特許第6139414号(P6139414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139414
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】接触検出
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20170522BHJP
   G11B 5/455 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   G11B21/21 N
   G11B21/21 F
   G11B5/455 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-556629(P2013-556629)
(86)(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公表番号】特表2014-507044(P2014-507044A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】US2012023118
(87)【国際公開番号】WO2012118583
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】13/036,184
(32)【優先日】2011年2月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Seagate Technology LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,リン
(72)【発明者】
【氏名】ハイムズ,アダム・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ニッペンバーグ,リー・シィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マイケル・ティ
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−244642(JP,A)
【文献】 特開2010−205368(JP,A)
【文献】 特開2008−097760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/40−5/465
G11B 5/56−5/60
G11B 21/16−21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換ヘッドと記憶媒体との間の接触を検出する方法であって、前記方法は、
選択電力レベルを有するとともに前記変換ヘッドを支持するサスペンションの固有振動数を除きかつ1kHz以下の既知の周波数を有する入力信号を、前記変換ヘッドを作動させるためのアクチュエータに付与するステップを含み、前記アクチュエータはヒータを含み
前記方法は、さらに、前記入力信号に応答して前記変換ヘッドの読出素子からの出力信号を得るステップを含み、前記出力信号は位置誤差信号を含み、
前記方法は、さらに、
前記アクチュエータに付与される前記入力信号と同一の既知の周波数または同一の既知の周波数の高調波の周波数である参照周波数を有する信号を前記出力信号に乗ずることによって、前記参照周波数の前記出力信号から少なくとも1つの信号成分を抽出するステップと、
前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、前記変換ヘッドと前記記憶媒体との間の接触を示すかどうかを判断するステップと、
前記入力信号を前記アクチュエータに付与するステップ、前記入力信号に応答して前記位置誤差信号を含む出力信号を得るステップ、および、前記出力信号から前記少なくとも1つの信号成分を抽出するステップを、前記少なくとも1つの抽出された信号成分が前記変換ヘッドと前記記憶媒体との間の接触を示すまで、付与される波形の電力レベルを増加することによって繰返すステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、前記変換ヘッドと前記記憶媒体との間の接触を示すかどうかを判断するステップは、前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、しきい値よりも大きい値を有するときに前記接触が起きたと判断するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変換ヘッドと記憶媒体との間の接触を検出する方法であって、前記方法は、
選択電力レベルを有するとともに前記変換ヘッドを支持するサスペンションの固有振動数を除きかつ1kHz以下の既知の周波数を有する入力信号を、前記変換ヘッドを作動させるためのアクチュエータに付与するステップを含み、前記アクチュエータはヒータを含み
前記方法は、さらに、前記入力信号に応答して前記変換ヘッドの読出素子からの出力信号を得るステップを含み、前記出力信号は位置誤差信号を含み、
前記方法は、さらに、
