特許第6139513号(P6139513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6139513ホームネットワークのセグメント間における双方向通信を提供するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6139513
(24)【登録日】2017年5月12日
(45)【発行日】2017年5月31日
(54)【発明の名称】ホームネットワークのセグメント間における双方向通信を提供するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/00 20060101AFI20170522BHJP
   H04L 12/46 20060101ALI20170522BHJP
【FI】
   H04M11/00 302
   H04L12/46 100B
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-510727(P2014-510727)
(86)(22)【出願日】2012年5月7日
(65)【公表番号】特表2014-520423(P2014-520423A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012058346
(87)【国際公開番号】WO2012156222
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年1月14日
【審判番号】不服2016-4482(P2016-4482/J1)
【審判請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】11305586.7
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガチヤニン,ハリス
【合議体】
【審判長】 大塚 良平
【審判官】 萩原 義則
【審判官】 中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−84553(JP,A)
【文献】 特開平3−58658(JP,A)
【文献】 特開平6−98318(JP,A)
【文献】 特開2003−345332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04M1/00,1/24-3/00,3/16-3/20,3/38-3/58,7/00-7/16,11/00-11/10,99/00
H04N7/10,7/14-7/173,7/20-7/68,21/00-21/858
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームネットワークのセグメント間の双方向通信を提供する方法であって、
第1の時間期間中にドメイン間ブリッジの第1のインタフェースにおいて第1の通信信号を第1の端末から受信すること、
前記第1の時間期間中に前記ドメイン間ブリッジの第2のインタフェースにおいて第2の通信信号を第2の端末から受信すること、
前記第1の通信信号と前記第2の通信信号との重畳信号を生成すること、
第2の時間期間中に前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースを介してそれぞれ前記第1の端末および前記第2の端末に前記重畳信号を送信することを含み、前記第2の時間期間が前記第1の時間期間の完了後に生じる、方法。
【請求項2】
前記重畳信号の前記生成が、排他的論理和演算を適用することによって前記第1の通信信号のバイナリデータコンテンツを前記第2の通信信号のバイナリデータコンテンツと結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重畳信号の前記生成が、時間領域で、前記第1の通信信号を表す第1の物理パラメータを、前記第2の通信信号を表す第2の物理パラメータに加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホームネットワークのあるセグメント中の端末がホームネットワークの異なるセグメント中のリモート端末と通信する方法であって、
第1の時間期間中に第1の通信信号をドメイン間ブリッジに送信すること、
前記第1の時間期間の完了後に生じる第2の時間期間中に第2の通信信号を前記ドメイン間ブリッジから受信すること、
前記送信された第1の通信信号と前記受信された第2の通信信号とを結合して、前記ドメイン間ブリッジにおいて受信された前記リモート端末からの送信に対応する第3の通信信号を抽出することを含む、方法。
