特許第6139463号(P6139463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139463
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/02 20060101AFI20170522BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   F02B37/02 C
   F02B39/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-104089(P2014-104089)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-218683(P2015-218683A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前田 治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】米澤 幸一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0047605(US,A1)
【文献】 特開平06−317170(JP,A)
【文献】 特開2000−199427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 13/00−15/12、23/00−25/36
F01N 1/00− 1/24、 5/00− 5/04、
13/00−99/00
F02B 33/00−41/10
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒が形成されたシリンダーブロックと、前記複数の気筒によって形成された各燃焼室に接続して排気を合流させるヘッド内マニホールド及びヘッド内冷却水通路が形成されたシリンダーヘッドと、前記シリンダーヘッドの排気出口に接続されたインレットポートを有する過給機と、を備え、
前記複数の気筒の中心軸と直交する平面における前記複数の気筒の中心を通る直線の延伸方向を気筒配列方向としたとき、前記排気出口が、前記気筒配列方向において最も外側に位置する2つの気筒のうちの一方の気筒に近くなるように、前記気筒配列方向の一方に偏った位置に設けられている内燃機関であり、
前記インレットポートにおける同インレットポートの中心軸線よりも前記気筒配列方向の前記一方の気筒側に位置する第1の壁面に、前記中心軸線を挟んで同第1の壁面とは反対側に位置する第2の壁面よりも厚い厚肉部が設けられており、同第1の壁面における前記厚肉部よりも排気上流側の部位に同厚肉部よりも薄い薄肉部が設けられている内燃機関。
【請求項2】
前記インレットポートは、フランジ部を備え、同フランジ部を介して前記シリンダーヘッドに接続され、
前記薄肉部は、前記フランジ部よりも排気下流側に、前記フランジ部と隣接して設けられている
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記インレットポートにおける前記薄肉部と前記厚肉部との間の壁面は、前記厚肉部における前記インレットポートの管厚と等しくなるまで前記薄肉部側から前記厚肉部側に向かって徐々に厚くされている
請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記中心軸線と垂直な断面内で比較すると、
前記インレットポートの管厚は、前記厚肉部で最も厚くなっている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記中心軸線と垂直な断面内で比較すると、
前記インレットポートの管厚は、前記薄肉部で最も薄くなっている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、排気流路を形成する壁面は高温の排気に曝される。高温の排気に曝されて温度が高くなると、壁面の強度が低下する。そこで、こうした強度低下による亀裂等の発生を抑制するために、排気流路を形成する壁面を補強する構成が従来から知られている。
【0003】
