があり、製造コストが増大し、また製造工程が煩雑となる。また、車両側方側に接合部を配置することによって、車両後方側に突起部を有しない配置が可能であるが、このように配置した場合、ペダル踏み替え時の操作性が阻害される可能性があるため、適切ではない。
【0005】
また、特許文献1に記載の製造方法では、予め屈曲形状が形成された半割部材をプレス成形することによって、屈曲形状を有するアーム部品を形成する。このため、屈曲形状が形成された箇所にヘミング加工を施すとき、材料の伸びが足りない部分が生じる可能性がある。この対策として例えば、半割部材の屈曲形状が形成された箇所に予めスリットを入れておき、プレス成形後に接合する方法が挙げられる。このように特許文献1に記載の製造方法では、アーム部品に屈曲形状を形成することは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、操作性が良く製造が容易な中空操作レバーとその製造方法を提供することを目的とする。また、容易に屈曲形状を形成することのできる中空操作レバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記(1)〜(7)に記載の発明により達成される。
【0008】
(1)平板である被加工材の端部を互いに接合して成形することによって、中空形状を有しつつ、前記端部同士が接合された接合部の接合面に対して交差する交差方向から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸に対して回動可能な中空操作レバーであって、前記屈曲形状の凹側に設けられ、回動させるための回動力を作用させる操作面側である第1の壁と、前記支持軸を挿通する孔部が同軸上に設けられ、前記第1の壁の両端に折れ曲がって連続する一対の第2の壁と、前記第1の壁に対向して設けられ、前記接合部を介して前記一対の第2の壁を連結する第3の壁と、前記第1の壁における前記屈曲形状の屈曲部に設けられ、前記第1の壁から前記第3の壁に向かう方向に沿ってへこむくぼみと、を有する中空操作レバーである。
【0009】
(2)前記第1の壁の前記支持軸に交差する方向に延びて設けられ、前記第3の壁から前記第1の壁に向かう方向に沿って膨出する稜線部をさらに有する上記(1)に記載の中空操作レバーである。
【0010】
(3)前記接合部において、前記端部同士がヘミング接合または溶接接合によって互いに接合されている上記(1)または(2)に記載の中空操作レバーである。
【0011】
(4)車両用操作ペダルに用いられる上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の中空操作レバーである。
【0012】
(5)第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向がなす第1平面に延在する平板である被加工材を、複数の成形型を用いて段階的にプレス加工することによって、中空形状を有しつつ、前記第1方向から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸に対して回動可能な中空操作レバーを製造するための中空操作レバーの製造方法であって、前記第1方向及び前記第3方向がなす第2平面において、前記被加工材に前記第3方向に沿って押し出されるとともに第2方向へ伸延する押出部を形成しつつ、前記押出部の両端部に連結され前記押出部を押し出す向きと逆向きへ延在する延在部、および当該延在部の前記押出部が連結された側と逆側の両端部に連結され前記第1方向の互いに離れる向きへ延在する鍔部を形成する押出工程と、前記第2平面において、前記押出部の中央近傍に前記押出部を押し出した向きと逆向きへ突出する突出部を形成するとともに、前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記突出部と前記押出部とを連結する連結部を中心に、前記押出部、前記延在部及び前記鍔部を、前記押出部を押し出した向きと逆向きへ屈曲させる突出工程と、前記第2平面において、前記突出部及び前記押出部並びに前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記突出部を、前記押出部を押し出した向きへプレスすることによって、前記押出部、前記延在部及び前記鍔部を、前記連結部を中心に、前記押出部を押し出した向きと逆向きへさらに屈曲させる粗成形工程と、前記第2平面において、前記押出部及び前記延在部並びに前記延在部及び前記鍔部の間の屈曲を維持しつつ、前記押出部を、前記押出部を押し出した向きと略平行となるように屈曲させ、前記鍔部同士を当接させる当接工程と、前記鍔部同士を接合する接合工程と、前記押出部の双方に同軸上に前記支持軸を挿通する孔部を形成する孔部形成工程と、前記第2方向及び第3方向がなす第3平面において、前記突出部に前記押出部を押し出した向きと逆向きに沿ってへこむくぼみを形成するとともに、前記屈曲形状の屈曲部を中心に前記延在部の両端部を前記押出部を押し出した向きに屈曲させる屈曲工程と、を有する中空操作レバーの製造方法である。