【請求項5】
前記第1の通信と前記第2の通信信号との前記結合が、排他的論理和演算を適用することによって前記第1の通信信号のバイナリデータコンテンツを前記第2の通信信号のバイナリデータコンテンツと結合することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の通信と前記第2の通信信号との前記結合が、時間領域で、前記第1の通信信号を表す第1の物理パラメータを、前記第2の通信信号を表す第2の物理パラメータから引くことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法をプロセッサに実施させるように構成された、コンピュータプログラム。
【請求項8】
第1のホームネットワーキングセグメントと信号を交換するようになされた第1のインタフェースと、
第2のホームネットワーキングセグメントと信号を交換するようになされた第2のインタフェースと、
前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースに動作可能に結合された重畳エージェントとを備えるドメイン間ブリッジであって、前記重畳エージェントが、第1の時間期間中に前記第1のインタフェースから受信された第1の通信信号と、前記第1の時間期間中に前記第2のインタフェースから受信された第2の通信信号との重畳信号を生成し、前記第1の時間期間の完了後に生じる第2の時間期間中に前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースを介してそれぞれ前記第1のホームネットワーキングセグメントおよび前記第2のホームネットワーキングセグメントに前記重畳信号を送信するように構成された、ドメイン間ブリッジ。
【請求項9】
前記重畳信号が、排他的論理和演算を適用することによって得られた、前記第1の通信信号のバイナリデータコンテンツと前記第2の通信信号のバイナリデータコンテンツとの結合を含む、請求項8に記載のドメイン間ブリッジ。
【請求項10】
前記重畳信号が、時間領域における、前記第1の通信信号を表す第1の物理パラメータの、前記第2の通信信号を表す第2の物理パラメータへの追加を含む、請求項8に記載のドメイン間ブリッジ。
【請求項11】
ホームネットワークドメインを介してドメイン間ブリッジと信号を交換するための通信インタフェースと、
第1の時間期間中に前記通信インタフェースを介して送出通信信号を送信するための送信機と、
前記第1の時間期間の完了後に生じる第2の時間期間中に前記通信インタフェースを介して入来通信信号を受信するための受信機と、
差分信号を得るために、前記送出通信信号に対応する成分を前記入来通信信号から除去する手段とを備える、通信端末。
【請求項12】
前記差分信号が、排他的論理和演算を適用することによって得られた、前記入来通信信号のバイナリデータコンテンツと前記送出通信信号のバイナリデータコンテンツとの結合である、請求項11に記載の通信端末。
【請求項13】
前記差分信号が、時間領域における、前記入来通信信号を表す第1の物理パラメータの、前記送出通信信号を表す第2の物理パラメータに対する差分である、請求項11に記載の通信端末。
【請求項14】
請求項8に記載のドメイン間ブリッジと、請求項11に記載の2つの通信端末とを備えるシステムであって、前記2つの通信端末が前記第1のインタフェースおよび前記第2のインタフェースに接続された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームネットワークの分野に関し、より詳細には、多様な物理ホームネットワークセグメントを介したデータ伝送の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームネットワーク、特に、ITU−Tによって策定された勧告のG.hnファミリに従ったホームネットワーク(ITU−T Rec.G.9961参照)では、ドメイン間の通信がドメインマネージャを介して行われる。このアーキテクチャは、スケーラビリティが限られ、ドメインにまたがる真の双方向対話を可能にしない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ITU−T Rec.G.9961