前記アクチュエータに付与される前記入力信号と同一の既知の周波数または同一の既知の周波数の高調波の周波数である参照周波数を有する信号を前記出力信号に乗ずることによって、前記参照周波数の前記出力信号から少なくとも1つの信号成分を抽出するステップと、
前記少なくとも1つの抽出された信号成分がしきい値よりも大きい値を有するかどうかを判断するステップと、
前記アクチュエータに前記入力信号を付与するステップ、前記入力信号に応答して位置誤差信号を含む出力信号を得るステップ、および、前記出力信号から少なくとも1つの信号成分を抽出するステップを、前記少なくとも1つの抽出された信号成分の値が前記しきい値よりも大きくなるまで、付与される波形の電力レベルを増加することによって繰返すステップとを含む、方法。
【請求項4】
変換ヘッドを作動させ、かつ、選択電力レベルを有するとともに前記変換ヘッドを支持するサスペンションの固有振動数を除きかつ1kHz以下の既知の周波数を有する入力信号を受信するように構成されるアクチュエータを備え、前記アクチュエータはヒータを含み
さらに、前記入力信号に応答して前記変換ヘッドの読出素子からの出力信号を得るように構成されるチャネルを備え、前記出力信号は位置誤差信号を含み、
さらに、コントローラを備え、前記コントローラは、
前記アクチュエータに付与される前記入力信号と同一の既知の周波数または同一の既知の周波数の高調波の周波数である参照周波数を有する信号を前記出力信号に乗ずることによって、前記参照周波数の前記出力信号から少なくとも1つの信号成分を抽出し、かつ、
前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、前記変換ヘッドと記憶媒体の表面との間の接触を示すかどうかを判断するように構成される、データ記憶装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記出力信号からの前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、しきい値よりも大きい値を有するとき、前記少なくとも1つの抽出された信号成分が、前記変換ヘッドと前記記憶媒体との間の接触を示すかどうかを判断する、請求項4に記載のデータ記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ディスクドライブなどのデータ記憶装置は、典型的には、磁気または光学ディスクなどの記憶媒体の表面に情報を記憶する。典型的なディスクドライブでは、1以上のディスクがともにスピンドルモータに取付けられる。スピンドルは、ディスクを回転させ、かつ、媒体のデータ表面を、記憶媒体に対してデータの読出および書込を行なう変換器を保持するそれぞれのヘッドスライダ下を通過させる。
【0002】
ヘッドスライダは、飛行高さで記憶媒体上を飛行する。記憶装置の記録密度が絶えず増加するにつれて、飛行高さは低下する。媒体表面の凹凸および動作条件のため、低下した飛行高さは、変換器の媒体との好ましくない接触を引起すおそれがある。ヘッドスライダに位置付けられるマイクロアクチュエータは、変換器と媒体との間の間隙をアクティブに制御し得るが、アクティブな間隙制御の主な問題の1つは、信頼性があり、かつ摩耗のない接触検出である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
一実施形態では、変換ヘッドと記憶媒体との間の接触を検出する方法が提供される。方法は、選択電力レベルおよび既知の周波数を有する入力信号を、変換ヘッドを作動させるためのアクチュエータに付与する。出力信号は、入力信号に応答して読出/書込チャネルにより得られる。コントローラは、アクチュエータに付与される入力信号と同一の既知の周波数または同一の既知の周波数の高調波の出力信号から少なくとも1つの信号成分を抽出する。少なくとも1つの抽出された信号成分が、変換ヘッドと媒体との間の接触を示すかどうかが判断される。入力信号をアクチュエータに付与すること、入力信号に応答して出力信号を得ること、および、出力信号から信号成分を抽出することは、抽出された信号成分がヘッドと記憶媒体との間の接触を示すまで、付与される波形の電力レベルを徐々に増加することによって繰返される。
【0004】
本発明の実施形態を特徴付ける他の特徴および利点は、下記の詳細な説明を読み、関連する図面を参照されると明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】一実施形態に基づくデータ記憶装置の模式図である。
図2図1に図示する変換ヘッドと記憶媒体との間の接触を検出する方法を示す図である。
図3図2に図示する方法を適用するためのデータ記憶装置の実験的な構成の模式図である。
図4図3に図示する構成を用いた第1の実験のグラフ図である。
図5図4に図示する構成を用いた第2の実験のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本開示の実施形態は、データ記憶装置が較正されているときに使用されるヘッド対媒体の接触検出手法を提供する。一実施形態では、開示される接触検出手法は、変換ヘッドに結合されたアクチュエータまたはヒータを既知の周波数波形により駆動すること、および、応答波形において同一の周波数信号を同定する信号処理技術を用いることを含む。別の実施形態では、開示される接触検出手法は、既知の高周波パルス波形によりアクチュエータまたはヒータを駆動することを含む。データ記憶装置を較正するときヘッド対媒体接触がいつ起きるかを判断するのは、データ記憶動作およびヘッドのアクティブな間隙制御の間に使用され得る情報である。たとえば、アクティブな間隙制御(すなわち、書込器ヒータなどのヘッドに位置するアクチュエータを用いて、媒体とヘッドとの間の空間を制御する)は、較正中に集められる情報に基づき調節され得る。
