(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139413
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】リーマ型根管用器具
(51)【国際特許分類】
A61C 5/40 20170101AFI20170522BHJP
【FI】
A61C5/02
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-554931(P2013-554931)
(86)(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公表番号】特表2014-513575(P2014-513575A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】FR2012050394
(87)【国際公開番号】WO2012114052
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】1151525
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505456126
【氏名又は名称】ミクロ メガ アンテルナショナル マニュファクチュール
【氏名又は名称原語表記】MICRO MEGA INTERNATIONAL MANUFACTURES
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】モルドゥニ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】エル アベッド,ラシッド
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−515395(JP,A)
【文献】
特表2008−501541(JP,A)
【文献】
特表2008−520354(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0023186(US,A1)
【文献】
特開昭60−129042(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0059663(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2951067(FR,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2935260(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具の縦軸に沿ったほぼ円筒形または円錐形の作業ゾーンを備える歯科用リーマ型根管用器具であって、その作業ゾーンはX個のらせん状切り込みリップを形成するX個のらせん状溝を備え、切り込みリップは二つの連続した溝の交差によって形成される器具であり、ただし、Xは3以上である器具において、器具の横断面では、器具の縦軸に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度(αI、βI、γI)は全て異なり、全ての切り込みリップは、縦軸に中心があり、直径が全て異なる同心円上に配置されていることを特徴とする器具。
【請求項2】
器具の横断面で、その横断面の重心(K)に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度(αK、βK、γK)は全て異なることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
器具の縦軸(I)に対して、または横断面の重心(K)に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度は、器具の作業ゾーンの一部分では一定であることを特徴とする請求項1または2に記載の器具。
【請求項4】
器具の縦軸に対して、または横断面の重心に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度は、器具の作業ゾーンの一部分では異なることを特徴とする請求項1または2に記載の器具。
【請求項5】
切り込みリップの切り込み角度は全て異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の器具。
【請求項6】
同一の横断面では、らせん角度は全て異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の器具。
【請求項7】
X=3個のらせん状溝を備える、請求項1〜6のいずれか一つに記載の器具。
【請求項8】
円筒形または円錐形の棒からの請求項1〜7のいずれか一つに記載の根管用器具の作製方法であって、その方法は、溝を、各加工段階で異なるものである所定の深さに研削することによる加工段階、および加工グラインダの正面での棒の回転段階という、一連の段階を交互に含む方法。
【請求項9】
三つのらせん状溝を有する器具の作製方法であって、その方法は
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さの第一の加工、
・縦軸に沿った第一の角度の棒の回転、
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さとは異なる第二の深さの第二の加工、
・縦軸に沿った第二の角度の棒の回転、
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さおよび第二の深さとは異なる第三の深さの第三の加工、
