【実施例1】
【0043】
a)まず、本実施例1の固体酸化物形燃料電池スタック等を含む固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。尚、以下では、「固体酸化物形」を省略する。
図1に示す様に、燃料電池システム1は、燃料電池スタック3とバーナー5とを断熱容器7内に収容した燃料電池モジュール9を備えており、燃料電池スタック3に、燃料ガス(例えば水素:F)と酸化剤ガス(例えば空気(詳しくは空気中の酸素):O)とを供給して発電を行うものである。
【0044】
この燃料電池システム1は、断熱容器7外より燃料電池スタック3に燃料ガスを供給する経路11aと酸化剤ガス(以下、空気と記すこともある)を供給する経路11bを備えるととともに、燃料電池スタック3を加熱するバーナー5に燃料ガスと酸化剤ガスの混合気(Mix)を供給する経路11cを備えている。
【0045】
なお、燃料電池スタック3から排出される(発電に使用した後の)燃料ガスや酸化剤ガスは、断熱容器7内で燃焼させた後に断熱容器7外に排出してもよいし、そのまま断熱容器7外に排出してもよい。
【0046】
以下、各構成について説明する。
図2に示すように、燃料電池スタック3は、板状の発電セルである燃料電池セル13が厚み方向に複数個積層されたものであり(以下、この積層部分をスタック本体15と称する)、このスタック本体15を積層方向(
図2(b)の上下方向)に貫く8箇所のボルト用貫通孔17a、17b、17c、17d、117e、17f、17g、17h(17と総称する)と、ボルト用貫通孔17に貫挿された8本のボルト19a、19b、19c、19d、19e、19f、19g、19h(19と総称する)と、ボルト19に螺合するナット21とを備えている。
【0047】
また、
図2(b)に示す様に、燃料電池スタック3の積層方向の両側には、集電体を兼ねる一対のエンドプレート23、25が設けられている。なお、ここでは、エンドプレート23、25を含めて燃料電池スタック3と称する。
【0048】
更に、燃料電池スタック3には、燃料電池セル13が複数段(例えば25段)存在し、燃料電池スタック3の積層方向における中央部の9段の燃料電池セル13群を中央ブロック27と称し、前記積層方向における上端側(中央ブロック27の上側)の8段の燃料電池セル13群を第1端部ブロック28と称し、前記積層方向における下端側(中央ブロック27の下側)の8段の燃料電池セル13群を第2端部ブロック29と称する。なお、中央ブロック27が中央部に相当し、第1端部ブロック28が一方の端部に相当し、第2端部ブロック29が他方の端部に相当する。
【0049】
つまり、燃料電池スタック3においては、中央ブロック27を積層方向の両側から挟むように第1端部ブロック28と第2端部ブロック29とが配置されている。なお、燃料電池スタック3の各燃料電池セル13について、同図上側より順に、第1〜第25燃料電池セル13と称する。
【0050】
また、後に詳述するが、
図3に示すように、燃料ガスは、外部から第1端部ブロック28と第2端部ブロック29との各燃料電池セル13(即ち第1〜第8、第18〜第25燃料電池セル13)に供給され、その後、中央ブロック27の各燃料電池セル13(即ち第9〜第17燃料電池セル13)に供給された後に、中央ブロック27の各燃料電池セル13から燃料電池スタック3外に排出されるように構成されている。
【0051】
一方、酸化剤ガスは、外部から中央ブロック27の各燃料電池セル13に供給され、その後、第1端部ブロック28と第2端部ブロック29との各燃料電池セル13に供給された後に、燃料電池スタック3外に排出されるように構成されている。
【0052】
図2に戻り、ボルト19は、燃料電池スタック3を積層方向に貫くように配置されるとともに、その両端にナット21が螺合しており、このボルト19とナット21との螺合によって、燃料電池スタック3が積層方向に締め付けられて一体に固定されている。ここでは、ボルト19の両端にナット21が螺合する構成を例に挙げたが、ボルト19の一端に頭部を設け、他端にナット21を螺合させる構成でもよい。
【0053】
本実施例では、後に詳述する様に、第2ボルト19bの上側より燃料ガスを導入し(F(IN))、第1ボルト19aの上側より(反応後の)燃料ガスを排出し(F(OUT))、第8ボルト19hの上側より酸化剤ガスを導入し(O(IN))、第7ボルト19gの上側より(反応後の)酸化剤ガスを排出(O(OUT))するように構成されている。
【0054】
なお、ボルト用貫通孔17やボルト19については、
図2(a)の左上部より時計回りに第1〜第8の番号が付してある(他の該当する構成についても同様である)。
