(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料と、非水系溶剤とを少なくとも含む非水系顔料インクの液滴を印刷媒体表面に吐出して非水系顔料インクからなるドットを形成した後、シリカと有機溶剤とを少なくとも含む非水系の後処理液の液滴を、前記非水系顔料インクからなるドットに重なるように印刷媒体に向けて吐出する工程を含む非水系インクジェット印刷方法であって、
前記非水系顔料インク及び前記後処理液のいずれかに、アミノ基を有する水溶性樹脂を含むことを特徴とする非水系インクジェット印刷方法。
印刷媒体表面に前記非水系顔料インクからなるドットの列を複数形成した後、該非水系顔料インクの各ドット上に前記後処理液の液滴が着弾するように、前記後処理液を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系インクジェット印刷方法。
印刷媒体表面に前記非水系顔料インクからなるドットの列を複数形成した後、該非水系顔料インクの隣り合うドット間の間隙に前記後処理液の液滴が着弾するように、前記後処理液を吐出することを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系インクジェット印刷方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非水系インクジェット印刷方法は、顔料と、非水系溶剤とを少なくとも含む非水系顔料インクの液滴を印刷媒体表面に吐出して非水系顔料インクからなるドットを形成した後、シリカと有機溶剤とを少なくとも含む後処理液の液滴を、前記非水系顔料インクからなるドットに重なるように印刷媒体に向けて吐出する工程を含む非水系インクジェット印刷方法であって、前記非水系顔料インク及び前記後処理液のいずれかに、アミノ基を有する水溶性樹脂を含むことを特徴としている。
本発明においては、非水系の後処理液を用いながらも、該後処理液中にアミノ基を有する水溶性樹脂を含有させることで顔料の印刷媒体内部への浸透を抑制し印刷濃度の向上を図ったものである。
以下にまず、本発明の非水系インクジェット印刷方法に用いる非水系顔料インクと、後処理液とについて順次説明する。
【0017】
[非水系顔料インク]
本発明に係る非水系顔料インク(以下、単に「インク」とも呼ぶ。)は、顔料と、非水系溶剤とを少なくとも含んでなり、必要に応じて、水溶性樹脂、顔料分散剤(非水系樹脂)などを含む。
【0018】
(顔料)
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明に係る非水系顔料インク中の顔料の含有量は、通常0.01〜20質量%であり、印刷濃度とインク粘度の観点から1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることが一層好ましい。
【0020】
非水系顔料インク中の顔料の平均粒径は、分散性と保存安定性の観点から500nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。ここで、顔料の平均粒径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500により測定された体積基準の値である。
【0021】
(非水系溶剤)
非水系溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り、2種以上を組み合わせて使用することもできる。非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系の溶剤が挙げられる。例えば、以下の商品名で販売されているものが挙げられる。テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、ナフテゾールL、ナフテゾールM、ナフテゾールH、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、アイソゾール300、アイソゾール400、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、及びAFソルベント7号(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD100、エクソールD130、及びエクソールD140(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)。芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ソルベッソ200(東燃ゼネラル石油株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。例えば、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル等の、1分子中の炭素数が14以上のエステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の、1分子中の炭素数が8以上の高級アルコール系溶剤;イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の、1分子中の炭素数が9以上の高級脂肪酸系溶剤、等が挙げられる。