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ホームネットワーク中で、スケーラビリティ、およびドメインにまたがる双方向対話を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、ホームネットワークのセグメント間の双方向通信を提供する方法が提供される。この方法は、第1の時間期間中にドメイン間ブリッジの第1のインタフェースにおいて第1の通信信号を受信すること、第1の時間期間中にドメイン間ブリッジの第2のインタフェースにおいて第2の通信信号を受信すること、第1の通信信号と第2の通信信号との重畳信号を生成すること、第2の時間期間中に第1のインタフェースおよび第2のインタフェースを介して重畳信号を送信することを含み、第2の時間期間は第1の時間期間の後に生じる。
【0006】
本発明の利点は、ドメイン間ブリッジにおいてデータ中継を双方向に実施することにより、ネットワークリソースをより効率的に使用できることである。本発明は、異なる信号を同時に送信することが必ずしもメッセージの内容を曖昧にしないという洞察にとりわけ基づくが、これは、送信側が、送信されたメッセージの送信側自体のコピーをフィルタとして使用して、結合送信からピアのメッセージを抽出することができるからである。
【0007】
したがって、本発明は、ホームネットワーク中で使用されるネットワーク符号化の一形式を提供する。これは、物理層、データリンク層、および/またはネットワーク層で行われることが好ましい。
【0008】
本発明の方法の一実施形態では、重畳信号を生成することは、排他的論理和演算を適用することによって第1の通信信号のバイナリデータコンテンツを第2の通信信号のバイナリデータコンテンツと結合することを含む。
【0009】
この実施形態の利点は、重畳が、数学的に単純かつ実施容易な方式で行われることである。この実施形態では、有利にも、重畳を媒体アクセス制御(MAC)層で適用することができ、この場合、それぞれのMACフレームの内容が、第1の通信信号および第2の通信信号のバイナリデータコンテンツとして採用される。したがって、重畳されたMACフレームは、物理層に渡され、媒体上に送信される。
【0010】
本発明の方法の一実施形態では、重畳信号を生成することは、時間領域で、第1の通信信号を表す第1の物理パラメータを、第2の通信信号を表す第2の物理パラメータに加えることを含む。
【0011】
この実施形態の利点は、重畳が、既存の物理層機器に対する最小限の修正しか必要としないようにして行われることである。この実施形態では、有利にも、重畳を物理層で適用することができ、この場合、それぞれの通信信号の、好ましくそれぞれのMACフレームの、物理的表現が、媒体上への送信前に結合される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、ホームネットワークの異なるセグメント中の端末と通信する方法が提供される。この方法は、第1の時間期間中に第1の通信信号をドメイン間ブリッジに送信すること、第2の時間期間中に第2の通信信号をドメイン間ブリッジから受信すること、送信された第1の通信信号と受信された第2の通信信号とを結合して、ドメイン間ブリッジにおいて受信されたリモート端末からの送信に対応する第3の通信信号を抽出することを含む。
【0013】
本発明のこの態様は、前述の方法を双方向通信のエンドポイントに移行させたものである。
【0014】
本発明の方法の一実施形態では、第1の通信と第2の通信信号とを結合することは、排他的論理和演算を適用することによって第1の通信信号のバイナリデータコンテンツを第2の通信信号のバイナリデータコンテンツと結合することを含む。
【0015】
本発明の方法の一実施形態では、第1の通信と第2の通信信号とを結合することは、時間領域で、第1の通信信号を表す第1の物理パラメータを、第2の通信信号を表す第2の物理パラメータから引くことを含む。
【0016】
本発明の別の態様によれば、前述の請求項のいずれか一項による方法をプロセッサに実施させるように構成されたコンピュータプログラムが提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、第1のホームネットワーキングセグメントと信号を交換するようになされた第1のインタフェースと、第2のホームネットワーキングセグメントと信号を交換するようになされた第2のインタフェースと、第1のインタフェースおよび第2のインタフェースに動作可能に結合された重畳エージェントとを備えるドメイン間ブリッジが提供され、重畳エージェントは、第1のインタフェースから受信された第1の通信信号と、第2のインタフェースから受信された第2の通信信号との重畳信号を生成し、第1のインタフェースおよび第2のインタフェースを介して重畳信号をほぼ同時に送信するように構成される。
