【実施例1】
【0022】
実施例1の半導体装置10について
図1、2を参照して説明する。
図1では図を見易くするために半導体基板11上の絶縁膜及び電極の図示を省略している。また、
図1、2はそれぞれ図を見易くするために縮尺を変更して図示している。このため、
図1と
図2の縮尺は一致していないことに注意されたい。また、
図1では後述するゲート電極16及びダミートレンチ25にハッチをかけている。
図1に示すように、半導体装置10は半導体基板11に形成されている。半導体基板11には、素子領域12と、終端領域14が形成されている。素子領域12は、半導体基板11を平面視したときに略矩形状を有する。終端領域14は素子領域12を取り囲んでいる。別言すれば、終端領域14は、素子領域12を構成する4つの辺と、半導体基板11の端辺との間に形成されている。以下では、終端領域14のうち、後述するFLR領域41aの内周側の側面より素子領域12側の領域を特に境界領域14aと称する。半導体基板11にはSiC基板が用いられる。
【0023】
素子領域12には、6つのゲート電極16が形成されている。6つのゲート電極16は、
図1のy方向に延びており、
図1のx方向に所定の間隔を空けて配列されている。終端領域14には1つのダミートレンチ25及び6つのFLR領域41が形成されている。ダミートレンチ25は、素子領域12の周囲を一巡しており、6つのFLR領域41はダミートレンチ25の周囲を一巡している。
【0024】
ここで、素子領域12の構成について説明する。
図2に示すように、素子領域12には、絶縁ゲート型半導体素子が形成されている。即ち、素子領域12には、半導体基板11の上面に臨む領域に、n+型のソース領域40とp+型のボディコンタクト領域38が形成されている。ボディコンタクト領域38は、ソース領域40に接するように形成されている。
【0025】
ソース領域40とボディコンタクト領域38の下側には、p−型のボディ領域36aが形成されている。ボディ領域36aの不純物濃度は、ボディコンタクト領域38の不純物濃度より低くされている。ボディ領域36aは、ソース領域40及びボディコンタクト領域38に接している。このため、ソース領域40は、ボディ領域36a及びボディコンタクト領域38によって囲まれている。ボディ領域は、終端領域14の一部にまで形成されている。以下では、終端領域14に形成されているp−型のボディ領域を「ボディ領域36b」と称し、ボディ領域36aとボディ領域36bをまとめて「ボディ領域36」と称する。ボディ領域36aとボディ領域36bは連続した領域であり、一体的に形成される。このため、ボディ領域36aの下面とボディ領域36bの下面とは、z方向の同じ高さに位置している。なお、p−型のボディ領域36a及びボディコンタクト領域38は「第1ボディ領域」の一例に相当し、ボディ領域36b及びボディコンタクト領域39(後述)は「第2ボディ領域」の一例に相当する。
【0026】
ボディ領域36aの下側には、n−型のドリフト領域32aが形成されている。ドリフト領域は、半導体基板11の全面に形成されている。以下では、終端領域14に形成されているn−型のドリフト領域を、「ドリフト領域32b」と称し、ドリフト領域32aとドリフト領域32bをまとめて「ドリフト領域32」と称する。ドリフト領域32aとドリフト領域32bは連続した領域であり、一体的に形成される。ドリフト領域32aは、ボディ領域36aの下面に接している。ドリフト領域32aは、ボディ領域36aによってソース領域40から分離されている。ドリフト領域32a内には、後述するゲートトレンチ24の底部を囲む範囲にp−型の拡散領域34が形成されている。拡散領域34は、ゲート電極16の下方(即ち、ゲートトレンチ24の底部)の絶縁体26に接している。拡散領域34の周囲は、ドリフト領域32aに囲まれている。これによって、拡散領域34は、ボディ領域36aから分離されている。拡散領域34は、ボディ領域36aの下面から深さd1の位置に、間隔aを空けて形成されている。なお、n−型のドリフト領域32aは「第1ドリフト領域」の一例に相当し、ドリフト領域32bは「第2ドリフト領域」の一例に相当し、拡散領域34は「第1フローティング領域」の一例に相当する。
【0027】
半導体基板11の下面に臨む範囲には、n+型のドレイン領域30が形成されている。ドレイン領域30は半導体基板11の全面に形成されている。ドレイン領域30の不純物濃度は、ドリフト領域32中の不純物濃度より高くされている。ドレイン領域30は、ドリフト領域32の下面に接している。ドレイン領域30は、ドリフト領域32によってボディ領域36から分離されている。