【0023】
(顔料分散剤)
本発明に係る非水系顔料インクには、顔料の分散安定性を確保するため、顔料分散剤を含有することが好ましい。
本発明で使用できる顔料分散剤としては、顔料を非水系溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
【0024】
顔料分散剤は、総量で、顔料1に対し0.2〜1.0の質量比で含まれていることが好ましい。
【0025】
顔料分散剤のインク総量における配合量としては、1〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。
【0026】
上記顔料分散剤のほかに、アミンと反応できる官能基を有するアクリル樹脂を用いることができる。その一例として、以下にアクリル樹脂Aの合成方法を示すが、以下の例に限定されるものではない。
【0027】
(アクリル樹脂Aの合成)
四つ口フラスコに、AFソルベント6号(ナフテン系溶剤;JX日鉱日石エネルギー(株)製)を仕込み、窒素ガスを通気しながら撹拌し、110℃まで昇温する。次いで、温度を110℃に保ちながら、表1に示す組成の各単量体混合物とAFソルベント6号、パーブチルO(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;日油(株)製)の混合物を3時間かけて滴下する。その後、110℃に保ちながら1時間後、2時間後に、パーブチルOを添加する。さらに110℃で1時間熟成を行い、AFソルベント6号で希釈して、不揮発分50%の無色透明の樹脂溶液が得られる。
以上のようにして得られるアクリル樹脂Aにおいて、アミンと反応できる官能基は、GMAのグリシジル基、AAEMのβ−ジケトン基である。
【0029】
その他、本発明においては、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかにアミノ基を有する水溶性樹脂を含有することから、非水系顔料インクに当該水溶性樹脂を含有する場合もあるが、それについては後述する。
【0030】
本発明に係る非水系顔料インクには、上記各成分に加えて、慣用の添加剤が含まれていてよい。添加剤としては、界面活性剤、例えばアニオン性、カチオン性、両性、もしくはノニオン性の界面活性剤、酸化防止剤、例えばジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、及びノルジヒドログアヤレチック酸等、が挙げられる。
【0031】
インクの粘度は、インクジェット記録システム用の場合、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましく、約10mPa・s程度であることが、インクジェット記録装置用として適している。ここで粘度は、23℃において0.1Pa/sの速度で剪断応力を0Paから増加させたときの10Paにおける値を表す。
【0032】
非水系顔料インクの調製方法としては、特に制限されず、非水系溶剤に顔料、及び必要に応じて他の成分を混合することで調製することができる。
【0033】
[後処理液]
本発明に係る後処理液は、シリカと有機溶剤とを少なくとも含んでなり、必要に応じて水溶性樹脂、顔料分散剤(非水系樹脂)などを含む。
【0034】
(シリカ)
シリカとしては、特に制限はないが、粉末シリカ、コロイダルシリカ、及び合成非晶質シリカ等をそれぞれ単独で、または組み合わせて使用することができる。粉末シリカとしては、例えば、日本アエロジル(株)製AEROSIL 90、OX 50、東ソー・シリカ(株)製E−200A、E−220A、K−500、E−1009、E−1011、E−1030、E−150J、E−170等を使用することができる。コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製スノーテックスS、OS、XS、OXS、20、30、40、50、O、AK、AK−YL、O−40、CM、20L、C、ZL、XL、N、UP、扶桑化学工業(株)製クォートロン PL−1、PL−3、PL−7、PL−20、三興コロイド化学(株)製シリカロイド、シリカロイド−LL、シリカロイド−A等を使用することができる。合成非晶質シリカとしては、珪酸塩と酸の中和反応で形成され、その製造方法によりさまざまな性質に分けることができるが、例えば、水澤化学工業(株)製ミズカシルP−73、P−78A、P−707、P−709、P−527、P−803等を使用することができる。
【0035】
シリカの平均粒子径は10〜400nmであることが好ましく、15〜300nmであることがより好ましく、25〜200nmであることがさらに好ましい。この範囲であることで、より裏抜けを低減し、高い印刷濃度を得ることができる。ここで、シリカの平均粒子径は、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500により測定される体積基準の値である。
【0036】
