特許第6139475号(P6139475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139475
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20170522BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20170522BHJP
【FI】
   C08G18/00 G
   C08G18/00 H
   C08G101:00
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-134021(P2014-134021)
(22)【出願日】2014年6月30日
(62)【分割の表示】特願2012-522061(P2012-522061)の分割
【原出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2014-210934(P2014-210934A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】102009028061.8
(32)【優先日】2009年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グロス,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】シラー,カールステン
(72)【発明者】
【氏名】エイルブラット,クリスチアン
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/048826(WO,A1)
【文献】 米国特許第02834748(US,A)
【文献】 米国特許第02917480(US,A)
【文献】 米国特許第02846458(US,A)
【文献】 米国特許第04147847(US,A)
【文献】 特開2005−113138(JP,A)
【文献】 特開平10−279807(JP,A)
【文献】 特開2007−063554(JP,A)
【文献】 特表2009−513812(JP,A)
【文献】 特表2011−503297(JP,A)
【文献】 特開平06−080774(JP,A)
【文献】 特開平10−324760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08G 77/00− 77/62
C08J 9/00− 9/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化オレフィンからなる1種以上の発泡剤および1種以上の式(I)のシロキサンを含む組成物を用いて、硬質ポリウレタンフォームを製造する方法:
【化1】
(式中、
aは、各々の場合において独立して、1〜300であり、
bは、各々の場合において独立して、1〜50であり、
cは、各々の場合において独立して、0〜10であり、
dは、各々の場合において独立して、0〜10であり、
a/b比は7以上であり、
ただし、式(I)の1分子につき、1分子あたりのT単位の平均数SdおよびQ単位の平均数Scは、50以下であり、1分子あたりのD単位の平均数Saは、2000以下であり、1分子あたりのRを有するシロキシ単位の平均数Sbは、100以下であり、
Rは、メチルであり、
は、各々の場合において独立して、RまたはRであり、前記R部分の少なくとも50%がRに等しく、
は、各々の場合において独立して、
−CH−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’および/または
−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’および/または
−CH−RIV
を含む群から選択される有機部分であり(Rは、20mol%以下の−CH−RIVである)、ここで、
xは、0〜100であり、
yは、0〜100であり、
R’は、メチルであり、
R’’は、各々の場合において独立して、水素、または1〜4個の炭素原子のアルキル基、−C(O)−R’’’基(R’’’=アルキル)、−CH−O−R’基、アルキルアリール基、−C(O)NH−R’基であり、
ここで、オキシエチレン単位のモル分率は、オキシアルキレン単位の少なくとも70%を構成し、すなわち、x/(x+y)>0.7であり、
あるいは、オキシエチレン単位のモル分率は、オキシアルキレン単位の多くとも70%を構成し、すなわち、x/(x+y)<0.7であり、且つR’’は水素であり、
IVは、1〜50個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分枝状の、置換されていてもよい、炭化水素部分であり、
は、各々の場合において独立して、R、R、および/または、ヘテロ原子で置換され、官能性であり、かつ、アルキル、アリール、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピル、またはビニルの群から選択される有機飽和または不飽和部分であってもよく、