【0028】
半導体基板11の上面にはゲートトレンチ24が形成されている。ゲートトレンチ24は、ソース領域40及びボディ領域36aを貫通し、その下端はドリフト領域32aまで延びている。ゲートトレンチ24内には、ゲート電極16が形成されている。ゲート電極16は、その下端がボディ領域36aの下面より僅かに深くなるように形成されている。ゲートトレンチ24の壁面とゲート電極16の間(即ち、ゲート電極16の側方及び下方)には絶縁体26が充填されている。このため、ゲート電極16は、絶縁体26を介してボディ領域36a及びソース領域40に対向している。また、ゲート電極16の上面には、キャップ絶縁膜45が形成されている。
【0029】
半導体基板11の下面にはドレイン電極28が形成されている。ドレイン電極28は、半導体基板11の全面に形成されている。ドレイン電極28は、ドレイン領域30とオーミック接触している。半導体基板11の上面には、ソース電極46が形成されている。ソース電極46は、素子領域12、及び終端領域14の一部に形成されている。素子領域12では、ソース電極46はソース領域40及びボディコンタクト領域38とオーミック接触している。終端領域14では、ソース電極46はボディコンタクト領域39とオーミック接触している。ソース電極46は、キャップ絶縁膜45によってゲート電極16から絶縁されている。
【0030】
次に、終端領域14について説明する。
図2に示すように、終端領域14には、1つのダミートレンチ25、6つのFLR領域41、及び6つの拡散領域37が形成されている。終端領域14の一部には、半導体基板11の上面に臨む範囲にボディコンタクト領域39が形成されている。ボディコンタクト領域39の下側には、ボディ領域36bが形成されている。ボディ領域36bはボディコンタクト領域39の下面及び側面に接している。ボディ領域36bの下側には、ドリフト領域32bが形成されている。ドリフト領域32bはボディ領域36bの下面及び側面に接している。ダミートレンチ25は、ボディコンタクト領域39及びボディ領域36bを貫通し、その下端がドリフト領域32bまで延びている。ダミートレンチ25の下端は、ゲートトレンチ24の下端と同一の深さとなっている。ダミートレンチ25内には、絶縁体27が充填されている。
【0031】
終端領域14には、ドリフト領域32b内に、6つのp−型の拡散領域37が形成されている。以下では、各拡散領域37を、x方向に向かって順に、拡散領域37a、拡散領域37b、・・・、拡散領域37fと称する。拡散領域37a〜37fは略同一の大きさである。拡散領域37は、素子領域12から半導体基板11の端辺に向かう方向(
図2のx方向)の幅がw2、半導体基板11の厚み方向(
図2のz方向)の厚みがt2となるように形成されている。拡散領域37のうち拡散領域37aは、ダミートレンチ25の底部を囲む範囲に形成されている。拡散領域37の周囲は、ドリフト領域32bに囲まれている。本実施例では、拡散領域37a〜37fは拡散領域34と略同一の深さ(即ち、深さd1)に形成されており、素子領域12の外周を取り囲んでいる。なお、拡散領域37は、「第2フローティング領域」の一例に相当する。
【0032】
拡散領域37のうち拡散領域37a、37bは、終端領域14の境界領域14aに配置されている。より具体的には、拡散領域37a、37bは、ボディ領域36bの下方に配置されている。別言すると、拡散領域37a、37bは、半導体基板11を平面視したときに、ボディ領域36bと重なっている。このため、本実施例では、6つの拡散領域37のうち、2つの拡散領域37a,37bがボディ領域36bの下方に配置されており、4つの拡散領域37c〜37fがボディ領域36bの外周側に配置されている。なお、拡散領域37a,37bは「第2ボディ領域下方第2フローティング領域」の一例に相当する。
【0033】
ここで、拡散領域37bと拡散領域37cとの間隔をb0とし、拡散領域37bから外周側に向かってj番目(j=1〜3)の拡散領域37とj+1番目の拡散領域37との間隔をbjとすると、b0、bj、bj+1の間には、b0<bj<bj+1の関係が成立する。また、上述したように、隣接する拡散領域34は間隔aを空けて均等に配置されている。間隔aと間隔b0との間には、2×b0≦aの関係が成り立っている。
【0034】
