特許第6139451号(P6139451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139451
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】除電装置、及び、それを備えた搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20170522BHJP
   B65H 5/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H05F3/04 C
   B65H5/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-68999(P2014-68999)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-191813(P2015-191813A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】394018225
【氏名又は名称】フィーサ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 進
(72)【発明者】
【氏名】奥山 明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 多通夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−213450(JP,A)
【文献】 特開2005−197095(JP,A)
【文献】 特開昭63−132270(JP,A)
【文献】 特開昭62−153972(JP,A)
【文献】 特開2011−54282(JP,A)
【文献】 特開2009−9862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
H01T 19/00−19/04
H01T 23/00
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板の表面部に支持された放電極と、前記基板に支持されて前記基板を加熱する加熱部と、を備え、
前記放電極からの放電によりイオン化物質を生成して除電対象物を除電する除電装置であって、
絶縁性材料にて形成されて熱伝導率が前記基板の熱伝導率よりも大きい伝熱体が、前記基板の表面部における設定範囲の全面に亘って前記基板に接触する状態で設けられ、
前記設定範囲は、前記加熱部に対応する部分を含みかつ前記放電極に対応する部分の周囲に設定されている除電装置。
【請求項2】
前記放電極が、連続する線状に形成され、前記加熱部が線状に形成されて前記放電極に沿って設けられている請求項1に記載の除電装置。
【請求項3】
前記基板の表面部を覆い且つ前記放電極に対応する位置に開口を備えた金属製の筐体部が設けられ、
前記伝熱体が前記筐体部に接触する状態で設けられている請求項1又は2に記載の除電装置。
【請求項4】
前記筐体部が、ステンレス鋼により構成されている請求項3に記載の除電装置。
【請求項5】
前記絶縁性材料が、前記基板の表面部から垂直方向に離れる方向での熱伝導率が1.0W/m・K以上2.0W/m・K以下の樹脂であり、
前記基板が、熱伝導率が0.1W/m・K以上0.9W/m・K以下の材質にて構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の除電装置。
【請求項6】
前記基板、前記伝熱体、及び前記加熱部が一体に組み付けられた除電ユニットを備えている請求項1〜5の何れか1項に記載の除電装置。
【請求項7】
板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラを搬送方向に複数並ぶ状態で備えて前記搬送物を搬送する搬送装置であって、
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の除電装置が、搬送方向で複数の前記搬送ローラの間に取付けられ、
