【実施例1】
【0012】
  積層ユニット100は、ハイブリッドカーや電気自動車等に搭載されるユニットである。積層ユニット100は、走行用モータに交流電力を供給するインバータやコンバータの電子回路のうち、発熱の特に大きな素子、具体的には交流を発生するスイッチング素子や、昇圧/降圧回路のスイッチング素子を集積し、冷却装置と一体化したユニットである。スイッチング素子は、典型的にはIGBTである。積層ユニット100は、IGBTなどの半導体素子を封止した複数のパッケージ(半導体カード3)と複数の冷却プレート2を積層した構造を有している。半導体カード3も冷却プレート2も共に平板型に形成されている。別言すれば、積層ユニット100は、複数の冷却プレート2が平行に配置され、隣接する冷却プレート2の間に半導体カード3を挟んだ構造を有している。冷却プレート2はアルミや銅などの熱伝導率の高い金属で作られている。他方、半導体カード3は、典型的には、樹脂モールドで半導体素子を封止したものである。なお、図示を省略しているが、半導体カード3の表面には、内部の半導体素子の熱を表面に移送する放熱板が備えられることもある。さらに、図示を省略しているが、内部の半導体素子から各半導体カード3の外部へと電極が伸びており、他の回路と接続される。
【0013】
  冷却プレート2の内部は冷媒が流れる空洞(冷媒流路)になっている。それぞれの冷却プレート2には、その長手方向の両端に2個の貫通孔が設けられており、隣接する冷却プレート同士が接続管5によって連結される。積層体の端に位置する冷却プレートの貫通孔には冷媒を供給する供給管8と冷媒を排出する排出管7が接続される。供給管8から供給される冷媒は、冷却プレート2内の冷媒流路と接続管5に分流し、次々に下流の冷却プレート2へと流れる。冷媒は、冷却プレート内を通過する間に半導体カード3の熱を吸収し、半導体カード3を冷却する。冷却プレート内を通過した冷媒は、他方の貫通孔を通じて合流し、最終的に排出管7へ至る。なお、冷媒は好ましくは液体であり、例えばLLC(Long  Life  Coolant)である。なお、冷却プレート2の表面には窪み2aが設けられている。
【0014】
  冷却プレート2と半導体カード3の間には、絶縁板4が挟まれている。絶縁板4は、セラミクス製である。また、冷却プレート2と半導体カード3の積層体は、ブラケット12に挟まれて固定される。ブラケット12の一端には板バネ14が配置されており、その板バネ14が、積層体をその積層方向に付勢する。板バネ14により、冷却プレート2、絶縁板4、及び、半導体カード3が強く密着し、高い熱伝達効率が確保される。他方、セラミクス製の絶縁板4は、冷却プレート等と比較して脆弱であり、板バネ14の荷重により割れる虞がある。
【0015】
  図2を用いて、冷却プレート2の内部構造を説明する。冷却プレート2は、筐体に相当する外板21、23と、それらの間に挟まれる中板22を有する。容器状の外板21、23は、アルミニウムの板をプレス加工して成形される。外板21の内部には波板で構成されるフィン24が配置され、中板22がフィン24を抑える。また、外板23の内部にもフィン24が配置され、これも中板22が抑える。フィン24は中板22と外板21、23の双方に接触し、半導体カード3から伝わる熱を冷却プレート2の全体に拡散し易くしている。また、フィン24は、冷却プレート2の内部を流れる冷媒との接触面積を増加させ、冷媒への熱伝達効率を向上させる。
図2によく示されているように、外側から見たときの窪み2aは、外板21、23の内側からみるとリブに相当し、外板21、23の剛性を高める。
【0016】
  窪み2aの利点を説明する。冷却プレート2は、アルミニウムの板をプレス加工により容器状に成形したものである。そのため、剛性が低い。窪み2aは、冷却プレート2の内部からみるとリブに相当し、冷却プレート2の剛性を高める役割を果たす。それゆえ、冷却プレート2は積層方向の荷重を受けても撓み難くなる。冷却プレート2が撓むと半導体カード3と冷却プレート2との接触面積が減少する。本実施例の積層ユニット100では、冷却プレート2が撓み難いため、半導体カード3の冷却性が低下することを防止することができる。
【0017】
  図3(A)、
図3(B)を用いて、冷却プレート2、半導体カード3、及び絶縁板4の位置関係を説明する。
図3(A)は、半導体カード3と絶縁板4と冷却プレート2を、その積層方向にみたときの図である。
図3(A)に示すように、半導体カード3は、冷却プレート2の長手方向(図中左右方向)において、両側の窪み2aの間の位置に配置されている。別言すれば、窪み2aは、半導体カード3と絶縁板4の接触領域の外側に設けられている。絶縁板4は、
図3(B)上下方向において、半導体カード3と冷却プレート2との間に挟まれている。
【0018】
  次に、
図4、
図5を用いて、窪み2a周辺における、積層ユニット100の構成について、さらに詳細に説明する。