たとえば特許文献1には、排気マニホールドと一体成型されたタービンハウジングを備える過給機が開示されているが、こうした過給機では、排気マニホールドの集合部からタービンスクロール流路を形成する部分までの連続部分、すなわち過給機のインレットポートが特に高温になりやすい。そこで、この特許文献1の過給機では、高温になりやすいインレットポートの熱膨張による歪みを抑制するため、タービンハウジングから排気マニホールドまで連続したリブを外壁に延設し、インレットポートの剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013‐189921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているリブは、タービンハウジングから排気マニホールドまで連続して外壁に設けられている。そのため、特許文献1の過給機では、インレットポートの剛性が一様に向上している。ところで、過給機は、当該過給機よりも排気下流側に接続される触媒コンバータ等の周辺部材とシリンダーヘッドとの間に配設されている。そのため、過給機のインレットポートの剛性を一様に高めると、インレットポートが熱膨張した際のインレットポート自体の歪みは抑制されるが、熱膨張による伸びの影響が周辺部材に作用しやすくなり、周辺部材の歪みがより大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気によって高温にされる過給機のインレットポートの強度確保と、過給機に接続された周辺部材の保護とを両立することのできる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するための内燃機関は、複数の気筒が形成されたシリンダーブロックと、前記複数の気筒によって形成された各燃焼室に接続して排気を合流させるヘッド内マニホールド及びヘッド内冷却水通路が形成されたシリンダーヘッドと、前記シリンダーヘッドの排気出口に接続されたインレットポートを有する過給機と、を備え、前記複数の気筒の中心軸と直交する平面における前記複数の気筒の中心を通る直線の延伸方向を気筒配列方向としたとき、前記排気出口が、前記気筒配列方向において最も外側に位置する2つの気筒のうちの一方の気筒に近くなるように、前記気筒配列方向の一方に偏った位置に設けられている内燃機関であり、前記インレットポートにおける同インレットポートの中心軸線よりも前記気筒配列方向の前記一方の気筒側に位置する第1の壁面に、前記中心軸線を挟んで同第1の壁面とは反対側に位置する第2の壁面よりも厚い厚肉部が設けられており、同第1の壁面における前記厚肉部よりも排気上流側の部位に同厚肉部よりも薄い薄肉部が設けられていることをその要旨とする。
【0008】
上記構成では、シリンダーヘッドの排気出口が、気筒配列方向の一方に偏った位置に設けられている。そのため、ヘッド内マニホールドにおける集合部に繋がる各枝管の傾斜がそれぞれ異なり、各枝管を通じてインレットポートに入射する排気の入射角度が、枝管毎に異なっている。
【0009】
そして、各枝管を通じてインレットポートに入射する排気のうち、気筒配列方向における最も外側に位置する2つの気筒のうち排気出口から遠い方の気筒から延びる枝管を通じて入射する排気は、他の枝管から入射する排気に比べて垂直に近い角度でインレットポートの壁面に衝突することになる。その結果、この枝管を通じて入射する排気が衝突する部分では壁面の温度が特に高くなりやすい。
【0010】
これに対して、上記構成によれば、気筒配列方向においてインレットポートの中心軸線を挟んで上記排気出口から遠い方の気筒とは反対側に位置するインレットポートの第1の壁面に、厚肉部が設けられていることになる。そのため、特に温度が高くなりやすい部分を補強することができる。また、第1の壁面における厚肉部よりも排気上流側には厚肉部よりも薄い薄肉部が設けられているため、インレットポートが熱膨張することに伴う応力が剛性の低い薄肉部に集中するようになる。すなわち、第1の壁面全体を補強する場合と異なり、応力に起因する歪みを薄肉部に集中させてインレットポートが熱膨張することに伴う歪みをインレットポート内で吸収することができるため、過給機に接続された周辺部材にインレットポートの熱膨張に伴う歪みが生じることが抑制される。
【0011】
なお、上記構成では、シリンダーヘッドはヘッド内冷却水通路を循環する冷却水によって冷却されているため、インレットポートにおけるシリンダーヘッド側の部分、すなわち排気上流側の部分は温度が上昇しにくくなっている。薄肉部は厚肉部よりも排気上流側に設けられているため、厚肉部よりも温度が上昇しにくくなっており、管厚が薄くされていても強度が低下しにくくなっている。
【0012】