前記除電装置は、前記搬送ローラに支持されている前記搬送物の下方において近接する位置に取り付けられている搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の基板の表面部に支持された放電極と、前記基板に支持されて前記基板を加熱する加熱部と、を備え、前記放電極からの放電によりイオン化物質を生成して除電対象物を除電する除電装置、及び、それを備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電によりイオン化物質を生成する放電極には、当該放電極からの放電に伴って不純物が付着する。特開平5−166578号公報(特許文献1)には、放電極に不純物が付着すると、その不純物が空気中の水分を吸収して放電極の放電能力が低下することが開示されている。また、基板の材質によっては、基板が空気中の水分を吸収してしまい、これにより放電極の放電能力が低下する虞がある。さらに、上記不純物は、放電極の周囲の空気の湿度が高い場合に付着し易く、放電極の放電能力の低下が発生し易いことが経験的に分かっている。このような放電極の放電能力の低下は、除電装置の除電能力の低下につながるという問題がある。この問題に対し、特許文献1には、基板を加熱する線状の加熱部を平板状の基板の裏面部に取り付けて、放電極を加熱して不純物の結晶を分解除去する技術が開示されている。特許文献1の技術では、不純物の分解除去に加え、加熱部によって放電極の周囲の空気を加熱して空気の湿度を低下させることによって、不純物の放電極への付着を抑制することで、放電極の放電能力の低下を抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−166578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、基板の裏面に線状のヒーターパターン6を蛇行状に配置して基板を加熱するようにしている。このような構成では、ヒーターパターン6による熱が加熱部の存在部分に集中するような熱分布となり、線状のヒーターパターン6の存在部分は十分な加熱が可能であるものの、基板の面方向でヒーターパターン6から離れた部分では加熱が十分に行えない虞がある。
その為、基板における比較的温度の低い部分で十分な低湿度化が行えず、基板による水分の吸収や不純物結晶の付着、さらには、付着した不純物結晶の水分の吸収が発生し、放電極の放電能力の低下を適切に防止できない虞がある。
そこで、例えば、線状の加熱部を、放電極の存在範囲の全体に満遍なく稠密に存在するように蛇行させることも考えられるが、このような構成とすると、加熱部の構成が複雑になる虞がある。
【0005】
そこで、加熱部の構成を簡素なものとしながら、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる除電装置、及び、そのような除電装置を備えた搬送装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る除電装置は、平板状の基板の表面部に支持された放電極と、前記基板に支持されて前記基板を加熱する加熱部と、を備え、前記放電極からの放電によりイオン化物質を生成して除電対象物を除電するものであって、
絶縁性材料にて形成されて熱伝導率が前記基板の熱伝導率よりも大きい伝熱体が、前記基板の表面部における設定範囲の全面に亘って前記基板に接触する状態で設けられ、前記設定範囲は、前記加熱部に対応する部分を含みかつ前記放電極に対応する部分の周囲に設定されている点を特徴とする。
【0007】
上記したように、放電極を支持している基板を加熱部にて加熱することで、放電極周辺の空気を加熱し湿度を低下させて、基板による水分吸収や放電極への不純物の付着を抑制し、放電極の放電能力の低下を防止することができる。
【0008】
しかも、基板の熱伝導率よりも大きい伝熱体が、基板の表面部における、加熱部に対応する部分を含みかつ放電極に対応する部分の周囲に設定された設定範囲の全面に亘って、基板に接触する状態で設けられている。したがって、例えば、加熱部を直線状のヒーターとする等、簡易な構成としても、加熱部が発生する熱を伝熱体の基板表面部との接触面の全体を用いて伝達することができ、基板の表面部における設定範囲の全体を極力均一に加熱することができる。このため、放電極の周囲の空気の湿度を、極力広い範囲に亘って低下させることができる。
【0009】
したがって、加熱部の構成を簡素なものとしながら、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる除電装置を提供できる。
【0010】
本発明に係る除電装置においては、前記放電極が、連続する線状に形成され、前記加熱部が線状に形成されて前記放電極に沿って設けられていることが好ましい。
【0011】
すなわち、放電極が線状に構成されるので、イオン化物質が、線状の放電極に沿って生成される。したがって、局所的に設けられた放電極によってイオン化物質を生成する場合に比べて、広範囲にて均一にイオン化物質を生成することができ、除電対象物における除電対象箇所が一定の広がりを有する場合においても、偏りなく除電作用を発揮することができる。
