特許第6139388号(P6139388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139388
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20170522BHJP
【FI】
   A01K87/00 620A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-247568(P2013-247568)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104338(P2015-104338A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】野田 嵩人
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−211442(JP,A)
【文献】 特開平06−197669(JP,A)
【文献】 特開2005−052093(JP,A)
【文献】 特開2008−271919(JP,A)
【文献】 特開2011−109966(JP,A)
【文献】 特開昭63−269939(JP,A)
【文献】 特開2005−278551(JP,A)
【文献】 米国特許第04860481(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 − 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製の穂先を有する釣竿において、
前記穂先は、平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmの短繊維を3〜50wt%の含有量でマトリクス樹脂材に分散して形成されており、
前記短繊維は、径方向内側では異方状態が多く、径方向外周側では軸長方向に指向した状態が多くなるように前記マトリクス樹脂材に分散されていることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記穂先には、先端に移行するに連れて細径化するようにテーパが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
繊維強化樹脂製の中実状の穂先を有する釣竿において、
前記穂先は、平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmの短繊維を3〜50wt%の含有量でマトリクス樹脂材に分散して形成されており、
前記穂先は、軸長方向に指向する短繊維の割合が、先端よりも基端の方が多くなるように形成されていることを特徴とする釣竿。
【請求項4】
前記穂先は、先端側に、先端に向けて次第に細径化するテーパ加工が施されていることを特徴とする請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記穂先の中間部分には、穂先側を細径化する段部が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記短繊維は、径方向内側では異方状態が多く、径方向外周側では軸長方向に指向した状態が多くなるように前記マトリクス樹脂材に分散されており、
前記テーパが施される部分、又は前記段部よりも先端側は、前記軸長方向に指向した短繊維が削られていることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記マトリクス樹脂材に前記短繊維以外の補材を混入したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項8】
前記穂先は、穂持管に接続された状態で穂先竿杆を構成していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、詳細には、穂先に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、釣竿は、強化繊維を特定方向に引き揃え、これに合成樹脂を含浸したいわゆるプリプレグを巻回することで構成されている。このような釣竿は、軽量化を図るために管状体として構成されるが、穂先については、撓み易く、かつ、魚がかかったときに大きく撓んでも破損しないように、中実状に構成されたものが用いられることもある。
【0003】
通常、中実状に構成される穂先は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているように、基端から先端まで連続する強化繊維(カーボン繊維、ガラス繊維など)に合成樹脂を含浸した、いわゆる繊維強化樹脂材料で形成されており、これらは、主に、引き抜き成形法によって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−80372号