また、ここで、燃料電池スタック3の中央部とは、燃料電池スタック3の積層方向に配置された燃料電池セル13に挟まれた領域のことであり、燃料電池スタック3の積層方向における燃料電池スタック3の両端部近傍以外の部分(例えば両端の燃料電池セル13以外の部分)を指す。
【0055】
b)次に、燃料電池セル13の構成について説明する。
図4に示すように、燃料電池セル13は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの板状セルである。
【0056】
この燃料電池セル13は、薄膜の固体電解質層31と、その両側にそれぞれ形成された、燃料極層(アノード:AN)33及び薄膜の空気極層(カソード:CA)35とを備える。以下では、固体電解質層31、燃料極層33、及び空気極層35をあわせて単セル37と称する。なお、単セル37の空気極層35側には酸化剤ガス流路51が存在し、燃料極層33側には燃料流路53が存在する。
【0057】
燃料電池セル13は、上下一対のインターコネクタ部39、41と、空気極層35側の板形状のガスシール部43と、単セル37の外縁部の上面に接合して酸化剤ガス流路51と燃料流路53とを遮断するセル用セパレータ45と、燃料極層33側に配置された板形状の燃料極フレーム47と、燃料極層33側のガスシール部49とを備えており、それらが積層されて一体に構成されている。
【0058】
このうち、インターコネクタ部39、41は、フェライト系ステンレスからなり、中央部分の正方形の金属板であるインターコネクタ40aと、インターコネクタ40aの外縁部の下面に接合された四角枠状の金属板である(インターコネクタ40aより薄肉の)インターコネクタ用セパレータ40bとを備えており、インターコネクタ40aの下面側には、空気極側集電体40cが一体に構成されている。
【0059】
なお、インターコネクタ用セパレータ40bは、インターコネクタ40aに比べて薄肉(例えば厚さ0.1mm)であり、熱により変形してインターコネクタ40aに加わる応力を緩和することができる。
【0060】
また、燃料電池セル13内には、燃料極層33とインターコネクタ部41との間に燃料極側集電体55が配置されている。この燃料極側集電体55としては、Niからなるフィライトやメッシュなどを使用できる。
【0061】
なお、固体電解質層31の材料としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。また、燃料極層33の材料としては、Ni及びNiとセラミックとのサーメットが使用でき、空気極層35の材料としては、ペロブスカイト系酸化物などが使用できる。
【0062】
また、第1、第2端部ブロック28、29の概略構成を
図5に分解して、中央ブロック27の概略構成を
図6に分解して示すように、各燃料電池セル13のインターコネクタ部39、41の外縁部には、それぞれボルト用貫通孔17に対応する8つの孔61、63が設けられている。
【0063】
ガスシール部43は、マイカ又はバーミュライト、セラミックフェルトなどから成り、中心に正方形の開口部65を有する枠状の板材であり、その外縁部には、ボルト用貫通孔17に対応する8つの孔67が設けられている。
【0064】
特に、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13においては(
図5、
図7参照)、ガスシール部43の孔67のうち、第4孔67dは、開口部65と連通部69dにより連通している。この連通部69dは、第4孔67dから1本の溝が延びその途中で3本の溝に分岐して開口部65に達するように構成されている。なお、連通部69dは、ガスシール部43を厚み方向に貫通する孔ではなく、ガスシール部43の一方の表面を掘って形成された溝であり、レーザやプレス加工によって形成することができる。以下、後述する他の連通部においても、溝が途中で3本に分岐する形状や形成方法については同様である。
【0065】
なお、前記溝の構造の代替となる構造として、他の枠部材の追加とガスシール部の貫通孔とで連通部を形成してもよい。
また、孔67のうち、第7孔67gは、開口部65と連通部69gにより連通している。
【0066】
一方、中央ブロック27の各燃料電池セル13においては(
図6、
図8参照)、ガスシール部43の孔67のうち、第4孔67dは、開口部65と連通部70dにより連通している。
【0067】
同様に、孔67のうち、第8孔67hは、開口部65と連通部70hにより連通している。