後処理剤液中におけるシリカの含有量としては、固形分換算で、1〜20質量%が好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。1質量%以上であることで、裏抜けの低減及び印刷濃度の向上効果を十分に得ることができる。記録媒体上での光の乱反射の防止や、後処理剤中での無機粒子の分散安定性の観点から、20質量%以下であることが好ましい。
【0037】
(有機溶剤、顔料分散剤)
後処理液に用いられる有機溶剤及び顔料分散剤としては、非水系顔料インクに用いられる非水系溶剤、顔料分散剤と同じものを使用することができ、好ましい例も同様である。
一方、後処理液に顔料分散剤を使用すると、シリカが印刷媒体の内部に浸透しやすくなり、画像濃度向上の妨げになることが懸念される。従って、顔料分散剤を用いることなく分散安定性を確保することが好ましく、そうするには有機溶剤としてグリコールエーテル系溶剤を用いることが好ましい。後処理液に顔料分散剤を用いない場合、シリカはグリコールエーテル系溶剤に追従せず、印刷媒体の内部に浸透しにくくなると考えられる。このことにより、シリカが印刷媒体表面に残りやすくなり、シリカの含有率が同じであっても、顔料分散剤を用いた後処理液よりも印刷濃度の向上を図ることができると考えられる。
さらに、顔料分散剤を用いないことで、インク液滴の着弾後に起こる溶剤離脱時に、シリカ同士が凝集しやすくなる。このことによって、顔料分散剤を用いていないシリカゾルは、顔料分散剤を用いた系に比べ、溶剤離脱に伴い急速に増粘すると考えられる。系全体が急速に増粘することで、グリコールエーテル系溶剤が印刷媒体の内部深くまで浸透せず、印刷濃度を向上させても裏抜けが悪化しにくくなっていると考えられる。よって、有機溶剤としてグリコールエーテル系溶剤を用いることで、耐擦過性、裏抜け防止、間欠吐出性を確保することができる。
【0038】
好ましいグリコールエーテル系溶剤としては、
(a)C
xH
x+2 O (C
2H
4O)
YH (1≦X≦4 2≦Y≦4)
(b)C
PH
P+2 O (C
2H
4O)
R C
QH
Q+2 (1≦P≦4 1≦Q≦4 2≦R≦4)
で示される範囲のものが挙げられる。
この範囲を超えるものを用いると、沸点が低くなりすぎて間欠吐出性が悪化することや、粘度が高くなりすぎてインクジェットインクとして好ましくないものになることがある。
【0039】
その他、後処理液には、必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含有させることができる。
【0040】
また、本発明においては、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかにアミノ基を有する水溶性樹脂を含有することから、後処理液に当該水溶性樹脂を含有する場合もあるが、それについては後述する。
【0041】
後処理液の調製方法としては、特に制限されず、有機溶剤にシリカ、及び必要に応じて他の成分を混合することで調製することができる。
【0042】
(アミノ基を有する水溶性樹脂)
本発明においては、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかに、アミノ基を有する水溶性樹脂を含む。
本発明では、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかにアミノ基を有する水溶性樹脂を添加することで、顔料やシリカの滲みや裏抜けの防止を図ったものである。たとえば非水系インクにおいては、顔料表面の置換基(カルボン酸やスルホン酸などの酸性置換基)と、アミノ基を有する水溶性樹脂のアミノ基とが結合することで、顔料が非水系溶剤とともに溶出するのが阻止され、さらに後処理液を印字することで、滲みや裏抜けが強く抑えられるものと推察される。同様に後処理液においては、顔料の代わりにシリカの滲みや裏抜けが抑えられ、顔料の滲みが強く抑えられると推察される。
【0043】
アミノ基を有する水溶性樹脂は、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン等の塩基性高分子電解質またはそれらの誘導体を挙げることができ、特に、重量平均分子量が200〜2000のポリエチレンイミン、または、重量平均分子量200〜2000のポリエチレンイミンとアクリル酸エステルまたはビニル化合物のいずれかと付加反応した変性ポリエチレンイミンを好適に使用することができる。変性ポリエチレンイミンは、ポリエチレンイミンの全アミン価を1モル当量とした場合に、アクリル酸エステルまたはビニル化合物との比率が0.3モル当量以上1モル当量未満のもの(以下、単に変性ポリエチレンイミンともいう)が好ましい。ここで、アミン価は、JIS K−7237−1995(エポキシ樹脂のアミン硬化剤の全アミン価試験方法)の(2)指示薬滴定方法によりアミン価(KOHmg/g)を求め、KOHの分子量56.11mg/mmolと換算して算出したものである。
【0044】
ポリエチレンイミンの重量平均分子量が200未満であると普通紙に対する高濃度化の効果が低く、2000以上になると保存環境下にもよるが保存安定性が悪くなることがある。ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、高濃度化の効果が大きく、かつ、流動点が−5℃以下であって低温時の保存安定性が良好であることから、300〜1800であることがより好ましい。