【特許文献2】特開平9−248103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した公知の穂先は、基端から先端に至るまで強化繊維が配向した状態(連続繊維ソリッド体)となっているため、選択する強化繊維の物質によって伸度が決まってしまう。例えば、上記したようなカーボン繊維やガラス繊維では、その伸度は、全長に対して1.5〜2.7%程度であり、繊維自体としてはあまり伸びない。このため、強化繊維の伸度が枷となってしまい、曲げが作用した際の剛性が高く、柔らかさという観点からすると限界がある。すなわち、穂先は、微妙な魚の当たりを検知・視認できるように、できるだけ柔らかく、かつ強度(特に巻き込み強度)が高いことが好ましいが、上記のような繊維強化樹脂製の中実の穂先では、対象魚、釣種等によって更に柔らかいものが望まれることがある。この場合、連続繊維ソリッド体で柔らかく構成するのであれば、外径を細くすることが考えられるが、柔らかくするために細くし過ぎると、加工や組み立て作業などが困難になってしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、柔らかく破損し難い穂先を有する釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、繊維強化樹脂製の穂先を有する釣竿において、前記穂先は、平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmの短繊維を3〜50wt%の含有量でマトリクス樹脂材に分散して形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣竿は、穂先領域が、短繊維(平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmの短繊維)をマトリクス樹脂材に分散した繊維強化樹脂材料で形成されているため、基端から先端に至るまで強化繊維が配向した連続繊維ソリッド体と比較すると、柔らかく撓み易くなり、微妙な魚の当たりを検知し易くなるとともに視認し易くなる。この場合、マトリクス樹脂材には、短繊維が分散した状態となっているため、破損(破断)するまでの変位量が大きくなり、外径をある程度太くしても、そのような作用効果が得られることから、加工がし易いと共に、継合式の釣竿では、組立作業が容易に行えるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔らかく破損等し難い穂先を有する釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る釣竿の全体図。
図2図1に示す釣竿の穂先竿杆の構成を示す側面図。
図3】穂先竿杆に含有される強化繊維(短繊維)の状態を模式的に示す図。
図4図2のA−A線(この位置は任意である)に沿った横断面図。
図5】穂先竿杆を製造する方法を説明する図であり、金型の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る釣竿の一実施形態について添付図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明に係る釣竿の一例を示した全体図である。本実施形態の釣竿1は、外ガイド付きの継式釣竿であり、元竿杆10と、複数の中竿杆(2本の中竿杆)11a,11bと、穂先竿杆12とが振出式に継ぎ合わされた構成となっている。
【0012】
前記元竿杆10、及び中竿杆11a,11bは、公知のように、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂を、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製の管状体として構成されている。なお、図に示す釣竿1は、元竿杆10にリールシート50を設けるとともに、リールシート50に装着したリール51から放出される釣糸をガイドする外ガイド55、及びトップガイド56が所定間隔をおいて設けられている(ガイドの一部は遊動式であっても良い)が、釣竿はこのような外ガイドが配設されていない構成であっても良い。また、図では、振出式の釣竿を示しているが、並継式や逆並継式であっても良い。
【0013】
図2は、図1に示す釣竿の内、穂先竿杆12を示している。
本実施形態の穂先竿杆12は、全体が断面円形の中実状に構成されて、中竿杆11aに嵌入される構成となっており、穂先竿杆12が穂先を構成している(以下、穂先竿杆を穂先とも称する)。この穂先12は、後述するように、マトリクス樹脂に強化材となる短繊維を分散させた複合材として構成されており、撓み性に優れるとともに、変位した際に折れ難い(破損し難い)性質を備えている。なお、穂先竿杆12は、全体として管状体で構成されていても良い。
【0014】
図に示す穂先竿杆12は、全長に亘って断面円形で中実状に構成されているが、釣竿の穂先竿杆としては、基端側が管状体となっており、先端側が中実状に構成されていても良い。すなわち、先端側が中実状の穂先となり、基端側が中空状の穂持管となって両者を一体的に接続することで穂先竿杆が構成されていても良く、このように構成することで、釣竿として、穂先竿杆の先端の短い領域を感度良くすることが可能となる。
【0015】
穂先竿杆12は、図3に模式的に示すように、マトリクス樹脂20に強化材となる短繊維22を多数分散させた繊維強化樹脂製の中実体、所謂ソリッド体となっている。この場合、マトリクス樹脂20は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド)や、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ、フェノール)で構成される。或いは、ポリアミド樹脂を主成分として、それ以外の熱可塑性樹脂(ポリエステル、ポリカーボネートなど)を含有させたものであっても良い。