【0007】
データ記憶装置の較正に用いられる2つの例示的なタイプの接触検出手法としては、ヘッドおよび媒体が接触するときの変調を検出することと、ヘッドの媒体に対する接触が非ゼロスキューで行なわれるときに摩擦により引起される位置誤差信号(dPES)の変化により測定されるオフトラック信号を検出すること、とが含まれる。位置誤差信号(PES)は、回転可能な記憶媒体上のトラックに対する変換ヘッドの半径方向の位置を示す信号である。高性能データ記憶装置では、PESは、対応するサーボヘッドを有する予め記録されたサーボディスク(専用サーボシステム)、または、既定の間隔でユーザデータブロック間の各記録表面上に埋込まれたサーボ情報(埋込みサーボシステム)のいずれかから引出される。変換ヘッドは、サーボ情報をサーボ制御回路に提供し、サーボ制御回路は、ヘッドがトラックの中心の上方に位置付けられる(「オントラック」)ときには典型的にはゼロに等しく、かつ、ヘッドとトラックの中心との間の相対的なオフトラック距離と直線的に比例している大きさを有するPESを生成する。
【0008】
積算ピーク検出(IPD)によってなど、変調を用いた接触検出は、ヘッドおよび媒体の界面が十分に大きな接触変調を有する場合、dPES法を用いた接触の検出よりもより感度が高い。ヘッドおよび媒体の界面が低い変調を有する場合には、dPES信号が、接触を検出するために利用可能な唯一の信号であり得る。さらに、dPES信号は、データ記憶装置における繰返し振れ(RRO)、非繰返し振れ(NRRO)、FOS過熱(すなわち、ヘッドを支持するサスペンション上の柔軟性ケーブルの過熱)および風損などの多くの異なるソースからのノイズを含むため、dPES信号によるヘッドおよび媒体の接触の検出が困難となり得る。
【0009】
ヘッドおよび媒体間の界面は常に研究中であり、より高い面積密度の媒体を得るために、ヘッド対媒体間隔を減少させ続けるための開発が行なわれている。これらの開発の1つの重要な特徴は、接触時の低い変調である。このような界面により、変調を用いたヘッド対媒体接触の検出が大きな課題となる。特に、低い変調接触が一般的である場合に、高い信号対ノイズ比(SNR)で、利用可能なPES信号を使用する接触検出が開示される。
【0010】
図1は、本開示の実施形態に従うデータ記憶装置112の簡略化されたブロック図である。データ記憶装置112は、記憶媒体114、媒体114上のトラック120に対してデータを読出および書込可能な変換ヘッド118を支持するサスペンション116を含む。記憶媒体114は回転可能なディスクとして図示される。データ記憶装置112は、書込動作中に変換ヘッド118に付与される書込信号を生成し、かつ、読出動作中に変換器118から発される読出信号を増幅するための前置増幅器(プリアンプ)148も含む。
【0011】
変換ヘッド118に結合されて、書込動作中にユーザデータを受信し、かつ、読出信号処理器154によりプリアンプ148によって増幅された読出信号を処理する読出/書込チャネル150が含まれる。読出信号処理器154は、読出信号の形態で記憶媒体114に記録されたユーザデータを入手し、検出し、デコードする他に、読出信号処理器154は、変換ヘッドがどれだけ離れてオフトラックであるかを示す位置誤差信号(PES)を入手および検出することもできる。ユーザデータまたはオフトラックデータを示す読出信号は、図1に図示される出力信号156として見なされる。出力信号156はコントローラ158によって受信される。コントローラ158は処理器を含み、変換ヘッド118と記憶媒体114との間の接触を検出するためのアルゴリズムを処理する際に使用されるメモリにアクセス可能である。コントローラ158は、図2を参照して以下に説明される。
【0012】
変換ヘッド118は、読出素子または書込素子などの変換素子を記憶媒体114に接近させるための、ヒータなどのアクチュエータ128を含む。一実施形態では、周波数を設定するための駆動クロックを含み得るアナログスイッチ125に、DC成分(第1の実施形態を示すために破線で図示される)が与えられ、DC成分はアクチュエータ128に電力を供給する。アナログスイッチ125からアクチュエータ128に供給される信号は、入力信号または参照信号129である。読出/書込チャネル150は、入力信号129に応答して出力信号156を生成する。
【0013】
