特許第6139315号(P6139315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139315
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】リン回収装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20170522BHJP
   C01B 25/02 20060101ALI20170522BHJP
   B01F 9/02 20060101ALI20170522BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20170522BHJP
   B65G 33/14 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   C02F1/58 S
   C01B25/02 Z
   B01F9/02 D
   B01F3/12
   B65G33/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-153096(P2013-153096)
(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公開番号】特開2015-20159(P2015-20159A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】000230571
【氏名又は名称】日本下水道事業団
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小城 和高
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敏一
(72)【発明者】
【氏名】若山 正憲
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−262599(JP,A)
【文献】 特開2004−290862(JP,A)
【文献】 特開2004−051452(JP,A)
【文献】 特開昭48−082459(JP,A)
【文献】 特開昭53−131570(JP,A)
【文献】 特開2013−111789(JP,A)
【文献】 特開昭59−142830(JP,A)
【文献】 特公昭46−036306(JP,B1)
【文献】 実開平01−008928(JP,U)
【文献】 特開昭59−177102(JP,A)
【文献】 特開2004−043273(JP,A)
【文献】 特開2001−286701(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048705(WO,A1)
【文献】 実開昭57−148428(JP,U)
【文献】 特開2015−020156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/58− 1/64
B01F 1/00− 5/26
9/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部が、かつ、前記開口部に相対向するように端板が、形成された円筒形状の反応槽と、
前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の内部に向けて延在する被処理水供給管と、
前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の前記内部に向けて延在するリン回収材供給管とを具え、
前記反応槽は、その中心軸が水平面に対して傾斜することにより、前記開口部の位置が前記内部の位置よりも高くなるようにして配設され、
前記反応槽の内壁面には、前記開口部から前記開口部と相対する前記端板に至るまでらせん状の板状部材が立設されていることを特徴とする、リン回収装置。
【請求項2】
一端側に開口部が、かつ、前記開口部に相対向するように端板が、形成された円筒形状の反応槽と、
前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の内部に向けて延在する被処理水供給管と、
前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の前記内部に向けて延在するリン回収材供給管とを具え、
前記反応槽は、その中心軸が水平面に対して傾斜することにより、前記開口部の位置が前記内部の位置よりも高くなるようにして配設され、
前記反応槽の内壁面には、前記開口部から前記開口部と相対する前記端板に至るまで複数のらせん状の板状部材が立設されていることを特徴とする、リン回収装置。
【請求項3】
前記複数のらせん状の板状部材は、当該板状部材の数をnとした場合において、互いの先端部が360/n度の角度をなして位置するように配設されていることを特徴とする、請求項2に記載のリン回収装置。
【請求項4】
前記反応槽の前記開口部に沿って形成した堰を具えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載のリン回収装置。
【請求項5】
前記堰と前記板状部材の先端面との間に配設した傾斜板を具えることを特徴とする、請求項4に記載のリン回収装置。
【請求項6】
