(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139329
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】セラミック回路基板及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20170522BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20170522BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L23/12 J
H05K1/03 610D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-169261(P2013-169261)
(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公開番号】特開2015-37174(P2015-37174A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】谷 信
(72)【発明者】
【氏名】田中 孔浩
(72)【発明者】
【氏名】海老ヶ瀬 隆
【審査官】
豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−041231(JP,A)
【文献】
特開2010−093225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12 −23/15
23/29
23/34 −23/36
23/373−23/427
23/44
23/467−23/473
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板と、
前記セラミック基板の表面に接合された第1の金属板と、
前記セラミック基板の裏面に接合された第2の金属板とを有し、
前記セラミック基板の表面のサイズは、前記第1の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面のサイズよりも小さく、
前記セラミック基板の裏面のサイズは、前記第2の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面のサイズよりも大きく、
前記第1の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面の反対側の面は、パワー半導体が実装される面であることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック回路基板において、
前記第1の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面内に、前記セラミック基板の表面全体が含まれるように、前記セラミック基板と前記第1の金属板とが接合されていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセラミック回路基板において、
前記セラミック基板の前記裏面内に、前記第2の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面全体が含まれる位置に、前記第2の金属板が接合されていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック回路基板において、
前記第1の金属板の厚みは前記第2の金属板の厚みよりも大きいことを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項5】
請求項4記載のセラミック回路基板において、
前記セラミック基板の厚みをta、前記第1の金属板の厚みをt1、前記第2の金属板の厚みをt2としたとき、
t2<ta<t1
であることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミック回路基板と、
前記セラミック回路基板における前記第1の金属板の前記セラミック基板と対向する側の面の反対側の面に実装されたパワー半導体とを有することを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック回路基板及び電子デバイスに関し、例えばバイポーラトランジスタ、パワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体の絶縁基板として好適なセラミック回路基板と、該セラミック回路基板を用いた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば
図3A及び