すなわち、上記構成によれば、高温になりやすく強度が低下しやすい部分を厚肉部にして補強する一方で、高温になりにくく強度が低下しにくい部分を薄肉部にしてインレットポートの熱膨張による歪みをこの薄肉部に集中させて吸収させることができる。そのため、排気によって高温にされる過給機のインレットポートの強度確保と、過給機に接続された周辺部材の保護とを両立することができる。
【0013】
上記内燃機関の一例では、前記インレットポートは、フランジ部を備え、同フランジ部を介して前記シリンダーヘッドに接続され、前記薄肉部は、前記フランジ部よりも排気下流側に、前記フランジ部と隣接して設けられている。
【0014】
上記構成によれば、薄肉部は冷却水の循環によって冷却されているシリンダーヘッドの近くに設けられることになる。したがって、薄肉部の温度が低くなり、薄肉部の強度低下がより抑制されるようになる。
【0015】
上記内燃機関の一例では、前記インレットポートにおける前記薄肉部と前記厚肉部との間の壁面は、前記厚肉部における前記インレットポートの管厚と等しくなるまで前記薄肉部側から前記厚肉部側に向かって徐々に厚くされている。
【0016】
薄肉部と厚肉部との間においてインレットポートの管厚が急変していると、当該管厚が急変する箇所に応力が集中する虞がある。上記構成によれば、薄肉部と厚肉部との間においてインレットポートの管厚が徐変されるため、薄肉部と厚肉部との間に応力が集中しにくくなる。
【0017】
上記内燃機関の一例では、前記中心軸線と垂直な断面内で比較すると、前記インレットポートの管厚は、前記厚肉部で最も厚くなっている。
上記構成によれば、インレットポートの厚肉部において選択的に管厚が厚くされていることになるため、インレットポートの剛性が過剰に高くなってしまうことを抑制することができる。したがって、インレットポートの熱膨張に伴う応力が過給機に接続された周辺部材に作用してしまうことを効果的に抑制できる。
【0018】
上記内燃機関の一例では、前記中心軸線と垂直な断面内で比較すると、前記インレットポートの管厚は、前記薄肉部で最も薄くなっている。
上記構成によれば、熱膨張に伴う応力が薄肉部に集中しやすくなる。その結果、インレットポートにおける歪みが薄肉部に集中し、インレットポートの薄肉部以外の部分に歪みが生じにくくなる。したがって、高温になりやすく、強度が低下しやすい部分が変形してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】内燃機関の一実施形態についてシリンダーヘッドに組み付けられる過給機周辺の構造を示す概略図。
図2】同実施形態にかかるシリンダーヘッド及びインレットポートの一部断面図。
図3】インレットポートの図2における3−3線に沿った断面構造を示す断面図。
図4】インレットポートの図2における4−4線に沿った断面構造を示す断面図。
図5】同実施形態にかかるヘッド内マニホールド及びインレットポートにおける排気の流れを例示する模式図。
図6】内燃機関の変形例におけるインレットポートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、内燃機関の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
本実施形態にかかる内燃機関は、過給機を備えている。図1に示すように、この内燃機関のシリンダーブロック10にはシリンダーヘッド20が組み付けられており、シリンダーヘッド20には、過給機のタービンハウジング30におけるインレットポート31が接続されている。これにより、シリンダーブロック10に形成されている複数の気筒から排出された排気はこのインレットポート31を通じてタービンハウジング30へ導入される。タービンハウジング30の排気下流側には触媒コンバータ40が接続されている。また、この内燃機関では、タービンハウジング30とシリンダーヘッド20との間にステー50を設け、このステー50によってタービンハウジング30の支持を補助している。
【0021】
図2に示すように、本実施形態にかかる内燃機関は直列4気筒の内燃機関であり、シリンダーブロック10には気筒#1,#2,#3,#4が形成されている。
そして、シリンダーヘッド20には、気筒#1〜#4が形成する各燃焼室に接続して排気を合流させるヘッド内マニホールド22が形成されている。ヘッド内マニホールド22は、気筒#1〜#4に対応する枝管22a,22b,22c,22dと、枝管22a〜22dを通過した排気を合流させる集合部22eと、を備えている。そして、合流させた排気を排出する排気出口22fは、シリンダーヘッド20の側面に開口している。