【0045】
ポリエチレンイミンは、市販のものを用いることが可能であり、たとえば、(株)日本触媒製SP−006、SP−012、SP−018、SP−200;BASF(株)製Lupasol FG、Lupasol G20 Waterfree、Lupasol PR8515等を好ましく挙げることができる。
【0046】
アミノ基を有する水溶性樹脂の含有率は、非水系顔料インクも後処理液も、0.2〜10質量%とすることが好ましく、1〜5質量%とすることがより好ましい。
【0047】
<インクジェット印刷方法>
本発明の非水系インクジェット印刷方法においては、以上の非水系顔料インク及び後処理液が用いられる。そして、本発明においては、非水系顔料インクの液滴を印刷媒体表面に吐出して非水系顔料インクからなるドットを形成した後、シリカと有機溶剤とを少なくとも含む後処理液の液滴を、前記非水系顔料インクからなるドットに重なるように印刷媒体に向けて吐出する工程を含む。ここで、本発明において上記「・・・ドットに重なるように印刷媒体に向けて・・・」における「重なる」とは、少なくとも一部が重なることを意味する。
【0048】
また、本発明においては、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかに、アミノ基を有する水溶性樹脂を含むのであるが、非水系顔料インクに当該水溶性樹脂を含む態様を第1の態様と称し、後処理液に当該水溶性樹脂を含む態様を第2の態様と称することにする。
いずれの態様においても、上記工程後には、印刷媒体上において、顔料、シリカ及び水溶性樹脂が混ざり合うことで印刷濃度が向上するのであるが、そのメカニズムについては以下のように推察される。
第1の態様においては、アミノ基を有する水溶性樹脂で分散した非水系顔料インクを印字し、その後、後処理液を印字すると、両者は混ざり合い、顔料表面に存在する水溶性樹脂のうち残存するアミン基がシリカ表面の水酸基と結合する。そして、やがて顔料やシリカの分散安定性が崩れ凝集することになるため、紙表面に留まりやすくなり、印刷濃度が向上すると考えられる。第2の態様においても、非水系顔料インク及び後処理液の印字後は両者は混ざり合うため、第1の態様と同様のメカニズムで印刷濃度が向上すると考えられる。
なお、顔料又はシリカに水溶性樹脂が吸着していない状態では、水溶性樹脂は非水系溶剤に均一に存在し続けることができない。しかし、顔料やシリカはわずかではあるが親水性の置換基(カルボン酸基など)を有するため、分散機等で混練することで水溶性樹脂を吸着することができる。従って、水溶性樹脂は非水系顔料インク中又は後処理液中で均一に存在しつづけることが可能となり、着弾直後の短時間の浸透前の時間でも、顔料とシリカとを効率的に結び付けることができ、印刷濃度向上の効果が発揮される。
【0049】
本発明においては、上記の通り、後処理液の液滴を、非水系顔料インクからなるドットに重なるように印刷媒体に向けて吐出するのであるが、このときの非水系顔料インク液滴と後処理液の液滴の比率は、体積比で95:5〜50:50とすることが好ましく、90:10〜75:25とすることがより好ましい。
【0050】
本発明においては、非水系顔料インクからなるドットを形成した後、後処理液の液滴を、非水系顔料インクからなるドットに重なるように着弾する迄の時間としては、0.01秒以上とすることが好ましく、0.03秒以上とすることがより好ましい。
【0051】
非水系顔料インクからなるドットに後処理液の液滴が重なるようにするには、(1)印刷媒体表面に非水系顔料インクからなるドットの列を複数形成した後、該非水系顔料インクの各ドット上に後処理液の液滴が着弾するように後処理液を吐出する、又は(2)印刷媒体表面に非水系顔料インクからなるドットの列を複数形成した後、該非水系顔料インクの隣り合うドット間の間隙に後処理液の液滴が着弾するように後処理液を吐出することが好ましい。これら(1)及び(2)の態様のいずれにおいても、非水系顔料インク及び後処理液のいずれかにアミノ基を有する水溶性樹脂を含有することにより印刷濃度の向上を図ることができる。
【0052】
図1は、非水系顔料インク及び後処理液を用い、上記(1)の態様により印刷した後の様子を模式的に示している。すなわち、
図1においては、非水系顔料インクからなるドット10の列の各ドット上に後処理液の液滴12が着弾した様子を示している。このように各液滴を着弾させるには、非水系顔料インクの液滴が印刷媒体に着弾した後、後処理液の液滴が当該非水系顔料インクの液滴と同位置に着弾するように制御すればよい。例えば、インクジェットプリンターにおいて、非水系顔料インクを吐出するノズルと、後処理液を吐出するノズルとを設け、非水系顔料インクの液滴の吐出後に、後処理液の液滴が吐出されるように、各ノズルの配置、印刷媒体の搬送機構、及びインクジェットヘッドの走査機構などを設定すればよい。インクジェットプリンターにおいてこのような制御方法は周知である。
【0053】
一方、
図2は、非水系顔料インク及び後処理液を用い、上記(2)の態様により印刷した後の様子を模式的に示している。すなわち、