ただし、R、Rおよび/またはRの少なくとも1つの置換基は、R以外である)。
【請求項2】
発泡剤としてのフッ素化オレフィンからなる発泡剤および式(I)のシロキサンを用いた請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォームを製造する方法であって、
cは、各々の場合において独立して、>0〜4であり、
dは、各々の場合において独立して、>0〜4であり、
ただし、式(I)の1分子につき、1分子あたりのT単位の平均数SdおよびQ単位の平均数Scは、20以下であり、1分子あたりのD単位の平均数Saは、1500以下であり、1分子あたりのRを有するシロキシ単位の平均数Sbは、50以下である、方法。
【請求項3】
IVは、9〜17個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の炭化水素である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)のシロキサンの全平均分子量の多くとも50%が、前記シロキサン中のすべての異なってもよいR部分の全モル質量からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
において、y=0であり、R’’は水素ではない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
Sc+Sd<1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
Sc+Sd≧1である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって得られる硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
独立気泡であることを特徴とする、請求項8に記載の硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
冷蔵庫断熱材、断熱パネル、サンドイッチ要素、チューブ断熱材、スプレーフォーム、模造木、モデリングフォーム、包装用フォーム、マットレス、家具緩衝材、自動車シート緩衝材、ヘッドレスト、ダッシュボード、自動車内装、自動車ルーフライナー、吸音材、ステアリングホイール、靴底、カーペット裏地用フォーム、フィルターフォーム、シーリングフォーム、および接着剤におけるおよび/またはそれらとしての、あるいは、対応する製品を製造するための、請求項8または9に記載の硬質ポリウレタンフォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤としてのオレフィン二重結合を有する化合物およびポリエーテル−シロキサンコポリマーを用いてポリウレタンフォームを製造する方法、そのような発泡剤およびシロキサンコポリマーを含むポリウレタンフォーム、およびこのようなポリウレタンフォームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化炭化水素、特にフッ素化炭化水素には、フォーム製造用の発泡剤として広範な用途が見出されている。しかし、これらの化合物は、そのオゾン破壊係数(Ozone Depletion Potential)(ODP)および地球温暖化係数(Global Warming Potential)(GWP)に関する欠点を有している。したがって、ODPおよびGWPがより低い代替の発泡剤が開発されている。現在の傾向は、分子中にオレフィン二重結合を有するハロゲン化化合物、すなわち、ヒドロハロオレフィン(HHO)を使用することである。より具体的には、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)が新規な発泡剤として記述されている。
【0003】
米国特許第2008/125505号および米国特許第2008/125506号は、フォーム用の発泡剤としてのフッ素化オレフィンの使用について記載している。これらの発泡剤のGWPおよびODPは低い。
【0004】
国際公開第2008/121790号には、フォーム製造用の発泡剤としてのヒドロフルオロオレフィン(HFO)およびヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)の混合物について記載している。
【0005】
国際公開第2008/121779号は、少なくとも1種のヒドロクロロオレフィンを含む発泡剤組成物について記載している。
【0006】
国際公開第2007/053670号は、不飽和フルオロカーボンを含むフォーム製造用の発泡剤について記載している。ブロモフルオロオレフィンにも言及している。
【0007】