そして、加熱部が、線状に形成された放電極に沿って設けられているので、線状の放電極の全体に亘って、その周囲の雰囲気の湿度を低下させることができ、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる。
【0012】
本発明に係る除電装置においては、前記基板の表面部を覆い且つ前記放電極に対応する位置に開口を備えた金属製の筐体部が設けられ、前記伝熱体が前記筐体部に接触する状態で設けられていることが好ましい。
【0013】
除電対象物は単一極性に大きく帯電している場合があるため、その除電対象物の電荷で生じた電界の影響により、放電極を含めた回路に寄生している浮遊容量成分に電位のオフセットが生じる。回路内が基準電位に対しオフセットすることは、基準電位との電位差をもってイオン化物質を生成している仕組みにおいて、その生成量に不安定な要因が生じることになり、イオンバランスや除電性能に影響を及ぼす虞がある。
そこで、放電極に対応する位置に開口を設けた金属製の筐体部にて基板の表面部を覆うことで、除電対象物から生じる電界により放電極の電位が影響を受ける事象を抑制することができる。
このような構成において、不純物結晶は、放電極だけでなく、金属製の筐体部における放電極に近接する部分にも付着する可能性があるが、伝熱体を筐体部に接触する状態で設ければ、加熱部の熱を筐体部に良好に伝達することができるため、筐体部周辺の雰囲気の湿度を低減することができ、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる。
【0014】
本発明に係る除電装置においては、前記筐体部が、ステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0015】
すなわち、放電極からの放電に伴って放電極自体や筐体部に付着する不純物は、例えば硝酸アンモニウムや硫酸アンモニウム等が混入した結晶等、金属に対する腐食性を有する物質である可能性がある。
そこで、筐体部を、耐腐食性が比較的高いステンレス鋼により構成することで、仮に不純物が付着したとしても、筐体部が腐食する事態を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る除電装置においては、前記絶縁性材料が、前記基板の表面部から垂直方向に離れる方向での熱伝導率が1.0W/m・K以上2.0W/m・K以下の樹脂であり、 前記基板が、熱伝導率が0.1W/m・K以上0.9W/m・K以下の材質にて構成されていることが好ましい。
【0017】
すなわち、伝熱体が、基板よりも熱伝導率の大きい絶縁性材料で構成されているから、加熱部から生じた熱が基板から熱伝導率の大きな伝熱体に移動し易い。この為、基板を加熱部によって直接加熱する状態を抑制しつつ、当該基板を伝熱体にて加熱し易いものとなる。
【0018】
本発明に係る除電装置においては、前記基板、前記伝熱体、及び前記加熱部が一体に組み付けられた除電ユニットを備えていることが好ましい。
【0019】
すなわち、基板、伝熱体、及び加熱部が一体に組み付けられた除電ユニットを取り付けることで、取付対象箇所への除電装置の取付け作業の容易化を図ることができる。
また、例えばメンテナンス時等において、取付対象箇所から除電装置を取外したい場合は、当該除電ユニットごと取外すことで、簡単に除電装置を取付対象箇所から取外すことができる。このように、取付け及び取外しが簡単に行える除電装置となる。
【0020】
本発明に係る搬送装置は、板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラを搬送方向に複数並ぶ状態で備えて前記搬送物を搬送するものであって、
前記除電装置が、搬送方向で複数の前記搬送ローラの間に取付けられ、前記除電装置は、前記搬送ローラに支持されている前記搬送物の下方において近接する位置に取り付けられていることが好ましい。
【0021】
すなわち、板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラにて当該板状の搬送物を搬送するように構成した場合、搬送ローラと搬送物の下面との摩擦により、搬送物(特にその下面側)が帯電する虞がある。
上記構成によれば、搬送物の下方において近接する位置に除電装置が備えられているので、搬送物の下面側が帯電したとしても、当該搬送物を適切に除電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】搬送装置の要部側面図
図2】搬送装置の要部平面図
図3】除電ユニットの全体斜視図
図4】放電極基板及び接続用基板の全体斜視図
図5図4におけるV−V方向矢視図
図6図4におけるVI−VI方向矢視図
図7】加熱部の配置パターンを示す図
図8】伝熱体の全体斜視図