図5に示すように、セル用セパレータ45は、フェライト系ステンレスから成る枠状の板材(金属板)であり、その中央に正方形の開口部71を有するが、その開口部71を閉塞するように、セル用セパレータ45に対し単セル37が接合されている。セル用セパレータ45も、その外縁部に、ボルト用貫通孔17に対応する8つの孔73を有している。
【0068】
なお、セル用セパレータ45は、単セル37に比べて薄肉(例えば厚さ0.1mm)であり、熱により変形して単セル37に加わる応力を緩和することができる。
燃料極フレーム47は、その中心に開口部75を備えた、フェライト系ステンレスから成る枠状の板材である。燃料極フレーム47も、その外縁部に、ボルト用貫通孔17に対応する8つの孔77を有している。
【0069】
ガスシール部49は、マイカ又はバーミュライト、セラミックフェルトから成り、中心に正方形の開口部79を有する枠状の板材であり、その外縁部には、ボルト用貫通孔17に対応する8つの孔81が設けられている。
【0070】
特に、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13においては(
図5、
図7参照)、ガスシール部49の孔81のうち、第2孔81bは、開口部79と連通部83bにより連通している。
【0071】
なお、前記溝の構造の代替となる構造として、他の枠部材の追加とガスシール部の貫通孔とで連通部を形成してもよい。
同様に、孔81のうち、第6孔81fは、開口部79と連通部83fにより連通している。
【0072】
一方、中央ブロック27の各燃料電池セル13においては(
図6、
図8参照)、ガスシール部49の孔81のうち、第1孔81aは、開口部79と連通部84aにより連通している。
【0073】
同様に、孔81のうち、第6孔81fは、開口部79と連通部84fにより連通している。
従って、
図7に示すように、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13においては、酸化剤ガスの流路は、単セル37の同図の手前側にて、(上流側より)第4孔67d、連通部69d、開口部65、連通部69g、第7孔67gとなる。
【0074】
一方、燃料ガスの流路は、単セル37と反対側(同図裏側)にて、(上流側より)第2孔81b、連通部83b、開口部79、連通部83f、第6孔81fとなる。
また、
図8に示すように、中央ブロック27の各燃料電池セル13においては、酸化剤ガスの流路は、(上流側より)第8孔67h、連通部70h、開口部65、連通部70d、第4孔67dとなる。
【0075】
一方、燃料ガスの流路は(単セル37と反対側にて)、(上流側より)第6孔81f、連通部84f、開口部79、連通部84a、第1孔81aとなる。
c)次に、マニホールドの構成について詳細に説明する。
【0076】
図9及び
図10に示すように、第1、第2、第4、第6、第7、第8ボルト19a、19b、19d、19f、19g、19hのそれぞれの内部には、軸方向に延びるように、マニホールドである、中空の第1、第2、第4、第6、第7、第8内部ガス通路91a、91b、91d、91f、91g、91h(91と総称する)が設けられている。
【0077】
また、第1〜第8ボルト19a〜19hのうち、第1、第2、第6ボルト19a、19b、19fの各内部ガス通路91a、91b、91fが燃料ガスの流路として用いられ、第4、第7、第8ボルト19d、19g、19hの各内部ガス通路91d、91g、91hが酸化剤ガスの流路として用いられる。なお、第3、第5ボルト19c、19eは、ガス流路として用いられないので、その内部には内部ガス流路が設けられていない。
【0078】
以下、各ガス流路の構成について説明する。
<燃料ガスの流路>
図9に示す様に、第2ボルト19bには、燃料ガス用の内部ガス通路91bが設けられている。この内部ガス通路91bは、開口部93bを介して外部(燃料電池スタック3の上方)と連通しており、他端は閉塞されている。
【0079】
この第2ボルト19bには、内部ガス通路91bと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の出口用横穴95bが設けられている。各出口用横穴95bは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13の燃料流路53(
図4参照)に対応して設けられ、各出口用横穴95bと各燃料電池セル13の燃料流路53とは連通するように構成されている。
【0080】
第6ボルト19fには、燃料ガス用の内部ガス通路91fが設けられており、この内部ガス通路91fの上下は閉塞されている。