【0013】
(6)前記粗成形工程及び前記当接工程の間に、前記第2平面において、前記突出部を、前記押出部を押し出した向きに膨出させて稜線部を形成するとともに、前記鍔部同士を近づける膨出工程をさらに有する上記(5)に記載の中空操作レバーの製造方法である。
【0014】
(7)前記接合工程において、前記鍔部同士をヘミング接合または溶接接合によって互いに接合する上記(5)または(6)に記載の中空操作レバーの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
上記(1)に記載の発明によれば、屈曲形状の凹側に設けられる第1の壁が、回動力を作用させる操作面側となるため、操作面側に接合部が存在せず、操作性の良い中空操作レバーを提供することができる。
【0016】
上記(2)に記載の発明によれば、第1の壁の支持軸に交差する方向に沿って、第3の壁から第1の壁に向かう方向に沿って膨出する稜線部を有するため、回動力に対する強度が向上する。
【0017】
上記(3)に記載の発明によれば、接合部において、端部同士がヘミング接合または溶接接合によって互いに接合されるため、被加工材の端部同士を容易にかつ確実に接合することができる。
【0018】
上記(4)に記載の発明によれば、上記(1)〜(3)に記載の中空操作レバーを車両用操作ペダルに用いるため、車両用操作ペダルの操作面側に接合部が存在せず、操作性の良い車両用操作ペダルを提供することができる。
【0019】
上記(5)に記載の発明によれば、突出部を、回動力を作用させる操作面側とすることによって、操作面側に接合部が存在しないため、操作性が良く製造が容易な中空操作レバーの製造方法を提供することができる。また、突出部に押出部を押し出した向きと逆向きに沿ってへこむくぼみを形成するとともに、屈曲形状の屈曲部を中心に延在部の両端部を押出部を押し出した向きに屈曲させるため、材料の伸びが足りない部分が生じることなく、容易に屈曲形状を形成することができる。
【0020】
上記(6)に記載の発明によれば、突出部に稜線部が形成されるため、回動力に対する強度が向上する。
【0021】
上記(7)に記載の発明によれば、接合工程において、鍔部同士がヘミング接合または溶接接合によって互いに接合されるため、被加工材の鍔部同士を容易に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るブレーキペダル装置の一例を示す概略側面図である。
図2】本実施形態に係るブレーキペダルを示す斜視図である。
図3】本実施形態に係るブレーキペダルのプレス加工前の平板である被加工材を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の押出工程を示すY軸に直交する断面図である。
図5】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の突出工程を示すY軸に直交する断面図である。
図6】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方向の粗成形工程を示すY軸に直交する断面図である。
図7】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の膨出工程を示すY軸に直交する断面図である。
図8】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の当接工程を示すY軸に直交する断面図である。
図9】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の接合工程を示すY軸に直交する断面図である。
図10】孔部形成工程終了後の被加工材を示す斜視図である。
図11】本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の屈曲工程を示すX軸に直交する断面図である。
図12図11のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において平板が配置される面をXY平面(第1平面)として、X方向(第1方向)と直交して平板が伸延する方向をY方向(第2方向)、XY平面に垂直な方向をZ方向(第3方向)とする。
【0024】
本実施形態に係る中空操作レバーとしては、例えば、ブレーキペダル装置に使用されるブレーキペダルがある。ブレーキペダル装置は、概して、図1に示すように、ダッシュパネル1に取り付けられたブラケット2と、ブラケット2に設けられた支持軸3に回動可能に装着されたブレーキペダル4と、ブレーキペダル4の上部位を貫通する貫通するピン5と、ピン5に一端が連結され、他端がマスターバック(不図示)と連結されたロッド6と、ブレーキペダル4の下部に取り付けられた踏み板7と、を有している。
【0025】