図9】筐体部の全体斜視図
図10】除電ユニットの組立て構成図
図11】除電ユニットの長手方向視断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る除電装置を装備した搬送装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、搬送装置1は、回転軸1Jと一体に回転自在に支持枠体1Wに支持されて、液晶用のガラス基板等の板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラ1Rを、搬送方向に複数並ぶ状態で備えて構成されている。
夫々の回転軸1Jには、スプロケット1Sが一体回転自在に取り付けられ、隣接する回転軸1J同士は、複数のスプロケット1Sに亘って巻き掛けられたベルト(図示省略)にて、連動して回転するように構成されている。また、回転軸1Jのうちの1つ又は複数に駆動用モータの減速機の出力軸が連結されている。搬送ローラ1Rは、外周部がゴムやウレタン等摩擦係数の大きな素材にて形成されており、駆動用モータを作動させて搬送ローラ1Rを回転させることで、当該搬送ローラ1Rと板状の搬送物の下面との摩擦により板状の搬送物を搬送することができる。
【0024】
支持枠体1Wには、所定の間隔を開けて除電ユニットUが装備されている。除電ユニットUは、後述する放電極からの放電によりイオン化物質を生成して、除電対象物を除電する除電装置を備えており、図3に示すように棒状に形成されている。この除電ユニットUは、支持枠体1Wにおいて搬送方向で複数の搬送ローラ1Rの間の位置に形成された取付用溝1Mに嵌合させる形態で備えられる。
【0025】
次に、除電ユニットUの構成を説明する。除電ユニットUは、図10に示すように、放電極基板30及び接続基板40、伝熱体20、並びに、上部カバー部10、を備えている。放電極基板30は、図4に示すように、平板状でかつ長尺状に形成され、その表面部に、その長手方向に沿う金属製の放電極Dと、放電極基板30を加熱する電熱ヒーターHを備えている。
【0026】
放電極Dは直線状に連続して形成されており、電熱ヒーターHは、図4及び図7(a)に示すように、平面視で放電極基板30の長手方向に直交する方向において線状の放電極Dの両側部に沿う部分(非横断部分と称する)と、放電極Dの長手方向両端部において平面視で放電極基板30の長手方向に直交する方向で放電極Dを横切る部分(横断部分と称する)と、を備える線状に形成されている。電熱ヒーターHにおける放電極Dの側部に沿う部分の一方側の長手方向中央部には、当該電熱ヒーターHの高圧側極HC1と低圧側極HC2とが形成されている。
【0027】
図5及び図6は、放電極基板30の長手方向視断面図であり、図5は、非横断部分である図4のV−V矢視断面を、また、図6は、非横断部分である図4のVI−VI矢視断面を示している。
【0028】
放電極基板30は、図5、6に示すように、ガラスエポキシ基板層33(ガラスエポキシ基板33B)と、ヒーター層32と、放電極層31とを備えている。
放電極層31は、図5及び6に示すように、上面に放電極Dが取り付けられ、裏面に放電極Dからコロナ放電の対象電極となる誘導極Yが取り付けられたマイカ基層31Bと、マイカ基層31Bの上面を放電極Dの上端が露出する形態で覆う上部コーティング層31Aと、マイカ基層31Bの下面を誘導極Yを含め全面的に覆う下部コーティング層31Cとを備えている。
【0029】
ヒーター層32は、非横断部分においては、図5(a)に示すように、下面に電熱ヒーターHが取り付けられたPET製のヒーター母材層32Bと、ヒーター母材層32Bの下面を電熱ヒーターHを含め全面的に覆うカバー層32Cとを備えている。
なお、ヒーター層32における横断部分においては、図6(a)に示すように、ヒーター母材層32Bの上面側に、放電極層31における誘導極Yとの間での短絡を防止するポリイミド絶縁テープ32Aが貼り付けられる。
【0030】
そして、放電極基板30は、図5(b)、図6(b)に示すように、上記のように構成された放電極層31と、ヒーター層32と、ガラスエポキシ基板層33とを、上から放電極層31、ヒーター層32、ガラスエポキシ基板層33の順に接着剤等にて貼り合せて一体的に構成されている。
本実施形態においては、放電極基板30が本発明における基板に相当し、放電極Dが本発明における放電極に相当し、電熱ヒーターHが本発明における加熱部に相当する。
すなわち、除電装置が、平板状の放電極基板30の表面部に支持された放電極Dと、放電極基板30に支持されて放電極基板30を加熱する電熱ヒーターHと、を備えている。なお、放電極層31と、ヒータ層32の間に、熱伝導性の優れた絶縁フィルムなどを貼り合わせることで、より均一に安定して放電極層31を加熱することができる構成を取ることもできる。