図3Bに示すように、セラミック基板102の表面102aに第1金属板104を有し、セラミック基板102の裏面102bに第2金属板106を有するセラミック回路基板100が、パワー半導体の絶縁基板として使用されている(例えば特許文献1参照)。そして、第1金属板104上に、パワー半導体108を例えば半田等の接合層110を介して実装することによって電子デバイス112が構成される。
【0003】
パワー半導体108が実装されるセラミック回路基板100は、発熱を抑えるため、高放熱性が要求される。従って、一般に、第1金属板104及び第2金属板106は、Cu(銅)やAl(アルミニウム)を始めとする高熱伝導率の金属板が選ばれる。セラミック基板102には、AlN(窒化アルミニウム)やSi
3N
4(窒化珪素)のような高熱伝導率のセラミック基板が選ばれる。これらを直接接合、もしくは、ろう材を介して接合した放熱基板をセラミック回路基板100として用いている。
【0004】
特に、Cuにて構成された第1金属板104及び第2金属板106とSi
3N
4にて構成されたセラミック基板102とを、ろう材を介して接合したセラミック回路基板100は、高い強度を持ったセラミック、高い熱伝導率を持ったCuということで、熱サイクル特性に優れ、好適に用いられている。なお、第2金属板106の端面には、例えばヒートシンクが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3847954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、パワー半導体108の出力密度を向上させて小型化したい、もしくは放熱性を向上させて冷却系を簡素化したい、というニーズがある。パワー半導体108の出力密度を向上させると発熱量が増加し、冷却系を簡素化すると、放熱性が低下するため、上述のニーズに対応するには、セラミック回路基板100にさらなる放熱性が要求される。
【0007】
そこで、放熱性を向上させる方法として、例えば
図4に示すように、第1金属板104及び第2金属板106の厚みt
bを従来の厚みtb(
図3A参照)より厚くすることが考えられる。
【0008】
通常、
図3Aに示す従来のセラミック回路基板100を使用する場合、使用時の熱サイクルによって、第1金属板104とセラミック基板102との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板104とセラミック基板102との界面114aにおいて発生する。この場合、セラミック基板102の表面102aは、熱応力がかかる上述の界面114aと、熱応力がかからない周辺部とが混在した状態となる。同様に、第2金属板106とセラミック基板102との熱膨張差に伴う熱応力が、第2金属板106とセラミック基板102との界面114bにおいて発生する。この場合も、セラミック基板102の裏面102bは、熱応力がかかる上述の界面114bと、熱応力がかからない周辺部とが混在した状態となる。
【0009】
従って、
図4に示すように、第1金属板104の厚みtb及び第2金属板106の厚みtbを厚くすると、第1金属板104及び第2金属板106の体積が大きくなることから、第1金属板104とセラミック基板102の界面114a並びに第2金属板106とセラミック基板102の界面114bで発生する熱応力も増大する。そのため、使用時の熱サイクルによってセラミック基板102にクラック116(亀裂)が入ったり、割れるという問題が生じるおそれがある。すなわち、使用時の熱サイクルによってセラミック基板102の表面のうち、熱応力がかかる界面と熱応力がかからない周辺部との境界部分において集中的に圧縮応力や引っ張り応力がかかり、該境界部分からクラック116(亀裂)が入るおそれがある。
【0010】
このように、従来のセラミック回路基板100では、放熱性の向上を実現することができず、上述したニーズに対応することができないという問題がある。
【0011】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、少なくともパワー半導体が実装される側の金属板を厚くしても、セラミック基板に熱応力に伴う圧縮応力や引っ張り応力を抑制することができ、しかも、反りの発生も抑制することができ、放熱性の向上を図ることができるセラミック回路基板及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] 第1の本発明に係るセラミック回路基板は、セラミック基板と、前記セラミック基板の表面に接合された金属板とを有し、前記セラミック基板の表面のサイズは、前記金属板の前記セラミック基板と対向する側の面のサイズよりも小さいことを特徴とする。
【0013】
これにより、セラミック基板上に金属板を接合したので、使用時における熱サイクルによって、金属板とセラミック基板との熱膨張差に伴う熱応力が、金属板とセラミック基板との界面に発生する。このとき、セラミック基板の表面全体が界面となるため、熱応力がかかる部分と熱応力がかからない部分との境界が存在しなくなる。すなわち、熱応力に伴って集中的に圧縮応力や引っ張り応力がかかる部分がなくなることから、セラミック基板への応力集中がなくなり、使用時の熱サイクルによるセラミック基板への亀裂や割れの発生のおそれがなくなる。これにより、金属板の厚みをセラミック基板の厚みよりも大きくすることが可能となり、放熱性の向上を図ることができる。