また、拡散領域37aは、素子領域12の最も終端領域14側に形成されている拡散領域34(以下では、端部側拡散領域34aとも称する)から、間隔e1を空けて形成されている。本実施例では、e1=aとされているが、これに限られず、例えばe1<aであってもよい。また、拡散領域37bは、拡散領域37aから間隔e2を空けて形成されている。本実施例では、e2<aとされているが、これに限られず、例えばe2=aであってもよい。
【0035】
次に、FLR領域41について説明する。上述したように、終端領域14には、半導体基板11の上面に臨む範囲に6つのp+型のFLR領域41が形成されている。FLR領域41の不純物濃度は、ボディ領域36bの不純物濃度より高くされている。以下では、各FLR領域41を、x方向に向かって順に、FLR領域41a、FLR領域41b、・・・、FLR領域41fと称する。FLR領域41a〜FLR領域41fは略同一の大きさである。FLR領域41は、素子領域12から半導体基板11の端辺に向かう方向の幅がw1、半導体基板11の厚み方向の厚みがt1となるように形成されている。ドリフト領域32bは、FLR領域41に接するとともにFLR領域41を取り囲んでいる。FLR領域41aは、ボディ領域36bから間隔c0を開けて形成されている。ここで、間隔c0は、厳密には、ボディ領域36bの反素子領域12側(x方向側)の側面と、FLR領域41aの素子領域12側(−x方向側)の側面との間隔を指すことに注意されたい。ボディ領域36bとFLR領域41aの間には、ドリフト領域32bが配置されている。別言すれば、ドリフト領域32bは、ボディ領域36bとFLR領域41aを分離している。
図2から明らかなように、FLR領域41aの内周側の側面より素子領域12側には、2つの拡散領域37a、37bが配置されている。
【0036】
ここで、内周側から外周側に向かってi番目(i=1〜5)のFLR領域41とi+1番目のFLR領域41との間隔をciとすると、c0、ci、ci+1の間には、c0<ci<ci+1の関係が成立する。
【0037】
また、間隔b0〜b3と間隔c0〜c3との間には、c0<b0、c1<b1、c2<b2、c3<b3の関係がそれぞれ成立する。さらに、FLR領域41の幅w1と拡散領域37の幅w2との間には、w1>w2の関係が成立し、FLR領域41の厚みt1と拡散領域37の厚みt2との間には、t1>t2の関係が成立する。
【0038】
また、上述したように、FLR領域41は6つ形成されている。一方、拡散領域37のうちボディ領域36bの下方に配置されていない拡散領域37は4つ形成されている。即ち、FLR領域41の数は、ボディ領域36bの下方に配置されていない拡散領域37(即ち、拡散領域37c〜37f)の数よりも多い。
【0039】
終端領域14の半導体基板11の上面には絶縁膜44が形成されている。絶縁膜44は、ボディコンタクト領域39の上面の一部及びボディ領域36bの上面の一部と、ドリフト領域32bの上面を覆っている。
【0040】
上述した半導体装置10を使用するときは、ドレイン電極28が電源電位に接続され、ソース電極46がグランド電位に接続される。ゲート電極16に印加される電位が閾値電位未満である場合は、半導体装置10はオフしている。半導体装置10がオフした状態では、ボディ領域36とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がる。上記のpn接合から広がる空乏層がFLR領域41aに到達すると、FLR領域41aとドリフト領域32bとのpn接合から空乏層が広がる。同様に、上記のpn接合(ボディ領域36とドリフト領域32とのpn接合)から広がる空乏層が拡散領域34、37a,37bに到達すると、拡散領域34とドリフト領域32aとのpn接合、及び拡散領域37a,37bとドリフト領域32bとのpn接合からそれぞれ空乏層が広がる。
【0041】
ゲート電極16に印加される電位が閾値電位以上となると、半導体装置10はオンする。半導体装置10がオンすると、絶縁体26に接している範囲のボディ領域36aにチャネルが形成される。これによって、電子が、ソース電極46からソース領域40、ボディ領域36aのチャネル、ドリフト領域32a、及びドレイン領域30を通ってドレイン電極28に流れる。即ち、ドレイン電極28からソース電極46に電流が流れる。
【0042】
次に、実施例1の半導体装置10の利点を説明する。
