(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操向操作具の下方に、前記運転座席に着座した運転者の前下方における左右他方側の視界を確保するための空間が形成されている請求項5に記載の自脱型コンバイン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、自脱型コンバインによる作業では、条合わせを行ったり、刈跡や刈取穀稈の搬送状況を確認したりするところ、運転者の視線が前下方になることが多い。しかし、上記構成では、フロントガラスがキャビンのルーフ部から運転座席の上面の高さ位置程度までしか延びていないため、キャビン内からの機体前下方の視界が良くない。また、上述のように、計器盤及び操向操作具を備えたフロントパネルが設けられていると、計器盤及び操向操作具やフロントパネル自体が運転座席に着座した運転者の直前方に位置しているため、機体前方の視界性が低下する。
【0005】
上記状況に鑑み、キャビン内からの機体前方の視界性が向上する自脱型コンバインが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
植立穀稈を刈り取る刈取部と、運転者が搭乗するキャビン
と、が備えられた自脱型コンバインであって、
前記キャビン内に、運転者が着座する運転座席と、機体の操向操作を行うための操向操作具と、計器類が配設された計器盤と、が設けられ、
前記キャビンの前面に、前記キャビンのルーフ部から前記運転座席の下面よりも下方まで延びるフロントガラスが設けられ、
前記計器盤と前記操向操作具とは、前記キャビン内における左右一方側と左右他方側とに振り分けて配置され
、
前記キャビンは、前記刈取部の後方における左右他方側に配置され、
前記刈取部は、刈取穀稈を左右他方側から左右一方側への斜め後方に搬送する搬送装置を有し、
前記キャビンの前面のうち左右一方側の下側の部位に、前記搬送装置が入り込む凹部が形成されていることにある。
【0007】
本構成によれば、キャビンの前面がキャビンのルーフ部から運転座席の下面よりも下方の位置までフロントガラスで構成されているため、機体前下方の視界が良くなる。したがって、条合わせが容易であるし、刈跡及び刈取穀稈の搬送状況の確認も容易である。また、計器盤及び操向操作具が運転座席に着座した運転者の直前方に存在しないため、フロントパネルを設ける必要がなく、運転座席の前方に機体前方の視界を妨げるものがない。このように、本構成によれば、キャビン内からの機体前方の視界性が向上する。
また、本構成によれば、凹部に搬送装置が入り込むので、搬送装置とキャビンの前面とが干渉することがない。
【0008】
さらに、前記操向操作具と前記計器盤との間に、前記運転座席に着座した運転者の前下方の視界を確保するための空間が形成されていると好適である。
【0009】
本構成によれば、操向操作具と計器盤との間の空間を通して、運転者が機体前下方を確認することができるため、機体前下方の視界が良くなる。
【0010】
さらに、前記キャビン内の左右一側部に、サイドパネルが設けられ、
前記計器盤は、前記サイドパネルに片持ち支持されていると好適である。
【0011】
本構成によれば、計器盤の下方に空間を容易に形成することができる。
【0012】
さらに、前記計器盤の下方に、前記運転座席に着座した運転者の前下方における左右一方側の視界を確保するための空間が形成されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、計器盤の下方の空間を通して、運転者が機体前下方における左右一方側を確認することができるため、機体前下方における左右一方側の視界が良くなる。
【0014】
さらに、前記キャビンの前部に、前記キャビンのルーフ部を支持する左右一対の前支柱が設けられ、
前記操向操作具は、左右一対の前記前支柱のうちの左右他方側に片持ち支持されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、操向操作具を剛性の高い前支柱にしっかりと支持させつつ、操向操作具の下方に空間を容易に形成することができる。
【0016】
さらに、前記操向操作具の下方に、前記運転座席に着座した運転者の前下方における左右他方側の視界を確保するための空間が形成されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、操向操作具の下方の空間を通して、運転者が機体前下方における左右他方側を確認することができるため、機体前下方における左右他方側の視界が良くなる。
【0018】
さらに、前記フロントガラスは、前記キャビンの床部まで延びていると好適である。
【0019】
本構成によれば、キャビンの前面がキャビンのルーフ部からキャビンの床部までフロントガラスで構成されているため、機体前下方の視界が良くなる。
【0020】
【0021】
【0022】
