【実施例】
【0018】
図1は、硬貨処理装置の構成例の概略を示した図であり、硬貨処理装置の断面を模式的に表したものである。
【0019】
同図に示すように、硬貨処理装置1は、硬貨投入口10と、識別センサ11、受け入れ検知センサ12、振り分け部13、満杯検知センサ14、カセット取り外し検知センサ15、エンプティセンサ16、払出部17、表示ランプ18、操作ボタン19を有している。また、硬貨処理装置1には、図示しない自動販売機から電力の供給を受けるとともに、同自動販売機との間で通信を行うためのハーネス2が接続されている。
【0020】
硬貨投入口10は、投入された硬貨を受け入れる受入口である。
【0021】
識別センサ11は、硬貨投入口10から投入され、硬貨処理装置1内を転動する硬貨の材質や直径、模様等を検出する複数のセンサ群である。
【0022】
受け入れ検知センサ12は、硬貨を受け入れたことを検知するセンサである。なお、識別センサ11で検出された硬貨の材質や直径、模様等により、正貨でない(偽貨または受け入れ対象外の硬貨)と判定されたものは、受け入れ検知センサ12が配設されている箇所に達するまえに、振り分け部13の動作により排出されるため、受け入れ検知センサ12が検知することはない。
【0023】
振り分け部13は、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が正貨と判定した硬貨を受け入れ、さらに、識別センサ11による検出結果に基づいて、後述する制御部が判定した金種毎にコインチューブの対応する箇所に受け入れた硬貨を振り分ける。また、満杯検知センサ14によりコインチューブの満杯が検知されていた場合は、図示しない金庫に、受け入れた硬貨を振り分ける。また、正貨ではないと判別した場合、振り分け部13は動作しない。この場合、投入された正貨ではない物体は返却口へと案内される。また、自動販売機の主制御からの入金禁止信号を受信した場合には、硬貨処理装置は識別を行わず、振り分け部13は動作しない。この場合も投入された硬貨はそのまま返却口へと案内される。
【0024】
満杯検知センサ14は、それぞれ、コインチューブに蓄積された硬貨が満杯となったことを検知するセンサである。なお、コインチューブのうち、払い出し専用として利用する硬貨を蓄積する箇所には、満杯検知センサは設けられていない。
【0025】
カセット取り外し検知センサ15は、コインチューブのカセットが取り外されたことを検知するセンサである。
【0026】
エンプティセンサ16は、それぞれ、コインチューブに所定枚数よりも多く蓄積されていることを検知するセンサである。この所定数は、エンプティセンサ16が配設された位置と蓄積する硬貨の厚みにより異なる。
【0027】
払出部17は、ペイアウトスライドとチェンジスライドにより、コインチューブに蓄積されている硬貨を選択的に払い出すものであり、モータやソレノイド等を利用して電力により払い出し動作を行うものである。
【0028】
表示ランプ18は、硬貨処理装置1が、硬貨の受け入れテストを行う「テストモード」で動作していることを、点灯により示すものである。
【0029】
操作ボタン19は、硬貨処理装置1を、硬貨の受け入れテストを行う「テストモード」で動作させるためのボタンである。
【0030】
次に、硬貨処理装置1を制御する制御部について説明する。
図2は、硬貨処理装置1の制御部の構成例を示した図である。
【0031】
同図に示すように、制御部100は、自動販売機とハーネス2を介して通信可能に接続されるとともに、識別センサ11、受け入れ検知センサ12、満杯検知センサ14、カセット取り外し検知センサ15、エンプティセンサ16、操作ボタン19の出力信号を取得し、振り分け部13、払出部17、表示ランプ18の動作を制御する制御信号を出力する。ハーネス2は、SYNC信号ライン、自動販売機からのコマンドを受信する受信ライン、自動販売機へ情報を出力する送信ラインの3本の通信ラインを含んでいる。
【0032】
また、制御部100は、ハードウェアリセット回路101と、マイコン102、メモリ103を有している。
【0033】
ハードウェアリセット回路101は、自動販売機からリセット信号を受信した場合に、マイコン102を強制的にリセット(再起動)するための回路である。リセット信号は、SYNC信号ラインによって送信される信号である。自動販売機は、通常、SYNC信号ラインを用いて、定期的に電位がLOWレベルになるSYNC信号を出力した後、受信ラインを用いてコマンド(待機状態においては、現在の状態を送るように指令するコマンド)を送っているが、当該コマンドに対する硬貨処理装置からの応答が無い場合に、SYNC信号よりもLOWレベルにする時間を長くしたリセット信号を送るように動作している。
【0034】