前記反応槽の前記開口部の径を、前記反応槽の前記内部の径に比較して小さくする、又は前記開口部の径及び前記端板の径を、前記内部の径に比較して小さくしたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載のリン回収装置。
【請求項7】
前記反応槽の前記中心軸に垂直な断面に沿って見た場合において、前記板状部材を、少なくとも前記断面の内方に位置する第1の板状部材片と、前記断面の外方に位置する第2の板状部材片とに分断して離隔配置し、前記第1の板状部材片の断面に沿った第1の直線と、前記第2の板状部材片の断面に沿った第2の直線とが一致する、又は前記第1の直線が前記第2の直線の内側に位置し、前記第2の板状部材片と交差することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のリン回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
都市下水または有機性廃水にはリンが含まれている場合が多く、このようなリン含有の有機性廃水が東京湾などの内湾、琵琶湖などの湖沼の閉鎖性水域に流れ込むことにより、リンを原因物質とする富栄養化の問題が生じている。一方で、リンは特に農作物の肥料源として重要な資源であるが、我が国はリン鉱石を生産せず、輸入に頼っている状況である。
【0003】
したがって、上述のようなリン含有廃水中からリンを効率良く回収し、リサイクルすることができれば、上述した富栄養化の問題を解消することができるとともに、リン資源の国内での自活を図ることができる。
【0004】
廃水中からリンを除去するためには、従来、各種金属塩を用いた凝集沈殿法や晶析脱リン法が用いられていた。しかしながら、凝集沈殿法はAl塩、Fe塩、Ca塩等の薬剤コストがきわめて高くなり、また生成した沈殿物の処理が大きな問題となっている。また晶析脱リン法はヒドロキシルアパタイトの種晶を用い、リンを効率よくヒドロキシルアパタイトに変換し、これを除去する方法(HAP方式)であり、生成沈澱物は少なくなるものの、液中の HCOイオンが晶析を阻害するため、一度酸性にしてHCOを除去した後、弱アルカリ側にpHをもどす必要がある。このため凝集沈殿法と同様に薬剤によるランニングコストが大きくなる。
【0005】
かかる問題に鑑み、特許文献1では、ポリリン酸蓄積能を有するミクロコッカス様細菌の、好気的条件下でリン含有廃水と接触させることによってリンを吸着し、当該菌を嫌気的条件下におくことにより吸着したリンを放出する性質を利用して、廃水中のリンを回収する試みがなされている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、高効率に廃水中のリンを回収することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献1には、嫌気工程及び好気工程を経てリンの脱着を行う微生物を用い、リンを含有する汚泥を得た後、この汚泥を濃縮し、濃縮汚泥からリンを放出させて得たリン含有分離水にマグネシウム塩を添加し、リンをリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)として析出させ、回収する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、この方法では、一定の反応時間が必要であり、MAPを生成させるために大きな反応槽が必要になる。そして、生成されたMAPを取り出す間、その反応槽では処理を行なえないので、連続的に廃水を処理するためには複数の反応槽が必要である。また、反応槽の他に熟成槽や、これらよりもさらに大きいサイズの沈殿槽が必要になる場合もある。このように、反応槽、熟成槽及び沈殿槽として巨大なタンクがいくつも必要になるため、処理水量の多い地域の水処理を上述の構成の装置で対応しようとすると、水処理装置の規模が大きくなり、水処理施設を設置するために広大な敷地が必要となる(特許文献2)。
【0008】
また、反応槽では、内部を攪拌するために空気で曝気している。そのため、反応槽において、微細な生成物が発生する可能性があるだけでなく、反応槽で生成された結晶を破砕してしまう可能性もある。このため、微細な生成物や破砕された結晶が反応槽の外へ流出すると、反応槽よりも後段の配管やプロセスにおいて結晶が蓄積したり成長したりして、水処理装置のメンテナンスの頻度が増えて稼働率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−262599号
【特許文献2】特許第4028189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、小型化で、廃水から得たリン結晶の破砕を抑制し、メンテナンスを簡易化したリン回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のリン回収装置は、一端側に開口部が形成された円筒形状の反応槽と、前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の内部に向けて延在する被処理水供給管と、前記反応槽の前記開口部から前記反応槽の前記内部に向けて延在するリン回収材供給管とを具える。また、前記反応槽は、その中心軸が水平面に対して傾斜することにより、前記開口部の位置が前記内部の位置よりも高くなるようにして配設され、前記反応槽の内壁面には、前記開口部から前記内部に向けてらせん状の板状部材が立設されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。