さらに、前記凹部は、前記フロントガラスと連なるガラスで構成されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、フロントガラスとの一体感を損なうことなく、凹部を形成することができる。
【0024】
さらに、前記凹部は、前記フロントガラスと連なる樹脂で構成されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、凹部を容易に加工することができる。
【0026】
さらに、植立穀稈を刈り取る刈取部を備え、
前記刈取部は、植立穀稈を引き起こす引起装置を有し、かつ、前記キャビンの前方で昇降可能に構成され、
前記フロントガラスは、その上下中間部が後方側に膨出するように屈曲していると好適である。
【0027】
本構成によれば、フロントガラスの屈曲部分に引起装置が入り込むので、引起装置とフロントガラスとが干渉することがない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0030】
〔コンバインの全体構成〕
図1及び
図2には、自脱型コンバインを示している。コンバインにおける前部には、植立穀稈を刈り取る刈取部1が設けられている。刈取部1の後方には、機体を走行させるクローラ式の走行装置2が設けられている。走行装置2の上部には、機体フレーム3が設けられている。機体フレーム3上における左側には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4が設けられている。
【0031】
また、機体フレーム3上における右側の前部には、運転者が搭乗するキャビン5及びエンジンEが設けられている。キャビン5は、刈取部1の後方における右側に配置されている。エンジンEのプレクリーナ102が、キャビン5のルーフ部12Aの後方右寄りに配置されている。また、機体フレーム3上における右側の後部には、穀粒を貯留するグレンタンク6が、脱穀装置4と左右に並ぶ状態で設けられている。グレンタンク6には、グレンタンク6内の穀粒を取り出すためのアンローダ7が設けられている。
【0032】
〔刈取部〕
刈取部1は、キャビン5の前方で昇降可能に構成されている。具体的には、刈取部1は、油圧シリンダ(図示省略)によって左右向きの軸心周りに揺動されることにより、下降した刈取作業位置と、上昇した非刈取作業位置とに切り替わるように構成されている。また、刈取部1は、植立穀稈を分草する分草具8と、植立穀稈を引き起こす引起装置9と、引き起こされた植立穀稈を切断する切断装置10と、刈取穀稈を後方に搬送する搬送装置11と、を有している。搬送装置11は、刈取穀稈を右側から左側への斜め後方に搬送するものであって、刈取部1の右側に位置して右側二条分の刈取穀稈の穂先を右側から左側への斜め後方に搬送する右搬送装置11A(本発明に係る「搬送装置」に相当)を有している。
【0033】
〔キャビン〕
図3から
図6に示すように、キャビン5の前面には、フロントガラス13が設けられている。キャビン5の右側部には、開閉可能なドア14及びバックミラー83が設けられている。また、キャビン5の前部には、ルーフ部12Aを支持する左右一対の前支柱15が設けられている。キャビン5の後部には、ルーフ部12Aを支持する左右一対の後支柱16及びドアフレーム56が設けられている。左右一対の後支柱16の間には、リヤガラス88の後窓枠89が設けられている。後窓枠89には、プレクリーナ102がステー102Aを介して支持されている。
【0034】
また、キャビン5内には、運転者が着座する運転座席17と、機体の操向操作を行うための操向レバー18(本発明に係る「操向操作具」に相当)と、計器類19が配設された計器盤20と、サイドパネル21と、が設けられている。計器盤20と操向レバー18とは、キャビン5内における左側と右側とに振り分けて配置されている。また、キャビン5内には、運転座席17の前方の空間である中空間S1、運転座席17の右斜め前下方の空間である右空間S2、運転座席17の左斜め前下方の空間である左空間S3が形成されている。
【0035】
〔サイドパネル〕
サイドパネル21は、キャビン5内の左側部に設けられている。サイドパネル21には、シフトレバー24、クラッチレバー25、サイド操作パネル26、アンローダリモコン27が配設されている。シフトレバー24は、静油圧式無段変速装置(図示省略)の変速操作をするためのものである。クラッチレバー25は、脱穀装置4への動力を伝達又は遮断するクラッチ(図示省略)の切替操作、刈取部1への動力を伝達又は遮断するクラッチ(図示省略)の切替操作をするためのものである。アンローダリモコン27は、アンローダ7を操作するためのものである。
【0036】
〔操向レバー〕