この第6ボルト19fには、内部ガス通路91fと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の入口用横穴97fと複数の出口用横穴99fが設けられている。各入口用横穴97fは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13の燃料流路53に対応して設けられ、各入口用横穴97fと各燃料電池セル13の燃料流路53とは連通するように構成されている。また、各出口用横穴99fは、中央ブロック27の各燃料電池セル13の燃料流路53に対応して設けられ、各出口用横穴99fと各燃料電池セル13の燃料流路53とは連通するように構成されている。
【0081】
第1ボルト19aには、燃料ガス用の内部ガス通路91aが設けられている。この内部ガス通路91aは、開口部93aを介して外部(燃料電池スタック3の上方)と連通しており、他端は閉塞されている。
【0082】
この第1ボルト19aには、内部ガス通路91aと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の入口用横穴101aが設けられている。各入口用横穴101aは、中央ブロック27の各燃料電池セル13の燃料流路53に対応して設けられ、各入口用横穴101aと各燃料電池セル13の燃料流路53とは連通するように構成されている。
【0083】
<酸化剤ガス(空気)の流路>
図10に示す様に、第8ボルト19hには、酸化剤ガス用の内部ガス通路91hが設けられている。この内部ガス通路91hは、開口部93hを介して外部(燃料電池スタック3の上方)と連通しており、他端は閉塞されている。
【0084】
この第8ボルト19hには、内部ガス通路91hと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の出口用横穴103hが設けられている。各出口用横穴103hは、中央ブロック27の各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51(
図4参照)に対応して設けられ、各出口用横穴109hと各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51とは連通するように構成されている。
【0085】
第4ボルト19dには、酸化剤ガス用の内部ガス通路91dが設けられており、この内部ガス通路91dの上下は閉塞されている。
この第4ボルト19dには、内部ガス通路91dと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の入口用横穴105dと複数の出口用横穴107dが設けられている。各入口用横穴105dは、中央ブロック27の各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51に対応して設けられ、各入口用横穴105dと各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51とは連通するように構成されている。また、各出口用横穴107dは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51に対応して設けられ、各出口用横穴107dと各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51とは連通するように構成されている。
【0086】
第7ボルト19gには、酸化剤ガス用の内部ガス通路91gが設けられている。この内部ガス通路91gは、開口部93gを介して外部(燃料電池スタック3の上方)と連通しており、他端は閉塞されている。
【0087】
この第7ボルト19gには、内部ガス通路91gと連通するように、径方向に延びる貫通孔である複数の入口用横穴109gが設けられている。各入口用横穴109gは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51に対応して設けられ、各入口用横穴109gと各燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51とは連通するように構成されている。
【0088】
なお、前記
図7に示す様に、ガス流路として利用されないボルト用貫通孔17(例えば第5ボルト用貫通孔17e)の内部(又はその近傍)には、温度センサとして、熱電対100が配置されている。これによって、燃料電池スタック3の温度を検出することができる。
【0089】
d)次に、上述した流路を通過する燃料ガス及び酸化剤ガスの流れについて更に詳細に説明する。