国際公開第2009/073487号および国際公開第2009/089400号には、ポリウレタンおよびポリイソシアヌレートフォームの製造における発泡剤としてのcis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンおよび2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンがそれぞれ記載されている。
【0008】
欧州特許出願公開第2004773号には、冷蔵庫器、エアコン機器、または熱ポンプ機器で使用するためのフルオロオレフィンおよび少なくとも1種のさらなる成分を含む組成物が記載されている。特に、フォーム発泡剤としての使用について記載されている。
【0009】
米国特許第5,900,185号には、大気中耐用年数が低い臭素含有オレフィン、および特にフォーム用発泡剤としてのその使用が記載されている。
【0010】
国際公開第2007/002703号および米国特許第2008/207788号および国際公開第2009/067720には、PUフォーム用の発泡剤としての使用を含む様々な用途における、HFO−1234zeおよびHCFO−1233zdならびにこれらの材料をフッ素化エーテルとともに含む混合物が記載されている。
【0011】
国際公開第2009/003165号には、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)および/またはヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)と大気中での分解を起こす貯蔵、取扱い、および使用中の分解を防ぐ安定剤との混合物が記載されている。使用される安定剤は、フリーラジカルスカベンジャー、酸素スカベンジャー、酸スカベンジャー、および重合阻害剤である。この参考文献には、使用されるシロキサンに対する発泡剤の分解生成物の有害な効果についても記載されている。しかしながら、シリコーン界面活性剤とも称する特定のシロキサン構造については記載されていない。
【0012】
米国特許第2009/0099272号には、遊離アミンが発泡剤と反応し、次いでこれらの生成物がシリコーン界面活性剤を分解するとの理由から、オレフィンフッ素化発泡剤を含む系において触媒として酸/アミン付加物を使用することが記載されている。このことは、フォーム配合物(foam formulation)の製造に関する可能性を非常に制限するが、それは、アミンの触媒効果が弱まり、PUフォーム配合物の製造により長い反応時間がかかってしまうためである。
【0013】
米国特許第2009/0099273号には、アミンおよびフッ素化発泡剤から形成される反応生成物に伴う問題を回避するために、ケイ素を含有しない界面活性剤の使用が記載されている。このことは、限られた数の界面活性剤しか使用できないことを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
いずれの代替物もPUフォームの製造において大幅な制限があることを示している。したがって、上記の欠点がなく、PUフォームの製造におけるシリコーン界面活性剤として有用なシロキサンが求められている。
【0015】
本発明の目的は、ハロゲン化オレフィンを発泡剤として使用する場合に上記の欠点がなく、ゆえに結果が向上したシロキサンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、この目的は、式(I)のシロキサンによって達成されることが見出された。選択された式(I)のシロキサンは、先行技術で既に記載されているシロキサンの一般的な構造要素を含むが、構造的特徴の数に対する選択範囲が異なる。例えば酸でブロックした(acid-blocked)アミンの存在下においてまたはその存在下でさえ、追加のフリーラジカルスカベンジャーなしにシロキサンに典型的な発泡(foaming)の機能を行うことができる特定のシロキサンを見出すことができたことは全く驚くことであり、当業者に予想不可能である。
【0017】
したがって、本発明は、ハロゲン化オレフィンからなる発泡剤および式(I)のシロキサンを用いてポリウレタンフォームを製造する方法を提供する。この式(I)のシロキサンは、好適な担体媒体中で混合物として生成することもできる。この混合物は、生成された通りに存在してもよく、あるいは、後に、例えば、シロキサンの計量性(meterability)を容易にするために、または発泡される混合物へのシロキサンの組み込み性(incorporability)を改良するために得ることができる。
【0018】
したがって、本発明は、発泡剤およびシロキサンを含む対象組成物をそれぞれ用いる、ポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォーム製造方法をさらに提供する。本発明は、本発明のポリウレタンフォームおよび/または本発明にしたがって得られるポリウレタンフォームの使用も提供する。
【0019】