図2に示されるように、半導体装置10の終端領域14には拡散領域37及びFLR領域41が形成されている。拡散領域37は、半導体基板11の内部(詳細には、ボディ領域36の下面から深さd1の位置)に形成されており、FLR領域41は半導体基板11の上面に臨む範囲に形成されている。これにより、半導体装置10に逆バイアス電圧を印加すると、等電位線は隣接する拡散領域37間及び隣接するFLR領域41間に均等に配置される。このため、終端領域14では、半導体基板11の内部における電界の集中を抑制できると共に、上面における電界の集中も抑制することができる。従って、終端領域14において局所的に電界強度が高くなることがなくなり、終端領域14全体の電界強度を低減することができる。この結果、終端領域14の耐圧を向上することができ、終端領域14の面積を縮小できる。また、一般に、境界領域14aに相当する領域は、電界が集中して電界強度が高くなり易く、耐圧が低下し易い。本実施例では、境界領域14aに拡散領域37a,37bを配置している。これにより、境界領域14aの電界強度を、素子領域12の電界強度以下に抑えることができる。このように、終端領域14に複数のFLR領域41及び拡散領域37を形成し、一部の拡散領域37を境界領域14aに配置することにより、終端領域14の耐圧を素子領域12の耐圧よりも相対的に高くすることができる。従って、ドリフト領域32の不純物濃度が比較的に高い場合においても、終端領域14で耐圧を保持することができる。結果として、アバランシェ降伏が発生する箇所を素子領域12とすることができる。素子領域12は終端領域14と比較して広い面積を有するため、温度が上がり難く、大きな降伏電流を許容できる。このため、半導体装置10のアバランシェ耐量を増加することができる。
【0043】
また、本実施例では終端領域14の一部(即ち、境界領域14a)にもボディ領域36bを形成している。ボディ領域36bは、ダミートレンチ25より半導体基板11の端部側(x方向)にまで及んでいる。トレンチには電界が集中し易いため、上記のようにボディ領域36bを形成することにより、ダミートレンチ25への電界集中を抑制することができる。ダミートレンチ25が形成されていない場合は、最も終端領域14側のゲートトレンチ24への電界集中を抑制することができる。また、本実施例では、拡散領域37a、37bがボディ領域36bの下方に配置されている。一般に、半導体装置10に逆バイアス電圧を印加すると、ボディ領域36bとドリフト領域32bとのpn接合に電界が集中し、このpn接合の耐圧が低下し易い。しかしながら、拡散領域37a、37bを配置することにより、上記pn接合の電界集中を緩和し、耐圧低下を抑制することができる。
【0044】
さらに、本実施例では、6つの拡散領域34を同一の深さd1に、間隔aを空けて配置している。また、2つの拡散領域37a,37bも拡散領域34と同一の深さd1に配置している。逆バイアス電圧を印加すると、ボディ領域36とドリフト領域32とのpn接合から空乏層が広がる。拡散領域34,37a,37bを同一の深さに配置することにより、空乏層はこれらの拡散領域34,37a,37bにほぼ同じタイミングで到達する。空乏層が拡散領域34,37a,37bに到達すると、拡散領域34とドリフト領域32aとのpn接合、及び拡散領域37a,37bとドリフト領域32bとのpn接合からもそれぞれ空乏層が広がる。空乏層は拡散領域34及び拡散領域37a,37bからほぼ等速度で広がる。6つの拡散領域34は均等に配置されているため、隣接する拡散領域34から広がる空乏層がつながるタイミングは、各拡散領域34間でほぼ同時となる。このタイミングを第1タイミングとする。空乏層は隣接する拡散領域34間のほぼ中央でつながる。一方、拡散領域37b(即ち、拡散領域37a,37bのうち外周側の拡散領域37)から広がる空乏層は、その外周側で拡散領域37bに隣接する拡散領域37cに到達する。このタイミングを第2タイミングとする。本実施例では、拡散領域37bと拡散領域37cとの間隔b0を、隣接する拡散領域34同士の間隔aの2分の1以下に設定している。このため、第2タイミングの方が第1タイミングよりも先に訪れる。即ち、拡散領域37bと拡散領域37cの間は、隣接する拡散領域34の間よりも早く空乏化する。従って、終端領域14の耐圧を優先的に保持することができ、終端領域14の耐圧を素子領域12の耐圧よりも相対的に高くすることができる。また、本実施例では端部側拡散領域34aと拡散領域37aとの間隔e1を間隔aと同一としているため、隣接する拡散領域34の間が空乏化するのとほぼ同時に、端部側拡散領域34aと拡散領域37aの間が空乏化する。また、拡散領域37aと拡散領域37bとの間隔e2を間隔aより短くしているため、隣接する拡散領域34の間が空乏化するよりも早く拡散領域37aと拡散領域37bとの間が空乏化する。このため、終端領域14の耐圧をより適切に保持することができる。