操向レバー18は、キャビン5内における右側に配置されている。操向レバー18は、左右一対の前支柱15のうちの右側に片持ち支持されている。具体的には、左右一対の前支柱15のうちの右側に、パワステユニット部28が固定され、操向レバー18がパワステユニット部28に十字方向(前後方向及び左右方向)に揺動自在に支持されている。パワステユニット部28には、キースイッチ29、コンビネーションスイッチ30が設けられていると共に、操向レバー18を操作する運転者の手首を置くアームレスト31が設けられている。
【0037】
〔計器盤〕
計器盤20は、キャビン5内における左側に配置されている。計器盤20は、サイドパネル21に片持ち支持されている。具体的には、計器盤20は、サイドパネル21の前端部に連結され、サイドパネル21から前右方に向けて張り出している。また、計器盤20には、計器類19として、例えば、中央部に実際の作業車速を表示する作業速度計19Aが配設され、その両側にエンジン回転計19Bや燃料計19Cが配設されている。
【0038】
〔フロントガラス〕
フロントガラス13は、一枚のガラスで構成されている。フロントガラス13は、ルーフ部12Aから運転座席17の下面よりも下方まで延びている。具体的には、フロントガラス13は、キャビン5の床部12Bまで延びている。つまり、フロントガラス13の下部に、キャビン5内の運転者がキャビン5の前方を透視可能な透視部13aが設けられている。また、フロントガラス13の上部には、ワイパー装置22が設けられている。
【0039】
また、フロントガラス13の上端部は、ルーフ部12Aの上部フレーム121(前上部フレーム121A)に支持されている。フロントガラス13の下端部は、床部12Bの前端部に支持されている。また、フロントガラス13の左端部は、左の前支柱15と左の前フレーム151とで挟み込み支持されている。フロントガラス13の右端部は、右の前支柱15と右の前フレーム151とで挟み込み支持されている。
【0040】
また、フロントガラス13は、側面視において、キャビン5の床部12Bの前端部よりも前方に膨出する湾曲状に形成されている。具体的には、フロントガラス13は、側面視において、フロントガラス13の上部側部分の水平面に対する傾斜角度θ1の方が、フロントガラス13の下部側部分の水平面に対する傾斜角度θ2よりも大きく、かつ、下端部に近付くほど後方に位置するように、前方に膨出する湾曲状に形成されている。また、フロントガラス13は、平面視において、その左右両端部ほど後方に位置する湾曲状に形成されている。このように、フロントガラス13は、上下方向及び左右方向に湾曲する三次元曲面状に形成されている。
【0041】
〔凹部〕
また、キャビン5の前面のうち左側における計器盤20の下方の部位には、凹部23が形成されている。凹部23は、搬送装置11のうち右搬送装置11Aが入り込むものである。凹部23は、透明な部材で構成されている。例えば、凹部23は、フロントガラス13と連なるガラスで構成したり、フロントガラス13と連なる樹脂で構成したりすることができる。凹部23は、フロントガラス13と一体に構成しても別体に構成してもよい。
凹部23をフロントガラス13と別体に構成する場合、凹部23とフロントガラス13との間にシールを設ければよい。
【0042】
〔中空間〕
中空間S1は、操向レバー18と計器盤20との間に形成されている。中空間S1は、運転座席17に着座した運転者の前方において、左右方向で計器盤20の右端部とパワステユニット部28の左端部(
図5においては、アームレスト31の左端部)とに亘るように存在し、上下方向でフロントガラス13の上端部と下端部とに亘るように存在している。つまり、運転座席17とフロントガラス13との間において、中空間S1には、視界の妨げとなるものが何もなく、運転座席17に着座した運転者の前方及び前下方の視界が確保される。なお、本実施形態においては、アームレスト31の左端部がパワステユニット部28の左端部よりも左側に位置しているため、
図5において、S1の右側の境界をアームレスト31の左端部近傍に線引きしたが、パワステユニット部28の形状やアームレスト31の形状及びアームレスト31のパワステユニット部28への取付け方あるいはアームレスト31の有無によっては、S1の右側の境界の線引きは、多少変更されるものである。
【0043】
このような構成により、運転者が姿勢P1の状態において、中空間S1を通して刈取部1の前端部(分草具8の前端部)や前方を見ることができる。そして、運転者が姿勢P2の状態において、中空間S1を通して刈跡を確認することができる。つまり、運転者が足載せ台104に足を載せて前屈みの姿勢で前下方を覗き込むことにより、中空間S1を通して刈跡を確認することができる。
【0044】
〔右空間〕
右空間S2は、操向レバー18(パワステユニット部28)の下方に形成されている。
右空間S2は、運転座席17に着座した運転者の足下において、キャビン5内における右側に存在している。運転座席17とフロントガラス13との間において、右空間S2には、視界の妨げとなるものが何もなく、運転座席17に着座した運転者の前下方における右側(前右下方)の視界が確保される。したがって、運転座席17に着座した運転者は、右空間S2を通して右端に位置する分草具8を見ることができるため、分草具8による条合わせを容易に行うことができる。