図2】第2の実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。
図3】第2の実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。
図4】第2の実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。
図5】第2の実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。
図6】第2の実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。
図7】第2の実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。
図8】第3の実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。
図9】第3の実施形態におけるリン回収装置の変形例の概略構成図である。
図10】第4の実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。
図11】第5の実施形態におけるリン回収装置の反応槽の開口部近傍を拡大して示す切欠図である。
図12図11に示す箇所を平面的に見た場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。
図1に示すリン回収装置10は、一端側に開口部11Bが形成された円筒形状の反応槽11を有している。反応槽11の内壁面11A上には、開口部11B側から反応槽11の内部、本実施形態では開口部11Bと相対向する端板11Cに向けて、右回り(時計回り)に巻回してなるらせん状の板状部材12が幅方向を中心に向けてその外側面側を反応槽11の内面に固着させて開らせん状に立設されている。なお、本実施形態において、反応槽11は円筒形状としているが、多角形のドラム状として構成することもできる。
【0014】
なお、らせん状の板状部材12は、反応槽11の端板11Cに至るまで形成されていることが必要である。これによって、反応槽11内に供給したリン回収材が反応槽11の端板11Cにまで十分に供給され、反応槽11内に供給された被処理水とリン回収材との接触割合が増大して、被処理水Wより十分にリン回収を行うことができる。
【0015】
また、本実施形態において、らせん状の板状部材12は右回り(時計回り)に巻回させているが、左回り(反時計回り)に巻回させることもできる。さらに、本実施形態では、らせん状の板状部材12を121,122,123,124の4つのターンから構成するようにしているが、当該ターンの数は必要に応じて任意の数とすることができる。
【0016】
反応槽11内には、外部からリンを含む被処理水Wを当該反応槽11内に導入するための被処理水供給管としての配管13と、外部からリン回収材Sを当該反応槽11内に導入するためのリン回収材供給管としての配管14とが配設されている。図1から明らかなように、配管13及び14は、反応槽11の開口部11Bから、反応槽11の内壁面に配設された、らせん状の板状部材12の中心部分に形成された略円筒状の空間内を貫通するようにして配設されている。
【0017】
また、図1に示すように、配管13は、以下に説明するリン回収方法において、反応槽11内に供給した被処理水Wが、らせん状の板状部材12の回転によって反応槽11の開口部11Bから外部に短時間で漏洩(板状部材12から越流)しないように、その先端部13Aが反応槽11のなるべく内部、好ましくは端板11Cの近傍に位置するように配設することが好ましい。
【0018】
一方、配管14は、以下に説明するリン回収方法において、反応槽11内に供給したリン回収材Sが、反応槽11内に供給した被処理水Wと十分に接触し、リン回収効率を向上させるべく、その先端部14Aが反応槽11のなるべく開口部11B側に位置することが好ましい。しかしながら、開口部11Bにあまりに近接し過ぎると、以下に説明するリン回収方法において、リン回収材Sがらせん状の板状部材12(の回転)によって反応槽11の内部に送られずに、開口部11Bより外部に漏れ出てしまう場合がある。したがって、反応槽11の傾斜角にもよるが、図1に示すように、配管14は、その先端部14Aが、例えばらせん状の板状部材12の2番目のターン122の位置するように配設することが好ましい。
【0019】
なお、上述した構成から明らかなように、本実施形態の反応槽11は、配管13及び14を導入する開口部11Bが反応槽11の左端部に形成されているため、従来の縦型の反応槽とは異なり、横型の反応槽を構成することが分かる。
【0020】
また、図1に示すように、反応槽11は、その中心軸I−Iが水平面に対して傾斜しており、開口部11Bの位置が端板11Cの位置よりも高くなっている。これは、本実施形態の反応槽11が、従来の縦型の反応槽と異なり横型の反応槽の形態を採ってはいるものの、反応槽11内にはある程度の被処理水Wを保持し、当該被処理水W中に含まれるリンをリン回収材Sを用いて回収する必要があることに起因する。