<燃料ガスの流れ>
まず、前記
図9に示す様に、燃料電池スタック3内の温度より低温の燃料ガスが、燃料電池スタック3の外部から、第2ボルト19bの開口部93bを介して、内部ガス通路91bに導入される。
【0090】
次に、内部ガス通路91bに導入された燃料ガスは、内部ガス通路91bから、出口用横穴95b及び連通部83b(
図7参照)を介して、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池スタック3の燃料流路53(
図4参照)に供給される。
【0091】
そして、燃料流路53内にて発電に供された燃料ガスは、燃料流路53から、連通部83f(
図7参照)及び入口用横穴97fを介して、第6ボルト19fの内部ガス通路91fに供給される。
【0092】
次に、この燃料ガスは、第6ボルト19fの内部ガス通路91fから、出口用横穴99f及び連通部84f(
図8参照)を介して、中央ブロック27の各燃料電池スタック3の燃料流路53に供給される。
【0093】
そして、燃料流路53内にて再度発電に供された燃料ガスは、燃料流路53から、連通部84a(
図8参照)及び入口用横穴101aを介して、第1ボルト19aの内部ガス通路91aに供給される。
【0094】
その後、燃料ガスは、第1ボルト19aの内部ガス通路91aから、開口部93aを介して、外部に排出される。
このように、本実施例1では、第1端部ブロック28と中央ブロック27と第2端部ブロック29とが積層された(即ち並列に配置された)燃料電池スタック3において、燃料ガスの流路は、第1、第2端部ブロック28、29と中央ブロック27とが直列に接続されたシリアルフロー構造となっている。
【0095】
従って、このシリアルフロー構造では、燃料ガスは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13に供給されて発電に用いられた後に、中央ブロック27の各燃料電池セル13に供給されて発電に用いられる構造となっている。
【0096】
<酸化剤ガス(空気)の流れ>
また、
図10に示す様に、燃料電池スタック3内の温度より低温の酸化剤ガス(空気)が、燃料電池スタック3の外部から、第8ボルト19hの開口部93hを介して、内部ガス通路91hに導入される。
【0097】
次に、内部ガス通路91hに導入された酸化剤ガス(空気)は、内部ガス通路91hから、出口用横穴103h及び連通部70h(
図8参照)を介して、中央ブロック27の各燃料電池スタック3の酸化剤ガス流路51(
図4参照)に供給される。
【0098】
そして、酸化剤ガス流路51内にて発電に供された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路51から、連通部70d(
図8参照)及び入口用横穴105dを介して、第4ボルト19dの内部ガス通路91dに供給される。
【0099】
次に、この酸化剤ガスは、第4ボルト19dの内部ガス通路91dから、出口用横穴107d及び連通部69d(
図7参照)を介して、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池スタック3の酸化剤ガス流路51に供給される。
【0100】
そして、酸化剤ガス流路51内にて再度発電に供された酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路51から、連通部69g(
図7参照)及び入口用横穴109gを介して、第7ボルト19gの内部ガス通路91gに供給される。
【0101】
その後、酸化剤ガスは、第7ボルト19gの内部ガス通路91gから、開口部93gを介して、外部に排出される。
このように、本実施例1では、第1端部ブロック28と中央ブロック27と第2端部ブロック29とが積層された(即ち並列に配置された)燃料電池スタック3において、酸化剤ガスの流路は、中央ブロック27と第1、第2端部ブロック28、29とが直列に接続されたシリアルフロー構造となっている。
【0102】
従って、このシリアルフロー構造では、酸化剤ガスは、中央ブロック27の各燃料電池セル13に供給されて発電に用いられた後に、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13に供給されて発電に用いられる構造となっている。
【0103】
e)次に、本実施例1の効果について説明する。
・本実施例1では、酸化剤ガス(空気)は、中央ブロック27の各燃料電池セル13に供給された後に、第1、第2端部ブロック28、27の各燃料電池セル13に供給される。一方、燃料ガスは、第1、第2端部ブロック28、29の各燃料電池セル13に供給された後に、中央ブロック27の各燃料電池セル13に供給される。