【0016】
また、マトリクス樹脂20には、それ以外の補材(強化材以外の材料)を含有させても良い。例えば、色を呈する顔料等の着色剤を混入することで、穂先竿杆に色彩を発現させたり、マトリクス樹脂を発泡させてマイクロバブルを混在させることで軽量化を図るようにしても良い。或いは、流動改質剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤などを加えることで、射出成形時の効率化を図ることも可能である。
【0017】
前記マトリクス樹脂20に多数、分散される強化繊維(短繊維22)は、例えばPAN系またはピッチ系の炭素繊維やガラス繊維を用いることが可能である。各短繊維の大きさについては、平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmのものが用いられる。
【0018】
ここで、マトリクス樹脂内に分散される短繊維22を上記した範囲に設定したのは、繊維径が3μmより小さく、長さが0.5mmより短くなると、穂先として所定の弾性(目感度が良好な弾性)を得るためには、多量の繊維を混入しておく必要があり、これにより成形時の流動性が悪くなって、軸長方向に万遍なく短繊維を分散できない傾向があるためである。また、繊維径が15μmより大きく、長さが10mmより長くなると、たとえ所定の弾性が得られるような繊維比率としても成形時の流動性が悪くなり、軸長方向に万遍なく短繊維を分散できない傾向があるためである。
【0019】
また、上記した大きさの短繊維のマトリクス樹脂に対する含有量は、3〜50wt%に設定される。これは、上記した大きさの短繊維であれば、3wt%未満にすると、十分な強度が得られないためであり、逆に50wt%より多く含有させると、上記した大きさの短繊維であっても、成形時の流動性が悪くなり、軸長方向に万遍なく短繊維を分散できない傾向があるためである。また、穂先として要求される事項(柔らかく撓み性が維持でき、かつ強度が維持される)を考慮しても、短繊維の含有量が50wt%以下であれば、そのような効果を十分に発揮することが可能である。
【0020】
なお、マトリクス樹脂内に分散される短繊維については、全ての短繊維が上記した範囲内にある必要はなく、一部、この範囲から外れる大きさのものが含まれていても良い。すなわち、多数存在する短繊維の平均値が上記した範囲内にあれば良く、一部に、上記した範囲よりも大きい短繊維や小さい短繊維が含まれていても良い。
【0021】
また、上記した短繊維の含有量については、軸長方向に亘って均一にしなくても良い。例えば、軸長方向の基端側に移行するに従い、連続的或いは段階的に短繊維の含有量が多くなるように構成すれば、先調子で先端側が撓み易い穂先とすることが可能となる。或いは、軸長方向に亘って短繊維の含有量を均一化し、かつ、軸長方向に亘って同一径にすると、撓みの屈曲特性は均一になるが、図2に示すように、先端が細径化するように表面にテーパ12Aを形成することにより、先側に移行するに従い撓み量が大きくなる構成にすることができる。さらに、先端側の短繊維の含有量が少ない構造において、図2に示すように、表面にテーパ12Aを形成することで、より先端領域を撓み易くしてセンシティブに構成することも可能である。この場合、軸長方向に沿って短繊維の含有量を変える手法としては、例えば、二色成形機を使用して繊維含有量が異なる繊維強化樹脂材料を注入すれば良い。
【0022】
前記テーパに関しては、図2に示すように、穂先全体にテーパが形成されていても良いし、穂先の先端に、テーパ加工を施しておいても良い。すなわち、穂先そのものは、たとえば後述するような射出成形によって、中実の円柱状に形成しておき、形成後、その先側に、先端に向けて次第に細径化するテーパ加工を施しておいても良い。このようにすることで、撓み性を向上させた上で更に先調子の穂先とすることが可能となる。なお、穂先として先調子にするためには、穂先の中間部分に、穂先側を細径化するように段部を形成しておいても良い(段部は、軸長方向に2箇所以上形成しても良い)。この場合、段部の前後をストレート状にしても良いし、段部の前側をテーパ状にしても良く、このように表面を加工することで、後述するように、基端側において、軸長方向に指向する短繊維の割合を容易に多くすることが可能となる。この場合、段部については、軸長方向に対して直交する垂直面で形成しても良いし、先端に向けて縮径する傾斜面で形成しても良い。
【0023】
また、上記したような複合材で構成される穂先12に関しては、強化材となる短繊維22は、径方向内側では異方状態が多く、径方向外周側では軸長方向に指向した状態が多くなるように前記マトリクス樹脂材20に分散しておくことが好ましい。具体的には、図4の断面に示すように、短繊維が軸長方向に指向すると、その断面は略円形状になるが(径方向外方の短繊維22参照)、短繊維が異方状態になると、断面視した際、短繊維が斜めにカットされることから、楕円状、或いは長楕円状になる傾向が強くなる(径方向の中心領域に存在する短繊維22´参照)。すなわち、穂先12は、外周領域の短繊維が軸長方向に配向した状態になっていると、効率的に曲げ剛性を向上することができ、所定の弾性力で撓み易い構成にすることができるようになる。また、中心領域に存在する短繊維が異方性を有することで、穂先のねじり強度を向上することができ、ねじり応力が作用した際の破損等を効果的に防止することができるようになる。
【0024】
