特許第6139511号(P6139511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨークの特許一覧

特許6139511磁性グラフェン様ナノ粒子あるいは黒鉛ナノまたは微小粒子、およびそれらの生産および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139511
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】磁性グラフェン様ナノ粒子あるいは黒鉛ナノまたは微小粒子、およびそれらの生産および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20170522BHJP
   H01F 1/00 20060101ALI20170522BHJP
   C01B 32/15 20170101ALI20170522BHJP
   C01B 32/18 20170101ALI20170522BHJP
   C01B 32/182 20170101ALI20170522BHJP
   C01B 32/152 20170101ALI20170522BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20170522BHJP
【FI】
   A61K49/00 C
   H01F1/00 145
   C01B31/02 101Z
   C01B31/02 101F
【請求項の数】35
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2014-510397(P2014-510397)
(86)(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公表番号】特表2014-516206(P2014-516206A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】US2012036790
(87)【国際公開番号】WO2012154677
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/483,309
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】バラジ・シタラマン
(72)【発明者】
【氏名】バヴナ・エス・パラタラ
【審査官】 伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101525436(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0213189(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102068705(CN,A)
【文献】 CHEN, S. et al.,ACS Nano,2010年,Vol.4, No.5,p.2822-30
【文献】 ACS Appl Mater Interfaces,2010年,Vol.2、No.11,p.3201-10
【文献】 Nano Today,2009年,Vol.4、No.3,p.252-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00
C01B 32/00
H01F 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンナノ構造に挿入された磁性金属を備える磁性組成物であって、前記磁性金属がMnを含む、磁性組成物
【請求項2】
約10mM−1−1以上の緩和能r1を有する、請求項1に記載の磁性組成物。
【請求項3】
約20mM−1−1以上の緩和能r1を有する、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項4】
約45mM−1−1以上の緩和能r1を有する、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項5】
前記グラフェンナノ構造は、約20nm以下の厚さを有する、請求項1に記載の磁性組成物。
【請求項6】
前記グラフェンナノ構造は、炭素の〜12原子層を備える、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項7】
前記グラフェンナノ構造は、炭素の2原子層を備える、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項8】
前記グラフェンナノ構造は、炭素ナノプレートレットおよび炭素ナノリボンから成る群より選択される、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項9】
前記グラフェンナノ構造は、5〜100nmの範囲内の平均直径を有する、炭素ナノプレートレットである、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項10】
前記炭素ナノプレートレットは、約20nmの平均直径を有する、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項11】
前記炭素ナノプレートレットは、約50nmの平均直径を有する、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項12】
前記グラフェンナノ構造は、1〜250nmの範囲内の平均幅、および200〜5000nmの範囲内の平均長を有する、炭素ナノリボンである、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項13】
前記炭素ナノリボンは、約120nmの平均幅、および600〜2000nmの範囲内の平均長を有する、請求項12に記載の磁性組成物。
【請求項14】
前記炭素ナノプレートレットは、酸化ナノプレートレットである、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項15】
前記Mnは、Mn酸化物の中に存在する、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項16】
前記Mn酸化物は、二価および/または三価Mnを含む、請求項15に記載の磁性組成物。
【請求項17】
前記Mn酸化物は、ハウスマン鉱を含む、請求項16に記載の磁性組成物。
【請求項18】
1ppb〜10ppmの範囲内の量でMnを含む、請求項に記載の磁性組成物。
【請求項19】
前記グラフェンナノ構造は、炭素ナノプレートレットであり、前記磁性組成物は、10〜10ppmの範囲内の量でMnを含む、請求項18に記載の磁性組成物。
【請求項20】
前記磁性組成物は、約5×10ppmの量でMnを含む、請求項19に記載の磁性組成物。
【請求項21】
前記グラフェンナノ構造は、炭素ナノリボンであり、前記磁性組成物は、10〜10ppmの範囲内の量でMnを含む、請求項18に記載の磁性組成物。
【請求項22】
前記磁性組成物は、5×10ppmの量でMnを含む、請求項21に記載の磁性組成物。
【請求項23】
MnおよびFeの両方を含む、請求項1に記載の磁性組成物。
【請求項24】
前記グラフェンナノ構造は、炭素ナノリボンである、請求項23に記載の磁性組成物。
【請求項25】
前記グラフェンナノ構造に付着した水溶性化部分をさらに含む、請求項1に記載の磁性組成物。
【請求項26】
前記水溶性化部分は、前記グラフェンナノ構造に共有結合している、請求項25に記載の磁性組成物。
【請求項27】
前記水溶性化部分は、前記グラフェンナノ構造に付着した、マロン酸およびセリノールマロノジアミドから成る群より選択される、請求項25に記載の磁性組成物。
【請求項28】
(i)請求項1〜27のいずれか一項に記載の十分な量の磁性組成物と、(ii)1つ以上の生理学的に容認可能な担体または賦形剤とを含む、磁気共鳴映像法とともに使用するための組成物。
【請求項29】
グラフェンナノ構造に挿入された磁性金属を備える磁性組成物を生産する方法であって、前記磁性金属がMnを含み
(a)硫酸HSO、硝酸ナトリウムNaNO、MnCl、および過マンガン酸カリウムKMnOの混合物で黒鉛を処理することと、
(b)ステップ(a)で得られた生成物の懸濁液を超音波で分解し、それにより、前記磁性組成物を生産することと、
を含む、方法。
【請求項30】
(c)還元剤で前記磁性組成物を処理することをさらに含む、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記還元剤は、ヒドラジン水和物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
グラフェンナノ構造に挿入された磁性金属を備える磁性組成物を生産する方法であって、前記磁性金属がMnを含み
(a)硫酸HSO、MnCl、および過マンガン酸カリウムKMnOで多層炭素ナノチューブを処理することを含む、
方法。
【請求項33】
前記ステップ(a)は、
(a1)HSOの中で前記多層炭素ナノチューブを懸濁させることと、
(a2)KMnOおよびMnClを添加することと、
(a3)ステップ(a2)で得られた混合物を加熱することと、
を含む、方法によって実行される、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(a3)で、前記混合物は、55〜70℃まで加熱される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記磁性組成物を水溶性化することをさらに含む、請求項2934のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、その内容が、参照することによりその全体として本明細書に組み込まれる、2011年5月6日出願の米国仮出願第61/483309号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、磁性グラフェン様ナノ粒子あるいは黒鉛ナノまたは微小粒子、およびそれらの生産方法に関する。本発明はまた、MRI造影剤として磁性グラフェン様ナノ粒子あるいは黒鉛ナノまたは微小粒子を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
MRIは、主に、多くの病変および疾患の向上した診断のために、解剖学的詳細を非侵襲的にレンダリングするために使用されている(非特許文献1、非特許文献2)。MRIの開発は、同時に、感度および診断の信頼を増加させることによって病変の検出を向上させる、造影剤(CA)と呼ばれる化学コントラスト強化製品の使用の増加につながってきた。
【0004】
2つの主な種類は、TおよびTMRI CAであり、それぞれ、水プロトンの縦Tおよび横T緩和時間に影響を及ぼす(短縮する)。水プロトンの緩和プロセスを加速する、それらの有効性の定量的尺度は、緩和能として知られており、MRI CAの単位濃度あたりの緩和速度(緩和時間の逆数)の変化である。広く使用されている臨床TMRI CAは、主に、金属イオンキレート錯体として合成され、金属イオンは、ランタノイド元素ガドリニウム(Gd3+)、または内部遷移元素マンガン(Mn2+)である。過去30年で行われた実験的および理論的研究の大半が、現在、これらの常磁性イオンキレート錯体の緩和能に影響を及ぼす、緩和機構、ならびに根本的な構造、化学、および分子力学性質の良好な理解を提供する(非特許文献3、非特許文献4、および非特許文献5)。理論は、これらのMRI造影剤の緩和能が準最適であり、少なくとも最大で50倍から100倍優れた緩和能の新しい造影剤を開発する可能性を予測する(非特許文献6、および非特許文献7)。
【0005】
ほとんどの臨床MRI CAは、ガドリニウム(Gd3+)イオンベースのTCA等の輝度が明確なコントラストを生じさせるようにMR信号を強化する、常磁性T加重CAである。重度腎疾患がある、または肝臓移植後の一部の患者における腎性全身性線維症(NSF)の近年の発見が、Gd3+イオンベースのECF MRI CAの臨床用途への米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)による制限につながる懸念を生成してきた(非特許文献8)。
【0006】
近年、元素マンガンが、ガドリニウムに対する可能な代替案として注目を集めている。マンガンは、MRI用の常磁性造影剤の実施例として早い時期に報告された。ランタニドと違って、それは、Ca2+に類似する天然細胞成分であり、しばしば、酵素および受容体のための調節補因子として機能する。マンガンの正常な1日の食事所要量が、3〜8μmolである一方で、正常な血中濃度は、0.001μmol/lである。マンガンの毒性は、神経症状をもたらす、長期暴露後、または高濃度でしか報告されていない(非特許文献2)。
【0007】
過去10年間にわたって、Gd3+金属イオンをカプセル化する、ガドフラーレン(Gd@C60、Gd@C80、およびGd@C82として表される)およびガドナノチューブ(Gd@USチューブ、USチューブ=超短SWNTとして表される)等の炭素ナノ構造が、MRI用のTCAとして提案されてきた(非特許文献1)。これらの錯体の開発における合成方策は、炭素ナノチューブまたはナノダイヤモンド等の炭素ナノ構造の外部炭素シート上に複数のGd3+キレート錯体を共有または非共有的に官能化すること(非特許文献9、および非特許文献10)、またはフラーレン(別名ガドフラーレン)(非特許文献11、非特許文献12、および非特許文献13)および単層炭素ナノチューブ(別名ガドナノチューブ)(非特許文献14、および非特許文献15)等の炭素ナノ構造の炭素シート内でのGd3+イオンのカプセル化に焦点を当ててきた。これらのGd3+イオン炭素ナノ構造は、低い磁場から高い磁場(0.01〜3T)で最高緩和能を示す、ガドナノチューブを伴うGd3+キレート錯体と比較して、(磁場に応じて)緩和能の2倍から2次数の間の増加を示す。しかしながら、MRI CAとしてのMn2+イオン炭素ナノ構造錯体の潜在性および効力は、依然として調査されていない。
【0008】
ガドナノチューブの変動磁場(0.01〜3T)緩和能または核磁気共鳴分散(NMRD)プロファイルは、任意の他のMRI CAについて得られるものとは特徴的に異なり、それらの緩和機構は、良く理解されていない。この理解の不足の主な理由としては、非常に高いレベルの純度で調製し、明確に特徴付けることができる、Gd3+イオンキレートと違って、炭素ナノ構造Gd3+イオン系は、主に、それらの微粒子性質、ならびにそれらの化学、幾何学、および磁気特性を、MRI造影剤としてのそれらの性質に結び付ける複雑な関係により、かなり複雑である。それにもかかわらず、ナノ多孔性構造内のGd3+イオンの幾何学的閉じ込めが、1つの理由であり得る(非特許文献15、および非特許文献16)。シリコン(非特許文献15)またはゼオライト(非特許文献16)のナノ多孔性構造の中へのGd3+イオンの閉じ込めが、Gd3+キレート化合物と比較して、緩和能を2倍から4倍増加させる一方で、Gd3+イオンが単層炭素ナノチューブ内に閉じ込められたときのみ(非特許文献14、および非特許文献15)、他のGd3+イオンベースの錯体について報告されたものとは有意に異なるNMRDプロファイルを伴って、(磁場強度にかかわらず)緩和能の1桁以上の増加が存在している。加えて、現在まで、緩和能の高い増加および非従来的なNMRDプロファイルが、グラフェンシートから形成された継ぎ目のない円筒である、単層炭素ナノチューブに閉じ込められた常磁性イオンに特有であるか、または他のグラフェンあるいは黒鉛構造に閉じ込められた常磁性イオンについて一般的に観察されるかどうかを系統的に調査するような、いかなる研究も行われていない。
【0009】
炭素の2次元(2D)ナノ構造であるグラフェンは、種々の材料および生物医科学用途の潜在性を示し、大いに注目を集めてきた(非特許文献17)。理論的研究が、グラフェンにおける種々の磁気現象を予測し(非特許文献18)、現在まで、これらの効果のうちのわずかが、実験的に探求されてきた(非特許文献19)。近年、単純な過マンガン酸カリウム(KMnO)ベースの酸化化学手順が、黒鉛およびMWCNT等の出発原料を使用した酸化黒鉛、グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの大規模生産で使用されてきた(非特許文献20、および非特許文献21)。本作業では、これらの技法の修正されたプロトコルを使用して合成された酸化黒鉛、グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの物理化学的性質を特徴付けるように、実験的研究が行われた。我々は、微量のMn2+イオンが、合成プロセス中にグラフェンシート内に閉じ込められ(挿入され)、この閉じ込めが、一般的に、常磁性キレート化合物と比較して、緩和能を大幅に増加させ(最大で2次数)、これらの材料が、常磁性キレートのものとは異なるNMRDプロファイルを伴って、多様な構造、化学、および磁気性質を示すことを実証している。
【0010】
近年の報告は、グラフェンナノプレートレット(GNP)およびグラフェンナノリボン(GNR)の手ごろな大規模生産が、化学的技法を使用することによって可能であることを示している(非特許文献22、非特許文献20、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献21、非特許文献25、非特許文献26)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sitharaman,B.& Wilson,L.J.、“Gadofullerenes and Gadonanotubes: A new paradigm for high−performance magnetic resonance imaging contrast agent probes”、Journal of Biomedical Nanotechnology 3,342−352(2007)
【非特許文献2】Pan,D.et al.、“Revisiting an old friend: manganese−based MRI contrast agents”、Wiley Interdisciplinary Reviews(WIREs) Nanomedicine and Nanobiotechnology 3,162−173(2010)
【非特許文献3】Aime et al.、1998、Chemical Society Reviews 27:19−29
【非特許文献4】Caravan et al.、1999、Chem Rev 99:2293−2352、
【非特許文献5】Lauffer、1987、Chem Rev 87:901−927
【非特許文献6】Merbach et al.、2001、“The Chemistry of Contrast Agents in Medical Magnetic Resonance Imaging”、John Wiley&Sons、471
【非特許文献7】Datta et al.、2009、Accounts Chem Res 42:938−947
【非特許文献8】Girdhar,G.& Bluestein,D.、“Biological Effects of Dynamic Shear Stress in Cardiovascular Pathologies and Devices”、Expert Rev.Medical Devices 5、167−181(2008)
【非特許文献9】Richard et al.、2008、Nano Letters 8:232−236
【非特許文献10】Manus et al.、2009、Nano Letters 10:484−489
【非特許文献11】Toth et al.、2005、J Am Chem Soc 127:799−805
【非特許文献12】Kato et al.、2003、J Am Chem Soc 125:4391−4397