【0104】
つまり、本実施例1では、まず温度の低い(例えば約400℃程度)酸化剤ガスを含む空気が、外部より(高温になり易い)中央ブロック27(詳しくはその各燃料電池セル13)に導入されることで、中央ブロック27が効率よく冷却されるとともに、中央ブロック27で発電によって暖められた酸化剤ガス(空気)(例えば約500℃程度)が、(低温になり易い)積層方向の両側の第1、第2端部ブロック28、29に導入されることで、第1、第2端部ブロック28、29が効率良く暖められる。これによって、燃料電池スタック3の積層方向における温度分布を小さくできるとともに、燃料電池スタック3の温度全体を適切な温度範囲に維持することができる。よって、発電効率を高めることができる。
【0105】
また、上述した酸化剤ガスの流路によって、燃料電池セル13当たりの空気利用率が低くなるため、酸化剤ガス(空気)の供給量をこれまでよりも絞ることが可能となり、空気による熱の持ち去り量を減らすことができる。よって、この点からも、燃料電池スタック3の温度を容易に好適な運転温度に維持することができる。
【0106】
更に、本実施例1では、基本的に、燃料ガスの流路をシリアルフロー構造にすることにより、各燃料電池セル13当たりの燃料利用率を上げることなく、総合燃料利用率を上げて、発電効率を高めることができる。
【0107】
しかも、本実施例1では、燃料ガス(例えば約400℃程度)は、まず第1、第2端部ブロック28、29に導入された後に、それより温度の高い中央ブロック27に導入され暖められる(例えば約500℃程度)。このとき、燃料ガスは、第1、第2端部ブロック28、29で発電に利用されるので、中央ブロック27へは希薄な燃料ガスが導入されるが、中央ブロック27の温度は高いので、中央ブロック27の燃料電池セル13における電圧低下を防ぐことができる。即ち、燃料電池セル13(詳しくは固体電解質層31)では、温度が高い方が、抵抗が下がる特性があるので、ジュール損が低減し、よって、電圧低下を防止することが可能である。
【0108】
従って、本実施例1では、総合燃料利用率を向上させるとともに、燃料電池スタック3の温度を(積層方向における温度分布を低減して)好適な温度範囲に維持することによって、高い発電効率を実現することができるという顕著な効果を奏する。
【0109】
・また、本実施例1では、同じ中央ブロック27(詳しくはその燃料電池セル13)に燃料ガスと酸化剤ガスとが供給され、同じ第1端部ブロック28に燃料ガスと酸化剤ガスとが供給され、同じ第2端部ブロック29に燃料ガスと酸化剤ガスとが供給される。
【0110】
これによって、ガス流路を簡易化できるので、燃料電池スタック3の構造を簡易化することができる。
・更に、本実施例では、第1端部ブロック28と第2端部ブロック29とにおける合計の燃料電池セル13の個数(枚数)は、中央ブロック27における燃料電池セル13の個数より多い。これにより、上流で発電に利用されなかった燃料ガスが下流で発電に利用されるので、総合燃料利用率を効率よく上げることができる。
【0111】
・その上、本実施例1では、第1端部ブロック28と第2端部ブロック29とにおける燃料電池セル13の個数が同じであるので、燃料電池スタック3の積層方向における両端の温度をより均一化することができる。
【0112】
・また、本実施例1では、インターコネクタ部39、41は、インターコネクタ40aの周囲に薄肉の金属製のインターコネクタ用セパレータ40bが接合され、また、単セル37の周囲には、薄肉の金属製のセル用セパレータ45が接合されている。
【0113】
従って、面内温度分布による熱歪や熱応力、機械応力に対して、薄肉の金属製の各セパレータ40b、45が変形することで、応力の緩和ができる。よって、単セル37においては、割れを効果的に防止でき、インターコネクタ部39、41については、電気的接続性を向上できる。また、各セパレータ40b、45は薄肉であり、よって、外への熱の持ち出しが小さくなるので、燃料電池スタック3を好適に保温できるという利点がある。
【0114】
・更に、本実施例1では、温度センサである熱電対100は、燃料ガス又は酸化剤ガスの流路として用いられていないボルト用貫通孔17の周囲や内部に配置されている。よって、燃料ガスや酸化剤ガスによる過度に偏った温度ではなく、燃料電池スタック3における平均的な温度を検出し易いという効果がある。
【0115】
・従って、本実施例1の燃料電池スタック3においては、