図2においては、非水系顔料インクからなるドット10の複数の列において、非水系顔料インクの隣り合うドット間の間隙に後処理液12の液滴が着弾した様子を示している。このように、非水系顔料インクの隣り合うドット間の間隙に後処理液の液滴が着弾するようにする手段としては特に制限はないが、例えば、以下のような手段が挙げられる。
【0054】
図3は、ライン型インクジェットプリンタの搬送部を示す平面図である。搬送部2は、
図3の紙面の左右方向に移動することにより印刷媒体を搬送する搬送ベルト22、及び搬送ベルトの上方に位置し、搬送される印刷媒体にインク等を吐出するインクジェットヘッド20A〜20Cが配置されている。インクジェットヘッド20A〜20Cは、印刷媒体に向けてインクや後処理液の液滴を吐出するノズルを複数備えている。
具体的には、インクジェットヘッド20Aは、複数のヘッドユニット24Aを有する。
図3に示す例では、インクジェットヘッド20Aは、6個のヘッドユニット24Aから構成されている。6個のヘッドユニット24Aは、千鳥配置されている。さらに具体的には、6個のヘッドユニット24Aは、用紙(印刷媒体)の搬送方向(左右方向)と略直交する方向(前後方向)に配列され、かつ、1つおきに搬送方向における位置をずらして配置されている。インクジェットヘッド20Bは、6個のヘッドユニット24Bから構成されている。インクジェットヘッド20Cは、6個のヘッドユニット24Cから構成されている。6個のヘッドユニット24B、6個のヘッドユニット24Cは、6個のヘッドユニット24Aと同様に、千鳥配置されている。ヘッドユニット24A〜24Cは、ヘッドホルダ(図示せず)に固定されている。ヘッドユニット24A〜24Cは、後述のように吐出するインクが異なる以外は、同様の構成を有する。
なお、以下の説明においては、インクジェットヘッド20A〜20C、ヘッドユニット24A〜24Cの符号におけるアルファベットの添え字(A〜C)を省略して総括的に表記することがある。
【0055】
ヘッドユニット24は、
図4に示すように、2つのインクチャンバ26U,26Dと、2列のノズル列28U,28Dとを有する。ここで、
図4は、左右方向に沿った同一列のヘッドユニット24A〜24Cを下側から見た図である。なお、インクチャンバ26U,26D、ノズル列28U,28Dの符号におけるアルファベットの添え字(U,D)を省略して総括的に表記することがある。
【0056】
インクチャンバ26は、非水系顔料インク又は後処理液を貯留する。インクチャンバ26には、インク経路(図示せず)を介してインクが供給される。インクチャンバ26内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、後述するノズル30からインクが吐出される。
【0057】
ヘッドユニット24Aのインクチャンバ26U,26Dには、ともにブラックの色インクが供給される。ヘッドユニット24Bのインクチャンバ26Uには、シアンの色インクが供給される。ヘッドユニット24Bのインクチャンバ26Dには、マゼンタの色インクが供給される。ヘッドユニット24Cのインクチャンバ26Uには、イエローの色インクが供給される。ヘッドユニット24Cのインクチャンバ26Dには、本発明に係る後処理液が供給される。
【0058】
ノズル列28は、インクを吐出する複数のノズル30からなる。各ノズル列28において、複数のノズル30は、主走査方向(前後方向)に所定のピッチPで等間隔に配置されている。上流側のノズル列28Uと下流側のノズル列28Dとは、用紙の搬送方向(左右方向)に並列配置されている。また、ノズル列28Uのノズル30とノズル列28Dのノズル30とが、主走査方向に半ピッチ(P/2)分だけずれるように配置されている。
【0059】
ヘッドユニット24Aのノズル列28U,28Dは、ヘッドユニット24Aのインクチャンバ26U,26Dに供給されるブラックの色インクを吐出する。ノズル列28U,28Dの2列からブラックの色インクを吐出することで、ブラックの印字解像度を他の色より高めることができる。ヘッドユニット24Bのノズル列28U,28Dは、それぞれヘッドユニット24Bのインクチャンバ26U,26Dに供給されるシアン、マゼンタの色インクを吐出する。ヘッドユニット24Cのノズル列28U,28Dは、それぞれヘッドユニット24Cのインクチャンバ26U,26Dに供給されるイエローの色インク、後処理液を吐出する。
【0060】
ここで、ヘッドユニット24Aとヘッドユニット24Bとは、主走査方向における各ノズル位置が一致するように配置されている。すなわち、ヘッドユニット24Aのノズル列28Uとヘッドユニット24Bのノズル列28Uとは、主走査方向における各ノズル30の位置が一致している。また、ヘッドユニット24Aのノズル列28Dとヘッドユニット24Bのノズル列28Dとは、主走査方向における各ノズル30の位置が一致している。
【0061】