【非特許文献13】Fatouros et al.、2006、Radiology 240:756−764
【非特許文献14】Sitharaman et al.、2005、Chem Commun:3915−3917
【非特許文献15】Ananta et al.、2010、Nature nanotechnology 5:815−821
【非特許文献16】Bresinska I、1994、J Phys Chem 98:12989−12994
【非特許文献17】Novoselov,K.S.et al.、“Electric field effect in atomically thin carbon films”、Science 306,666(2004)
【非特許文献18】Makarova、2004、Semiconductors 38:615−638
【非特許文献19】Wang,Y.et al.、“Room−temperature ferromagnetism of graphene”、Nano Letters 9、220−224(2008)
【非特許文献20】Stankovich,S.et al.、“Synthesis of graphene−based nanosheets via chemical reduction of exfoliated graphite oxid”、Carbon 45、1558−1565(2007)
【非特許文献21】Kosynkin,D.et al.、“Longitudinal unzipping of carbon nanotubes to form graphene nanoribbons”、Nature 458、872−876(2009)
【非特許文献22】Stankovich,S.et al.、“Stable aqueous dispersions of graphitic nanoplatelets via the reduction of exfoliated graphite oxide in the presence of poly (sodium 4−styrenesulfonate)”、Journal of Materials Chemistry 16、155−158(2006)
【非特許文献23】Stankovich,S.、Piner,R.、Nguyen,S.、& Ruoff,R.、“Synthesis and exfoliation of isocyanate−treated graphene oxide nanoplatelets”、Carbon 44、3342−3347(2006)
【非特許文献24】Li,D.、Muller,M.、Gilje,S.、Kaner,R.、& Wallace,G.、“Processable aqueous dispersions of graphene nanosheets”、Nature nanotechnology 3,101−105(2008)、
【非特許文献25】Higginbotham,A.、Kosynkin,D.、Sinitskii,A.、Sun,Z.、& Tour,J.、“Lower−Defect Graphene Oxide Nanoribbons from Multiwalled Carbon Nanotubes”、ACS nano 4、2059−2069(2010)
【非特許文献26】Geng,Y.、Wang,S.、& Kim,J、“Preparation of graphite nanoplatelets and graphene sheets”、Journal of colloid and interface science 336、592−598(2009)
【非特許文献27】Geim and Novoselov、2007、“The rise of graphene”、Nature Materials 6(3):183−191
【非特許文献28】Bingel,C.、1993、“Cyclopropanierung von Fullerenen”、Chemische Berichte 126(8):1957
【非特許文献29】Sithamaran,B.;Zakharian,T.Y.et al.、Molecular Pharmaceutics 2008、5、567
【非特許文献30】Hummers Jr,W. & Offeman,R.、“Preparation of graphitic oxide”、Journal of the American Chemical Society 80、1339−1339(1958)
【非特許文献31】Lu,G.、Mao,S.、Park,S.、Ruoff,R.& Chen,J.、“Facile, noncovalent decoration of graphene oxide sheets with nanocrystals”、Nano Research 2、192−200(2009)
【非特許文献32】Tuinstra,F.& Koenig,J.、“Raman spectrum of graphite”、The Journal of Chemical Physics 53、1126(1970)
【非特許文献33】Southard,J.& Moore,G.、“High−temperature Heat Content of Mn3O4, MnSiO3 and Mn3C1”、Journal of the American Chemical Society 64、1769−1770(1942)
【非特許文献34】Ursu,I.et al.、“Kinetic evolution during the laser/thermal preparation of Mn3O4 from MnCO3”、Journal of Physics B: Atomic and Molecular Physics 19、L825(1986)
【非特許文献35】Weixin,Z.、Cheng,W.、Xiaoming,Z.、Yi,X.& Yitai,Q.、“Low temperature synthesis of nanocrystalline Mn3O4 by a solvothermal method”、Solid State Ionics 117、331−335(1999)
【非特許文献36】Zhang,W.et al.、“Controlled synthesis of Mn3O4 nanocrystallites and MnOOH nanorods by a solvothermal method”、Journal of Crystal Growth 263、394−399(2004)
【非特許文献37】Whitney,T.、Searson,P.、Jiang,J.& Chien,C、“Fabrication and Magnetic Properties of Arrays of Metallic Nanowires”、Science(New York,NY)261,1316(1993)
【非特許文献38】Wang,J.、Chen,Q.、Zeng,C.& Hou,B.、“Magnetic Field Induced Growth of Single Crystalline Fe3O4 Nanowires”、Advanced Materials 16、137−140(2004)
【非特許文献39】Du,J.et al、“Hausmannite Mn3O4 nanorods:synthesis,characterization and magnetic properties”、Nanotechnology 17、4923(2006)
【非特許文献40】Matte,H.S.S.R.、Subrahmanyam,K.& Rao,C.、“Novel magnetic properties of graphene: Presence of both ferromagnetic and antiferromagnetic features and other aspects”、The Journal of Physical Chemistry C 113、9982−9985(2009)
【非特許文献41】Deng,H.et al.、“Monodisperse Magnetic Single−Crystal Ferrite Microspheres”、Angewandte Chemie International Edition 44,2782−2785(2005)
【非特許文献42】Zhao,L.et al.、“Morphology−controlled synthesis of magnetites with nanoporous structures and excellent magnetic properties”、Chemistry of Materials 20、198−204(2007)
【非特許文献43】Sun,S.、Murray,C.B.、Weller,D.、Folks,L.& Moser,A.、“Monodisperse FePt Nanoparticles and Ferromagnetic FePt Nanocrystal Superlattices”、Science 287、1989−1992(2000)
【非特許文献44】Tan,Y.、Zhuang,Z.、Peng,Q.& Li,Y.、“Room−temperature soft magnetic iron oxide nanocrystals: Synthesis, characterization, and size−dependent magnetic properties”、Chemistry of Materials 20、5029−5034(2008)
【非特許文献45】Li,J.−h.et al.、“An easy approach to encapsulating Fe2O3 nanoparticles in multiwalled carbon nanotubes”、New Carbon Materials 25、192−198(2010)
【非特許文献46】Schwert,D.、Davies,J.& Richardson,N. in Contrast Agents 1 Vol.221 Topics in Current Chemistry(ed Werner Krause) 165−199(Springer Berlin/Heidelberg,2002)
【非特許文献47】Reichenbach,J.et al.、“1H T1 and T2 measurements of the MR imaging contrast agents Gd−DTPA and Gd−DTPA BMA at 1.5 T”、European Radiology 7、264−274(1997)
【非特許文献48】Corot,C、Robert,P.、Idee,J.M.& Port,M.、“Recent advances in iron oxide nanocrystal technology for medical imaging”、Advanced drug delivery reviews 58、1471−1504(2006)
【非特許文献49】Stankovich,S.;Dikin,D.A.et al.、Nature 2006、442、282
【非特許文献50】Vogler,H.et al;European Journal of Radiology 1995、21、1
【非特許文献51】Cohan,R.H.;Leder,R.A.et al.、J.Invest Radiol 1990、26、224
【非特許文献52】、Gennaro,A.R.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17th edn 1985、1455
【非特許文献53】Runge,V.M.;Kirsch,J.E.;Burke,V.J.、J Magn Reson Imaging 1992、2、9
【非特許文献54】Leo,A.;Hansch,C;Elkins,D.、Chem Rev 1971、71、525
【非特許文献55】Lorenz,W.;Doenicke,A.et al. The role of histamine in adverse reactions to intraveneous agents In: Thornton,editor. Adverse Reactions of Anaesthetic Drugs, Elsevier Press 1981,169
【非特許文献56】Heinzel,G.;Woloszczak,R.et al. Pharmacokinetic and pharmacodynamic data analysis system New York: Gustav Fischer Verlag Stuttgart, Jena 1993
【非特許文献57】Neter,J.;Kutner,M.H.;et al. Applied linear statistical models 1996, WCB McGraw
【非特許文献58】Esquinazi et al.、2002、Physical Review B 66:024429
【非特許文献59】Zhou et al.、2010、Thin Solid Films 519:1989−1992
【非特許文献60】Bie et al.、2010、Solid State Sciences 12:1364−1367
【非特許文献61】Raley et al.、2006、Journal of alloys and compounds 423:184−187
【非特許文献62】Schoenhalz et al.、2009、Applied Physics Letters 94:162503
【非特許文献63】Kundaliya et al.、2004、Nature materials 3 :709−714
【非特許文献64】Rao et al.、2011、New J Phys 13:113004
【非特許文献65】Rohrer et al.、2005、Investigative Radiology 40:715−724
【非特許文献66】Laurent et al.、2008、Chemical Reviews 108:2064−2110
【非特許文献67】Sur et al.、1995、J Phys Chem 99:4900−4905
【非特許文献68】Aime et al.、2002、Journal of Biological Inorganic Chemistry 7:58−67
【非特許文献69】Mao et al.、2008、Nanotechnology 19:205708
【非特許文献70】Hak et al.、2009、European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 72:397−404
【非特許文献71】Swift et al.、1962、J Chem Phys 37:307
【非特許文献72】Troughton et al.、2004、Inorg Chem 43:6313−6323
【非特許文献73】Caravan et al.、2009、Contrast Media Mol Imaging 4:89−100
【非特許文献74】Bryant et al.、1999、Journal of Magnetic Resonance Imaging 9:348−352
【非特許文献75】Sorokina et al.、2005、Russian Journal of General Chemistry 75:162−168
【非特許文献76】Toth et al.、2001、The Chemistry of Contrast Agents in In: Merbach A、Toth E、 editors. The Chemistry of Contrast Agents in Medical Magnetic Resonance Imaging: Wiley
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、1つ以上の磁性金属と、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造を備える、磁性組成物を提供する。
【0013】
好ましくは、本発明の磁性組成物は、少なくとも約3、5、10、20、30、40、50、100、または500mM−1−1の緩和能r1を呈する。
【0014】
好ましくは、本発明の磁性組成物は、少なくとも約3、5、10、20、30、40、50、500、または1000mM−1−1の緩和能r2を呈する。
【0015】
グラフェン様ナノ構造は、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンであり得る。炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、酸化させることができる。好ましくは、グラフェン様ナノ構造、例えば、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、約20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下、3nm以下、少なくとも2原子炭素シート、少なくとも5原子炭素シート、または少なくとも10原子炭素シートの厚さを有する。
【0016】
好ましくは、黒鉛ナノ構造または微細構造は、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、250nm以下、または100nm以下の厚さを有する。
【0017】
好ましくは、炭素ナノプレートレットは、5〜100nm、10〜75nm、20〜50nm、または30〜40nmの範囲内の平均直径を有する。好ましくは、炭素ナノリボンは、1〜250nm、10〜200nm、50〜150nm、または70〜100nmの範囲内の平均幅を有する。
【0018】
グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造はさらに、グラフェン様ナノ構造または微細構造に付着した、例えば、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に共有結合した、水溶性化部分を含むことができる。
【0019】
一実施形態では、磁性金属は、限定されないが、内部遷移金属Mnを含む、室温常磁性金属元素である。別の実施形態では、磁性金属は、限定されないが、内部遷移金属Fe、Co、およびNiを含む、室温強磁性金属元素である。なおも別の実施形態では、磁性金属は、限定されないが、ランタノイド元素Gd、Eu、Pr、Nd、およびSmを含む、希土類金属である。本発明で使用することができる好ましい磁性金属は、Mn、Gd、およびFeを含む。
【0020】
磁性組成物は、1つよりも多くの磁性金属を含むことができる。一実施形態では、磁性組成物は、2つの異なる磁性金属を含む。
【0021】
磁性金属は、イオンとして磁性組成物の中に存在することができる。磁性金属はまた、限定されないが、金属酸化物および金属塩を含む、金属化合物の形態で、磁性組成物の中に存在することもできる。磁性金属またはその化合物は、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に挿入することができる。
【0022】
本発明の磁性組成物は、1ppb(質量パーツ・パー・ビリオン)〜10ppm(質量パーツ・パー・ミリオン)、10ppb〜10ppm、1ppm〜10ppm、10〜10ppm、または10〜10ppmの範囲内の量で磁性金属を含むことができる。
【0023】
本発明はまた、本発明の十分な量の磁性組成物を対象に投与することと、磁気共鳴映像デバイスを使用して、対象を撮像することとを含む、対象の磁気共鳴映像法を行う方法も提供する。対象は、限定されないが、ほ乳類、例えば、ヒトを含む、任意の動物であり得る。
【0024】
本発明はまた、十分な量の磁性組成物と、1つ以上の生理学的に容認可能な担体または賦形剤とを含む、MRI撮像のための組成物も提供する。
【0025】