本発明の方法は、即使用できるポリウレタンフォーム系として市販されている、ポリオールおよび/または触媒、水/発泡剤、気泡安定剤(foam stabilizer)、ならびに任意選択によるさらなる添加剤の予め配合されていてもよい混合物が、フォーム特性が悪化することなく、市場で通例の貯蔵期間に耐えるとの利点を有する。このことは、特に、イソシアネートが予め配合された混合物に含まれている1成分系にも適用される。
【0020】
本発明のポリウレタンフォームは、一貫して高い品質、すなわち、フォーム欠陥(空隙、クラック、高密度化領域(densifications))がほとんどない、特に細かい気泡構造を有するとの利点を有する。
【0021】
本発明のシロキサンは、以下の構造を有する:
【化1】
(式中、
aは、各々の場合において独立して、0〜500であり、好ましくは1〜300であり、特に2〜150であり、
bは、各々の場合において独立して、0〜60であり、好ましくは1〜50であり、特に1〜30であり、
cは、各々の場合において独立して、0〜10であり、好ましくは0または>0〜5であり、
dは、各々の場合において独立して、0〜10であり、好ましくは0または>0〜5であり、
ただし、式(I)の1分子につき、1分子あたりのT単位の平均数ΣdおよびQ単位の平均数Σcは、50以下であり、1分子あたりのD単位の平均数Σaは、2000以下であり、1分子あたりのRを有するシロキシ単位の平均数Σbは、100以下であり、
Rは、各々の場合において独立して、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖状、環状、または分枝状、脂肪族または芳香族、飽和または不飽和の炭化水素部分の群の1以上の部分であるが、好ましくはメチルであり、
は、各々の場合において独立して、RまたはRであり、
は、Rとは異なり、各々の場合において独立して、
−CH−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’
−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’
−CH−RIV
−CH−CH−(O)x’−RIV
−CH−CH−CH−O−CH−CH(OH)−CHOH
【化2】
【化3】
−CH−CH−CH−O−CH−C(CHOH)−CH−CH
の群から選択される有機部分および/または部分であり、
ここで、
xは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜50であり、
x’は、0または1であり、
yは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜50であり、
zは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜10であり、
R’は、各々の場合において独立して、例えばアルキル部分、アリール部分、またはハロアルキル部分もしくはハロアリール部分で置換されてもよい、1〜12個の炭素原子のアルキルまたはアリール基であり、R部分および/または式(I)の分子内に互いに異なる置換基R’が存在してもよく、
R’’は、各々の場合において独立して、水素、または1〜4個の炭素原子のアルキル基、−C(O)−R’’’基(R’’’=アルキル)、−CH−O−R’基、アルキルアリール基、例えばベンジル、−C(O)NH−R’基であり、
IVは、直鎖状、環状、または分枝状の、置換されていてもよい、例えばハロゲン置換された、1〜50個、好ましくは9〜45個、より好ましくは13〜37個の炭素原子を有する炭化水素部分であり、
は、各々の場合において独立して、R、R、および/または、ヘテロ原子で置換され、官能性であり、かつ、アルキル、アリール、クロロアルキル、クロロアリール、フルオロアルキル、シアノアルキル、アクリロイルオキシアリール、アクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシアルキル、メタクリロイルオキシプロピルまたはビニルの群から選択される有機飽和または不飽和部分であってもよく、
ただし、R、RおよびRの少なくとも1つの置換基は、R以外である)。
【0022】
式中に示されるシロキサンおよびポリオキシアルキレン鎖の様々なモノマー単位は、任意数のブロックおよび任意の順序で互いにブロック状の構造を有するか、またはランダム分布であることができる。式中に使用される指数は、統計的平均値とみなす。
【0023】
本発明のシロキサン含有混合物は、さらなる材料を含んでもよい。より具体的には、本発明の組成物は、ポリウレタンフォーム製造に使用されるようなさらなる添加剤/助剤を含でもよい。本発明の組成物に含有するための好ましい添加剤/助剤は、従来のSiOCおよびSiC安定剤、有機気泡安定剤、界面活性剤、成核剤、気泡微細化添加剤(cell-refining additives)、気泡開放剤(cell-opening agents)、架橋剤、乳化剤、難燃剤、酸化防止剤、帯電防止剤、殺生物剤、カラーペースト、固体充填剤、アミン触媒、金属触媒、ポリオールおよび/または緩衝剤から選択されることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、溶媒、より具体的には有機溶媒、好ましくはグリコール、アルコキシレート、および合成及び/又は天然起源の油から選択される溶媒を含むことが有利であり得る。