【0021】
なお、反応槽11の中心軸I−Iと水平面とのなす角度、具体的には、反応槽11自体と水平面とのなす角度θは、反応槽11の大きさや反応槽11内に保持する被処理水Wの量に依存するが、例えば5度〜30度の大きさとする。
【0022】
反応槽11の外周面には、図示しない複数のローラが反応槽11の当該外周面と接触するようにして配設され、これら複数のローラが図示しないモータ等によって駆動されることによって、反応槽11は、図1に示すように、適宜時計回りあるいは反時計回りに回転駆動されるようになっている。
【0023】
なお、反応槽11、板状部材12、配管13及び14は被処理水W等に対して耐食性を有するステンレス部材の他、ガラス部材、セラミック部材等から構成することができる。
【0024】
次に、図1に示すリン回収装置10を用いたリン回収方法について説明する。
最初に、反応槽11を図示しない複数のローラ等を介して反時計回りに回転させる。次いで、被処理水供給管である配管13より被処理水Wを反応槽11内に導入するとともに、リン回収材供給管である配管14よりリン回収材Sを反応槽11内に導入する。
【0025】
リン回収材Sは特に限定されるものではなく、ヒドロキシルアパタイトの種晶(HAP法)やマグネシウム塩(MAP法)等の公知のものを使用することができる。
【0026】
このとき、反応槽11内に導入された被処理水Wは反応槽11内で開口部11Bに向けて徐々に嵩を増していき、配管14より供給されたリン回収材Sは、反応槽11の回転に伴うらせん状の板状部材12の反時計回りの回転に伴って、徐々に反応槽11の内部、すなわち端板11Cに向けて移送されるようになる。したがって、反応槽11内に供給された被処理水Wとリン回収材Sとは、反応槽11の回転に伴って接触し、さらにはある程度の割合で向流接触するようになる。このため、被処理水W中のリンPは、リン回収材Sと接触することによる結晶成長晶析作用が均質化され、リンの微細結晶等を生成することがない。したがって、被処理水W中のリンPの回収を容易に行うことができる。
【0027】
なお、らせん状の板状部材12が、反応槽11の端板11Cに至るまで形成されていない場合は、反応槽11内に供給したリン回収材Sが反応槽11の端板11Cにまで十分に供給されなかったり、らせん状の板状部材12による撹拌効果が低減したりして、上述した向流接触の度合が減少してしまい、被処理水W中のリンPの回収を十分に行うことができない場合がある。
【0028】
同様に、配管13の先端部13Aが反応槽11のなるべく内部、好ましくは端板11Cの近傍に位置しない場合は、反応槽11に供給した被処理水Wが反応槽11の開口部11Bから外部に短時間で漏洩してしまう場合があるので、上述した被処理水Wとリン回収材Sとの接触度合が減少するとともに、向流接触の度合も減少するので、リン結晶の生成割合が減少するとともに、微細なリンの結晶を生じてしまい、被処理水W中のリンPの回収を十分に行うことができない場合がある。
【0029】
また、配管14の先端部14Aが反応槽11の開口部11B側に位置すると、反応槽11の回転に伴うらせん状の板状部材12の回転によって、反応槽11に供給したリン回収材Sが反応槽11の外部に漏洩してしまい、上述した被処理水Wとリン回収材Sとの接触度合が減少するとともに、向流接触の度合も減少するので、リン結晶の生成割合が減少するとともに、微細なリンの結晶を生じてしまい、被処理水W中のリンPの回収を十分に行うことができない場合がある。
【0030】
上述のように、反応槽11を図示しない複数のローラ等を介して反時計回りに回転させた後、必要に応じて反応槽11の回転を止め、所定時間静置した後に、反応槽11を図示しない複数のローラ等を介して時計回りに回転させる。すると、被処理水W中のリンPとリン回収材Sとが反応して生成したリン結晶、例えばヒドロキシルアパタイトやリン酸マグネシウムアンモニウムが、反応槽11の内壁面11A上に立設されたらせん状の板状部材12の回転運動によって反応槽11の開口部11Bに移送され、当該開口部11Bから外部に排出され、図中矢印で示すように図示しないホッパー等によって回収されるようになる。
【0031】
このように本実施形態では、上述したような向流接触に加えて、横型の反応槽11を用い、反応槽11自体を回転させて被処理水Wとリン回収材Sとを接触させるようにしている。したがって、縦型の反応槽の場合のように、攪拌機で被処理水等を撹拌することがないので、生成したリン結晶を破砕して微細化してしまうのを抑制することができる。このため、反応槽11よりも後段の配管やプロセスにおいて微細なリン結晶が蓄積したり成長したりしてしまうのを抑制することができ、リン回収装置のメンテナンスの頻度を低減することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、反応槽11のみで被処理水W中のリンPとリン回収材Sとを反応させ、リン結晶を得ることにより、被処理水W中のリンPを回収することができるので、従来のように、熟成槽及び沈殿槽等を設ける必要がない。したがって、装置全体の構成を簡略化できるとともに小型化することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、らせん状の板状部材12を、開口部11Bから端板11Cに向けて、右回り(時計回り)に巻回したため、被処理水Wとリン回収材Sとの接触の際は、反応槽11を反時計回りに回転させ、生成したリン結晶を外部に排出して回収する際は、時計回りに回転させている。但し、らせん状の板状部材12を左回り(反時計回り)に巻回させた場合においては、被処理水Wとリン回収材Sとの接触の際は、反応槽11を時計回りに回転させ、生成したリン結晶を外部に排出して回収する際は、反時計回りに回転させる。