本発明はまた、磁性金属と、グラフェン様炭素ナノ構造とを含む、磁性組成物を生産する方法も提供する。本方法は、硫酸HSO、硝酸(HNO)、塩化マンガン(MnCl)、硝酸ナトリウムNaNO、および過マンガン酸カリウムKMnOの混合物で黒鉛を酸化させることと、前のステップで得られた生成物の懸濁液を超音波で分解することとを含む。本方法はさらに、還元剤で磁性組成物を還元するステップを含むことができる。
【0026】
本発明はまた、磁性金属と、グラフェン様炭素ナノ構造とを含む、磁性組成物を生産する方法も提供する。本方法は、硫酸HSO、硝酸(HNO)、塩化マンガン(MnCl)、および過マンガン酸カリウムKMnOで多層炭素ナノチューブを処理することを含む。一実施形態では、処理は、濃縮HSO、硝酸(HNO)の中で該多層炭素ナノチューブを懸濁させることと、塩化マンガン(MnCl)、KMnOを添加することと、混合物を加熱することと、前のステップで得られた生成物の懸濁液を超音波で分解することを含む、方法によって実行される。具体的実施形態では、混合物は、55〜70℃まで加熱される。
【0027】
磁性組成物はさらに、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、(1)フラーレンおよび金属内包フラーレンの炭素炭素二重結合にわたって、カルボン酸官能基を添加するために使用される、付加環化反応に類似する合成プロトコルを使用して、水溶性化することができる。(2)デキストラン等の天然ポリマーまたはポリエチレングリコール等の合成両親媒性ポリマーで共有または非共有的に官能化する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】マンガン挿入グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの200kVにおけるTEM画像。(a)幅約20nmの少数層および多層還元グラフェンナノプレートレットを示す。
図1B】マンガン挿入グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの200kVにおけるTEM画像。(b)還元グラフェンナノプレートレット上の炭素原子の格子構造を示すHRTEM画像。
図1C】マンガン挿入グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの200kVにおけるTEM画像。(c)幅約120nmおよび長さ約0.6〜2μmのグラフェンナノリボン構造を表す画像。
図1D】マンガン挿入グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの200kVにおけるTEM画像。(d)(矢印によって示される)グラフェンナノリボンシートの複数の層を表す高倍率画像。
図2A】(a)黒鉛、酸化黒鉛、グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットのDおよびGバンドならびに対応するピークを表す、530nmレーザを使用したラマンスペクトル。
図2B】(b)MWCNTおよびグラフェンナノリボンのDおよびGバンドを表す、530nmレーザを使用したラマンスペクトル。
図3A】SQUIDプロット:−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(a)黒鉛の磁化(M)対磁場強度(H)。
図3B】SQUIDプロット:−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(b)酸化黒鉛の磁化(M)対磁場強度(H)。
図3C】SQUIDプロット:−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(c)グラフェンナノプレートレットの磁化(M)対磁場強度(H)。
図3D】SQUIDプロット:−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(d)還元グラフェンナノプレートレットの磁化(M)対磁場強度(H)、差し込み図:300Kにおける−5000から5000Oeの間のプロット。
図3E】(e)40Kのブロッキング温度を表す、還元グラフェンナノプレートレットのZFCおよびFC磁化曲線。
図4A】SQUIDプロット:−50,000Oeから50,000Oeの間の磁化(M)対磁場強度(H)、(a)MWCNTの3つの温度(10、150、および300K)におけるM対H。
図4B】SQUIDプロット:−50,000Oeから50,000Oeの間の磁化(M)対磁場強度(H)、(b)30K、150K、および300KにおけるグラフェンナノリボンのM対Hプロット、差し込み図:ヒステリシスループを示す、300Kにおける−4000Oeから4000Oeの間のM対H。
図4C】(c)300Kを上回る高いブロッキング温度を表す、GNRのZFCおよびFCプロット。
図5】MnClおよび水と比較した、GONRのT加重MRIファントム。
図6】0.25mmols/kgの投与量での水溶性GNP MRI CAの注入前および後のマウスの代表的なMR画像。Magnevist等の臨床GdベースのCAに使用される用量よりも100倍低い、これらの低い用量において、優れた輝度コントラスト強化が、循環ナノ粒子により、血管構造の全体を通して得られる。
図7】約1.137nmの均一な厚さを示す、シリコン基材上に分散されたグラフェンナノプレートレットのAFM区分分析。
図8】657、370および320cm−1においてスペクトルピークを示す、532nmにおけるハウスマン鉱(Mn)、酸化黒鉛、および還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルの比較。
図9A】−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(a)微小黒鉛の磁化(M)対磁場強度(H)のプロット。
図9B】−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(b)酸化黒鉛の磁化(M)対磁場強度(H)のプロット。
図9C】−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(c)酸化グラフェンナノプレートレットの磁化(M)対磁場強度(H)のプロット。
図9D】−50,000から50,000Oeの間の30K、150、および300Kにおける(d)還元グラフェンナノプレートレットの磁化(M)対磁場強度(H)のプロット(差し込み図は300Kにおける−5000Oeから5000Oeの間のプロットを示す)。
図9E】(e)還元グラフェンナノプレートレットのZFCおよびFC磁化プロット。
図10A】−50,000Oeから50,000Oeの間の10、150、および300Kにおける(a)MWCNTの磁化(M)対磁場強度(H)。
図10B】−50,000Oeから50,000Oeの間の10、150、および300Kにおける(b)グラフェンナノリボンの磁化(M)対磁場強度(H)(差し込み図は300Kにおける−4000Oeから4000Oeの間のM対Hを示す)。
図10C】(c)グラフェンナノリボンのZFCおよびFCプロット。
図11A】(a)酸化微小黒鉛の固体の室温EPRスペクトル。
図11B】(b)酸化グラフェンナノプレートレットの固体の室温EPRスペクトル。
図11C】(c)還元グラフェンナノプレートレットの固体の室温EPRスペクトル。
図11D】(d)グラフェンナノリボンの固体の室温EPRスペクトル。
図12A】(a)酸化微小黒鉛の水溶液の室温EPRスペクトル。
図12B】(b)酸化グラフェンナノプレートレットの水溶液の室温EPRスペクトル。
図12C】(c)還元グラフェンナノプレートレットの水溶液の室温EPRスペクトル。
図12D】(d)グラフェンナノリボンの水溶液の室温EPRスペクトル。
図13A】(a)酸化黒鉛のSBM理論に由来する、実験的NMRDプロファイル(ドット)および最良適合(実線)。
図13B】(b)グラフェンナノプレートレットのSBM理論に由来する、実験的NMRDプロファイル(ドット)および最良適合(実線)。
図13C】(c)還元グラフェンナノプレートレットのSBM理論に由来する、実験的NMRDプロファイル(ドット)および最良適合(実線)。
図13D】(d)グラフェンナノリボンのSBM理論に由来する、実験的NMRDプロファイル(ドット)および最良適合(実線)。
図14A】(a)酸化微小黒鉛の代表的なSEM画像
図14B】(b)還元グラフェンナノプレートレットのTEM画像。
図14C】(c)還元グラフェンナノプレートレットのTEM画像。
図14D】(d)グラフェンナノリボンのTEM画像。
図14E】(e)グラフェンナノリボンのTEM画像。(e)の中の矢印は、グラフェンナノリボンシートの複数の層を示す。
図14F】(f)幅約20nmの少数層および多層還元グラフェンナノプレートレットを示す、還元グラフェンナノプレートレットの200kVにおけるTEM画像。
図14G】(g)約1.137nmの均一な厚さを示す、シリコン基材上に分散されたグラフェンナノプレートレットのAFM区分分析。
図15A】(a)黒鉛、酸化黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットのDおよびGバンドピークを伴うラマンスペクトル。
図15B】(b)MWCNTおよびグラフェンナノリボンのDおよびGバンドピークを伴うラマンスペクトル。
図15C】(c)657、370、および320cm−1においてスペクトルピークを示す、532nmにおけるハウスマン鉱(Mn)、酸化黒鉛、および還元グラフェンナノプレートレットの間のラマンスペクトルの比較。
図16A】530eVにおいて酸素ピークを示す、(a)還元グラフェンナノプレートレットのEELSスペクトル。
図16B】530eVにおいて酸素ピークを示す、(b)酸化グラフェンナノプレートレットのEELSスペクトル。
図17A】(a)固体サンプルの測定に使用されるWilmad石英EPR管のEPRスペクトル。
図17B】(b)水性サンプルに使用される石英EPR平坦管のEPRスペクトル。
図17C】(c)DPPH標準(固体)のEPRスペクトル。
図17D】(d)DPPH標準(水性)のEPRスペクトル。
図18A】全ての浮動SBMパラメータを浮動させて得られる曲線。A)酸化黒鉛。
図18B】全ての浮動SBMパラメータを浮動させて得られる曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図18C】全ての浮動SBMパラメータを浮動させて得られる曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図18D】全ての浮動SBMパラメータを浮動させて得られる曲線。D)グラフェンナノリボン。
図19A】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=2について得られた曲線。A)酸化黒鉛。
図19B】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=2について得られた曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図19C】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=2について得られた曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図19D】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=2について得られた曲線。D)グラフェンナノリボン。
図20A】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=4について得られた曲線。A)酸化黒鉛。
図20B】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=4について得られた曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図20C】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=4について得られた曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図20D】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=4について得られた曲線。D)グラフェンナノリボン。
図21A】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=6について得られた曲線。A)酸化黒鉛。
図21B】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=6について得られた曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図21C】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=6について得られた曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図21D】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=6について得られた曲線。D)グラフェンナノリボン。
図22A】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=8について得られた曲線。A)酸化黒鉛。
図22B】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=8について得られた曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図22C】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=8について得られた曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図22D】残りのSBMパラメータを浮動させた、固定Q=8について得られた曲線。D)グラフェンナノリボン。
図23A】残りのSBMパラメータを浮動させた、表8に示された値における固定Q=8および固定Tについて得られた曲線。A)酸化黒鉛。
図23B】残りのSBMパラメータを浮動させた、表8に示された値における固定Q=8および固定Tについて得られた曲線。B)酸化グラフェンナノプレートレット。
図23C】残りのSBMパラメータを浮動させた、表8に示された値における固定Q=8および固定Tについて得られた曲線。C)還元グラフェンナノプレートレット。
図23D】残りのSBMパラメータを浮動させた、表8に示された値における固定Q=8および固定Tについて得られた曲線。D)グラフェンナノリボン。Dの中のグラフェンナノリボンの適合は、予想以上に驚くほど悪い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、1つ以上の磁性金属と、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造を備える、磁性組成物を提供する。磁性組成物は、常磁性または反磁性であり得る。好ましくは、磁性組成物は、常磁性である。磁性組成物は、強磁性であり得る。磁性組成物はまた、超常磁性でもあり得る。
【0030】
好ましくは、本発明の磁性組成物は、少なくとも約3、5、10、20、30、40、50、60、70、80、100、または500mM−1−1の緩和能r1を呈する。具体的実施形態では、本発明の磁性組成物は、約45mM−1−1の緩和能r1を呈する。別の具体的実施形態では、本発明の磁性組成物は、約73mM−1−1の緩和能r1を呈する。
【0031】
好ましくは、本発明の磁性組成物は、少なくとも約3、5、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、または1000mM−1−1の緩和能r2を呈する。具体的実施形態では、本発明の磁性組成物は、約15mM−1−1の緩和能r2を呈する。別の具体的実施形態では、本発明の磁性組成物は、約251mM−1−1の緩和能r2を呈する。
【0032】
グラフェンは、2次元(2D)ハニカム格子に緊密に詰め込まれた炭素原子の平坦な単分子層であり、全ての他の次元の黒鉛材料に対する基礎構成要素であり、0Dフラーレンに包み込む、1Dナノチューブに巻き込む、または3D黒鉛に積み重ねることができる(非特許文献27)。本明細書で使用されるように、「グラフェン様ナノ構造」(または「グラフェン様ナノ粒子」)という用語は、1つ以上の原子炭素シートまたは層を備える、炭素ナノ構造を指す。本願では、簡単にする理由で、「グラフェンナノ構造」という用語も、グラフェン様ナノ構造を指すために使用される。したがって、明示的に記述されない限り、「グラフェンナノ構造」という用語は、単一の原子炭素シートのみを有するナノ構造に限定されない。グラフェン様ナノ構造は、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンであり得る。炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、酸化させることができる。
【0033】
好ましくは、黒鉛ナノ構造または微細構造は、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、250nm以下、または100nm以下の厚さを有する。
【0034】
一実施形態では、黒鉛微細構造は、1〜5μm、2〜4μm、または2〜3μmの範囲内の厚さを有する。別の実施形態では、黒鉛微細構造は、1〜5μm、2〜4μm、または2〜3μmの範囲内の構造の最長の長さを有する。
【0035】
好ましくは、グラフェン様ナノ構造、例えば、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、約20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下、または3nm以下の厚さを有する。グラフェン様ナノ構造、例えば、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、少なくとも1原子炭素シート、少なくとも2原子炭素シート、少なくとも5原子炭素シート、または少なくとも10原子炭素シートを備えることができる。一実施形態では、グラフェン様ナノ構造、例えば、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、1〜12原子炭素シートを備える。具体的実施形態では、グラフェン様ナノ構造、例えば、炭素ナノプレートレットまたは炭素ナノリボンは、1〜2原子炭素シートを備える。
【0036】
好ましくは、グラフェン様ナノ構造は、5〜100nm、10〜75nm、20〜50nm、または30〜40nmの範囲内の平均直径を有する、炭素ナノプレートレットである。具体的実施形態では、炭素ナノプレートレットは、約20nmの平均直径を有する。別の具体的実施形態では、炭素ナノプレートレットは、約50nmの平均直径を有する。なおも別の具体的実施形態では、グラフェン様ナノプレートレットは、1〜5nmの範囲内の厚さ、および約50nmの直径を有する。
【0037】
好ましくは、グラフェン様ナノ構造は、1〜250nm、10〜200nm、50〜150nm、または70〜100nmの範囲内の平均幅を有する、炭素ナノリボンである。具体的実施形態では、炭素ナノリボンは、約120nmの平均幅を有する。好ましくは、炭素ナノリボンは、200〜5000nm、400〜4000nm、または500〜3000nmの範囲内の平均長を有する。具体的実施形態では、炭素ナノリボンは、600〜2000nmの範囲内の平均長を有する。
【0038】
グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造はさらに、グラフェン様ナノ構造または微細構造に付着した水溶性化部分を含むことができる。一実施形態では、水溶性化部分は、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に共有結合している。具体的実施形態では、水溶性化部分は、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に付着した、マロン酸およびセリノールマロノジアミドから成る群より選択される。水溶性化部分は、当技術分野で公知である任意の方法を使用して、例えば、ビンゲル型反応(非特許文献28)を使用して、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に付着させることができる。別の具体的実施形態では、水溶性化部分は、天然ポリマーデキストランまたは合成ポリマーポリエチレングリコールである。水溶性化部分は、当技術分野で公知である任意の方法を使用して、高温(60〜95℃)で1〜3時間にわたって超音波処理を使用して、共有または非共有結合することができる。
【0039】
本発明の磁性組成物の中の磁性金属は、外部から印加された磁場の存在または非存在下で磁性を呈する、任意の金属であり得る。一実施形態では、磁性金属は、限定されないが、内部遷移金属Mnを含む、室温常磁性金属元素である。別の実施形態では、磁性金属は、限定されないが、内部遷移金属Fe、Co、およびNiを含む、室温強磁性金属元素である。なおも別の実施形態では、磁性金属は、限定されないが、ランタノイドGd、Eu、Pr、Nd、およびSmを含む、希土類金属である。本発明で使用することができる好ましい磁性金属は、Mn、Gd、およびFeを含む。
【0040】
磁性組成物は、1つよりも多くの磁性金属を含むことができる。一実施形態では、磁性組成物は、2つの異なる磁性金属を含む。好ましい実施形態では、磁性組成物は、MnおよびFeを含む。
【0041】
磁性金属は、イオンとして磁性組成物の中に存在することができる。磁性金属はまた、限定されないが、金属酸化物および金属塩を含む、金属化合物の形態で、磁性組成物の中に存在することもできる。好ましい実施形態では、磁性金属は、金属酸化物の形態で磁性組成物の中に存在する。
【0042】
好ましい実施形態では、磁性金属またはその化合物は、グラフェン様ナノ構造あるいは黒鉛ナノまたは微細構造に挿入することができる。
【0043】
本発明の磁性組成物は、1ppb(質量パーツ・パー・ビリオン)〜10ppm(質量パーツ・パー・ミリオン)、10ppb〜10ppm、10ppb〜10ppm、1ppm〜10ppm、10〜10ppm、または10〜10ppmの範囲内の量で磁性金属を含むことができる。
【0044】
特に好ましい実施形態では、本発明の磁性組成物は、本明細書で説明されるようなグラフェン様ナノ構造と、Mnとを含む。一実施形態では、Mnは、酸化Mnとして存在する。別の実施形態では、Mnは、二価および/または三価Mnとして存在する。なおも別の実施形態では、酸化Mnは、ハウスマン鉱を含む。
【0045】
一実施形態では、磁性組成物は、炭素ナノプレートレットと、10〜5.5×10ppmの範囲内、例えば、約5×10ppmの量でMnとを含む。
【0046】
別の実施形態では、磁性組成物は、炭素ナノリボンと、10〜10ppmの範囲内、例えば、約5×10ppmの量でMnとを含む。なおも別の実施形態では、Mnは、0.1〜2ppm、0.2〜1.5ppm、または0.5〜1ppmの範囲内の量である。
【0047】
本発明はまた、本発明の十分な量の磁性組成物を対象に投与することと、磁気共鳴映像デバイスを使用して、対象を撮像することとを含む、対象の磁気共鳴映像法を行う方法も提供する。対象は、限定されないが、ほ乳類を含む、任意の動物であり得る。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。本発明の磁性組成物は、単独で、または限定されないが、別のMRI造影剤を含む、別の作用物質と組み合わせて使用することができる。磁性組成物は、限定されないが、静脈内、血管内注射、および経口投与を含む、当技術分野で公知である任意の方法によって、対象に投与することができる。当業者であれば、目的とする組織、器官、または体内の他の領域、および/またはスキャンの目的にしたがって、適切な投与経路を選択することができるであろう。磁気共鳴映像法は、当技術分野で公知である任意の標準方法およびデバイスによって実行することができる。本発明の磁性組成物および/または別のMRI CAは、限定されないが、細胞外液または初回通過MRI CA、血液プールMRI CA、器官特異的MRI CA、および分子撮像MRI CAを含む、撮像剤の任意の好適な形態であり得る。
【0048】
本発明はまた、1つ以上のコンテナの中に十分な量の1つ以上の磁性組成物を備える、MRI撮像で使用するためのキットも提供する。十分な量の磁性組成物とは、MRI画像において画像コントラストの強化をもたらすのに十分な組成物の量を指す。磁性組成物は、限定されないが、細胞外液または初回通過MRI CA、血液プールMRI CA、器官特異的MRI CA、および分子撮像MRI CAを含む、撮像剤の任意の好適な形態であり得る。
【0049】
磁性組成物の毒性は、例えば、LD50(集団の50%までの致死量)を判定するために、細胞培養および/または実験動物において標準手順によって判定することができる。有効量は、臨床的に容認された標準に従って推定することができる。細胞培養検定および/または動物実験から得られたデータは、ヒトで使用するための投与量の範囲を製剤化するために使用することができる。そのような磁性組成物の投与量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない、MRI画像を強化するのに効果的である、濃度の範囲内である。投与量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。当業者であれば、標準プロトコルに基づいて、磁性組成物の好適な投与量を選択することができるであろう。
【0050】
本発明に従って使用するための組成物は、例えば、投与経路、例えば、経口または非経口投与に応じて、1つ以上の生理学的に容認可能な担体または賦形剤を使用して、従来の様式で製剤化することができる。
【0051】
経口投与については、磁性組成物は、例えば、結合剤(例えば、アルファトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、乳糖、微結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石、またはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)等の薬学的に容認可能な賦形剤を用いて、従来の手段によって調製される、錠剤またはカプセルの形態を成してもよい。錠剤は、当技術分野で周知の方法によって被覆されてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態を成してもよく、あるいはそれらは、使用前に水または他の好適な媒介物とともに構成するための乾燥製品として提示されてもよい。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒介物(例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および防腐剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、あるいはソルビン酸)等の薬学的に容認可能な添加剤を用いて、従来の手段によって調製されてもよい。製剤はまた、適宜に、緩衝塩、香味料、着色料、および甘味剤を含有してもよい。
【0052】
化合物は、注射による、例えば、ボーラス注射または連続注入による、非経口投与のために製剤化されてもよい。注射用の製剤は、例えば、アンプルの中で、または多用量コンテナの中で、単位剤形で提示されてもよい。組成物は、油性または水性媒介物において懸濁液、溶液、または乳剤等の形態を成してもよく、懸濁化、安定、および/または分散剤等の製剤化剤を含有してもよい。代替として、有効性分は、使用前に、好適な媒介物、例えば、発熱物質を含まない滅菌水とともに構成するための粉末形態であってもよい。
【0053】
好適な投与経路は、例えば、筋肉内、皮下、髄内注射、ならびに髄腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射を含む、経口および非経口送達を含んでもよい。
【0054】
さらに、標的薬剤送達システムにおいて、例えば、罹患細胞に特異的な抗体で被覆されたリポソームにおいて、薬剤を投与してもよい。リポソームは、目的とする細胞に標的化され、それによって選択的に取り込まれるであろう。
【0055】
組成物は、所望であれば、磁性組成物を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、パックまたはディスペンサデバイスの中で提示されてもよい。パックまたはディスペンサデバイスは、投与のための指示書を伴ってもよい。適合性担体の中で製剤化される本発明の磁性組成物を含む、組成物もまた、調製され、適切なコンテナの中に配置され、使用のために標識されてもよい。
【0056】
したがって、本発明はまた、対象の磁気共鳴映像法で使用するための本発明の磁性組成物も提供する。
【0057】
本発明はまた、磁性金属と、グラフェン様炭素ナノ構造とを含む、磁性組成物を生産する方法も提供する。本方法は、硫酸HSO、硝酸(HNO)、硝酸ナトリウムNaNO、塩化マンガン(MnCl)、および過マンガン酸カリウムKMnOの混合物で黒鉛を酸化させることと、前のステップで得られた生成物の懸濁液を超音波で分解することとを含む。本方法はさらに、還元剤で磁性組成物を還元するステップを含むことができる。一実施形態では、還元剤は、ヒドラジン水和物である。一実施形態では、本発明の方法で使用される黒鉛は、例えば、約45μmのサイズを有する、微小黒鉛である。
【0058】
本発明はまた、磁性金属と、グラフェン様炭素ナノ構造とを含む、磁性組成物を生産する方法も提供する。本方法は、硫酸HSO、硝酸(HNO)、塩化マンガン(MnCl)、および過マンガン酸カリウムKMnOで多層炭素ナノチューブを処理することを含む。一実施形態では、処理は、濃縮HSOの中で該多層炭素ナノチューブを懸濁させることと、KMnOを添加することと、混合物を加熱することとを含む、方法によって実行される。具体的実施形態では、混合物は、55〜70℃まで加熱される。
【0059】
磁性組成物は、当技術分野で公知の方法を使用して、水溶性化することができる。一実施形態では、磁性組成物は、フラーレンおよび金属内包フラーレンの炭素炭素二重結合にわたって、カルボン酸官能基を添加するために使用される、付加環化反応に類似する合成プロトコルを使用して、水溶性化することができる(非特許文献29)。
【0060】
[実施例]
以下の実施例は、本発明の例証として提示され、いかようにも本発明を限定することを目的としていない。
【0061】
[実施例1]
材料および方法
【0062】
グラフェンナノプレートレット(GNP)合成:
【0063】
修正されたHummerの方法(非特許文献26、非特許文献30)を使用して、分析グレード微小黒鉛(45μm、496596−Sigma Aldrich)から酸化黒鉛を調製した。典型的な剥離手順で、乾燥酸化黒鉛(200mg)を、MnClとともに水(200ml)を含有する丸底フラスコの中で懸濁させ、超音波浴クリーナ(Fischer Scientific、FS60、230W)の中で1時間にわたって超音波で分解した(非特許文献20)。この均一な溶液の50mlを遠心分離し、ペレットを一晩乾燥させて、酸化グラフェンナノプレートレット(GNP)を得た。残りの150mlをヒドラジン水和物(1.5ml、37.1mmol)で処理し、水冷凝縮器の下で100℃にて油浴の中で12時間加熱し、黒い沈殿物をもたらした。生成物を単離し、媒体焼結ガラス濾過漏斗上で水(500ml)およびメタノール(500ml)により洗浄し、連続空気流によって乾燥させ、還元グラフェンナノプレートレットを生じた。
【0064】
グラフェンナノリボン(GNR)合成:
【0065】
前述のものに対する修正された手順(非特許文献21、非特許文献25)を使用して、MWCNT(636843−Sigma Aldrich)からグラフェンナノリボンを調製した。MWCNT(150mg、12.5ミリ等量の炭素)を、30mlの濃縮のHSO中で2時間懸濁させた。KMnO(750mg、4.75mmol)、MnCl(1〜50mg)を添加し、混合物を1時間撹拌させた。次いで、反応物を、完了するまで55〜70℃にて油浴の中でさらに1時間加熱した。それを室温まで冷却し、生成物を酸性水、エタノール、およびエーテルで洗浄し、後続の遠心分離によって単離した。遠心分離は、100%収率で単純で容易かつ迅速な単離をもたらす。
【0066】
サンプル分析:
【0067】
JEOL JEM2010F(FEG−TEM)高分解能分析透過型電子顕微鏡を使用して、高分解能透過電子顕微鏡法(TEM)画像分析を、GNPおよびGNRサンプルに行った。撮像は、200kV加速電圧で実行された。均質混合物を形成するように1:1エタノール:水の中で乾燥粉末を分散させることによって、TEMサンプルを調製した。次いで、懸濁液を、レーシー炭素膜(EMS、Cat # LC305−Cu)で覆われた300メッシュCuグリッド上に堆積させた。530nmダイオードレーザ励起波長および室温にてThermo Scientific DXRラマン共焦点顕微鏡を使用して、黒鉛、酸化黒鉛、および全てのグラフェンサンプルのラマンスペクトル分析を、200〜3000cm−1の間で行った。
磁気的挙動の特性化:
【0068】
約10−8emuの感度を伴う超電導量子干渉素子(SQUID)磁気探知機を使用して、グラフェンサンプルの磁化を検討した。サンプルの重量を慎重に量り、ゼラチンカプセルの中に装填した。0から300Kの間で、−50000Oeから50000Oeの印加磁場範囲の間でサンプルを分析した。磁場冷却およびゼロ磁場冷却モードで、温度の関数としての磁化を検討するために、500Oeの保磁場を印加した。
【0069】
緩和能の特性化:
【0070】
緩和能測定について、全てのグラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンサンプルの1mgを、2mlの生物学的に適合した1%Pluronic F127界面活性剤溶液の中で、均一に分散させた。次いで、これらの飽和溶液(懸濁液)の浮遊物を、緩和時間測定に使用した。21.42MHzのプロトンNMR周波数および0.5T磁場強度において、iSpin−NMRシステム(Spincore technology)を使用して、縦および横緩和時間(T、T)を測定した。T、Tは、それぞれ、反転回復法およびCPMG方法を使用して測定された。緩和時間の逆数は、それぞれの緩和速度RおよびRを表す。MRI造影剤の効力の尺度である、緩和能(r、r)は、その濃度の関数として表される。それは、式r1,2=(R1,2−R)/[Mn2+]を使用して計算された。R1,2およびRは、それぞれ、サンプルおよび1%Pluronic F127界面活性剤溶液の縦または横緩和速度であり、[Mn2+]は、緩和測定で使用される溶液の体積の中のマンガンの濃度である。
【0071】
金属含有量分析
【0072】
我々のサンプルの中のマンガンの存在を確認するため、およびその濃度を判定するために、2つの民間分析試験所(Columbia Analytical Services, Tucson, AZ、およびGalbraith Laboratories, Inc., Knoxville, TN)で別々に、誘導結合プラズマ発光分光法(ICPOES)を実行した。カリウム[K]含有量も、全てのサンプルで推定された。ICPサンプル調製について、緩和時間測定に使用されたPluronic溶液中のサンプルの懸濁液を、濃縮HNOで処理し、慎重に加熱して固体残渣を得た。次いで、それらを30%Hでさらに処理し、再び加熱して炭素質物質を排除した。固体サンプルの場合、それらを過酸化物および熱処理に直接さらして、炭素質含有量を除去した。それぞれの場合において、残りの残渣を2%HNOの中で溶解させ、Thermo Jarrell Ash ICAP 61誘導結合プラズマ分光計を使用したICPによって分析した。
【0073】
生体外ファントムMRI
【0074】
3T Trio Siemens MRIシステムを使用して、生体外TおよびTMRIファントム実験をナノリボンサンプルに行い、Tには500ミリ秒の繰り返し時間(TR)および10ミリ秒のエコー時間(TE)、T測定には8000ミリ秒のTRおよび112ミリ秒のTEで2Dスピンエコー映像法を使用して、画像を得た。
結果および考察
【0075】
本実施例は、黒鉛およびMWCNT等の出発原料を使用した単純化学酸化手順(例えば、合成の詳細については方法および材料の節を参照)が、MRI造影剤としての潜在性を示し、磁性マンガン挿入グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンを生じることを示す。
【0076】
図1(a、b)は、それぞれ、それらの構造および形態学的情報を提供する、還元グラフェンナノプレートレットの代表的な低倍率および高倍率TEM画像を示す。図1(a)で見られるように、それらは、約20nmの平均幅を伴って形状が丸く見える。いくつかのプレートレットは、他のプレートレットよりも色が濃く見え、これは、多層酸化グラフェンシートの存在によるものである。ほとんど透明である、より色が薄いものは、単層または二重層酸化グラフェンシートである。図1(b)は、格子グリッド線および六角炭素原子環が明確に可視的である、個々のグラフェンシートの原子格子縞構造を表す(非特許文献31)。Si基材上の酸化グラフェンナノプレートレット分散のAFM区分分析は、約1.137nmの均一な厚さを見せた(図7)。本来のグラフェンシートは、0.34nmの原子層厚さ(ファン・デル・ワールス)を有する。カルボキシルおよびヒドロキシル基との共有結合の存在、および酸化グラフェンナノプレートレット構造の中のsp炭素原子の変位が、厚さの増加の理由であることが知られている(非特許文献20)。
【0077】
図1(c、d)は、それぞれ、グラフェンナノリボンの代表的な低倍率および高倍率TEM画像を示す。図1(c)で見られるように、グラフェンナノリボンは、グラフェンシートの完全アンジッピング層を有する。図1(d)の高分解能TEM画像は、MWCNTの同心壁の連続アンジッピングにより、ナノリボンが多層(矢印)であることを明確に示す。酸化グラフェンナノリボンの原子構造表面の質は、欠陥がほとんどなく、大部分が均一かつ平滑に見える。出発原料であるMWCNTは、40〜70nmの外径および500〜2000nmの長さを有する。MWCNTは、円筒であるため、アンジッピング時に、125〜220nmである直径×πの範囲内の幅および500〜2000nmの長さを有するように完全に開くべきである。TEM画像の分析は、グラフェンナノリボンの平均幅が、70nmのMWCNTの最外管の外径よりも大きい、約120nmであることを示し、したがって、アンジッピングのプロセスを検証する。しかしながら、この平均値は、完全に平坦なリボンに必要とされる範囲125〜220nmよりもわずかに小さく、これは、アンジッピングプロセスが完全に平坦なリボンをレンダリングしないが、リボンが依然として管の何らかの曲率を保持し、したがって、完全に平坦なシートに期待されるよりも小さい幅を有するという事実によって、立証することができる。TEM画像は、アンジッピングMWCNTに対する計算された範囲内に入る、約600〜2000nmの平均長を示す。
【0078】