【0018】
本発明のドメイン間ブリッジの一実施形態では、重畳信号は、排他的論理和演算を適用することによって得られた、第1の通信信号のバイナリデータコンテンツと第2の通信信号のバイナリデータコンテンツとの結合を含む。
【0019】
本発明のドメイン間ブリッジの一実施形態では、重畳信号は、時間領域における、第1の通信信号を表す第1の物理パラメータの、第2の通信信号を表す第2の物理パラメータへの追加を含む。
【0020】
本発明の別の態様によれば、ホームネットワークドメインを介してドメイン間ブリッジと信号を交換するための通信インタフェースと、通信インタフェースを介して送出通信信号を送信するための送信機と、通信インタフェースを介して入来通信信号を受信するための受信機と、差分信号に達するために、送出通信信号に対応する成分を入来通信信号から除去する手段とを備える通信端末が提供される。
【0021】
本発明の通信端末の一実施形態では、差分信号は、排他的論理和演算を適用することによって得られた、入来通信信号のバイナリデータコンテンツと送出通信信号のバイナリデータコンテンツとの結合である。
【0022】
本発明の通信端末の一実施形態では、差分信号は、時間領域における、入来通信信号を表す第1の物理パラメータの、送出通信信号を表す第2の物理パラメータに対する差分である。
【0023】
本発明の別の態様によれば、前述のドメイン間ブリッジと2つの通信端末とを備えるシステムが提供される。2つの通信端末は、第1のインタフェースおよび第2のインタフェースに接続される。
【0024】
本発明の装置、コンピュータプログラム、およびシステムの利点は、本発明による前述の方法の利点と同一または同様である。
【0025】
次に、本発明の実施形態による装置および/または方法のいくつかの実施形態について、添付の図面を参照しながら単なる実施例として述べる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本記述におけるホームネットワークへのいかなる言及も、あくまで例示であり、本発明の適用範囲を居住設定に限定する意図はないことは、当業者なら理解するであろう。本発明は実際、オフィス、産業、ホスピタリティ、および教育の設定を含め、G.hnによって含意されるものと同様のアーキテクチャ中に複数のネットワークセグメントがあるような他の設定にも適用可能である。
【0028】
同様に、「G.hn」ネットワークへの言及は、ITU−T勧告のその特定ファミリに準拠する実施形態に本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0029】
図に示される送受信機の数は、例示のために選ばれたものに過ぎず、本発明の一般性を決して限定しない。所与の送受信機との関係で記述される動作は、必要な変更を加えてネットワーク中の他の送受信機にも当てはめることができる。
【0030】
図1を参照するが、図1には、G.hnネットワークアーキテクチャによる例示的なネットワーク100を示す。G.hnネットワークは、ツイストペア、電力線、同軸ケーブリングを含めた様々な宅内物理媒体を介して、DC近くから100MHzまでの周波数帯域で動作するように設計される。G.hnネットワークは、直交周波数分割変調(OFDM)を使用するように標準化されており、OFDMは、IEEE802.11ワイヤレスローカルエリアネットワークなどのワイヤレスシステム中でもよく見られる変調方式である。我々の分析は、本方法の方式がOFDMベースのデータ伝送によるネットワークでうまく機能することを示したが、当業者なら、変調方式の選択が本発明の概念の適用可能性に影響しないことを理解するであろう。したがって本発明は、シングルキャリア方式(例えば直交振幅変調−QAM)、符号分割多元接続(CDMA)、離散マルチトーン(DMT)などを含めた他の変調方式を使用するネットワークにも、等しく適用することができる。
【0031】
種々のタイプの物理媒体のそれぞれは、G.hnネットワーク内の「ドメイン」を定義する。G.hnネットワークは、追加的にワイヤレスドメインと対話することができる。一般性を失うことなく、図1には3つのドメイン101、102、103が示されている。いくつかのドメイン間ブリッジ(IDB)が示されているが、以下ではこのうち、一般性を失うことなく、第1のドメイン101と第2のドメイン102との間にあるドメイン間ブリッジ400に焦点を合わせる。
【0032】