【0031】
接続基板40は、放電極基板30とほぼ同じ寸法に形成されており、放電極D又は電熱ヒーターHに供給する電力の入出口として放電極基板30の裏面に形成される被供給側接点(図示省略)に当接自在な供給側接点40Sを備えている。また、接続基板40の両端部には、隣接する接続基板40同士を電気的に接続するフラット型のコネクタ40Cが備えられている。コネクタ40C同士はフラットケーブルで相互に接続可能に構成されている。
【0032】
伝熱体20は、絶縁性材料にて、図8に示すように、偏平且つ長尺の棒状体に形成され、上下に貫通する開口20Hが形成されている。伝熱体20の形状は、放電極基板30の上面側に重ねた状態において、電熱ヒーターHが設けられる部分の全面に亘って放電極基板30に接触し、かつ、放電極Dに対応する位置に開口20Hが位置する形状としている。なお、図8の伝熱体20は、放電極基板30の2つ分の長さを有し、長手方向に2つ並べた放電極基板30を覆うように形成されているが、単一の放電極基板30を覆うもの、又は3つ以上の放電極基板30を覆うものとしてもよい。また、伝熱体20の開口20Hは、長手方向視での断面形状において、鉛直部22Hの上端に湾曲形状のアール部22Rが連続して形成されている。
【0033】
伝熱体20を構成する絶縁性材料は、放電極基板30の表面部から垂直方向に離れる方向での熱伝導率が、放電極基板30のガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率(0.1W/m・K以上0.8W/m・K以下)よりも大きい絶縁性材料(1.0W/m・K以上2.0W/m・K以下)とする。本実施形態においては、熱伝導性樹脂を用いており、伝熱体20を構成する絶縁性材料の熱伝導率が、ガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率の2倍以上、好ましくは10倍以上とするように、絶縁性材料の材質を選択している。
【0034】
すなわち、絶縁性材料にて形成されて熱伝導率が放電極基板30の熱伝導率よりも大きい伝熱体20が、放電極基板30の表面部における設定範囲の全面に亘って放電極基板30に接触する状態で設けられ、設定範囲は、電熱ヒーターHに対応する部分を含みかつ放電極Dに対応する部分の周囲に設定されている。
【0035】
上部カバー部10は、図9に示すように、ステンレス鋼板(本実施形態においては、SUS304を使用)をコ字状に折り曲げ加工して形成され、上面部に長手方向に沿う長孔部11Hが形成されている。この長孔部11Hは、放電極Dに対応する位置に形成されており、かつ、伝熱体20の開口20Hの周囲の出隅部が嵌まり込むように構成されている。また、上部カバー部10の側面部には、長手方向に離間してボルト孔12Hが形成されている。本実施形態においては、上部カバー部10が本発明の筐体部に相当する。
【0036】
図10及び図11に、除電ユニットUの組み立て構成を示す。除電ユニットUを支持する下部カバー部51に支持体50を固定し、支持体50に接続基板40を支持させる。支持体50においてボルト孔12Hに対応する位置には、ボルトUBが螺合される雌ねじ部が設けられる。次に、接続基板40の上部に放電極基板30を取り付ける。接続基板40には、図示はしていないが、放電極Dに高周波交流電圧を供給する放電極用電源制御部、及び、ヒーター用電源制御部からの電源線が接続されるようになっている。そして、接続基板40の上部に放電極基板30を取り付けることで接続基板40の供給側接点40Sに放電極基板30の被供給側接点が当接することによって、放電極基板30における放電極D、及び電熱ヒーターHに電力が供給されるようになっている。
【0037】
さらに、放電極基板30の上面側に伝熱体20を重ねて取付け、その上部を上部カバー部10で覆う形態で、上部カバー部10のボルト孔12HにボルトUBを螺合させる。これによって、支持体50と上部カバー部10とが固定される。このとき、伝熱体20の外面22が、上部カバー部10の内面12の少なくとも上面部12Nに接触する状態となる。すなわち、伝熱体20が上部カバー部10に接触する状態で設けられている。
このようにして、放電極基板30、伝熱体20、及び電熱ヒーターHが一体に組み付けられた除電ユニットUが形成される。なお、除電ユニットUは、複数のユニット部分U1、U2を長手方向に連結して形成することができる。
【0038】