図2(a)は、酸化および還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルを示す。また、黒鉛および酸化黒鉛のラマンスペクトルも対照として含まれる。黒鉛のスペクトルは、二重退縮ゾーン中心E2gモード(非特許文献32)に起因するGバンドを示す、1581cm−1における顕著で急なピークを示す。酸化黒鉛の場合、Gバンドの広がりおよび1595cm−1へのピーク偏移がある。さらに、ゾーン境界光子が、1345cm−1においてDバンドを生じ、それは、酸化による不規則spドメインの増加および結晶サイズの縮小を示して顕著になる。黒鉛の酸化のプロセスにより、黒鉛に対する0.407から酸化黒鉛に対する1.2まで、D対Gピークの強度の比(I/I)の増加がある(非特許文献32)。酸化グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットのスペクトルは、それぞれ、1.3および1.44といったI/Iのさらなる増加を示す。図2(a)は、還元グラフェンナノプレートレットの場合、DおよびGバンドのピークが、黒鉛の値(それぞれ1330cm−1および1590cm−1)により近く偏移させられており、それが、ある程度の次数の削減および回復中に酸素官能基の除去に起因することを示す。しかしながら、I/I1.44の増加は、そのような小さいサイズの不規則ドメインの数の増加に加えて、spドメインの平均サイズの縮小によるものである(非特許文献21)。
【0079】
加えて、酸化黒鉛および還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルはまた、約657cm−1、370cm−1、および320cm−1において、付加的なピークも示した(図8)。ピークを識別するために、RRUFF(商標)プロジェクト収集を使用したラマンスペクトルデータベース検索を行った。これは、観察されたピークが、ハウスマン鉱として知られている、二価および三価マンガンを含有する錯体によるものであることを確認した(図8参照)。図8では、サンプルのGおよびDバンドが、ハウスマン鉱の付加的なピークとともに見られ、酸化マンガンが、これらの領域において炭素質基質に挿入されることを確認する。ハウスマン鉱(Μn)ナノ結晶は、空気中で高温にてマンガンの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、または硫酸塩の焼成を伴う、種々の方法によって合成されることが知られている(非特許文献33、非特許文献34)。これらの方法の大部分がMn(II)化合物の酸化を伴う一方で、KMnOの還元もまた、Mnの形成をもたらすことが知られている(非特許文献35、非特許文献36)。この場合、正確な機構は依然として不明であるが、硝酸(HNO)等の強力な酸化剤の存在が、KMnOの還元を引き起こしたことが示唆されている。分析を行いながら、酸化黒鉛およびグラフェンナノプレートレットの全てのスペクトルがハウスマン鉱ピークを示したわけではないことが観察された。ハウスマン鉱ピークの存在は、サンプルの配向およびサンプルスポットサイズに敏感であり、これらのピークが、酸化マンガン挿入の領域のみで見られたことを確認した。
【0080】
図2(b)は、グラフェンナノリボンおよびMWCNTのラマンスペクトルを示す。(図2(a)の)ナノプレートレットのスペクトルと同様に、ナノリボンのスペクトルは、1600cm−1における偏移ピークを伴う広いGバンド、ならびに1310cm−1における顕著なDバンドを確認する。MWCNTのラマンスペクトルと比較して、0.045から1.57までのI/I値の増加が見られた。これは、1よりも大きいI/Iがナノリボンについて観察された、MWCNTの化学酸化に由来するナノリボンのラマンスペクトルについての以前の報告と一致する(非特許文献21)。偏移Gバンドは、図2(a)の黒鉛の酸化により見られる偏移と同様に、MWCNTの酸化アンジッピングによるものである。高い強度および広いDバンドは、そのような小さいサイズの不規則ドメインの数の増加に加えて、spドメインの平均サイズの縮小の効果によるものである。ナノリボンを用いると、ナノプレートレットについて見られるハウスマン鉱ピーク等のマンガンを示すいかなる異常なラマンピークも検出することができなかった。
【0081】
ナノプレートレットおよびナノリボンの中のマンガン(Mn2+)の存在を確認するために、ICPOESによる元素分析を乾燥固体サンプルについて行った。酸化黒鉛、グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットは、それぞれ、484000、540000、および516000ppmのマンガンを有すると報告されているが、対照黒鉛は、わずか0.1ppmのマンガンを有する。これは、これらのサンプルの中のマンガンの支配的な存在を確認する。グラフェンナノリボンの場合、570ppmが報告された。実験は、グラフェンナノリボンのラマンスペクトルにおいて、いかなるマンガン関連ピークも検出することができなかったが、この値は、その存在を確認した。それがMWCNTのKMnOベースの酸化を通して導入されたことを明確にするために、出発原料、MWCNT、および最終ナノリボン製品の含有量を比較した。MWCNTに対する25ppmからナノリボンに対する570ppmまで、マンガン含有量の約25倍増加が観察された。これは、本方法で使用される酸化手順に起因する。図3は、全てのサンプルのSQUID磁性特性化を示す。図3(a)は、3つの温度(30K、150K、および300K)に対する−50,000Oeから50,000Oeの間の対照である黒鉛の磁化(M)対磁場強度(H)のプロットを示す。負の傾斜は、反磁性挙動の特徴である印加磁場の増加とともに、磁気モーメントの値の減少を示唆する。図3(b)は、酸化黒鉛のM対Hプロットを示す。磁場強度とともに磁性モーメントの値の増加を示す、正の傾斜は、サンプルの常磁性挙動を確認する。黒鉛の酸化時の常磁性への変化は、修正されたHummerのプロトコル中に複合酸化マンガンとしてサンプルに挿入された、常磁性Mn2+イオンの存在に起因し得る。黒鉛に由来する還元グラフェンナノプレートレットにおける超常磁性挙動が観察された。強磁性質のナノ粒子集団(<30nm)で観察される磁気現象である、超常磁性は、磁性モーメントの整合の方向でのランダムな反転が温度の影響を受けて起こる、サイズ依存性現象である。サンプルが所与の温度で様々な磁場を受ける、磁化測定中に、超常磁性材料は、M対Hプロットにおいて「S」字形曲線を帯びる。これは、磁化を測定するのにかかる時間が、モーメントにおける連続反転のための時間よりもはるかに長いためである。結果として、磁場がない場合、平均磁化はゼロとして測定され、曲線はヒステリシスループの代わりに「S」字形を帯びる。図3(c、d)は、それぞれ、グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットのM対Hプロットを示す。図3(d)から、より低い温度(30K)で、ナノプレートレットサンプルが強磁性ヒステリシス曲線を示すことが明白である(非特許文献37、非特許文献38)。図3(d)の差し込み図から、超常磁性挙動が室温で観察されることが明白である。500Oeの均一な磁場強度および0から300Kの間で描画されたゼロ磁場冷却(ZFC)および磁場冷却(FC)曲線が、図3(e)で見られる。ZFC曲線におけるピークは、強磁性および超常磁性状態の間の遷移を示す、40Kのブロッキング温度(T)を表す。
【0082】
還元グラフェンナノプレートレットの磁気的挙動は、以前に報告されたようなハウスマン鉱とのはっきりした類似性を呈する(非特許文献39)。低温での強磁性および高温での常磁性が、ハウスマン鉱で報告された。還元グラフェンナノプレートレットと同様に、ハウスマン鉱は、40KのT、および両方の材料の異なる温度でのM対Hのプロットが類似することを示す(非特許文献39)。これは、ナノプレートレットの中の複合酸化マンガンの挿入を検証し、我々は、グラフェンナノプレートレットのナノ構造(幅約20nm)に加えて、この挙動が複合酸化マンガンの存在に起因すると考えることができる。30Kにおけるヒステリシス曲線の残余磁化は、12.47emu/gであり、飽和保磁力は、6298.68Oeである。以前の文献によれば、高い飽和保磁力は、サンプルの単一ドメイン性質および高い形状異方性に起因し得る。
【0083】
グラフェン、酸化グラフェン、およびナノリボンサンプルにおける室温強磁性の存在について、いくつかの理論的報告および少数の実験的報告がある(非特許文献40、非特許文献19)。酸化黒鉛から調製され、後に還元および焼鈍されたグラフェンサンプルについてのSQUIDを使用した、Wangらによる近年の実験研究は、室温強磁性を示している(非特許文献19)。考えられる磁性の起源は、焼鈍プロセスによる欠陥として存在するスピンユニットの長距離結合に起因する。それらは、金属不純物の欠如を検証し、磁性は処理によるグラフェンの固有特徴に起因すると考えられる。この場合、サンプルの中のマンガンの存在は、ICPOESおよびラマン分光法を通して確立される。これは、ナノプレートレットおよびハウスマン鉱の磁気データの類似性によって、さらに裏付けされる。たとえ酸化黒鉛サンプルがハウスマン鉱の存在を示したとしても、それらは常磁性挙動を呈する(非特許文献39)。還元グラフェンナノプレートレットの場合、いくつか他の因子が効果を現すと考慮して、ナノプレートレットの室温超常磁性は、挿入酸化マンガン、プレートレットのナノクラスタサイズ、およびグラフェンの中のsp炭素原子上の欠陥部位として存在するスピンユニットの長距離結合の組み合わせに起因する。さらに、スピンユニットの長距離の規則的な結合は、個々のシートの中の分子内挿入、またはグラフェン多層の隣接シート間の分子間挿入によるものであり得る。
【0084】
MWCNTから合成されたグラフェンナノリボンのSQUID分析はまた、室温で興味深い磁気的性質も示す。MWCNTの磁化対磁場強度のプロットが、図4(a)に示される。一貫した磁気パターンが見られず、磁気信号は、3つ全ての温度で極めて弱い。グラフェンナノリボンのM対Hのプロットは、図4(b)で見られるように超常磁性挙動を示す。しかしながら、図4(b)の差し込み図は、非常に低い残留磁気とともに強磁性挙動を示す、300Kにおけるヒステリシス曲線の平行線を示す。図4(c)は、FC/ZFCプロットを示し、ZFC曲線上の最大値は、室温を上回る高いブロッキング温度Tを表す、約>300Kで見られる。これは、磁気状態の遷移が効果を現した、300Kにおける薄いヒステリシスループを説明した。300Kで見られた飽和磁化は、2500Oeにおいて0.1emu/gであった。サンプルは、10Kにおいて250Oeの保磁場を示した。酸化鉄ナノ粒子ならびに微細構造が室温超常磁性を呈することが報告されている(非特許文献41、非特許文献42)。しかしながら、酸化鉄またはグラフェンにおいて室温強磁性を得ることは、合成後高温焼鈍プロセス、または反強磁性錯体に粒子を埋め込むことを必要とする(非特許文献19、非特許文献43)。近年、磁鉄鉱および磁赤鉄鉱酸化鉄ナノ粒子における比較的低い温度(185℃)での合成プロセスによる室温強磁性が報告されている(非特許文献44)。この研究報告は、サイズ依存性磁気的挙動を報告し、ブロッキング温度(T、強磁性から超常磁性への遷移の指標)は、3.2nm粒子に対する25Kから5.4nm粒子に対する330Kまでの増加を示す。この場合、70℃の温度で単純化学合成手順を用いて、T値>300Kを伴う室温強磁性から超常磁性の遷移を達成することが可能であった。Fe充填MWCNTにおける室温超常磁性についての以前の報告が報告されている(非特許文献45)。
【0085】
酸化グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの緩和能:
【0086】
0.05%濃度の1%Pluronic F127界面活性剤溶液の中で分散された全てのグラフェンサンプルに、21.42MHz、0.5T、および27℃で単一点緩和測定を行った。水中の酸化黒鉛の超音波剥離は、酸化グラフェンの薄いシートを含有する、安定したコロイド懸濁液をもたらした。これは、ヒドロキシルおよびカルボキシル基の親水性により実行可能であった。したがって、酸化グラフェンシートは、本来のグラフェンとは異なる。ここで使用されるような還元のプロセスは、全ての酸素基を完全には除去しなかった。MWCNTの酸化アンジッピングもまた、これらの官能基を酸化グラフェンナノリボンに追加することが分かった。グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンは、Pluronic等の水性生体適合性溶液中で均質な安定した分散を形成することができる。表1(a、b)は、各サンプルの金属イオン(マンガン)の濃度、緩和速度、および緩和能についての詳細を提供する。表1(a)から、酸化黒鉛が、グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットと比較したときに、強化されたrおよびr緩和能を示したことが明確である。マンガンベースのMRI造影剤である、Mn−DPDP(商業的にTeslascan(登録商標)として知られている)のNMR緩和能測定は、20MHzにおいて水溶液中でr=1.88mM−1−1およびr=2.18mM−1−1の緩和能値を示すことが報告されている(非特許文献46)。Teslascan(登録商標)と比較して、酸化黒鉛は、rの2倍の速度およびrの場合は4倍を示した。グラフェンナノプレートレットは、臨床対照物Teslascan(登録商標)と比較したときに、類似緩和能値を示した。しかしながら、表1(b)で見られるように、グラフェンナノリボンは、Teslascanおよびナノプレートレットと比較して、はるかに高い緩和能範囲を示した。少ないサンプル体積の中の微量のマンガンを分析する際の機器の検出制限により、ナノリボンの中の一連の濃度のマンガンを我々に提供した、2つの異なる分析研究所から、サンプルの金属含有量が分析され、したがって、ナノリボンの緩和能の上限および下限を計算した。rの範囲は、2.92〜9.8mM−1−1であり、rは、14.8〜50.3mM−1−1である。表1(b)はまた、ガドリニウム(Gd−DTPA)および超常磁性酸化鉄(Comibidex)に基づく他の臨床造影剤の緩和能と比較したときに、ナノリボンが有望な造影剤性能を呈することも示す(非特許文献47、非特許文献48)。
【0087】
生体外ファントムMRI:
【0088】
水性グラフェンナノリボンサンプル、対照として、前臨床MRI造影剤として広く使用されているMnClおよび水の間でMR信号コントラストを比較するように、MRIファントム撮像を行った。代表的なTおよびT加重ファントムMRI画像は、同一のMn2+濃度におけるMnCl(r=9.2mM−1−1、r=93mM−1−1)および水と比較したときに、ナノリボンサンプルの場合の有意なコントラスト強化を示す。水に対するナノリボンおよびMnClの平均信号強度比を比較し、表2(b)に示されるように、ナノリボンのより高い信号コントラストが、TならびにTの場合に見られた。これは、プロトン分子の緩和速度の有意な強化をもたらす、ナノリボンの興味深い室温磁気性質に起因する。
【0089】
【表1a】
【0090】
【表1b】
【0091】
【表2】
【0092】
要約すると、この実施例は、単純化学酸化手順による新しい部類の官能化グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの合成を実証した。本実施例では、官能化グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンの合成が成功し、グラフェンナノプレートレットにおけるマンガンの存在およびその磁気的寄与が検証された。グラフェンナノリボンの場合、強磁性から超常磁性への室温磁性遷移とともに、非常に興味深い磁気的性質が見出された。本実施例はまた、マンガンおよび鉄等の磁性金属イオンの構造、キラリティ、および存在が、これらの炭素物質の緩和速度を有意に強化することも示す。これらのナノプレートレットおよびナノリボンは、MRI撮像のための官能化グラフェンベースの造影剤として使用することができる。
【0093】
[実施例2]
新規のグラフェンナノプレートレット(GNP、1〜5ナノメートル(nm)の厚さおよび約50nmの直径を伴うグラフェン(黒鉛の1原子厚さのシート)の小さいスタック(1〜12層))(図1aおよび1b)が、マウスのMRIスキャンにおいてMRI造影剤として試験された。GNPは、単分散、水溶性であり、挿入され(2つのグラフェンシート間の空隙内の化学種の挿入)、微量のマンガン(GNPの中の0.1%w/w(w=重量)のマンガン、すなわち、100グラムのGNPにつき0.1グラムのマンガン)と協調した。GNPは、Mn−DPDP(Teslascan、臨床MnベースのCA、3Tでr1=2.8mM−1−1)よりもほぼ16倍高く、Gd−DTPA(Magnevist、臨床GdベースのCA、3Tでr1=4.2mM−1−1)よりも約10倍高い、r1=45mM−1−1の緩和能を示した。3テスラ臨床スキャナを使用した、T加重小動物MRIを使用したスキャン(図6)は、臨床投与量におけるMagnevistと比較して、約100倍優れたコントラスト強化を示した。
【0094】
[実施例3]
グラフェンナノプレートレット(GNP)
【0095】
最初に、修正されたHummerの方法(過マンガン酸カリウムおよび濃縮硫酸による処理)を使用して、酸化黒鉛(GO)を分析グレード微小黒鉛から調製し、超音波浴クリーナの中で1時間の超音波処理によって、グラフェンナノプレートレット(GNP)に変換した(非特許文献49)。次に、フラーレンおよび金属内包フラーレンの炭素炭素二重結合にわたって、カルボン酸官能基を添加するために使用される、付加環化反応に類似する合成プロトコルを使用して、GNPが水溶性化される(非特許文献29)。GNPは、デキストラン等の天然ポリマーまたはポリエチレングリコール等の合成ポリマーでそれらを共有または非共有的に被覆することによって、水溶性化される。
【0096】
対照
【0097】
Magnevistは、臨床MRI造影剤の基準と見なされるため、対照が必要とされる実験で使用される。加えて、GNP MRI CAの生理化学、薬理学、薬物動態、および撮像性質が、Omniscan(ガドジアミド、Gd−DTPA−BMA、GE Healthcare)、OptiMARK(ガドベルセタミド、Gd−DTPABMEA、Covidien)、Magnevist(ガドペンテト酸ジメグルミン、Gd−DTPA、Bayer Schering Pharma)、MultiHance(ガドベン酸ジメグルミン、Gd−BOPTA、Bracco Diagnostics)、Gadovist(ガドブトロール、Gd−BT−DO3A、Bayer Schering Pharma)、およびDotarem(ガドテル酸メグルミン、Gd−DOTA、Guerbet)等の他のFDA承認された臨床GdベースのMRI CAの公表値5,9と比較される。
【0098】
動物
【0099】
ウィスター系ラット(Charles River labs, Wilmington, MA)が、以前の前臨床研究(非特許文献50)で広く使用されているため、この動物モデルが使用される。
【0100】
水溶性および生理化学的特性化のためにGNP MRI CAを合成および官能化する
【0101】
重量オスモル濃度
【0102】
この試験は、血液の流体成分で見出される全ての化学粒子の濃度を測定する。重量オスモル濃度は、造影剤に対する耐性の分析における重要な因子であり、それにより、局所および全身反応の両方が、特に、より高い用量で役割を果たす(非特許文献51、非特許文献52、非特許文献53)。重量オスモル濃度は、37℃で示差サーミスタ浸透圧計を使用して判定される。2つのGNP濃度、0.5mol/1溶液(0.57オスモル/kg)および1mol/1溶液(1.39オスモル/kg)が使用される。これらの値は、他のGdベースのMRI CAの前臨床研究に基づいて選択されている。
【0103】
分配係数
【0104】