ブレーキペダル4は、図2に示すように、平板である被加工材Wの端部W1,W2を互いに接合して成形することによって、中空形状を有しつつ、端部W1,W2同士が接合された接合部31の接合面(YZ平面)に対して交差するX方向(交差方向)から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸3に対して回動可能に設けられている。
【0026】
また、ブレーキペダル4は、屈曲形状の凹側に設けられ、回動させるための回動力Fを作用させる操作面側である第1の壁10と、支持軸3を挿通する孔部21が同軸上に設けられ、第1の壁10の両端に折れ曲がって連続する一対の第2の壁20と、第1の壁10に対向して設けられ、接合部31を介して一対の第2の壁20を連結する第3の壁30と、を有する。ブレーキペダル4はさらに、第1の壁10における屈曲形状の屈曲部12に設けられ、第1の壁10から第3の壁30に向かう方向に沿ってへこむくぼみ13を有する。
【0027】
ブレーキペダル4はさらに、第1の壁10の支持軸3に交差する方向に延びて設けられ、第3の壁30から第1の壁10に向かう方向に沿って膨出する稜線部11を有する。
【0028】
また、端部W1,W2同士は、接合部31においてヘミング接合によって互いに接合されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る中空操作レバーの製造方法について説明する。ここでは中空操作レバーの一例として、ブレーキペダル4の製造方法について説明する。ブレーキペダル4は、概説すると、X方向及びX方向と直交するY方向がなすXY平面に延在する平板である被加工材Wを、複数の成形型を用いて段階的にプレス加工することによって製造される。以下、詳述する。
【0030】
図3は、本実施形態に係るブレーキペダル4のプレス加工前の平板である被加工材Wを示す斜視図である。
【0031】
まず、X方向及びZ方向がなすXZ平面(第2平面)において、被加工材WにZ方向下向きに沿って押し出されるとともにY方向へ伸延する押出部Pを形成しつつ、押出部Pの両端部に連結されZ方向上向きへ延在する延在部E、および延在部Eの押出部Pが連結された側と逆側の両端部に連結されX方向の互いに離れる向きへ延在する鍔部Tを形成する(押出工程)。
【0032】
図4は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の押出工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0033】
平板である被加工材Wは、図4に示すように、第1成形型80によってZ方向下向きに押し出され、押出部Pが形成される。第1成形型80は、第1上型81と、第1上型81に対向して設けられる第1下型82と、ブランクホルダ83と、を有する。第1上型81は、第1下型82に向かって突出する凸部84を有する。第1下型82は、第1上型81の凸部84に対応して窪んだ溝部85を有する。また、ブランクホルダ83は、第1上型81の外周に設けられる。
【0034】
押出工程では、まず第1成形型80内に被加工材Wを設置し、第1上型81を第1下型82から離隔した状態のまま第1下型82及びブランクホルダ83を近接させ、第1下型82及びブランクホルダ83によって被加工材Wを挟持する。この後、第1上型81を第1下型82に近接させる。これによって、被加工材WにZ方向下向きに沿って押し出されるとともにY方向へ伸延する押出部Pが形成されつつ、押出部Pの両端部に連結されZ方向上向きへ延在する延在部E、および延在部Eの押出部Pが連結された側と逆側の両端部に連結されX方向の互いに離れる向きへ延在する鍔部Tが形成される。後述する接合工程においてヘミング接合を実施するため、X方向の右側に設けられた第1鍔部T1は、X方向の左側に設けられた第2鍔部T2よりも短く形成される。
【0035】
この押出工程の際には、第1下型82及びブランクホルダ83によって被加工材Wが挟持されているため、被加工材Wの流入の偏りが抑制され、しわ等の発生を防止できる。
【0036】
次に、XZ平面において、押出部Pの中央近傍にZ方向上向きへ突出する突出部Sを形成するとともに、押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、突出部Sと押出部Pとを連結する連結部Cを中心に、押出部P、延在部E及び鍔部Tを、Z方向上向きへ屈曲させる(突出工程)。
【0037】
図5は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の突出工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0038】
押出工程において押出部P、延在部E及び鍔部Tが形成された被加工材Wは、図5に示すように、第2成形型90によって突出部Sが形成される。第2成形型90は、第2上型91と、第2上型91に対向して設けられる第2下型92と、を有する。第2上型91は、第2下型92に向かって突出する凸部93を有する。凸部93の下面93a及び第2下型92の上面92aは、突出部Sに対応した形状を有する。また、凸部93の下面93a及び第2下型92の上面92aは、突出部Sに対応した形状のX方向外側に傾斜部93b,92bをそれぞれ有する。