これに対し、ヘッドユニット24Cは、ヘッドユニット24A,24Bのノズル列28U,28Dにおける同一画素(ドット)に対応する4つのノズル30の主走査方向における重心位置と、ヘッドユニット24Cのノズル列28Dの当該画素に対応するノズル30の主走査方向における中心位置とが一致するように配置されている。ここで、ヘッドユニット24A,24Bのノズル列28U,28Dにおける同一画素に対応する4つのノズル30の主走査方向における重心位置は、これら4つのノズル30から吐出されたインクにより用紙上に形成される画素の主走査方向における重心位置と同義である。また、ヘッドユニット24Cのノズル列28Dの当該画素に対応するノズル30の主走査方向における中心位置は、当該ノズル30から吐出されたインクにより用紙上に形成される画素の主走査方向における中心位置と同義である。また、「一致」は、完全一致に限らず、所定範囲内の変動を含むものである。この所定範囲は、例えば、実験的に決定することができる。
【0062】
ヘッドユニット24A〜24Cにおける同一画素に対応するノズル30の組み合わせを、
図4において一点鎖線で囲んで示す。
【0063】
ヘッドユニット24A,24Bにおいて、同一画素に対応するノズル列28Uのノズル30とノズル列28Dのノズル30とは、主走査方向に半ピッチ(P/2)分だけずれている。そして、ヘッドユニット24Aのノズル列28Uとヘッドユニット24Bのノズル列28Uとにおいては、同一画素に対応するノズル30の主走査方向おける位置は一致している。また、ヘッドユニット24Aのノズル列28Dとヘッドユニット24Bのノズル列28Dにおいては、同一画素に対応するノズル30の主走査方向おける位置は一致している。
【0064】
したがって、ヘッドユニット24A,24Bにおける同一画素に対応する4つのノズル30の主走査方向における重心位置は、同一画素に対応するノズル列28Uのノズル30とノズル列28Dのノズル30との主走査方向における中間位置である。
【0065】
そこで、
図4に示すように、主走査方向において、ヘッドユニット24Cのノズル列28Dのノズル30の中心位置が、同一画素に対応するヘッドユニット24A,24Bのノズル列28Uのノズル30とノズル列28Dのノズル30との中間位置に一致するように、ヘッドユニット24Cが配置されている。従って、ヘッドユニット24A,24Bのノズル30から吐出した液滴により形成される画素に対し、ヘッドユニット24Cのノズル30から吐出した液滴により形成される画素は、主走査方向において半ピッチずれた状態となる。
【0066】
以上のようなインクジェットヘッドの構成により、後処理液の液滴により形成される画素は、非水性顔料インクの液滴により形成される画素に対して、主走査方向において半ピッチずれた状態となる。また、副走査方向における、後処理液の液滴により形成される画素も、非水系顔料インクの液滴により形成される画素に対して半ピッチずれた状態で形成するには、搬送される印刷媒体に対し、非水系顔料インクの液滴により形成される画素に対して半ピッチ分ずれた状態で後処理液の液滴が着弾するように吐出するタイミングを制御すればよい。
以上のように印刷することで、主走査方向及び副走査方向の双方において半ピッチずれた状態、すなわち
図2に示すように、非水系顔料インクの隣り合うドット間の間隙に後処理液12の液滴が着弾した状態となる。
【0067】
以上の(1)及び(2)のいずれにおいても、印刷濃度の向上の観点から、非水系顔料インクの液滴及び後処理液の液滴の体積比は、95:5〜50:50とすることが好ましく、90:10〜75:25とすることがより好ましい。
【0068】
本発明において用いられる印刷媒体としては、特に限定されず、普通紙、上質普通紙、インクジェット(IJ)紙、IJマット紙、記録媒体上にインク吸収溶液がコートされたコート紙、コート紙よりもインク吸収層の厚みが薄い微コート紙、光沢紙(フォト光沢用紙)、特殊紙、布等で使用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1〜9、比較例1〜2]
(非水系顔料インク(ブラックインク)の調製)
表2に示す成分・配合率(質量%)となるように、各成分を混合し、ジルコニアビーズ(直径0.5mm)を充填率85%にて充填したダイノーミル((株)シンマルエンタープライゼス製)により滞留時間15分間の条件で分散し、非水系顔料インクK−1〜K−5を得た。
表2に記載の各成分の詳細を以下に示す。
顔料:三菱化学(株)製、MA8
顔料分散剤:日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース13940
石油系炭化水素溶剤:東燃ゼネラル石油(株)製:アイソパーG
水溶性カチオンポリマー(ポリエチレンイミン);
PEI1:(株)日本触媒製、エポミン SP−003(固形分100%)
PEI2:(株)日本触媒製、エポミン SP−012(固形分100%)
PEI3:(株)日本触媒製、エポミン SP−200(固形分100%)
水溶性カチオンポリマー(ジメチルアミン アンモニアエピクロルヒドリン樹脂):センカ(株)製、パピオゲン P−105(固形分60%)
【0071】
【表2】
【0072】
(後処理液の調製)
表3に示す成分・配合率(質量%)となるように、各成分を混合し、非水系顔料インクの調製と同じ条件で分散し、後処理液S−1〜S−5を得た。
表3に記載の各成分の詳細を以下に示す。
シリカ;
シリカ1:日本アエロジル(株)製、アエロジルR104(平均粒子径:150±25nm)
シリカ2:日本アエロジル(株)製、アエロジルR106(平均粒子径:250±30nm)-