しかしながら、DC成分からの周波数は、ヒータ作動の遅い応答のため、一定の考慮事項を有し得る。ヒータの熱時定数(すなわち、時変入力に対するヒータの応答を特徴付ける立上がり時間)は、100μsより大きいと推定される。完全な突出(すなわち、アクチュエータまたはヒータが完全に突出したとき)は、時定数の約5倍である。したがって、ヒータ駆動周波数は、完全な突出が意図される場合、およそ1kHz以下である。なお、一旦ヘッドが接触から離れ、アクチュエータまたはヒータが後退すると、接触応答信号は生成されない。したがって、時間応答信号の半分のみがDC成分によって生成された。したがって、別の実施形態では、(その時定数と相対的に)非常に高周波なパルスをアクチュエータまたはヒータに付与することができる。このようなパルスは、電源投入により引起される過熱および電源遮断により引起される冷却(パルス)が、DCの場合と同様に、完全なサイクルとはならないであろうことを意味する。実際に、ヒータは、同等のDC電力で最大のほんのわずかしか突出できない。高周波パルスの効果は、電力付与の面ではDCに近いが、この実施形態の熱的摂動は、オングストロームレベルの変調を生じる。ヒータの突出は、DC電力により引起されるもの、すなわち、パルス列の電力の平均と同等となるであろう。したがって、DC電圧は、デューティサイクル(すなわち、パルスオンの時間頻度)を50%と仮定して、パルスの最大電圧のおよそ0.707倍である。
【0014】
図2は、変換ヘッド118と記憶媒体114との間の接触を検出する方法200を図示する。ブロック202では、入力信号または参照信号(Vref)が、アナログスイッチ125から変換ヘッド内に位置付けられるヒータなどのアクチュエータ128に付与される。アクチュエータ128は、変換ヘッド118と記憶媒体114との間の離間距離を制御するなどのために、変換ヘッドを動かすように構成される。入力信号または参照信号は、選択電力レベル(すなわち、n番目の電力レベル)および既知の周波数を含む。選択電力レベルおよび既知の周波数は、後の使用でのコントローラ158によるアクセスのためにメモリに記憶される。ブロック204では、出力信号(Vsig)が入力信号または参照信号に応答して得られる。出力信号は、以下の式で表わされる。
【0015】
【数1】
式中、Aは振幅であり、ωは周波数であり、tは時間であり、φは相である。入力信号は、以下の式により表わされ得る。
【0016】
【数2】
式中、Bは振幅であり、ω2は周波数であり、tは時間である。
【0017】
ブロック206では、コントローラ158は、アクチュエータに付与される入力信号と同一の既知の周波数または同一の既知の周波数の高調波の出力信号から信号成分を抽出する。図1に図示され、先に述べたように、コントローラ158が既知の周波数を得てそれを記憶するように、駆動クロック周波数がコントローラ158に与えられる。したがって、
【0018】
【数3】
たとえば、振幅および位相の信号成分は、同一の周波数または同一の既知の周波数の高調波の入力信号を用いることにより、出力信号から一定の周波数で抽出できる。出力信号および入力信号の積は、以下の変調された信号を与える。
【0019】
【数4】
第1項はDC成分であり、第2項は、出力信号の周波数の2倍を有する信号である。式4に表わされる得られたDC信号は、DC信号が、出力信号および入力信号の振幅(すなわち、AおよびB)ならびにそれらの間の位相差のみに関連するように、高周波成分を除去することにより復調できる。DC信号の振幅および位相は、第1の参照信号から90°位相がずれた第2の参照信号を用いて分離でき、振幅および位相は、2つのDC出力から計算できる。
【0020】
高周波パルスが設けられる実施形態では、変調振幅は、以下のようにパルシング周波数およびデューティサイクルを変化させることにより調整できる。
【0021】
【数5】
式中、Dはデューティサイクルであり、τは時間または期間である。たとえば、変調振幅は、記憶媒体の表面上に配置される潤滑剤の厚みと近くなるように設定することにより、ヘッドおよび潤滑剤をヒータ接触電力で相互作用させることができる。
【0022】
ブロック208では、コントローラ158は、出力信号から抽出された信号成分が、変換ヘッド118と記憶媒体114との間の接触を示すかどうかを判断する。特に、既知の周波数または既知の周波数の高調波の出力信号の抽出または測定された振幅が、しきい値振幅と比較される。出力信号の抽出された振幅がしきい値振幅よりも小さい場合、方法200はブロック202に戻り、アクチュエータに付与される入力信号の電力レベルが次の電力レベルに増加される。たとえば、電力レベルが1番目の電力レベルに設定された場合、次の電力レベルは2番目の電力レベルである。ブロック202、204、206および208が繰返され、電力レベルは、抽出された振幅が変換ヘッドと記憶媒体との間の接触を示すまで徐々に増加される。入力信号の抽出された振幅がしきい値振幅よりも大きい場合、方法200は次にブロック210に進む。ブロック210では、アクチュエータに付与される入力信号の電力レベルは、変換ヘッドが媒体に接触するしきい値電力レベルである。この情報は、データ記憶装置112の正常動作の間に用いられるようにコントローラ158に記憶できる。言い換えると、コントローラは、アクチュエータ128が変換ヘッドを媒体114に接触させないしきい値電力レベルで電力供給されないように、この情報を用いる。
【0023】