【0045】
拡散領域37aに空乏層が到達すると、拡散領域37aから空乏層が広がり、拡散領域37bに到達する。すると、拡散領域37bから空乏層が広がり、拡散領域37cに到達する。こうして空乏層は拡散領域37fまで広がっていく。また、ボディ領域36bの側面とドリフト領域32bとのpn接合から広がる空乏層は、FLR領域41aにも到達する。FLR領域41aに空乏層が到達すると、FLR領域41aから空乏層が広がり、FLR領域41bに到達する。すると、FLR領域41bから空乏層が広がり、FLR領域41cに到達する。こうして空乏層はFLR領域41fまで広がっていく。本実施例では、間隔b0〜b3と間隔c0〜c3との間には、c0<b0、c1<b1、c2<b2、c3<b3の関係がそれぞれ成立する。一般に、ボディ領域の側面からは空乏層が広がり難い。しかしながら、c0<b0とすることにより、ボディ領域36bの下面から広がる空乏層が拡散領域37bを経て拡散領域37cに到達するよりも先に、ボディ領域36bの側面から広がる空乏層がFLR領域41aに到達し易くなる。また、c1<b1とすることにより、空乏層は拡散領域37dに到達するよりも先に、FLR領域41bに到達し易くなる。同様に、c2<b2、c3<b3とすることにより、空乏層は拡散領域37fに到達するよりも先に、FLR領域41dに到達し易くなる。このため、FLR領域41a〜41d間の方が、拡散領域37b〜37f間よりも早く空乏化し易い。従って、終端領域14では、半導体基板11の上面の耐圧(即ち、FLR領域41が形成されている範囲の耐圧)を、半導体基板11の内部の耐圧(即ち、拡散領域37が形成されている範囲の耐圧)よりも高くすることができる。別言すれば、拡散領域37の耐圧の値が、終端領域14の耐圧の値となる。この結果、例えば外来電荷により半導体基板11の上面の電界が乱されて、上面の電界強度が若干低下したとしても、その電界強度が拡散領域37近傍の電界強度を下回らない限り、外来電荷の付着を原因として終端領域14の耐圧が低下することを抑制することができる。即ち、外来電荷の影響を受け難く、耐圧劣化が小さい終端構造を実現できる。
【0046】
一般に、隣接する拡散領域37間の間隔bが短くなるほど、一方の拡散領域37から広がる空乏層は、隣接する他方の拡散領域37に早く到達する。しかしながら、これらの拡散領域37による耐圧保持力は低下してしまう。一方、間隔bが長くなるほど、一方の拡散領域37から広がる空乏層が隣接する他方の拡散領域37に到達するのは遅くなるが、これらの拡散領域37による耐圧保持力は上昇する。本実施例では、隣接する拡散領域37b〜37f間の間隔b0〜b3は、b0<b1<b2<b3とされている。このため、拡散領域37bから広がる空乏層は、拡散領域37c・・・37fへと速やかに広がる。従って、例えばb0>b1>b2>b3である構成と比較して、拡散領域37b〜37f間を早く空乏化することができる。同時に、比較的に間隔bが広くとられている外周側の拡散領域37(例えば拡散領域37d〜37f)では、高い耐圧保持力を発揮できる。このため、例えばb0=b1=b2=b3である構成と比較して、拡散領域37による耐圧保持力を向上することができる。
【0047】
また、本実施例では、FLR領域41の数(6つ)は、拡散領域37のうちボディ領域36bの下方に位置していない拡散領域37の数(4つ)よりも多くされている。一般に、FLR領域41の数が多いほど半導体基板11の上面の耐圧が向上し、拡散領域37の数が多いほど半導体基板11の内部の耐圧が向上する。このため、上記の構成とすることにより、終端領域14では、半導体基板11の上面の耐圧を内部の耐圧よりも相対的に高くすることができる。
【0048】
また、本実施例では、z方向のFLR領域41の厚みt1は、同方向の拡散領域37の厚みt2よりも大きくされている。この構成の利点を
図3,4を参照して説明する。
図3のFLR領域41のz方向の厚みt1は、