分配係数分析は、GNP MRI CAの親水性(「水を好む」)または疎水性(「水を避ける」)レベルの尺度を提供する(非特許文献54)。分配係数は、体内のGNP分布の推定を可能にする。GNPが高い分配係数を示す場合、これは、このCAが、細胞の脂質二重層等の疎水性区画に優先的に分配されるであろうという指標であり、低い分配係数が観察される場合、GNPは、血清等の親水性区画で優先的に見出されるであろう。分配係数は、ブタノールおよびTris−HCl緩衝液(pH7.6)を使用して測定される。相の完全な分離後、ブタノールおよび緩衝液中のGNP濃度が、ラマン分光法によって判定される。
【0105】
生体外緩和能
【0106】
およびRが、それぞれ、GNP溶液および淡水またはウシ血漿の縦緩和速度(R0,1=l/T0,1 S−1)であり、[Mm+]が、マンガン濃度である、方程式r=(R−R)/[Mn2+]を使用して、水およびウシ血漿中のGNPの緩和能r(3T臨床MRスキャナ、温度=37℃)が計算される。
【0107】
タンパク質結合
【0108】
CAの効力は、それが血漿タンパク質に結合する程度の影響を受け得る(非特許文献50)。したがって、タンパク質結合が、限外濾過を用いて、1mmol/lの濃度のヒト血漿において測定される。
【0109】
ヒスタミン放出
マクロファージのヒスタミン放出は、MRI CAに対する種々の有害反応に関連した重要な現象である(非特許文献55)。ヒスタミンが豊富な顆粒を含有する、いくつかの細胞型における常在細胞である、マスト細胞(肥満細胞および肥大細胞としても知られている)が、0〜250mmol/lに及ぶGNP MRI CA(Magnevistが対照として使用される)濃度を含有する、緩衝液中で培養される。ヒスタミン放出が、ヒスタミン解放化合物48/80によって引き起こされる放出の50%に近づく濃度である、I50が計算される。
【0110】
ラットにおける高性能MRI CAとしての水溶性GNPの影響を評価する生体内MRI研究
【0111】
MRI調査が、ヒトの心臓、脳、または筋肉内の病変を模倣する病変を伴うラットに行われる。ラット(雄、ウィスター系ラット、170〜180g、n=1群あたり3)における脳梗塞、脳腫瘍、または筋肉内腫瘍の誘発が、十分に確立されたプロトコル(非特許文献50)を使用して達成される。撮像前に、動物は麻酔され(イソフルラン)、カテーテルが、造影剤の注射のために尾静脈に固定される。造影剤注射の直後に、全てのMRI CAが注入管から取り除かれていることを確実にするように、約5mLの0.9%生理食塩水が注射される。3T臨床MRスキャナ(Siemens medical systems, Malverns, PA)が使用され、T加重スピンエコー画像が獲得される。撮像は、0.1mmol/kgのGNPまたはMagnevist(対照)の注射の1分前および後に、ならびに同一動物への初回投与の5分後に与えられる0.2mmol/kgの付加的な用量の注射の1分後に行われる。造影剤注射前検査と同一の平面内で、同一のパラメータを用いて、造影剤注射後画像が得られる。実験および対照群における信号対雑音比およびコントラスト対雑音比(CNR)が、目的とする領域で得られ、統計分析が行われる。MR画像の解釈の経験がある2人の放射線医によって、画像が精査される。CAの効力が評価され、a)診断に向けた付加的な情報の提供、b)診断の信頼の増加、c)そうでなければ可視的ではない病変の検出、およびd)他のパルスシーケンスで見られる病変のより優れた特性化のための重要な情報の提供といった、基準を使用して、臨床施術者間の合意に到達する。病変強化が明白である場合において、造影剤は、診断でa)役に立たない、b)軽微に役立つ、c)中程度に役立つ、またはd)極めて役立つと判断される。
【0112】
ラットにおける生体内薬物動態、生体内分布、および毒性研究
【0113】
排出および生体内分布
【0114】
長期排出および生体内分布を判定するために、0.25mmol/kgのGNP MRI CAが、体重90〜110gの5匹の雄および5匹の雌ウィスター系ラットの尾静脈に静脈内注射される。次いで、動物は代謝ケージの中に入れられる。
【0115】
糞尿が毎日収集され、GNPおよびマンガン含有量が測定される。
【0116】
動物は、注射後7日に犠牲にされる。血液、肝臓、腎臓、脾臓、骨サンプル(大腿骨)、脳、および残りの身体が、ラマン分光法によるGNP含有量および誘導結合プラズマ(ICP)分光法によるマンガン含有量の測定のために収集される。
【0117】
薬物動態
【0118】
体重90〜110gの5匹のウィスター系ラットに実験が行われる。実験の前および間に、動物は、個々の代謝ケージの中に収容される。125I−GNP(125I半減期=59.4日)が、0.25mmol/kg血液(0.5ml)の用量で尾静脈に注射され、血液が、GNP MRI CA注射の前、5、10、20、および30分、ならびに1、1.5、2、3、6、および24時間で、および7日後に、頸静脈から引き出される。尿が、0.5、1、2、3、6、および24時間で、次いで、7日間にわたって毎日、定量的に収集される。糞が、7日にわたって毎日、定量的に収集される。尿、糞、および血漿サンプルのアリコートが、ガンマ線シンチレーションカウンタによって放射分析される。尿画分および血漿サンプル(注射の5または20分および2時間後)が、HPLC分析を使用して、潜在的な代謝産物について分析される。
【0119】
血漿中の最終的な排出半減期の計算のための薬物動態プログラムTOPFIT、ならびに血漿および尿データからの分布のクリアランスおよび定常状態体積を使用して、モデル独立アプローチが適用される(非特許文献56)。
【0120】
急性毒性
【0121】
GNP MRI CA(2mols/l)が、雄および雌ウィスター系ラット(90〜110g、雄対雌比1:1)に静脈内注射される。用量は、10、50、100、250mmol/kgであり、各投与量群は、8匹の動物から成る。動物は、注射後7日の観察期間の全体を通して監視される。LD50は、プロビット分析を用いて計算される(非特許文献57)。
【0122】
[実施例4]
【0123】
本実施例は、酸化黒鉛またはグラフェンナノ粒子を合成するために使用される酸化化学手順が、グラフェンシート間の微量のMn2+イオンの閉じ込め(挿入)につながり、これらのマンガン挿入黒鉛およびグラフェン構造が、異種の構造、化学、および磁気的性質、ならびに常磁性キレート化合物と比較して、高い緩和能(最大で2次数)および明確に異なる核磁気共鳴分散プロファイルを示すことを実証する。結果は、黒鉛炭素粒子のサイズ、形状、または構造ではなく、グラフェンシート内の常磁性金属イオンの閉じ込め(挿入)が、緩和能を増加させるための主要な決定因子であり、したがって、高緩和能MRI造影剤としての常磁性金属イオン黒鉛炭素錯体を開発するための新規の一般方策として、常磁性イオンのナノ閉じ込めを識別することを示す。
【0124】
材料および方法
【0125】
1.グラフェンナノプレートレットおよびナノリボン合成
【0126】
合計5バッチのグラフェンナノプレートレットおよびナノリボンを調製し、特徴付けた。緩和能結果を除く、提示された全ての結果は、単一のバッチのデータを表す。実施例1で描写されるような修正されたHummerの方法によって、分析グレード微小黒鉛(Sigma Aldrich, New York)から酸化微小黒鉛を調製した。典型的な剥離手順で、乾燥酸化黒鉛(200mg)を、水(200ml)を含有する丸底フラスコの中で懸濁させ、超音波浴クリーナ(Fischer Scientific、FS60、230W)の中で1時間にわたって超音波で分解した。この均一な溶液の50mlを遠心分離し、ペレットを一晩乾燥させて、酸化グラフェンナノプレートレットを得た。残りの150mlをヒドラジン水和物(1.5ml、37.1mmol)で処理し、水冷凝縮器の下で100℃にて油浴の中で12時間加熱し、黒い沈殿物をもたらした。生成物を単離し、媒体焼結ガラス濾過漏斗上で水(500ml)およびメタノール(500ml)により洗浄し、連続空気流によって乾燥させ、還元グラフェンナノプレートレットを生じた。
【0127】
実施例1で説明されるものに類似する手順で、MWCNT(Sigma Aldrich, New York)からグラフェンナノリボンを調製した。MWCNT(150mg、12.5ミリ等量の炭素)を、30mlの濃縮のHSO中で2時間懸濁させた。KMnO(750mg、4.75mmol)を添加し、混合物を1時間撹拌させた。次いで、反応物を、完了するまで55〜70℃にて油浴の中でさらに1時間加熱した。それを室温まで冷却し、生成物を水、エタノール、およびエーテルで洗浄し、後に遠心分離によって単離した。
【0128】
2.磁気的挙動の特性化
【0129】
約10−8emuの感度を伴う超電導量子干渉素子(SQUID)磁気探知機を使用して、黒鉛、グラフェン、および対照サンプルの磁化を検討した。サンプルの重量を慎重に量り、ゼラチンカプセルの中に装填した。0から300Kの間で、−50000Oeから50000Oeの印加磁場範囲の間でサンプルを分析した。磁場冷却およびゼロ磁場冷却モードで、温度の関数としての磁化を検討するために、500Oeの保磁場を印加した。
【0130】
3.EPR測定
【0131】
高い100KHz磁場変調周波数とともに約9.8GHzのマイクロ波周波数で動作する、Bruker XバンドEPR分光計上の類似実験条件下で、全てのEPRスペクトルを室温(約296K)にて測定した。ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH、g=2.0036)の標準固体サンプルを用いて、磁場およびg値を較正した。EPRスペクトルのEPR基準を較正するように、ブランク石英管のEPRを測定した。1回は1kガウス掃引幅を用いて、次は6kガウス掃引幅を用いて、全てのEPRスペクトルを2回測定した。黒鉛、グラフェン、および対照の固体サンプルを、Wilmad石英EPR管の中に装填した。石英EPRサンプル管を、脱イオン水で徹底的に洗浄し、サンプルを装填する前に乾燥させた。高い誘電率を伴う水性および他の溶剤のために設計された石英平坦管を使用することによって、水性サンプルのEPR測定が行われた。液体サンプルを装填する前に、石英EPR平坦管を脱イオン水で徹底的に洗浄し、乾燥させた。石英平坦管の中への水性サンプルの装填を、最大感度のために、管の平坦部分の中へ慎重に行った。
【0132】
4.プロトン緩和能測定
【0133】
緩和能測定について、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットまたはグラフェンナノリボンサンプルの1mgを、2mlの生物学的に適合した1%Pluronic F127界面活性剤溶液中で分散させ、30Wにて10分間にわたって超音波で分解し、最終的に5000rpmにて1時間にわたって遠心分離した。遠心分離は、水溶性化されていない大型の濃密グラフェンナノ粒子が底部に沈むことを可能にし、浮遊物中の可溶性グラフェンナノ粒子の分離を可能にした。上澄み液も、任意の遊離Mn2+イオンの存在についてチェックした。これは、最初にHClでグラフェンナノ粒子を凝集させ、次いで、HNO中のビスマス酸ナトリウム(NaBiO)を用いて透明溶液を試験することによって達成された。この反応では、マンガンは、+2酸化状態(Mn+2)から、独特の紫またはピンク色を有する、+7酸化状態(MnO)まで酸化させられる。そのような色の変化は観察されず、遊離Mn2+イオンが上澄み液の中に存在しなかったことを示す。
【0134】
可溶性グラフェンナノ粒子を含有する上澄み液を、緩和時間測定に使用した。Minispec NMR分光計(Bruker Instruments, Woodland, Texas)上で20MHz(0.47T)において、縦および横緩和時間(T,T)を測定した。連続希釈法によって、5つの既知の濃度で各サンプルを調製した。温度は測定中に40℃で維持された。各実験サンプルおよび対照(1%Pluronic 127溶液)のTおよびT緩和時間は、それぞれ、反転回復法およびCPMG方法を使用して測定された。緩和時間の逆数は、それぞれの緩和速度RおよびRを表す。緩和速度(y軸)対濃度(x軸)のプロットを作成し、直線に適合させた。この線形適合の傾斜は、緩和能の値を生じた。単一点緩和能(r)が、NMRD測定中に得られた。緩和能値(r)は、式r=(R−R)/[Mn2+]を使用して計算され、R1,2およびRは、それぞれ、サンプルおよび1%Pluronic F127界面活性剤溶液の縦または横緩和速度であり、[Mn2+]は、緩和測定で使用される溶液の体積の中のマンガンの濃度である。高速磁場サイクリング緩和測定計(SPINMASTER FFC2000, Stelar Inc, Pavia, Italy)を使用して、プロトンラーモア周波数範囲0.01〜40 MHzに対応する磁場における1/TNMR分散(NMRD)プロファイルを得た。プロトンラーモア周波数の25〜80MHz範囲から緩和データを獲得するために、高速磁場超電導ダイポール(HTS)電磁石を使用した。温度を、27℃に固定し、銅コンスタンタン熱電対を装備したStelar VTC−91空気流加熱器によって制御し、0.5℃の絶対精度で、Delta OHMデジタル温度計を用いて、プローブヘッドの温度較正を行った。
【0135】
結果および考察
【0136】
図9は、酸化黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットのSQUID磁性特性化を示す。これらの粒子の調製のための出発原料として使用される分析グレード微小黒鉛が、これらの実験での対照であった。図9aは、3つの温度(30K、150K、および300K)に対する−50,000Oeから50,000Oeの間の分析グレード微小黒鉛(対照)の磁化(M)対磁場強度(H)のプロットを示す。負の傾斜は、反磁性挙動の特徴である印加磁場の増加とともに、磁気モーメントの値の減少を示す。図9bおよび9cは、それぞれ、酸化黒鉛および酸化グラフェンナノプレートレットのM対Hプロットを示す。プロットは、酸化黒鉛および酸化グラフェンナノプレートレットの両方の常磁性挙動を示す磁場強度とともに、磁気モーメントの値の線形増加を示す。黒鉛の酸化時の常磁性への変化は、サンプルの中に存在する常磁性Mn2+イオンの存在に起因し得る。図9dは、還元グラフェンナノプレートレットのM対Hプロットを示す。プロットは、室温(300K)における超常磁性挙動(図9dの差し込み図)を示す、より低い温度(30K)における強磁性ヒステリシス曲線を表示する。室温超常磁性は、ナノ粒子集団(<30nm)で広く報告されており(非特許文献37、非特許文献38)、ナノ粒子の熱エネルギーが、磁気スピン方向への反転を可能にするのに十分であり、スピン・スピン交換結合エネルギーを克服するのには不十分である、サイズ依存性現象である。結果として、磁場がない場合、正味の磁化はゼロと測定され、M対H曲線は、ヒステリシスループの代わりに「S」字形を帯びる。500Oeの均一な磁場強度における10Kから300Kの間の還元グラフェンナノプレートレットのゼロ磁場冷却(ZFC)および磁場冷却(FC)曲線が、図9eに示される。ZFC曲線におけるピークは、強磁性および超常磁性状態の間の遷移を示す、40Kのブロッキング温度(T)を表す。30Kにおけるヒステリシス曲線の残余磁化は、12.47emu/gであり、飽和保磁力は、6298.68Oeであり、サンプルの単一ドメイン性質および高い形状異方性に起因し得る(非特許文献39)。還元グラフェンナノプレートレットの結果は、ハウスマン鉱とのはっきりした類似性を呈する(非特許文献39)。室温磁性が、フラーレン、炭素ナノチューブ、炭素ナノフォーム、グラフェン、ナノダイヤモンド、および黒鉛等の炭素ナノ材料で報告されている(非特許文献18、非特許文献19、および非特許文献58)。これらの材料の磁気特性は、金属不純物の存在または黒鉛格子構造における欠陥の存在のいずれかに起因する、スピングラス様常磁性または強磁性挙動を含む。酸化黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットの場合、酸化または剥離プロセス中に黒鉛格子構造に作成される欠陥は、観察された磁気的挙動に寄与し得る。しかしながら、理論的および実験的研究は、黒鉛構造における欠陥が、約10−3〜10−6emu/gの飽和磁気モーメントを伴って非常に弱い磁気的挙動を誘発することを示す(非特許文献59)。したがって、上記で報告される、観察された磁気的挙動は、主に、マンガンの存在に依るものであり得る。
【0137】
図10は、MWCNT(対照)およびグラフェンナノリボンのSQUID磁性特性化を示す。図10aは、3つの温度(10K、150K、および300K)に対する−50,000Oeから50,000Oeの間のMWCNTの磁化(M)対磁場強度(H)のプロットを示す。プロットは、一貫した磁気パターンを示さず、磁気信号は、3つ全ての温度で極めて弱く、MWCNTの中の鉄触媒の存在にもかかわらず、反磁性挙動を示す。
【0138】
図10bは、3つの温度(10K、150K、および300K)に対する−50,000Oeから50,000Oeの間のグラフェンナノリボンのM対Hのプロットを表示する。たとえM対H曲線がヒステリシスループの代わりに「S」字形を成すように見えたとしても、曲線のより綿密な分析(図10bの差し込み図を参照)は、非常に低い残留磁気を伴う強磁性挙動を示す。SQUID分析は、30K、150K、および300Kにおいて強磁性を示す。より綿密な分析は、室温において興味深い磁気的性質を示す。ゼロ磁場冷却(ZFC)ならびに磁場冷却(FC)条件での磁化の温度依存性が、磁場強度500Oe(温度範囲10〜300K)において図10cで描写される。グラフから、全てのグラフェンナノリボンは、低温で強磁性挙動を示し、ZFCおよびFC枝の分岐を示すことが明確である。FCおよびZFC曲線が分岐する温度(不可逆性温度とも呼ばれる)、ならびにブロッキング温度(T)は、300Kである。図10cは、FC/ZFCプロットを示し、ZFC曲線上の最大値は、室温を上回る値>300Kで見られる。ZFC磁化曲線は、分岐温度を下回る広い最大値を示す。分岐FCおよびZFC曲線は、熱力学的不可逆性を示し、強磁性および反強磁性相の間の強い競合相互作用、および低温スピングラス様状態または混合相の発生によるナノスケールでの相分離のような効果に、その起源を有することができる(非特許文献59、非特許文献60、非特許文献61)。300Kで見られる飽和磁化は、2500Oeにおいて0.1emu/gである。サンプルは、10Kにおいて250Oeの保磁場を示す。磁性結果は、グラフェンナノリボンが室温弱強磁性を呈することを明確に示す。グラフェンナノリボンの元素分析は、マンガンは別として、微量の鉄(0.005重量%または50μgFe/グラム)も、これらのサンプルの中に存在したことを示した。グラフェンナノリボンの調製に使用されたMWCNTは、たとえグラフェンナノリボンで見出される量よりも20倍多い鉄ナノ粒子を触媒(0.1重量%)(Sigma−Aldrich I分析証明書−MWCNT)として含有したとしても、いかなる磁気的挙動も示さない。さらに、1〜500μgFe/グラム(1ppm)黒鉛のFe濃度を伴うFeまたはFe集団の存在は、2.2×10−5〜4×10−3emu/gを磁化に与えることが報告されている(非特許文献58)。総合される上記の情報は、微量の鉄の存在が、グラフェンナノリボンの観察された磁気的挙動に有意に寄与しないことを示唆する。いくつかの近年の研究は、金属酸化物ナノ構造の中の酸素空孔の点欠陥が、弱強磁性をもたらすことができ(非特許文献62、非特許文献63)、グラフェンナノリボンとのその相互作用による酸化マンガンにおける類似欠陥が、観察された磁気的挙動に関与し得ることを示す。しかしながら、この仮説を確認するために、より多くの研究が必要とされる。
【0139】