【0022】
そして、シリンダーヘッド20の側面における排気出口22fが開口している部分に、タービンハウジング30のインレットポート31が接続されている。これにより、ヘッド内マニホールド22を通じてシリンダーヘッド20から排出された排気がインレットポート31を通じて過給機に導入されるようになっている。
【0023】
なお、シリンダーヘッド20におけるヘッド内マニホールド22の周囲には、シリンダーヘッド20に冷却水を循環させるためのヘッド内冷却水通路21が形成されている。
続いて、ヘッド内マニホールド22について詳述する。
【0024】
ここで、図2に示すように、各気筒#1〜#4の中心軸C1〜C4と直交する平面において中心軸C1〜C4を通る直線L1の延伸方向を気筒配列方向とする。そして、中心軸C1と中心軸C4との中点を通過し、直線L1と直交する直線を直線L2とする。
【0025】
ヘッド内マニホールド22の排気出口22fは、気筒配列方向における最も外側に位置する気筒#1,#4のうち気筒#1に近くなるように、気筒配列方向において直線L2よりも気筒#1側に偏った位置に設けられている。このように、排気出口22fが直線L2よりも気筒#1側に偏った位置に設けられているため、各気筒#1〜#4から集合部22eまでの各枝管22a〜22dの傾斜は、それぞれ異なっている。具体的には、排気出口22fから最も遠い気筒である気筒#4から延びる枝管22dが、インレットポート31への排気の入射角が最も大きくなるように傾斜している。
【0026】
次に、インレットポート31について詳述する。
インレットポート31は、その先端に設けられたフランジ部32を介して、上述したように、排気出口22fと連通するようにシリンダーヘッド20に接続されている。そのため、インレットポート31も、気筒配列方向において気筒#1側に偏って配設されており、インレットポート31の中心軸線L3は、図2に示すように、直線L2よりも気筒配列方向における気筒#1側に位置している。
【0027】
そして、インレットポート31の中心軸線L3よりも気筒配列方向の気筒#1側の壁面である第1の壁面33には、厚肉部33aが設けられている。
図3に示すように、厚肉部33aの肉厚Oは、中心軸線L3を挟んで第1の壁面33の反対側に位置する第2の壁面34の肉厚Pよりも厚くなっている。
【0028】
また、図2に示すように、第1の壁面33における厚肉部33aよりも排気上流側の部位には、厚肉部33aよりも薄い薄肉部33bが設けられている。なお、薄肉部33bは、フランジ部32と隣接して設けられている。
【0029】
なお、図4に示す断面においてインレットポート31の肉厚は全周に亘ってほぼ等しくなっており、図4に示すように、薄肉部33bの肉厚Qは、第2の壁面34の肉厚Pとほぼ等しくなっている。
【0030】
すなわち、インレットポート31の管厚は、厚肉部33aにて最も厚くなっている。
また、図2に示すように、第1の壁面33における薄肉部33bと厚肉部33aとの間の壁面は、薄肉部33b側から厚肉部33a側に向かって厚肉部33aの肉厚と等しくなるまで徐々に厚くされている。
【0031】
次に本実施形態にかかる内燃機関の作用について、図5を参照して説明する。
各気筒#1〜#4によって形成された燃焼室から排出される排気は、それぞれの気筒に対応した枝管22a〜22dを通過して集合部22eにて合流する。そして、合流した排気は、排気出口22fを通過してインレットポート31に流入し、タービンハウジング30に導入される。
【0032】
ここで、各枝管22a〜22dからインレットポート31へ流入する排気の入射角は、枝管に対応する気筒が排気出口22fから遠い位置にあるほど大きくなる傾向にある。本実施形態では、気筒#4が排気出口22fから最も遠い位置に配設される気筒であるため、気筒#4に対応する枝管22dの中心軸線L4とインレットポート31の中心軸線L3とがなす角度θ1が、枝管22aの中心軸線L5とインレットポート31の中心軸線L3とがなす角度θ2よりも大きい。
【0033】
すなわち、気筒#4に対応する枝管22dから集合部22eに流入する排気の入射角は、他の枝管22a〜22cの入射角と比較して、大きくなっている。そのため、枝管22dから流入してインレットポート31に導入される排気は、他の枝管22a〜22cから流入する排気に比べて相対的に垂直に近い角度でインレットポート31の壁面に衝突することになる。垂直に近い角度で排気が衝突するほど、排気が当たった壁面の温度が特に高温となりやすい。