【0025】
式(I)のシロキサンは、欧州特許出願公開第1520870号などに記載されるような二重結合を有する化合物と適当なヒドロシロキサンとの貴金属触媒によるヒドロシリル化反応などの通常の方法によって調製される。欧州特許出願公開第1520870号は本明細書に援用し、本発明の開示内容の一部とみなす。
【0026】
1分子あたり1以上の二重結合を有する有用な化合物には、α−オレフィン、ビニルポリオキシアルキレンおよび/またはアリルポリオキシアルキレンが含まれる。ビニルポリオキシアルキレンおよび/またはアリルポリオキシアルキレンを用いることが好ましい。特に好ましいビニルポリオキシアルキレンは、例えば100g/mol〜5000g/molの分子量範囲を有するビニルポリオキシアルキレンであり、これは、プロピレンオキシドモノマー、エチレンオキシドモノマー、ブチレンオキシドモノマー、および/またはスチレンオキシドモノマーからブロック状でまたはランダム分布で構成されてもよく、かつ、ヒドロキシ官能性であってもよいだけでなく、メチルエーテル官能基またはアセトキシ官能基によってエンドキャップされていてもよい。特に好ましいアリルポリオキシアルキレンは、例えば100g/mol〜5000g/molの分子量範囲を有するアリルポリオキシアルキレンであり、これは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはスチレンオキシドのモノマーからブロック状またはランダム分布で構成されてもよく、かつ、かつ、ヒドロキシ官能性であってもよいだけでなく、メチルエーテル官能基またはアセトキシ官能基によってエンドキャップされていてもよい。1分子あたり1以上の二重結合を有する化合物として、例示としてのα−オレフィン、アリルアルコール、1−ヘキサノール、ビニルポリオキシアルキレンおよび/またはアリルポリオキシアルキレンならびにアリルグリシジルエーテルおよびビニルシクロヘキセンオキシドを使用することが特に好ましい。
【0027】
本発明の方法は、式中、aは、各々の場合において独立して、1〜300であり、bは、各々の場合において独立して、1〜50であり、cは、各々の場合において独立して、0〜4であり、dは、各々の場合において独立して、>0〜4であり、ただし、式(I)の1分子につき、1分子あたりのT単位の平均数ΣdおよびQ単位の平均数Σcは、20以下であり、1分子あたりのD単位の平均数Σaは、1500以下であり、1分子あたりのRを有するシロキシ単位の平均数Σbは、50以下である、式(I)のシロキサンを用いることが好ましい。
【0028】
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、式中、
は、各々の場合において独立して、
−CH−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’
−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’
−CH−RIV
の有機部分であり、
ここで、xは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜50であり、yは、0〜100であり、好ましくは>0、特に1〜50であり、R’は、各々の場合において独立して、異ってもいてよく、メチル、エチルおよび/またはフェニルであり、
R’’は、各々の場合において独立して、水素または1〜4個の炭素原子のアルキル基、−C(O)−R’’’基(R’’’=アルキル)、-CH−O−R’基、アルキルアリール基、例えばベンジル、−C(O)NH−R’基であり、
IVは、直鎖状、環状、または分枝状の、置換されていてもよい、例えばハロゲンで置換された、1〜50個、好ましくは9〜45個、より好ましくは13〜37個の炭素原子を有する炭化水素部分である、式(I)のシロキサンを用いる。
【0029】
さらに好ましい方法の実施態様では、式中、
は、各々の場合において独立して、
−CH−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’および/または
−CH−CH−O−(CH−CHO−)−(CH−CH(R’)O−)−R’’および/または
−CH−RIV
を含む群から選択される有機部分であり、
ここで、xは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜50であり、yは、0〜100であり、好ましくは>0であり、特に1〜50であり、Rは、メチルであり、R’’は、各々の場合において独立して、水素または1〜4個の炭素原子のアルキル基、−C(O)−R’’’基(R’’’=アルキル)、−CH−O−R’基、アルキルアリール基、例えばベンジル、−C(O)NH−R’基であり、