【0034】
(第2の実施形態)
図2は、本実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。また、図3図7は、本実施形態におけるリン回収装置の作用効果を説明するための図である。なお、図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
【0035】
図2に示すリン回収装置20は、図1に示すリン回収装置10に比較して、反応槽11の内壁面11A上に追加のらせん状の板状部材22が配設されている点で相違する。また、追加のらせん状の板状部材22は、反応槽11の開口部11Bにおいて、その先端部22Aが先のらせん状の板状部材12の先端部21Aと180度異なる位置となるように配設されているとともに、開口部11Bから端板11Cに向けて、らせん状の板状部材12と同じ右回り(時計回り)に巻回するようにしている。したがって、以下では、これらの相違点に基づく、本実施形態のリン回収装置20の作用効果を図3図7を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、リン回収装置において単独のらせん状の板状部材12のみが配設されている場合は、らせん状の板状部材12の第1のターン121が開口部11Bの近傍に位置するとき、当該第1のターン121が反応槽11内に供給された被処理水Wに対する堰として機能するが、図4に示すように、例えば反応槽11が90度回転して第1のターン121が反応槽11の内部に移動すると、開口部11Bの近傍には堰が存在しなくなる。したがって、この場合は、反応槽11に供給した被処理水Wが開口部11Bから外部に漏れ(図中矢印で示す)、この状態は、例えば反応槽11が360度回転して再び開口部11Bの近傍に位置するようになるまで続く。
【0037】
一方、追加のらせん状の板状部材22を配設した場合は、図5に示すように、らせん状の板状部材12の第1のターン121が開口部11Bの近傍に位置するとき、当該第1のターン121が反応槽11内に供給された被処理水Wに対する堰として機能するが、図6に示すように、例えば反応槽11が90度回転して第1のターン121が反応槽11の内部に移動すると、開口部11Bの近傍には堰が存在しなくなる。したがって、この場合は、反応槽11に供給した被処理水Wが開口部11Bから外部に漏れてしまう(図中矢印で示す)。
【0038】
しかしながら、反応槽11がさらに90度回転して合計180度回転すると、開口部11Bの近傍には追加のらせん状の板状部材22の第1のターン221が位置するようになり、この第1のターン221が堰として機能するようになる。したがって、この場合においては、反応槽11内に供給した被処理水Wが開口部11Bから外部に漏れてしまうことがない。
【0039】
すなわち、単一のらせん状の板状部材12のみを配設した場合は、反応槽11の1回転毎にしか反応槽11内に供給した被処理水Wが外部に漏れるのを抑制できないが、追加のらせん状の板状部材22を配設した場合は、被処理水Wの外部への漏洩を反応槽11の半回転毎に抑制することができる。したがって、反応槽11内に供給した被処理水Wをより多くかつ長時間、反応槽11内に保持しておくことができる。この結果、被処理水W中のリンPとリン回収材Sとの接触時間及び機会をより確保することができ、リンの回収効率を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、先のらせん状の板状部材12に対して追加のらせん状の板状部材22を配設し、合計2つのらせん状の板状部材を配設するようにしているが、3以上のらせん状の板状部材を配設することもできる。
【0041】
この場合、配設するらせん状の板状部材の数をnとして、互いの先端部が360/n度の角度をなして位置するように配設することが好ましい。このような条件を満足するように複数のらせん状の板状部材を配設すれば、これららせん状の板状部材の配設設計を容易に行うことができるようになる。
【0042】
なお、その他の特徴、及び作用効果については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
(第3の実施形態)
図8は、本実施形態におけるリン回収装置の概略構成図であり、図9は、本実施形態のリン回収装置の変形例に関する概略構成図である。なお、図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
【0044】
図8に示すリン回収装置30は、図1に示すリン回収装置10の開口部11Bにおいて堰32を配設している点で相違する。したがって、反応槽11内に比較的多量の被処理水Wを供給した場合においても、堰32によって被処理水Wが開口部11Bから外部に漏洩するのを抑制することができる。したがって、被処理水Wを反応槽11内に比較的多量に保持した状態でリン回収を行うことができるので、回収できるリンの量を増大させることでき、リンの回収効率を増大させることができる。