【0045】
〔左空間〕
左空間S3は、計器盤20の下方に形成されている。左空間S3は、運転座席17に着座した運転者の足下において、キャビン5内における左側に存在している。運転座席17とフロントガラス13との間において、左空間S3には、視界の妨げとなるものが何もなく、運転座席17に着座した運転者の前下方における左側(前左下方)の視界が確保される。したがって、運転座席17に着座した運転者は、左空間S3を通して右搬送装置11Aを見ることができるため、右搬送装置11Aによる刈取穀稈の搬送状況を容易に確認することができる。
【0046】
なお、
図4及び
図5におけるS1、S2、S3の範囲は、説明のための例示であって、S1、S2、S3の範囲は、これに限定されるものではない。
【0047】
〔視認性について〕
自脱型コンバインによる作業では、上述したように、刈取部1の条合わせを行ったり、刈跡や刈取穀稈の搬送状況を確認したりするため、運転者の視線が前下方になることが多くなると共に、運転者がフロントガラス13の一点を凝視することが多くなる。そこで、本発明では、フロントガラス13を上下方向に湾曲させている。これにより、フロントガラス13に対する運転者の前下方の視線が少しでも直角に近付くので、視線とフロントガラス13とが直角から大きくかけ離れているのと比べて像の歪みが少なくなり、運転者の目が疲れ難くなる。したがって、フロントガラス13は、歪が無い湾曲状に精度良く形成している。なお、フロントガラス13が歪んでいれば、運転者の目が疲れ易くなるところ、フロントガラス13の歪の調整が難しい場合は、左右方向の湾曲を取り止めて、上下方向の湾曲のみの二次元曲面状のガラスを採用してもよい。
【0048】
ちなみに、普通型コンバインは、自脱型コンバインとは刈取部の構成が異なる(掻込リールを備える構成である)ため、普通型コンバインによる作業では、運転者の視線が前下方になる頻度が自脱型コンバインよりも少なく、運転者がフロントガラスの広い範囲を見渡すことが多い(フロントガラスの一点を凝視することが少ない)。
【0049】
〔ワイパー装置〕
図7に示すように、ワイパー装置22は、ワイパーモータ32と、ワイパー33と、を有している。
【0050】
ワイパーモータ32は、ワイパー33を駆動するためのものである。ワイパーモータ32は、キャビン5内に配置されている。具体的には、インナールーフ40と仕切壁41との間に収容部84が形成され、収容部84に、ワイパーモータ32が収容されている。また、ワイパーモータ32は、ワイパー軸32aを有し、ワイパー軸32aがフロントガラス13から前方に突出している。フロントガラス13には、ワイパー軸32aを貫通させるための貫通孔13bが形成されている。ワイパー軸32aの前端部には、ワイパー33が取り付けられている。また、ワイパーモータ32は、第一ステー34及び第二ステー35を介して、フレーム36に上下方向及び左右方向に位置調整可能に固定されている。
【0051】
第一ステー34は、側面視において略L字形状に形成されている。第一ステー34は、フレーム36に左右方向に位置調整可能に固定されている。具体的には、第一ステー34には、左右方向に長い第一長孔34aが二つ形成され、第一長孔34aに第一ボルト37が挿通されている。第一ステー34は、第一ボルト37と第一ナット37aとによって、フレーム36に固定されている。なお、第一ボルト37をフレーム36に溶接してもよい。
【0052】
第二ステー35は、平板状に形成されている。第二ステー35は、第一ステー34に上下方向に位置調整可能に固定されている。具体的には、第二ステー35には、上下方向に長い第二長孔35aが二つ形成され、第二長孔35aに第二ボルト38が挿通されている。第二ステー35は、第二ボルト38と第二ナット38aとによって、第一ステー34に固定されている。なお、第二ナット38aを第一ステー34に溶接してもよい。また、第二ステー35には、ワイパーモータ32が固定されている。
【0053】
このような構成により、第一ステー34の固定位置を、第一長孔34aの範囲内で左右方向に位置調整すれば、ワイパーモータ32を左右方向に位置調整することができる。また、第二ステー35の固定位置を、第二長孔35aの範囲内で上下方向に位置調整すれば、ワイパーモータ32を上下方向に位置調整することができる。
【0054】
〔ルーフ部〕
図8及び
図9に示すように、ルーフ部12Aは、キャビン5外側のアウタールーフ39と、キャビン5内側のインナールーフ40と、を有している。アウタールーフ39とインナールーフ40との間は、仕切壁41によって仕切られている。また、ルーフ部12Aは、上部フレーム121によって支持されている。上部フレーム121は、前上部フレーム121Aと、左上部フレーム121Bと、右上部フレーム121Cと、を有している。
【0055】