ここで、オキシエチレン単位のモル分率は、オキシアルキレン単位の少なくとも70%を構成し、すなわち、x/(x+y)は、>0.7である、
式(I)のシロキサンを用いる。末端に水素を有し、同時に、オキシエチレン単位のモル分率が、オキシアルキレン単位の多くとも70%を構成する、すなわち、x/(x+y)<0.7であり、R’’は水素であることが、ポリオキシアルキレン鎖にさらに有利であり得る。
【0030】
さらに好ましい本発明の方法の実施態様では、その各々において、ヒドロシリル化では特にオレフィンを用い、Rは、少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも20mol%、より好ましくは少なくとも40mol%の程度までの−CH−RIVからなり、RIVは、9〜17個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の炭化水素である、式(I)のシロキサンを使用する。
【0031】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、その各々において、シロキサンの末端位、すなわち、アルファ位およびオメガ位が少なくとも部分的にRで官能化されている、式(I)のシロキサンを使用する。末端位の少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも50mol%が、R部分で官能化される。
【0032】
特に好ましい本発明の方法の実施態様では、その各々において、統計的平均で、シロキサンの全平均分子量の多くとも50%、好ましくは多くとも45%、より好ましくは多くとも40%が、シロキサン中のすべての異なっていてもよいR部分の全モル質量からなる、式(I)のシロキサンを用いる。
【0033】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、式(I)のシロキサン(その各々において、Rがメチルであり、かつ、指数aを有する構造要素の数が指数bを有する構造要素の数より大きく、a/b比が7以上、好ましくは10超、より好ましくは12超である)を使用する。
【0034】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、その各々において、R中のオキシアルキレン単位がオキシエチレン単位のみであり、R’’が水素ではない、式(I)のシロキサンを使用する。
【0035】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様は、シロキサン足場において分枝を有しないかまたは統計的平均で1未満の分枝を有し、したがって不等式Σc+Σd<1を満たす、式(I)のシロキサンを使用する。
【0036】
本発明の方法のさらに好ましい実施態様は、シロキサン足場において統計的平均で1以上の分枝を有し、したがって不等式Σc+Σd≧1を満たす、式(I)のシロキサンを使用する。
【0037】
本発明のシロキサンは、様々な担体媒体を含む組成物の一部として使用することもできる。可能な担体媒体の例は、グリコール、アルコキシレート、または合成および/または天然起源の油である。添加する組成物量は、最終ポリウレタンフォーム中の式(I)の化合物の質量分率が0.01%〜10重量%の範囲、好ましくは0.1%〜3重量%の範囲であるのに十分であることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物は、2個以上のイソシアネート官能基を有する1種以上の有機イソシアネート、2個以上のイソシアネート反応性基を有する1種以上のポリオール、イソシアネート−ポリオールおよび/またはイソシアネート−水反応および/またはイソシアネート三量体形成用の触媒、水、任意選択による物理的発泡剤、任意選択による難燃剤(さらに添加剤を含んでもよいし含まなくてもよい)からなるポリウレタンフォームを製造するための通常の配合物中の気泡安定剤として有用である。
【0039】
本発明の目的のための好適なイソシアネートは、任意の多官能性有機イソシアネート、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。特に好適なものは、MDIおよび「ポリメリック(polymeric)MDI」(粗MDI)として知られる2〜4個の範囲の平均官能基を有するより高度に濃縮された類似体の混合物、および純粋な形態または異性体混合物としての様々なTDI異性体である。
【0040】