【0014】
[2] 第1の本発明において、前記金属板(以下、第1金属板と記す)の前記セラミック基板と対向する側の面内に、前記セラミック基板の表面全体が含まれるように、前記セラミック基板と前記第1金属板とが接合されていることが好ましい。これにより、確実に、セラミック基板の表面全体が上述の界面となるため、熱応力がかかる部分と熱応力がかからない部分との境界が存在しなくなる。
【0015】
[3] 第1の本発明において、前記セラミック基板の裏面に第2の金属板(以下、第2金属板と記す)が接合され、前記セラミック基板の裏面のサイズは、前記第2金属板の前記セラミック基板と対向する側の面のサイズよりも大きいことが好ましい。
【0016】
セラミック回路基板の剛性は、サイズの大きい第1金属板の剛性が支配的となるため、第2金属板の厚みをセラミック基板の厚みよりも小さくしても、セラミック回路基板全体の反りの発生が抑制され、実装されたパワー半導体への割れの発生や、半田等の接合層へのクラックの発生のおそれがなくなる。これにより、セラミック基板からヒートシンクまでの距離を短くすることができ、放熱性を向上させることができると共に、セラミック回路基板の低背化(薄型化)にも有利になる。
【0017】
しかも、セラミック基板の裏面のサイズと第2金属板におけるセラミック基板と対向する側の面のサイズを適宜調整することで、電気的絶縁を達成するために必要な距離を、動作電圧や汚染度等によって規定される沿面距離を満たすように容易に設定することができ、沿面放電の発生を回避することができる。
【0018】
[4] この場合、前記セラミック基板の前記裏面内に、前記第2金属板の前記セラミック基板と対向する側の面全体が含まれる位置に、前記
第2金属板が接合されていることが好ましい。
【0019】
[5] また、前記金属板の厚みは前記第2金属板の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、セラミック基板から冷却装置(例えばヒートシンク)までの距離を短くすることができ、放熱性を向上させることができると共に、セラミック回路基板の低背化(薄型化)にも有利になる。
【0020】
[6] この場合、前記セラミック基板の厚みをta、前記第1金属板の厚みをt1、前記第2金属板の厚みをt2としたとき、
t2<ta<t1
であることが好ましい。
【0021】
[7] 第2の本発明に係る電子デバイスは、上述した第1の本発明に係るセラミック回路基板と、前記セラミック回路基板の前記第1金属板の表面に実装されたパワー半導体とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係るセラミック回路基板及び電子デバイスによれば、少なくともパワー半導体が実装される側の金属板を厚くしても、セラミック基板に熱応力に伴う圧縮応力や引っ張り応力を抑制することができ、しかも、反りの発生も抑制することができ、放熱性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1Aは本実施の形態に係るセラミック回路基板を上面から見て示す平面図であり、
図1Bは
図1AにおけるIB−IB線上の断面図である。
【
図2】
図2Aは本実施の形態に係る電子デバイスを示す縦断面図であり、
図2Bは電子デバイスの他の例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3Aは従来例に係るセラミック回路基板を示す縦断面図であり、
図3Bは第1金属板上にパワー半導体を実装した状態を示す縦断面図である。
【
図4】従来例に係るセラミック回路基板において第1金属板及び第2金属板の厚みを増やした場合の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るセラミック回路基板の実施の形態例を
図1A〜
図2Bを参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0025】
本実施の形態に係るセラミック回路基板10は、
図1A及び
図1Bに示すように、セラミック基板12と、該セラミック基板12の表面12aに接合された第1金属板14と、セラミック基板12の裏面12bに接合された第2金属板16とを有する。セラミック基板12、第1金属板14及び第2金属板16の各外形形状は、様々な形状が挙げられるが、
図1Bでは、上面から見て、それぞれ長方形状とされている。
【0026】
第1金属板14及び第2金属板16は、CuやAlを始めとする高熱伝導率の金属板にて構成することができる。セラミック基板12は、AlNやSi
3N