図4、
図5は、
図3(B)中で半導体カード3の左下に位置する窪み2aの周辺を示している。他の位置の窪み2aについては、上記の窪み2aと同様であるので説明を省略する。
【0019】
  窪み2aは、半導体カード3と絶縁板4の接触範囲の外側(
図4中左側)に設けられている。絶縁板4は、半導体カード3と絶縁板4との接触範囲から窪み2aの方向(
図4中の左方向)にはみ出した部分4aを有する。
図4に示すように、半導体カード3の下面(絶縁板4が配置されている側の面)は、平坦面3bと曲面3cとを有している。曲面3cは、半導体カード3の下面における、窪み2a側の縁に形成されている。換言すると、半導体カード3の
図4下面の縁(はみ出した部分4aと対向する縁)が絶縁板4から離れる方向に湾曲している。
【0020】
  上述のように、積層ユニット100では、半導体カード3の積層方向に圧縮荷重が付加される。ここで、窪み2aの縁は、冷却プレート2の他の部分と比較して剛性が高いため、窪み2aと半導体カード3とで絶縁板4を挟んでしまうと絶縁板4に生じる圧縮応力が高くなり過ぎることがある。本実施例の積層ユニット100では、窪み2aは半導体カード3と絶縁板4の接触範囲の外側に設けられている。このため、絶縁板4に加わる圧縮応力が高くなることが防止される。
【0021】
  絶縁板4は、半導体カード3と絶縁板4との接触範囲から窪み2aの方向にはみ出した部分4aを有する。このため、積層ユニット100の組立時や使用時等に、半導体カード3と冷却プレート2との相対位置がずれた場合にも、半導体カード3と冷却プレート2との間の絶縁を維持できる。
【0022】
  冷却プレート2に窪み2aを設けた場合には、窪み2aが設けられていない部分の冷却プレート2の剛性が、窪み2aが設けられている部分の剛性よりも相対的に小さくなることがある。この場合、半導体カード3と絶縁板4の接触範囲は、冷却プレート2の剛性が低い部分(窪み2aが設けられていない部分)に位置することになる。このため、圧縮荷重が付加されると、
図5に示すように、上記接触範囲に位置する冷却プレートの
図5における上面が、下側(冷却プレート2の内側)に沈み込むことにより、冷却プレート2の上面が撓むことがある。絶縁板4は、冷却プレート2と半導体カード3との間に挟まれている。このため、冷却プレート2が撓むと、絶縁板4が半導体カード3の縁の部分において曲げ変形する。
【0023】
  本実施例の積層ユニット100では、半導体カード3は、絶縁板4が配置されている側の面における窪み2a側の縁に曲面3cが形成されている。このため、絶縁板4が曲げ変形する際には、絶縁板4は、半導体カード3の曲面3cに沿うように変形する。その結果、絶縁板4が、半導体カードに形成された曲面3cの曲率半径以下の曲率半径で曲げ変形することが防止される。これにより、絶縁板4が、圧縮荷重によって破壊されることが抑制される。
【0024】
  以下に、
図6を用いて、実施例1の積層ユニット100の比較例を説明する。比較例の積層ユニット100は、実施例1の積層ユニット100の半導体カード3を、半導体カード53に変更したものである。比較例の積層ユニット100では、半導体カード53の絶縁板4が配置されている側の面における窪み側の縁には、実施例1と異なり、曲面3cが形成されていない。このため、絶縁板4は、半導体カード53の縁(
図6左下の縁)の位置において、比較的小さな曲率半径で曲げ変形する。その結果、比較例の積層ユニット100では、絶縁板4が、積層ユニット100の圧縮荷重によって破壊され易い。
【0025】
  上記の実施例では、曲面3cは、円筒面であった。しかしながら、曲面3cは、円筒面以外の曲面であってもよい。また、上記の実施例では、
図4に示す断面形状において、半導体カード3の下面に相当する線が曲面3cに相当する円弧の接線となっており、半導体カード3の側面(
図4左側の面)に相当する線が、曲面3cに相当する円弧と交差している。しかしながら、半導体カード3の下面に相当する線と、半導体カード3の側面に相当する線との両方が曲面3cに相当する円弧の接線となっていてもよい。別言すると、曲面3cは、いわゆるR面取りと同様の形状であってもよい。ただし、上記の実施例のように、半導体カード3の下面に相当する線が曲面3cに相当する円弧の接線となっており、半導体カード3の側面に相当する線が曲面3cに相当する円弧と交差している場合には、曲面3cがR面取りと同様の形状である場合と比較して、次の利点がある。すなわち、上記の実施例のような形状とした場合には、曲面3cの曲率半径を大きくしつつ、かつ、半導体カード3と冷却プレート2との接触面積を大きくすることができる。これにより、絶縁板4の破壊を抑制しつつ、半導体カード3の冷却性能を向上することができる。
【0026】
  以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。