本発明の目的のための好適なポリオールは、2個以上のイソシアネート反応性基を有する任意の有機材料およびその調製物である。ポリウレタンフォームの製造に通常使用されるポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールのいずれも、好ましいポリオールである。ポリエーテルポリオールは、多官能性アルコールまたはアミンとアルキレンオキシドとを反応することによって得ることができる。ポリエステルポリオールは、多塩基カルボン酸(これらは、アジピン酸などの場合のように脂肪族であってもよいし、あるいはフタル酸またはテレフタル酸などの場合のように芳香族であってもよい)と多価アルコール(通常はグリコール)とのエステルに基づく。
【0041】
配合の指数として、すなわち、イソシアネート基とイソシアネート反応性基(例えば、OH基、NH基)との化学量論の比に100を掛けたものとして表されるイソシアネートとポリオールとの好適な比は、10〜1000の範囲、好ましくは80〜350の範囲である。
【0042】
本発明の目的のための好適な触媒は、ゲル反応(イソシアネート−ポリオール)、発泡反応(blowing reaction)(イソシアネート−水)、またはイソシアネートの二量体または三量体形成を触媒する物質である。典型例は、アミントリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、1、2−ジメチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−1、3、5−トリアジン、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、およびビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、および金属含有化合物例えば、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズまたは2−エチルヘキサン酸スズ(II)のようなスズ化合物、および酢酸カリウムおよび2−エチルヘキサン酸カリウムのようなカリウム塩である。
【0043】
好適な使用量は、触媒の種類に依存し、典型的には、0.05〜5pphp(=ポリオール100重量部あたりの重量部)またはカリウム塩については0.1〜10pphpの範囲である。
【0044】
本発明の目的のための好適な水含有量は、水に加えて、ハロゲン化オレフィンを使用するかしないかに依存する。典型的には、0.1〜5pphpの水分量が使用される。
【0045】
上記のハロゲン化オレフィンに加えて、さらに好適な物理的発泡剤を使用することもできる。これらは、例えば、液化COおよび揮発性液体、例えば、4個または5個の炭素原子を有する炭化水素、好ましくはシクロペンタン、イソペンタン、およびn−ペンタン、ヒドロフルオロカーボン、好ましくはHFC 245fa、HFC 134a、およびHFC 365mfc、ヒドロクロロフルオロカーボン、好ましくはHCFC 141b、酸素含有化合物、例えば、ギ酸メチルおよびジメトキシメタン、またはヒドロクロロカーボン、好ましくはジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンである。
【0046】
水および物理的発泡剤に加えて、ガス発生によってイソシアネートと反応する他の化学発泡剤(例えばギ酸)も使用することができる。
【0047】
本発明の目的のための好適な難燃剤は、好ましくは、液体有機リン化合物、例えば、トリエチルホスフェート(TEP)などのハロゲンを含有しない有機ホスフェート、トリス(1−クロロ−2−プロピル)ホスフェート(TCPP)およびトリス(2−クロロエチル)ホスフェート(TCEP)などのハロゲン化ホスフェート、およびジメチルメタンホスホネート(DMMP)、ジメチルプロパンホスホネート(DMPP)などの有機ホスホネート、またはアンモニウムポリホスフェート(APP)および赤リンなどの固体である。好適な難燃剤には、ハロゲン化ポリオールなどのハロゲン化化合物、および、メラミンおよび膨張性黒鉛などの固体がさらに包含される。
【0048】
本発明の配合物は、当業者が精通している任意の方法、例えば、手作業の混合または好ましくは高圧発泡機器によって、フォームへと加工処理することができる。成形フォーム、冷蔵機、およびパネルなどの製造にバッチ方法を使用することができ、あるいは断熱板、金属複合材要素、ブロックなどの場合またはスプレープロセスの場合には連続プロセスを使用することができる。
【0049】
特別な場合は、ポリウレタンプレポリマーをそれぞれ用いる1−および1,5−成分カンフォーム(1- and 1.5-component can foam)である。本発明のシロキサン含有組成物は、本出願における気泡安定剤としても有用である。
【0050】
本発明のポリウレタンフォームは、本発明のシロキサン含有組成物を含む/含有することを特徴とする。最終ポリウレタンフォーム中の式(I)の化合物の質量の割合は、好ましくは0.01%〜10重量%の範囲、より好ましくは0.1%〜3重量%の範囲である。
【0051】