を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第二の角度は第一の角度とは異なり、また、360°から第一の角度の二倍を引いたものとも異なることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦軸に沿ったほぼ円筒形または円錐形の作業ゾーンを備える歯科用リーマ型根管用器具であって、その器具はX個のらせん状切り込みリップを形成するX個のらせん状溝を備え、切り込みリップは二つの連続した溝の交差によって形成される器具に関する。そのような器具は、歯内治療において歯根を整えるために使用される。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第0801930号明細書には、三つの切り込みリップを備え、その頂点が正三角形の頂点を形成するようなリーマが記載されている。そのような器具は、整えるべき根管の断面が非円形であるときを除けば満足できるものである。さらに、その器具が根管内を前進するとき、器具は根管壁内にねじ込まれ、はめ込まれる傾向があるが、それによって、根管壁が損傷し、治療の対象である患者を傷つける危険性がある。欧州特許第1214013号明細書には、三つの切り込みリップを備え、その頂点が二等辺三角形の頂点を形成するリーマが記載されている。この器具の非対称的な断面によって、根管の断面が円形でないときはそのリーマはより有効であるが、根管内を前進するとき器具はやはりはめ込まれ、ねじ込まれる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ねじ込まれることの問題は、らせんを有する根管用器具の場合重大である。実際、概念によると、これらの器具はらせん状の溝の存在によってねじ込まれるという自然な傾向を有する。ところが、患者を傷つけないおよび/または歯根管を損傷しないためには、ねじ込まれることによる危険性を最大限抑えることが必要不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来の器具の欠点を全くまたは一部分しか示さない、新規な根管用器具を提案するものである。より正確には、本発明は、器具の縦軸に沿ったほぼ円筒形または円錐形の作業ゾーンを備える歯科用リーマ型器具であって、その作業ゾーンはX個のらせん状切り込みリップを形成するX個のらせん状溝を備え、切り込みリップは二つの連続した溝の交差によって形成される器具であり、ただし、Xは3以上である。本発明によると、器具の横断面では、器具の縦軸に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度は全て異なる。
【0005】
そのような角度では、横断面は対称軸も対称中心も示さず、横断面の非対称度はさらに増大する。したがって、従来の器具と比較して、器具の断面の非対称度は増大する。そのようにして、器具が根管の内部を前進するとき器具が蛇行して進む可能性を大きくする。器具の複数の稜は同時に根管壁とは接触せず、また同時に根管壁を切断しない。器具はより容易に根管内に挿入され、くねるように前進し、それによって、器具がねじ込まれることによる危険性、はめ込まれることによる危険性を制限する。
【0006】
さらに器具の断面の非対称度を増大させるために、横断面の重心に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度も同様に全て異なるようにすることができる。
【0007】
別の実施態様では、器具の縦軸に対して、または横断面の重心に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度は、器具の作業ゾーンの一部分では一定であることができる。また別の実施態様では、器具の縦軸に対して、または、横断面の重心に対して測定した二つの切り込みリップ間の角度は、器具の作業ゾーンの一部分では異なる。器具の一部分とは、ここでは、器具の作業ゾーンの長さ全体または器具の作業ゾーンの一部のみに対応可能である。二つのリップ間の角度を変化させて、さらに器具の非対称度を、したがって、器具の有効性を増大させる。
【0008】
本発明による器具では、また、切り込みリップの角度を全て異なるように作製することができる。二つの連続した溝の交差によって形成される切り込みリップでは、切り込み角度とは、作業ゾーンの横断面の平面内で、切り込み方向の側に位置する溝の接線と、切り込み稜と器具の軸を通過する線によって形成される角度である。
【0009】
したがって、切り込みリップが根管壁を切るようにさらなる非対称性が形成され、これによって、さらに、根管壁内へ器具がねじ込まれることおよびはめ込まれることの危険性を制限する。
【発明の効果】
【0010】
また、常に非対称性を増大する目的で、器具の同一横断面の高さでのらせん角度を全て異なるように作製することができる。らせん角度とは、該当する横断面内での器具の縦軸と切り込みリップの接線との間の角度である。
【0011】
さらに、縦軸に中心をとり、直径が全て異なる同心円上に全ての切り込みリップを配置することができる。この形状はさらに少し横断面を変形させ、その非対称性をより増大させる。
【0012】
本発明の別の実施態様では、器具はX=3個のらせん状溝を備える。したがって、切り込みリップの頂点は不規則な三角形を形成する。また別の実施態様では、器具はX=4個のらせん状溝を備え、したがって、切り込みリップの頂点は不規則な四角形を形成する。より大きな数の溝を備える器具を作製することができるが、器具の作製の困難さは溝の数と共に増大する。
【0013】
本発明はまた、円筒形または円錐形の棒から、本発明による根管用器具を作製する方法を提案する。棒は、例えば金属または合金製で、特に曲げ強さや形状記憶というその力学的特性で選択され、例えば、ニッケル−チタン製である。その方法は、溝を、各加工段階で異なるものである所定の深さに研削することによる加工段階、および加工グラインダの正面での棒の回転段階という、一連の段階を含む。例えば、三つのらせん状溝を有する器具の作製のための方法は、
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さの第一の加工、
・器具の縦軸に沿った第一の角度の棒の回転、
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さとは異なる第二の深さの第二の加工、