このような各ドメイン内には、相互と通信する多数のデバイスまたは端末がある場合がある。特定のドメイン内では、衝突回避方式によって双方向通信が可能にされる。本記述の残りの部分では、第1のドメイン101中の第1の端末501、および第2のドメイン102中の第2の端末502に焦点を合わせる。
【0033】
ドメイン間の通信は、ドメインマスタの存在に依拠する。図1のネットワーク100中では、第1のドメインマスタ111が第1のドメイン101を管理し、第2のドメインマスタ112が第2のドメイン102を管理する。
【0034】
本発明は、異なるドメイン中にある任意の端末の対の間におけるドメイン間通信にドメインマスタが関与することが、重大なスケーラビリティ問題を引き起こすという洞察に、とりわけ基づく。
【0035】
G.hnは、効率的なドメイン間双方向伝送を可能にするために利用できる、マルチポートデバイス機能をサポートする。パラメータは同一だがサービスフロー優先順位は異なる2つの端末501、502を考えた場合、優先順位のより高いフローに、より低い遅延が与えられることになる。
【0036】
利用可能な帯域幅が全てのサービスフローには十分でない場合がしばしばあり、したがって、優先順位のより低いサービスフローを犠牲にして、優先順位のより高いサービスフローに帯域幅リソースが割り当てられることになる。しかし、デバイスが多数の場合、この手法では、レイテンシが長いことがある。というのは、ドメイン間のキューイングが、コストおよび複雑さの増大を伴って、スペクトル効率を低減する可能性があるからである。例えば、利用可能な帯域幅が、一度に単一の100Mbps送信を提供するのに十分だが、2つのデバイスが同じ優先レベルで待機リスト中にある場合、デバイスのうちの一方は、ドメイン間ブリッジ400を介したスペクトル利用のために待機しなければならないことになる。
【0037】
本発明の実施形態によれば、優先順位付けとドメイン間双方向メカニズムとの合同使用を用いてスペクトル効率を向上させることができ、この場合、双方向方式は、論理リンク制御(LLC)機能を介して開始される。
【0038】
ドメイン間双方向メカニズムを開始するために、フロー優先順位およびキューイングリストが、制御パラメータの意味で使用される。したがって、これらの制御パラメータに基づいてパートナーデバイス(それぞれ異なるドメインからの)のリストが形成され、このリストは「パートナーリスト」と呼ばれる。パートナーリストからデバイスの対を選ぶことにより、LLC機能は、新しい論理インタフェース(以下、X−Iコントローラ)をトリガして、ドメイン間メカニズムを開始する。加えて、レイテンシまたは/およびジッタなどの、ネットワークデバイスパラメータを追加のパラメータとして使用して、通信を開始することができる。
【0039】
図2に、この原理をより詳細に示す。同図では、第1の段階でエンドポイント501、502からドメイン間ブリッジ400に同時に流れる通信が、実線の矢印で表され、第2の後続段階でドメイン間ブリッジ400からエンドポイント501、502に流れ戻る(混合)通信が、点線の矢印で表されている。
【0040】
本記述の目的上、2つの端末501、502が、100Mbpsのデータ通信を達成するためにネットワークリソースを求めると仮定する。次に、X−Iインタフェースは、予約プロトコルとして動作し、100Mbpsのデータ伝送のためのネットワークリソース(すなわち時間シグナリング期間)を割り振ることによってパートナーリストからの1対のデバイス間における同時の送信を調整する。次いで、2つのデバイスは、割り振られた時間シグナリング期間を使用して指定のドメイン間ブリッジ400を介した通信を開始する準備が整う。第1の時間スロット(実線矢印)中で、A1とB1の両方のデバイスが、それらの完全な(100Mbps)データ信号を、対応するマルチポートドメインマネージャ111、112に送る。マルチポートドメインマネージャ111、112は、LLC機能を介して、指定のドメイン間ブリッジノード400と相互接続されている。第2の時間スロット(点線矢印)中で、ドメイン間ブリッジノード400の異なるポート上の受信信号が重畳され、次いで、ドメイン間ブリッジ400は、第1のドメインマネージャ111および第2のドメインマネージャ112に対して、それらに対応するネットワークドメイン101、102内で重畳信号をブロードキャストするよう論理X−Iインタフェースを介してコマンドを送る。第1の端末501および第2の端末502は、共にそれら自体の信号を知っているので、それらの情報コンテンツを引いてパートナーデバイスからの情報を得ることができる。
【0041】