本発明のポリウレタンフォームは、例えば、硬質ポリウレタンフォーム、軟質ポリウレタンフォーム、粘弾性フォーム、HRフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、熱成形可能なポリウレタンフォーム、またはインテグラルフォームであってもよい。ポリウレタンは、ここでは、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートおよびポリオールまたはアミンなどの他のイソシアネート反応性種から得られる、ウレタン結合が唯一のまたは支配的な結合タイプである必要はないポリマーの一般用語であると理解する。ポリイソシアヌレートおよびポリ尿素も明らかに包含される。
【0052】
好ましい実施態様において、本発明によって得られるフォームは、独立気泡(closed-cell)フォームである。
【0053】
本発明のポリウレタンフォームは、例えば、冷蔵庫断熱材、断熱パネル、サンドイッチ要素(sandwich elements)、チューブ断熱材、スプレーフォーム、1−および1.5−成分カンフォーム、模造木(wood imitation)、モデリンングフォーム(modelling foam)、包装用フォーム、マットレス、家具緩衝材、自動車シート緩衝材、ヘッドレスト、ダッシュボード、自動車内装、自動車ルーフライナー、吸音材、ステアリングホイール、靴底、カーペット裏地フォーム、フィルターフォーム、シーリングフォーム、および接着剤の構成部分として、あるいはそれらにおいておよび/またはそれらとして、使用することができる。
【0054】
本発明のさらなる対象および実施態様は、その開示内容が本願明細書の一部である特許請求の範囲から明らかであろう。
【0055】
対象のポリウレタンフォームの製造方法、ポリウレタンフォーム自体、およびその使用を例示として以下に記載するが、本発明をこれらの例示的態様に限定することを意図するものではない。化合物の範囲、一般式、または分類が以下に示される場合、それらは、明確に言及されている化合物の対応する範囲または群を包含するだけでなく、個々の値(範囲)または化合物を抜き出すことによって得ることができる化合物のすべての下位範囲および下位群をも包含する。文献が本明細書の文脈において引用される場合、その内容は本発明の開示内容に完全に属するものとする。以下の実施例は、本発明を例示として記載するものであり、本発明を該実施例で言及する実施態様に制限することを何ら意図することなく、本発明の範囲は、本明細書全体および特許請求の範囲から明らかである。
【実施例】
【0056】
本発明のシロキサンの調製
ただし、実施例1〜実施例5、実施例8、実施例11〜15、及び実施例18は、参考例である。
【0057】
本発明の式(I)のシロキサンは、ヒドロシリル化によって適当なヒドロシロキサンと反応させる先行技術の方法によって得ることができる。アリルポリエーテルおよびオレフィンを反応させて、式(I)の化合物を形成した。使用した方法は、独国特許出願公開第1020070554852号の実施例7と同様であり、したがって、欧州特許出願公開第1520870号などにも記載されるように、SiC結合ポリエーテルシロキサンを調製する先行技術に従うものとした。
【0058】
表1は、使用したポリエーテルを纏めたものである。
【表1】
【0059】
得られる式(I)の化合物の構造は、表2から理解できる。表2に列記したパラメーターは、上記の式(I)に関する。
【表2】
【0060】
フォーム形成例
以下のフォーム配合物を使用して、本発明の配合物の性能試験を行った。
【表3】
【0061】
フォーム形成試験を手作業による混合によって行った。この目的のために、様々なシロキサンを用いて表3に記載するAおよびB配合物を調製し、定量してビーカーに入れた。次いで、MDIを添加し、反応混合物を直径6cmのプレートスターラーを用いて3000rpmで5秒間攪拌し、温度自動調節される50cm×25cm×5cmアルミニウムの型(mold)にすぐに移し、ポリエチレン膜で裏打ちし、50℃とした。使用したフォーム配合物の量は、型を充填するのに必要な最小量を10%上回るように決定した。
【0062】
フォーム形成1日後、フォームを分析した。それらを表部および底部から検査して表面を評価し、切開後に、1〜10の主観的な尺度に基づいて内部欠陥を評価した。ここで、10は、欠陥のない(undisrupted)フォームを表し、1は完全に欠陥がある(disrupted)フォームを表す。切断面上の細孔構造(1cmあたりの平均の気泡数)を参照フォームと比較することによって目視で評価した。
【0063】
結果を表4に纏めた。使用したシロキサン、フォーム配合物、目視評価、およびフォームの細孔構造を纏めた。
【表4】
【0064】
表4のデータは、本発明のシロキサンは、発泡剤としてのハロゲン化オレフィンを含む配合物中に使用した場合に高品質のフォームとなることを示している。安定剤とともに既配合のポリオール成分をエージングした後でさえ、無傷のフォームが得られた。このような結果は、米国特許第2009/0099272号の実施例2に従っても得られない。