・縦軸に沿った第二の角度の棒の回転、
・棒の縦軸に沿ったらせん状溝の第一の深さおよび第二の深さとは異なる第三の深さの第三の加工、
を含む。
【0014】
連続した二つの切り込みリップ間に全く異なる角度を作製するためには、第二の角度は第一の角度とは異なり、360°から第一の角度の二倍を引いたものとも異なるように選択される。したがって、得られる器具の横断面の形状はほぼ三角形の形状(切り込みリップの頂点を通過する三角形)を有し、二等辺三角形ではなく正三角形でもなく、いかなる対称軸も対称中心もない。
【0015】
本発明は、本発明による器具の実施例の以下の記載からより良く理解され、本発明の他の特徴および利点が明らかになるであろう。この実施例は、非限定的な実施例である。以下の説明は、下記の添付図面を参照して行うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3b】
図3aに対して第一の角度でずらした(縦軸に沿って回転した器具)作業ゾーンの正面図。
【
図3c】
図3bに対して第二の角度でずらした作業ゾーンの正面図。
【
図4b】
図4aに対して第一の角度でずらした(縦軸に沿って回転した器具)作業ゾーンのB−B断面図。
【
図4c】
図4bに対して第二の角度でずらした作業ゾーンのB−B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記のように、本発明は歯科用リーマ型根管用器具であって、該器具は、その器具の縦軸、すなわち器具の切削される円筒形または円錐形の棒の縦軸に沿って、ほぼ円筒形または円錐形の作業ゾーン1を備えている。縦軸は直線である。
【0018】
図示した実施例では、器具はX=3個のらせん状切り込みリップS1、S2、S3を形成するX=3個のらせん状溝G1、G2、G3を備え、切り込みリップは連続した二つの溝の交差で形成される。図示した実施例ではまた、器具はハンドピースまたはコントラアングルのような器具台に器具を固定するのに適したスリーブを備える。
【0019】
本発明によると、器具の横断面(A−A断面またはB−B断面を参照)上で、器具の縦軸に垂直な平面内では、縦軸(点I、横断面と縦軸との交点)に対して測定した連続した二つの切り込みリップ間の角度αI、βI、γIは全て異なる。
【0020】
また、図示した実施例では、横断面の重心Kに対して測定した連続した二つの切り込みリップ間の角度αK、βK、γKは全て異なる。このように、従来の器具とは異なって、リップS1、S2、S3がその頂点を通過する三角形は正三角形でも二等辺三角形でもなく、より正確には、この三角形はいかなる対称軸もいかなる対称中心も示さない。
【0021】
図2a、2bでは、同一のA−A断面が、一方では縦軸に対して測定した二つの連続した切り込みリップ間の角度αI、βI、γIを、もう一方では横断面の重心Kに対して測定した連続した二つの切り込みリップ間の角度αK、βK、γKを、単純により明確に図示するために、二度図示されていることに注目されたい。
【0022】
本発明による器具では、横断面の特殊な形状から、断面の重心Kは器具の縦軸に対してずれていることが分かるであろう。各横断面の重心Kは、らせん型曲線上に存在する。
【0023】
また、図示した実施例では、縦軸に対する切り込みリップ間の角度αI、βI、γIまたは横断面の重心Kに対する切り込みリップ間の角度αK、βK、γKは互いに異なるが、作業ゾーンの全ての断面、作業ゾーンの長さ全体にわたっては一定である。例として、約140〜180°の角度αIまたはαK、約120〜160°の角度βIまたはβKおよび約20〜100°の角度γIまたはγKは、根管壁へねじ込まれること、はめ込まれることを最小限にして、根管を整えるために特に有効な器具を作成する。
【0024】
切り込みリップの実際のピッチPr1、Pr2、Pr3は、同一の切り込みリップの二つの対応する外形の間の軸方向の距離であり、すなわち、切り込みリップに沿って360°移動するときにたどる距離の縦軸上の投影である。全ての切り込みリップS1、S2、S3の実際のピッチは、各々同一で、Pr1=Pr2=Pr3=Prである(
図3a〜3c)。
【0025】
切り込みリップの見かけ上のピッチは、連続した二つの切り込みリップの二つの対応する外形間の軸方向の距離であり、Pa1=Pr*(αI/360)、Pa2=Pr*(βI/360)、Pa3=Pr*(γI/360)である。切り込みリップ間の角度αI、βI、γIは全て異なるが、見かけ上のピッチPa1、Pa2、Pa3もまた互いに全て異なる。
【0026】
また、図示した実施例では、全ての切り込みリップは中心Iの、直径Φd1、Φd2、Φd3が全て異なる同心円上に配置されている。これらの円は、器具の縦軸、すなわち、器具が切削される前の元の円筒形または円錐形の棒の縦軸上に中心がある。
【0027】
さらに、図示した実施例では、所定の横断面上で、らせん角度δ1、δ2、δ3は全て異なる(
図3a〜3c)。らせん角度とは該当する横断面内での、器具の縦軸と切り込みリップの接線との間の角度である。
【0028】
また、所定の横断面(ここではA−A断面またはB−B断面)において切り込み角度は全て異なる。切り込み角度とは。注目されるのは、連続した二つの溝の交差で形成される所定の切り込みリップでは、切り込み角度とは、作業ゾーンの横断面の平面内で、切り込み方向の側に位置する溝の接線と、切り込み稜および器具の軸(点I)を通過する線(加工面の垂線)によって形成される角度である。
図4a〜4cで、切り込み角度はε1、ε2およびε3である。
【符号の説明】
【0029】
1 作業ゾーン
G1、G2、G3 らせん状溝
I 器具の縦軸
K 重心
S1、S2、S3 切り込みリップ
αI、βI、γI 連続した二つの切り込みリップ間の角度
αK、βK、γK 連続した二つの切り込みリップ間の角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】欧州特許第0801930号明細書
【特許文献2】欧州特許第1214013号明細書