方法200が、変換ヘッド118などの変換ヘッドと記憶媒体114などの記憶媒体との間の接触を正確に判断することができることを説明する以下の実験が展開された。図3は、データ記憶装置312および実験装置の模式図を図示する。データ記憶装置312は、記憶媒体314、媒体314上のトラック320に対してデータを読出および書込可能である変換ヘッド318を支持するサスペンション316を含む。駆動PES信号はこのような基本的な要素レベルでは利用可能でないため、変換ヘッド318に結合されて、オフトラック信号を測定するためのレーザドップラー速度計(LDV)322を含む。さらに変換ヘッド318に結合されて、アコースティックエミッション(AE)センサ324が含まれる。レクロイ(Lecroy)オシロスコープなどのオシロスコープ325は、LDV322およびAEセンサ324から信号を収集する。
【0024】
プログラム可能なファンクションジェネレータ326を用いて、任意の一定の周波数で(変換ヘッド318中の変換素子を作動するように構成されている)アクチュエータ328に電力を供給する。また、ファンクションジェネレータ326は、ロックイン増幅器が参照周波数でLDV応答の振幅を測定するように、ロックイン増幅器330に参照信号を送出する。
【0025】
100Hz、500Hz、190Hz、167Hzおよび162Hzの5つの異なる周波数レベルで、接触の際に適正な量の変調を有する変換ヘッドにより第1の実験を行なった。AEセンサ324は、接触事象を容易に拾うことができ、約同一の電力で検出される。
【0026】
図4は、LDVのオフトラック信号対アクチュエータ電力を図示する。167Hz周波数以外の各周波数でのLDV振幅の急上昇により示されるように、異なる周波数での接触が明らかに見られる。第1の実験では、167Hzの周波数が、回転する回転媒体314の周波数と整合することが認識されるはずである。この周波数でのノイズは、回転媒体の振れである。振幅RMSなどの如何なるドメインアプローチについても、振れノイズはベースラインノイズの一部となるであろう。アルゴリズムは、目標周波数を拾うのに非常に狭いバンドを有する。第1の実験では、アルゴリズムは、スピンドル振れからたった5Hzだけ離れた(162Hzで)信号を有効に回復させた。より高い周波数は、急勾配(より高いSNR)を与えていることも見られる。このような高いSNRは、LDV322が、変位でなく速度を測定していることに起因され得る。PES信号がデータ記憶装置312で用いられたとしても、勾配は同一であるはずである。しかしながら、より高い周波数は、接触を検出するときの実際のヘッド対媒体接触時間を減少させる。
【0027】
第2の実験は、高圧用に設計された変換ヘッド(すなわち、接触記録を超えた(BCR))により行なわれた。このような変換ヘッドは、記憶媒体との接触の際の変調を除去するように設計された。図4に図示するAEセンサ324は、変調がないため、接触を拾うのが困難な時間を有する。この実験では、アクチュエータ328などのアクチュエータはおよそ1kHzで駆動された。図2に図示する方法は、それでも接触を検出し得る。
【0028】
図2に図示する方法(すなわち、LDVロックイン)および他の方法のAE/LDV RMSについて、信号対ノイズ比(SNR)を計算した。図5はその差を図示する。AE RMSおよびLDV RMSの両方が、図2に図示する方法と比較して非常に低いSNRを有していた。
【0029】
図2に図示する接触検出手法は、単純に電力を増加する代わりに、変換ヘッド内に位置付けられるアクチュエータに既知の周波数波信号を付与する。入力信号に応答するdPESまたは他の読出信号をコントローラ158により拾うことができる。行なった実験は、接触検出手法が通常のdPES接触検出手法よりもよいSNRを有し得ることを示した。接触検出手法は、非常に低い変調の変換ヘッド上であれば、よりよい電流変調に基づく接触検出を示していた可能性もある。DC電力または高周波パルスの代わりにAC波形が付与されると、変換ヘッドの記憶媒体との接触時間はずっと少ないため、その手法により、より少ない接触誘発摩耗が引き起こされる可能性もある。接触検出手法は、駆動または要素レベルで実施され得る。
【0030】
主題を構造的な特徴および/または方法論的な作用に特定的な文言で説明したが、添付の請求項に定義される主題は、上記の特定の特徴または作用に必ずしも限定されないことが理解される。むしろ、上記の特定の特徴および作用は、請求項を実施する例示的な形態として開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】米国特許第6008640号明細書
【特許文献2】米国特許第6097559号明細書
【特許文献3】米国特許第6822821号明細書
【特許文献4】米国特許第6967805号明細書
【特許文献5】米国特許第7038875号明細書
【特許文献6】米国特許第7158325号明細書
【特許文献7】米国特許第7564649号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0035881号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0291401号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0253021号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2009/0086367号明細書
図1
図2
図3
図4
図5