図11に示すように、比較例1、2、3に比べて、積層方向(同図の左右方向)における温度分布が小さく、各燃料電池セル13は、ほぼ狙いの温度領域の範囲となっている。
【0116】
なお、同図のAが本実施例1の燃料電池スタック3の温度分布であり、Bが比較例1(単に燃料ガスと酸化剤ガスとを並列に流す例)、Cが比較例2(燃料ガスのみをシリアルフロー構造とし、下流側を積層方向の上側に配置した例)、Dが比較例3(燃料ガスのみを本実施例1のように、中段に燃料ガスを供給してシリアルフロー構造とした例)の各燃料電池スタックにおける温度分布である。
【実施例2】
【0117】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
なお、実施例1と同様な構成については同じ番号を用いて説明する。
a)まず、本実施例2の燃料電池スタックの構成について説明する。
【0118】
図12に示すように、本実施例2の燃料電池スタック111では、燃料ガスの流路について、外部より燃料ガスが導入される第1、第2端部ブロック113、117は、それぞれ8個の燃料電池セル13からなり、第1、第2端部ブロック113、117から燃料ガスが導入される中央ブロック115は、9個の燃料電池セル13からなる。
【0119】
一方、酸化剤ガスの流路については、外部より酸化剤ガス(空気)が導入される中央ブロック121は、15個の燃料電池セル13からなり、中央ブロック121から酸化剤ガス(空気)が導入される第1、第2端部ブロック119、123は、それぞれ5個の燃料電池セル13からなる。
【0120】
また、本実施例2では、(
図12の上下の両端側の)第1〜第5、第21〜第25のそれぞれ5個の燃料電池セル13からなるブロックB1、B5では、その燃料電池セル13の構造や燃料ガス及び酸化剤ガスの流路は、前記実施例1の第1、第2端部ブロック28、29の燃料電池セル13と同様である(
図7参照)。
【0121】
同様に、(
図12の中央部分の)第9〜第17の9個の燃料電池セル13からなるブロックB3では、その燃料電池セル13の構造や燃料ガス及び酸化剤ガスの流路は、前記実施例1の中央ブロック27の燃料電池セル13と同様である(
図8参照)。
【0122】
特に、本実施例2では、ブロックB1、B3に挟まれたブロックB2の第6〜第8の3個の燃料電池セル13と、ブロックB3、B5に挟まれたブロックB4の第18〜第20の3個の燃料電池セル13とは、
図13に示す構造及び流路を有している。
【0123】
詳しくは、ブロックB2、B4の各燃料電池セル13においては、燃料ガスは、燃料電池セル13の燃料流路53側(同図裏側)にて、第2ボルト用貫通孔17b対応する第2孔125bから、連通部127bを介して、燃料流路53に供給され、その後、燃料流路53から、連通部127fを介して、第6ボルト用貫通孔17f対応する第6孔125fに排出されるように構成されている。
【0124】
一方、酸化剤ガスは、燃料電池セル13の酸化剤ガス流路51側(同図表側)にて、第8ボルト用貫通孔17hに対応する第8孔125hから、連通部129hを介して、酸化剤ガス流路51に供給され、その後、酸化剤ガス流路51から、連通部129dを介して、第4ボルト用貫通孔17d対応する第4孔125dに排出されるように構成されている。
【0125】
b)次に、本実施例2の燃料電池スタック111全体のガスの流路について説明する。
<燃料ガスの流路>
前記
図7に示すように、燃料ガスは、外部より、第2ボルト用貫通孔17bの内部(詳しくは第2ボルト用貫通孔17bに挿通される第2ボルト19bの内部ガス通路91b:
図9参照)に導入される。
【0126】
次に、燃料ガスは、第2ボルト用貫通孔17bの内部から、ブロックB1、B5おける各燃料電池セル13の連通部83bを介して、燃料流路53内に導入されるとともに、
図13に示すように、ブロックB2、B4おける各燃料電池セル13の連通部127bを介して、各燃料流路53内に導入される。
【0127】
そして、各燃料流路53内で発電に利用された燃料ガスは、前記
図7に示すように、ブロックB1、B5おける各燃料電池セル13の連通部83fを介して、第6ボルト用貫通孔17fの内部に排出されるとともに、
図13に示すように、ブロックB2、B4おける各燃料電池セル13の連通部127fを介して、第6ボルト用貫通孔17fの内部に排出される。
【0128】
次に、燃料ガスは、前記
図8に示す様に、第6ボルト用貫通孔17fの内部から、ブロックB3における各燃料電池セル13の連通部84fを介して、各燃料流路53内に導入される。
【0129】