4のような高熱伝導率のセラミック基板にて構成することができる。第1金属板14とセラミック基板12との接合、並びに第2金属板16とセラミック基板12との接合は、直接接合でもよいし、もしくは、ろう材を介して接合してもよい。ろう材としては、Ti(チタン)等の活性金属を添加したろう材を用いることができる。
【0027】
そして、このセラミック回路基板10は、セラミック基板12の表面12aのサイズが、第1金属板14のセラミック基板12と対向する側の面(以下、第1対向面14aと記す)のサイズよりも小さく、第2金属板16のセラミック基板12と対向する側の面(以下、第2対向面16aと記す)のサイズよりも大きい。ここで、「セラミック基板12の表面12a」とは、パワー半導体26(
図2A参照)が実装される第1金属板14が接合される面(例えば
図1Bでは上面)をいい、裏面とは、表面12aと対向する面(例えば
図1Bでは下面)をいう。
【0028】
すなわち、セラミック基板12を上面から見た縦方向の長さDy及び横方向の長さDxは、第1金属板14の縦方向の長さL1y及び横方向の長さL1xよりも短く設定され、第2金属板16の縦方向の長さL2y及び横方向の長さL2xよりも長く設定されている。
【0029】
また、セラミック基板12と第1金属板14との接合においては、上面から見たとき、第1金属板14からセラミック基板12の一部でもはみ出ることなく、第1金属板14の第1対向面14a内に、セラミック基板12の表面12a全体が含まれるように、セラミック基板12と第1金属板14とが接合される。同様に、セラミック基板12と第2金属板16との接合においては、上面から見たとき、セラミック基板12から第2金属板16の一部でもはみ出ることなく、セラミック基板12の裏面12b内に、第2金属板16の第2対向面16a全体が含まれるように、セラミック基板12と第2金属板16とが接合される。
【0030】
セラミック基板12、第1金属板14及び第2金属板16の各外形形状は、上述した長方形状のほか、円形状、楕円形状、トラック形状、三角形状、五角形、六角形等の多角形状等が挙げられる。
【0031】
また、セラミック回路基板10は、セラミック基板12の厚みをta、第1金属板14の厚みをt1、第2金属板16の厚みをt2としたとき、
t2<ta<t1
となっている。
【0032】
そして、
図2Aに示すように、第1金属板14の表面に半田等の接合層24を介してパワー半導体26が実装されることで、本実施の形態に係る電子デバイス28が構成される。もちろん、
図2Bに示すように、さらに、第2金属板16の端面にヒートシンク30を接合して電子デバイス28を構成してもよい。なお、
図2A及び
図2Bでは、パワー半導体26の高さを、例えばセラミック基板12の厚みより薄く図示しているが、これに限定されるものではない。
【0033】
このセラミック回路基板10においては、セラミック基板12上に第1金属板14を接合したので、使用時における熱サイクルによって、第1金属板14とセラミック基板12との熱膨張差に伴う熱応力が、第1金属板14とセラミック基板12との界面32に発生する。
【0034】
このとき、セラミック基板12の表面12a全体が界面32となるため、熱応力がかかる部分と熱応力がかからない部分との境界が存在しなくなる。すなわち、熱応力に伴って集中的に圧縮応力や引っ張り応力がかかる部分がなくなることから、セラミック基板12への応力集中がなくなり、使用時の熱サイクルによるセラミック基板12への亀裂や割れの発生のおそれがなくなる。これにより、第1金属板14の厚みt1をセラミック基板12の厚みtaよりも大きくすることが可能となり、放熱性の向上を図ることができる。
【0035】
また、第1金属板14の第1対向面14aのサイズがセラミック基板12の表面12aのサイズよりも大きいことから、セラミック回路基板10の剛性は、サイズの大きい第1金属板14の剛性が支配的となる。もちろん、第1金属板14の厚みt1がセラミック基板12の厚みtaよりも大きければ、第1金属板14の剛性がより支配的となる。そのため、第2金属板16の厚みt2をセラミック基板12の厚みtaよりも小さくしても、セラミック回路基板10全体の反りの発生が抑制され、実装されたパワー半導体26への割れの発生や、接合層24へのクラックの発生のおそれがなくなる。これにより、セラミック基板12からヒートシンク30までの距離を短くすることができ、放熱性を向上させることができると共に、セラミック回路基板10の低背化にも有利になる。
【0036】
しかも、セラミック基板12の裏面12bのサイズと第2金属板16の第2対向面16aのサイズを適宜調整することで、電気的絶縁を達成するために必要な距離を、動作電圧や汚染度等によって規定される沿面距離を満たすように容易に設定することができ、沿面放電の発生を回避することができる。なお、電気的絶縁を達成するために必要な距離は、この例では、第1金属板14(導電部)と第2金属板16(導電部)との間のセラミック基板12(絶縁物)に沿った最短距離をいう。
【0037】