シリカ3:日本アエロジル(株)製、アエロジルR202(平均粒子径:100±20nm)
顔料分散剤:日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース13940
石油系炭化水素溶剤:東燃ゼネラル石油(株)製:アイソパーG
水溶性カチオンポリマー(ポリエチレンイミン):(株)日本触媒製、エポミン SP−003(固形分100%)
【0073】
【表3】
【0074】
各実施例・比較例において、表4に示す通り、上記のようにして得られた非水系顔料インクK−1〜K−5のいずれか及び後処理液S−1〜S−5のいずれかをインクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製、インクジェット記録装置である高速カラープリンター)に装填し、普通紙にベタ画像(印字サイズ:150mm×100mm)を印刷した。なお、用いたインクジェットプリンターは、非水系顔料インクの液滴を吐出してドットを形成した後、そのドットと重なるように後処理液の液滴を吐出する機構を有し、その機構により上記ベタ画像を印刷した。また、各実施例・比較例において、非水系顔料インク及び後処理液の液滴1滴は、表4に示す転移量とした。
【0075】
(評価)
後処理前後における印刷物の印刷面(表面)の印刷濃度(OD値)を、マクベス濃度計(マクベス社製RD920)により測定した。また、各実施例・比較例において、得られたOD値に基づき、表濃度を以下の評価基準に従い評価した。結果を表4に示す。
−評価基準−
○:比較例1に比べて+0.05以上向上(目視で黒くなったと認識できるレベル)
×:比較例1に比べて+0.05以下
【0076】
【表4】
【0077】
表4より、実施例1〜9においてはいずれも、非水系顔料インク及び後処理液が混ざり合った後において、顔料、カチオン性ポリマー(アミノ基を有する水溶性樹脂)、及びシリカの組み合わせで存在し、表濃度が大きく向上していることが分かる。
実施例2〜4はそれぞれ、非水系顔料インク中のカチオン性ポリマー(アミノ基を有する水溶性樹脂)の種類を異ならせた例であるが、カチオン性ポリマーの種類を変えても表濃度が大きく向上していることが分かる。
実施例5、6は、後処理液中のシリカの種類を異ならせた例であるが、シリカの種類を変えても表濃度が大きく向上していることが分かる。
実施例7、8は、後処理液の転移量を異ならせた例であるが、転移量が6〜30plであれば、表濃度が大きく向上することが分かる。
実施例9は、実施例1〜8とは異なり、非水系顔料インクではなく後処理液にアミノ基を有する水溶性樹脂を含有させた例であるが、実施例9においても表濃度が大きく向上しているのが分かる。
比較例1は、非水系顔料インクにも後処理液にも、アミノ基を有する水溶性樹脂を含有しない例であるが、表濃度が向上していないのが分かる。
比較例2は、後処理液にシリカを含有しない例であるが、表濃度が低下しているのが分かる。
【0078】
[実施例10〜15、比較例3]
(非水系顔料インク(ブラックインク)の調製)
上述の実施例1、5〜8、比較例2で使用した非水系顔料インクK−1を調製した。
【0079】
(後処理液の調製)
表5に示す成分・配合率(質量%)となるように、各成分を混合し、上述の非水系顔料インクの調製時と同じ条件で分散し、後処理液S−6〜S−12を得た。
なお、表5に記載の各成分の詳細を以下の通りである。
シリカ;
シリカ4:日本アエロジル(株)製、アエロジルRX300(平均粒子径:180±30nm)
なお、「シリカ1」は、後処理液S−1等で使用したシリカ1である。
顔料分散剤:日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース13940
グリコールエーテル系溶剤;
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:東京化成工業(株)製
ジエチレングリコールジブチルエーテル:東京化成工業(株)製
トリエチレングリコールモノブチルエーテル:東京化成工業(株)製
テトラエチレングリコールジメチルエーテル:東京化成工業(株)製
石油系炭化水素溶剤:東燃ゼネラル石油(株)製、アイソパーG
高級アルコール系溶剤:リソノール18SP(イソステアリルアルコール)、高級アルコール工業(株)製
水溶性樹脂:ポリエチレンイミン SP-012、(株)日本触媒製
【0080】
【表5】
【0081】
各実施例・比較例において、表6に示す通り、上記のようにして得られた非水系顔料インクK−1及び後処理液S−6〜S−12のいずれかをインクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙にベタ画像(印字サイズ:150mm×100mm)を印刷した。なお、用いたインクジェットプリンターは、非水系顔料インクの液滴を吐出してドットを形成した後、そのドットと重なるように後処理液の液滴を吐出する機構を有し、その機構により上記ベタ画像を印刷した。また、各実施例・比較例において、非水系顔料インク及び後処理液の液滴1滴は、表6に示す転移量とした。
【0082】
(評価)
1.印刷濃度