そして、各燃料流路53内で再度発電に利用された燃料ガスは、ブロックB3おける各燃料電池セル13の連通部84aを介して、第1ボルト用貫通孔17aの内部に排出され、その後、外部に排出される。
【0130】
<酸化剤ガス(空気)の流路>
前記
図8に示すように、酸化剤ガスは、外部より、第8ボルト用貫通孔17hの内部に導入される。
【0131】
次に、酸化剤ガスは、第8ボルト用貫通孔17hの内部から、ブロックB3おける各燃料電池セル13の連通部70hを介して、酸化剤ガス流路51内に導入されるとともに、
図13に示すように、ブロックB2、B4おける各燃料電池セル13の連通部129hを介して、各酸化剤ガス流路51内に導入される。
【0132】
そして、各酸化剤ガス流路51内で発電に利用された酸化剤ガスは、前記
図8に示すように、ブロックB3おける各燃料電池セル13の連通部70dを介して、第4ボルト用貫通孔17dの内部に排出されるとともに、
図13に示すように、ブロックB2、B4おける各燃料電池セル13の連通部129dを介して、第4ボルト用貫通孔17dの内部に排出される。
【0133】
次に、酸化剤ガスは、前記
図7に示す様に、第4ボルト用貫通孔17dの内部から、ブロックB1、B5における各燃料電池セル13の連通部69dを介して、酸化剤ガス流路51内に導入される。
【0134】
そして、酸化剤ガス流路51内で再度発電に利用された酸化剤ガスは、ブロックB1、B5おける各燃料電池セル13の連通部69gを介して、第7ボルト用貫通孔17gの内部に排出され、その後、外部に排出される。
【0135】
このように、本実施例2では、燃料ガスについては、前記実施例1と同様に、燃料ガスは、最初にそれぞれ8個の燃料電池セル13からなる第1、第2端部ブロック113、117に供給された後に、9個の燃料電池セル13からなる中央ブロック115に供給される。
【0136】
一方、酸化剤ガスについては、最初に15個の燃料電池セル13からなる中央ブロック121に供給された後に、それぞれ5個の燃料電池セル13からなる第1、第2端部ブロック119、113に供給される。
【0137】
c)本実施例2では、酸化剤ガスの上流側の中央ブロック121の燃料電池セル13の個数(15個)は、燃料ガスの下流側の中央ブロック115の燃料電池セル13の個数(9個)よりも多く、しかも、酸化剤ガスの上流側の中央ブロック121の燃料電池セル13の個数(15個)は下流側の第1、第2端部ブロック119、123の燃料電池セル13の合計の個数(10個)より多い。
【0138】
よって、本実施例2の燃料電池スタック111においては、総合燃料利用率を効率よく上げることができるだけでなく、酸化剤ガス側の中央ブロック121の段数が両側の第1、第2端部ブロック119、123の段数の合計よりも多いので、総合空気利用率も効率よく上げることができ、よって、余分な酸化剤ガス(空気)による熱の持ち去りを小さくすることができる。それにより、燃料電池スタック3を容易に好適な温度範囲に保つことができる。
【0139】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、各実施例では、燃料ガスや酸化剤ガスを予熱する熱交換部を設けないが、熱交換部を燃料電池スタックに積層するように設けてもよい。
【0140】
(2)燃料ガスや酸化剤ガスを燃料電池スタックの積層方向に供給するマニホールドの構成としては、ボルトの軸方向に形成された内部ガス流路を、燃料電池スタックの積層方向の両端に達するまで形成してもよいが、端部に到らないように形成してもよい。
【0141】
(3)また、ボルトとボルト用貫通孔との間に、ガスの流通が可能な十分な空間(例えば筒状の空間)を設け、その空間を介して、内部ガス流路と各燃料電池セルとの間の燃料ガスや酸化剤ガスの流通(供給や排出)を行ってもよい。
【0142】
(4)更に、ボルトとして(空洞の無い)中実なボルトを使用し、ボルトとボルト用貫通孔との間に、ガスの流通が可能な十分な空間(例えば筒状の空間)を設け、その空間を介して、外部と各燃料電池セルとの間の燃料ガスや酸化剤ガスの流通(供給や排出)を行ってもよい。
【0143】
なお、外部と空間との間のガスの流通は、例えばボルトの軸方向の端部において、ボルトの外周面に軸方向に沿って延びる溝等を設けることによって実現できる。
(5)また、燃料電池のタイプは、燃料電池スタックが高温になるタイプであれば効果があり、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に限定されない。
【0144】
(6)更に、燃料電池スタックの中央部や各端部における燃料電池セルの個数は、本発明の範囲内で適宜選択することができる。