図11a〜11dは、それぞれ、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンのEPRスペクトルを示す(石英EPR管およびDPPH標準のブランクEPRスペクトルが図17に示される)。各EPRスペクトルのg値、EPR線半値幅(ΔΗ1/2、ガウス)、および電子緩和時間(T2e)が、表3aに記載される。全てのサンプルは、それぞれのg値において広いピーク(ΔΗ1/2)を示す。しかしながら、グラフェンナノリボンは、類似ΔΗ1/2値を有する、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットよりも2.6倍大きいΔΗ1/2値を示す。より大きい線幅は、短い電子緩和時間(T2e)を示し、計算されたT2e値は、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットについて、0.19〜21ナノ秒の間であった。グラフェンナノリボンは、0.072ナノ秒のT2e値を有し、他の化合物よりも少なくとも2.9倍短い。グラフェンナノリボンサンプルのEPRスペクトルはまた、おそらく、報告されたようなナノリボン構造における欠陥中心による、フリーラジカル種の存在を示す、狭いピークを中心で示す(非特許文献64)。フリーラジカル種は、2.007のgおよび1.2ガウスの線幅を有し、したがって、88.2ナノ秒の非常に長い電子緩和時間(T2e)を有する。全ての化合物における大きい線の広がりは、有意なマンガン対マンガン双極子相互作用を示す。サンプル中のマンガンの量の削減は、線の広がりを減少させ、EPRスペクトルにおける6本線マンガン超極細構造を分解し、その結果として、電子緩和時間を短縮させるべきである。
【0140】
図12a〜dは、それぞれ、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの水溶液のEPRスペクトルを示す(石英EPR管のブランクEPRスペクトルおよびDPPHのEPRスペクトルが図17に示される)。各EPRスペクトルのg値、EPR線半値幅(ΔΗ1/2、ガウス)、超極細結合定数、および電子緩和時間(T2e)が、表3bに記載される。4つ全てのサンプルは、スピンI=5/2を伴うMn−55核に結合された電子の特性を示す、6本線EPRを示す。グラフェンナノリボンのEPRスペクトルはまた、フリーラジカルの存在により、約2.007のgおよび1.2ガウスの線幅を伴って、狭いEPR線を中心で示す。観察されたg値は、遊離電子スピン値に非常に近く、4つ全てのサンプルの中に存在するマンガン鉄の基底状態におけるスピン軌道結合の欠如を示唆する。これらのサンプルにおける約95ガウスのマンガン超極細結合(AΜn)は、マンガンのアクアイオンΜn(ΗO)のものに非常に近い。大きい超極細結合は、4つ全てのサンプルのマンガン種における正8面体配位を示す。4つの水性サンプルはまた、長い電子緩和時間を示す、29.2〜31.5ガウスの間の類似する狭い線幅(ΔΗ1/2)値も示す。計算されたT2e値は、2.08〜2.25ナノ秒の間であった。グラフェンナノリボンの中に存在するフリーラジカル種は、55ナノ秒の1桁長い電子緩和時間(T2e)を有する。EPRスペクトルは、Mn(II)イオンのみを示すことに留意されたい。たとえ少なくとも還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルがMn(III)イオンの存在を示したとしても、スペクトルは、Mn(III)イオンの存在またはマンガンの他の酸化状態を示さなかった。この非検出の考えられる理由は、全てのEPR測定が室温で行われたこととであり得る。Mn(III)イオンまたはマンガンの他の酸化状態は、非常に短い電子緩和時間を有し、EPRスペクトルを得るために非常に低いサンプル温度(約77K)を必要とする。したがって、低温測定も、4つ全てのサンプルに実行した。したがって、EPRスペクトル(結果は示されていない)は、Mn(II)寄与によって支配され、マンガンの他の酸化状態の存在を確認することができず、4つのサンプルの中に存在するマンガンイオンの大部分が、Mn(II)状態で存在することを示唆する。
【0141】
緩和能(r1,2)は、MRI造影剤の効力の重要な尺度である。表4は、40℃での酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの0.47Tにおける緩和能値を示す。また、比較目的で、臨床的に承認されたGd3+ベースおよびMn2+ベースのキレート錯体の緩和能値の範囲も含まれる(非特許文献65)。本表は、4つ全ての化合物が、常磁性キレート錯体と比較して、優位に高いrおよびr緩和能を示すことを明確に示す。0.47Tにおいて、黒鉛およびグラフェンサンプルのrおよびr値は、常磁性キレート錯体よりも約8〜10倍および19〜60倍大きい。黒鉛およびグラフェンサンプルの中でも、0.47Tにおいて、グラフェンナノリボンおよび酸化黒鉛は、酸化グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットよりも高い(約20%)r値を示した。しかしながら、r:r比の動向は、還元グラフェンナノプレートレット>グラフェンナノリボン>酸化微小黒鉛>酸化グラフェンナノプレートレットであった。グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンが40℃で超常磁性であることを磁性結果が示すため、この動向は、予期される線に沿っている。超常磁性材料は、主に、横T緩和に影響を及ぼし、したがって、r/r比を増加させることが周知である。しかしながら、r/r比は、10以上の比を有する鉄ベースのT造影剤よりも低い。T造影剤は、約1〜2のr/r比を有する(非特許文献66)。したがって、より高い磁場(3T以上)で、たとえ還元グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンがT*効果を生じさせたとしても、マンガン挿入黒鉛、およびグラフェン粒子は、T造影剤として適し得る。
【0142】
酸化黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの水溶液の0.01〜80MHzの間のNMRDプロファイルが、図13a〜dで提示される。これは、そのような広い磁場範囲(0.01〜80)にわたるこれらの化合物の縦r緩和能の第1の報告である。酸化微小黒鉛および還元グラフェンナノプレートレットが類似NMRDプロファイルを示す一方で、酸化グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンは、これら2つのサンプルとは明確に異なるプロファイルを示す。中間から高い磁場(<10MHz)で、酸化微小黒鉛は、磁場の減少とともにより小さい増加(50〜66mM−1−1)、およびより低い磁場への減少とともにより大きい増加(70〜222mM−1−1)を示す。酸化グラフェンナノプレートレットは、30MHzにおいて55mM−1−1の最大値を伴って中間から高い磁場で釣鐘形分布を示し、磁場が10MHz以下に減少するにつれて最大で86mM−1−1の漸増を示す。還元グラフェンナノプレートレットは、80〜10MHzの間の磁場の減少とともにわずかな増加(44〜59mM−1−1)を示し、緩和能は、0.01MHzにおいて258mM−1−1の最大値を伴って、より低い磁場で増加する。グラフェンナノリボンは、最大10MHzの磁場の減少とともに線形増加(65〜100mM−1−1の間の緩和能)を示し、次いで、0.01MHzにおいて724mM−1s−1の値に達する10MHz以下の連続急増を示す。
【0143】
これらの化合物のNMRDプロファイルは、他のマンガンベースの小分子または高分子錯体のプロファイルとは異なる(非特許文献5、および非特許文献67)。例えば、Mn−DTPA(DTPA=ジエチレントリアミペンタアセテート酸)等の小分子Mn2+錯体は、10MHzよりも大きい磁場で約1.9mM−1−1の一定値、および10MHz未満の磁場で限界増加を示す。高分子錯体Mn2+−DTPA−BSA(BSA=ウシ血清アルブミン)は、20MHzにおいて26mM−1−1のピーク値を伴って、10〜80MHzの間の磁場で釣鐘形緩和能分布を示す(非特許文献5)。10MHz未満の磁場で、緩和能は、約14mM−1−1において一定である。類似プロファイルが、Gd3+イオンの小および巨大分子錯体について報告されている(非特許文献5)。プロファイルはまた、Mn2+またはGd3+高分子錯体のものに類似するプロファイルを示す、Gd3+@C60(ガドフラーレン)のプロファイルとは異なる(非特許文献11)。しかしながら、Gd3+@超短単層炭素管(ガドナノチューブ)(非特許文献15)のプロファイルは、Mn2+挿入黒鉛およびグラフェン化合物によって観察されるものに類似する特徴、すなわち、10MHz以下の磁場で、より大きい増加とともに磁場の減少を伴う緩和能の増加を有する。より低い磁場(<10MHz)でのガドナノチューブのプロファイルは、グラフェンナノリボンのプロファイルに最も類似する。
【0144】
Solomon−Bloembergan−Morgan(SBM)の一式の方程式(下記参照)は、造影剤との水プロトンの相互作用、造影剤の磁気的性質、および造影剤の分子動力学等の因子が、0.1テスラよりも大きい磁場で、水プロトンの緩和速度にどのように影響を及ぼすかについての最良の論理的説明を与えると考えられる(非特許文献6)。MRI CAの影響を受けることができる3種類の水分子があることが、広く受け入れられており、(a)CAの常磁性金属中心に直接配位された水分子は、内圏水分子として知られており、(b)造影剤の磁性金属中心に配位されていないが、CAの他の分子(例えば、リガンド、キレート)に化学結合された水分子は、第2圏水分子と呼ばれ、および(c)MRI CAに結合されていないが、それの近くに拡散する、より遠くの水分子は、外圏水分子と小される。実験的核磁気緩和分散(NMRD)プロファイルは、典型的には、プロトン緩和能に影響を及ぼす、これらの因子を判定するために、SBM方程式を使用して適合される(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。最近の報告は、ガドナノチューブについて、プロトン/水交換速度および回転相関時間等の内圏水プロトンとのそれらの相互作用を支配する因子が、観察されたr緩和能の大部分に関与することを示唆する(非特許文献15)。したがって、内圏相互作用を表すSBM方程式が、主要な焦点であった。図13a〜dは、それぞれ、酸化黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンのNMRDプロファイルを示す。また、種々の内圏パラメータの対応する最良適合した物理的正当値(他のGd(III)およびMn(II)ベースの化合物について報告された値の範囲内)も含まれる(我々の適合アプローチの論議は以下で提示される)。表5は、計算されたパラメータ、それらの定義および値を記載する(表8は、固定パラメータ、それらの定義および値を記載する)。一般に、SBM方程式は、高い磁場(>10MHz)または低い磁場(<0.5MHz)で、容認可能な適合を提供する。全体的には、適合は、酸化グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンよりも、酸化微小黒鉛および還元グラフェンナノプレートレットについて正確であった。これは、SBM方程式が、ここで合成される全ての化合物にとって完全に満足できるモデルではない場合があることを示す。それでもなお、他の場所で報告されたものと一致するかどうかを調べるように、曲線適合アルゴリズムによって返されるパラメータを以下で論議した。
【0145】
パラメータΔは、常磁性金属の電子のゼロ磁場分裂エネルギーを表す。通常はゼーマン分裂を生じさせるために使用される、印加磁場がない場合でさえも、ランダム運動および錯体の歪曲により、分裂が依然として起こり得る。これらの相互作用によって生成される磁場は、近傍のプロトンにおいて緩和を誘発するエネルギーを産生する。この分裂のための相関時間は、τνと称される。これらの2つのパラメータは、常磁性中心の有効性を判定する際に重要である。Δは、概して、1018〜1020−2の範囲内である。適合から求められる値は、十分に容認範囲内である。τνの値は、概して、1〜100ピコ秒であるものとして容認される(非特許文献5)。我々が求めた値は、この範囲内である。回転相関時間であるτの場合、10ピコ秒から2ナノ秒範囲内の値が報告された(非特許文献68、非特許文献5、および非特許文献11)一方で、ガドナノチューブについては、ナノ秒からマイクロ秒範囲にある値も報告された(非特許文献15)。微小黒鉛およびグラフェンサンプルについて得られる結果は、ナノ秒時間尺度にある。パラメータqは、内圏内の高速交換水分子の数を表し、その値は、全てのサンプルについて8であった。これらの値は、1から6の間である、種々の常磁性錯体について得られたqの値の範囲外にある。しかしながら、20ほども高いq値が、ガドフラーレンについて報告されている(非特許文献11)。グラフェン内のマンガン挿入についての理論的研究は、1〜3個の配位結合を伴うグラフェンシートへのマンガンの配位を示唆する(非特許文献69)。挿入グラフェンの大部分が高スピン状態でMn2+であると仮定すると、配位数は、4から8の間となり得、したがって、水分子の可能な配位部位は、1から7の間となり、NMRD適合から得られる値が、この値に近い。加えて、EPR結果はまた、この値が妥当であることも示す。水滞在時間であるパラメータτΜは、緩和能に二重効果を及ぼす。一方で、水分子が内圏の中でより長く滞在するほど、より多くの時間で常磁性中心がそのスピンに影響を及ぼすことができる。しかしながら、その滞在時間が長過ぎる場合、他の水分子が常磁性金属中心へ配位する能力を阻止し、全体的な緩和能を低減させ得る。したがって、最適な緩和能は、考えられる極限の間のいずれかにある。文献は、広範囲のτΜ値を示す。小分子錯体が、概して、11〜100ピコ秒の範囲内である一方で、常磁性リポソーム(非特許文献70)、ガドフラーレン(非特許文献11)、ガドナノチューブ(非特許文献15)等の高分子は、100〜500ナノ秒の間の値を有する。適合から求められた値は、数ナノ秒から数百ナノ秒の間に及ぶ。このデータを裏付けるために、17O測定を14Tにおいて行い、SwiftおよびConnickの理論(以下参照)(非特許文献71)に従ってデータを分析することによって、水交換相関時間(τΜ)を推定した。τΜ値は、27℃で全てのサンプルについて、数百ナノ秒であると推定された。これらの値は、NMRD適合から得られたτΜ値を用いて、酸化微小黒鉛および酸化グラフェンナノプレートレットを十分に裏付ける一方で、それらは、還元グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンの値よりも100倍大きい。これら2つのサンプルについて、数百ナノ秒でτΜの値を固定することによって得られたNMRD適合は、良好な適合を生じ、還元グラフェンナノプレートレットの場合は、他のパラメータの妥当な値を生じたが、グラフェンナノリボンについては不良な適合が得られた(図23参照)。水プロトンと常磁性金属イオン(この場合はMn2+イオン)との間の分離距離rMnHは、SBM方程式における6乗である。したがって、それは、緩和能に非常に大きな影響を及ぼし、距離が短くなるほど、影響が大きくなる。本作業では、我々は、2.9オングストロームの最も一般的に報告されている値(非特許文献72)で固定されたパラメータを保持するよりもむしろ、わずかに変化させることを見出した。我々が得た適合値は、いずれの場合も公称値に非常に近かったが、この値に向けたSBM方程式の極端な感度により、向上した適合を可能にした。
【0146】
緩和機構に影響を及ぼす上記の因子が、新しい高効率のMn2+ベースまたはGd3+ベースのTMRI CAを設計するように改変されている、複数のアプローチが開発されてきた(表6)。これらのアプローチは、以下のパラメータのうちの1つ以上を改変することに焦点を合わせてきた:(1)内圏水分子の数(q)を増加させること、(2)内圏水滞在時間(τΜ)を短縮し、造影剤(CA)の回転相関時間(τ)を増加させること、(3)キレートを設計するときに結合角および配向を改変することによってrMnHを減少させること(非特許文献73)。Mn2+ベースの高分子造影剤の場合、20MHzにおいて、いかなるキレートも伴わない、または4〜10mM−1−1の間のr値を示す種々の小分子ポリカルボン酸リガンドとキレートされたMn2+イオンと比較して、55mM−1ほども高いr値が報告されている。これらの研究で操作されている2つのパラメータは、τおよび/またはτである。本作業の結果は、グラフェンシートの間に常磁性金属を閉じ込め、それに従って、特徴的なパラメータq、τ、およびτが修正されることを可能にすることによって、r緩和能を強化する新規の一般的アプローチを導入する。結果は、黒鉛炭素粒子のサイズ、形状、または構造ではなく、グラフェンシート内の常磁性金属イオンの閉じ込め(挿入)が、緩和能を増加させるための主要な決定因子であり、したがって、高緩和能MRI CAとしての金属イオン黒鉛炭素錯体を開発するための新規の一般方策として、常磁性イオンのナノ閉じ込めを識別することを示す。
【0147】
これらの実施例で報告される、黒鉛およびグラフェン構造の生理化学的特性化、および有望な緩和能結果は、MRI CAとしてのそれらの安全性および効力を評価する生体外および生体内研究のための手段を開く。近年の報告によれば、米国では、2750万件の臨床MRI手技の約43%が、CAを使用し、MRI CA市場は、2012年に18億7千万ドルまで増大すると予測される((2011) Imaging Agents. Global Industry Analysts, Inc: http://www.strategyr.com/Imaging_Agents_Market_Report.asp)。大抵の臨床MRI CAは、輝度が明確なコントラストを生成するようにMR信号を強化する、ガドリニウム(Gd3+)イオンベースの常磁性CAである。重度腎疾患がある、または肝臓移植後の一部の患者における腎性全身性線維症(NSF)の近年の発見が、Gd3+イオンベースのMRI CAの臨床用途への米国食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)による制限につながる懸念を生成してきた(US FDA Information on gadolinium−containing contrast agents 2008, http://wwwfdagov/cder/drug/infopage/gcca/)。MRI用の常磁性造影剤の実施例として早い時期に報告されたマンガンが、ガドリニウムに対する可能な代替案として再び注目を集めている(非特許文献2)。ランタニドと違って、それは、Ca2+に類似する天然細胞成分であり、しばしば、酵素および受容体のための調節補因子として機能する。マンガンの正常な1日の食事所要量が、0.1〜0.4ミリグラムである一方で、正常な血中濃度は、1ナノモルである。マンガンの毒性は、神経症状をもたらす、長期暴露後、または高濃度でしか報告されていない(非特許文献2)。したがって、本作業で報告された微小およびナノ粒子のさらなる開発が、高効率のMRI CAとしての新しい部類のMn2+炭素ナノ構造錯体の開発につながり得る。
【0148】
【表3a】
【0149】
【表3b】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
構造、化学、および元素分析
【0154】
1.構造特性化およびラマン分析
【0155】
走査型電子顕微鏡検査(SEM、JSM 5300、JEOL)を、酸化微小黒鉛サンプルに80kVで行い、それらのサイズおよび構造を特徴付けた。高分解能分析透過型電子顕微鏡(JEOL JEM2010F(FEG−TEM))を使用して、高分解能透過電子顕微鏡法(TEM)画像分析を、グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンサンプルに行った。撮像は、200kV加速電圧で実行された。均質混合物を形成するために1:1エタノール:水の中で乾燥粉末を分散させることによって、TEMサンプルを調製した。次いで、懸濁液を、レーシー炭素膜で覆われた300メッシュCuグリッド上に堆積させた。収差(C)補正されたTEM特性化について、対物レンズ用の球面収差補正器を装備した80kVで操作されるTitan cubed 300−60kVにおいて、実験を行った。一般的に0.4秒にわたって画像を記録した。この場合にスペクトルを収集するために使用された電子エネルギー損失スペクトル(EELS)は、Tridiemであった。530nmダイオードレーザ励起波長および室温にてThermo Scientific DXRラマン共焦点顕微鏡を使用して、黒鉛、酸化黒鉛、および全てのグラフェンサンプルのラマンスペクトル分析を、200〜3000cm−1の間で行った。