ここで、「径方向外周側で軸長方向に指向した状態が多くなる」とは、穂先を断面視(いずれの位置でも良い)した際、合成樹脂内で多数分散した状態にある短繊維の断面が円形状になっている割合を対比することで把握することが可能である。具体的には、穂先12のある位置における断面の直径をDとした場合、半径が(1/2)Dの円よりも外周領域に存在している短繊維の円形状になっている割合が、その円の内側領域に含まれている短繊維の円形状になっている割合よりも多くなっていれば、穂先12として、表面側に軸長方向に指向した短繊維が多数配置された状態になっていると評価することができ、これにより、所望の曲げ剛性が得られるとともに、ねじれに対する強度の向上が図れるようになる。なお、図4に示すような短繊維の配向状態については、後述するような製造方法によって実現することが可能である。
【0025】
また、上記したように、中実状の穂先の先端側に、テーパ加工を施したり、中間部分に段部を形成し、その先側を細径化する構成では、図4に示すような短繊維の配向状態において、軸長方向に指向した短繊維を削る(表面領域をテーパ状、或いはストレート状に削る)ことから、全体として、軸長方向に短繊維が分散した状態が得られる。このような構成では、軸長方向に指向する短繊維の割合が、先端よりも基端の方が多くなり、これにより、先端側をより大きく撓ませることが可能となる。もちろん、全体をストレート状に形成し、基端側の軸長方向に指向する短繊維の割合を多くしておいても良い。
【0026】
次に、上記した穂先12を形成する製造方法の一例について、図5を参照して具体的に説明する。
図2に示すようなテーパ12Aを表面に有する穂先12は、射出成形によって形成することが可能であり、例えば、図5に示すような金型30に、上述した短繊維を含有した繊維強化樹脂材を射出することで成形することが可能である。本実施形態の金型30は、横開きされる型31,32によって構成されており、各型31,32の接合面31a,32aには、穂先12の外形となる空洞部35が形成されるとともに、各型31,32には、所定の位置に繊維強化樹脂を注入するためのゲート36が形成されている。このゲート36は、前記空洞部35に連通されるとともに側方に開口しており、その開口36aに成形機ノズル40が差し込まれ、矢印で示すように繊維強化樹脂材が注入されるようになっている。なお、金型30は、テーパ状に次第に縮径化する穂先12の竿先側を下に向けた垂直状態となるように設置されており、繊維強化樹脂材は、竿先を下側にした状態で注入される。
【0027】
注入される繊維強化樹脂材は、上述したように、強化材として、平均繊維径が3μm〜15μm、平均繊維長さが0.5mm〜10mmの短繊維を3〜50wt%含んだ熱可塑性樹脂であり、所定の温度(略200℃の可塑温度)で注入される。この場合、金型30の温度は、注入される繊維強化樹脂材よりも低温に設定されており、注入される繊維強化樹脂材は、金型30の内面と接触する表層側から冷却されて硬化することが可能となる。すなわち、注入される繊維強化樹脂材は、穂先12の軸長方向に沿って流れる状態となっているため、含有されている短繊維は、その流れに沿って軸長方向に向いており、このフロー状態で表面側から硬化するため、表面側の短繊維はそのまま軸長方向に指向する傾向となる。しかし、中央領域では、硬化するまで時間があることから、流れが停止した状態(繊維強化樹脂材が略充填された状態)では、多少、自由に変動することが可能となっており、個々の短繊維の向きは異方性を生じるようになる。
【0028】
このように、注入される繊維強化樹脂材の温度と金型の温度の差、及び注入方向(本実施形態のように垂直方向)によって、上述したように、径方向外周側の短繊維を軸長方向に指向させ、かつ、中心領域の短繊維を異方状態にすることが可能となる。なお、図4に示すような短繊維の配列状態については、注入される繊維強化樹脂材の射出圧力、金型との温度差、ゲートの位置やゲートの個数等によって変更することも可能である。
【0029】
本実施形態の穂先12については、上記した製造方法以外にも、例えば、押出成形によって製造することが可能である。この場合、形成される穂先は、円柱状になることから、その後、センターレス加工することで所望の形状にすることが可能となる。
【0030】
上記したような構成の穂先12によれば、強化繊維が基端から先端まで延びていないため、強化繊維の伸度による制約が解消され、使用するマトリクス樹脂材によっては従来よりも柔らかい(破損などすることなく大きく変位できる)構成にすることが可能となる。また、穂先12が柔らかくなることで、実釣時では魚信感度が向上するとともに、目感度(穂先の微妙な変位)や食い込み(魚が針を離さない)性能を向上することが可能となる。さらには、同じ硬さ、強度で設計する場合、弾性率が低いために外径を太くすることが可能となり、組立の作業性の向上が図れる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態以外にも、適宜変形することが可能である。例えば、本実施形態の釣竿は、多数本の竿杆を継合する構成となっていたが、上記した特徴の穂先を有する1本竿として構成されていても良い。また、穂先の断面形状については、断面円形としたが、楕円状にするなど、断面が非円形であっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 釣竿
12 穂先竿杆(穂先)
12A テーパ
20 マトリクス樹脂
22 短繊維
30 金型
図1
図2
図3
図4
図5