【0039】
突出工程では、まず第2成形型90内に被加工材Wを設置し、第2上型91と第2下型92とを近接させる。これによって、押出部PのX方向の中央近傍にZ方向上向きへ突出する突出部Sが形成される。また、傾斜部93b,92bによって突出部Sと押出部Pとを連結する連結部Cが形成されつつ、当該連結部Cを中心に、押出部P、延在部E及び鍔部TがZ方向上向きへ屈曲される。
【0040】
次に、XZ平面において、突出部S及び押出部P並びに押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、突出部Sを、Z方向下向きへプレスすることによって、連結部Cを中心に、押出部P、延在部E及び鍔部Tを、Z方向上向きへさらに屈曲させる(粗成形工程)。
【0041】
図6は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の粗成形工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0042】
突出工程において突出部Sが形成された被加工材Wは、図6に示すように、第3成形型100によって、連結部Cを中心に、押出部P、延在部E及び鍔部TがZ方向上向きへさらに屈曲される。第3成形型100は、第3上型101と、第3上型101に対向して設けられる第3下型102と、を有する。第3上型101は、第3下型102に向かって突出する凸部103を有する。凸部103の下面103a及び第3下型102の上面102aは、X方向に略平行に設けられている。また、凸部103のX方向の幅は、延在部E及び鍔部Tが連結される部位同士間の幅より小さく形成される。
【0043】
粗成形工程では、まず連結部Cが第3下型102に接するように、被加工材Wを第3成形型100内に配置し、第3上型101と第3下型102とを近接させる。これによって、突出工程においてZ方向上向きに突出された突出部Sは平面となる。そして、突出部S及び押出部P並びに押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲が維持されつつ、押出部P、延在部E及び鍔部Tは、連結部Cを中心に、Z方向上向きへさらに屈曲される。
【0044】
次に、XZ平面において、突出部SをZ方向下向きに膨出させて稜線部11を形成するとともに、鍔部T同士を近づける(膨出工程)。
【0045】
図7は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の膨出工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0046】
粗成形工程において押出部P、延在部E及び鍔部Tが、連結部Cを中心に、Z方向上向きへさらに屈曲された被加工材Wは、図7に示すように、第4成形型110によって、稜線部11が形成される。第4成形型110は、第4上型111と、第4上型111に対向して設けられる第4下型112と、を有する。第4上型111は、第4下型112に向かって突出する凸部113を有する。凸部113の下面113a及び第2下型112の上面112aは、稜線部11に対応した形状を有する。また、凸部113は、第3成形型100の凸部103よりも押圧方向に長く、かつX方向の幅が狭く形成されている。凸部113のX方向の幅は、延在部E及び鍔部Tが連結される部位同士間の幅より小さく形成される。
【0047】
膨出工程では、まず第4成形型110内に被加工材Wを設置し、第4上型111と第4下型112とを近接させる。これによって、粗成形工程において平面となった突出部SにZ方向下向きに膨出された稜線部11が形成される。またこのとき、突出部S及び押出部P並びに押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲が維持されつつ、鍔部T同士が近づく。
【0048】
次に、XZ平面において、押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、押出部PをX方向と略平行となるように屈曲させ、鍔部T同士を当接させる(当接工程)。
【0049】
図8は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の当接工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0050】
膨出工程において稜線部11が形成された被加工材Wは、図8に示すように、反時計回りに90度回転され、第5成形型120によって、押出部PをX方向と略平行となるように屈曲させ、鍔部T同士を当接させる。第5成形型120は、第5上型121と、第5上型121に対向して設けられる第5下型122と、を有する。第5上型121は、押出部PをX方向と略平行となるように屈曲させるための第1溝部123及び鍔部Tとの干渉を避けるための第2溝部124を有する。第5下型122は、第5上型121と同様に、第1溝部125及び第2溝部126を有する。