後処理前後における印刷物の印刷面(表面)及び裏面の印刷濃度(OD値)を、マクベス濃度計(マクベス社製RD920)により測定した。また、各実施例・比較例において、得られたOD値に基づき、表濃度を以下の評価基準に従い評価した。結果を表6に示す。
−評価基準−
表面のOD値
◎:比較例1に対し、表面のOD値が0.05〜0.1向上した。
○:比較例1に対し、表面のOD値が0.01〜0.04向上した。
×:比較例1に対し、表面のOD値が同等もしくは低下した。
裏面のOD値
○:比較例1に対し、裏面のODが0.01以上向上した。
×:比較例1に対し、裏面のODが同等以下であった。
【0083】
2.間欠吐出性
各インクを調製後、インクジェットプリンター「オルフィスX9050」にインクを導入し、35℃環境下で印字後10分放置した後に、再度印字し印刷物の状態を下記の基準で評価した。
−評価基準−
○:印字後10分放置し、再印字した時に不吐出が発生しなかった。
×:印字後10分放置し、再印字した時に不吐出が発生した。
【0084】
3.耐擦過性
クロックメーターに布を取り付け、印字物表面を5往復し、布への汚れ度合いを以下の評価基準に従い目視で評価した。
−評価基準−
○:比較例1と比較して、布および紙の汚れが薄いもしくは同程度であった。
×:比較例1と比較して、布および紙の汚れが濃かった。
【0085】
【表6】
【0086】
表6より、実施例10〜15はいずれも、後処理液に用いた有機溶剤がグリコールエーテル系溶剤を含み、印刷濃度、間欠吐出性及び耐擦過性のすべてにおいて満足できる評価結果が得られた。これに対して後処理液自体を用いなかった比較例3は印刷濃度において不良であった。
【0087】
[実施例16〜18、比較例4〜6]
(非水系顔料インク(ブラックインク)の調製)
上述の実施例2で使用した非水系顔料インクK−2、及び実施例9及び比較例1で使用した非水系顔料インクK−5を調製した。
【0088】
(後処理液の調製)
上述の実施例1〜4等で使用した後処理液S−1を調製した。また、表7に示す成分・配合率(質量%)となるように、各成分を混合し、上述の非水系顔料インクの調製と同じ条件で分散し、後処理液S−13を得た。
なお、表7に記載の各成分の詳細を以下の通りである。
シリカ5:日本アエロジル(株)製、アエロジル150(平均粒子径:150±15nm)
顔料分散剤:日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース27000
水溶性溶剤1:グリセリン
水溶性溶剤2:3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール
また、顔料分散剤として用いた「ソルスパース27000」の有効成分は100%である。一方、後処理液S−1において7.50質量%含む顔料分散剤たる「ソルスパース13940」の有効成分は70%である。従って、有効成分換算で、後処理液S−13と後処理液S−1とでシリカ/顔料分散剤比は同じである。
【0089】
【表7】
【0090】
上記のようにして得られた非水系顔料インク及び後処理液を、インクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)に装填し、普通紙にベタ画像(印字サイズ:150mm×100mm)を印刷した。なお、用いたインクジェットプリンターは、非水系顔料インクの液滴を吐出してドットを形成した後、そのドットと重なるように後処理液の液滴を吐出する機構を有し、その機構により上記ベタ画像を印刷した。また、各実施例・比較例において、非水系顔料インク及び後処理液は、以下のように吐出して印刷を行った。すなわち、実施例16及び18においては、非水系顔料インクからなるドットを形成した後、そのドット上に後処理液の液滴が着弾するようにし、実施例17、比較例5及び6においては、非水系顔料インクからなるドットを複数形成した後、隣り合うドット間の間隙に後処理液の液滴が着弾するようにした。
【0091】
(評価)
1.印刷濃度
後処理前後における印刷物の印刷面(表面)を、マクベス濃度計(マクベス社製RD920)により測定した。結果を表8に示す。
2.裏抜け
後処理前後における印刷物の裏面を、マクベス濃度計(マクベス社製RD920)により測定した。
3.搬送性
搬送性評価は、インクジェットプリンター「オルフィスX9050」(理想科学工業株式会社製)を用いて行った。用紙は理想用紙薄口(A4サイズ、理想科学工業株式会社製)を用い、印刷速度120枚/分で片面全面にベタ画像を印刷し、20枚印字後の排紙揃えで評価した。紙詰まりがなく排紙揃えも良好の場合を「OK」とし、紙詰まりが発生もしくは排紙が乱れた場合を「NG」とした。
【0092】
【表8】
【0093】
表8より、実施例16〜18においてはいずれも、印字濃度に優れ、裏抜けやカールは認められなかった。
これに対して、アミノ基を有する水溶性樹脂を含有しない非水系顔料インクを用い、かつ後処理液を用いなかった比較例4は十分な印刷濃度が得られなかった。また、アミノ基を有する水溶性樹脂を含有しない非水系顔料インクを用いた比較例5は、は十分な印刷濃度が得られなかったとともに裏抜けが認められた。また、水系の後処理液を用いた比較例6はカールが発生し搬送性に劣っていた。