また、ルーフ部12Aの内部には、外気をエアコンユニット45に供給する給気路42が形成されていると共に、インナールーフ40と仕切壁41との間には、エアコンユニット45からの冷気をキャビン5内に送風する送風管43が設けられている。また、ルーフ部12Aの右側部には、機体横外方(右方)に突出する外庇部44が設けられ、ルーフ部12Aの左側部には、機体横内方(左方)に突出する内庇部47が設けられている。
【0056】
〔給気路〕
給気路42は、外吸込口44a及び内吸込口47aからの外気をエアコンユニット45に供給するものである。給気路42は、アウタールーフ39と仕切壁41との間において、ルーフ部12Aの外周に沿って形成されている。給気路42のうち、左側の給気路の途中部分と右側の給気路の途中部分とが、左右向きの給気路によって連通接続されている。
前記左右向きの給気路内の仕切壁41には、開口部41aが形成されている。これにより、給気路42の外気が開口部41aからエアコンユニット45に供給される。
【0057】
〔エアコンユニット〕
エアコンユニット45は、ルーフ部12Aにおける後部に配置されている。具体的には、
図10から
図14に示すように、インナールーフ40と仕切壁41との間に、収容部49が形成され、収容部49に、エアコンユニット45が収容されている。エアコンユニット45は、エバポレータ、ヒータ、ファンを有している。
【0058】
また、エアコンユニット45の後下部は、カバー99によって覆われている。カバー99の前端部99bは、後窓枠89の固定部89bに下側から当て付けられた状態でボルト105によって固定されている。カバー99の後端部99aは、仕切壁41の後端部の凹入部に嵌め込まれている。
【0059】
また、エアコンユニット45は、左上部フレーム121Bの後端部と右上部フレーム121Cの後端部とで挟み込まれた状態で支持されている。詳しくは、エアコンユニット45の右側部は、右ステー91によって支持されている。右ステー91は、右上部フレーム121Cに連結されている。右ステー91には、エアコンユニット45の右側部がボルト95によって固定されている。なお、カバー99の右側部分がボルト100によって右ステー91に固定されている。
【0060】
また、エアコンユニット45の左側部は、第一左ステー92及び第二左ステー93によって支持されている。第一左ステー92は、左上部フレーム121Bに連結されている。
第一左ステー92には、エアコンユニット45の左側前部分がボルト96によって固定されている。また、後窓枠89の上端部には、前方に折れ曲がる折曲部89aが形成されており、第二左ステー93は、後窓枠89の折曲部89aに連結されている。第二左ステー93には、エアコンユニット45の左側後部分がボルト97によって固定されている。
【0061】
また、エアコンユニット45の左側部と右側部との間は、中ステー94によって支持されている。中ステー94は、折曲部89aに支持されている。中ステー94には、エアコンユニット45の中央部分前後二箇所がボルト98によって固定されている。なお、カバー99の左側部分がボルト101によって中ステー94に固定されている。
【0062】
また、ルーフ部12Aには、エアコンユニット45の外気導入と内気循環とを切り替えるシャッター103が設けられている。シャッター103は、横向きの軸心周りに揺動可能に構成され、外気を導入する位置と内気を循環する位置とに切替可能に構成されている。つまり、シャッター103によって給気路42の開口部40aが閉じられることにより、給気路42を通じてエアコンユニット45に外気が供給される。また、シャッター103によって仕切壁41の開口部41aが閉じられることにより、エアコンユニット45に内気が供給される。
【0063】
図8及び
図9に示すように、エアコンユニット45を操作するためのエアコン操作部50が、キャビン5内の天井面における前部、具体的には、前部の右側に設けられている(
図8参照)。エアコン操作部50には、温度を調節するための操作部、風量を調節するための操作部、外気導入と内気循環とを切り替える(シャッター103を切替操作する)ための操作部が含まれている。エアコン操作部50は、キャビン5内の天井面における前部、具体的には、前部の右側に設けたり、サイドパネル21に設けたりすることができると共に、リモコンによって構成することもできる。
【0064】
〔送風路〕
送風管43は、エアコンユニット45からの冷気をキャビン5内に送風するものである。送風管43は、インナールーフ40と仕切壁41との間に形成され、キャビン5の前部まで延びている。送風管43は、分配部43Aと、左送風管43Bと、右送風管43Cと、を有している。
【0065】
分配部43Aは、前記冷気を左送風管43B側と右送風管43C側とに分配するものである。分配部43Aの後部は、エアコンユニット45に接続され、分配部43Aの左側部に、左送風管43Bが接続され、分配部43Aの右側部に、右送風管43Cが接続されている。
【0066】