【0156】
図14aは、酸化微小黒鉛粒子の走査型電子顕微鏡画像を表示する。画像は、酸化微小黒鉛粒子が破砕構造として存在し、2.5μmの平均サイズとともに3〜4μmの間のサイズ(破砕構造の最長の長さ)を有することを示す。図14bおよび14cは、それぞれ、それらの構造および形態学的情報を提供する、還元グラフェンナノプレートレットの代表的な低倍率および高倍率TEM画像を表示する。グラフェンナノ粒子の構造的性質は、グラフェンナノプレートレットおよびグラフェンナノリボンの大規模生産についての最近の報告に類似する(非特許文献22、非特許文献20、非特許文献23、非特許文献24、非特許文献21、非特許文献25、非特許文献26)。図14bで見られるように、還元グラフェンナノプレートレットは、約20nmの平均幅を伴って形状が円形である。いくつかのプレートレットは、他のプレートレットよりも色が濃く見え、これは、多層グラフェンシートの存在によるものである。ほとんど透明である、より色が薄いものは、単層または二重層グラフェンシートである。図14cは、個々のグラフェンシートの原子格子縞構造を見せ、格子グリッド線および六角炭素原子環が、明確に可視的である(非特許文献31)。Si基材上の還元グラフェンナノプレートレット分散のAFM区分分析は、約1.137nmの均一な厚さを見せた(図14g)。本来のグラフェンシートは、0.34nmの原子層厚さ(ファン・デル・ワールス)を有する。カルボキシルおよびヒドロキシル基との共有結合の存在、およびグラフェンナノプレートレット構造の中のsp炭素原子の変位が、厚さの増加の理由であることが報告されている(非特許文献20)。酸化グラフェンナノ粒子が、類似サイズおよび構造を示す(図14f)。
【0157】
図14dおよびeは、それぞれ、グラフェンナノリボンの代表的な低倍率および高倍率TEM画像を表示する。図14dで見られるように、グラフェンナノリボンは、グラフェンシートの完全アンジッピング層を有する。図14eの高分解能TEM画像は、MWCNTの同心壁の連続アンジッピングにより、ナノリボンが多層(矢印)であることを明確に示す。酸化グラフェンナノリボン構造は、欠陥がほとんどなく、大部分が均一かつ平滑に見える。出発原料であるMWCNTは、40〜70nmの外径および500〜2000nmの長さを有する。MWCNTは、円筒であるため、アンジッピング時に、約125〜220nmの幅(π×直径)および500〜2000nmの長さを有するように完全に開くべきである。TEM画像の分析は、グラフェンナノリボンの幅が、70nmのMWCNTの最外管の外径よりも大きい、約120nmであることを示し、アンジッピングのプロセスを検証する。しかしながら、この幅は、完全に平坦なリボンに必要とされる範囲(125〜220nm)よりもわずかに小さく、アンジッピング時のグラフェンナノリボンが、完全に平坦なシートではない場合があるが、MWCNTの何らかの曲率を保持し得ることを示唆する。TEM画像はまた、グラフェンナノリボンが、MWCNTに類似する約600〜2000nmの長さを有することも示す。
【0158】
図15aは、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、および還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルを示す。また、本来の微小黒鉛のラマンスペクトルも対照として含まれる。本来の微小黒鉛のスペクトルは、二重退縮ゾーン中心E2gモードに起因するGバンドを示す、1581cm−1における顕著で急なピークを示す(非特許文献32)。酸化黒鉛の場合、Gバンドの広がりおよび1595cm−1へのピーク偏移がある。さらに、ゾーン境界光子が、1345cm−1においてDバンドを生じ、それは、酸化による不規則spドメインの増加および結晶サイズの縮小を示して顕著になる。黒鉛の酸化により、黒鉛に対する0.407から酸化黒鉛に対する1.2まで、D対Gピークの強度の比(I/I)の増加がある(非特許文献32)。酸化グラフェンナノプレートレットおよび還元グラフェンナノプレートレットのスペクトルは、それぞれ、1.3および1.44までのI/Iのさらなる増加を示す。還元グラフェンナノプレートレットの場合、DおよびGバンドのピークが、黒鉛の値(それぞれ1330cm−1および1590cm−1)により近く偏移させられ、還元中の酸素の除去、およびsp 炭素原子のいくらかの回復を示唆する。しかしながら、I/I比は、そのような小さいサイズの不規則ドメインの数の増加に加えて、おそらくspドメインの平均サイズの縮小により、酸化グラフェンナノプレートレットと比較して、より高い(非特許文献20)。
【0159】
図15bは、グラフェンナノリボンおよびMWCNTのラマンスペクトルを示す。グラフェンナノリボンのスペクトルは、MWCNTと比較して1600cm−1で赤方偏移される広いGバンドを有し、1310cm−1において顕著なDバンドを有する。以前の報告に類似する、MWCNTに対する0.045からグラフェンナノリボンに対する1.57までのI/I値の増加がある(非特許文献21)。グラフェンナノリボンのGバンドにおける赤方偏移は、MWCNTの酸化アンジッピングによるものであり、黒鉛の酸化による、酸化グラフェンナノプレートレットのスペクトルにおける偏移(図15a)に類似する。
【0160】
還元グラフェンナノプレートレットのラマンスペクトルはまた、約657cm−1、370cm−1、および320cm−1において、付加的なピークも示す(図15c)。ピークを識別するために、ラマンスペクトルデータベース検索(RRUFF(商標)プロジェクト収集を使用する、http://rruff.info/R040090)が、ピークは、二価および三価マンガンを含有する複雑酸化物であるハウスマン鉱(Mn)に起因すると考えた。ハウスマン鉱は、マンガンの最も安定した酸化物であり、マンガンの任意の他の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、または硫酸塩が焼成されたときに形成される(非特許文献33、非特許文献34、非特許文献60)。我々の場合、還元グラフェンナノプレートレットの合成中に加熱する高温(約100℃)が、ハウスマン鉱の形成につながった場合がある。ハウスマン鉱ピークの検出は、サンプルの配向、および非常に少量でのその存在を示すサンプルスポットサイズに敏感であった。サンプルのEPRスペクトル(図11および12参照)はまた、いかなるMn(III)イオンも検出せず、ハウスマン鉱が、二価マンガンの酸化物と比較して、比較的少量で存在し得ることを、さらに裏付ける。
【0161】
還元グラフェンナノプレートレットと違って、いずれのハウスマン鉱ピークも、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、またはナノリボンサンプルのラマンスペクトルで検出されなかった。酸化および還元グラフェンナノプレートレットの電子エネルギー損失分光法(EELS)が、マンガンおよび酸素を検出した(図16)。しかしながら、(中心または縁における)グラフェンナノリボンのEELS分光法は、いかなるマンガンも示さなかった。加えて、全てのサンプル(酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボン)の微量元素分析(表7a〜b)が、マンガンの存在を検出した。したがって、EELSおよび元素分析測定とともに得られたラマン分光法の結果は、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの場合、硫酸との過マンガン酸カリウムの反応が二価マンガンの形成につながるため、硫酸マンガンまたは酸化マンガンの形態の二価マンガンが、グラフェン層の間に挿入され得ることを示す。加えて、微量のハウスマン鉱が、還元グラフェンナノプレートレットのためにグラフェン層の間に挿入されてもよい(非特許文献75)。
【0162】
2.元素分析
【0163】
マンガンおよびカリウムの濃度を確認および判定するために、2つの微量分析試験所(Columbia Analytical Services, Tucson, AZ、およびGalbraith Laboratories, Inc., Knoxville, TN)で、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−OES)によって、固体および液体グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンサンプルを分析した。加えて、鉄がMWCNT(出発原料)の調製で触媒として使用されるため、鉄含有量分析がグラフェンナノリボンサンプルについて実行された。ICP分析について、固体および液体グラフェンナノプレートレットおよびナノリボンサンプル(既知の重量または濃度)を、濃縮HNOで処理し、慎重に加熱して固体残渣を得た。次に、それらを30%Hで処理し、再び加熱して炭素質物質を排除した。残りの固体残渣を2%HNOの中で溶解させ、ICPによって分析した。
【0164】
表7aおよび7bは、それぞれ、酸化微小黒鉛、酸化グラフェンナノプレートレット、還元グラフェンナノプレートレット、およびグラフェンナノリボンの固体および含水サンプルの微量元素分析を提示する。固体サンプル(表7a)については、過マンガン酸カリウムが、これらのナノ粒子の調製で使用されたため、これらのサンプル中のカリウムおよびマンガンの濃度を分析した。加えて、鉄触媒が、グラフェンナノリボンの調製で使用される出発材料であるMWCNTの中に存在したため、鉄元素分析もグラフェンナノリボンに行った。全ての固体サンプルは、0.22〜0.52重量%の間のカリウムを示した。グラフェンナノリボンは、3.84〜5.11重量%の間のマンガンを示した他の固体サンプルと比較して、少なくとも4倍少ない量のマンガン(0.93重量%)を示した。含水サンプル(表7b)については、これらのサンプルの緩和能の計算に必要とされるため、マンガンの濃度を全てのサンプルについて分析した。グラフェンナノリボン溶液について、計算された緩和能値にも寄与し得るため、鉄元素分析も行った。全ての含水サンプル中のマンガンの濃度は、0.27〜1.48ppmの間で可変であった。この広い範囲の濃度の値は、1%Pluronic F127溶液中で安定した懸濁液を形成する異なるサンプルの可変傾向によるものである(プロトン緩和能測定についての方法の節を参照)。鉄はグラフェンナノリボンの水溶液中で検出されなかった。この鉄の非検出は、以下の理由によるものであり得る。緩和能に使用されるグラフェンナノリボンの濃度は、10μg/mlである。300μl体積溶液を、緩和能実験および微量元素分析に使用した。したがって、グラフェンナノリボンの総量は3μgである。Fe濃度が3μgの0.005%であると見なす場合、Feの量は、ICPシステムの検出限界(約1ngの検出限界)を十分下回る、0.15ngとなるであろう。
【0165】
3.緩和能のSolomon−Bloembergan−Morgan理論
【0166】
以下は、一式のSBM方程式である(非特許文献76)。
【数1】
式中、Mnのモル分率であるPが、方程式13で定義される。
正味プロトン緩和時間であるT1mおよびT2mが、以下によって求められる。
【数2】
ddは、双極子間相互作用を支配する物理定数を含有する:τcl
【数3】
常磁性中心の緩和有効性:
【数4】
前述の通り、双極子間相互作用を介した常磁性中心からHプロトンまでの移動効率は、以下によって求められる相関時間τc1およびτc2によって調節される。
【数5】
スカラー相互作用について、関連相関時間は、以下によって求められるτである。
【数6】
最終的に、
【数7】
および
【数8】
を有し、式中、ωおよびωは、それぞれ、常磁性金属の電子スピンおよび水プロトンの核スピンのラーモア周波数である。
は、Mn+2および水(HO)のモル総数に対するマンガン(Mn+2)のモル分率である。ここで使用されたMn+2の濃度は、1mMであった。
【数9】
上記の方程式の中の残りの物理定数は、以下の表8で挙げられる。
【0167】
常磁性錯体が緩和能を向上させる機構は、プロトンスピンの常磁性イオンの電子スピンの結合を介する。この結合は、(結合を通した)スカラーおよび(空間を通した)双極子間(DD)相互作用といった、2つの主な方法によって起こる。DD相互作用は、概して、より強いが、水分子中のH原子の配向に対する常磁性イオンのスピンシステムの配向に依存する。分子が相互に対して継続的に回転しているため、相互に対するラジアンによる、おおよそ分子が回転する時間の尺度である、回転コヒーレンス時間τが、DD相互作用にとって重要な因子である。τが長くなるほど、常磁性中心の影響がより効果的である。しかしながら、スカラー結合については、化合物の結合を通して影響が及ぼされるため、物理的配向は無関係である。この理由により、τは、それぞれ、TおよびTのDD相誤作用を支配する上記の方程式8および9に存在するが、スカラー相誤作用を支配する方程式10では欠けている。相互作用の総強度は、DDおよびスカラー寄与の合計であり、第1項がDD寄与を表し、第2項がスカラー寄与を表す、方程式3で反映される。
【0168】
内圏の寄与をモデル化する際の主要な因子は、任意の所与の時に常磁性中心に結合することができる、水分子の数を識別することである。方程式1は、緩和能がこの水和数qに正比例することを知らせる。方程式1から明白である別の点は、造影剤の濃度は別として、緩和能rおよびrが、それぞれ、結合内圏水分子T1mおよびT2mの総緩和時間によって、ならびに脱離および別の水分子による置換の前に、水分子が常磁性中心に結合されたままである時間の長さである、滞在時間τによって判定されることである。ひいては、因子T1mおよびT2mは、常磁性中心の電子緩和時間である、因子T1eおよびT2eに依存している。これらは、縦および横の場合について、それぞれ、方程式6および7で定義され、とりわけ、印加磁場に依存する。常磁性中心の電子からプロトンまでの緩和能の移動の有効性は、DDの場合については方程式8および9、スカラーの場合については方程式10によって支配される。常磁性作用物質の強度は別として、方程式8および9は、プロトンへの造影剤の電子によって生成されるRF磁場の移動の有効性もまた、全体的な緩和能において重要な因子であることを知らせる。この移動は、回転時間τおよび滞在時間τによって調節される。これらが長くなるほど、移動がより効果的になる。
【0169】
最小二乗アルゴリズム(FindFit in Mathematica(登録商標))を使用して、SBM方程式を実験データに適合させた。曲線適合アルゴリズムは、物理的に実現不可能または無意味な解答を生じさせることで悪評が高いため、考えられる解答を限定するために制約を使用した。データはまた、より良い適合を生じさせたレーベンバーグ・マーカートアルゴリズムにも適合されたが、返されたパラメータはしばしば、負の値等無意味であった、および/または容認された値から何桁も異なってきた。レーベンバーグ・マーカートアルゴリズムを本制約とともに使用することができないため、制約の使用を可能にするFindFit関数における最小限化オプションが使用され、急速に結果を返した。また、NMRDデータを適合させながら、アルゴリズムによって返されるパラメータが、大域的最小点ではなく、極小点のみを表し得ることにも留意されたい。より良い解答が存在し得る可能性がある。しかしながら、これらは、特定して検証することが非常に困難である。加えて、1つのパラメータのわずかな調整が、他のパラメータの広く変動する変化を引き起こし得る。
【0170】
ここで報告される4つの材料のそれぞれについて、NMRDデータを最も良く分析するように、いくつかの曲線適合実験を行った。浮動することが許可され、曲線適合アルゴリズムによって計算される変数の数と、固定されていると仮定され、他の手段によって判定されている数との間にはトレードオフがある。いくつかの変数の独立確証は、概して、これらのパラメータのより正確な値を生じさせるが、適合の緊密性に悪影響を及ぼし得る。逆に、アルゴリズムが全てのパラメータを見出すことを可能にすることにより、しばしば、優れた適合につながるが、時折、時間の負の値を含む、物理的に無意味な結果につながる。これらの発生を制限するために、我々は、概して、アルゴリズムの実行中に物理的に正当な範囲内に位置するように、所望のパラメータを制約した。
【0171】
SBMパラメータのうちのいくつかを裏付けるために、我々は、独立して、EPRおよび17O横緩和速度測定によって、qおよびτの値を判定した。得られたqの値は、全てのサンプルについて8であり、τΜの値は、酸化黒鉛=200ナノ秒、酸化グラフェンナノプレートレット=500ナノ秒、還元グラフェンナノプレートレット=350ナノ秒、およびグラフェンナノリボン=400ナノ秒であった。
【0172】
最良適合が、EPR測定によって裏付けされるq=8について得られた。しかしながら、我々は、Mn(II)イオンがグラフェンシートまたは酸素原子に配位される可能性を考慮し、また、q=2、4、および6について適合を得るとともに、qの値を浮動させた。以下の適合方策を採用した。
1.全てのSBMパラメータを浮動させる(図18)。
2.Qを2で固定し、残りのSBMパラメータを浮動させる(図19)。
3.Qを4で固定し、残りのSBMパラメータを浮動させる(図20)。
4.Qを6で固定し、残りのSBMパラメータを浮動させる(図21)。
5.Qを8で固定し、残りのSBMパラメータを浮動させる(図22)。
6.Qを8で固定し、Tmを固定し、残りのSBMパラメータを浮動させる(図23)。
【0173】
4.17O横緩和速度測定
【0174】
Bruker Avance 500分光計を、17O測定に使用した。実験設定は、サンプル回転なし、スペクトル幅10kHz、90°パルス、獲得時間25ミリ秒、および256スキャンであった。磁場周波数ロックを実行するために、実験サンプルを含有する5mm管に同軸上に挿入された毛細管の中に含有された、CDCNを使用した。検出感度を向上させるように17O豊富水(10%H17O)を添加することによって、実験溶液を17Oアイソトープの中で(3%まで)濃縮した。水17O信号の半値幅を測定し、17O横緩和速度測定を計算するために、この値を使用した(R=π×半値幅)。SwiftおよびConnick理論(非特許文献71)を使用して、17O水中に分散された4つのサンプルの横緩和速度の温度依存性(15〜80℃の間)の分析から、水交換相関時間(τΜ)を推定した。27℃で、4つのサンプルのτΜ値は、以下の通りであった。酸化黒鉛=200ナノ秒、酸化グラフェンナノプレートレット=500ナノ秒、還元グラフェンナノプレートレット=350ナノ秒、およびグラフェンナノリボン=400ナノ秒。
【0175】
【表7a】
【0176】
【表7b】
【0177】
【表8】
【0178】
【表9】
【0179】
【表10】
【0180】
【表11】
【0181】
【表12】
【0182】
【表13】
【0183】
【表14】
【0184】
本明細書で引用される全ての参考文献は、各個別出版物あるいは特許または特許出願が、あらゆる目的で、その全体で参照することにより組み込まれるように具体的および個別に示された場合と同程度に、それらの全体で、およびあらゆる目的で、参照することにより組み込まれる。
【0185】
当業者に明白となるように、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの修正および変更を行うことができる。本明細書で説明される具体的実施形態は、一例のみとして提供され、本発明は、添付の請求項が享有する同等物の全範囲とともに、そのような請求項の用語のみによって限定されるものである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図22C
図22D
図23A
図23B
図23C
図23D