【0045】
また、図9に示すリン回収装置30では、堰32とらせん状の板状部材12の第1のターン121の先端板との間に傾斜板33を配設している。したがって、反応槽11内で被処理水Wとリン回収材Sとを接触させてリン結晶を得、これによってリンの回収を行う際に、上記リン結晶が傾斜板33を介して堰32に移送されるようになるので、リン結晶は堰32を比較的容易に乗り越えることができる。したがって、被処理水Wを反応槽11内に比較的多量に保持した状態で簡易にリン回収を行うことができるので、回収できるリンの量を増大させることでき、リンの回収効率を簡易に増大させることができる。
【0046】
なお、本実施形態の傾斜板33は、堰32の反応槽11との結合部かららせん状の板状部材12の第1のターン121の反応槽11との結合部に引いた線を底辺とし、当該底辺から堰32の側面に沿って引いた斜辺と、第1のターン121の側面に沿って引いた斜辺とを有する三角形状の部材から構成しているが、上述した作用効果を奏する限り、傾斜板33の形態は特に限定されるものではない。
【0047】
その他の特徴、及び作用効果については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
(第4の実施形態)
図10は、本実施形態におけるリン回収装置の概略構成図である。なお、図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては、同一の符号を用いている。
【0049】
図10に示すリン回収装置40は、図1に示すリン回収装置10において、反応槽11の開口部11Bの径を、反応槽11の内部の径に比較して小さく、すなわち開口部11Bを狭窄している点で相違する。したがって、反応槽11内に比較的多量の被処理水Wを供給した場合においても、開口部11Bが狭窄されていることにより、その下面側が上がっているので、当該下面が堰として機能するようになる。したがって、被処理水Wが開口部11Bから外部に漏洩するのを抑制することができる。
【0050】
このため、被処理水Wを反応槽11内に比較的多量に保持した状態でリン回収を行うことができるので、回収できるリンの量を増大させることでき、リンの回収効率を増大させることができる。
【0051】
その他の特徴、及び作用効果については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、本実施形態では、反応槽11の、開口部11B側のみを狭窄しているが、開口部11B側に加えて、端面11C側をも同様に狭窄したような構造とすることができる。
【0052】
(第5の実施形態)
図11は、本実施形態におけるリン回収装置の反応槽の開口部近傍を拡大して示す切欠図であり、図12は、図11に示す箇所を平面的に見た場合の図である。
【0053】
図11及び図12に示すように、本実施形態のリン回収装置50では、反応槽11の中心軸I−Iに垂直な断面に沿って見た場合において、らせん状の板状部材12の、第1のターン121を、断面の内方に位置する第1の板状部材片121−1と、断面の外方に位置する第2の板状部材片121−2とに分断して離隔配置している。
【0054】
したがって、反応槽11内に供給した被処理水Wが開口部11Bから外部に漏洩する場合、第1の板状部材片121−1及び第2の板状部材片121−2間に形成された隙間を通るようになる。このため、上記隙間を通らずに、例えばらせん状の板状部材12の第1のターン121を越流して開口部11Bから外部に漏洩する場合に比較して、反応槽11内に供給された被処理水Wを静的に保持し、開口部11Bから外部に緩やかに漏洩するようになる。したがって、反応槽11内に供給されたリン回収材Sが被処理水Wの越流に伴い開口部11Bから外部に短時間で排出するようなことがなく、被処理水W中のリンPとリン回収材Sとの接触効率を十分高く保持することができる。
【0055】
また、第1の板状部材片121−1の断面に沿った第1の直線L1と、第2の板状部材片121−2の断面に沿った第2の直線L2とが一致するようにしているので、被処理水W中のリンPとリン回収材Sとの接触を行い、リン結晶を得てリンの回収を行う場合、当該リン結晶がらせん状の板状部材12の回転運動より脱落することなく、当該板状部材12の回転によって、反応槽11の開口部11Bにまで移送されるようになる。具体的には、第2の板状部材片121−2によって移送されてきたリン結晶が脱落することなく第1の板状部材片121−1に移送され、開口部11Bにまで移送されるようになる。
【0056】
なお、第2の板状部材片121−2によって移送されてきたリン結晶が脱落することなく第1の板状部材片121−1に移送され、開口部11Bにまで移送されれば、その要件は特に限定されるものではなく、第1の板状部材片121−1と第2の板状部材片121−2とが互いに重畳するようにしてもよい。
【0057】
その他の特徴、及び作用効果については第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10,20,30,40,50 リン回収装置
11 反応槽
12 らせん状の板状部材
13 被処理水供給管
14 リン回収材供給管
22 追加のらせん状の板状部材
32 堰
33 傾斜板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12