【0051】
当接工程では、まず第5成形型120内に反時計回りに90度回転された被加工材Wを設置し、第5上型121と第5下型122とを近接させる。これによって、第5上型121の第1溝部123が押出部PをZ方向下向きに、第5下型122の第1溝部125が押出部PをZ方向上向きにそれぞれ押圧し、押出部PがX方向と略平行となるように屈曲される。またこのとき、押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲は維持されつつ、鍔部T同士が当接する。
【0052】
次に、当接された鍔部T同士をヘミング接合によって接合する(接合工程)。
【0053】
図9は、本実施形態に係るブレーキペダルの製造方法の接合工程を示すY軸に直交する断面図である。
【0054】
当接工程において鍔部T同士が当接された被加工材Wは、図9に示すように、第6成形型(不図示)によって段階的にヘミング接合される。
【0055】
当接工程では、第2鍔部T2が、当該第2鍔部T2よりも短く形成された第1鍔部T1を覆うようにヘミング接合される。
【0056】
次に、押出部Pの双方に同軸上にフロードリル加工によって支持軸3を挿通する孔部21を形成する(孔部形成工程)。なお、孔部21の形成方法はフロードリル加工に限られず、プレス加工などであってもよい。
【0057】
図10は、孔部形成工程終了後の被加工材Wを示す斜視図である。
【0058】
当接工程において鍔部T同士がヘミング接合された被加工材Wは、フロードリル加工機(不図示)によって、図10に示すように、押出部Pの双方に、同軸上に支持軸3を挿通する孔部21が形成される。
【0059】
次に、YZ平面(第3平面)において、突出部SにZ方向下向きにへこむくぼみ13を形成するとともに、屈曲形状の屈曲部12を中心に延在部Eの両端部をZ方向上向きに屈曲させる(屈曲工程)。
【0060】
図11は、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法の屈曲工程を示すX軸に直交する断面図である。図12図11のA−A線に沿う断面図である。
【0061】
孔部形成工程において孔部21が形成された被加工材Wは、図11,12に示すように、上下反転され、第7成形型130によって、屈曲部12を中心に延在部EのY方向の両端がZ方向上向きに屈曲される。第7成形型130は、第7上型131と、第7上型131に対向して設けられる一対の第7下部132と、を有する。第7上型131は、くぼみ13に対応した形状の凸部133を有するとともに、延在部Eの両端部を屈曲させる際に、X方向の幅寸法Lを保持するための保持部134を備える。一対の第7下型132は、Y方向の中央近傍から互いに離れる向きへそれぞれ配置され、それぞれ回動可能に設けられる。
【0062】
屈曲工程では、まず、第7成形型130内に上下反転された被加工材Wを設置し、凸部133が被加工材WのY方向の中央近傍に当接するように、第7上型131と第7下型132とを近接させる。これによって、第7下型132が第7上型131及び第7下型132の近接とともに、Z方向上向きに回動される。したがって、X方向の幅寸法Lが保持されつつ突出部SにZ方向下向きにへこむくぼみ13が形成され、同時に屈曲形状の屈曲部12を中心に延在部Eの両端部がZ方向上向きに屈曲される。
【0063】
以上の工程を通じて、ブレーキペダル4が製造される。
【0064】
なお、製造方法において説明した押出部P、延在部E、突出部S及び鍔部T1,T2はそれぞれ実施形態において説明した一対の第2の壁20、第3の壁30、第1の壁10、端部W1,W2に対応する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係るブレーキペダル4は、平板である被加工材Wの端部W1,W2を互いに接合して成形することによって、中空形状を有しつつ、端部W1,W2同士が接合されたYZ平面に対して交差するX方向から見て屈曲した屈曲形状を備え、支持軸3に対して回動可能である。またブレーキペダル4は、屈曲形状の凹側に設けられ、回動させるための回動力Fを作用させる操作面側である第1の壁10と、支持軸3を挿通する孔部21が同軸上に設けられ、第1の壁10の両端に折れ曲がって連続する一対の第2の壁20と、第1の壁10に対向して設けられ、接合部31を介して一対の第2の壁20を連結する第3の壁30と、を有する。ブレーキペダル4はさらに、第1の壁10における屈曲形状の屈曲部12に設けられ、第1の壁10から第3の壁30に向かう方向に沿ってへこむくぼみ13を有する。このため、操作面側に接合部31が存在せず、操作性の良いブレーキペダル4を提供することができる。
【0066】
また、第1の壁10の支持軸3に交差する方向に延びて設けられ、第3の壁30から第1の壁10に向かう方向に沿って膨出する稜線部11をさらに有する。このため、回動力Fに対する強度が向上する。
【0067】
また、接合部31において、端部W1,W2同士がヘミング接合によって互いに接合されている。このため、被加工材Wの端部W1,W2同士を容易にかつ確実に接合することができる。