このように、セラミック回路基板10及び電子デバイス28においては、少なくともパワー半導体26が実装される側の第1金属板14を厚くしても、セラミック基板12に熱応力に伴う圧縮応力や引っ張り応力を抑制することができ、しかも、反りの発生も抑制することができることから、放熱性の向上を図ることができ、小型化にも有利となる。
【実施例1】
【0038】
実施例1、比較例1及び2について、接合層24及びセラミック基板12へのクラックの有無を評価した。評価結果を後述する表1に示す。
【0039】
セラミック基板12のために、曲げ強度が650MPa、上面から見て正方形状(縦×横=30mm×30mm)で、厚みが0.3mmの窒化珪素(Si
3N
4)基板を用意した。第1金属板14及び第2金属板16のために、無酸素Cu板を用意した。また、Ti活性金属粉末を添加したAg(銀)−Cu系のろう材ペーストを用意した。
【0040】
(実施例1)
実施例1に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図1A及び
図1Bに示すセラミック回路基板10と同様の構成を有する。
【0041】
先ず、セラミック基板12にろう材を厚み10μm塗布し、Cu板(第1金属板14及び第2金属板16)を接合した。第1金属板14は、上面から見て正方形状で、サイズは、縦×横=35mm×35mmであり、厚みt1は2mmである。第2金属板16は、上面から見て正方形状で、サイズは、縦×横=25mm×25mmであり、厚みt2は0.1mmである。
【0042】
接合条件は、真空下、温度800℃、1MPaで加熱加圧接合した。その後、
図2Aに示すように、パワー半導体26を接合層24(この場合、半田層)で接合し、実施例1に係る評価サンプルとした。10個の評価サンプルを作製した。
【0043】
(比較例1)
比較例1に係る評価サンプルのセラミック回路基板は、
図3Bに示すセラミック回路基板と同様の構成を有する。すなわち、第1金属板104のサイズが、縦×横=25mm×25mm、厚み=2mmであり、第2金属板106のサイズが、縦×横=25mm×25mm、厚み=0.1mmである点以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0044】
(比較例2)
比較例2に係る評価サンプルは、
図3Aに示すセラミック回路基板と同様の構成を有する。すなわち、第1金属板104のサイズが、縦×横=25mm×25mm、厚み=2mmであり、第2金属板106のサイズが、縦×横=25mm×25mm、厚み=2mmである点以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る10個の評価サンプルを作製した。
【0045】
<評価>
先ず、評価方法として、温度=−40℃〜125℃の熱サイクル試験を実施した。サイクル数=100サイクルとし、1サイクル当たり、−40℃(低温)下で30分、125℃(高温)下で30分保持した。熱サイクル試験終了後に、接合層へのクラックの発生率と、セラミック基板へのクラックの発生率を評価した。具体的には、接合層へのクラックの発生率は、10個の評価サンプルのうち、接合層24(接合層110)にクラックが発生した評価サンプルの個数で表し、セラミック基板へのクラックの発生率は、10個の評価サンプルのうち、セラミック基板12(セラミック基板102)にクラックが発生した評価サンプルの個数で表した。表1には、クラックが発生した評価サンプルの個数/評価サンプルの母数(=10)で表記した。評価結果を下記表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、実施例1に係る評価サンプルは、いずれも接合層24及びセラミック基板12にクラックが発生しなかった。これは、第1金属板14のサイズをセラミック基板12よりも大きくし、第2金属板16のサイズをセラミック基板12よりも小さくしたことから、セラミック基板12に熱応力に伴う圧縮応力や引っ張り応力を抑制することができ、しかも、反りの発生も抑制することができたことによるものと考えられる。
【0048】
これに対して、比較例1は、いずれの評価サンプルにもセラミック基板12にはクラックが生じていなかったが、10個の評価サンプル中、7個の評価サンプルにおいて接合層110にクラックが発生していた。比較例2は、いずれの評価サンプルにも接合層110にはクラックが生じていなかったが、10個の評価中、8個の評価サンプルにおいてセラミック基板12にクラックが発生していた。
【0049】
なお、本発明に係るセラミック回路基板及び電子デバイスは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
10…セラミック回路基板 12…セラミック基板
12a…表面 12b…裏面
14…第1金属板 14a…第1対向面
16…第2金属板 16a…第2対向面
24…接合層 26…パワー半導体
28…電子デバイス 30…ヒートシンク
32…界面