マイコン102は、プロセッサやメモリ等を集積化したものを、プログラム等のソフトウェアにより実現される機能部であり、識別センサ11の出力結果に基づいて硬貨の正偽や金種の判定を行う識別部121、識別部121による判定結果に基づいて振り分け部13の動作を制御する振分制御部122、ソフトカウンタ124による計数結果に基づく各金種の硬貨の蓄積状況の把握、自動販売機主制御部への払い出し可能な金額の通知、釣銭として払い出す金種の決定、払出部17の制御等を行う払出制御部123、受け入れ検知センサ12や満杯検知センサ14、エンプティセンサ16の出力信号、払出部17の動作結果等に基づいて、各金種の硬貨の蓄積状況を計数するソフトカウンタ124等の各機能部を実現する。
【0035】
メモリ103は、RAM(Random Access Memory)等の記憶素子であり、ソフトカウンタ124による計数結果を金種別硬貨受け入れ枚数131として記憶するとともに、テストモード中に受け入れた金種別の硬貨の受け入れ枚数をテストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132として記憶する。また、硬貨処理装置1は、常時装置の状態(装置情報)をメモリ103に記憶している。
【0036】
次に、テストモードにおける硬貨処理装置1の動作について説明する。
図3は、テストモードにおける硬貨処理装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
【0037】
硬貨処理装置1は、待機状態において、操作ボタン19が押下されることにより、テストモードでの動作を開始し、操作ボタン19が押下されている間、テストモードでの動作を継続する。
【0038】
テストモードでの動作を開始すると硬貨処理装置1の制御部は、自動販売機等の外部から硬貨の受け入れ禁止等の指令を受けている場合であっても硬貨を受け入可能な状態にする。また、硬貨処理装置1は、テストモード中、メモリ103に記憶されたテストを開始する直前の状態(装置情報)を保持している。
【0039】
次に、制御部100が表示ランプ18を点灯する制御信号を出力し、表示ランプ18を点灯させる(ステップ201)。そして、操作ボタン19が押下中の間に(ステップ202でYES)、自動販売機からの応答指令を受信すると(ステップ203でYES)、制御部100は、テストモードを開始する直前の状態(待機状態)で応答指令を受信した場合と同内容の応答を自動販売機に送信する(ステップ204)。テストモード中は、保守担当者等が自動販売機の扉を開けて操作を行っているので自動販売機は待機状態にあり、このとき自動販売機が発する応答指令は、釣銭として払出可能な硬貨の枚数の通知を要求するものである。したがって、ステップ204で硬貨処理装置1が送信する応答は、メモリ103に記憶している金種別硬貨受け入れ枚数131に基づくものを通知する。この通知により、自動販売機は、硬貨処理装置1が正常に動作しているものと判断し、リセット信号を送出せず、一定時間後に、再度、応答指令を発することとなる。
【0040】
また、硬貨処理装置1は、操作ボタン19が押下中の間に(ステップ202でYES)、識別センサ11のセンサ出力信号に基づいて硬貨投入口10から硬貨が投入されたことを検知すると(ステップ205でYES)、識別センサ11のセンサ出力信号に基づいて投入された硬貨が受け入れ可能か否かを判別する(すなわち正貨であるか否かと金種を判別する)。ここで正貨であると判別した場合(ステップ206でYES)、制御部100が振り分け部13を動作させて投入された硬貨を受け入れるとともに、識別センサ11と受け入れ検知センサ12の検知結果(受け入れた硬貨の金種と受け入れた枚数)を、メモリ103にテストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132として、ソフトカウンタ124で加算して記憶し(ステップ207)、続けて、制御部100が振り分け部13を動作させて受け入れた硬貨をコインチューブの対応する箇所に受け入れる(ステップ208)。
【0041】
なお、硬貨投入口10に硬貨が投入された際に、硬貨処理装置1自体に硬貨の受け入れを禁止する設定がなされている場合(自動販売機からの指令による受け入れ禁止ではない)や、識別センサ11の異常等に起因して硬貨の識別ができなかった場合、振り分け部13が動作しない場合等、つまり、硬貨処理装置1が異常状態にある場合には、制御部100は、振り分け部13を動作させない(動作できない)ため、投入された硬貨は、自動販売機1の硬貨返却口に導かれる(ステップ206でNO)。
【0042】