このように、ドメイン間ブリッジ400は、制御パラメータ(すなわちフロー優先順位およびキューイングリスト)を使用して、異なるドメイン101、102からの2つのデバイス501、502間における双方向通信を、X−Iインタフェースを介して開始および調整することができる。
【0042】
したがって、本発明による方法および装置は、ドメイン間ブリッジにおけるデータ中継を両方向で同時に実施することによって、ネットワークリソースのより効率的な使用を提供する。
【0043】
このように、本発明は、異なる信号を同時に送信することが必ずしもメッセージの内容を曖昧にしないという洞察にとりわけ基づくが、これは、送信側が、送信されたメッセージの送信側自体のコピーをフィルタとして使用して、結合送信からピアのメッセージを抽出することができるからである。
【0044】
端末501、502は、漏話キャンセルまたはエコーキャンセルの一形式を適用するが、この場合、前に送信された端末自体の信号が妨害元と見なされる。適切なスケジューリングにより、ドメイン間ブリッジ400は確実に、所与の端末対501、502から発生した信号の対が常に同時に送られるようにすることができ、これにより、意図された受信側は常に、それに宛てられた通信を確実に解きほぐせることになる。ブロードキャストチャネルを介して混合通信を受信する他の端末は、送出通信信号のコピーを普通は処理しないので、通常は通信を解きほぐせないことになる。
【0045】
本発明はさらに、通信信号を混合すること、したがってまたそれらを解きほぐすことを、物理層でまたはパケットレベルで行うことができるという洞察に基づく。後者の場合、結合すること/解きほぐすことは、2つの利用可能な信号に排他的論理和演算をビットごとに適用することで構成されてよい。
【0046】
図3に、本発明による方法の一実施形態のフローチャートを提供する。明確にするために、本発明による例示的な端末500によって実施されるステップは、左側の列に示され、本発明による例示的なドメイン間ブリッジ400によって実施されるステップは、右側の列に示される。会話における端末のピアのステップは、明示的に示されていない。
【0047】
第1のステップ310で、端末500は、第1の通信信号をドメイン間ブリッジ400に送信する。このステップは、ドメイン間ブリッジ400において行われる第1のステップ320に対応し、ステップ320は、この第1の通信信号を受信することからなる。第2のステップ330で、ドメイン間ブリッジ400は、第2の端末(図示せず)による送信の結果として、第2の通信信号を受信する。前述のステップ310−330は、ほぼ同時に行われてよい。
【0048】
次のステップ340で、ドメイン間ブリッジ400は、第1の信号および第2の信号に基づいて重畳信号を生成する。重畳は、パケットレベルで、例えば前述のようにビットごとの排他的論理和を適用することによって行われてよく、または物理レベルで、それぞれの信号を表す電圧レベルもしくは光強度を加えることによって行われてよい。
【0049】
次のステップ350で、重畳信号は、ドメイン間ブリッジ400によってエンドポイント501、502に再送される(通常はそれぞれのドメインマネージャ511、512を介して)。
【0050】
図4に、本発明によるドメイン間ブリッジ400の一実施形態のブロック図を提供する。これは、第1のホームネットワーキングセグメント(図示せず。図1および2の101参照)と信号を交換するようになされた第1のインタフェース410と、第2のホームネットワーキングセグメント(図示せず。図1および2の101参照)と信号を交換するようになされた第2のインタフェース420と、第1の通信信号と第2の通信信号との重畳信号を生成し、第1のインタフェース410および第2のインタフェース420を介して前記重畳信号をほぼ同時に送信するように構成された重畳エージェント430とを備える。
【0051】
インタフェース410、420が、適用可能なプロトコルを使用した対象ネットワークセグメントとのドメイン間ブリッジ400の通信を可能にするための必要なハードウェアおよびソフトウェアの組合せを含むことは、当業者なら理解するであろう。概略的に示すように、重畳エージェント430は、インタフェース410、420に動作可能に結合され、すなわちこれらのインタフェースを通して通信パケットを送信および受信することが可能にされ、したがって、重畳エージェント430中には必要最小限の受信および送信機能が暗黙的に存在する。
【0052】
第1のインタフェース410は、ツイストペアセグメント、同軸セグメント(例えばMOCA標準による)、電力線セグメント、のうちの1つを介して動作するように構成されることが好ましい。第2のインタフェース420は、ツイストペアセグメント、同軸セグメント(例えばMOCA標準による)、電力線セグメント、のうちの別の1つを介して動作するように構成されることが好ましい。