左送風管43Bは、前記冷気をキャビン5内の左側に送風するものである。左送風管43Bの前端部は、平面視においてキャビン5の左右方向の中心側に折れ曲がっている。また、平面視において左送風管43Bと重複するように、左送風管43Bの上側にラジオ48が設けられている。具体的には、ラジオ48は、左送風管43Bの前端部(前記折れ曲っている部分)の上側に設けられている。また、左送風管43Bには、前記冷気がキャビン5内に吹き出る左吹出口43Baが複数、本実施形態では、四つ設けられている。左吹出口43Baには、グリル43Bbが取り付けられている。
【0067】
右送風管43Cは、前記冷気をキャビン5内の右側に送風するものである。右送風管43Cの前端部は、平面視においてキャビン5の左右方向の中心側に折れ曲がっている。また、右送風管43Cには、前記冷気がキャビン5内に吹き出る右吹出口43Caが複数、本実施形態では、四つ設けられている。右吹出口43Caには、グリル43Cbが取り付けられている。
【0068】
〔外吸込口〕
外吸込口44aは、エアコンユニット45に供給する外気を吸い込むものであり、外庇部44に設けられている。外吸込口44aは、ルーフ部12Aのうち左右方向でドア14と同じ側(右側)に配置されている。外吸込口44aは、ルーフ部12Aのうち前後方向でドア14の存在範囲内、具体的には、窓部68の存在範囲内に配置されている(
図3参照)。外吸込口44aは、外庇部44の下部に形成され、下方を向くように開口している。外吸込口44aには、パンチングメタル状のカバー44bが取り付けられている。
【0069】
ここで、キャビン5の機体横外側の側部(右側部)には、運転者が乗降する際に使用する手摺46が設けられているところ、外庇部44は、手摺46よりも機体横外側(右側)に突出していない。つまり、手摺46は、外庇部44よりも右側に突出している。
【0070】
〔内吸込口〕
内吸込口47aは、エアコンユニット45に供給する外気を吸い込むものであり、内庇部47に設けられている。内吸込口47aは、ルーフ部12Aのうち左右方向でドア14と反対側(左側)に配置されている。内吸込口47aは、内庇部47の下部に形成され、下方を向くように開口している。内吸込口47aには、パンチングメタル状のカバー47bが取り付けられている。
【0071】
また、エアコンユニット45には、二本のヒータホース51、二本のエアコンホース52、二本の排水ホース53が接続されている。ヒータホース51とエアコンホース52とは、キャビン5の左側部と右側部とに振り分けて配置されている。
【0072】
図5に示すように、ヒータホース51及びハーネス54(電源系、制御系のハーネス)が、キャビン5内の左後角部を上下方向に通っている。ヒータホース51及びハーネス54は、室内カバー55によって覆われている。
【0073】
エアコンホース52は、ドア14を揺動可能に支持するドアフレーム56内を上下方向に通っている。エアコンホース52(サクション)は、コンプレッサ57に接続され、エアコンホース52(リキッド)は、レシーバ58に接続されている(
図3参照)。
【0074】
図9及び
図15に示すように、排水ホース53は、エアコンユニット45からの排水を排出するものである。排水ホース53は、エアコンユニット45の底部から左側と右側とに分かれて延びている。排水ホース53は、後支柱16内を上下方向に通っていると共に、後窓枠89の下部を支持する後横フレーム90から外部に露出して、キャビン5を支持する主フレーム3Aよりも下方まで延びている。
【0075】
〔バックモニター〕
ここで、
図16に示すように、キャビン5内には、バックモニター59が設けられているところ、左右一対の前支柱15のいずれにも、バックモニター59を取付可能に構成されている。詳しくは、バックモニター59用のハーネス54Aが、キャビン5内の左後角部からルーフ部12Aの内部の左側部を通ってキャビン5の前部まで延びている。バックモニター59用のハーネス54Aをキャビン5の前部における左右中央部からキャビン5内に取り出すことにより、バックモニター59用のハーネス54Aを左側及び右側のいずれにも配線することができる。また、左右一対の前支柱15のいずれにも、ボルト孔15aが形成され、ボルト孔15aには、タップ加工が施されている。バックモニター59は、ステー60に固定され、ステー60がボルト61によって前支柱15に固定されている。
【0076】
〔ドア〕
図17から
図19に示すように、ドア14は、その後部が上下二つのヒンジ62を介して、ドアフレーム56に揺動可能に支持されている。キャビン5とドア14との間には、ダンパー63が介設され、ダンパー63によってドア14が開く方向に付勢されている。
また、ドア14の前部には、ドア14を閉じた状態でキャビン5に固定するためのドアロック64が設けられている。ドア14におけるキャビン5内側の側面には、グリップ65が設けられている。ドア14の外周には、ドアシール材66、補強フレーム67が取り付けられている。