【0034】
この点、本実施形態にかかる内燃機関では、枝管22dからインレットポート31に流入する排気が当たる第1の壁面33に厚肉部33aを設けてインレットポート31の第1の壁面33を補強している。また、この補強に伴ってインレットポート31の剛性が厚肉部33aにおいて向上している。
【0035】
なお、中心軸線L3の延伸方向における厚肉部33aの位置は、予め行うシミュレーションの結果に基づいて最も温度が高くなりやすい位置に設定されている。
ところで、インレットポート31の壁面を厚くして補強すれば、インレットポート31が熱膨張した際のインレットポート31自体の歪みを抑制することができる。しかし、その結果、熱膨張による伸びの影響がタービンハウジング30と接続している周辺部材である触媒コンバータ40等に作用しやすくなり、周辺部材の歪みが大きくなってしまう。
【0036】
さらに、本実施形態にかかる内燃機関では、シリンダーヘッド20へのタービンハウジング30の支持をステー50によって補助している。つまり、タービンハウジング30はシリンダーヘッド20に対して拘束されている。これは、インレットポート31の熱膨張に伴う応力によってタービンハウジング30及びタービンハウジング30の排気下流側に設けられる触媒コンバータ40等の位相が変位してしまうことを抑制するためである。しかし、こうしたステー50による拘束に伴う力と熱膨張に伴う応力との相互作用によって、タービンハウジング30の周辺部材に及ぶ歪みはより大きなものとなってしまう。
【0037】
そこで、本実施形態にかかる内燃機関では、インレットポート31における厚肉部33aよりも排気上流側に薄肉部33bを設けている。薄肉部33bの剛性は厚肉部33aと比べて低くなっているため、インレットポート31の熱膨張に伴う応力が薄肉部33bに集中するようになる。したがって、応力に起因する歪みを薄肉部33bに集中させてインレットポート31が熱膨張することに伴う歪みをインレットポート31内で吸収することができる。すなわち、タービンハウジング30の排気下流側に接続されている触媒コンバータ40等にインレットポート31の熱膨張に伴う歪みが生じることが抑制される。
【0038】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)気筒配列方向においてインレットポート31の中心軸線L3を挟んで排気出口22fから遠い方の気筒#4とは反対側に位置するインレットポートの第1の壁面33に、厚肉部33aが設けられているため、特に温度が高くなりやすい部分を補強することができる。
【0039】
(2)第1の壁面33における厚肉部33aよりも排気上流側には厚肉部33aよりも薄い薄肉部33bが設けられている。そのため、インレットポート31が熱膨張することに伴う応力が剛性の低い薄肉部33bに集中するようになる。すなわち、応力に起因する歪みを薄肉部33bに集中させて、インレットポート31が熱膨張することに伴う歪みをインレットポート31内で吸収することができる。したがって、タービンハウジング30に接続された周辺部材にインレットポート31の熱膨張に伴う歪みが生じることが抑制される。
【0040】
(3)シリンダーヘッド20はヘッド内冷却水通路21を循環する冷却水によって冷却されている。したがって、厚肉部33aよりも排気上流側、つまりシリンダーヘッド20の近くに設けられている薄肉部33bは、厚肉部33aよりも温度が上昇しにくく、管厚が薄くされていても強度が低下しにくい。
【0041】
すなわち、上記(1),(2)の効果と相乗して、高温になりやすく強度が低下しやすい部分を厚肉部33aによって補強する一方で、高温になりにくく強度が低下しにくい部分を薄肉部33bによってインレットポート31の熱膨張による歪みをこの薄肉部33bに集中させて吸収させることができる。そのため、排気によって高温にされるタービンハウジング30のインレットポート31の強度確保と、タービンハウジング30に接続された周辺部材の保護とを両立することができる。
【0042】
(4)本実施形態では、薄肉部33bはフランジ部32と隣接して設けられるため、冷却水の循環によって冷却されているシリンダーヘッド20の近くに配設される。したがって、薄肉部33bの温度上昇がより抑制され、薄肉部33bの強度低下が抑制されるようになる。
【0043】