【0068】
また、以上説明したように、本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法は、X方向及びY方向がなすXY平面に延在する平板である被加工材Wを、複数の成形型を用いて段階的にプレス加工することによって、中空形状を有しつつ、X方向から見て屈曲した屈曲形状を有するブレーキペダル4を製造するためのブレーキペダル4の製造方法である。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法は、XZ平面において、被加工材WにZ方向下向きに沿って押し出されるとともにY方向へ伸延する押出部Pを形成しつつ、押出部Pの両端部に連結されZ方向上向きへ延在する延在部E、および延在部Eの押出部Pが連結された側と逆側の両端部に連結されX方向の互いに離れる向きへ延在する鍔部Tを形成する押出工程を有する。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法はさらに、XZ平面において、押出部Pの中央近傍にZ方向上向きへ突出する突出部Sを形成するとともに、押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、突出部Sと押出部Pとを連結する連結部Cを中心に、押出部P、延在部E及び鍔部Tを、Z方向上向きへ屈曲させる突出工程を有する。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法はさらに、XZ平面において、突出部S及び押出部P並びに押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、突出部SをZ方向下向きへプレスすることによって、押出部P、延在部E及び鍔部Tを、連結部Cを中心に、Z方向上向きへさらに屈曲させる粗成形工程を有する。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法はさらに、XZ平面において、押出部P及び延在部E並びに延在部E及び鍔部Tの間の屈曲を維持しつつ、押出部PをZ方向と略平行となるように屈曲させ、鍔部T同士を当接させる当接工程と、鍔部T同士をヘミング接合する接合工程と、を有する。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法はさらに、押出部Pの双方にフロードリル加工によって、同軸上に支持軸3を挿通する孔部21を形成する孔部形成工程を有する。本実施形態に係るブレーキペダル4の製造方法はさらに、YZ平面において、突出部SにZ方向下向きにへこむくぼみ13を形成するとともに、屈曲形状の屈曲部12を中心に延在部Eの両端部をZ方向上向きに屈曲させる屈曲工程を有する。このため、突出部Sを、回動力Fを作用させる操作面側とすることによって、操作面側に接合部31が存在しない。よって、操作性が良く製造が容易なブレーキペダル4の製造方法を提供することができる。また、屈曲工程において、突出部SにZ方向下向きにへこむくぼみ13を形成するとともに、屈曲形状の屈曲部12を中心に延在部Eの両端部をZ方向上向きに屈曲させるため、材料の伸びが足りない部分が生じることなく、容易に屈曲形状を形成することができる。
【0069】
また、粗成形工程及び当接工程の間に、XZ平面において、突出部SをZ方向下向きに膨出させて稜線部11を形成するとともに、鍔部T同士を近づける膨出工程をさらに有する。このため、回動力Fに対する強度が向上する。
【0070】
また、接合工程において、鍔部T同士をヘミング接合によって互いに接合させる。このため、被加工材Wの鍔部T同士を容易にかつ確実に接合することができる。
【0071】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0072】
例えば、接合工程において鍔部T同士をヘミング接合によって接合したが、溶接接合によって接合してもよい。この構成によれば、より強度の高いブレーキペダル4を提供できる。
【0073】
また、孔部形成工程は接合工程終了後に実施されたが、屈曲工程終了後に実施されてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、ブレーキペダル4として使用されたが、クラッチペダルアームなどのような長尺なアーム状をした車両用部品にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 第1の壁、
11 稜線部、
12 屈曲部、
13 くぼみ、
20 一対の第2の壁、
21 孔部、
30 第3の壁、
31 接合部、
4 ブレーキペダル、
80,90,100,110,120,130 成形型、
C 連結部、
E 延在部、
F 回動力、
P 押出部、
S 突出部、
T,T1,T2 鍔部、
W 被加工材、
W1,W2 端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12