【0077】
また、ドア14は、次のような形状に形成されている。詳しくは、ドア14は、その前部に、前方に膨出する湾曲状の前辺部14Aを有している。前辺部14Aの上端部に、略水平な上辺部14Bの前端部が接続し、かつ、前辺部14Aの下端部に、略水平な下辺部14Cの前端部が接続している。上辺部14Bの後端部に、略垂直な後縦辺部14Dの上端部が接続し、かつ、下辺部14Cの後端部に、下端部に近付くほど前方に位置するように傾斜する後斜辺部14Eの下端部が接続している。後縦辺部14Dの下端部と後斜辺部14Eの上端部とが、ドア14の上下方向の中心Chよりも下方の位置で接続している。
【0078】
また、ドア14は、透明な部材で構成されている。具体的には、ドア14は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート等)で構成されている。また、ドア14には、開閉可能な窓部68が設けられている。具体的には、ドア14に、開口部14aが形成され、開口部14aに、窓部68が嵌め込まれている。
【0079】
〔ダンパー〕
ダンパー63は、ガススプリング式のダンパーである。ダンパー63の基端部側は、キャビン5側の上下向きの揺動軸69に揺動可能に支持されている。ダンパー63の先端部側は、ドア14側の上下向きの揺動軸70に揺動可能に支持され、ステー71を介してドア14に固定されている。ステー71は、キャビン5外からボルト72によってドア14に固定されている。ドア14におけるステー71が固定される部位は、ドア14のうちサッシ73の近傍に配置されている。具体的には、ドア14におけるステー71が固定される部位は、ドア14のうち前後方向でサッシ73の存在範囲と重複するように配置されている。これにより、ドア14におけるダンパー63を固定する部位の剛性を確保している。
【0080】
〔ドアロック〕
ドアロック64は、ドアロックプレート74を介してドア14に固定されている。ドアロックプレート74には、グリップ65の前端部が連結されている。また、ドアロック64は、キャビン5側のストライカ75(例えば、丸棒部材等)に係合可能な係合部(図示省略)を有している。
【0081】
ストライカ75は、側面視においてパワステユニット部28と重複するように配置されている。これにより、運転者がキャビン5に乗降する際に、ストライカ75が邪魔になり難い。また、ストライカ75は、上下二つのヒンジ62のうち下側のヒンジ62と略同一の高さに位置するように配置されている。つまり、ストライカ75と下側のヒンジ62とを結ぶ線は、ドア14の上下方向の中心Chと略同一の高さに位置している。
【0082】
このように、ストライカ75がドア14の上下方向の略中央部に位置しているため、ドア14を閉じた状態においてドア14の上部及び下部のいずれにも隙間が生じ難い。つまり、ストライカ75がドア14の上部又は下部の一方に偏って位置していれば、ドア14を閉じた状態においてドア14の上部又は下部の他方に隙間が生じ易いが、このようなことがない。また、下側のヒンジ62とストライカ75とが略同一の高さに位置しているため、ドア14を閉じた状態において、ヒンジ62の揺動軸がねじれ難く、ヒンジ62に負荷がかかり難い。つまり、下側のヒンジ62に対してストライカ75の上下位置が大きく離れていれば、ドア14を閉じた状態において、ストライカ75の締りに基づく前方側への引張力が、ヒンジ62の揺動軸に対して斜め向きの状態でヒンジ62に作用し、ヒンジ62に負荷がかかり易い。しかし、上記構成であれば、ヒンジ62の負荷を軽減することができる。さらに、下側のヒンジ62とストライカ75とがドア14の上下方向の略中央部に位置しているところ、これらの近傍でグリップ65がドア14の前部と後部とに亘って設けられ、かつ、グリップ65の前端部がドアロックプレート74に連結されている。
したがって、これらが略同一の高さ位置で構造的に一体化することにより、ドア14の剛性が向上する。
【0083】
〔ドアシール材〕
ドアシール材66は、ドア14とキャビン5との間をシールするものである。ドアシール材66は、ドア14の外周の全周に亘って取り付けられている。ドアシール材66は、キャビン5に密着されるシール本体部66aと、ドア14の外周端部が差し込まれる差込部66bと、を有している。
【0084】
〔補強フレーム〕
補強フレーム67は、アルミ製の中空部材である。補強フレーム67は、ドア14の外周の全周に亘って取り付けられている。補強フレーム67は、ヒンジ62を跨ぐように、ドア14におけるキャビン5外側の側面に取り付けられている。補強フレーム67は、キャビン5内から固定具76(例えば、サラビス、リベット等)によってドア14に固定されている。補強フレーム67は、ドア14の外周端面よりも外周側に出っ張り、ドア14が閉じられた状態で、ドアシール材66を機体横外方側(右方側)から覆っている。つまり、補強フレーム67とドア14との間には、所定の隙間Aが形成され、隙間Aに、ドアシール材66の差込部66bが入り込んでいる。また、補強フレーム67の上辺部には、ダンパー63のステー71との干渉を回避するための切欠部67aが形成されている。