【0053】
図5に、本発明による通信端末500の一実施形態のブロック図を提供する。これは、ホームネットワークドメイン101を介してドメイン間ブリッジ400と信号を交換するための通信インタフェース510と、通信インタフェース510を介して送出通信信号を送信するための送信機520と、通信インタフェース510を介して入来通信信号を受信するための受信機530と、差分信号599に達するために送出通信信号に対応する成分を入来通信信号から除去する手段540とを備える。
【0054】
本発明のコンテキストでは、結果として得られる差分信号599は、会話ピアのメッセージを表し、このメッセージは、ドメイン間ブリッジ400から受信された通信信号から「自己漏話」をキャンセルした後に得られるものである。
【0055】
インタフェース510が、適用可能なプロトコルを使用した対象ネットワークセグメントとの端末500の通信を可能にするための必要なハードウェアおよびソフトウェアの組合せを含むことは、当業者ならやはり理解するであろう。概略的に示すように、抽出手段540は、インタフェース510に動作可能に結合される。すなわち、このインタフェースを通して、送信機520および受信機530をそれぞれ介して通信パケットを送信および受信することが可能にされる。インタフェース510は、ツイストペアセグメント、同軸セグメント(例えばMOCA標準による)、電力線セグメント、のうちの1つを介して動作するように構成されることが好ましい。
【0056】
図4では重畳エージェント430がいくつかの論理処理記号によって表されているが、これは例示の目的でそのように表されているに過ぎず、本発明をこの特定の形の信号混合に限定するためではない。同じことが、図5の、信号成分を除去する手段540を表すのに使用される対応する論理記号にも当てはまる。
【0057】
「プロセッサ」の符号が付いた任意の機能ブロックを含めた図示の様々な要素の機能は、専用ハードウェアを使用して、ならびに適切なソフトウェアとの関連でソフトウェアを実行できるハードウェアを使用して、提供することができる。プロセッサによって提供されるとき、これらの機能は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、または複数の個別プロセッサ(いくつかは共有される場合がある)によって提供することができる。さらに、用語「プロセッサ」または「コントローラ」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行できるハードウェアのみを指すものと解釈すべきではなく、ディジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するための読取専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性記憶装置を、限定ではなく暗黙的に含み得る。従来型および/またはカスタムの、他のハードウェアもまた含まれてよい。同様に、図示のいかなるスイッチも、概念的なものに過ぎない。これらの機能は、プログラムロジックの動作を通して、専用ロジックを通して、プログラム制御と専用ロジックとの対話を通して、さらには手動で実施されてよく、特定の技法は、コンテキストからより具体的に理解されるように、実施者によって選択可能である。
【0058】
本発明の範囲を逸脱することなく、本発明による1つまたは複数の装置との関連で述べた様々な特徴、オプション、および構成を、本発明による方法に当てはめることができ、またその逆も可能である。
【0059】
プログラムされたコンピュータによって前述の様々な方法のステップを実施できることは、当業者ならすぐに認識するであろう。本明細書では、いくつかの実施形態はプログラム記憶デバイス(例えばディジタルデータ記憶媒体)もカバーするものとし、プログラム記憶デバイスは、機械可読またはコンピュータ可読であり、命令の機械実行可能またはコンピュータ実行可能プログラムをエンコードする。ここで、前記命令は、前述の方法のステップのいくつかまたは全てを実施する。プログラム記憶デバイスは、例えば、ディジタルメモリ、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、または光学的に読取可能なディジタルデータ記憶媒体とすることができる。実施形態はまた、前述の方法の前記ステップを実施するようにプログラムされたコンピュータもカバーするものとする。