【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、基板の裏面に線状のヒーターパターン6を蛇行状に配置して基板を加熱するようにしている。このような構成では、ヒーターパターン6による熱が加熱部の存在部分に集中するような熱分布となり、線状のヒーターパターン6の存在部分は十分な加熱が可能であるものの、基板の面方向でヒーターパターン6から離れた部分では加熱が十分に行えない虞がある。
その為、基板における比較的温度の低い部分で十分な低湿度化が行えず、基板による水分の吸収や不純物結晶の付着、さらには、付着した不純物結晶の水分の吸収が発生し、放電極の放電能力の低下を適切に防止できない虞がある。
そこで、例えば、線状の加熱部を、放電極の存在範囲の全体に満遍なく稠密に存在するように蛇行させることも考えられるが、このような構成とすると、加熱部の構成が複雑になる虞がある。
【0005】
そこで、加熱部の構成を簡素なものとしながら、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる除電装置、及び、そのような除電装置を備えた搬送装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る除電装置は、平板状の基板の表面部に支持された放電極と、前記基板に支持されて前記基板を加熱する加熱部と、を備え、前記放電極からの放電によりイオン化物質を生成して除電対象物を除電するものであって、
絶縁性材料にて形成されて熱伝導率が前記基板の熱伝導率よりも大きい伝熱体が、前記基板の表面部における設定範囲の全面に亘って前記基板に接触する状態で設けられ、前記設定範囲は、前記加熱部に対応する部分を含みかつ前記放電極に対応する部分の周囲に設定されている点を特徴とする。
【0007】
上記したように、放電極を支持している基板を加熱部にて加熱することで、放電極周辺の空気を加熱し湿度を低下させて、基板による水分吸収や放電極への不純物の付着を抑制し、放電極の放電能力の低下を防止することができる。
【0008】
しかも、基板の熱伝導率よりも大きい伝熱体が、基板の表面部における、加熱部に対応する部分を含みかつ放電極に対応する部分の周囲に設定された設定範囲の全面に亘って、基板に接触する状態で設けられている。したがって、例えば、加熱部を直線状のヒーターとする等、簡易な構成としても、加熱部が発生する熱を伝熱体の基板表面部との接触面の全体を用いて伝達することができ、基板の表面部における設定範囲の全体を極力均一に加熱することができる。このため、放電極の周囲の空気の湿度を、極力広い範囲に亘って低下させることができる。
【0009】
したがって、加熱部の構成を簡素なものとしながら、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる除電装置を提供できる。
【0010】
本発明に係る除電装置においては、前記放電極が、連続する線状に形成され、前記加熱部が線状に形成されて前記放電極に沿って設けられていることが好ましい。
【0011】
すなわち、放電極が線状に構成されるので、イオン化物質が、線状の放電極に沿って生成される。したがって、局所的に設けられた放電極によってイオン化物質を生成する場合に比べて、広範囲にて均一にイオン化物質を生成することができ、除電対象物における除電対象箇所が一定の広がりを有する場合においても、偏りなく除電作用を発揮することができる。
そして、加熱部が、線状に形成された放電極に沿って設けられているので、線状の放電極の全体に亘って、その周囲の雰囲気の湿度を低下させることができ、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる。
【0012】
本発明に係る除電装置においては、前記基板の表面部を覆い且つ前記放電極に対応する位置に開口を備えた金属製の筐体部が設けられ、前記伝熱体が前記筐体部に接触する状態で設けられていることが好ましい。
【0013】
除電対象物は単一極性に大きく帯電している場合があるため、その除電対象物の電荷で生じた電界の影響により、放電極を含めた回路に寄生している浮遊容量成分に電位のオフセットが生じる。回路内が基準電位に対しオフセットすることは、基準電位との電位差をもってイオン化物質を生成している仕組みにおいて、その生成量に不安定な要因が生じることになり、イオンバランスや除電性能に影響を及ぼす虞がある。
そこで、放電極に対応する位置に開口を設けた金属製の筐体部にて基板の表面部を覆うことで、除電対象物から生じる電界により放電極の電位が影響を受ける事象を抑制することができる。
このような構成において、不純物結晶は、放電極だけでなく、金属製の筐体部における放電極に近接する部分にも付着する可能性があるが、伝熱体を筐体部に接触する状態で設ければ、加熱部の熱を筐体部に良好に伝達することができるため、筐体部周辺の雰囲気の湿度を低減することができ、放電極における放電能力の低下を適切に抑制できる。
【0014】
本発明に係る除電装置においては、前記筐体部が、ステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0015】
すなわち、放電極からの放電に伴って放電極自体や筐体部に付着する不純物は、例えば硝酸アンモニウムや硫酸アンモニウム等が混入した結晶等、金属に対する腐食性を有する物質である可能性がある。
そこで、筐体部を、耐腐食性が比較的高いステンレス鋼により構成することで、仮に不純物が付着したとしても、筐体部が腐食する事態を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る除電装置においては、前記絶縁性材料が、前記基板の表面部から垂直方向に離れる方向での熱伝導率が1.0W/m・K以上2.0W/m・K以下の樹脂であり、 前記基板が、熱伝導率が0.1W/m・K以上0.9W/m・K以下の材質にて構成されていることが好ましい。
【0017】
すなわち、伝熱体が、基板よりも熱伝導率の大きい絶縁性材料で構成されているから、加熱部から生じた熱が基板から熱伝導率の大きな伝熱体に移動し易い。この為、基板を加熱部によって直接加熱する状態を抑制しつつ、当該基板を伝熱体にて加熱し易いものとなる。
【0018】
本発明に係る除電装置においては、前記基板、前記伝熱体、及び前記加熱部が一体に組み付けられた除電ユニットを備えていることが好ましい。
【0019】
すなわち、基板、伝熱体、及び加熱部が一体に組み付けられた除電ユニットを取り付けることで、取付対象箇所への除電装置の取付け作業の容易化を図ることができる。
また、例えばメンテナンス時等において、取付対象箇所から除電装置を取外したい場合は、当該除電ユニットごと取外すことで、簡単に除電装置を取付対象箇所から取外すことができる。このように、取付け及び取外しが簡単に行える除電装置となる。
【0020】
本発明に係る搬送装置は、板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラを搬送方向に複数並ぶ状態で備えて前記搬送物を搬送するものであって、
前記除電装置が、搬送方向で複数の前記搬送ローラの間に取付けられ、前記除電装置は、前記搬送ローラに支持されている前記搬送物の下方において近接する位置に取り付けられていることが好ましい。
【0021】
すなわち、板状の搬送物を下方から支持する搬送ローラにて当該板状の搬送物を搬送するように構成した場合、搬送ローラと搬送物の下面との摩擦により、搬送物(特にその下面側)が帯電する虞がある。
上記構成によれば、搬送物の下方において近接する位置に除電装置が備えられているので、搬送物の下面側が帯電したとしても、当該搬送物を適切に除電することができる。