【0085】
〔ヒンジ〕
ヒンジ62は、キャビン5内からボルト77によってドア14に固定されている。ドア14におけるヒンジ62が固定される部位は、ドア14における外周(補強フレーム67)とサッシ73との間に配置されている。
【0086】
〔開口部〕
開口部14aは、運転者が通り抜け可能な大きさに構成されている。詳しくは、開口部14aは、上下方向に長い長方形状に形成されている。開口部14aの高さHwは、ドア14の高さHdの半分以上の長さである。開口部14aの幅Bwは、ドア14の下辺部14Cの幅Bdよりも長い。開口部14aの前後方向の中心と、ドア14の前後方向の中心とは、共にCbで一致している。開口部14aは、ドア14の上下方向の中心Chに対して、上方寄りに配置されている。
【0087】
〔窓部〕
窓部68は、上下方向に長い長方形状に形成され、運転座席17に着座した運転者の前後方向の中心上に、窓部68の前後方向の中心Cbが位置するように配置されている。窓部68は、側面視においてドア14の半分以上の面積を占めている。また、窓部68は、透明な部材で構成されている。具体的には、窓部68は、ガラスで構成されている。
【0088】
また、窓部68の外周には、サッシ73が取り付けられている。ドア14と窓部68(サッシ73)との間には、弾性体からなるトリム78が、窓部68(サッシ73)の全周に亘って設けられている。また、窓部68は、固定式の固定窓68Aと、可動式の可動窓68Bと、を有している。なお、詳しくは後述するが、窓部68は、ドア14から着脱可能に構成されている。
【0089】
固定窓68Aは、サッシ73の下部に固定されている。可動窓68Bは、サッシ73の上部に上下方向に移動可能に設けられている。可動窓68Bの上部には、可動窓68Bをサッシ73に固定するための固定具79が設けられている。
【0090】
〔トリム〕
図20に示すように、トリム78には、ドア14が差し込まれる差込溝78aと、サッシ73が差し込まれる差込溝78bと、クサビ80が嵌め込まれるクサビ溝78cとが、トリム78の全周に亘って形成されている。クサビ溝78cは、トリム78におけるキャビン5内の側の部位に形成されている。クサビ溝78cには、クサビ80が着脱可能に嵌め込まれている。また、トリム78には、トリム78を取外し操作するためのリング81が、キャビン5内に位置する状態でトリム78に設けられている。
【0091】
〔リング〕
リング81は、クサビ80に連結されている。具体的には、リング81は、クサビ80に嵌め通されている。また、リング81は、トリム78のうち上辺部に設けられている。
具体的には、リング81は、トリム78の上辺における前後方向の中心Cb上に位置する部位に設けられている。
【0092】
〔窓部の着脱方法〕
このような構成により、クサビ80がクサビ溝78cに嵌め込まれている状態では、窓部68がドア14から外れない。一方、リング81を引っ張ることにより、クサビ80がクサビ溝78cから外れると、窓部68をサッシ73ごとドア14から取り外すことができる。具体的には、クサビ80がクサビ溝78cから外れることにより、窓部68を引っ張ると、トリム78が弾性変形して、窓部68がサッシ73ごとドア14から外れることになる。
【0093】
〔別実施形態〕(1)上記実施形態において、フロントガラス13は、一枚のガラスで構成されているが、複数枚のガラスで構成されていてもよい。また、フロントガラス13は、前方に膨出する湾曲状に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、フロントガラスは、その上下中間部が後方側に膨出するように屈曲しているものでもよい。詳しくは、
図21に示すように、フロントガラス113を上下二分割式に構成してもよい。
フロントガラス113は、上ガラス113Aと、下ガラス113Bと、を有している。上ガラス113Aと下ガラス113Bとは、直接連結してもよいし、上ガラス113Aと下ガラス113Bとの間に中間部材を設けて、当該中間部材を介して上ガラス113Aと下ガラス113Bとを連結してもよい。
【0094】
(2)上記実施形態において、フロントガラス13は、キャビン5の床部12Bまで延びているが、キャビン5の床部12Bまで延びていなくても運転座席17の下面とキャビン5の床部12Bとの間まで延びていればよい。
【0095】
(3)上記実施形態において、計器盤20がキャビン5内における左側に配置され、かつ、操向レバー18がキャビン5内における右側に配置されているが、計器盤20がキャビン5内における右側に配置され、かつ、操向レバー18がキャビン5内における左側に配置されていてもよい。
【0096】
(4)上記実施形態において、サイドパネル21は、キャビン5内の左側部に設けられているが、キャビン5内の右側部に設けられていてもよい。