また、硬貨処理装置1は、操作ボタン19の押下が解除されると(ステップ202でNO)、制御部100が、メモリ103に記憶しているテストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132に基づいて払出部17を制御し、テストモード中に投入された硬貨と同額の硬貨を、投入された金種と同様の金種で払い出す(ステップ209)。そして、メモリ103に記憶しているテストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132を初期化し(ステップ210)、制御部100が表示ランプ18を消灯する制御信号を出力し、表示ランプ18を消灯させ(ステップ211)、テストモードを終了する。硬貨処理装置1は、テストモードを終了すると、待機状態に戻る。
【0043】
このように、硬貨処理装置1は、テストモード中に自動販売機から応答指令を受けるとメモリ103に記憶しているテストモード前の硬貨処理装置1の状態(装置状態)を送信することで、テストモード中にリセット信号を受けることを回避している。よって硬貨処理装置1は自動販売機と接続された状態であっても、硬貨処理装置1が硬貨を受け入れることができるか否かを確認することができる(なお、硬貨処理装置1が、自動販売機側から硬貨の受入れを禁止する指令をうけている状態で、テストモード中の硬貨の受け入れ情報を自動販売機へ送信すると、自動販売機側から指令に反した動作をしているとみなされリセット信号を受けてしまう場合がある)。
【0044】
さらにテストモードが終了した際には、硬貨の受け入れテストに使用した硬貨を払い出すことで、売上以外の硬貨を装置内に残さず、またメモリ103に記憶している金種別硬貨受け入れ枚数131は、テストモード実行前の値を維持しているため、硬貨処理装置1をテスト前と同じ状態に戻すことが出来る。
【0045】
上記の通り本発明の一実施例に係る硬貨処理装置1は、テストモードの実行及び解除の操作を受け付ける操作受付手段(操作ボタン19)と、
前記操作受付手段が受け付けた操作に応じてテストモードを実行するテストモード実行手段(マイコン102)と、
前記テストモード実行手段によりテストモードが実行される際に、該テストモードが実行される直前の装置情報を記憶する装置情報記憶手段(メモリ103)と、
前記テストモード実行手段によりテストモードが実行されている際に、前記自動販売機からの応答指令があった場合に、該応答指令に対して前記装置情報記憶手段に記憶した装置情報に基づく応答を行う応答手段(マイコン102)と、
前記テストモード実行手段によりテストモードが実行されている際に、投入された硬貨を受け入れたことを記憶する受け入れ情報記憶手段(メモリ103)と、
前記操作受付手段が受け付けた操作に応じてテストモードを解除する際に、前記受け入れ情報記憶手段の記憶に基づいて硬貨の払い出しを行う払い出し手段(払出部17)と
を備えることにより、自動販売機と接続して電力の供給を受けたままで、硬貨の受け入れの可否をテストするテストモードを実行することができる。また該テストモードを実行後に、硬貨処理装置の状態をテストモードを実行する前の状態に維持することが可能となる。
【0046】
なお、前述の説明では、操作ボタン19を押下している間、テストモードを実行するものとしていたが、操作ボタン19を1度押下することで、テストモードを開始し、操作ボタン19を再度押下することでテストモードを終了するようにすることもできる。
【0047】
また、操作ボタン19を1度押下することで、テストモードを開始し、硬貨を1枚受け入れることでテストモードを終了したり、全ての金種の硬貨を各1枚受け入れることでテストモードを終了するようにすることもできる。この場合、テストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132は、受け入れた枚数に代えて、硬貨を受け入れたか否かを示す情報(フラグ等)とすることができる。
【0048】
さらに、テストモードで受け入れた硬貨をコインチューブに収容しようとした際に、対応するコインチューブが満杯であれば、当該硬貨を金庫に導くこととなるが、この場合には、テストモード中金種別硬貨受け入れ枚数132を変更せずに、テストモード終了時に払い出しを行わないようにする。これにより、払い出し可能な枚数、つまり、メモリ103に記憶している金種別硬貨受け入れ枚数131をテストモード実行前の値に維持させることができる。
【0049】
さらに、操作ボタン11の押下から一定時間のみテストモードを実行するようにすることもできる。たとえば、一回ボタンを押下してから10秒間のみテストモードを実行して終了するようにしてもよい。
【0050】
また、テストモードにおいて、テストモードが長時間続いた場合には、スイッチ故障により操作者の意図ではなくテストモードの状態が継続している可能性があるため、このような場合であっても通常の待機状態に自動的に復帰できるように、所定時間(10分など)を経過した場合テストモードを強制的に終了するようにすることもできる。この場合、テストモードが強制的に終了した際に、硬貨処理装置の作業者がカセットの取り外し等の作業をしているため、払出動作をせずに終了させてもよい。