(5)薄肉部33bと厚肉部33aとの間においてインレットポート31の管厚が急変していると、当該管厚が急変する箇所に応力が集中する虞がある。本実施形態によれば、薄肉部33bと厚肉部33aとの間においてインレットポート31の管厚が徐変されるため、薄肉部33bと厚肉部33aとの間に応力が集中しにくくなる。
【0044】
(6)インレットポート31では、厚肉部33aにおいて選択的に管厚が厚くされているため、インレットポート31の剛性が過剰に高くなってしまうことを抑制することができる。したがって、インレットポート31の熱膨張に伴う応力がタービンハウジング30に接続された周辺部材に作用してしまうことを効果的に抑制できる。
【0045】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、タービンハウジング30をシリンダーヘッド20に支持するステー50を設けた。しかし、ステー50の無い構成であっても、タービンハウジング30はシリンダーヘッド20と触媒コンバータ40とによって拘束されている。したがって、ステー50の有無に拘わらず、インレットポート31の熱膨張による歪みがタービンハウジング30と接続している周辺部材に影響する虞はある。すなわち、ステー50の無い内燃機関であっても同様の課題は生じ得る。そして、上記実施形態の構成を適用することによって同様の効果を奏することができる。
【0046】
・上記実施形態では、第2の壁面34は一定の肉厚に形成した。しかし、第2の壁面34の肉厚は一定でなくてもよい。ただし、第1の壁面33における薄肉部33bよりも薄く形成することは避けることが望ましい。
【0047】
・上記実施形態では薄肉部33bの肉厚Qは、第2の壁面34の肉厚Pと略同一の肉厚に形成した。薄肉部33bの肉厚は、第2の壁面34と略同一の肉厚でなくてもよい。
たとえば図6に示すように、第2の壁面34の肉厚Pよりも肉厚が薄くなるように薄肉部33bの肉厚Rを設定し、第2の壁面34よりも肉厚の薄い薄肉部33bを設けてもよい。こうした構成を上記実施形態に採用した場合、インレットポート31の管厚は、薄肉部33bにて最も薄く形成される。すなわち、熱膨張に伴う応力が薄肉部33bに集中しやすくなる。その結果、インレットポート31における歪みが薄肉部33bに集中し、インレットポート31の薄肉部33b以外の部分に歪みが生じにくくなる。したがって、高温になりやすく、強度が低下しやすい部分が変形してしまうことを抑制することができる。
【0048】
・上記実施形態では、直列4気筒の内燃機関について例示したが、上記実施形態の構成を適用できる内燃機関は直列4気筒に限らない。気筒配列方向において最も外側に位置する2つの気筒のうちの一方の気筒に近くなるように、ヘッド内マニホールド22の排気出口22fを偏った位置に設ければ、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
・上記実施形態では、気筒配列方向において直線L2よりも気筒#1側に偏るように排気出口22fを形成したが、気筒#4側に偏るように排気出口22fを形成してもよい。この場合、気筒#1に対応する枝管22aからインレットポート31に流入する排気の入射角が最も大きくなる。すなわち、こうした構成を上記実施形態に採用する場合、インレットポート31において、薄肉部33b及び厚肉部33aを中心軸線L3に対して気筒#4側の第2の壁面34に設ければ、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
・ツインスクロール方式を採用する過給機を搭載した内燃機関に上記実施形態の構成を適用してもよい。この場合、インレットポートは2系統の排気通路を備えることになるが、上記実施形態と同様に、インレットポートにおいて中心軸線よりもヘッド内マニホールド22の排気出口22fを偏らせた側の壁面に厚肉部及び薄肉部を形成すれば、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…シリンダーブロック、20…シリンダーヘッド、21…ヘッド内冷却水通路、22…ヘッド内マニホールド、22a…枝管、22b…枝管、22c…枝管、22d…枝管、22e…集合部、22f…排気出口、30…タービンハウジング、31…インレットポート、32…フランジ部、33…第1の壁面、33a…厚肉部、33b…薄肉部、34…第2の壁面、40…触媒コンバータ、50…ステー、#1〜#4…気筒。
図1
図2
図3
図4
図5
図6