したがって、電熱ヒーターHに電力が供給されて電熱ヒーターHが発熱すると、放電極Dに対応する部分の周囲において放電極基板30に面接触する状態で設けられた伝熱体20が全熱せられて、放電極基板30における放電極D周囲の空気を極力広い範囲で加熱し、湿度を低下させることができる。それとともに、伝熱体20は、上部カバー部10に接触しているので、上部カバー部10の放電極Dに近接する部分も加熱されることとなり、上部カバー部10の放電極Dに近接する部分に近接する空気を加熱してその湿度を低下させることができる。これらの作用により、放電極D、及び、上部カバー部10への不純物の付着を抑制でき、放電極Dの放電能力の低下を抑制できる。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、除電装置を板状の搬送物を搬送する搬送装置1に取り付けて使用する構成を例示したが、本発明の除電装置は、板状の搬送物以外の種々の搬送物を搬送する搬送装置に取り付ける構成としてもよい。また、搬送装置ではなく移動体に取付け、除電対象物に対して移動しながら除電を行う装置に用いる等、その設置対象は種々変更可能である。
【0040】
(2)上記実施形態では、放電極基板30、伝熱体20、及び電熱ヒーターHが一体に組み付けられた除電ユニットUを備える構成を説明したが、放電極基板30、伝熱体20、及び電熱ヒーターHをユニット化せず、各別に搬送装置に取り付ける構成としてもよい。
【0041】
(3)上記実施形態では、伝熱体20を構成する絶縁性材料を、放電極基板30の表面部から垂直方向に離れる方向での熱伝導率がガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率(0.1W/m・K以上0.9W/m・K以下)よりも大きい絶縁性材料(1.0W/m・K以上2.0W/m・K以下)とする構成を説明したが、絶縁性材料は、放電極基板30のガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率よりも大きいものであれば、上記以外のものを採用してもよい。また、上記実施形態では、伝熱体20を構成する絶縁性材料の熱伝導率が、ガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率の2倍以上、好ましくは10倍以上となるように絶縁性材料の材質を選択したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、絶縁性材料の材質を、当該絶縁性材料の熱伝導率がガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率の1倍を超え2倍未満となるものとすることもでき、また、絶縁性材料の熱伝導率がガラスエポキシ基板33Bの熱伝導率の10倍を超えるものとすることもできる。
【0042】
(4)上記実施形態では、放電極Dを、連続する線状に形成する例を示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、複数の放電極を離間状態で並べて備える形態としてもよい。この場合、電熱ヒーターHは、複数の放電極の夫々又は全体を包囲する状態で形成し、伝熱体は、基板の表面部におけるその電熱ヒーターHに対応する部分を含みかつ放電極に対応する部分の周囲において、放電極基板30に面接触する状態で備えることとなる。
【0043】
(5)上記実施形態では、電熱ヒーターHを、図7(a)に示すように、電熱ヒーターHにおける放電極Dの側部に沿う部分の一方側の長手方向中央部に、高圧側極HC1及び低圧側極HC2を形成する例を示したが、電熱ヒーターHの引き回しパターンは上記に限定されるものではなく、例えば、図7(b)に示すように、放電極Dの両側部に沿う部分は双方とも連続する線状に形成し、放電極Dの一方側の端部において、放電極Dの両側部に沿う一対の部分の夫々に対応して高圧側極HC1及び低圧側極HC2を形成してもよい。また、図7(c)に示すように、電熱ヒーターHを環状に形成し、その両端に高圧側極HC1、及び低圧側極HC2を形成する形態でもよい。
【0044】
(6)上記実施形態では、上部カバー部10を、ステンレス鋼板(SUS304)にて構成する例を示したが、上部カバー部10はSUS304以外のステンレス鋼板、又はステンレス以外の耐腐食性金属板を材料として構成してもよい。また、腐食性材料に耐腐食性表面加工を施したものにて形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 搬送装置
1R 搬送ローラ
10 筐体部
11H 筐体部の開口
20 伝熱体
30 基板
D 放電極
H 加熱部
U 除電ユニット
図1
図2
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図5
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図11