図4のFLR領域141のz方向の厚みt2よりも大きくされている。このため、FLR領域41の側面の長さがFLR領域141の側面の長さよりも長くなる。一般に、空乏層は、pn接合において、p型領域の固定電荷とn型領域の固定電荷が等量になるように広がる。このため、FLR領域の側面と角部からそれぞれ空乏層が広がる(即ち、p型領域の固定電荷と等量の固定電荷をn型領域にて確保する)場合を考えると、空乏層が広がる方向における空乏層の厚みは、FLR領域の側面から広がる空乏層の方が、角部から広がる空乏層よりも厚くなる。このため、FLR領域の側面が長いFLR領域41からのほうが、FLR領域141からよりも、空乏層が広がり易くなる。従って、等電位線は、隣接するFLR領域41間の方が、隣接するFLR領域141間よりも、より均等に配置される(別言すれば、等電位線が疎になる)。この結果、FLR領域41の方がFLR領域141よりも半導体基板11の上面の電界強度を低減することができる。特に、本実施例では、FLR領域41の厚みt1を、拡散領域37の厚みt2よりも大きくしている。このため、FLR領域41から空乏層が広がる速度の方が、拡散領域37から空乏層が広がる速度よりも大きくなる。従って、FLR領域41間の方が拡散領域37間よりも早く空乏化する。結果として、終端領域14では、半導体基板11の上面の耐圧を内部の耐圧よりも相対的に高くすることができる。
【0049】
また、本実施例では、x方向のFLR領域41の幅w1は、同方向の拡散領域37の幅w2よりも大きくされている。このため、FLR領域41の角部の曲率は、断面が略楕円状である拡散領域37の曲率よりも小さくなる(即ち、FLR領域41の角部の曲率半径は、拡散領域37の曲率半径よりも大きくなる)。このため、空乏層は、FLR領域41からの方が拡散領域37からよりも相対的に広がり易くなる。従って、FLR領域41間の方が拡散領域37間よりも早く空乏化する。結果として、終端領域14では、半導体基板11の上面の耐圧を内部の耐圧よりも相対的に高くすることができる。
【0050】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、本明細書が開示する半導体装置は、上記の実施例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0051】
例えば、ゲートトレンチ24の下端が浅くされており、ゲートトレンチ24の底部と拡散領域34とはドリフト領域32aによって分離されていてもよい。同様に、ダミートレンチ25の下端が浅くされており、ダミートレンチ25の底部と拡散領域37aとはドリフト領域32bによって分離されていてもよい。この構成によっても実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
また、FLR領域41の個数と拡散領域37の個数(厳密には境界領域14aの外周側に配置されている拡散領域37c〜37f)の関係、FLR領域41の厚みt1と拡散領域37の厚みt2の関係、及びFLR領域41の幅w1と拡散領域37の幅w2の関係は、それぞれ単独で効果を奏するものである。このため、上記3つの関係が同時に満たされなければならないわけではなく、いずれか1つ或いは2つの関係が採用される構成であってもよい。
【0053】
また、境界領域14aに配置される拡散領域37の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、拡散領域37の全体がボディ領域36bの下方に配置される必要はなく、半導体基板11を平面視したときに拡散領域37の一部がボディ領域36bの下方に配置される構成であってもよい。
【0054】
また、拡散領域37及びFLR領域41の数は6つに限られない。拡散領域37及びFLR領域41を多数形成するほど、終端領域14の耐圧を高くできる。終端領域14で保持したい耐圧の値に応じて各FLR領域41及び各拡散領域37間の間隔及び数を調整することにより、素子領域12よりも終端領域14の耐圧を相対的に高くすることが可能となる。
【0055】
また、ダミートレンチ25を形成しなくても耐圧が保持できる場合には、ダミートレンチ25は形成されなくてもよい。もしくは、ダミートレンチ25の数は2つ以上であってもよい。ダミートレンチ25の内部には導電体がさらに形成されていてもよい。また、半導体基板11には2つ以上の素子領域12が形成されてもよい。また、本明細書が開示する技術は、MOSに限られず、IGBTを始めとする大電力スイッチング素子全般に適用され得る。
【0056】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。